なんか今回は文量が多くなっちゃいました…
ゲーム開始後に出てくる世界観を語る文章。どうやらこのゲームは、人類滅亡の危機に瀕しているような世界観で送るものなのだろうとアオトは推測する。
「そういえばジャンルとか聞き忘れていたんだけど……これはRPG系だったりする?」
「おっ、さっすがアオト!良い勘してるね~!」
「ご明察通り、これはRPG系だよ。詳しく言うと、このゲームは童話テイストで、色彩豊かな王道ファンタジーRPGなの。」
「なるほど、王道系なんだね…」
王道系RPGと聞き、アオトはテレビ画面へ目を向けなおす。そこに書かれている一文を改めて読み返すが…
「でも王道の割には未来的な感じもするけど…コスモス世紀とかなんかSFチックじゃない?」
「あー…その指摘はまあその通りなんだけど…」
「王道に拘りすぎたら古くなっちゃうでしょ?だけどトレンドそのままというのもダメ。だから王道と謳ってはいるけど色々な要素を混ぜたりしているの。」
「な、なるほど…?」
確かに王道というのは、誰が見ても分かりやすく面白いという利点があるという一方、昔から存在し続ける手法ということから古臭いというイメージを持たれてしまう可能性がある。
だからといってトレンドをそのまま使うというのも、流行ったが故に生まれた大量の同ジャンル作品の中に埋もれてしまう。
なので王道やトレンドも含めたありとあらゆる要素を混ぜることによって、オリジナリティのあるゲームを生み出したのだろうとアオトは自分なりに解釈した。
(とりあえず先に進んでみようかな…)
とにかく遊んでみないことにはゲームを理解することはできない。そう思ったアオトはとりあえず先に進めることにした。
(それにしてもテイルズ・サガ・クロニクルってどこかで聞いたことあるような…?)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
早速チュートリアルがスタートし、アオトはその指示に従って進めていく。
(Bボタン…)
ポチッ
指示通りにボタンを押すアオト。瞬間────
ドカ――――ン!!
(………えっ)
ゲーム画面から爆発音。何が起きたかわからぬアオト。そして次の画面には…
無慈悲にゲーム失敗を告げる文字が映し出されていた。
「………………んっ?」
未だ何が起きたかわからぬアオト。今彼の目の前で起こったことを脳が処理できていないのだろう。一つだけ分かるのは、ゲームオーバーになってしまったという事実のみ。だだその事実が、彼の脳をパンクさせている要因になっている。
「あははははっ!」
茫然としているアオトの耳に突如響いてくる笑い声。その声の正体は彼の姉である才羽モモイであった。
「アオトも引っかかったね!本当はここで指示通りじゃなくて、Aボタンを押さなきゃいけないの!」
「………………はい?」
モモイの口から発せられた情報はアオトにとって到底理解できるものではなかった。
「えっ……なんで……?そんなの何処にも書いてなかったよ……?」
「うん、書いてないもん。だって予想できる展開ほどつまらないものはないじゃん?」
「────────」
絶句。今の彼の表情を表現するならこの言葉が相応しいだろう。それもそのはず、今まで彼がプレイしてきたゲームの中でも「指示通りに動いたら死ぬ」というゲームは遊んだことがなく、その要素を採用した理由が「予想できる展開ほどつまらないものはない」という姉の考えなのだから仕方がない。
「…やっぱりこの部分は酷いと思うよお姉ちゃん。ほらアオトの顔みてよ、今まで見たことないような顔してるよ?」
「…本当だ、初めて見る……ブリキギアライジングのラスボスがいきなりぶん殴ってきたシーンを見てもここまでの顔はしなかったのに…」
「だ、大丈夫?アオトくん…」
ここまでの顔は十数年の付き合いである姉二人でも見たことがないらしく、驚いた様子をみせている。ユズもこの驚きぶりは心配になってしまってしまうようだ。
「………ふぅ………続きをしようか…」
「お、立て直した。」
「大丈夫かなアオト…」
「が、頑張ってアオトくん…!」
何とか立て直し、再びコントローラーを握るアオト。いきなりこの展開をみせつけられたせいか、嫌な予感が止まらなくて少し震え気味だが、とにかく先へ進めることにした。
今度はちゃんとAボタンで武器を装備する。
「よし、装備完了…」
「お、良いね。そのまま進めば、RPGの花である戦闘が…」
「…!」
「ついに戦闘…!」
「Aボタンを押して!今度は嘘じゃないから!」
とうとうRPGの醍醐味である戦闘へ突入するアオト。今度は嘘じゃないというモモイの言葉を信じてAボタンを押す。
「これは…「秘剣つばめ返し:敵に対して2回攻撃をする」…これだね?」
「そう!それでやっちゃえ!アオト~!」
「いくよ…秘剣!つばめ────」
「……………………は?」
無慈悲にもゲームオーバーという文字が表示される画面を見てまたもや茫然とするアオト。何が起きたのか分からない、そう思っているところに新たな文章が表示される。
そこには───
……カチッ(怒)
「…やっぱりプニプニが「ふっ」って言うのは不自然かな。」
「……ツッコみどころはそこじゃないと思う…ってアオト?」
明らかにトンチンカンなことを言うモモイと、それを指摘するミドリ。そのミドリはどうやらアオトの様子に気づいたようで…?
