今回は急ピッチで書いた結果、色々と話を詰め込んだ感じになっちゃいました…
そして視点が二転三転しています…もしかしたら読みづらいかもしれませんがご了承ください…
いつかの話と同じく、筆者は工学系の知識は無いのでそういう系の話はノリと勢いとフィーリングで書いてます(2回目)
「こ……これって…!?」
ウタハさんに案内されたエンジニア部の別室。大きな部屋の中心にある大きな台座、そこに鎮座している物体、それに僕は興奮を抑えきれない。
戦闘機を操縦し、数多の敵を殲滅しながらミッションを進め、エースの称号を胸に戦い続けるフライトシューティングゲーム、『エースコンバート』シリーズ。
今僕の目の前にある機体は、その『エースコンバート』シリーズでも最終盤に解放できる、ファンの中でも一二を争うレベルと言っても過言ではない人気を誇る機体だった。
登場する戦闘機は基本的には丸っこさを感じることが多いものだが、この機体に関してはその丸っこさはあまり感じられず、平べったさを感じる。戦闘機をSUV車と例えるなら、この機体はスポーツカーのようなデザインと言ったところか。
エンジン開閉部分も、一般的な戦闘機は丸い形をしているが、この機体は四角い形をしているところが特徴的だ。
全体的に角ばったようなデザインをしており、どこか先進的で近未来的な雰囲気を醸し出しているこの機体は、他の戦闘機と比べても一段階上の性能をしていると言われている。
「こんなもの実現できるわけないだろ!」と評された「架空機」と呼ばれている機体を除くと、作中では最強と呼ばれているこの機体。
『エースコンバート4』『エースコンバート7』では主人公を象徴する機体として描かれたこの機体の名前は…
「『F-22』じゃないですか!!」
『エースコンバート』シリーズの最強機体、『F-22 ラプター』が鎮座していた。
「すごい…!ここまでリアルに再現されているなんて…!!」
僕はラプターの近くまで小走りで近づいてはまじまじと色々な角度で観察をした。ゲームであれほど見ていた機体が、小型化されているとはいえ確かにそこにいるのだ。
「戦闘機型ラジコンジェット、六分の一スケール『F-22 ラプター』。エースコンバートシリーズにおいて最強格と言われている機体だね」
「六分の一スケール……えっ、六分の一でこの大きさなんですか?」
僕の身長は140㎝にギリギリ満たないくらいだったはず。そしてこのラプターは見た感じ僕の身長の2倍以上あるのではないか。
「全長約3m、幅約2mといったところかな?」
「でっか…」
これほど小さくしても人間より大きいサイズ。これが実寸大だとどれほどの大きさになるのだろうか…
「そしてラジコンジェットって………動くんですか、これ」
僕の問いに「ああ」と答えたウタハさんは部屋の隅に置いてあったホワイトボードを持ってきて説明をしてくれた。
「全長約3m、全幅約2m、全高約0.8m、ラジコンジェットというよりかは小型無人偵察機と言われた方が納得するサイズ感かもしれないな」
ホワイトボードにサイズを書きながらウタハさんは説明を続ける。
「そして肝心のエンジンについてだが…私たちの開発した最新式の小型エンジンを採用している」
「エンジニア部が開発した…最新式…?」
自分たちの力でエンジンを開発したというのはこれまた凄いことだ。正直、ファンネルやスーパーノヴァを開発していた手前、大して驚かないものだが。
「そうだな、アオトにも分かりやすく伝えるのなら……このエンジンを積んだこの機体の最高時速はおよそ1000kmだ」
「せっ…!?」
最高時速1000km、それは音速にかなり近い速度のはずでは…?
