才羽家長男・末っ子10歳   作:Kyob

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もうパヴァーヌ編も30話ですかぁ………30話マジ??








P編 第30話 雷ちゃん、大暴走

 

 

 

 ブーン!!ブーン!!

 

 キキーッ!!ズガガガッッ!!

 

 

 

「あば、あばばばばば」

 

《あばあば言っていないで早く逃げてください!》

 

 

 

 目の前には、訳の分からない光景が広がっていた。

 

 ミレニアムの中央広場。中心には噴水があり、ミレニアムの生徒が大量に行き交うミレニアムの中でも人が密集しやすい広場だ。そんな広場には数十機にも及ぶ大量の『椅子』が暴走していた。

 

 ……正直、椅子が暴走しているという言葉の意味が分からない。でもそうとしか言いようがないのだ。

 

 暴走する椅子。逃げ惑う人々。ボロボロになっていく地面。とても目を覆いたくなるようなカオスな光景である。

 

 そんな光景を、僕はミレニアムに着いて僅か数分で見せられていたのだ。

 

 

 

「ふ、ふふふふふふふふ……制御が利かないぞアオト…あはははは……」

 

「笑ってないで何とかしてくださいウタハさぁんっ!!」

 

 

 

 ポチポチと手に持ったボタンを連打しているウタハさん。非常に涼しい表情をしているが、滴り落ちる汗と声の震えが明らかに動揺を表している。

 

 おそらく緊急停止ボタンか何かの類だと思われるものを必死に操作をしているが、椅子の暴走が収まっていないのを見るに効果が表れていないようだ。

 

 『雷ちゃん』。ウタハさんが開発した移動式戦闘型の『椅子』だ。なんで椅子を動かして、戦えるようにしたのかはよく分かっていないが、とても前衛的で特徴的なその椅子のことを僕は面白いとは思っていた。

 

 だがその椅子が10…いや20機以上が今、この中央広場で自分勝手に動き回っている。

 

 ある雷ちゃんは周辺を凄い勢いでグルグル回り、ある雷ちゃんは自動車並みの速さで至る所に突撃している。他にも搭載されている機銃を乱雑に撃ち回したり、どういう原理かぴょんぴょん飛んでいたり、ピーピーと爆音を鳴らしながら暴走族のように走り回ったり……テーマパークでもこんなにうるさくならないぞと言いたくなるような喧騒が広がっていた。

 

 

 

「…参ったね。これは物理的に止める必要があるみたいだ」

 

「いや、もうそれしか方法がない……って危なっ!!」

 

《危ないっ!!》

 

「アオトっ……ってこちらにも狙いが……」

 

 

 

 何としなくちゃいけないと考えていた所に、僕とウタハさんの所に突っ込んできた雷ちゃん。速度は自動車と同程度、当たってしまえばヘイローのある僕たちでも無傷では済まないだろう。

 

 なんとか避けて地面を転がる僕。ウタハさんの方を見ると、違う雷ちゃんに追いかけらていた。

 

 マズい、ウタハさんを助けなきゃ…!

 

 そう思い立ち上がってウタハさんのところに行こうと『M1911A1』を取り出す。あくまでも護身用としていつも携帯している銃だが、使わなければ自分の身もウタハさんも周りも危ない。

 

 そしてウタハさんの所に駆け出そうとするが……

 

 

 

《右ですアオト!》

 

「へっ…うわぁっ!?」

 

 

 

 ケイの警告で右を見ると、また違う雷ちゃんが猛スピードで突っ込んできた。慌てて後ろに飛んだおかげで当たらずに済んだものの、尻もちをついてしまう。

 

 痛っ!お尻が痛ぁい……

 

 

 

「アオト、私のことはいい!まずは自分の安全の確保を!」

 

《その通りです!まずは中央広場から離れてください!危ないですから!》

 

 

 

 勢いよくぶつけたお尻の痛みに耐えながら、僕は立ち上がる。離れると言ったってこの雷ちゃんたちを搔い潜って離れるのは至難の業ではなかろうか。

 

 でもそうしないと暴走に巻き込まれて怪我を負ってしまうだろう。何せ自動車並みの速度で走り回ることが出来る大量の雷ちゃんが自我を失ったように暴走をしているのだ。ここに居座り続ければ轢かれてしまうのも時間の問題だ。

 

 でもウタハさんを放っておくのもダメなような気が……

 

 そんな考えが過って足が出ない。逃げなくてはならないのに逃げるのは心が痛む。そんな迷いが隙を生んでしまった。

 

 

 

──ブーン!

