やっと投稿出来ました……お待たせしましたm(_ _)m
名古屋散歩、行ってきましたよ皆さん!起きた出来事とかを語ると長くなっちゃうので、感想を一言だけ……
──名古屋港遠くね?
「お前、名前は?」
僕よりも身長が高いけれど、お姉ちゃんたち程度の大きさしかない身長を抱えた見知らぬお姉さんは、僕の姿を見ながら不敵な笑みを浮かべていた。挑戦的、まるで相手を挑発しているかのような笑みに、絶対的な余裕をその人から感じていた。
「え…?な、名前…?」
「おう、名前だ名前。まさか自分の名前すら分からねぇ年齢じゃねぇだろ?」
「あ、はい……アオト、才羽アオトです」
「へぇ…アオトねぇ……?」
お姉さんの圧に押し出されるように僕は名前を教えた。それを聞いたお姉さんは、笑みを潜めて品定めするように僕を見つめる。
「お前が例の会計のお気に入りか。本当にちっせぇチビチビマンだな?」
「ち、チビチビマンって……」
「あん?チビチビマンだろうがどっからどう見たって。あたしより頭一個分くらいちっせぇだろ」
チビチビマン……初めて言われる名だ。まあ確かにここにいるメンバーの中では一番身長が小さい僕だけれども……あまり良い気にはならないあだ名だ。
そう思っていると、そのお姉さんの後ろにいる3人のメイド服を着たお姉さんたちが困ったような顔を浮かべている。
「リーダー……それは……」
「いくら何でも小学生に身長マウントを取るのはどうかと……」
「あははっ!自分より小っちゃい子が現れて、リーダー嬉しいんだね!」
「あ゛あ゛!?なにぃ、なんつったテメェらゴラァ!!!」
高校生が小学生に身長のマウントを取っている。それを指摘された途端、茹でタコのように顔を真っ赤に染め上げて声を荒げるメイド服の小さいお姉さん。身長が小さい人は、小さいことを指摘されるとぶち切れると聞いたことがそれは本当だったらしい。
ギャーギャーと怒り散らかす小さいお姉さんと、それを上手く宥めるように受け流す3人のお姉さんたち。構図はまるで子供扱いするなと激怒する妹と、それでも子供扱いしてしまう姉のような感じだ。
《成長期の人間に張り合ってどうするのですかあの小さなメイドは……》
そしてポツリと耳元に聞こえる呆れを含んだケイの呟き。ケイ、間違ってもその言葉を直接本人に言ってはいけないよ?身長の話は地雷で、踏んだら絶対にガチギレして暴れ散らかすタイプだからあの人は……というか実際に暴れ散らかしているし。銃は撃っていないけど。
「アオト…今のうちに私たちの後ろに…」
「ネル先輩は本当に危険だから……ね?」
「……?ネル先輩?」
ネル先輩……聞いたことのある名前だ。
確かC&Cで最高戦力と言われている、ミレニアム内でも最強の存在だったはず。この前の『鏡』強奪作戦のときだって、その人との対決を避けるためあのタイミングでの作戦実行になったほどだ。
じゃあなんだ?いま目の前にいるあの人こそ僕たちが戦うわけにはいかない最強の存在、C&Cのコールサイン『ダブルオー』ってこと……?