僕が普段乗っている電車を優に超える速度である。
「もちろん、速度に注視しすぎたわけではない。旋回性能も可能な限り上げてある」
「小回りも利くぞ」とウタハさんは楽し気に語っていく。
「最大航続可能時間はおよそ2時間。これは加速の頻度によって変わってくるから注意するように」
「……こんな凄まじい性能しておきながら2時間も飛べるんですか…?」
僕はこういう機械について詳しいわけではないが、この程度の大きさの機体が時速1000kmでかっ飛ばせてかつ2時間も飛び続けられるというのは破格の性能なのではないだろうか。
「そして武装についてだが…」
「………はっ?武装??」
思わず素っ頓狂な声が出る。ただでさえ驚くばかりの性能をしているこの機体にさらに武装が追加されるのか。
「そう、武装だ。まずは機銃…とは言っても口径は5.56mmのライフル弾を採用しているがね。これが100発搭載されている」
5.56mm…ウタハさん曰くこれはアサルトライフルと同じ口径なのだそうだ。確かに機体の大きさを考えたら大口径の弾薬は搭載できないだろう。
「そしてメインとなるのが…この小型ミサイルだ」
そう言うとウタハさんは何かを操作して『F-22』のエアインテークの側面にある部分がパカッと開き、中から小さいミサイルが現れた。
「ミ、ミサイルまで!?」
機銃搭載だけでも十分だと思っていたところにミサイルまで搭載しているという欲張りセット。しかもしっかりとミサイルも小型化して運用しているという徹底ぶり。大きさは大体テレビリモコンくらいだろうか。まさに脱帽である。
「威力は控えめだが…戦闘ヘリを堕とすことや主力戦車に大きな損傷を与えることは容易に出来る」
「ちゃんと対地空ミサイルなんですね…」
エースコンバートの通常兵装は地上の敵と空中の敵、両方をロックオンできるようになっている。ウタハさんの説明を聞くに、そこもちゃんと再現されているのだろう。
そしてまた小型化されている割には高い威力だ。これを人に撃ったら簡単にノックアウト出来るだろう。
「そしてこのミサイルが両部ウェポンベイに2発、そして腹部にあるウェポンベイに4発、合計6発搭載されている」
「6発……流石にゲームみたいに百何発というのは…」
「流石に無理だった」
まあ、ですよね。
あれはゲームだからこそ許されている搭載量だ。現実的にはこれくらいが普通だろう。そもそもこの機体の大きさで6発搭載できていること自体が凄いことだと思うのだが。
「本当だったら特殊兵装とか色々開発してみたかったのだが…まあ、時間が足りなくてね。ゲームで言う通常兵装が6発という結果になってしまった」
「いや、6発でも十分凄いですって…」
特殊兵装にまで手を付けたらそれはそれは大変なことになりそうだ。8発同時ロックオン可能の対空ミサイルとか、12発同時ロックオン可能のミサイルとか、レーザービームとか、レールガンとか、燃料帰化爆弾とか……ラジコンジェットが戦略兵器ばりの兵器になってしまいそうである。
………エンジニア部なら不可能だと思えないところが恐ろしいところだが。
「……でも、これどうやって操縦するんですか?ここまで凄まじい機体だと扱うのも難しそう…」
そう、懸念点はそこだ。
最高時速1000kmという圧倒的な速度性能。小回りの利く旋回力。そして人どころかあらゆる兵器を制圧することが出来るであろう高火力武装。
こんなハイスペックの塊のような機体を操作するのは難しいのではないか。
「ふふふふふふ……」
しかしウタハさんは不敵に笑い始めた。まるで僕の発言を待ってましたと言わんばかりに。
「なぜ私が『エースコンバート』シリーズを参考に作ったとわざわざ話題に出したと思う?」
「えっ?それって…」
僕に興味を持たせるためではなかったのか。そう僕が言う前に、ウタハさんは懐から物を取り出して僕に渡した。
「これって……『プライステーション5』のコントローラーじゃないですか…!」
