才羽家長男・末っ子10歳   作:Kyob

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お久しぶりです!

およそ1ヶ月ぶりの投稿、まことに申し訳ないです… 一体何回目の月単位の空きだよKyob君さあ…モチベ管理下手すぎないかい?

こんな性分の私ですので、もしかしたら今後も1ヶ月以上投稿が空くというパターンがちょくちょく出てくると思います。

そういう事態が起きたとしても、何とか1話投稿するというのを心がけて頑張っていきたいと思いますので、何卒よろしくいたしますm(_ _)m


それにしても、ここ1ヶ月で色々とありましたよね〜

私はその間、モチベーションとか色々と戻すのに苦労していましたが、ここ最近起きた出来事のおかげで一気に気力を戻すことが出来ました

……え?その出来事は何だって?




決まっているじゃあないですか…




ケイの実装…ですよ…



ハハハハッ!!素晴らしい気分だァ!!

踊りでもいっちょ踊り狂いたいようないい気分だァ!!


意地でも迎える、迎えてみせる…!

行くぞアロナ、封筒の貯蔵は十分か…!!







P編 第13話 君と話したくて…

 

 

 

 

 

「おはよー!<Key>!」

 

 

太陽がさんさんと照り付ける気持ちの良い朝。

 

小鳥の囀りをBGMに朝ごはんをコーンフレークでちゃちゃっと済ませた僕は早速<Key>に声をかけていた。

 

 

「…………<Key>?おーい、キー!!!」

 

 

だが声をかけても反応はまるでなし。ベッドに寝そべって大声で声をかけているせいか、反動のように足をバタバタとベッドに叩きつける。

 

 

「……おーい?」

 

 

だが何も反応が無い。いくら大声で声をかけようと、何度も繰り返し声をかけようと、<Key>が反応を返してくれる様子はまるで無かった。

 

僕の様子を傍から見たら、まるで何もない壁に向かって声を張り上げているのと同じだろう。ぶっちゃけ変人そのものだ。

 

だが、それは予想通り……反応が無いのは分かりきっていることである。

 

 

『【もう貴方と関わることもないでしょうが】』

 

 

昨日の<Key>の言葉、僕とはもう関わらないだろうという<Key>の対応。

 

僕とそのやり取りをしたが故、僕の呼びかけに応じない可能性は十分に考えられた。きっと、僕がこの先何度呼びかけをしても反応しないだろう。

 

僕が24時間呼びかけ続ければその限りではない…と思うが流石に無理だ。僕が先に限界が来る。

 

だから僕は別の案を考えなくてはならない。<Key>の意識を引くような、別の何かが。

 

それが何かと言われたら……言われたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………うん、分からん!分からないから当たって砕けろ精神で行こう!!

 

ミレニアムの理系集団のように理論や効率を考えて行動するのが良いのは分かるけど……時にはゴリ押しも悪くないよね!!

 

つまりはどういうことかって?色々な方法で片っ端からコンタクトをかけるってことだよ!

 

そうしよう、ゴリ押し!ゴリ押し最高!!

 

 

「そうと決まれば……」

 

 

僕はベッドから起き上がり、自室からリビングに向かう。目標はリビングに置いてあるテレビ……テレビゲームが置いてあるリビングのテレビだ。

 

<Key>…貴様にゲームというものを教えてやろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ていうか、ずっと思っていたんだけど……

 

<Key>って何か呼びづらくない?発音は凄く単純なはずなのに何か違和感があるんだよなぁ……

 

僕だけなのかな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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≪全機作戦行動開始!これよりグレースメリアを奪還する!≫

 

 

うーん、やっぱりこのミッションだよねぇ…

 

テレビ画面に映っている薄暗い風景に、その空を飛んでいる一機の戦闘機。

 

『エースコンバート6』。僕が初めて遊んだエースコンバートシリーズであり、エースコンバートというゲームが好きになった理由の作品である。

 

敵国の侵略で国を追われ、反撃のために友軍をかき集めて戦力を整え、愛する国を、首都を取り戻すためにたくさんの味方を率いて飛び立つストーリーだ。

 

ゲームハードが『Xfox360』以降のハードにしか対応していないせいか、シリーズの中でも遊んだことが無いユーザーが多い印象がある。しかし僕の家はゲーム好きばかりが住んでいる家、ちゃんと『Xfox360』が置いてあるのだ。全く素晴らしい。

 

え?360以降のシリーズは置いてないのかって?

