お待たせしました……待たせすぎましたか…?
予定があって少し遅れると言ったとはいえ、思いのほか筆が止まってしまいまして…
これからも予定は入っているので、12月中はこのペースの投稿になりそうです…ご了承くださいませ…m(_ _)m
それでは、気を取り直して第2部の開幕です!
第2部『鍵の名を冠するキミ』
お楽しみください!
P編 第12話 その日、僕は魔王…?に出会った
衝撃的な出会いというのは、案外多く起こるのかもしれない。つい先日も抱えたような思いを、また再び抱えながら僕は目の前の画面を見た。
【貴方は…何者ですか?】
突如として、電子音と共に流れ始めたこの文章。この画面を見ている僕に問いかけているかのような文だ。
今僕が手に持っている、モモイお姉ちゃんから預けられた『ゲームガールズアドバンスSP』。およそ1週間後に迫ったミレニアムプライズにゲームを出すため、ゲーム作りに集中したいからというモモイお姉ちゃんの意志により授かったもの。
そのゲーム機の中に保存されていた『G.Bible』。これを巡って一悶着二悶着あったのだが今は置いておいて。その『G.Bible』と一緒に入っていた謎のファイルである<Key>というファイル。このファイルが、今のこの状況を作り出している要因だった。
僕が興味本位で開いただけのファイル。そのファイルから問いかけるように放たれた【貴方は…何者ですか?】という文章。
まるで、意思を持っているかのような振る舞いであった。
「…あ……え…?」
僕はその問いかけに、とりあえず答えようと口を開く。しかし言葉を考えようとしても、適切な言葉が頭に思い浮かばない。頭の中がズンと重くなるような感覚があり、思考が上手くまとまらないでいた。
何とか開こうとする口は、まるで錆びついたドアを開けるように重く、唇の隙間から洩れるような音を出すので精一杯だった。
【……言葉が通じていないのですか?】
僕がこの状況の適応に悪戦苦闘しているところで、<Key>からまた新たな一言。まるでいつまで経っても応じない僕を不審に思う反応だ。
……やっぱり意思を持っている?
僕はその疑問を抱えながら、自分に指をさす。
「あ……えっと……僕のこと…?」
【…?貴方以外に誰がいるのです?】
<Key>は指をさした僕に反応するように答えた。さも当前のように、違和感なく。
…向こう側からも僕のことが見えているのか?
僕の顔を認識していて、僕の問いかけにも反応している。人との会話と何ら遜色のない状況だ。
【もう一度問います。貴方は何者ですか?】
僕がこの状況を理解しようと必死に頭を動かしている中でも、<Key>は容赦なく僕に問いかけてくる。そこまで僕のことを知りたいのか。<Key>が一体なにを考えているのかも分からず、僕は一層頭を悩ませる。
しかし僕としても、自分の情報を話さない理由は無い。僕という存在は、決して高貴な存在でもなく、男である以外の特出したものが無い、いたって普通の存在だ。意図は分からないが、自分の情報が<Key>にとって意味のあるものとも思えないし、話したところで問題が起こるとも思えない。ここは大人しく<Key>の問いに答えるのが吉だろう。
「えっと……僕はアオト、『才羽アオト』だよ」
【才羽……アオト……】
とりあえず僕の名前を<Key>に伝えてみる。
【……認証、『才羽アオト』。名前と風貌から、同姓の『才羽モモイ』と『才羽ミドリ』の血縁関係者と予想します】
「え、なんでお姉ちゃんたちのことを知って………うん、正解。僕は2人の弟だよ」
ただ名前を教えただけなのに、僕がお姉ちゃんたちの血縁者だということを言い当てたこの存在。今日初めて出会ったばかりであるというのに、凄まじく正確な予想だと感服してしまう。なぜ2人のことを知っているのかは気になるところだが。
【『才羽アオト』は『才羽モモイ』と『才羽ミドリ』の弟…………認証しました。私の質問は以上です、失礼いたします】
<Key>は納得したのか、これ以上なにも無いと言わんばかりに話を切り上げた。そしてそのまま去るような言葉を残して……
「……!?いや、待って待って待って!!」
