ステラソラがいよいよ配信開始になりましたね〜
皆さんはもう遊びましたか?私はまだそこまで遊べてないです…笑
「なるほど、それは確かに的確な判断だ」
ヴェリタスで『鏡』奪還作戦が決まった後、作戦立案者のハレさんが協力者を求めているということで僕たちはエンジニア部に顔を出していた。
ハレさん曰く、作戦を実行するにはゲーム開発部とヴェリタス以外の「仲間」が必要らしい。そこで「仲間」として白羽の矢が当たったのがエンジニア部であったというわけだ。
そして現在、ゲーム開発部の皆がエンジニア部のウタハさん、ヒビキさん、コトリさんに頭を下げているところだった。
「君の言う通り、その方法なら私たちじゃないと難しいだろうね……うん、分かった。協力しよう」
「ほ、本当に良いんですか?」
どうやらエンジニア部は協力してくれるようだ。心強い仲間が増えてくれてよかったと思う。エンジニア部の技術力があればきっと危ない場面でも力になってくれるだろう。
力になれない僕なんかに比べて…
──『ごめん、アオトはお留守番かな…』
ヴェリタスで告げられた言葉。その言葉が頭から離れない。
確かにセミナーやC&Cを相手にする恐怖というのはあった。セミナーを襲撃するという行動が悪いことだというのも分かっていたし、それを実行することに後ろめたさだって感じていたのだ。
それでも僕は、ゲーム開発部に迫る危機に寄り添いたかった。
僕も、ゲーム開発部というあの空間が好きだった。もっと一緒に皆と遊びたかった。だから僕も廃部になんかなってほしくなかったし、僅かながらも確かにある希望を掴むための協力だってしたかった。
だから、恐怖も後ろめたさも我慢して一緒に戦う決意を固めたのだ。
けど…お姉ちゃんたちに言われたのは、「危険すぎる、ただ待っていてほしい」という言葉だった。この戦いに僕を巻き込みたくないと。
……分かっているつもりだ。お姉ちゃんたちは僕のことを本当に心配してくれているということを。僕のことを思ってくれていたからこその選択だということも。
でも、分かっていてもどうしても心のどこかで、「アオトじゃ力になれない」「足を引っ張るだけ」と言われているような気がしてならない。
けど、言われてみたら確かにそうなのだ。他の人に比べて僕なんかちっぽけな存在なのだから。
ゲーム開発部の皆は決して戦闘向きの集団ではない。けど廃墟に行って探し物を掘り当てて帰ってくるだけの実力は確かにあるのだ。
ヴェリタスもハッカー集団だということもあって、戦闘能力はなくとも情報戦と呼ばれるものは段違いに強いだろう。
エンジニア部は言わずもがな。あの圧倒的な技術力は間違いなくみんなの力になってくれるはずだ。
比べて僕はどうだ。同年代の子に比べてちょっと足が速いだけ。ちょっとスポーツが出来るだけ。特筆すべき能力も実力も何もない。
これでは足を引っ張るだけと思われても仕方がない。
分かってる、お姉ちゃんたちはそう思ってはいないって。ただ心配してくれているだけだって。
それでも頭でそう考えてしまうと、無力な自分を自覚してしまう。一人残されても仕方がないと思ってしまうと同時に、何もできない自分に腹が立つ。
「…ト……オト…!」
どうしてもマイナスの思考に陥ってしまう。
「…オト……アオ…!」
どんどん沼にはまるように…
「アオトッ!」
「…ッ!!」
耳元に大きな声が響き渡る。考え事をしていた頭が、一気に現実へと引き戻された。
少し俯いていた顔を上げると、ミドリお姉ちゃんが心配していそうな顔でこちらを見つめていた。
「大丈夫…?具合悪いとか…?」
「あ…ううん、大丈夫だよ…」
僕のおでこに手を当ててこちらを見つめるミドリお姉ちゃん。思考の沼にはまってしまった僕を見て心配させてしまったみたいだ。
これ以上、心配はかけたくない。
「……やっぱり気にしてる…のかな?」
「…………」
「…彼、何かあったのかい?」
「あ、ウタハ先輩…えっと、まあ色々あって…」
気にしていないというのは、全くの嘘になる。実際に心配されるくらいには気にしてしまっているのだから。ウタハさんにも、僕の様子がおかしいことに気付いてしまっている。
「とりあえず…アオトはどうする?私たちはヴェリタスに戻るけど…」
「僕は…」
…正直、今日はもうミレニアムにいる理由がない。さっき話していた作戦を聞いていても、作戦開始は夜になりそうなのだ。
それに皆は色々と準備で忙しくなるだろう。役立たずの僕がいたところで邪魔になるだけだ。だったらもう、暗くなる前に家に帰った方が…
──『私たちの帰りを待っていてほしいな?』