「フーッ!フーッ!……………おい、待てやチビチビマン」
僕がお姉ちゃんたちに催促されて後ろに隠れようとしたとき、ネルさんは荒げていた声を静めてこちらを向いた。
「な、なんですか……?」
「テメェに聞きてぇことがある」
僕が恐る恐る反応すると、ネルさんは鋭い瞳でこちらを見つめた。
「この前の戦闘でC&Cに一発食らわせた奴……そこのチビの他にもう1人いたらしいじゃねぇか」
「えっ……もう1人……?」
「ああ。戦闘機型のドローンみたいなやつでアカネとカリンを吹っ飛ばしたみたいでな」
「────」
戦闘機型のドローン。その言葉を聞いた僕は心臓がキュッと縮まる。次第に鼓動が早くなっていき、背中から変な汗が滲み出てきた。
何せその戦闘機を遠隔で操作していたのは、他でもない僕なのだから。
そう、あの日に僕がミサイルで吹き飛ばしたのはユウカさんだけではない。C&Cのお姉さん2人も吹き飛ばしていた。
つまりC&Cからすればあの戦闘機を操作していた人物を目の敵にしていてもおかしくない。しかもよりによってC&Cにはミレニアム最強と呼ばれているネルさんが所属しているのであって……
……マズい、この人にバレたら絶対に終わる!!
「セミナーが操縦者を探していたみたいだがどこにも情報が無いみたいでな。敵勢力であるエンジニア部やヴェリタスにも窯をかけたみたいだが口を割ろうとしなかったみてぇだし……あの吹き飛ばされた会計も激怒していたみたいだぜ?何で見つからないんだ、絶対に見つけ出して責任を取らせる……ってな」
「………」
「まあそこは置いといてだ。別にあたしたちはそいつに恨みがあるわけじゃねぇんだよ。戦いは戦いだからな、恨みっこは無しだ。だが……興味があんだよ。いくらドローンという手段を使っていたとはいえ、あいつらを制圧できるほどの実力者……どんな顔をしているのか拝んでやりたくてな?」
「……そ、そうですか」
ネルさんの言葉が、音のみで伝わってくる。話している言葉は聞き取れるのに、頭が理解しようとするのを拒んでいるのだ。まるで今そこにある現実から逃げるように。
「ああ。んでそこのチビどもにも奴について聞いてみたんだが……話すつもりはねぇみてぇでな?そこでちょうどお前が現れたもんだから何か知ってんじゃねぇかと思って聞いてみたんだが………」
「──どうやら心当たりがあるみてぇだな?」
「ッッッ!?!?!?」
ネルさんは薄ら笑いを浮かべ、目を細めて僕を射抜く。その目線を直に受けた僕は、早まる鼓動がさらに加速し呼吸も上手く出来なくなる。そして体全体の自由が奪われ、金縛りにあった時のような感覚が襲い掛かってきた。
ただ睨まれた。それだけなのにこの威圧感。
本当に強い相手を目の前にした時、人は足がすくんで動けなくなるなんて事象は聞いたことがある。まるでその人と相対するだけで体全体が何十倍にも膨れ上がった重力の上に立たされているような、今にも圧し潰されてしまうのではないかという感覚。圧だけで相手を支配できる、そんな怪物の如き存在が。
でもそんなものは創作の中での世界だと思っていた。あまりにも非現実的で、ファンタジーな感覚だとばかり思っていた。そんな感覚を身にもって受けることなんてないだろうと、それほどの威圧感を出せる人物など存在しないだろうと。
だが、いま目の前にいる存在はなんだ。睨まれただけで体全体が締め付けられて動けない、圧倒的な強者の威圧。創作の中でしか存在しないと思っていた一騎当千たる存在。そのオーラ、まさに怪物。
やっぱりネルさん……コールサイン『ダブルオー』は只者じゃない……!