 

 

 

 先ほど突っ込んできた雷ちゃんが進路をこちらに変え、再び僕の方に突っ込んでくる。もし迷いが無ければ早めに気付くことが出来て、避ける余裕が出来たかもしれなかったのだが、気づいた時には既に避けることは難しい状況に陥っていた。

 

 

 

「このッ!?」

 

 

 

 僕は慌てて銃を構えて、バァン、バァン、バァン!と3発撃つ。撃ち出された弾はズレることなく雷ちゃんに向かい、その装甲に当たるはずだ。

 

 

 

──カァン、カァン、カァン!

 

 

 

 しかし弾は当たれど、その装甲に弾かれてしまう。

 

──硬った!?

 

 そう思い、回避行動を取ろうとするが既に遅い。雷ちゃんは目と鼻の先に近づいてくる。もう、避けることは出来ない。

 

 

 

「──ッ!?」

 

《アオトッ!!》

 

 

 

 ケイの叫びにも似たような声が耳に響き渡った。

 

 

 

──轢かれる。

 

 

 

 僕はせめてもの抵抗で腕を顔の前でクロスして目を瞑り、衝撃に備える。それでも雀の涙ほどの抵抗だ。おそらくほぼほぼ意味を為さないだろう。

 

 ああ、痛いの嫌だなぁ……怖いよ……

 

 迫りくる恐怖に身を強張らせながら、その時を待つ。その時までは非常にゆっくりと流れ、まるで苦しむ僕を嘲笑うかのような神様のいたずらのように感じた。そして遂に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──衝撃が僕の身体に走った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あれ?痛くない?

 

 おかしい。衝撃が走ったということは轢かれたはずなのに、痛みが全然来ない。

 

 今の僕の身体だって、轢かれて吹き飛ばされて空中を回っているはずだ。確かに空中を飛んでいる感覚があるのに……一体どうして痛みがない……?

 

 さらにドサッっと着地したような衝撃が身体を走る。だがこの衝撃は自分の身体に直接響いた感覚ではない。どちらかと言えば、間接的に柔らかく響いた感覚だ。

 

 

 

──ダダダダダンッ!!

 

 

 

 そしてその思考の海から目覚めさせようとする銃声音。しかもその銃声音は耳元で響いた。

 

 ……何が起こっているんだ?そう思考を巡らせていると、僕の身体が宙に浮いていることに気が付く。いや、これは浮いているというよりは……抱えられている?

 

 僕は恐る恐る目を開けた。そこには煙を上げて倒れている雷ちゃんの姿が。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 体は痛くない、無傷。それでいて抱えられているこの状況……

 

 僕は何事だと思い、顔と視線を上にあげた。そこには……

 

 

 

 

 

「……ったく危ねぇな、男なんだからしっかりしろやチビチビマン」

 

 

 

 

 

 メイドのカチューシャを付け、可愛らしいメイド服に厳ついスカジャンを羽織っている人物。

 

 

 

「ネ、ネルさん……?」

 

 

 

 C&Cの『ダブルオー』で、ミレニアム最強と謳われる存在。『美甘ネル』さんに抱えられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エンジニア部。今は機械類が何も動いてない、静かな空間と化したこの工房に僕とネルさんは訪れており、端っこの方に置いてあったベンチに腰を降ろしている。

 

 

 

「本当にありがとうございました……あのまま轢かれてたらどうなっていたか……」

 

「ああ?別に大したことはしてねぇだろ」

 

 

 

 ネルさんは感謝されるようなことはしていないと言いたげな表情で言った。僕からすればあのまま轢かれいてたらしばらくベッドの上での生活になっただろうから感謝してもしきれないのだが。

 

 

 

「そういえば結局ウタハさんはどこに……」

 

「あいつはセミナーだろ。多分ユウカに説教でも食らってるんじゃねぇか?」

 

 

 

 そう言うネルさんは興味が無さそうな感じだ。

 

 結局、あの雷ちゃん暴走事件は近くにいたネルさんが20機近くいた雷ちゃんを全て破壊したところで解決した。あの量の雷ちゃんをまるで赤子を捻るかのように淡々と短時間で殲滅する姿は流石ミレニアム最強だと言わざる負えない。