 

それは……うん……すみません………

 

 

「やっぱり最初は基地奪還がマストだと思うんだよねぇ……<Key>もそう思わない?」

 

 

『エースコンバート6』の代表的なミッションである『グレースメリア解放戦』。

 

今までのストーリーを経て揃った仲間、逆転した戦況、そして手を伸ばせば届く首都奪還を成すために飛び立つ『エースコンバート6』で一番盛り上がるミッションだ。

 

盛り上がる要素は内容もそうだが、なによりBGMが良い!

 

最初は静かに始まって徐々に徐々に勢いを増していき最後に一気に盛り上がるあのBGMは僕の大のお気に入りだ。むしろBGMを聞くためにこのミッションをやっているまである。

 

そしてこのミッションは色々な細かいオペレーションをクリアしていくものであり、そのオペレーションが達成されればこちらに有利になる要素が追加されるのだが……基地奪還のオペレーションを達成すると、補給と武器換装が作戦空域内で出来るようになるという有難い要素が追加されるのだ。これは相当楽になる要素だと思っており、故に僕は基地奪還が最初にやるべきものだと思っている。

 

それに同意を求めて<Key>に問いかけてみたが……

 

 

……反応なし!うん、当たり前だ!!

 

 

<Key>からすれば何にも知らないゲームについて同意を求められたって知ったこっちゃないという反応になるだろう。そりゃあそうだ。

 

だが焦る必要はない。根気よく根気よくアプローチをかけていこう。

 

とりあえずこのミッションで遊ぼう!『F-22』に乗っていざ解放戦!天使とダンスだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うぅ……目に染みる……」

 

 

僕は今、台所にいる。

 

なんやかんやで『エースコンバート6』を数時間遊び、すっかりお昼の時間になった。朝ごはんはしっかり食べたとはいえ、時間が経てば腹が減るというもの。人間の基本的な機能だ。空腹に逆らうは愚の骨頂、空いた腹は満たさねばならぬ。

 

しかし何もないところからご飯というものは出てこない。ご飯屋さんに行ってお金を払えば出てくるかもしれないが、外食は結構お高いのだ。そして外食を控えるなら、自分で食材を調理してご飯を作り出すしかない。

 

ということで、クッキングタイムというわけだ。

 

僕は今、まな板で玉ねぎを切っている。右手は包丁、左手は猫の手、まさに料理の基本の手だ。その基本を忠実に守って安全性に注意してザクザクと切っていっているのだが……

 

 

「うううぅ……うわああああ!目が、目がああああ!!!」

 

 

目が開けていられないほどに染みる。僕はまな板に包丁を置いてしゃがんで目を押さえた。涙があふれて止まらず、目がしょぼしょぼして開けたくても辛いのだ。

 

 

「あああああ…染みるぅ……何でこんなに玉ねぎって染みるんだろう…どうしてか分かる<Key>?」

 

 

僕がそう問いかけても返事は返ってこない。何かしら質問すれば答えてくれるかもって1mmくらいは期待したけどダメだったようだ。

 

 

「……むー、質問に答えてくれたっていいじゃん…」

 

 

僕は唇を尖らせつつも、立ち上がって玉ねぎを切り続ける。途中何度も涙を流して手が止まったが、気合を入れて何とか全部切ることが出来た。

 

後はフライパンに適当に豚肉を入れて、玉ねぎと袋に入ったざく切りキャベツを炒めて、そこにうどん一袋を入れて、醤油をベースに調合した調味料を入れて炒めれば……

 