『プライステーション5』。世間では大人気のゲーム機『プライステーション』シリーズの最新シリーズであり、『エースコンバート7』が遊べるハードでもある。
でもこのコントローラーを渡してきたということはつまり…
「操作方法、操作感度、機体の動き、全てを『エースコンバート』シリーズと同じに再現している」
「……つまり、いつも遊んでいる感じで操作をするだけでこの機体は動くと…?」
「そういうことだ」
「……………ワァオ」
練度の差はあるかもしれないが、『エースコンバート』シリーズで遊んだことのある人ならば誰でも操作できるということだ。慣れ親しんだ操作で操縦できるというのはあまりにも有難い。
「そして極めつけは、これだな」
ウタハさんはさらにもう一つ、とある物を渡してきた。それなりの大きさのある、ゴーグルのような物だ。
「これは……『VRゴーグル』…?」
「そう、これでコックピットからの眺めを360度見ながら操縦することが出来る。これで主観視点は完璧だろう?」
ゲームでは基本的に3つの主観視点で遊べる。このゴーグルを付けることでコックピット視点を再現したということだ。
つまり、コントローラーとゴーグルを合わせて完璧にゲームの操縦を再現したということになる。
これならば、僕にも…
「…さて、アオト」
ウタハさんがこちらを見て声をかける。
「ここには君が望んでいる翼がある」
翼…この空を自由に飛べる翼。ウタハさんは、これを僕に授けるために見せてくれたのだろう。
「…いいんですか?これを僕に…」
「ああ、今の君には必要な力だろう?」
お姉ちゃんたちの力になりたい。でも、僕には力が無い。
悔しくて、涙も流してしまった僕だけど…でも、僕にも役に立てそうな力をウタハさんは示してくれた。
「…想いだけでも、力だけでもってやつですね」
「まあ、そういうことかな」
これがあれば、想いはある僕に力があれば、きっと何かできるはず。
「…君が出るタイミングは、おそらく最終盤だろう。最後にそびえたつ可能性のある大きな壁を、確実に乗り越えるために。そんな重要な場面での出撃になるだろうが…それでも君はこの翼を望むかい?」
…望むところだ。重要な場面とか、そうじゃないとか関係ない。
『鏡』を手に入れて、『G.Bible』を見るために。
部活を廃部にしないために。
そしてゲーム開発部のみんなが、笑って活動している未来を掴むために。
だから僕は…
「使います……使わせてください、この翼を…!!」
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モモイside──
《イヤッッホオオオオオオオオオオオウッッ!!!!!!!》
片耳イヤホンから聞こえる歓喜の絶叫が耳に響いてくる。
先ほど頭上を通り過ぎた物体、そこから生み出された突風に何とか耐えながら後ろを見る。そこには割られた巨大なビルの窓と、何かが飛んでいく後ろ姿が見えた。
割られた窓から感じる風が、汗ばんだ体に当たって心地が良い。
「な…何が起きたの一体…?」
近くにいたミドリが起き上がりながら声をかけてきた。先ほどのジェット音を近くで浴びたせいで片耳が遠く、ミドリの声ですら小さく聞こえる。
味方パーティーの様子は…問題なさそうだった。みんな起き上がっている。
ユウカたちはどうだろうと思って後ろを見たら、何だか黒煙のようなものが舞っていた。
その黒煙が晴れると、中から倒れているアカネ先輩が現れた。意識はギリギリあるようだが、完全にノックアウト状態になっている。
「~!~!」
「…。…。」
何と言っているのかは全く聞き取れないが、戦力は一名減らせたとみていいだろう。
「分からない…けど何かが飛んできたのは確かで…」
《いいねぇ…!いいねぇ…!!最ッ高だねぇ!!!》
さっきから通信で随分とハイテンションになっているこの人物。おそらくその人物が例の物体を操っているのだろう。
そもそもあの物体は何なのか。こちらに向かって旋回してきている……ってもしかしてまたこちらに突っ込む気じゃ…!