「えっと…大丈夫?アオト…」
「うん?全然大丈夫だよ?ミドリお姉ちゃん。ただ…」
「ただ…?」
「あの煽ってくる雑魚キャラに少しイラっときちゃっただけだから。」
「……まあ、頑張って?助言はするから…」
顔はちゃんと笑顔だが、その笑顔に少し恐怖心を抱くミドリ。まあ間違いなく少し怒っているのだろうなと推測したミドリは、少しそっとしておくことにした。
(そういえばアオトもゲームだと割と感情的になっちゃうタイプだったなあ…お姉ちゃんに比べたら全然優しいけど。)
どうやらアオトはゲームに関しては割と感情的になってしまう方らしい。そこは血筋というか何というか…
「………………ふう……もう一回…!」
「…!よし、頑張ってアオト!戦いはまだ始まったばかりだよ!」
「……気のせいかな、その言葉を聞くと凄く気が遠くなるよ…」
もう既に「TSC」の内容にやられはじめているアオト。それでもまだ始まったばかりのこのゲーム、諦めるには早すぎるのだ。
「次は銃の射程に気を付けて、接近しすぎないように…!」
「そう、まさにそれ!諦めずに繰り返し挑戦して、試行錯誤の末に答えを見つける!それがレトロチックなゲームのロマンだよ!」
「………それをチュートリアルの段階で求めるのもどうかと思うけどね…」
モモイのロマンについてある程度は理解を示すが、流石に最序盤にそれを求めるのはいかがなものかと思うアオトの心情。しかしこのゲームに関してはそういうシステムなのだから仕方がないのである。
モモイ、ミドリ、ユズの三人がアオトのプレイを見守っている中、必死に攻略しようと頑張るアオト。何度ゲームオーバーになっても、長い時間が掛かろうとも、彼は諦めず先に進んでいくことになる…
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「…なっ!?銃の次はロケラン装備!?なんで序盤からロケランが───」
「~~~ッ!!」
「……やっぱり序盤の難易度設定はおかしいと思うよお姉ちゃん…」
「え~?でも難しい方がやりごたえあるじゃん?」
「だからといってクリアできなかったら意味ないと思う。」
「ア、 アオトくんって結構感情的になる方なんだね…」
「それは……お姉ちゃんの血を引いてるからで…」
「ちょっ、それどういう意味ッ!?」
「~~~~ッ!もっかいッ!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「あれっ!?こっちの攻撃が全然当たんない!」
「あ、それは相手の回避率を高く設定してあるからだね!大体50%くらいだったかな?」
「つまりこっちの命中率は50%ってこと!?『かみなり』より当たらないじゃんそれぇ!」
「ちなみに相手の攻撃は必中だよ!」
「……はっ?ちょっ、それって────」
「────────」
「……やっぱりこの仕様はクソ仕様だと思う。」
「いやあ…でも多少の運要素は入れたいじゃん?」
「運要素にしてはプレイヤーに不利すぎだよこれは…」
「アオトくん大丈夫かな…?反応がなくなっちゃったけど…」
「………………ッ!まだまだぁ!!」
「あ、立て直した。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「ウワーッ!この敵の行動パターンが多すぎる!」
「ふっふっふ…プレイヤーに行動を読ませない敵というのも必要かなって!」
「にしてはやりすぎだよモモイお姉ちゃん!!!」
「むわあああああああ!!!!」
「ああっ、アオトがついに叫び声を!」
「むしろ今までよく我慢出来てたほうじゃないかな…」
「それでもアオトがあそこまで感情的になるなんて…」
「まあ、ゲームしてて叫ぶことなんてあんまりないからね。」
「………」
「…あれ?ユズ…?」
「うう…毎回全然違う動きをしてくるから対策出来ないよ…」
「ア、 アオトくん…」
「…?ユズさん?」
「この敵キャラの攻略にはコツがあってね…」
「…えっ?」
