もう10月ですね〜
パヴァーヌ編まだ4話ですね〜
まだ序盤も序盤ですね〜
これ今年中にパヴァーヌ編の完結なんか出来なっすよね〜(諦め)
番外編なんて書いてる余裕ないだろ貴様ァ!(っ・д・)≡⊃
ちなみに今回の話、作者は機械知識とか科学知識とかそんなもの一切無いので、機械系の話は全部ノリと勢いとフィーリングで書いています。ご容赦ください。
「こんにちは、初めましてになるかな。才羽アオトくん?」
ヒビキさんにBluetooth機能付きピストルの説明をしてもらっていたところ、不意に後ろから声をかけられた。
「…?はい、こんにちは…?」
「あ、先輩。点検終わったみたいだね」
「お疲れ様です、ウタハ先輩!」
「…?先輩…?」
菫色の髪をした、長身の女性。ヒビキさんとコトリさんはその女性のことを先輩と呼び慕っているみたいだ。その女性もクールな雰囲気を纏わせており、何か作業をした後なのか首筋に少しの汗が流れているが、その汗すら絵になるようだで格好良さを助長させている。
「ああ、ありがとう2人とも……改めて、白石ウタハだ。エンジニア部で部長を務めている」
「部長…って部長!?お、お邪魔しています!」
彼女…ウタハさんがエンジニア部の部長であることを聞いた途端、僕は慌てて頭を下げて挨拶をした。突然の部長の登場に、偉い人と対面したように一瞬心臓がキュッとなる。このありとあらゆる発明品の生みの親であるエンジニア部、その最高責任者であるというのだから緊張してしまうのは当然であろう。
「お邪魔していますじゃないでしょ?ウタハ先輩に何も言わず勝手にウロウロしてたんだから…」
ウタハさんの後ろからミドリお姉ちゃんたちもこちらに来ていた。腕を組んで僕に小言を言うミドリお姉ちゃんの表情からは、少し呆れたような、それでいて少し怒っているような雰囲気を窺い知れる。
「あう……すみませんウタハ先輩、勝手に色々と見て回っちゃって…」
「いいんだ、別に構わないさ。ミドリもそんなに言ってあげないでくれ」
ミドリお姉ちゃんの小言を、ウタハさんは右手で制するように止める。振り返ってみると僕のエンジニア部に来てからの行動は、許可なく室内をうろつき回るという非常に勝手な行動だった。故にミドリお姉ちゃんに怒られても文句の言えない立場だったので、ウタハさんに宥めてもらうのは申し訳なく感じてしまう。
「まあまあ、ウタハ先輩もああ言ってるから…ね?それとコトリとヒビキも、アオトの面倒見てくれてありがとね!」
そう言いながらモモイお姉ちゃんはコトリさんとヒビキさんに手を振って礼を言った。
「いえいえ!アオトさんとの談義は楽しかったですよ!」
「まさか自爆機能にロマンを感じてくれる同志がいたとはね…」
そう言う2人を改めて見返す。
「猫塚ヒビキ」と「豊美コトリ」。どちらもエンジニア部に所属している1年生である。ヒビキさんは頭に犬のような耳と尻尾があるのが特徴であり、感情の変化によって耳が立ったり垂れたりするところが見られて面白い。ヒビキさんが作った物には用途に合わない機能がこれでもかと積まれている場合が多く、少し変だと感じるが面白いとも感じる。
コトリさんは物の説明が好きらしく、どんなに小さな発明品でも10分以上はその発明品について語れるらしい。実際に話は長いなとは感じるが、話を聞いた分賢くなった気分を味わえる。
2人は今年入学したばかりの1年生だが、この高い技術力を持ったエンジニア部で中核を務めているのだから、将来は僕が想像もできないくらい凄い人たちになっているのではないだろうか。
ちなみに僕みたいな人の根城を勝手にウロウロする人間にも相手してくれるのだから、僕的には2人は良い人判定になっている。
「ほう、自爆機能にロマンをね…?」
すると視界外からウタハさんの声が聞こえてきたかと思って振返ってみれば、どんどんとこちらに近づいてくるウタハさんの姿が見えた。何事かと思いひるんでいる隙にウタハさんは僕に顔を近づけてくる。
──いや近い近い顔が良い近い近い顔が良い顔が良い…
綺麗な顔をした人にここまで顔を近づけられたら流石に動揺してしまう。しかし僕はアリスさんの熱烈アタックに何とかギリギリ耐え抜いた男だ。アリスさんの時よりかは少し余裕がある。
「は、はい…自爆ってHPを全部犠牲にして繰り出す必殺の一撃感にロマンを感じると思います…」
「ほぉ…」
僕の語りにウタハさんは感心したような声をあげた。まるで同じ志を持った仲間を見つけたかのような雰囲気だ。
「…ところでアオトくん、何か好きな武器とか兵器はあるかい?」
「え、唐突ですね…」
唐突に好きな武器について聞かれて少し困惑してしまう。だがせっかく聞かれたことだ、素直に答えようと思う。
「……ファンネルとか?」
「ファンネルか……あるぞ」
「…へ?」
「あるぞ、ファンネル」
ファンネルがある。そうウタハさんが口にするがいまいち理解が出来ない。
あのファンネルだぞ?現実では見ることのできない人気の架空兵器ランキングで上位に確実に入るはずのあのファンネルがあるというのはつまり…?