「ちょっ……ちょっとやめてください!」
「そ、そうだよ!アオトに危ないことするんだったら、いくらネル先輩でも……!」
僕がネル先輩にひるんでいるところに、お姉ちゃんたちが僕を庇うように前に出た。2人とも震えながらも銃口をネルさんに向けて、威圧感に抗おうとしている。
誰もが動けなくなり、まともに思考が出来なくなるであろう威圧感を直に受けているはずなのに、それでもお姉ちゃんたちはネルさんと銃を向けて相対している。僕とは違う、少しでも抗うことが出来るその差。その差を見せつけられて、僕は無力感に打ちひしがれそうになる。
「お、お姉ちゃん……」
《……護られすぎではないですか?いくらなんでも》
ケイの鋭い一言が、僕の胸に突き刺さってくる。お姉ちゃんたちが襲われたと知って駆け付けた結果、ただお姉ちゃんたちに護られているこの状況。結局なにも出来ない、何も助けることが出来ない、ただネルさんの圧に動けなくなるだけ。セミナー襲撃のあの日、モモイお姉ちゃんが僕を置いていった理由をまざまざと見せつけられたようで、情けない。
本当に、何とも笑い者だ。
《だから言ったでしょう?貴方が向かったところで何も出来ないと》
追い打ちのように、ケイが現実を僕に突きつける。ただでさえヒビの入った心に、ケイの言葉がナイフのようにグサグサと刺さった。
《今度からは身の丈に合った行動をすることですね……とにかく今は深呼吸でもしたらどうですか?さっきから息遣いがうるさいですよ》
身の丈に合った行動か……もっともだよね本当に。なにも反論できないや。
とりあえず言われた通りに深呼吸をする。大きく息を吸って、吐く。もう一度吸って、吐く。先ほどまで荒げていた息遣いが少しずつ落ち着いていくのが分かった。悔しい気持ちは未だ燻っているが、頭は冷静になってくる。
今は一回状況を見るべきか。
「おーおー、弟が危ないとなったら良い根性みせるじゃねぇか。見直したぜ?」
お姉ちゃんたちが前に出た姿を見たネルさんが、感心したように笑う。こちらは精神的に一杯一杯だというのに、なんて余裕そうなのだろう。これも力の差というものなのか。
「そこのチビチビマンは口を開けるつもりはねぇだろうな……いいぜ、じゃあこうしよう」
お姉ちゃんたちの後ろに隠れている僕の姿を一瞥してから、ネルさんは案を出そうとしている。
「おいチビ、さっきの話は覚えているだろ?」
「はい…?」
この空間に響く、虚を突かれたような声。唐突に声をかけられたアリスさんが、警戒するかのように身構えた。
「あたしと戦って勝ったら引き下がってやるっていう話だが……1つ条件追加だ」
「条件…ですか?」
「ああ。この戦い、あたしが勝ったら……」
「あのチビチビマンの口を割らせてもらおうか?」
「ッ!!!」
「ッッ!?!?」
再び心臓がキュッと締まる感覚が襲う。ネルさんが放った言葉は、ある意味僕の命が掛かっていると言えるその提案は、まるで僕の首元に鎌を添えられているようなものだ。
僕が口を割るということは、セミナー襲撃で3人吹き飛ばしたのは自分だと自白するということ。しかも被害者2名が目の前にいるこの状況かつ、ミレニアム最強の存在がいるこの場面でだ。
つまりこれは事実上の死刑宣告に等しい。アリスさんとネルさんの間でどんな話があったのかは分からないが、今から2人が戦うというのであれば僕の命運はアリスさんに託された形になる。
「……私が勝てば、大丈夫なんですよね?」
そして耳に入る、凛とした声。今まで元気で、明るい声しか聞いたことのなかったアリスさんの、初めて聞く声だ。
どこか覚悟のようなものを感じるその声は、堂々としている後ろ姿にも表れていた。
「ああ、その通りだ。別に難しい話じゃねぇ……単純明快、勝ったやつが権利を得る。簡単だろ?」
そう言うとネルさんは、鎖でつながれた2丁のサブマシンガンを構え、好戦的な笑みを浮かべた。そして漂う、先ほど以上の覇のオーラ。ついさっき受けた圧よりも濃度が増し、殺意とも感じられる圧倒的な威圧感を解き放つ。
それに呼応するように、アリスさんも背負っていたスーパーノヴァを手に持った。その圧倒的なフォルムと、内に秘められた圧倒的な破壊力。幾つもの圧倒を持つこの武器が、ネルさんの圧倒的なオーラを迎え撃つ。
《王女の戦闘……ですか。この目で見るのは初めてですが…しかし……》