僕は去ろうとしていた<Key>を引き止めた。
【…なんでしょうか。私はもう用が無いのですが?】
「いや、用が無いとかそういう問題じゃないよ!一方的に話しかけてきて用が済んだらバイバイって随分と横暴な態度じゃないかなあ!?」
そう、話しかけてきたのは<Key>からだ。最初にファイルを開いたのは僕かもしれないが、最初にコンタクトを取ってきたのは間違いなく<Key>であり、頭にはてなマークをたくさん浮かべている僕を振り回しておいて、用が済んだらバイバイはいくらなんでも自分勝手である。
【……では、私に何か用があると?】
そう聞き返してくる<Key>。文字しか映っていないはずなのに、その文面から不服そうな、面倒くさそうな雰囲気を感じるのは僕の気のせいだろうか。
「うん、あるよ…!聞きたいことがいっぱいある!」
僕は目の前の横暴な存在にため息をつきながらも、今なによりも気になっている一つの疑問を口にした。
「君は誰?君の方こそ一体何者なの…?」
モモイお姉ちゃんの『ゲームガールズアドバンスGP』に入っていた謎のファイル<Key>。そのファイルが今、僕と会話をしているというこの状況に疑問を浮かべるのはごく自然なものであった。
明らかに自我のようなものを持つ謎の存在。彼の者は何者か、どういう存在なのか。
僕はゲーム機の握る手が強くなっていることを感じながら、<Key>に問いかけた。
【………】
沈黙。
僕の問いかけに、<Key>は応じない。聞こえなかったのか、話したくないのか、悩んでいるのか。
僕は瞬きをせず画面を見続ける。
【…………いいでしょう】
どうやら話してくれるようだ。どこか上から目線な話し方なことには目を瞑りながら僕は心の中でガッツポーズをする。
【貴方が知りたがっているのは私の個体名と、私の存在目的……これで間違いありませんね?】
存在目的……?
なにやら小難しそうな言葉が出てきてすぐに理解はできないが、とりあえず頷いて<Key>の言葉を待つ。
【了承しました。貴方の疑問にお答えしましょう】
そして<Key>は、その口…?から僕の疑問に答えた。
【私の個体名は<Key>】
【王女を助ける無名の司祭たちが残した修行者であり、王女が戴冠する玉座を継ぐ『鍵』<Key>です】
鍵…修行者…?
<Key>が語った、自分の名前と存在目的。
その文字から語られたのは、普段の日常を過ごしていたら聞くことのないような単語の羅列だった。
王女や修行者、司祭などという職業のような言葉。
まるで一つのおとぎ話のような話に、僕の握っていた手から力が抜けていく。身体に向けていた意識が、思考へと変わっていっているのだ。
そして頭の中で、今の話を繰り返し繰り返し反復させながら意味を飲み込む。
<Key>の話を理解するために。
つまりは…
つまりは……
つまりは………
「………………どういうことだってばよ?」
しかしぼくはあたまがわるかった!
僕は鼻から空気が抜ける音を出しながら首をかしげる。
【首をかしげている……理解できていないのですか?】
「はい……」
【……なぜ?】
分からないと嘆く僕に、なぜという言葉が返ってくる。僕が今の話を理解できないことを不思議に思っている言い方だ。
だが逆に聞きたい。なぜ今の話で理解できると思っていたのだろうか。
こちとら最近、年齢が2桁になったばかりの10歳だぞ。難しい勉強をしている高校生のお姉ちゃんたちとは違ってまだ算数でxとかyなんて出てきていないし、ユウカさんの大好きな因数分解なんて存在そのものが謎に包まれている。算数に限らず、怒りとか悲しみとかいう感情にまで使うことが出来る便利なものが因数分解だというのは知っているが。
理科だって、最近アルコールランプを触ったばかりだ。高校生の人たちのような化学式とか元素とか言うらしいアルファベットが並べられたものを見て、「すいへーりーべー」なんて意味の分からない呪文をお経のように唱え続けている人たちと一緒にしないでほしい。僕は呪文詠唱者よりもレベルが低い人間なのだ。数年後には僕も呪文を詠唱している人間になっているとは思うが。