 

 そのネルさんが全ての雷ちゃんを片付けた後、騒ぎを聞きつけたセミナーのユウカさんとノアさんがやってきた。

 

 そしてこの騒動を引き起こしたのはウタハさんだということでユウカさんはウタハさんの腕を引っ張りながらどこかへ行ってしまったのだ。なんだかユウカさんの顔が凄く怖かったような気がしたのだが……

 

 

 

「ユウカさん、なんか怖かったですよね……広場に来たときは呆れていた感じだったのに急に怖くなって……」

 

「そりゃあお前アレだろ。お前がその現場にいたからだろ」

 

「え、なんで僕がいたのが理由に…?」

 

「あいつの趣味の問題だろうよ」

 

「ええ……趣味と言われても……」

 

 

 

 そういえば僕の顔を見てからいきなり怖くなったような気がする……そんなに僕があの現場にいたことがマズかったのだろうか?

 

 

 

「それにしても、なんでウタハさんはあんな大量の雷ちゃんを作っていたんでしょう?」

 

「いや知らねぇよ……あいつに直接聞け」

 

「そうですよね、すみません……」

 

「………………」

 

「………………」

 

 

 

──シーン…

 

 

 

 一通りネルさんと会話をし、口が止まった。何も動いていない静かな工房が、余計静かに感じる。

 

 何か話さないと……そう思って色々と話題を考えるがいまいち思い浮かばない。ネルさんって何の話だと盛り上がるんだろう……何の話だと機嫌を損なわずに話せるんだろう……

 

 そう色々と考えてしまい、余計に話題が思いつかなくなる。結局、話題など何も思い浮かばず時間だけが流れていき………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だーっ!!何なんだよこの空気はよぉ!!なんか話題の一つか二つもねぇのかよこのチビィ!!」

 

「ヒィッ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、弾けた。この何とも重苦しい空気に耐えられなかったのか、ネルさんがはじけ飛ぶかのように大声で僕に話題を催促してきたのだ。

 

 そんなネルさんの唐突の弾けに僕の身体がビクゥ!と跳ねる。

 

 

 

「お前他の奴らとはいつも楽しそうに喋ってんだろ!?なんであたし相手にはそんなにビクビクしてんだよおい!!」

 

「ひえっ……だ、だってネルさん怖いんですもん!!なんか触ったら爆発するみたいな雰囲気があって……!」

 

「ああ!?あたしが怖くてビビってるだけだつってんのかテメェは!?情けねぇ男だなぁ!本当に金玉ついてんのかァ!?」

 

「ついてますよ!?なんてこと聞くんですか!?そんなに疑うなら……かっ、確認しますか!?」

 

「はっ、はぁ!?ばっ…お前なんてこと言うんだよ!確認するわけねぇだろがこのスケベ野郎!!」

 

 

 

 ネルさんのデコピンがおでこにビターン!と当たる。思わず「いたっ!?」と声をあげて仰け反った。

 

 そういうところですよネルさん……

 

 

 

「スケベ野郎って……最初に変なこと言ってきたのはネルさんじゃないですか……」

 

「だからつってもその返しはねぇだろうが!」

 

 

 

 おでこを押さえながらネルさんを見ると顔が赤く染まっており、白い目で猫のように飛び掛からんとする雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

「ああもうとにかく!もうせっかくだしあたしから言いたいこと言わせてもらうが、お前はもう少し自分の身をちゃんと守れるようにしたほうがいい」

 

「きゅ、急に話題が……まあいいや、自分の身を守れってどういうことですか?」

 

「別に難しい話を言っているわけじゃねぇ。せめてあの良くわからねぇ機械をぶっ飛ばせるくらいには強くなった方が良いって話だ」

 

 

 

 急な話題変更で少し頭が混乱するが、とりあえずネルさんの言葉に耳を傾ける。

 

 あの雷ちゃんを吹っ飛ばせるくらい強くなれという話だが……

 

 

 

「強くなれって……確かに強くなりたいとは思いますけど、一体どうやって……」

 

「どうやってって……普通に戦闘訓練受けたりとかだろ」

 

 

 

 戦闘訓練…いわゆるネルさんのいるC&Cみたいな訓練を受ければ強くなるということだろうか。それとも体力作りとか、格闘術を身に着けるとか、そういったものかもしれない。