 

「焼うどん、完成!」

 

 

お皿に盛りつけられた焼うどん。火が入り柔らかくなったキャベツに、焦げ茶色の豚肉と玉ねぎ。そして焦がし醤油の香ばしい匂いが食欲を掻き立てる。

 

久方ぶりの料理だったが、中々おいしそうなものが出来たのではなかろうか。僕はこの焼うどんを自慢するように『ゲームガールズアドバンスSP』を焼うどんに近づけた。

 

 

「ふふふ…どうだい<Key>?美味しそうでしょ?」

 

 

画面を焼うどんに向けて満足するまで見せつけた後、リビングのテーブルに持っていく。

 

ゲーム機は画面が見えるようテーブルに立てかけて、手と手を合わせて食事前の挨拶を。

 

 

「いただきまーす!」

 

 

ビジュアルは良い、匂いも完璧。あとは味がどうか、そこが問題だ。

 

だが心配はしていない。何せこの焼うどんはちゃんとレシピ通りに作ったからだ。それもかの有名なレシピサイト、『クックキャット』を使ったのだから間違いないだろう。

 

箸を手に取った僕はウキウキな気持ちで焼うどんを口へと運び……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しょっっっっっっぱぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりのしょっぱさに口を押えた。

 

え、なんで?なんでこんなにしょっぱいのこの焼うどん!?僕レシピ通りに作ったよね、そうだよねぇ!?

 

急いで冷蔵庫からお水を持ってきてコップに入れて飲み干す。多少はマシにはなったが、まだ口の中には強めの塩味が残っていた。

 

 

「……嘘だ、こんなことって…」

 

 

僕が料理を失敗するなんて……

 

僕は慌ててスマホを取った。さっき見たレシピをもう一回調べるためだ。

 

ポチポチとさっき開いたサイトを開こうとするが、時間が掛かってしまう。こういう時に限って、入力ミスとか多発する物なのだ。

 

そして数分の時間をかけてレシピのサイトに戻ってこられた。もう一度、マジマジと作り方を眺める。

 

調理手順は…問題なし。

 

使った材料…問題なし。

 

調味料も…問題なし。

 

どこで間違えた…?味が濃くなるってことは調味料に問題が…?でも使った調味料も問題ないし、量も間違いなく入れたはず──

 

 

「……あっ」

 

 

『醤油 大さじ1』『めんつゆ(2倍濃縮) 小さじ1』……

 

この表記を見て、僕は体が強張る。

 

醤油はちゃんと大さじで入れた、それは間違いない。だがそれに続いて書いてあるめんつゆに使ったスプーンは確か……

 

 

「大さじ使っちゃった……」

 

 

そう、大さじを使ってしまっていた。醤油を大さじで入れた後、流れでそのままめんつゆに大さじを使っていたのだ。

 

しかもレシピに書いてあるめんつゆは2倍濃縮と書かれているが、僕の家にあるめんつゆは確か……

 

 

「4倍濃縮……」

 

 

僕は改めて目の前の皿を見る。

 

どうりで味が濃すぎるわけだ。ただでさえ味の濃い4倍濃縮のめんつゆを大さじ1で作ってしまったのだから。

 

一口食べて分かる、体調が悪くなりそうな味。それをこれ以上食べるのは正直気が引ける。ぶっちゃけ、食べていられない。今からでも違う料理を作ってしまおうか。

 

 

「…………」

 

 

だから僕は失敗してしまったこの焼うどんを──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ごちそうさまでした……」

 

 

僕は手を合わせて完食の挨拶をした。目の前には空っぽになった焼うどんの皿が置いてある。

 

 

「うぅ……もうこの焼うどんは食べたくない…」

 

 

僕は恨めしい視線をこのお皿に向ける。

 

結局この焼うどんは、お水をたくさん飲みつつゆっくりと30分近く使って食べきった。

 