「ふむ…ついてくるといいアオトくん。見せてあげよう」
「…えっ?」
そう言うととある場所に向かって歩き始めたウタハさん。ついて来いと言うので後を追おうとするが、お姉ちゃんたちがついてくる様子が見えない。
「あれ?お姉ちゃんたちは?」
「……アオトとウタハ先輩で楽しんでおいで~」
「私たちは他で時間潰してるから~」
振り返って様子を見ると全くついてくる気のない表情を浮かべたモモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんが手を振っていた。そんな2人の様子に合わせているのか、他の人もついてくる様子が見えない。
「あ、うん。わかった~」
そう答えて僕はウタハさんについていく。
本当にこの先にファンネルがあるのだろうか…
―――――――――――――――――――――――
「これが去年の冬頃に我々エンジニア部が開発した『無線制御式小型エネルギー砲』、通称『ファンネル』だ」
「こ、これが…!」
眼の前の作業台に鎮座している『Weeリモコン』程度の大きさがある円錐型の機械。それが8基。僕がアニメやゲームで散々見てきたような架空の兵器、現実では見ることは出来ないだろうと思っていた兵器が確かにそこにあった。
「すごい…!本当にファンネルを見れる日がくるなんて!」
「ふふっ、気に入ってくれたようでなによりだ」
架空の兵器の中でも特に人気があるのではないかと推測できるこのファンネル。1基1基が全く異なる動きを行い、視界外からの攻撃を可能とする強力兵器だ。敵の機体を確実に仕留めることに使っても良し、多数の軍勢を殲滅させるのに使っても良し、この兵装があるかないかで機体の強さが大きく変わると言っても良いロマンあふれる兵装である。
「これエネルギー砲って言ってましたけど…もしかしてビーム兵器なんですか…!?」
「ご名答。アリスの使っている『光の剣:スーパーノヴァ』とは違い、実弾を使わない正真正銘のビーム兵器さ」
「本物の…ビーム兵器…!」
実物のビーム兵器を目の当たりにした僕は興奮が収まらない。
「ああ、このファンネルにはエネルギーを生成することが出来るジェネレーターが内蔵されていてね。そのジェネレータ―から生成されたエネルギーを凝縮し、ビームとして発射するシステムになっている」
「ほう!」
「そしてそのジェネレータ―は8基全てに内蔵されているから単体でエネルギーを生成することが出来るんだ。ちなみに、1発の威力は平均的なスナイパーライフルの威力と同程度と思ってくれて良い」
1発の威力がスナイパーライフル…僕の想像をはるかに超える高威力、実質8基のスナイパーライフルが四方八方から撃ってくると考えるとあまりにも驚異的だ。しかも8基全てが単体でエネルギーを生成することが出来る。つまりエネルギー充電のための充電ポッドが必要ないということなので8基のスナイパーライフルが半永久的に動き回ると考えるともはや敵なしなのではなかろうか。
「つまり…いちいちファンネルを回収する必要がないから隙が出来ないということですね?」
「…………そう思うだろう?」
そうウタハさんは遠い目をしながら呟いた。単体でエネルギーを生成できるのだから射出してしまえば半永久的に稼働できると思っていたのだが…
「…まず第一に、このファンネルには欠陥要素があるんだ」
「欠陥要素…ですか?」
そう語るウタハさんは遠い目から一変、どこか悔しそうな顔をしていた。
「…欠陥要素その1。このリモコン程度の大きさしかないファンネル……これに内蔵するジェネレーターはかなり小型化されていてね。片手で収まるくらいの大きさしかないのだよ」
「…?凄いじゃないですか。ジェネレーターの小型化なんて超技術だと思いますけど…」
「ああ、私たちもジェネレーターの小型化には苦労したさ……だが、その片手で収まるジェネレーターが小型化をすればするほど出力というものはどうなっていくと思う?」
「それは、基本的には下がっていくと思いますけど……ってもしかして…?」