「ここをこうしてこうすれば…」
「………!!す、すごい!これならいけます!ありがとうございます、ユズさん!!」
「…!うん!何時でも頼っていいからね…?」
「はいっ!!」
「す、すごい…流石はユズ、私たちがまだ見つけていない攻略法をこうもあっさりと…!」
「このゲーム作ったのは私たちだけどね…でも本当にすごいよユズちゃん…」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「………………??ヒロインは母親で前世の妻…?しかもその妻の元に子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきている…?え、どうゆうこと?モモイお姉ちゃん…」
「んー?つまりね、ヒロインは母親だったの。」
「うん。」
「それでその母親は前世の妻だったの。」
「うん。」
「で、主人公には子供の頃に別れたきりの腹違いの友人がいたの。」
「…腹違いの友人って?」
「腹違いの友人は腹違いの友人だよ!」
「はあ……」
「で、その腹違いの友人が前世にタイムリープしちゃって、主人公の前世の妻の所に行っているってこと。」
「ほう…………」
「え、ごめん。結局どうゆうこと?」
「いやだから────」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ポチポチ…ポチポチ…
あれからしばらく時が経ち、物語はクライマックスへと近づいていた。コントローラーを握るアオトの手は、ポチポチとボタンを操作している。
「………………」
────もはや一言も発さずに
「…アオト、何も喋らなくなっちゃったね。」
「それだけ熱中してくれてるってことかも!」
「…なんか違うと思う。」
何も発さなくなったアオトに異常を感じ始める姉二人。今アオトに何が起きているのだろうか。
「…何だろう。」
「…?どうしたのユズ?」
「アオトくんから何も感じないの…」
「何も感じない…?」
アオトから何も感じない。そう発言したユズは心配そうにアオトの後ろ姿を眺めていた。
人間というのは、感情に応じて雰囲気を纏うものである。楽しい等の「陽」の感情を持つときは明るい雰囲気を、悲しい等の「陰」の感情を持つときは暗い雰囲気を纏うものなのだ。
今のアオトからは何も感じない、つまりはどういうことなのだろうか。
「…ちょっと回り込んでさ、アオトの顔を見てみようか。」
「……賛成。」
「そ、そうだね…」
明らかに様子がおかしいアオトの様子を、正面から見てみようという話になった三人は、回り込んでアオトの顔を見てみる。
「「「こ、これは…」」」
そこには────
「…………………………」
無。まさしく無。もはや何も感じていない完全な無を持ったアオトがそこにあった。
喜怒哀楽の感情が何一つとして感じられない虚無状態。ただひたすらにゲームを進める悲しきゲームマシーンの姿に三人は…
「「「うわぁ…」」」
ちょっと引いていた。
「これはその…何だろう?」
「ゲームを楽しんでいるというより…」
「何らかの刑を受けているような…」
三人がアオトの正面に入り、視界に入ったことにすらおそらく気づいていないだろうアオトは、ただひたすらにボタンをポチポチと押している。
その姿はまるで重罪を犯した者が受けている刑のようで、とてもゲームをやっている人間の姿ではなかった。
「何だろう、まるで私たちが悪いことをしているような…」
「……このゲームを勧めたのは私たちだし間違ってないんじゃ…」
「ア、 アオトくん…ごめんね…」
まるでアオトをいじめているのではないか錯覚し始める三人。特にユズはアオトの姿を見て非常に申し訳ない気持ちになるのであった。
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デレデレデェェェェェェン
「お、おわった……」
ゲーム開始からおよそ3時間、アオトはついに「テイルズ・サガ・クロニクル」をクリアしたのだった。