とにかく、今の僕じゃ伝わるものも伝わらないのだ。もしかしたら僕よりレベルの高いお姉ちゃんたちなら伝わるとは思うのだが……いや、嘘を言った。多分、モモイお姉ちゃんには伝わらない。
「ええ……分からないよ今の話じゃ……そもそも何を指しているのか分からない単語ばかりだし……」
【………】
「王女とか、無名の司祭って誰のこと…?それに修行者ってなにさ、滝に打たれたりお経を唱えたりしているってこと…?」
【………】
「それに何というか、RPGの世界について話しているような感じがして現実感も湧かないし…分かったのは名前が<Key>だってことくらいだよ?後のことは雰囲気でも全く理解ができ………<Key>?」
僕の異議申し立てを浴びせていたら、いつの間にか<Key>が黙りこんでしまっていることに気付いた。
流石に言い過ぎただろうか。確かに言葉の意味は分からなかったとはいえ、別に文句を言う必要性は無かったのかもしれない。
今のところ<Key>は淡々と語るロボットのような存在にしか見えない。だがもしかしたら豊かな感性を持っていて、僕の言葉で酷く傷つかせてしまった可能性もある。
「あ、えっと…その…<Key>?ごめん…ちょっと言い過ぎ……」
【……はあ…】
「─たかも……って、え?ため息?」
た、ため息…?
画面に表示されている「はあ…」という文字。これだけで何を伝えたいのかは基本的に分からないはずなのだが、僕にはこれがため息だと感覚で理解できる。
つまり、呆れられた…?
【……情報取得のためデータベースに接続。個体名『才羽アオト』にも伝わる用語を検索しています】
「え……えっ?」
ため息をついたと思ったら、また淡々とロボットのような話し方に戻っている。まるであの一瞬見せた人間らしい反応が嘘のように。
そしてほんの数秒、たいして時間もかからずに検索を終えた<Key>は再び僕にその存在について教えてくれた。
【検索完了。才羽アオト、貴方にも分かるように一言でかつ端的に伝えましょう】
【私は貴方たちの好きなゲームというもの、それで言うところの…】
【世界を滅ぼす魔王というものです】
「魔王…」
魔王。ゲームやアニメ、ありとあらゆる創作作品において、悪の元凶として描かれることの多いもの。
大いなる力をその身に宿していることが殆どであり、時には世界を滅ぼそうとする者もいれば、世界を支配して自分のものにしたいと思う魔王も存在している。
そういうキャラは大抵、性格も傲慢で唯我独尊。自分以外はまるで価値が無いというような振る舞いをし、人のことはゴミだの、虫以下だの散々な評価を下すことも多い。そして物事が思い通りにいかなければ、わがままな子供のように怒り狂う。
まさに物語において絶対的な『悪』として描かれるのが魔王という存在。正義をかざす『光』の存在が勇者なのだとしたら、悪を振りまく『闇』の存在が魔王というものなのだ。
そんな悪の象徴である魔王を、私のことだと語る<Key>という存在。
そんな<Key>の話を聞いて僕は…
「へー、そうなんだ…」
少し笑いながら反応を示した。
【……?やはり理解できていない…?】
「え?いや、理解したよ?うん…」
そんな僕の反応に、どこか困惑を隠しきれていないような反応を見せる<Key>。まるで仕掛けたドッキリに大した反応をしてくれなかった時のような反応だ。
【おかしいですね…人間という生き物は恐怖の対象となるものと相対したとき、忌避する傾向にあると私のデータにあるのですが…】
「いやー、それはちょっと無理があるんじゃないかな?」
【…?なぜ…?】
「だって、こんなゲーム機に入っている君が魔王だなんて…全然信じられないもん」
そう、信じられないのだ。目の前の存在が魔王だなんて。
ただ淡々と物事を語るゲーム機の中にいる存在。たった何分か話しているだけだが、とても魔王という悪の存在であることを想像できるような人間…いや、AIだとは思えない。
【…私のことは恐怖の対象ではないと?】
「うん。全然怖くないよ?」
眼の前の存在に不思議だと思う感情はあれど、恐怖心はまるで湧かない。
【……不思議な人です、貴方は】
「それは…どういたしまして?」
