大きな改変要素あり(最早いつもの)。
そろそろ地雷タグが仕事を始めます。
静謐と冷たい空気に満ちた常冬の洞。
そこに咲くのは、水晶と見紛う氷に花々
永い時を経て磨かれた氷壁は透き通り、
絶えずまばゆい輝きを湛えています
それはまるで、磨き上げられた鏡のよう。
しかし、壁面に映る自らの姿に足を止めてはなりません
美しい薔薇に棘があるごとく、
氷花の隙からあなたを狙う影があるのですから
霧氷の王が治める輝きの晶窟。
氷の鏡に映る未来は、果たして───
『氷晶の輝窟』
「わぁ……すっごく綺麗な世界……!」
「うん……! 壁も地面もキラキラ透き通ってて、見てるだけでも感動する……んだけど───」
「「さ、寒ーいー!」」
新たな絵の世界に降り立った双子が、感動もそこそこに身を寄せ合い声を揃えた。
青く透き通った水晶───のように見える氷によって形成された、巨大な洞窟。
氷室も斯くやと肌を伝う冷気に、見上げる程の氷壁、氷柱、氷天井。
壁面から、地面から、屹立する氷の花は、どこからともなく降り注ぐ光を弾き。
氷の隙間から湧き出す深青の清水は、静かに泡を立てながら輝きを湛えて。
「うぅ……ルーちゃんの言う通り厚着してきてよかったけど……まだ寒いなぁ」
「だねぇ。いつもの服で来てたら、今頃悲鳴上げてたかも……」
「「…………」」
以前の森とはまた趣の違った夢景色の中、寒さに赤く上気した頬から白い息を吐く双子。
そんな二人の背後で物言いたげな顔を見合わせたルーシャとマティアスは、しかし互いの脳裏に揃って浮かんでいるだろう言葉を喉奥に収め、小さく首を振るに留めた。
「えぇ。まさに『氷晶の輝窟』という名前がぴったり嵌まる世界ですね。想定していたとはいえ、もっと厚着して出直すのも手ではありますが……」
「魔物と出会す可能性考えたら、あんまりぶくぶく着膨れするわけにもいかねえし、仕方ねえさ」
「……ねぇ、ルーちゃん? ちょっと聞きたいんだけど……」
「おや、珍しいですね、リディー。どうかしましたか?」
「どうして、絵の中に魔物が居るのかな?」
「っ、それは……」
「絵の世界って、絵を描いた作者さんが想い描いた世界なんだよね? それならどうしてこの前の絵みたいに……特にあの、絵の中を『汚す』ような魔物が出てくるのかなって……」
「……分かりません。あの『黒い魔物』がどういう存在なのかは、わたしにも……」
「えぇー。不思議な絵について調べてたんじゃなかったの? ルーシャってば肝心なとこで頼りになんないんだから、もー」
「し、仕方ないでしょう! 不思議な絵については文献などの情報も非常に限られているんです! そこから『修復』に必要な道具のレシピにまで辿り着けたわたしを褒め称えるべきですよ!!」
「…………ほら、そんな話よりも、そろそろ調査を進めるとしようぜ。いざ出発、ってな」
「「はーい」……って、なんでマティアスが仕切ってるのさ」
「別に良いだろそれぐらい!? オレだって多少は騎士として───」
『ギャアアアアアア!!!』
「うおぉっ!? な、何だ!?」
氷晶の彼方から突如轟き響いた、
半ば反射的に発生源だろう先へと向けられた顔が四つ、およそ生物から発されたとは考えづらい濁り音に、各々の意識の外で慄き引きつった。
「今の……もしかして、魔物の鳴き声……!?」
「……だとは、思いますが……」
「また前の絵みたいに魔物が暴れてるのかな? 気を付けて進まなきゃだね」
「あ、ああ、そうだな。……この絵もまた、なにか起きてるのか……?」
気を引き締めるように頷き合い、氷の道を歩き出すリディーとスール。
他方、先とは異なる共通の懸念を視線で交わし合ったルーシャとマティアスは、双子に遅れないようにと足を進めつつ、潜めた声で囁き合う。
(……大丈夫なのか、ルーシャ? 確かこの先にいる奴って、『前』は……)
(ええ、分かっていますよ。今回は色々と備えもしていますし、なんとかしてみせます)
記憶の通りに絵の世界に轟いた、記憶に残る
───『氷窟の覇者』。
それが『前』の彼らが悪戦苦闘の末に打倒した、氷窟を縄張りにする竜の魔物に冠された名称。
その特徴は、竜の姿に相応しい膂力、投擲した爆弾を軽々と躱す飛行能力、更には眼前の物体を瞬く間に凍結させる凶悪な
加えて理由は不明ながら、
(……そっか。けど無理すんなよ? 確かに『前』は色々言って探索続行したけど、今回の二人はそこまでどうしてもってわけじゃなさそうだしな)
(…………そうですねぇ)
最後の一点に目を付け、『囮』を作ることで討伐成功した『過去』を知るマティアスが、諸々を込めた視線に煌々とした瞳を返され、諦めたように息を吐いた。
そんな彼の思いを知ってか否か、前を行く双子を見つめたルーシャは口の中だけで決意を呟く。
(……引くわけにはいきません。わたしは二人の『頼りになるお姉さん』なんですから)
(───なあ、ところでさ。この前、
(…………分かってなかったんですか!? 何も言わないから理解したものだと……というより、なんで今になって聞くんですか!?)