「そう、小さくすればするほど出力は下がっていく。そして出力が下がればエネルギーの充電も遅くなる。エネルギーの充電が遅くなればつまり…?」
「……次発装填が遅くなる…」
「正解だ」
指をパチンとしながら言ったウタハさんの発言に僕はハッとなる。架空でしかないと思ってたこのロマン兵器に興奮していたあまりに、現実的な欠点を見落としていたようだ。
「このファンネルは小型化されたジェネレーターによって単体で充電ができるところが強みだが……小型化したが故の出力低下で発砲の回転率が悪いんだ。ちなみに、1発撃つのに何分かかると思う?」
「え、2分とかですか…?」
「残念、答えは5分だ」
「ごっ!?」
1発撃てば次発に5分かかる。つまりその5分間はただの的になり果てるということ。これではせっかくの強兵器も実用性がなくなってしまう。
「ああ、だからこのマザーポッドで充電補助をしなければ上手く取り扱いは出来ないだろうね」
そう言ってウタハさんはウエストバックのような箱形の機械を2つ、近くの棚から取り出した。
「マザーポッド…これにファンネルを差し込んで充電するということですか?」
「そういうことさ。どうだい、ワイヤレスイヤホンの充電器みたいだろう?」
言われてみれば確かに似ている。横幅はウエストバック並みの大きさだが、縦幅が小さいスーツケースくらいはあるのではないだろうか。蓋が付いていて開けてみると、ファンネルが縦に入りそうな穴が4つ空いていた。そこに差し込んで充電および収納するということなのだろう。
そしてどうやら腰掛ける用の器具までついている。このマザーポッドを腰に掛けて使用するものなのだろう。重量を考えると非常に使いづらそうだ。
「なるほど……でも、これがあれば実用的に使えるってことですよね?」
「まあ、そうなるな。これがあれば数十秒で充電は完了する」
「じゃあ、使ってみてもいいですか?僕使ってみたいです!」
「…………………」
使ってみたい。僕がそう言った途端、ウタハさんは目を閉じて黙り込んでしまった。
「……?ウタハさん?」
「……いいだろう、試しに使ってみると良い……………本当に使えれば良いがね」
そう諦めたかのような声音で近くの棚からとある機械を取り出した。おでこに巻くバンダナのような形をしていて、頭につけるようなものなのだろうと推測できる。
「これはファンネルを制御するためのものだ。これを頭につけることで人間の脳波を受信して操縦することが出来る。つまり、頭でこう動いてほしいと念じれば動かすことが出来るというわけさ。もちろん、安全性は保障する」
「こんなものまで…またもや超技術じゃないですか、何者なんですかエンジニア部って…」
そう言いながら僕は機械を頭につけた。硬い質感と冷たい感触がおでこを中心に頭に広がり、変な感覚を覚える。
「つけたね。そのままここのスイッチをオンにして…よし、まずはこのファンネルを浮かせてみてくれ」
「は、はい…」
「浮けっ」と僕が念じると、作業台に置いてあったファンネル8基が浮き始めた。
「おおおおおお!浮いてます!」
夢にまで見たファンネルの実物。あの圧倒的な制圧力を誇る武器をこの手で動かしているのかと思うと興奮が止まらない。この高揚感は新しいゲームを買った時よりも大きいものだ。
「ふふふ、じゃあ次はファンネルをまっすぐ進ませてみようか」
「は、はい!…っすぅ……行けよファング!!」
「…ファング?」
まっすぐ進めと念じると8基のファンネルは僕の思い通りにまっすぐ進んだ。一糸乱れず同じ速度で進むファンネルを見て僕のテンションは温度が上がる水のように徐々に上がっていく。
「…よし、それじゃあ今度はあそこの8つある的に8基それぞれを近づけてみようか」
「分かりました!行けええええ!!」
上がったテンションの勢いのまま僕は8基にそれぞれ的に行けと念じた。僕の念を感じ取ったファンネルはそれぞれ行動に移そうと………
──することはなく、僕が見つめていた1つの的に1基が向かっていっただけで他の7基は力を失ったかのように地面に落ちていった。
「…………あれ?」