ペットボトルに入っている2Lの水も、飲む前は満杯に入っていたのにすっかり半分にまで量を減らしており、いかにこの焼きうどんとの戦いが苛烈だったかが伺える。

 

おかげでかなりお腹いっぱいである。どちらかといえば焼うどんより水の方がお腹の中に入っていると思うが。

 

 

「はぁ…洗い物もしなきゃ…」

 

 

この後の洗い物を考えると気が沈むというものだ。結局、料理って作るのが面倒くさいというより、洗い物が面倒くさいという感情の方が強いような気がする。ましてや食べた料理が微妙だったのならなおさらだ。

 

やりたくないなぁ…洗い物……

 

僕はそう思いながら立てかけられている『ゲームガールズアドバンスSP』を見る。

 

相変わらず<Key>は無反応だ。僕がこの焼うどんと格闘している時も、<Key>はダンマリを決め込んでいたのだ。

 

流石に少し心に来そうだが、まだまだ足りないだけなのかもしれない。もっともっとアプローチをしていかなくては……

 

そして僕は足取り重くお皿を台所に持っていき、お湯につけておいたフライパンも一緒に洗い物を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「構えて構えて……今ッ!!」

 

 

こちらに突進攻撃をかまそうとする『リヨレウス』。僕はその攻撃が当たる寸前のタイミングで抜刀攻撃を仕掛けた。

 

するとその攻撃が突進攻撃と上手く重なるように入り、自分はノーダメージで相手には追加ダメージを与えることに成功。いわゆるカウンター攻撃というものである。

 

昼ごはんの後片付けを終え、僕は再びリビングでゲームをしていた。しかし朝やっていた『エースコンバート6』ではない。

 

かの有名なハンティングアクションゲーム、『モンスターハンティング』シリーズだ。そのシリーズの中でも特にアクション面が疾走感と爽快感で溢れていると評価されている人気タイトル『モンスターハンティングRise』だ。

 

僕がこのRiseでメイン武器にしているのは太刀であり、特殊納刀の抜刀攻撃で快感を得ている真っ最中である。

 

 

 

「やっぱりモンスターの動きに慣れるかどうかで精度が変わってくるよね~……<Key>はやっぱりこういう学習は得意なのかな?」

 

 

リヨレウスを狩りながら<Key>に問いかける。だがやはり反応はない。

 

かれこれ6時間以上ずっとアプローチをかけているが、中々反応を示してくれない。そろそろ反応してほしいという想いが強くなってきているが、ここで折れてしまったらきっと後悔するだろう。

 

<Key>も<Key>だ。ここまで反応しないのは流石に意地が強くないだろうか。

 

僕のプレイ風景が見えていないのか…?いや、ちゃんとファイルを開いた状態だからちゃんと見えているはずだ。

 

つまり本当に意地が強いだけ…?

 

だんだん我慢比べも疲れてきたところだが、とにかく頑張ろう。

 

 

「よーしこのまま攻撃を続ければ……あっ、納刀のタイミングミスった…攻撃痛ぁ!?」

 

 

考え事で少し注意力が散漫になってしまったせいか特殊納刀のタイミングがズレてしまった。突進をもろに食らってしまってHPゲージがごっそり減る。

 

 

「ああやばいやばい…そういえばこやつは強化個体だった…って気絶ゥ!?待って待って気絶はマズいって!!助けて<Key>!!」

 

 

コントローラーをガチャガチャしながら<Key>に助けを求める。<Key>に助けを求めたところで何の意味もないのは分かっているのだが、つい無意識に求めてしまった。

 

どうせ<Key>は反応しないだろうと、僕は少し諦めの心を抱きながら今のピンチを切り抜けようとして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピピピッ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電子音が聞こえた。

 

昨日の夜にずっと耳に入っていたあの電子音が。

 

 

「──ッ!!!」

 

 

僕はコントローラーを放り出して『ゲームガールズアドバンスSP』に手を取る。画面に映し出されていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【……何なんですか貴方は】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕が待ち望んだ<Key>の言葉だった。

