幸せな絵画の王国   作:非単一三角形

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 第一部完……的な回。
 今話を最終話にするべきか結構悩みました。

 しかし折角なら撒いた伏線を回収したいなということで続行することに。
 その影響もあって次回更新まで少しばかり時間が空く予定になります。ご了承の程を。

 また今回、原作未プレイの方に向けた後書きが少々長めになっております。
 いっぱい固有名詞出したからね。仕方ないね。



第20話 王国新生

 

 

「───女王様! コルネリア商会から復興用物資については特別価格による提供を約束するとの回答が得られました!」

「本当ですか! えっと───分かりました。品目について財務の方と協議に入ってください!」

 

 

「女王様! 旅の人形師一座から、慰労を目的とした人形劇開催の許可申請が上がりました!」

「人形劇……分かりました! すぐに許可を出してください!」

 

 

「女王様! ライゼンベルグを始めとする各地域から支援物資の申し出が届いております!」

「ライゼンベルグ……!? ありがたいけど、どうして……?」

 

「詳しい理由については不明です。……どうも市井では、教会のシスターが個人的な伝手を使ったとの噂が流れているようですが……」

「…………分かりました。とにかく受け入れの準備をお願いします!」

 

 

 

 アダレット王国、王城。謁見の間。

 未だ雷禍の痕跡色濃く残るその場所に、されど無数に飛び交う声に駆け音。

 

 急拵えの天幕に遮られた玉座の周囲。明るい陽射し差し込む青空議場。

 黒き雷雲払われた晴天の下、駆け合う彼らに疲労は見えど、その足取りは軽やかに。

 

 

「女王様!」

「女王様!」

「女王様ぁ!」

 

「……う、うぅ~……」

 

 

 一様に、口々に。喜色宿した奏上の声を浴びるは一人の少女。

 最低限の体裁を整えられた玉座の上、()()()()()()()腰を居心地悪げにもぞもぞと。

 

 震えるその身を抑えるのは責任感か、はたまた分不相応な居場所への恐縮か。

 それでも出すべき指示を出し終えた後で、束の間の時間を得た彼女はいよいよ天を仰いで。

 

 

 

「…………どうして私が女王様なんですかぁ!? ミレイユさぁーーん!!」

 

「うふふ……結構似合ってるわよ、()()()()()()()?」

 

 

 

 隙間風吹き交う王城に、響き渡るは少女の───()()()()『リディー・マーレン』の嘆き声。

 当然といえば当然に過ぎる疑問の叫びに、()()()()()()()ミレイユは楚々と微笑むのであった。

 

 

 

 

 

 

「……いやあ、まさかうちの娘が女王様になっちまうとは思わなかったなぁ」

 

 そう広くはない天幕の下、戸惑い半分にぼやくは新女王の父、ロジェ・マーレン。

 娘達公認の『ダメ親父』だった身でも都に残った錬金術士の端くれ。この鉄火場に遊ばせられる人材など無いとばかりに放り込まれた彼は、この数日で濃くなってきた無精髭をさすった。

 

 

「私だって、こんなの考えもしてなかったよ。どうしてこんなことに……」

 

 周囲に相談しつつも敢然と指示していた姿はどこへやら。ぐったりと()()を伸ばすは雷神討滅の英雄にして新たなる為政者、リディー・マーレン。

 やはり急拵えの、どころか錬金術にて急遽自作することになった王冠を手慰みに弄りつつ、目を向ける先はすぐ隣。相談相手であった『彼女』の方で。

 

 

「……まぁ、真面目な話、理由は色々とあるのだけどね」

 

 やや恨めし気な少女の視線を、苦笑と共に受け止めるは旧王族最後の一人、ミレイユ。

 老齢の身だった父王の意向の下、暴虐の雷神から多くの民の命を守り通した彼女はされど、薄く陰を背負った声音で内心を語る。

 

 

「国を亡国にしてしまった旧王家の生き残りが復権するより、その国難を見事に打ち払ってくれた英雄を新たな旗頭に掲げる方が多方面に対して都合が良いのよ。錬金術を軽視していて滅んだ国が錬金術士に救われてー、っていう経緯も上乗せで語れば申し分なしだもの」