イヤホンから聞こえてくる、アリスさんを案ずるかのようなケイの声。しかしその声は届くことなく、ケイの心配も他所に2人は臨戦モードに入った。
「いいねぇ、気合十分……それじゃあ──」
「──始めようぜ」
――――――――――――――――――――――
その動きは、まさに圧巻だった。
姿が消える、なんて言葉を耳にしたことはあるだろうか。別に何も難しい言葉ではない。ただ文字通りに人間とか動物とかの姿が急に目の前から消えるという、そういう意味の言葉だ。本当に簡単で、何の捻りもない普通の言葉。
だが実際にそんな現象を目にした者は少ないのではないだろう。当たり前だ、本当に姿が消えるなんて事象はそうそうお目にかかれることは無い。基本的には、非現実的な事象だと言われて切り捨てられてもおかしくないものだからだ。
だが科学の力が結集し、非現実的なことが現実になる可能性が秘められた学園であるこのミレニアムでは、光学迷彩とか透明化とかで姿が消えるなんてことはあるかもしれない。むしろ姿が消えるという事象を再現しようとするならば、科学の力で再現する方が一番現実的だとも言える。
そう…科学の力でようやくどうにか出来るかもしれないのが、姿が消えるという現象なのだ。科学の力に頼らない、ただ人間のフィジカルだけで起こそうなどそれこそ創作の話だ。現実的ではない。
そう現実的ではない、現実的ではないのだ。現実的ではないと思っていた。今日この日、『美甘ネル』という存在と出会う前までは……
「──遅せぇよ」
視界には、確かにネルさんは存在した。存在したはずなのに、ネルさんがバネを圧縮するように姿勢を屈めて解き放ったと思った瞬間、既に視界からネルさんの姿は消えていた。
そして視界をすぐ横に移すと、アリスさんを肉薄しているネルさんの姿が既にそこにある。たった一瞬で距離を詰めたその現象は、まるで凄腕のマジシャンに瞬間移動のトリックを見せられているような感覚だ。
だが、マジシャンと全く違うことが1つだけある。それは……
──タネも仕掛けも無いということ
速い。単純に速いのだ。ネルさんという存在が内包しているフィジカル、ただその力だけで姿を消すかのような速さを実現している。
科学には頼らない。ただ己の能力のみで非現実的な現象を引き起こす。まるで常識が通用しないような、圧倒的な強さ。
──まさに怪物
「てめぇの武器は確かに強い。だが引き金を引いた後、発射まで最低でもコンマ数秒はかかる」
「その上、その強すぎる火力のせいで、相手にある程度の距離まで入られたら撃てねぇ。爆圧に
「そしてこの間合いであたしに勝てる奴なんざ、キヴォトス全体でもそう多くは……」
「──いや、一人もいねぇ」
アリスさんを肉薄し、徹底的に弾丸を撃ちこむネルさん。アリスさんもその弾丸を防ぐべくスーパーノヴァを盾にして構えているが、アリスさんの顔には苦悶の表情が浮かんでいた。
強い…強すぎる……!
先手は確かに、アリスさんが取っていた。戦闘が始まろうとした瞬間、アリスさんはネルさんの不意を突くように最大エネルギーのスーパーノヴァを解き放ったのだ。その光線は辺り一面を抉り取りながら進み、ネルさんを飲み込んだと思っていた。
爆発の衝撃で舞った煙が視界を奪い、ネルさんの安否が分からないこの緊迫感の中、煙から姿を現したのは傷一つ負っていないネルさんの姿だった。不意を突いて放ったはずの一撃は、いとも容易く避けられたのだ。
そして再びスーパーノヴァを放とうとエネルギーを溜めようと思ったのも束の間、ネルさんに距離を縮められてエネルギーチャージの隙すらもらえない猛攻を喰らう。
近づかれれば途端に何も出来なくなるという弱点が露呈し、そこを突かれているアリスさんの戦況は圧倒的に不利だった。
《何者ですかあのメイド服は…あそこまで王女を一方的に……!》
一緒にこの戦いを見守っているケイにも、焦りの雰囲気が出てきた。なんやかんや結構気にかけているアリスさんが押されているこの状況は、ケイにとってもあまり良いものには映らないらしい。
「思った以上にがっかりだったな。この程度で、あいつらがやられたとは到底……」
「……」
本当にこのままジリ貧になって負けてしまうのか……?圧倒的なネルさんの前に成すすべもなくやられてしまうのか……?