「みんな、端に隠れよう!そしてあの飛んでいる物体の道を開ける!」
私がそう呼び掛けて、ユウカたちから隠れるよう端に隠れた。これにより、障害物のなくなった通り道が生まれる。
そして、旋回してきた物体が再びこちらに突っ込んできた。
《ヒャッッホオオウッ!!最高だぜぇぇ!!》
歓喜の叫び声をあげて再び突っ込んでくる物体。片耳は塞いだので爆音は小さくなっているが、それでもその轟音は腹にまで響いてくる。
そしてその物体が通り過ぎるとき、私はその正体をみることができた。間違いない、あれは戦闘機だ。しかもあの形状なら私でも知っている。確か『F-22』だったはず。アオトの好きな機体だ。
戦闘機が通り過ぎた後、端からユウカたちの様子を見て見ると、どうやらユウカたちも端の方に隠れたらしい。
「あの…モモイ…ミドリ…」
「うん?」
すると横からアリスが声をかけてきた。それも非常に困惑したような顔と声で。
「通信から流れてくる声…これって…」
アリスの言いたいこと、それは何となくわかる。私も、あの声について言及しようと思っていた所だ。
そもそも流れてくる声はいったい何者なのかという話なのだが、私からすれば簡単すぎる問いだ。男の声というだけで候補が絞れるし、かれこれ10年は一緒に居たのだ、間違うはずがない。
「…うん、そうだね…アオトだねこの声は」
『サイバーブルー』とか名乗っているけど、あれは間違いなくアオトだ。
そもそも私たちのこと『シスターズ』って呼んでたし。なんだよ『シスターズ』って、初めて聞いたんだけどアオトの口からそんな言葉。
「えっと……その…テンションが…なんだか…」
今までアリスを見てきた中で一二を争うほど困惑しているように見えた。あたふたと鳩のように首を忙しなく動かしている。
「……お姉ちゃん、これって…」
「うん、間違いない…」
私はミドリと顔を合わせる。そう、私とミドリは知っている。これはアオトの持つもう一つの顔、もう一つの姿。
ここ最近のアオトとはかけ離れたその姿の名は…
「「アオトの…『テンアゲモード』……!」」
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ユウカside──
「な、なによ…何が起きているのよ……!」
状況が理解できない…いや、したくなかった。
あと少し、あと少しでゲーム開発部の足止めが完了しようとしていたタイミングだった。
あの子たちが突破するための手段を潰し、アリスちゃんの巨大武器を撃たせないよう牽制して拮抗状態を作り出し、時間をかけさせてこちら側に有利な状況を作っていたのに…
それを、あの謎の飛行物体が全て壊していった。
後方の窓から突っ込んできた飛行物体。小型化されてはいるが、あの形は戦闘機だろう。
戦闘機が突っ込んでくる際、私は回避することが出来たが、あの戦闘機から発射されたであろうミサイルをアカネがもろに食らってしまった。
意識はギリギリ残っているが、とても戦線に復帰できる状態ではない。今は部屋の後ろの端に寄せているから巻き込まれることはないはずだ。
戦闘ロボも数はいれど戦闘能力自体は高くないので、アカネ以上の信用度が無い。
状況は完全に不利になっていた。
《何が起きたの!?一体どういうこと!?》
《…確認できました、小型の戦闘機です!小型の戦闘機がビルに突っ込んできました!!》
《突っ込んできたぁ!?何で突撃してくるまで気付けなかったのよ!レーダーはどうしたの!!》
《反応しなかったんですよレーダーに!これっぽっちも!!》
《どうしてよ!まさかハッキングされていたの!?》
《いいえ、ミレニアムの対空レーダーがハッキングされていたような痕跡は何も…》
《じゃあどうして反応が無かったのよ!!》
《分かりませんよ!!》
オペレーターの皆が大混乱している。しかし無理もないだろう。いきなり戦闘機がビルに突っ込んできたら誰だって混乱する。
それにしてもあれを操縦しているのはどこのバカだ。エンジニア部の誰かだろうとは思うが。
大体、いくらこのビルが窓から窓へ通り抜け出来る構造になっているからといってこんな狂ったような行動に出るだろうか。この空間は確かに少し広めだが、明らかに幅が2mを超えているあの戦闘機が通り抜けするには狭すぎはしないだろうか。しかもあの速さで。