 

 

 

「どうだ?今ならあたしが相手になっても良いけどよ」

 

「ね、ネルさん相手ですか……?」

 

「ああ。なんだ、なんか不服か?」

 

「い、いえ……ただその………」

 

 

 

 ネルさんに見つめられて、顔を逸らす。ネルさんが相手なのが生理的に嫌とかそういうわけではない。だがどうしてもネルさん相手に抱いてしまう感情が、僕の一歩を妨げる。

 

 

 

「ネルさん相手は……とても怖くて……」

 

 

 

 僕は目も合わせられずに正直な気持ちを口にした。

 

 そう、怖いのだ。あの圧倒的な戦闘力を持つネルさん相手に、戦闘訓練だとしても立ち向かうのが。それがどれほどの経験値を生むのかは分からない。おそらくRPGのメタル系スネイルと同じかそれ以上の経験値は貰えるかもしれない。

 

 それでもやっぱり、怖いのだ。

 

 

 

「……チッ、本当に根性なしだなお前は」

 

 

 

 僕の言葉に返ってきた、ネルさんの言葉。その言葉の中に隠れた感情は呆れか、それとも失望か。よく分からないけど、あまり良い反応ではない、そのことだけは分かる。

 

 

 

「はぁ……まあいいや。だったらせめて、銃だけでもなんとかしろ」

 

「……え、銃ですか?」

 

「ああ。何かを倒すってんなら、その銃だと少し物足りねぇだろ?」

 

 

 

 僕は懐から自分の銃である『M1911A1』を取り出す。

 

 今から3年ほど前、ゲーセンのクレーンゲームでたまたま獲れた高性能の拳銃。威力と言うよりかは扱いやすさに重きを置いた設計になっており、『あのビックボスも認めた!』と書かれていたほどのカスタムだった。

 

 この銃を今日まで僕の護身用として常に懐に入れて持ち歩いていた。そして身を守らないといけないとき、この銃を使って逃げる……という使い方をしてきたのだ。それは倒すための使い方ではなく、あくまで自分が逃げるための隙や時間を作るための使い方であり、この銃の役割であった。

 

 もちろん、この銃に対する愛着はそれなりにある。今日まで僕のことを守り続けてくれたし、扱いやすさはそれこそトップクラスだったと思う。反動も少なく、リコイル制御が苦手な僕でも簡単に撃つことが出来るものだった。

 

 でも、威力という弱点を抱えていたのも事実。何せこの銃は、相手を倒すことを目的としていた訳ではないのだから。それ故に、雷ちゃんみたいに装甲に弾かれるような相手にはとことん無力であった。

 

 だからこそ、ネルさんの言っているように銃を何とかするという意見も納得できる。出来るのだけれど……

 

 

 

「僕でも扱えるような強い銃って……本当にあるのかな」

 

「知らね。そこは自分で考えろ」

 

 

 

 そう言うとネルさんは立ち上がって、工房の出口のところに向かう。ポリポリと頭を掻きながら歩きながら、面倒くさそうに。

 

 

 

「じゃ、あたしこの後も予定あっから。ウタハもそのうち帰ってくるだろ」

 

「あ、はい。その……ありがとうございました」

 

「おう」

 

 

 

 「じゃあなー」と言いながら片手を揺らし工房を出ていくネルさん。その姿は仕事に行く大人の気だるげな姿によく似ていた。

 

 バタンと閉められ、1人工房に残った僕。広い空間のせいか、静けさを象徴するような音も良く響くものだ。

 

 

 

「銃、かぁ……」

 

 

 

 僕は独り言のように呟いた。確かに昔から銃の威力の弱さは気になっていたのだが、こうしてまた威力について考えさせられる日が来ると頭を悩ませてしまう。

 

 それに、さっき言われたネルさんの一言。

 

 

 

『……チッ、本当に根性なしだなお前は』

 

 

 

 あの一言が、妙に僕の心に突き刺さっている。怖くても、何とか踏ん張ってお願いしますと言っていたらこんな気持ちにならずに済んだのだろうか。

 

 いや、それでもやっぱり……怖いものは怖い。

 

 

 

《アオト……》

 

「うわっ、ビックリした……どうしたのケイ」

 

 

 