想像とは違う結果に僕は呆然とする。確かに僕はファンネルに念じたはずなのに、その通りになるどころか7基が動かなくなってしまう事態にまで陥っている。
「な、なんで……もう一回…!」
もう一度同じように念じてみる。しかし今度は向かっていった1基が方向を変えて別の的に向かうだけで7基は動く気配がない。
今まで上がっていたテンションは、その高さに比例するように焦りへと変わっていく。
「ど、どうして…ちゃんと念じているはずなのに…」
「………欠陥要素その2」
後ろにいたウタハさんに声をかけられる。その声音は決して明るいものではなく、むしろ暗い印象を受けるようだった。
「ただ普通に念じていても、このファンネルはまともに動くものではない」
「…え?」
まともに動かない。その言葉を聞いた僕は焦りから絶望へと変わっていく。
「私たちも何度か挑戦してみたが、誰一人としてまともに動くことはなかったさ」
「そんな…どうして…!」
「実験を重ねていくことでわかった。このファンネルを使いたければ、8基全てに正確な情報を送れるほどの処理を脳で行わないといけない。いわゆる『完全並列同時思考』もしくは『完全並列同時情報処理』というものか。だがこの能力を持った人間でも2つか3つが限界で8つを同時に動かすのは無理だろうね」
「…………」
「さらには『空間認識能力』も非常に高いものを持っていなければ使えない。そんな能力を持った人間も稀だろう。つまり…」
「…………人間には使えない」
「……ああ」
何ということだ。夢にまで見て、いつか実物を見てみたいと思っていたロマンあふれる兵器は、現実だと全くもって使うことが出来ない代物だとは思わなかった。
だが考えてみれば確かに、創作物でもこういう兵器は強化人間や一部の特別な能力を持つ人間のみ扱うことが出来るという設定が多かった。今この現実を目の当たりにすると、そういう設定というのは何の矛盾も抱えていなかったのだとわかる。
「まさに『人類には早すぎる武装』という言葉が相応しいものだね」
「……使えるような存在は現れるんでしょうか」
「わからない。だがもしこれが使えるような存在がいるのならば、それは『超高性能AI』みたいな存在だけだろうね。そんな存在、非現実的なものだが」
ウタハさんが語る『超高性能AI』。そんな存在が現れるとは思えないが、もし現れたとしたら僕はこのファンネルを自由自在に操っているところを見てみたいものだ。
「……まあ正直、作る前から何となく察してはいたんだ。この兵器は人間には使えないって。」
「…えっ」
ふとそんなことを口にしたウタハさんに僕は驚きの声を上げる。作る前から扱えない代物になると察していたのに、それでも作ったというのか。
「どうしてかって顔をしているね?そんなの、決まっているじゃないか」
「…もしかして」
「ああ、それは…
──ロマンだからだよ」
ロマン。その一言が僕の胸にストンと落ちていく。
「実弾を使わないビーム兵器、手を使わずに脳を使って操る操縦性、創作物でも見せている圧倒的な制圧力、カッコいいデザイン……作りたいと思うには十分すぎる動機だろう?」
そう語るウタハさんの表情はまるで夢を語る少年のようで、本当に好きなものを作るのが好きだということが伝わってくる。
そして何よりロマンを求めて物を作るその姿。その姿に僕は共感を覚えることが出来た。
いつぞやモモイお姉ちゃんが、カッコよくてロマンがあるから『エースコンバート』シリーズが好きだという僕に対して、いまいち理解しきれない顔をしていたことが印象に残っている。ロマンを感じることに理解を示してくれる人間は周りに誰もいなかったのだ。
そんな僕の前に現れたロマンに忠実に生きるウタハさんという存在。その存在は、僕にとってとても眩しく見えた。
「……素敵です、ウタハさん…」
「……ふふふ、やはり君は同志のようだね?」
気が付けば自然と握手を交わしていた僕とウタハさん。手と手だけでなく、心と心も通じ合ったような感じがする。この人とは美味い酒が飲めそうだ。
……飲むにはまだ10年早いけど。