…でも、モモイお姉ちゃんに言われた。待っていてほしいって。待ってくれているだけでパワーが湧いてくるって。
だったら、帰らずに待っている方が良いのかもしれない。けど、何もできない僕がいても本当に邪魔にしかならないのではないか。
…分からない、僕は一体どうすれば……
「…すまない、彼のこと少し借りてもいいかい?」
また思考の沼にはまっていた最中、突如右肩にポンと手を置かれた感触で現実に引き戻された。見上げると、ウタハ先輩が僕の肩に手を置いていた。
「ウタハ先輩…?良いですけど…」
「…アオトに変なことしなければ」
「しないさ。私のこと何だと思っているんだい?」
ちょっとした軽口…みたいなものの叩き合い。それを僕は茫然と聞いていた。
なぜウタハさんが僕に用があるのか。ウタハさんだって準備で忙しくなるはずなのに。
意味が分からず考えていると、気が付けばお姉ちゃんたちはエンジニア部を出ていくところだった。
「じゃあアオト、ウタハ先輩に迷惑かけないようにね?」
「あ…うん…」
振り返って手を振るお姉ちゃんたちに、僕も胸のあたりで小さく手を振って答える。
そして出口のドアから出ていった皆は見えなくなり、エンジニア部に僕一人だけ取り残された。
「えっと…その…僕に一体…」
ウタハさんの方を向いて、素直な疑問をぶつける。ウタハさんとの距離が近いせいか、かなり見上げるように視線を向けた。
「そうだね…色々あるがとりあえず…
──少し話そうか」
―――――――――――――――――――――――
「ほら」
「ありがとうございます…」
ウタハさんから缶コーラを手渡される。僕はエンジニア部の端っこに置いてあるベンチに座っていた。缶コーラを渡してくれたウタハさんは僕の隣に腰をおろす。
「…どうしたんですか、急に」
蓋を開けて一口飲み、僕は疑問をポロッとこぼす。
「なに、1時間前と今じゃ随分と元気がないと思ってね。ミドリとのやり取りを見るに、姉弟間で何かあったのかと思ったまでだよ」
「そう…ですか」
僕はウタハさんの方は見ずに、ボーッと前を見続ける。そこにはコトリさんとヒビキさん、その他エンジニア部の部員が忙しなく作戦の準備を進めていた。
「…本当にどうしたというんだい?姉弟喧嘩をした後のような雰囲気には見えなかったが…」
「…喧嘩をしたわけではないんです」
そう、喧嘩をしたわけではない。これはただ僕が…
「今夜決行する『鏡』奪還作戦…僕もそれに協力したいって言ったんです」
「…うん」
「でもお姉ちゃんたちが、危ないから僕はお留守番だって…」
「なるほどね…」
ウタハさんに、ヴェリタスでの出来事をつぶやいていく僕。気が付けば、視界は缶と足元しか見えなくなっていた。
「確かにこの作戦は危険だ。なんせ相手はあのC&C、ミレニアムで一番の戦闘能力を誇ると言っても過言ではない集団だからね」
「やっぱり…そうなんですね…」
「ああ……モモイとミドリ、弟想いの良い姉じゃないか。危ない思いをしてほしくないと思うほど、君は2人にとって大切な存在なんだろう」
「…………」
それは…分かっているつもりだ。2人が僕のことを大切にしてくれていることは、ちゃんと分かっているつもり。けど…
「けど、それじゃ納得できないところがある…といったところかい?」
「……!」
納得できない。そう言われた僕はハッとなる。見ないようにしていた自分の心を、見透かされたような気がして。
隣にいるウタハさんに顔を向ける。ウタハさんは朗らかな顔でこちらを見つめていた。
その顔に甘えてしまうように、僕は言葉を漏れ出していく。
「……大切にしてくれていることは、分かっています」
「うん」
「この作戦が危険だから、関わらせたくないことも…分かっています」
「うん」
ぽつりぽつりと、言葉を紡ぎだしていく。目線はまた、缶コーラに向いた。
「けど…それは僕が何もできない役立たずって言われてるような気がして…」
「ウタハさん…エンジニア部には、技術力がある」
「ヴェリタスには、ハッカーとしての強さが」
「ゲーム開発部には、廃墟に行って帰ってくるだけの強さが」
「先生には、治安を良くさせるほどの影響力がある」
「でも僕には……何もない」
握っている缶の親指部分が、パコッとへこむ。
「何も…出来ることが無い…」
視界が滲んでいく。
「役に立ちたくても…っ……何も…出来なくて…っ」
飲み口に水滴が落ちていく。ポタポタという音が、騒がしい部屋の中にも関わらずハッキリと聞こえる。
「それが…っ!…すごく…っ!」
「『悔しい』…かい?」
「…っ!」
悔しい、そう聞いた僕はすかさず顔を縦に振る。