「うぅ……そう言われたらなんとなく分かりますけど、だからって……!」

 

「……それに、元々私は戴冠する予定どころか、王族に残るつもりも無かったの。近い内に市井に降りるつもりで準備をしてたんだけど…………まったく、あの愚弟ったら最期まで……」

「っ、……」

 

「…………ごめんね。勿論こうなったからには私も投げ出しはしないわ。一役人として復興に力を尽くさせてもらうつもり。……ありがたいことに、そこそこ人望も残ってたみたいだし」

「ミレイユさん……」

 

 

「あー……まぁ、王都からの避難民をまとめるあなたの姿は誰もが見てたわけですし、前の王家の責任がどうたらとガタガタ言うような奴なんか、そうは居ないでしょうよ」

「ふふ、そうですね……ありがとうございます、()()()()

 

「え? あ、あぁー……そっか、女王の父親だもんな、俺。そうなるのか……ううむ……」

「お父さんに『様』付け……なんか、勿体なさ過ぎる……」

 

「……娘が辛辣で泣きそう、と言いたいとこだが、正直同感だな……」

 

 身の丈に合わな過ぎる扱いに、鳥肌立った身を撫でる姿は成程親娘の縁を想起させるもの。

 揃って頭を抱える姿が駆け回る役人達の癒しになっていると、知らないのは当人達ばかりで。

 

 

「……なんなら現場ばっかりじゃなくて、こっちの方も手伝ってくれていいんだよ、お父さん? ミレイユさんが言うには、お父さんの立場にだって政治的な価値は結構───」

 

「───おぉっと、そうだ! 今日はヴォルテールの方に顔出すつもりだったんだ! ……兄貴もすっかりへこんじまってるし、また弟として元気づけてやらないとだからな。……んじゃ!」

 

 

「あ、逃げ……たってわけでもないか。どこも大忙しなのは間違いないもんね」

 

 さも思い出しましたとばかりに駆け出すロジェの背中に、地下画室に逃げ込む姿を幻視しつつ。

 如何な『バカ親父』でも逃げる余裕はないだろうと、なけなしの信頼を籠めて頷くリディー。

 

 事実、これまで娘達の前では交友の素振りも見せたことはなかった『兄』と共に錬金術士として働いているのが確かなことは、新米女王の手元にも届いていた。

 一方で、もう少し早くその姿を見せてくれてれば……などとも思いつつ、彼女もまた益体の無い愚痴から切り替えにかかる。

 

 

「……あ、そうだ、ミレイユさん? 先日届いた報告なんですけど、この国境の辺りにある大橋が()()()()()()()()、というのはどういうことなんでしょうか?」

「え? ちょっと待って何それ? …………ほんとね。たしか、ファルギオルの通った経路付近にあって、ぐっちゃぐちゃに壊されてたって報告を受け取ってたはずよ」

 

「それが何故か直ってる……? 誰かがこっそり直してくれたんでしょうか?」

「……石造りの大橋よ? 修理には人手も物も、それから時間だってうんざりするほどかかるわ。こっそりは勿論、こんな短期間で直せる方法なんてあるわけが───」

 

 

「女王様! 王城受付に謁見を求める方が来訪されています!」

 

 

「……謁見?」

「あら……」

 

 面妖な報告に首を傾げる女王、元王女の意識を、息せき駆け込んだ役人の一報が掻っ攫った。

 きょとりと目を丸くするリディーの傍ら、微かに眉を顰めたミレイユは、しかし念を押すように問いかける。

 

「……普通の相手なら受付の時点で遠慮してもらうように伝えるところなのに、ここまで知らせにきたってことは、相応の人物なのね?」

「はっ! これは私見ですが、それだけの価値ある方々と存じます!」

 

「……だそうですが。いかがなさいますか、女王様?」

「…………えっ!? あ、はい!! えっと……来られたのはどういう方々なんですか?」

 

 一瞬で臣下の顔になったミレイユに驚きつつ、報告の故を尋ねるリディー。

 対して問われた彼は意を得たりと頷き、晴々とした声音でそれに答えた。

 

 