こんなの…こんなの…
「こんなの…実寸大の戦闘機がトンネルを潜るようなものじゃない…!!」
そう考えると異常な操縦能力だ。それでいてバカである。そう、大馬鹿者だ。
《とにかく、状況整理を急いで!!》
《ダブルオーは!?コールサイン『ダブルオー』はいつ来るの!?》
《そうです、こちらの完全状況不利です!………責任?戦闘機が突っ込んでくるなんて、誰が予想できるんです!?》
オペレーターの混乱する声を耳にしながら、私はこれからの作戦を考える。
まず、あの戦闘機が出たり入ったりしているのはおそらく私に狙いを定めるため。アカネを一撃で吹っ飛ばしたあのミサイルはまだ残っていると仮定した方が良い。
そして今、私とあの戦闘機は千日手のような状況になっている。
あの戦闘機が私のいる側の窓から入ってくる場合、私が隠れている場所は戦闘機から丸見えだ。故にこのままだと狙われてしまう。そのため戦闘機が私たち側の窓から突っ込んでくる前に私は身を隠せる場所に移動しなくてはならない。
しかし、次に隠れる場所は私たち側の窓から入ってくる場合は戦闘機から見えないが、向こうの窓から突っ込んでくる際はギリギリ狙われてしまうような場所になっている。故に向こうの窓から突っ込んでくる前に先ほどの場所にまた移動しなくてはならない。
つまりは二つの場所を戦闘機が出たり入ったりするたびに私はシャトルランをしていることになる。これは疲れる。
ゲーム開発部の状況。あの子たちはあの戦闘機が出たり入ったりしている影響か出ように出られない状況だ。もしかしたらタイミングを伺っているかもしれないが、難しいだろう。
そして今、ネル先輩がこちらに向かってきているという情報が入っている。つまりこのまま千日手を繰り返していれば、ネル先輩が合流してあの戦闘機を何とか出来る可能性が一気に高くなる。
だから作戦としては、私がひたすらシャトルランに耐えてネル先輩の合流を待つ。まだ時間が掛かるらしいが、それでもこちらのほうが状況打破出来る確率はかなり高い。
計算通り、完璧~(息切れ)
「ハァッ…ハアッ…ハアッ…」
かれこれ何往復しただろうか。再突入までの時間がそれほど長くないので、インターバルが非常に短いシャトルランだ。
思考が中々まとまらなくなってくるし、「なんでこんなことやっているんだろう」という考えが頭に湧いてくる。ましてやどうしてこんなシャトルランをしないと身を隠せないような設計にしたんだと文句を言いたくなってくる始末。
今この状況でゲーム開発部に動かれてしまったら、ハッキリ言って対処できる自信がない。もしかしてこの状況を狙っていた…?
しかし、動く様子は見せない。なら結構、このまま持久戦を続けさせてもらおう。
「…ッ!来たッ!」
向こうの窓から戦闘機が突っ込んでいき、通り過ぎる。轟音と突風を身に受けながらも、なんとか体を動かし、何度目かの移動を開始する。
念のため、後ろを確認しながら戦闘機の動きも注意して──
「………は?」
眼の前の光景が、よくわからなかった。故に、私の足は止まってしまう。このまま走り抜けた方が良いはずなのに、体は反応しなかった。
私が改めて戦闘機を見た時、既にその戦闘機はこのビルに対して平行に、地面に対して垂直になるような体勢をとっていた。
そのまま、バック宙をするように背面になりながら機体の正面がこちらを向く。ゆっくりと見えてしまうのは、きっと私が終わりを察してしまっているから。
「何よ…その離れ業──」
体に疲労が残っていなければ、頭の中がクリアになっていれば、きっとすぐに回避行動をとれていただろう。しかし、シャトルランをさせられていたこの体はイレギュラーに対応できるほどのキャパを失っていたのだ。
そのまま私は成すすべなく、放たれたミサイルの爆炎に飲み込まれながら意識を失った。
―――――――――――――――――――――――
モモイside──
《ごめんなさい、ユウカさん…》
機体を一回転させ、ユウカにミサイルを命中させたアオトは、静かにユウカに謝罪の言葉を呟いた。
「“……クルビット機動だ…初めて見た…”」
後ろで先生がボソッと呟く。あれはそんなに珍しい機動なのか。確かに見たことのない機動だったが。
「…ッ!こうしちゃいられない!早く行かないと!」