そう、悔しいのだ僕は。何もできない自分が。ただ見守ることしかできない力の弱さが。
年齢とか、体格とか、そんなものは関係ない。役に立ちたいのに役に立てないこの弱さが…自分が弱いと認めてしまう弱さも…悔しい。
でも、たとえどんなに悔しくても…僕に一体何が出来るというのだろう…
自分の心を自覚し、悲しみに暮れていると僕の右目元を指で優しくぬぐってくれる感触があった。
「全く、そんなに涙を流すものじゃない。可愛い顔が台無しだぞ?」
僕が隣に顔を向けると、ウタハさんが優しい笑顔を向けていた。そのまま左目の涙もぬぐってくれる。
「ウタハさん…」
「確かに悔しいのは仕方がないし、今の年齢を考えても力が無いのも仕方がないさ」
仕方がない…そう、仕方がないのだ。年齢という壁、それに伴う体格という壁はどうしても存在してしまう。どんなに鍛えたって、どんなに努力したって、追いつけないのが年齢なのだから。
「でも……それで諦めてしまうのを、君は良しとするのかな?」
「…!」
けど弱いまま、何もせずに諦める。
「諦めて、ただ皆が戦うところを見守るだけ…それを君は才羽家の弟として…何より1人の『男』として、認められるかい?」
何もせず、ただ皆の戦いを見守るだけ…自分には何も出来ないと諦めて、何もせずにずっと……そんなの、1人の『男』として…お姉ちゃんたちの弟として…僕は…
「…嫌です。認めたくないです…!」
「…弱くても諦めず、力になりたいかい?」
弱くても力になりたい、ウタハさんのその言葉に僕は力強くうなずく。
「力に…なりたいです!!」
そして力強く、僕は宣言した。ウタハさんに迷いなく伝えるため、そして自分自身の心に強く鼓舞するために。
「……ふふっ…うん、良い顔をするようになったな」
僕の顔を見て、安心するような顔をするウタハさん。
僕もウタハさんに話を聞いてもらえたおかげで心のモヤが取れたような気がした。
ウタハさんに話を聞いてもらえなかったら、僕は一生ウジウジと落ちこんだままだっただろう。
「励ましてくれてありがとうございます…!ただ…」
わざわざ僕のために時間を作って話を聞いてくれたのだ。そのことに凄く感謝したい。したいのだが…
「その…どうして話を聞いてくれたんですか…?一応、僕たち今日初めて会ったばかりなのに…」
僕は疑問を口からこぼす。
「…深い理由は無いさ。ただあんなに楽しそうに私たちの発明品を見てくれていた君が、たった1時間で元気が無くなっていたなんて心配するだろう?それに…」
「それに…?」
「私は姉弟というものはよくわからないが、君たちみたいな仲の良い姉弟だと遠慮なく色々なことを話せるんだと思う。だが逆に、姉弟だからこそ話しづらいこともあるのではないかと思ってね。さっきの君たちのように」
…確かにそうだ。あれだけ心配してくれているお姉ちゃんたちに、やっぱり僕は諦めたくないなんて話はしづらかったと思う。
つまりウタハさんは、僕とお姉ちゃんたちのことを察して話を聞いてくれたということなのだろう。
「…余計なお世話だったかな?」
「い、いえいえ全然!」
むしろ逆だ。ウタハさんが話を聞いてくれたから僕は元気を取り戻せたし、何とかしようと思えるようになった。だから感謝してもしきれないくらいなのだ。
「ウタハさんが本当に僕のために話を聞いてくれて、とても嬉しかったんです。ですから……
──ありがとうございます!ウタハさんっ!!」
「………」
心からの感謝をウタハ先輩に伝える。久しぶりに心の底から笑えた気分だ。
そんな僕を見たウタハさんは軽く目を見開いたような表情をする。そして朗らかで優しい表情になって左手を僕の頭に乗せてきた。
「わっ……ウタハさん…?」
「……ふふっ、モモイとミドリが君を溺愛する理由が、何となく分かった気がするよ」
そのまま優しく、我が子を見つめる親のような表情で僕の頭を撫でるウタハさん。お姉ちゃんたちとは違う、少し大きくて柔らかな優しい手。撫でられる僕の心は、荒波一つない海のように穏やかになっていく。
そしてひとしきり撫でた後、僕の頭から手を離した。つい「あ…」という声が漏れ出てしまう。
…いや、ウタハさんの手に恋しくなっている場合ではない。諦めないと決めた以上、何か役に立てることを探さなければ。
「……今日はありがとうございましたウタハさん」
まずは気を引き締めて、ベンチから立つ。そして持っていた缶コーラを一気に飲み干した。口に伝わる高炭酸の刺激が、僕の心をより一層引き締める。
「…ぷはぁ!おかげでまた覚悟が決まりました…!もう一回、何かできないか探しゲェップ…」
