【ゆっくり実況プレイ】イナズマイレブン円堂編無印ルート【嫌な予感しかしない】 作:桜来
番外短編「夜空と白竜」
それはある日のこと。俺が雷門に一時加入して、三国志の時代から帰ってきてからすぐの話だった。
今の俺は稲妻町に宿を取っており、その日は河川敷で1人練習をしていた。5時頃と早朝なのもあり、周りには誰もいない。
「…こんなものか。」
そろそろ練習を切り上げようとした時、誰かがこちらへ歩いてくる音が聞こえる。別に気にするほどのものでもないが、ふと気になりそちらを向いてみる。そこに居たのは顔の横部分の髪のみが白、それ以外は黒の長髪で、女性らしい顔立ちの大人だった。しかし、喉に喉仏がしっかりと目立っている。女性であればありはすれどここまで分かりやすくはないので、どうやら驚くことに男性らしい。
「やあやあ、君だよね?白竜くんって。」
「………知らない大人とは話すなと言われているので。」
「あはは、そりゃそっか。偉いね君。」
そう目の前の大人はけらけらと、本当に声変わりしているのかと思うほどの高さの…むしろ女性のものではないかと思ってしまう声で笑う。いまいち相手側の目的が掴めず、俺は警戒を強めた。
「あー実はね、雷門中に遊びに行ったら天馬くん達から君がこの町に来てて、何なら天馬くん達と協力してると聞いてさ。気になっちゃったんだよ。」
「………天馬達の知り合いですか。それならそうと言ってくれれば……」
どうやら彼は雷門の関係者らしい。俺は生憎ゴッドエデンに居る期間が長かったため知らないが、この様子だと雷門のOBなのだろうか。それはそれとしてすぐに素性を明かしてくれればこちらも警戒せずに済んだのだが、と思わずため息が出てしまう。
「ごめんね、僕は…夜空白斗。君ってさ、ホワイトハリケーン…使えるんだって?」
「ホワイトハリケーン?」
聞き馴染みのある名前が出た。ホワイトハリケーンは使えるどころか俺が愛用している必殺技の1つだ。…というか、彼の名前も聞いた覚えがある。何故テレビをまともに見ていなかった俺が知っているかといえば…
「僕もさ…使えるんだよね。ホワイトハリケーン。」
「……あなただったのか……」
そう。俺は少し前に「ホワイトハリケーンってことは、もしかして夜空さんに憧れてたりする?」と聞かれたことがあった。その時の俺は普通にその名前すら知らなかったので違うと答えたものの、狩屋に「素直じゃないなぁ〜」だとか何だとかからかわれて面倒だったのを覚えている。
「ん?聞いたことでもあったのかな?まあいいや。ホワイトハリケーンの使い手って聞いて気になっちゃってさ、昨日まで海外に居たんだけど来ちゃった。」
「昨日まで海外に…!?」
なんという行動力か。国によっては時間も資金も消費することになるが、それを迷いなく実行したというのは素直に尊敬に値する。
「ま、そういうわけでさ。もし良かったら…見せてくれない?ホワイトハリケーン。」
「まあ、そういう事ならば。」
「やったー!」
そう夜空さんは無邪気に笑うとコートの外に体育座りで座り込んだ。表情はまるで誕生日プレゼントを開ける子どもかのように期待に満ち溢れている。…さて、そういう事ならばこちらも全力を見せよう。
「はぁぁッ…!ホワイトォォッ…!ハリケェェェン!!」
俺が手をかざせば、ボールは白と黄の混ざった光に包まれていく。俺とボールが風で浮き上がれば、辺りはたちまち台風が起きたかのように突風が吹き出し、空では雲が渦巻いている。そして俺は、ボールを全力で蹴り込む!すればボールは光と風に包まれゴールへと突き進んでいき、そのまま無人のゴールへボールは突き刺さった。
「……すごいすごい!!すごい威力だよ!!」
それを見た彼はぱあ、と満面の笑みで言う。興奮しているのが嫌でも伝わってくる。子供のような人だな、と思ったのも束の間、一瞬で俺の元へと近づくと突然手を握ってきた。