そう心配を募らせていた僕はアリスさんを見るが、その目はまだ死んでいなかった。むしろ闘気に満ち、ここからの打開策を何とか考えているようにも見えた。
そしてその考えは当たっていたのだろう。ただやられっぱなしではなく、アリスさんの反撃が始まった。
──ブォンッ!
アリスさんは盾にしていたスーパーノヴァを持ち上げて、ネル先輩に向かって振りぬいた。
「ぐっ!」
振りぬかれたスーパーノヴァをサブマシンガンで受け止めたネル先輩は、数メートルほど吹き飛ばされる。あの質量の物体が当たったのだ、おそらく相当な威力だったのだろう。ネル先輩は吹き飛ばされる際、空気の漏れたような声をあげていた。
というか………え?あの質量の物体を振りぬいたの?
確か前に話を聞いたことがあったのだが、スーパーノヴァの重さは140㎏を超えたはず。しかもあの大きさはアリスさんの身長とそこまで変わらないものだ。つまりあれを振りぬくということは人間1人を振りぬいているのと変わらない……いや、重さは人間よりもずっと重いから労力はスーパーノヴァの方が上だ。
それを見た目は凄く華奢に見えるアリスさんが振りぬいたのだ。あんな筋肉を感じない腕で、しかも体感がブレることなく。確かにアリスさんはパワーが人間離れしているということはスーパーノヴァを扱っていることを見て理解はしていたが、それでも目の前で起こった事実が衝撃的過ぎて僕は思わず……
「その銃身を、振り回せんのかよ……!」
つい心の中の声が漏れ出てしまった。何だか隣で「銃身を、振り回した……!?」
と同じようなことをミドリお姉ちゃんも口にしていたし、やっぱりスーパーノヴァを振り回した事実は衝撃的だったのだろう。
《今です、王女!》
「今です!」
そして距離が離れた今のうちに、スーパーノヴァのチャージをしようとしているアリスさん。振りぬいたスーパーノヴァを構えなおし、ネル先輩に向けてチャージを開始するが……
「はっ、近接戦としては悪くねぇ判断だ……けどな」
──ドンッ!
大きく響く、地面を蹴る音。空気が震え、衝撃が走る。
再び僕の視界からネル先輩の姿が消えたかと思うと、一瞬でアリスさんの懐まで潜り込んでいた。チャージをしようとしていたアリスさんの作戦は崩れ、再びネルさんの距離に持ち込まれる。
──ダダダダンッ!