「ああ、ほら…コーラの一気飲みなんかするから…」
……いけないけない、ついゲップが出てしまった。少々汚くて申し訳ない。やはり炭酸の一気飲みは行儀が悪いな…
「…こほん。改めて、また覚悟が決まりました…!何か出来ないか探してきます!」
こうして僕は、新たな希望を胸に走り出す。例え弱くたって、自分にも力になれることがあると信じて。
そのまま僕は出口に向かって…
「まあ待つんだ。そんなに生き急ぐこともないだろう」
走り出そうとする前にウタハさんに腕を掴まれてしまう。
「え…?でも…」
「勢いよく走りだそうとするのは構わないが、あてはあるのかい?あるのなら問題は無い。だが無いのであれば作戦実行までそこまで時間もない中、すぐにやることを見つけられるのかな?」
「うっ…」
痛いところを突かれた。確かにそうだ、作戦実行は夜だとはいえ時間は既に夕方、もうそこまで時間は無い。
勢いのまま走り出そうとしたが、冷静に考えるとこのまま行けば結局あてもなくさまよって何もできずに終わる未来になってしまう。
「でも…一体どうすれば…」
「大丈夫、私に考えがある」
そう言うとウタハさんは立ち上がった。その表情は随分と得意げだ。
「でも…これ以上迷惑をかけるわけには…」
「はいストップ」
そう言うとウタハさんは顔を近づけて人差し指を僕の唇に押し付けた。
──いや近い近い近い顔が良い顔が良い…
やっぱりウタハさんは凄い美人だと思う。エンジニア業をやっていなくてもモデルで人気をとることも夢ではないのではなかろうか。
近づけられた顔にドキッとしてしまうが、何とか平静を保つ努力をする。
「私も君のためになりたいと思っているんだ。そんなに罪悪感を感じないでくれ」
「わ…分かりました……」
僕の返事に近づけた顔を離す。危ないところだったと高鳴る心臓を抑え、ウタハさんの考えを聞こうと思う。
「でも、一体何を…?」
「ふふふ…そうだね、とりあえず場所を移動しようか」
場所を移動…?一体どこに行くのだろうか…
「えっと…どこに…?」
「そうだね、とりあえず…
──1時間前の約束を果たすとしようか、アオトくん……いや、アオト」
―――――――――――――――――――――――
僕とウタハさんは、エンジニア部の別室に向かって移動していた。周りには誰もいなく、カツカツという2人分の足音が響き渡っている。
「その、ウタハさん…確かに楽しみにしてはいたんですけど……今は別にそんな気分ではないというか……本当に今なんですか…?」
1時間前の約束。ウタハさんと発明品見学をしていた途中で、ヴェリタスに行くことが決まったが故に見れなかった発明品。
僕の好きなフライトシューティングゲーム、『エースコンバート』シリーズ。それを参考にしてウタハさんが開発したものを、今このタイミングで見せてくれるという。
しかし、本当に今なのかという疑問があった。確かに凄く楽しみにしていた発明品ではあるが、作戦実行が間近に迫っている中、のんきに見学などしている場合ではないのではと思ったからだ。
「ああ、問題ない。むしろ今このタイミングが
「……?」
どういうことかいまいちピンと来ずに歩いていると、「ここだ」という声と同時にとある扉の前で止まった。
「さあ、入ってくれ」
「……はい」
ウタハさんに催促されて、僕は扉の中に入る。
入ると最初に思う、部屋の暗さ。しかし、半開きになった扉から漏れるわずかな光が、その部屋の特長を少しだけ映してくれた。
まず感じたのが、部屋の広さだ。体育館までとはいかなくとも、大会議室以上の大きさはあるのではないかと感じる奥行。その広い部屋の真ん中に、作業台と思われるこれまた大きな台座が鎮座していた。その台座の上に、なにやら大きめの物体が乗っている。
天井の広さもこれまたびっくりだ。2メートルの人間がジャンプしても全く余裕だろうと思われるこの天井。4メートル以上はあるのではないだろうか。この広い天井が、この部屋の広さをさらに助長させている。
「…随分広い部屋ですね?」
「ああ、作っていたものが結構大きかったからね」
そう言うとウタハさんは部屋の中のとあるスイッチがあるところまで移動した。
「さあ、待たせたね。これが君に見せたかったものだよ」
パチンとスイッチを押した音が聞こえ、部屋の電気が明るく照らし始める。
そして露になる部屋の中身。その中央の台座に鎮座している物体も光によって姿を現した。
それは灰色に彩られた、鋼鉄の物体。
その姿を見た僕の一言は、まさに驚きの声だった。
「こ……これって…!?」
やっぱりウタハ先輩いいよね…?
凄い良いよね…?