 

 

「………ははっ、昨日ぶりだね?」

 

 

<Key>が発した文字を見て少し力が抜けた。身体の奥から息が漏れ出て、ちょっとした達成感に浸る。やっと、<Key>に会うことが出来た……

 

しかし、達成感に浸っているところに水を差すように爆発音が響く。何事かと思い爆発音のしたテレビを振り返ると…

 

 

【力尽きました】

 

 

「あっ……」

 

 

リヨレウスの火球ブレスを食らって力尽きているハンターの姿が映っていた。大ダメージを受けて気絶した後、何も操作をしなかったのだからそれは隙だらけだというもの。乙ってしまうのも当然というわけだ。

 

何とも言えない時間が、この空間に流れる。

 

 

「……場所、変えよっか」

 

 

特に理由は無いが、とりあえず場所を移そう。

 

ここで話すよりも、自室で話した方がリラックス出来るかもしれない。

 

ハンターがベースキャンプに運ばれるところで僕はテレビの電源を落とす。ベースキャンプにいれば基本ご安全だからね。

 

そのまま僕は『ゲームガールズアドバンスSP』を持って自室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「えっと…まず僕のこと覚えてる?」

 

 

自室のベッドにうつ伏せで寝っ転がりながら『ゲームガールズアドバンスSP』を見る。

 

 

【……私が簡単にデータを失うような存在に見えているのですか?才羽アオト】

 

 

どうやらちゃんと覚えてくれていたようだ。どこか「舐めてんのかお前」と言わんばかりの態度に思えるのだが、そこは気にしないでおこう。

 

 

「あはは…昨日の今日の話だし、そりゃ覚えてるよね…ごめんごめん」

 

【まあ、別に構いませんが】

 

 

確かにそんな一日二日でデータが吹っ飛んでしまったらとんだポンコツロボットだ。そう考えると<Key>のことを舐めすぎていたかもしれない。反省しなければ。

 

 

【それで、緊急性の高い用があるから私を呼んでいたのでしょう?ならば早急に済ませてください】

 

「…?いや、聞きたいことはあるにはあるけど、別にそこまで緊急性はないよ?」

 

【…は??】

 

 

<Key>は緊急性が高いから私を呼んだと思い込んでいるが、僕は別にそうは思っていない。

 

確かにアリスさんとの関係性とか色々聞きたいことはあるにはあるが、どちらかと言えば個人的に<Key>と関わりたいという好奇心からくるのであって……

 

 

【………ではなんですか?】

 

「うん?」

 

【貴方は特に用もないのにも関わらず執拗に私を呼びつけて】

 

「うん」

 

【どうでもいい貴方の日常を見せつけられて】

 

「う、うん?」

 

【私は何の意味もなく貴方の呼びかけに応じてしまったと?】

 

「…うん、まあ……ありがとね?」

 

【………………】

 

 

なんだ、ちゃんと見てくれていたじゃん。

 

あまりにも無反応だったから見えていなかった説があったが、杞憂だったようだ。よかったよかった。

 

だが<Key>の様子がおかしい。これはあれだ、一つ一つ状況を整理した後に怒るタイプに似ている気がする。

 

 

「……怒ってる?」

 

【……怒る??】

 

 

何だろう、明らかに「私、怒ってます」という雰囲気を<Key>から感じる。文字しか映ってないのに。

 

 

【……私に感情は不要です。怒るなど、そのような感情を私が持っているわけないでしょう?】

 

 

しかし返ってきた返事は、怒っていないという回答だった。しかも私に感情は不要というおまけ付きだ。

 

私は機械?AI?だからそういったものはいらないとでも言いたいのだろうか。

 

だがそう言っている割には……

 

 

「いや…怒っているふうにしか見えないけど……」

 

 

とても感情的に見える。

 

 

【怒っていません】

 

「いや、とてもそうには…」

 

【怒 っ て い ま せ ん】

 

「あ、はい……」

 