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「せっかくだ、ファンネルのような高予算な物だけじゃなくて、低予算で作れた物たちも見ていくといい」
そう言ってウタハ先輩が取り出したのは、何の変哲もないサッカーボールであった。
手で持ってみても、特に改造が加えられたものには見えなかった。
「…?普通のサッカーボールじゃないですか。これの一体どこが…?」
「外見はそう見えるだろう?あそこに的がある、蹴ってみるといい」
そう言ってウタハ先輩が指をさした方向を見ると確かに的がそこにあった。ダーツボード並みの大きさの的が、案山子のように鎮座している。
当てるには少々難しい大きさだ。僕は別に問題は無いが。
「わ、分かりました…とりあえずいきますね……えいっ」
数歩後ろに下がって、軽く勢いを付けながら蹴ってみた。シュートを打つにしては大して強くない、小手調べ程度の強さだ。的に当たったとしても、せいぜいこっちにボールが跳ね返ってくるのが関の山だろう。そう思って蹴ると…
ボウッ!!
「へっ!?」
軽く蹴ったはずのボールが突然火を纏い始めた。纏ったかと思えば、自分が想定していた倍以上の速さで的に向かって飛んでいき…
バアァン!!
的を木っ端みじんに吹き飛ばした。
「………え、いやその…えっ?」
「ははははっ、驚いてくれてなによりだ」
僕が驚いているところを見て楽しそうに笑うウタハさん。ドッキリ大成功と言わんばかりの表情だ。
「『大乱狂スマッシュシスターズ』は知っているかい?」
「え?はい、よくプレイしてますけど…」
略して『スマシス』と呼ばれる対戦型格闘ゲームは、ゲーム開発部でも定番の対戦ゲームになっている。初めてミレニアムに訪れた際、モモイお姉ちゃんをフルボッコにして灰燼にしてしまったのは懐かしい思い出だ。
「その『スマシス』に、サッカーボールというアイテムがあるのを覚えているかい?」
「あー、そういえばありましたね。攻撃当てたら火を纏って突っ込んでいくやつ……ってあれ?今の僕が蹴ったボールって…」
「そう、『スマシス』のサッカーボールを参考に作った発明品…その名も『ファイアーボール』だ」
「す、すごい…!」
まさかゲーム作品のアイテムを実際にお目にかかれるとは思わなかった。ゲームに出てくる現実ではありえないのではないかというアイテムまで作ってしまうエンジニア部の実力、あまりにも恐ろしい。
「どうだい、この『ファイアーボール』の威力は。ある一定の威力で蹴らないと作動しないが、膨れ上がる威力はおよそ3倍だ」
「3倍!?……いやでも確かに、軽く蹴ったのにあの威力を考えたら…」
通常の3倍の威力。かの赤い彗星を連想したくなる数字であるが、的を簡単に破壊した威力を考えると納得のいく数字である。
「蹴る威力を上げれば上げるほど膨れ上がる威力も増していく。頑張れば主力戦車や戦闘ヘリも撃破可能だな」
「……間違えても人に向けて蹴っていいものじゃありませんね…」
いくら銃を食らっても痛いだけで済む僕たちでも、破壊兵器の一撃を食らってしまったら怪我だけでは済まされないだろう。間違えてもサッカーの試合で使ってはいけない代物だ。
「もちろんこれの他にも色々と紹介したいものがあるんだ」
そう言ってウタハさんは新たに発明品を取り出した。
「これは…靴ですね?」
赤と白で塗装された、いたって普通の靴。しかしかかとの方を見てみると普通のシューズには見られない特徴的な部品が付いていた。
「…これはダイヤルですか?右足と左足の両方にある………ウタハさん、これすっごい見たことあるんですけど…」
かかとの横部分にダイヤルが付いている赤色のシューズ。靴屋などでは一切見ることのない特徴的な靴だが、この靴自体を見たことない人は恐らく少数なのではないだろうか。
「気づいたね。そう、この靴の名前は『キック力増強シューズ』だ」
「…名前そのままだ」
キック力増強シューズ。かの有名な探偵漫画に登場する主人公のメインウエポンの1つだ。特に毎年やっている映画での活躍が凄まじく、劇中クライマックスの盛り上がりにこの靴を使った主人公が「いっけえええええ!!!!」という声と共にボールを蹴るシーンは誰もが見たことのあるものではないだろうか。