そして再び大量の銃弾を受けることになり、もう一度スーパーノヴァを盾にしなければならなくなった。
もう少し距離を離すことが出来たらまだ少しでもチャージ出来たかもしれないが、先ほどの吹っ飛ばしで思っていたほどの距離は稼げていなかったみたいだ。まあそもそも、何十メートル離そうがネルさんの速さなら一瞬で肉薄に出来そうな気もするが。
「相変わらずこの距離じゃ、あたしの方が圧倒的に有利」
「てめぇは発射しようにも、あたしに照準を合わせられねぇ」
色々と呟きながら何発も何発も銃弾を喰らわせていくネルさん。その表情は笑っており、圧倒的な余裕を感じる。この戦いの中ずっと苦しい表情をしているアリスさんとは天と地ほどの余裕の差だ。
だがそんなアリスさんの表情に変化が訪れる。苦しそうな表情は変わらないのだが、どこか覚悟を決めたような、強い意志を感じるような表情と瞳をしていた。
「……照準は、必要ありません」
そう言うとアリスさんのスーパーノヴァに、光が灯り始める。力が体全体に流れるかのように、エネルギーが溜まっていく。
「行きます!」
「だから無理だって……ん?」
ネルさんに照準を合わせずに、エネルギーチャージを行うその不自然な状況にネルさんも動きが一瞬固まる。その隙にも、エネルギーチャージは進んでいく。
「この状況で発射準備……?おい、まさかてめぇ……!?」
「あたしじゃなく……床に!?」
ネルさんの声に、僕を含めたみんなの驚いたような声をあげた。
まさか、本当に床に撃つ気なのか……!?だってそんなことをしたら、アリスさんも巻き添えに……!
《しょ、正気ですか王女…!?そんなことをしたら貴方まで……!?》
「正気か!?そのまま撃ったらてめぇも……!」
ネルさんの驚愕の声が響き、僕の耳にはケイの焦りの声まで聞こえてくる。本当にアリスさんがこれからやることが理解できないみたいだ。いや、理解は出来ているのだろうが正気を疑っているという感じか。
だがまあ、気持ちは分かる。僕が今のアリスさんの立場になったとしても、このまま床に撃って自分もろとも吹き飛ばされる選択肢を取るというのは考えにくい。それほどアリスさんの行動には覚悟が決まっているということか。
そんなことを考えていたら、既にエネルギーは溜まったみたいで、床に接地している銃口から光があふれ出して……
「光よ!!」
溢れた光が辺り一帯を包み込み……
──ドカアアァァン!
腹にまで響く異常なまでの衝撃音。地震のように揺れ動く床。そして煙と共に襲い掛かる衝撃による暴風。
思わず腕で顔を防ぎ、煙や塵が目に入らないような防衛本能を取る。風で体が吹き飛ばされないように膝を曲げて腰を落とし、襲い掛かる暴風から体を守った。
「アリスちゃん!うっ、煙で視界が……!」
「床がほぼ崩れて……見つけた、アリス!」
あまりにも大きな音で周りの音も遠くに聞こえるが、何とか近くのお姉ちゃんたちの声は聞こえる。どうやらアリスさんを見つけたらしい。アリスさんの身体は無事のようだ。
そして遠くでアリスさんの声らしきものは聞こえるが、まだ爆音の影響が耳から抜けず上手く聞き取れない。だがお姉ちゃんたちと先生はすでに行動を始めており、先生はアリスさんに近づいて背負った。僕もお姉ちゃんたちに手を引かれて動き出し、この煙で視界が塞がっているうちに後退した。
溢れる煙の中を抜けるとき、巻き込まれたであろうネルさんがいるかもしれない場所を見る。すっかり床が抜けており、落とし穴のような状態になっていた。
怪我とかしていなきゃいいけど…大丈夫だよね……?
僕は心の中でネルさんの安否を願いながら、お姉ちゃんたちに手を引かれて旧校舎の廊下から脱出した。
(戦闘後のC&Cの話、書く余裕が無かったのでオマケで簡潔にザックリと書きます)
【オマケ】戦闘後の話……
「ところでリーダー。アオトの口を割らせる件は大丈夫なのか?」
「ああ?………ああ、それはもういい。ぶっちゃけ、戦闘機を操縦した奴の正体はおおよそ察しがつくからな。お前らももう察してんだろ?」
「それは……」
「そうだな……」
「……??何の話ー?」
「アスナ先輩………はもういいです。それより、憶測でも一応正体をセミナーに報告しておきますか?」
「……いや、セミナーに報告はなしだ」
「…??それはどうして……?」
「あー………その、なんつーか………………」
「あの会計に話すとやべぇことが起きそうだからな……」
「「あーー…………」」
「んーー??」