 

絶っっっ対うそだ。めちゃめちゃ怒ってるじゃん。

 

文字しか映っていないのにここまで怒りの感情が分かりやすいのも珍しい。感情は不要とか何とか言っていたが漏れ出ていますよ、感情。

 

まあ、僕がダル絡みに近いやり方で接触を図ったのが悪いところはあるが。

 

 

【…私によくわからない戦闘機のゲームを見せつけて】

 

「『エースコンバート6』のこと?面白そうだったでしょ?」

 

【知りません】

 

 

すると<Key>は恨み言のように僕の行動を指摘してくる。

 

僕は一応、『エースコンバート6』は面白そうだったかと聞いてはみたが、否定された。そもそも興味すらないという感じだ。

 

 

【…私が食べれもしない昼食を自慢げに見せつけて】

 

「焼うどんのことね?美味しそうだったでしょ?」

 

【知りません。そもそも普通に失敗していたでしょう】

 

 

これも否定。見た目は完璧だったと思うんだけどなぁ……<Key>の言う通り、味は失敗したけど。

 

 

【…また朝とは違うゲームを見せつけて】

 

「『モンスターハンティングRise』のことね?面白そうだったでしょ?」

 

【だから知りませんって】

 

 

これも興味なさげ。あのアクション性は割と万人受けしそうな気もするんだけどなぁ……

 

だが仕方がない。何も知らないゲームをちょっと見ただけで面白そうかと聞かれても困るだろう。

 

 

【何なのですか貴方は…一体なにがしたいのですか?何故このようなことを?】

 

 

僕が一人<Key>の反応について色々振り返っているところに、何故このようなことをしたのかという質問が投げかけられた。

 

何だかとても、困惑しているような雰囲気で。

 

僕が話しているのはAIだ。顔がないから表情など見れるはずもなく、文字という方法でしかこちらとコミュニケーションが取れない時点で<Key>がどう思っているのかを読み取るのは簡単ではない。そもそも、感情というのが本当にあるのかどうかということすら、明確には分からない。

 

だが、先ほどの怒りを感じたあのやり取り。そして、明らかに困惑しているように見えるこの反応と質問。

 

本当に僕は、AIと話しているのだろうか。何度もそう感じてしまうほどのやり取りになっている。

 

とりあえずその事は置いておいて、僕は<Key>の疑問に答えようと思う。

 

 

「聞きたいことがあるから、というのもあるけど……」

 

 

アリスさんとの関係性、来るべき日とはなにか、世界を滅ぼすとは具体的に何かとか色々と聞きたいことはあるにはある。それくらい、今の僕にとって知らないことだらけだからだ。

 

けれど、それ以上に……

 

 

「一番は、<Key>と話したかったから……かな?」

 

 

そう、話したかった。<Key>という存在は何者か、どういった存在なのか。本当に世界を滅ぼす力があるのか。

 

そんな、ちょっとした好奇心だ。

 

 

【……それだけだと?】

 

「それだけだよ?」

 

 

そう、それだけ。君に興味があるから話しかけるね、という友達を作る前の儀式みたいなものだ。本当に深い意味はない。

 

 

【……意味が分かりません】

 

「…そう?」

 

 

それでも彼女は困惑しているように見える。文を見るだけで明らかだ、本当に分かりやすい。

 

…………今更だがこのAIは『女性』ということで良いのだろうか?一応AIだから性別とか関係ないはずだけど……何となく性別は女性だと思っている僕がいる。間違っていないよね?