私は静寂が訪れたこの部屋の奥に進もうと、みんなに促す。気が付けば、戦闘ロボさえ全滅していた。
みんなを引き連れてユウカの近くまで進む。
「うっ…ううっ…」
ガッツリ負傷して動けないユウカの姿を見た時、かなり強めの罪悪感があるが仕方のないこと。部の存続のためには必要な戦いだったのだから。
「…ごめんね、ユウカ」
一言謝罪の言葉を入れて、窓の外を見る。そこには勝利の宴をあげるかのように、『F-22』が空を舞っていた。美しく舞う姿はまるで天使が踊っているようだ。
「ありがとう、アオ……いや、サイバーブルー。助かっちゃった」
《気にするな》
私のお礼に、淡々とした返事が返ってくる。
正直、アオトに助けられるとは思っていなかった。アオトの身が危険だから遠ざけた戦いだったけど、自分の身を使わずに戦う方法があったなんて驚きだ。
《おつかれサイバーブルー。まだセミナーの方は混乱しているから今のうちに帰投して》
すると、ハレの声がイヤホンから聞こえてきた。向こうは向こうでやりとりをしていたのだろうか。
《了解、『サイバーブルー』ミッションコンプリート、RTB!》
そう言うと機体はビルから遠ざかるように旋回し、戻るべき場所へと戻っていった。先ほどまで大きく映っていた機体が、豆粒ほどまで小さくなっていく。
私は感謝の気持ちを込めて、遠ざかっていく機体に敬礼のポーズをした。
「…よし、差押品保管所はあと少し!走るよみんな!」
時間はそこまで残されていない。早く『鏡』を回収して撤退しよう。
私たちは目的地である差押品保管所まで走り始めた。
「……モモイ、ミドリ…」
「…?」
「どうしたのアリスちゃん?」
目的地に向かっている最中、アリスは私とミドリに声をかけてきた。
何だか困惑をまだ消化できていないような表情をしている。
「その…アオトの『テンアゲモード』って何なのでしょうか…」
「「あー…」」
そういえば説明をしていなかった。アオトが見せることのあるモードのことを。
しかしどう説明したら良いものか。説明に少し頭を悩ませているとミドリが先に口を開いた。
「えーっと…お姉ちゃんってゲームしている時、うるさくなる時があるでしょ?」
「ちょっ、ミドリ!?」
唐突にミドリは私のことを刺してきた。うるさいとはなんだうるさいとは。私はゲームをしていると楽しくなってテンションが上がっちゃうんだから仕方がないだろう。
「それは…はい…」
「そこは否定してほしかったかなぁ…」
アリスにすらうるさいと思われていたのか。私は走りながらも項垂れた。
「でしょ?アオトのあれはね、それの酷いバージョンって言えばいいかな?」
「……へっ?」
アリスが素っ頓狂な声をあげる。表情を見ても、「あのアオトが…?」みたいな表情をしている。
「そんな…想像できません…」
「私も見たことないかも…」
アリスだけでなく、ユズも驚いたような反応を見せた。
「でしょ?アオトって基本的に人前であの姿を見せることなんてないんだけどなぁ…」
そう、見せることがないのだ。今日であったばかりのアリスはともかく、1カ月の付き合いがあるユズですら見たことが無いのだから。
「うーん、でもどうして今日あの姿を見せたんだろう…」
「…今日とかアオトのテンションが上がるようなものばかりだったからじゃないかな?ファンネルとか見せてもらったんでしょ?」
「あー確かに?」
「多分アオトもファンネルとか見せてもらった時に『当たれえええ!』とか、『行けよファングゥ!』とか言ったんじゃないかな」
「うわー、言ってそう…」
「うーん?」
ミドリの言葉に私は共感するが、アリスは全然納得できていないようだ。どちらかと言えば、飲み込めていないのかもしれない。
「その…ミドリ…」
「うん?」
「ミドリが言ってた、アオトはモモイの弟でもあるって…このことですか…?」
アリスのこの問い。エンジニア部にみんなで訪れた時にミドリがアリスに言った言葉だ。
「まあ…そうだね…うん…」
「……なんか釈然としないなぁ…」
アオトが私に似ている要素が『テンアゲモード』って、正直微妙な感じである。
私はモヤモヤしている感情を抱えながら、差押品保管所まで走っていった。
お願いします…ブルアカふぇすのチケット当たってください…!
お願いしますぅ…!