(その、意味を考えてるうちに忘れてて……で、急に今、聞かなきゃいけないような気が……)
(無駄に不吉なことを言わないでくださいよ……まったく、しょうがないですねぇ)
(ここを出たら、また相談の時間をつくりましょうか)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
───それは、一瞬の出来事だった。
ひときわ巨大な氷柱の影から、ざらつく叫声を伴い現れた
この輝く氷の世界を統べる王にして暴君。全身をまだらに『黒く』染めた竜の飛来。
驚愕を抱きながらも身構えた彼女達は、しかし碌に抵抗する暇すらも与えられなかった。
空を駆け接近した『氷窟の覇者』の第一
「ルーちゃん! ルーちゃーん!!」
悲鳴が上がった。
「る、ルーシャが……。カチコチに凍っちゃった……」
呟きが零れた。
呆然と立ち尽くす彼女達に『暴君』が何を思ったか、それは分からない。
されどうら若き乙女を一人、物言わぬ氷像へと変えた竜は、再び氷柱の彼方へと飛び去って。
「……ありがとう、ルーシャ。あたし、ルーシャのことは忘れないよ……」
彼女がいなければ、ここに
その身の犠牲がなければ、残された三人もまた無事では済まなかったかもしれない。
故にこそ。彼女の事を忘れないことこそが、自分達に出来る最大の
「───生きてます! 生きてますからっ! 人を勝手に故人にしないでもらいましょうか!!」
「あ、ルーちゃん、おはよー」
「流石はルーシャ。氷漬けになってたってのに元気だねぇ」
氷の地面から猛然と起き上がるルーシャ。しれっと切り替えて迎えるリディーにスール。
暢気に軽口を返す双子に青筋を立てた彼女の胸元では、確かな温風を放つ球体が浮かんでいた。
斯くの如き惨劇を眼前に、双子が平然と構えられた理由は明白。
氷に包まれた幼馴染の懐で直ちに起動した何らかの道具が、その氷を内部から溶かし始めた様を目にしたからであって。
「ふ、ふふん! こんなこともあろうかと、ぜ、全身氷漬けにされたってすぐさま中から溶かして脱出できる道具を作ってましたからね! ひ、冷えた身体も温められて一石二鳥……へくちっ!」
「あ……ごめんね、ルーちゃん。私、慌ててルーちゃんのことを盾にしちゃって……」
「う、あたしもごめん。まさかあんなことになるなんて……」
「ふぅ……反省してるみたいなので許してあげます。わたしは寛容ですからね」
とはいえ僅かの間でも氷に包まれていたことは事実。
しっとり濡れた身体を氷窟の空気に撫ぜられ顔色悪く震えるルーシャに、流石にばつの悪い顔を浮かべて謝る双子達。
「……しかし今回も───んんっ! 急に襲ってきたと思ったらルーシャ嬢を凍らせるなり帰って行っちまったな。なんだったんだ、あいつ?」
「ええ、なにやらわたしにご執心のようで……ふふ、魔物をも魅了してしまう、わたしの美しさ。最早これは罪なのかもしれませんねぇ、おーっほっほっほ! ……へくちっ!!」
「あはは……ルーちゃんが元気そうで本当に良かったよ」
「だね。……というかこんなこともあろうかとって、どんなことがあると…………っ」
いつも通りの自讃と高笑いを決めるルーシャに、リディーがこっそりと安堵の息を吐く。
一方で、暴威が飛び去った先へと目を向けたスールは、どこか憂いるような顔で口をつぐんだ。
「……ねぇ、リディー」
「スーちゃん? どうしたの?」
「『不思議な絵』の探索……ちょっと危険過ぎない?」
「「っ!?」」
「スーちゃん……」
その口から出た懸念の声に、言葉にならない驚愕を抱いたルーシャとマティアスが息を呑む。
他方、そんな様子には気付かないまま、妹の迷いを知ったリディーもまた思案顔を作った。