 

……ひとまず、女性ってことでいいか。

 

 

【ええ、理解不能です。人類の敵であるはずの私と話したいだけなど……】

 

「おお、<Key>のような高性能AIでも理解できない僕の思考……ひょっとして僕は天才というものなのでは…?」

 

【寝言は寝て言ってください】

 

「辛辣ゥ!?」

 

 

僕がキメっぽく言った言葉に対して中々に辛辣な言葉が返ってきた。やはり言葉の火力は高めのAIか……

 

けど、こういうやり取りをAIとしているというのも不思議な感覚である。やり取りだけ見たら、人間ですと言われても違和感のないこの感じ、本当に不思議だ。

 

何と言うか、<Key>と話していると自然と笑みがこぼれてしまうような気がする。

 

もう少しだけ<Key>とお喋りしたい気持ちはあるが……おそらく厳しいだろう。

 

 

「……それで、僕とのお喋りはどう?乗り気じゃない?」

 

【え…?それは……】

 

 

彼女はきっと、あまり僕との会話に乗り気ではないだろうから。

 

そもそも、僕のアプローチに興味を何も示さなかった時点で難しいところがあったのだと思う。

 

それに僕のダル絡みにもウンザリしたような態度も相まって、これ以上話す気が起きないと言われても仕方がない。

 

だから僕は、拒絶されるかもしれないという前提で、心の準備をする。そうなっても、ダメージを受けないように。

 

 

【…どうしても、話がしたいのですか?】

 

「……え?」

 

 

だが、返ってきたのは僕に対する改めての意思確認だった。本当に<Key>と話がしたいのかと。

 

 

【どうなんですか?】

 

「あ、うん!したい、したいよ!<Key>とお話し!」

 

 

僕は全力で首を縦に振る。赤べこもビックリするような速さで。もしかしたら、という希望を込めて。

 

 

【……仕方がありません、今回は付き合ってあげます】

 

「…えっ?いいの?」

 

 

意外、だった。

 

まさか<Key>の口から付き合うと言ってくれるなんて思いもしなかったからだ。

 

僕も思わず、素っ頓狂な声で聞き返してしまう。あまりにも予想外だったから、つい。

 

 

【……なんですかその反応は。必要ないと?】

 

「へっ!?い、いやいや!必要必要!!ありがとう<Key>!!」

 

【はぁ……】

 

 

まさかまさかの掴んだ権利、<Key>との会話!

 

6時間以上の戦いの末、ようやく掴み取った勝利の権利。まるでRPGの強ボス相手に耐久パでギリギリ勝てた時のような気持ちだ。つい嬉しくて右手でガッツポーズを取ってしまう。

 

そんな僕の姿に呆れたのか、昨日のようにため息のような文字が映し出されていた。そんなに僕の姿はおかしいだろうか。

 

 

「あはははっ!!やったー!!本当にありがとうね<Key>!」

 

【……何がそんなに嬉しいんですか】

 

 

僕の喜びにどこか冷めたような、理解できていないような反応を示す<Key>。

 

<Key>にはどうやら僕の喜びが伝わっていないらしい。耐久戦で長い長い時間戦い続けて掴んだ勝利の喜びが分からないのだろう。

 

今度、<Key>にも体験させてあげなければ……

 

 

「でさでさ!色々話す前にお願いがあるんだけど……」

 

【………………なんですか】

 

 

色々と話を切り出す前に、僕は<Key>にお願いごとを切り出した。それに対して<Key>はいきなり不服そうな反応だが、とりあえず話だけでも聞いてくれるみたいだ。

 

僕が<Key>にお願いしたいこと。それは僕がずっと感じていた違和感の一つ。

 

何だか呼びづらくて、ずっとモヤモヤを感じていたこの名前。鷹の鳴き声じゃあるまいし、もっと簡単で可愛い呼び方にするための改善案……

 

 

 

 

 

<Key>という名前に対する、僕の要望。

 

 

 

 

 

「<Key>じゃなくてさ、『ケイ』って呼んでいい?」

 

【……はい?】

 

 

 

 

 









ここ連日の公式によるケイ供給が過剰すぎて残機が足りません、助けてください。


そういえばこの話書いてて気づいたんですけど、もしかして私、『ゲームガールズアドバンスSP』のSPを今までGPって書いてたりしました?

今この時点で確認はしていないんですけど、もしそうなら本当に申し訳ないです……修正しておきます…

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