「す、すごいよアオト!開発者三人が一緒とはいえ、3時間でトゥルーエンドなんて!」
「途中で虚無状態になってたとはいえ…よく頑張ったね、アオト。」
「本当にすごいよアオトくん…!遊んでくれてありがとう…!」
三人から祝福を受けるアオト。どうやら3時間のクリアは早い方のようだ。
「は、はは…ありがとう…でもとりあえず…休憩……」
「「「あ、うん…」」」
とりあえず休憩をいただくことにしたアオトであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「…さて、完走した感想をもらってもいいかな?」
「お姉ちゃん…寒いよ…」
何とかゲームクリアを果たすことが出来たアオト。そしてモモイから感想を求められる。
実際に遊んだ人の感想は貴重のようで、三人とも興味津々にアオトのことを見つめていた。
「うーーーん……何というか…」
「「「(ゴクリ…)」」」
「色々と凄かった…かな…?」
「「「……」」」
色々とすごかった。そう発言するアオトに三人とも不安そうな顔をする。アオトはそのまま理由を話した。。
「難易度は正直言って鬼畜難易度だし…」
「「「うっ…」」」
「シナリオも意味が分かんないし…」
「それは…」
「確かに…?」
「……何で私の方を見るのさ!?」
「お姉ちゃんが書いたシナリオだからでしょ!」
難易度設定は非常に難しい方向に振り切っており、シナリオもよくわからないとアオトは酷評をする。
「多分このゲームを評するなら…クソゲーになるんだと思う。」
「「「……」」」
クソゲー。それはこのゲームを発表した後に多方面から言われた言葉であり、ゲーム開発部の面々にとって聞きたくない言葉であった。
「やっぱり…」
「…?ユズさん…?」
「面白くなかった……よね…」
顔を俯かせながらアオトに問いかけるユズ。その声音には悲しみと同時に、諦めの感情が混ざっていた。
「ユズさん……」
「……」
「僕は、面白くないゲームはやらない主義なんです。」
「………え?」
俯いていた顔を上げるユズ。そこには優しい笑顔を浮かべるアオトの姿があった。
「やってて面白くないゲームって最後まで出来なくて、途中で投げ出しちゃうんです。」
「あ…」
「確かにこのゲームは難易度もシナリオもおかしくて、全体的にしっちゃかめっちゃかで、途中で意識飛ばしながらやってましたけど……僕はそういうの嫌いじゃないです。」
嫌いじゃない。そう話す彼の表情はとても嘘を言っているようには見えなかった。
「ゲームの作れない僕が色々と偉そうなこと言ってごめんなさい…でも不思議と僕はこのゲーム────」
「────面白いって思いました。」
面白い。たった一言、短い言葉。珍しくもない、どこにでも溢れている普通の言葉。アオトの口から発せられたその言葉は────
確かにユズの心に響いていた。
「あ…あれ……?」
「ユ、ユズさん!?大丈夫ですか!?」
涙を浮かべ始めるユズ。その姿を見たアオトは驚き、心配の声をかける。
「う、ううん…大丈夫っ…」
「え、でも…もしかして僕の言葉で嫌な思いをさせちゃいましたか…!?」
「ち、違うの…!むしろ…嬉しくてっ…!」
涙の止まらないユズ。けどそれは仕方がないことだろう。なぜなら「面白い」という言葉は────
「ずっと…ずっとっ…!「面白い」って言葉が聞きたかったからっ…!」
彼女が一番求めていた言葉だったのだから。
「よかったね、ユズ…」
「うん、本当によかったよ、ユズちゃん…」
「そういえば「テイルズ・サガ・クロニクル」ってなんか聞いたことあるんだけど何だったっけ?」
「あれ?覚えてない?私たちが「このゲーム面白い!作った人に会いに行きたい!」ってなったゲームなんだけど…」
「………あーー!思い出したー!!お姉ちゃんたちがゲーム開発部に行くことになったきっかけのゲーム!!」
「「やっぱり覚えてなかったんだ…」」
「…だって僕は結局遊ばなかったし…」
「「あー…」」