どうやら<Key>からも僕のことが不思議な人だという認定を貰ってしまったようだ。
こうして交流してみると…AIという割には意外と人間らしいというか、良い意味で機械っぽさが無いと感じる。
【……まあいいでしょう。いずれ時が来れば、私の存在の真意も分かるはずです。その時が来るまで、もう貴方と関わることもないでしょうが。それでは才羽アオト、貴方の疑問には答えましたのでこれにて失礼いたします】
「いずれって…一体いつになるのさ……って待って待って!」
時が来れば、<Key>の存在する意味が分かる。そう話した<Key>はもう用が無いと言わんばかりに消えようとしていた。
【……もうよいでしょう?これ以上引き止められても困るのですが?】
「いや、まだ聞きたいことはあるのこっちには!」
無意識にAボタンを連打して<Key>を呼び止めた僕。なぜこうもすぐに帰りたがるのか。ゆっくりお茶でも飲みながら会話をする余裕くらいあったって良いじゃないか。
そう心に思いながらも、<Key>から語られたものに出てきた登場人物、その1人について尋ねた。
「王女!王女って誰なのさ!なんだか重要人物のようなニュアンスなのは伝わったけど!」
僕は画面に唾を付けながら問いかける。
<Key>の話した存在目的。ただ聞いただけではハッキリ言って意味が分からなかったが、それでも王女という存在が重要であるということは何とか伝わったのだ。
つまりその王女、王女というのは何者かが気になるのは当然のこと。
僕は画面に付いた唾を半袖の胸の部分で拭きつつ、<Key>の言葉を待つ。
【王女……それは貴方もよく知る彼女のことですが】
「……は?」
僕のよく知る……彼女……?
【『AL-1S』、貴方も知っているはずです。それでは】
─プツン…
「……切れた」
文字が表示されていた画面が、テレビの電源が落ちたかのようにプツンと切れた。忙しなく鳴っていた電子音もめっきりと鳴らなくなり、部屋に付けられているアナログ時計の音がハッキリと耳に入ってくる。
真っ暗になった画面には、口が開いた何とも言えないアホ面が反射しており、眼の前で起きた出来事を処理している僕とそのアホ面との睨めっこが行われていた。
「……っ!ちょっと<Key>!<Key>!?」
はっと我に返った僕は消えた<Key>に何度も呼びかけたが、反応は何もない。AボタンやYボタンなどBボタン以外のありとあらゆるボタンを押してみたがそれも結局意味はなく、静寂な時間がただ過ぎていくばかりであった。
僕は「はあ…」とため息を吐きながら枕に顔をうずめる。ぼふっと柔らかく受け止められた枕に、顔がどんどん沈んでいく。最近洗濯したばかりの枕カバーから感じる柔軟剤の香りが、僕の心を落ち着かせる。しかし、頭の方は混乱するばかりであった。
王女…王女とは一体何者か。その疑問を解消すべく問いかけた結果返ってきた答えは、『AL-1S』という謎のワードに、僕も知っている人物であるという情報だけであった。
僕の知っている人物と言えば、お姉ちゃんたちが所属しているゲーム開発部のみんな、最強技術集団エンジニア部の3人、最強ハッカー集団ヴェリタスの3人、ユウカさんとノアさん、そして僕が一方的に知っているC&Cの4人……
少なくとも、今挙げた人物に『王女』はいるであろうと予想を立てる。
<Key>は何らかの理由でモモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんのことを知っていた。おそらくは、モニター越しで僕たちのことを見ることが出来るのだろう。実際、僕との会話の時には、僕の動作に反応していたから間違いではないだろう。
そう考えると、C&Cの4人は候補から外れる。なぜならあの戦いのとき、モモイお姉ちゃんはゲーム機を部室に置いていったのだから。少なくとも、姿は見ていないはずだ。
となると他のエンジニア部かヴェリタスかセミナーかゲーム開発部か、考えられるのはその辺なのだが……まあ、そこは一旦置いておこう。
そしてもう1つ、『AL-1S』という謎の名称。えーえるわんえす…って読むのかな?
