気が向いたら続きます。
誤字脱字や設定のミス等ありましたらお知らせください。
雑踏に多種多様な店の呼び込みが飛び交う、活気あふれた街。
行き交う人々の中には、多少の程度の差はあれど武装をした者の姿が多くみられる。
ここはアクセルと呼ばれる、駆け出し冒険者の集う街だ。
そんな人の往来が激しい大通りの真ん中、人にぶつかられ迷惑そうな顔をされつつも立ち尽くす男がいた。
男は帽子を目深に被り、鼻まで布で覆っている。
体を覆う黒い装束は、日光に明るく照らされる街には聊か不釣り合いに見えた。
かつて明けぬ夜に沈んだ都市で狩人と呼ばれた男は、困惑していた。
麻袋を担いだ瘦身の男の力強い拳によっていつも通り意識を飛ばされた彼が意識を取り戻した時、そこは道の往来の真っ只中であった。
状況判断に努めるべく周囲を見渡すものの、辺りの風景は自らの知るどの情景とも一致しない。
狩人のいた場所は常に夜闇に覆われ、出会う者の殆どが狂っていた。
当然陽光照らす活気溢れた市街地など見覚えがあるはずもない。
探し求めていた物の内の一つである夜明けを、当たり前に迎えているのがこの街だった。
狩人は悟る。
ここはあの血の医療の街、ヤーナムではないのだと。
ならばどうするべきか。
狩りを続けるべくヤーナムへ戻るべきか。
知らないこの街で新たな道を生きてみるか。
狩人は自問する。
夜明けを見た者としての自分が言う。
この穏やかな世界を見て回ろう。
意志を継いだ者としての自分が言う。
自ら表舞台に立つ必要はない。
上位者としての自分が言う。
遏・繧峨〓迚ゥ繧定ヲ九※蝠楢貯繧呈キア繧√h。
まるで参考にならない。
何を言いたいのかわからない意見二つを除き、ひとまずこの街を見て回ることにしよう。
~~~~~~~~~~
数時間後。
物珍しげに観光する狩人を見て声を掛けてきた住人の案内を受け、狩人は冒険者ギルドへ訪れていた。
「他所から来た冒険者さんかしら? この街の冒険者ギルドはこっちよ」
との事だ。
武装を固めた姿は到底観光客には見えないらしい。
冒険者ギルドという物がなんなのか知らないが、ここで下手に否定すれば怪しまれるかもしれないと考えた狩人は、素直に案内を受けることにした。
正面に羽ばたく鳥の紋章が飾られた大きな建物。
そこが冒険者ギルドだった。
中へ入れば、トレイを片手にウエイトレスが忙しなく行き来していた。
ギルドと酒場が併設された作りになっており、食事時の人々やギルドの利用者でよく賑わっている。
一先ず受付カウンターに並ぶ事にした狩人だったが、カウンターは4つあるというのに明らかに行列の長さに差がある。
長蛇の列を後ろから目で追うと、その全員が男性であることに気がついた。
冒険者という職ならたしかに男性比は多くなりそうなものの、明らかに男性しかいないというのは奇妙なものだ。
首を傾げながら人の少ないカウンターへ並び、少し待つと狩人の順番が回ってきた。
「はい、本日はどのようなご用件でしょう?」
微笑む職員に狩人は冒険者になりに来た旨を伝える。
冒険者ギルドと言うからには冒険者の組合なのだろう。
全く別の場所から来た身分証明のできない狩人にとってある程度身元を保証される手段というものは得がたいものであり、機会があるならば必ず物にしておくべきである。
狩人は今回がその貴重な機会だと考えていた。
「分かりました。では、登録料として1000エリス頂きます」
狩人は眉を顰める。
1000エリス。
エリスとは聞いた事のない通貨であり、この街を訪れたばかりの狩人に手持ちなどあるはずもない。
縋る思いでポケットから輝く硬貨を取り出しカウンターに置く。
正気の人間がほとんど居なくなったヤーナムでは道標くらいにしか使えなかったそれに、とうとう活躍の場が与えられた。
ようやく日の目を浴び、はにかむようにキラキラと輝く硬貨を見た職員が口を開く。
「申し訳ありません、他の国のお金は使えませんね……」
やはりこれは輝くゴミだった。
心なしかくすんで見える硬貨をポケットにしまい、カウンターを後にしようとする狩人だったが、後ろから呼び止める声があった。
振り返ると、モヒカン頭のいかつい男。
難癖でも付けに来たのかとそっと腰の武器に手を伸ばす狩人だったが、警戒する狩人をよそに男は豪快に笑う。
「俺は怪しいモンじゃねぇよ兄ちゃん。見たところ登録料が払えなくて困ってるんだろ? 俺が払ってやるよ」
どこからどう見ても怪しいではないか。
警戒を深める狩人に男は続けて言う。
「なぁに、新入り冒険者に恩を売る以上の意味はねぇさ。今度会った時に酒でも奢ってくれりゃいい」
職員の方を見ると変わらず微笑んでいた。
どうやら珍しい事では無いらしい。
狩人は警戒していたことを軽く詫び、素直に好意を受け取ることにした。
警戒心が強いのはいい事だ、ガハハと豪快に笑う彼の渡した何枚かの硬貨を数えた職員が優しく笑う。
「はい、確認しました。それではまず冒険者について説明しますね」
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一通り説明を受け、差し出された書類に自身の簡単なプロフィールを書き込み、最後に手渡されたカードに触れた。
手が触れた途端にカードの空欄が瞬く間に文字で満たされる光景に狩人は瞠目する。
「はい、結構です。……おお、すべてのステータスが平均を大きく超え……あれ? 幸運が空欄のままだ。おかしいですね、そんなステータス見たことが……少々お待ちくださいね」
カードを持って慌ただしくカウンターの奥へ下がっていく職員を尻目に狩人は思考する。
幸運。
狩人には聞き馴染みのない数値だ。
体力や持久力、血質などは明確に数値として自分で把握しているが、幸運を数値にというのは初耳だ。
今日はツイてる等と言うように、幸運というものは不明瞭且つ可変的なものだと思っていたのだが。
しかし空欄というのもおかしな話である。
0でもなく空欄。
幸運の女神に嫌われたとでもいうのだろうか。
そんな益体もないことを考えながら、言われるがまま新しいカードに触れたり心当たりを聞かれたりとしたものの、終ぞ狩人の幸運値が明記されることは無かった。