「ねえ君!!僕の技、やってみる気はない!?」
「……はい?」
突然何を言い出すのかと思えば、必殺技を、か。
………確かに、興味はある。ホワイトハリケーン自体、俺が習得するのには長い時間をかけた技だ。それを使えるという彼も、相当の実力を持っているのは違いない。そして、必殺技の習得は単純に強化にも繋がる。より雷門の力になれるかもしれない。
「別に君が嫌ってんなら無理には言わないけど…」
「……いや、やってみます。」
「…ほんと!?やったー!」
「…それで、何の技を…?」
「ふっふっふ…それはね…トワイライトブレイズっていうドリブル技さ。」
そう言って、俺は特訓を始めた。
「ふむ…飛び上がりがもうちょっと足りないな。もっと足腰に力を入れて…」
「うーん飛び上がっても夕焼けが出てこないね。もっと、こう、夕焼けを頭の中にイメージする感じで」
「ここまでくればもう後少しだね!思いっきりかかとでボールをどーんっ!って蹴り落とそう!」
大体2時間ほど経っただろうか。疲労が溜まって、汗も多く出ている。そんな中、何度目かも分からない挑戦で、ついにその時は来た。
「トワイライトブレイズ!」
夕焼けをバックに飛び上がり、そしてボールをかかと落としで地面に叩きつける。するとボールは地面に落ちると共に強烈な横回転がかかり始め、炎の衝撃波を周囲に飛ばした。
「これは…」
「……完成だね!凄いよ!!ここまで速くに出来るとは思ってなかった!」
夜空さんはまたしても俺の手を握って、ぴょんぴょん、と音が聞こえてきそうな動きで跳ねる。その無邪気さは今俺が所属しているチームのキャプテンを彷彿とさせる所があるかもしれない。そんな事を考えていると、ふと音楽が鳴る。どうやら夜空さんのものだったらしく、彼はスマホを取り出す。
「もしもし?風丸先輩、どうしたの?え、うん。今こっちに来てるけど…え?飲みに?…やったー!行く行く!というか何なら風丸先輩の家に今から遊びに行ってもいい?僕宿取ってないしやる事もあんまり無いんだよねー。え、いいの?ダメ元だったんだけどラッキー!それじゃ今から行くね!」
誰かと親しそうに話している。風丸先輩、と言っている辺り電話しているのは風丸一郎太選手だろうか。イナズマジャパンになった事もあるミッドフィルダーだったと記憶している。…そこで俺の記憶が刺激される。かつて、ゴッドエデンに来るよりも前。一度だけ、イナズマジャパンの試合をテレビで見たことがある。その時に見た、流星群かのように輝く、強烈なシュート。確かそれを使っていた選手の名前も…
「あ、じゃあ僕は行くね!…あ、そうだ!天馬くん達によろしく言っておいて!それと…」
俺が何か言おうとする前に、彼は去り際で今までの態度からは想像できないほど真剣で、しかし何処か優しい表情で言った。
「未来人との戦い、頑張って。応援してるよ!」
そう言って、彼は疾風のような速さで去っていった。…少し俺の頭を撫でてから。
「……なんだったんだ、あの人は………」
練習の疲労というのもあるが、ひどく疲れた気分だ。ただ、彼からはサッカーへの真っ直ぐな思いが感じられた。悪い人ではないだろう。…さて、そういえば何も食べていなかったか。近くのコンビニにでも寄って何か食べることにしよう。
それから雷門中で天馬たちに彼の話をしたら、大層驚かれ、質問攻めに遭ったのはここだけの話だ。
・夜空くん
絶賛プロリーグで活躍中。ゴッドエデンから帰ってきた円堂から話を聞いてから白竜の事は気になっていたが、鬼道から白竜が来ているという話を聞いて日本に突撃した。
・白竜
この世界では太陽ではなく白竜が時空最強イレブンに参加している。
・Q.なんでトワイライトブレイズ?
A.天地雷鳴があるのにスターゲイザーを覚えさせるわけにもいかないし、ムーンバリアは流石に型落ち感凄いからの消去法。スピニングトランザム?プロトコルオメガの技な時点で論外。