「電気と磁力で足のツボを刺激し、筋力を極限まで高めるシューズさ」
「ちゃんと原理も原作通りなんですね…」
「ああ。ちなみにさっきのファイアーボールと組み合わせて使ったことがあるんだが……」
「え、それ魔の組み合わせじゃないですか。どうなったんですか…?」
「部室の壁が木っ端微塵に吹き飛んでユウカに鬼の形相で怒られたよ…」
「デスヨネー」
ただでさえ原作でも異常な威力を発揮する『キック力増強シューズ』に、威力を3倍にする『ファイアーボール』を組み合わせてしまったらどうなってしまうのか想像に難くない。
「あの時は後始末もろとも大変だったさ…とまあ、昔話はこのくらいにして」
そう言うとウタハさんは別の発明品を取り出した。
「これの他にも色々と作ったんだ、『蝶ネクタイ型変声機』とか」
「うわ、本物だ…」
「『犯人追跡メガネ』とか」
「これも…?」
「『腕時計型麻酔銃』とか」
「え、阿笠います?このエンジニア部に」
次から次へと出てくる某探偵漫画のアイテムたち。デザインもどれも漫画やアニメで見てきたものと瓜二つであった。さらに原作通りの性能で使えるという、まさに完全模倣の域に達しているこの発明品たちを見て僕も感動してしまう。
こうした一度は憧れるようなものを実際に作ってしまうウタハさんたちエンジニア部。ロマンを感じるものを作り、そして語る姿はとても楽しそうで、聞いている僕も楽しくなってしまう。
『アオトが好きそうな場所だよ!』
モモイお姉ちゃんが言ったこの言葉。この言葉に間違いは無かった。僕の中にある男心も、ロマンもここなら満たしてくれる。
「あとこの『腕時計型麻酔銃』にはね、1秒以上の感覚を開けずに4回連続でリューズを引くとメモの切れ端が出てくる仕組みがあるんだが…」
「………あれ、それ違う作品じゃ…」
こうしてウタハさんの発明品紹介は続いていった。
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「ところでユズはどうしたんだ?…いや、ユズが君たちと一緒に来ないのは別に珍しいことではないのだが」
かれこれあれから数十分、ウタハさんの発明品紹介は続き場所を移動しようとしていた所で、ユズさんについてのことを聞かれた。
「ユズさんですか?ユズさんなら今ゲーム開発部の部室で過度の疲労でぶっ倒れてます」
「過度の疲労…?ぶっ倒れている…?」
お姉ちゃんたちゲーム開発部御一行で廃墟へ『G.Bible』を求め冒険し、その疲労で動けなくなってしまったユズさん。事情を知っている人が疲労で倒れていると聞けばある程度理解できる話ではあるが、何も知らないウタハさんは非常に困惑した表情を浮かべていた。
「まあ色々あったらしいですよ…」
「そ、そうか……それにしても疲労か…」
ウタハさんは何かを考えこむように動きを止めた。
「…?ウタハさん?」
「…アオトくん、これをユズに渡してみてくれないか?」
何かを考えこんだ後、ウタハさんはポケットから謎の豆のようなものをとりだして僕に渡してきた。
「…何ですかこれ」
流石の僕も得体のしれないものを渡されて困惑してしまう。
「これは何というか、副産物みたいなものでね。疲れが一瞬で吹っ飛ぶエナドリを作ろうと思い立って作っていた時があったんだが、そのときに思いがけず出来た豆のようなものさ」
「……エンジニアの領分を超えてません…?」
エナドリを作るというのはどちらかといえば科学ではなく化学の領分ではないのだろうか。ミレニアムは理系が得意な人たちが集まるらしいので化学の方も多少は出来るということなのかもしれない。僕にはよくわからないが。
そもそもエナドリを作って豆が出来るというのが理解できない。一体その過程で何が起きたのか問い詰めたい気分だ。
「それに安全面の心配が…」
「安全面については問題ない。私が保証しよう」