「魔物は多いし、何が起きるかもわかんないし……今回だって、何されてもピンピンしてそうなルーシャ以外が狙われてたら危なかったかも……」
「それは……そうだね。でも───」
「……リディー? その『そうだね』は絵の世界の危険性についてですよね? そうですよね? わたしへの認識について、改めてじっくりしっかり話し合う必要はありませんよね?」
「まぁまぁ、今は黙っとこうぜ。な?」
「スーちゃんは感じなかった? さっきの魔物……このまま
「っ、それは……」
何やら猛る
そこに同じ思考の存在を確信してか、リディーは抱いていたらしい危惧をぽつぽつと紡いだ。
「前の絵のお化けさん達と同じだよ。あの魔物も何だか『黒く』滲んで……イヤな感じがしてた。あれをそのままにしてると何か大変なことが起きる予感がするの。……スーちゃんもじゃない?」
「……ああ、なるほど。
「ルーシャ?」
スールが反応するより先に、リディーの言葉に反応したのはルーシャだった。
独り言のようにも思える呟きを溢した彼女は、注がれた視線を受け止めつつ頬に手を添えて。
「リディーに言われるまで言葉にはできてませんでしたが、確かに
「……言われてみりゃオレもそうだな。あの森の時だって、呪いがどうこうよりもとにかく何とかしねぇと、って感覚の方が強かった気がするし……」
ルーシャに続くように、己を省みたマティアスもまた硬い表情で首を縦に振る。
双子は知る由もないだろうが、ついさっきまで探索中断も視野に入れていた筈の自分が、それに繋がる発言をしたスールに真逆の驚きを感じていたのだ。
知らぬ間に起きており、また改めて気付かされた自身の心の動きに重々しく頷いて。
「……正直、オレは帰りてぇ。けど誰かが急ぎで調査しなきゃなんねぇと思うのも確かだし、この面子以上にそれが出来る人員がいるかってなるとな。……そもそも錬金術士以外が絵の世界の物を調べても『なんか不思議』で終わっちまうし……」
「どうしてもというなら他に頼れるのはイルメリアさんくらいですが、それにしたって事前調査は必要でしょうからね。……戻るにしてもあと少しだけ奥地に進んで、あの竜の様子を確認してみてからにしませんか?」
「うん、私も賛成だよ。いつも忙しそうなイル師匠にあれこれ何でも頼むわけにはいかないし……スーちゃんもそれでいい?」
「…………うん」
※原作既プレイの方へ
地雷タグ:「不在キャラ多数」
原作では
とはいえ前作と違って全くの不在にさせる予定ではなかったりします。乞うご期待。
……そっちじゃない? あにはからんや。
原作プレイ中、同イベントでのリディスーの主張がどうにも引っ掛かっている作者です。
危険性を説かれての返答として納得感が欠片も無いなと。今作のタグにも「アンチ・ヘイト」を含めている理由の一つでもありまして。
まあ納得できないならできるよう改変するのが二次創作。リスペクトは忘れるべからずですが。
今作の
……なんか不穏? あにはからんや。
※原作未プレイの方へ
厚着させたのは改変要素です。ゲーム内では大人の事情で(ry
また服装云々の話をすると、数いるアトリエ主人公達の中でも、とびきりやばい格好してるのがリディーちゃんだったりします。なんなら作中でもスーちゃんから言及されていたり。
まあ一番やばいのは、その服が二人の母親謹製のデザインということなんですが。
娘になんつー服着せてるのよ、オネット母さん。気になる方は原作を(ry
あとルーシャが全身氷漬けにされるのは原作通りです。原作通りです(大事なことなので(ry)
期間はプレイヤー次第ではありますが、大体解凍に必要な品を改めて用立てることになるため、その道具作成のために最低でも9時間は氷像になってます。……なんで生きてるの、この娘?