今まで生きてきた中でも、ロボットアニメ以外では聞いたことのない名前だ。『ZGMF-X10A』みたいな型式番号と言われた方が納得のいく名前である。
それに、あまりにも呼びづらい。そんな機械的な名前なら、僕だったら他の呼び方を考える。
『AL-1S』のこの文字を見た時、一瞬『1』という数字がアルファベットの『I』に見えた。形が似ているが故、仕方がないとは思うが、ハッキリ言って『1』より『I』の方がこの名前は呼びやすさがかなり変わってくる。
『1』 を『I』として見た時、名前は『AL-IS』となるのだ。こうなってくると色々な呼び方が想像できる。真ん中で区切って『あるいず』という呼び方でも良いし、区切らずに繋げて読むと『ありす』と呼ぶことも出来て……
ありす……アリス………
「アリス……?」
埋めていた枕からバッと顔を上げた。少し苦しくなった息を補給するように、少し大きく息を吸う。少しこもった部屋の空気が体に入り、息苦しさを和らげていく。
『AL-1S』という名前からつながった、『アリス』という名前。それは昨日知り合ったばかりのゲーム開発部新入部員であるアリスさんと名前が一緒だ。
これは、単なる偶然だろうか…?
そもそもアリスさんは出自が不明だ。モモイお姉ちゃんとミドリお姉ちゃんが廃墟にいたアリスさんを保護して、そのままゲーム開発部として一緒にいることしか僕は聞いていない。
僕は『王女』の話を聞いた時、『王女』である可能性が一番高いのはアリスさんなのではないかとは疑っていた。アリスさんと出会った時に聞いたモモイお姉ちゃんの話では、アリスさんは間違いなく普通ではない特別な存在であるというのは察したので、可能性があるとしたらアリスさんだろうと思ったのだ。
もしアリスさんが『王女』であるのなら、一体アリスさんは何者なのかという疑問ももちろん浮かぶのだが……
「でも…アリスさんが酷いことをする人とは思えないな……」
頭に浮かぶのはアリスさんの眩しいほどの笑顔、ゲーム開発部のみんなが大好きだという感情、まさに善性の塊と言っても良い存在がアリスさんなのだ。
そんなアリスさんが魔王と同じような存在なんて、昨日と今日でアリスさんと行動を共にした僕にはとても考えられないものだった。
「それに、<Key>か……」
そして、今日初めて出会った<Key>という存在。自らを魔王と語る謎のAI。
アリスさんとどのような関係があるのか、非常に気になるところだ。
そして何より、僕は<Key>という存在そのものにとても興味があった。<Key>は人間ではないのは確かだが、あの会話はまるで人と話しているような錯覚を覚えたのだ。
さらに、あの一瞬見せたため息のような態度。AIという割には、本当に人間らしいと感じたあの瞬間。
アリスさんのことも聞いてみたいが、何よりもっと話したい。機械だけれど機械じゃない、不思議な貴方と。
『【もう貴方と関わることもないでしょうが】』
僕に放ったその一言。今日が最後だと言わんばかりの接し方。
でも、僕は……
「……ふふっ」
今日はもう話しかけるつもりはない。でも明日になったらどうなるか、想像しただけでも笑いがこみあげてくる。
「……お腹、すいたな」
お腹から響く音に僕の思考は現実へと戻されていく。
食欲に逆らうのは愚の骨頂、空いた腹は満たさなければいけない。
僕は一度体を仰向けにしてから体を起こす。そしてベッドにゲーム機を置いてから立ちあがった。腕を天井に上げて体を伸ばし、今日感じた体の疲れを外へ逃がしていく。
そして僕はドアを開けて部屋の外へ。パチンと電気を消してからドアを閉める。ぶら下がっている『アオト』のドアプレートが揺れるのを尻目に、下の階に向かって歩き出す。
昨日と今日は色々あった。それこそ、数時間では語れない程に。
しかし怒涛の日々が過ぎ去った後は、たいてい静かな日常が流れるのが普通だろう。
だが、明日は何もない日になるかと言われたらそれは否だ。僕には明日、やりたいことがあるのだから。
明日はきっと愉快な一日になるだろう。そう感じた思いを胸に僕は軽い足取りで小走りに階段を下りていった。
…え?ブルアカふぇすのチケットはどうなったかって?
はははっ………落ちましたよ……orz