一応副作用とか変な作用とか色々と心配ではあるのだが、問題はないらしい。本当かどうかは少し怪しいところではあるが、ユズさんをこのまま放置しておくのもマズいと思っているので、後で渡しておこうと思う。
「…わかりました、渡しておきます」
「ああ、ぜひこの『仙〇』を渡してあげてくれ」
「『〇豆』って名前なんですかこれ!?」
確かに見た目は似ているが、本当にその名前で大丈夫なのだろうか。
「…さて、君に少し聞きたいことがあるのだが」
一瞬で話を切り替えていくウタハさん。『仙〇』についてツッコミたい気持ちは大いにあるのだが、とりあえずウタハさんのペースに乗ろうと思う。
「……聞きたいことですか?」
「アオトくんは『エースコンバート』が好きとモモイから聞いたことがあるのだが、本当かい?」
「えっ、はい好きです」
まさかウタハさんから『エースコンバート』の話を聞かされるとは思いもよらなかったので、つい食い気味に答えてしまった。
「そうか。あのゲームは私も少しやっていてね。個人的にも気に入っているゲームの一つなんだ」
「そうだったんですか?『エースコンバート』が好きとは良いセンスしてますね!」
ウタハさんも『エースコンバート』を遊んでいたとは思わなかった。
戦闘機を操縦するフライトシューティングゲームとして人気のある『エースコンバート』シリーズは、戦闘機のカッコよさ、空戦の面白さ、セリフのカッコよさ、巨大兵器のロマン、そして何より神BGM、ありとあらゆる要素が僕の男心をくすぐるものばかりで、気が付けば虜になっていたゲームの1つだ。
お姉ちゃんたちはあまり理解してくれないけど…
「でもどうして急に?」
「いや、これから紹介しようと思うものは『エースコンバート』をやっていて作ろうと思った発明品でね。アオトくんも気に入ると思ったのだが…」
『エースコンバート』をやって作ろうと思ったもの。一体何なのだろうか。
巨大兵器か、戦闘機か、それともファンネルのようなビーム兵器か、想像するだけで胸のドキドキが止まらない。
「ぜ、ぜひ見せてください!」
「ああ、分かっているさ。ついてきてくれ」
そう言うとウタハさんはその発明品が置いてあるであろう場所に向かって歩き出した。
僕もその後ろについていくように歩き出す。きっと僕が興奮してしまうような発明品があるに違いない。テーマパークに遊びに行くときのようなワクワクを胸に僕は歩みを…
「おーいアオトー!」
「…モモイお姉ちゃん?」
ウタハさんと歩き出してすぐ、少し遠くからモモイお姉ちゃんに声をかけられた。
「『G.Bible』の解析が終わったからヴェリタスの部室に行くよー!」
「えぇ…」
どうやらヴェリタスという部活に頼んでいた『G.Bible』の解析が終わったらしい。これで『G.Bible』の全容が明らかになるのだから喜ばしいことだ。
しかし僕はこれから見れたはずの『エースコンバート』関係の発明品が見れなくなってしまうことを意味する。せっかくテーマパークに来たのに大雨で全然遊べなかったような気分だ。落胆の声をあげてしまうのも仕方のないことだと思いたい。
「ふむ…アオトくん、まずは君たちの用事を終わらせてくるといい」
「え、でも…」
「大丈夫、用事が終わったらすぐにまた来てくれ。その時に見せよう」
「ウタハさん…」
ウタハ先輩はそう笑顔で伝えてくれた。このまま僕だけエンジニア部に残るという選択肢も頭をよぎったが、それは我が儘というものだろう。ここは素直にお姉ちゃんたちと用事を終わらせることを優先した方がよさそうだ。
「…わかりました、ありがとうございますウタハさん!」
「ああ、待っているよ」
楽しみは一旦お預けになってしまったが、この楽しみを胸に今度はヴェリタスという部活に足を踏み入れようと思う。
でもやっぱりすぐに見たいものは見たかった。そう思いながらモモイお姉ちゃんの所に向かって走るこの足は、いつもよりほんの少しだけ重く感じた。
え?なんでファンネルが重力圏内で普通に動かせているんだって?
気持ちは分かります…けどそういうものだと思ってください…
そこまで細かく設定できるほどッ!私に余裕はありませんでしたァ…!