 かなり深い意識の中で考え事をしていたのだろう。ケイの言葉につい驚きの声をあげてしまった。

 

 

 

《そんなに驚かなくても……まあいいです。それより……怪我はないですか、アオト》

 

「え…?いや大丈夫だよ?どうして?」

 

《いえ……別に》

 

 

 

 何だか雰囲気の暗い声で僕のことを案じてきたケイ。なんだろう、元気がないように感じる。普段の僕の行いにツッコミを入れるときのような強さがケイから感じられない。

 

 

 

「なに、どうしたのケイ?もしかして心配してくれた?」

 

《なっ……!?し、心配なんてそんな……!》

 

 

 

 僕の問いに慌てたような反応をするケイ。否定しているような雰囲気を感じ取れるけど、やっぱり心配してくれていたのだろうか。

 

 

 

《………とにかく、怪我無く無事でなによりです》

 

「あはは……ありがとうケイ」

 

 

 

 うん、ちゃんと心配してくれたのかな。本当かどうかは分からないけど。

 

 そういうやり取りをケイとしていると、工房の扉が開かれた。重厚感のある扉が開かれ、重苦しい雰囲気が霧散する。そこから現れたのは、このエンジニア部の部長を務めるウタハさんだ。

 

 

 

「ふう……ただいま戻ったよ」

 

「あ、おかえりなさいウタハさん」

 

 

 

 僕はエンジニア部に戻ってきたウタハさんを迎えた。

 

 

 

「アオト……待たせてしまったかい?」

 

「いえ、全然。大丈夫ですよ」

 

「そうかい?なんだか少し沈んだ表情をしているように見えるが……」

 

「いえ、大丈夫ですよ。問題ないです」

 

「……ならいいのだけれど」

 

 

 

 そう言いながらどこか疲れた表情を見せたウタハ先輩。やはりセミナーに、ユウカさんにしっかり絞られた後なのだろう。

 

 

 

「いや本当に、色々と巻き込んで申し訳なかった。この通りだ」

 

「へっ…いや、顔を上げてくださいウタハさん。あまり気にしてないですから」

 

 

 

 ウタハさんは僕に頭を下げて謝る。小学生という僕に高校生が頭を下げているという状況非常に申し訳ないので、顔を上げてほしいのだが。

 

 

 

「いや、もしあのままネルの助けが無かったら、今頃君は怪我を負っていただろう…本当にすまなかった」

 

「いや、本当に……大丈夫ですから、ね?」

 

 

 

 僕は頭を下げるウタハさんに何とか頭を上げてもらい、あの雷ちゃんのことを聞いた。

 

 

 

「そういえば、何であんな大量に雷ちゃんを作っていたんですか?」

 

「ああ、それはね……いま新しいタイプの雷ちゃんを作っていて、どういうスタイルが良いのか色々と試していたんだ」

 

「スタイル……?」

 

「ああ。銃撃型か、スピード型か、飛行型か」

 

「……一体何をコンセプトに作っているんですか?」

 

「ふふっ、秘密さ」

 

 

 

 銃撃型とかスピード型とか飛行型って……とても椅子に付けるとは思えないような型式な気がするんだけど、どうなんだこれって?

 

 一体、雷ちゃんで何を作る気なのだろうか……

 

 

「まあいい……とりあえず、始めようかアオト」

 

「あ、はい。今日は何を確かめたいんですか?」

 

 

 

 ウタハさんは、何かを確かめるために準備を始める。

 

 今回僕がミレニアムを訪れた理由は、いわゆるエンジニア部の協力だ。お姉ちゃんたちの所にも後で顔を出しに行くが、今回のメインはエンジニア部になる。

 

 1カ月くらい前から始まった、ウタハさんによる開発品の性能実験の協力。普段から多種多様な物を開発しているウタハさんは、エンジニア部以外の人間の意見や反応が欲しいらしく、こうしてそれなりの頻度で性能実験に付き合っているのだ。

 

 僕としても、ウタハさんの開発したものを見ることが出来るし、面白いものやカッコいいものまで色々と触らせてもらえるので、非常に楽しい時間を過ごせるものになっている。

 

 僕はウタハさんの後ろについて行って、準備を手伝う。今日もどんな開発品が見られるのか、非常に楽しみだ。

 

 

 

 









パヴァーヌ編はあと何話続くのかな……まだかかりそうな気がするけど………




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