「担当の者の話では───『公認錬金術士』二名を含む一行とのことです!」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───旅路の中でこの国の事を耳にし、公認錬金術士の資格を持つ者として力になれればと思い立ち寄らせていただきました。ソフィー・ノイエンミュラーと申します」

 

「わぁ、可愛い女王様! ……あっ、すみません。ソフィー先生の弟子のフィリス・ミストルートです! わたしも公認錬金術士やってます! よろしくお願いしまーす!」

 

「……孫弟子が失礼いたしました。プラフタと申します。以後、お見知りおきを」

 

 

 

「あ、はい、これはご丁寧に……こほん。ご助力大変頼もしく思います。国を代表するものとして精一杯の感謝を送らせていただきます。……と言っても私は、何故か女王様になっちゃっただけのごく普通の錬金術士に過ぎませんので、どうぞおかまいなく……

「こらこら、リディーちゃん???」

 

 

 謁見の間に通された三人の錬金術士、ソフィー、フィリス、プラフタ。

 彼女達を前に取り繕おうとした威厳を一瞬で剥がれ落としたリディーへと、ミレイユから笑顔の指導が入った。

 

 錬金術士唯一にして最高の資格、『公認錬金術士』。

 遠き都市ライゼンベルクにて一年に一度、世にも過酷な試験により認定されるそれは、並外れた腕前を保証する英知の証。

 そんな先達を二人、加えてその師をも眼前に、女王として偉ぶれとは酷な指導もあったもので。

 

 

「だ、だってミレイユさん! 公認錬金術士ですよ!? 錬金術士としての大先輩なんですよ!? そんな人達に頭を下げられちゃったら、とても落ち着いてなんていられないですよ!!」

 

 

「あはは……何だか大変そうだね、女王様も」

「……古の荒ぶる神を撃退した英雄と聞きましたし、相応の腕前をお持ちのはずなのですが……」

 

「…………まぁ、威厳云々は国の体裁がもっと整ってからでもいいかしらね……。失礼しました。未だ復興の途上の為、大した持て成しもできませんが、歓迎させていただきます」

 

 ぐるぐる眼で本音をぶちまけるリディー。道すがら聞き及んでいた話題の新女王(英雄)の実態に、頬を掻いて苦笑いを見合わせるソフィー達。

 ぐだぐだになった顔合わせに一度天を仰ぎつつ額を押さえたミレイユは、されどこの千載一遇の出会いにこそと気を取り直すように一礼した。

 

「あっ、はい。こちらこそおかまいなく! 実のところ、目についた人の悩み事を解決してたら、いつの間にかお城の近くにまで来てたってだけですし!」

「そ、そうですか……」

 

 他方、フィリスの口から元気良く語られた実情に、少々圧倒されつつ頷きを返すミレイユ。

 その二心を感じさせない言葉に、急遽集めた報告───その言の通りなら通りすがりに行われた様々な『善意』の記録───が頭を巡り、その目は感謝の念を宿しつつも遠景を映す。

 

 

「……『目についた悩み事』?」

「ミレイユさん? どうかしたんですか?」

 

「いやちょっと……うん。やっぱりそうよね。もしかして……」

 

 そうしてふと、雑多な情報を脳内で並べ直したミレイユの思考はとある可能性を導き出した。

 ある種の『特徴的な』報告───錬金術士が関わったらしい案件から推測できる眼前の彼女達の入国経路、そしてその道筋に転がっている直近の疑問へと。

 

 

「……あの、つかぬ事をお聞きするようですが……国境付近にある、壊れていた筈の石橋について御心当たりがあったりしますでしょうか?」

「橋……? あ、来る途中に直したやつですか? ……ひょっとして、直しちゃダメでした?」

 

「あ、いえ、ダメということはないんですが……その、どうやって?」

「どうやってって……『橋を直す道具』を使って、ちょいちょいっと」

 

「…………ちょいちょいっと、ですか」

「さ、流石は公認錬金術士……格が違い過ぎる……!」

 

 軽く言われた大事業、になるべき事象の省略に呆然とするミレイユ。慄くリディー。

 暫しの沈黙の後、視線を合わせた二人は、やや諦念じみた様子で苦笑いを浮かべた。

 

「……こちらで何かをして欲しいと頼むよりも、自由に活動できるように根回しをしておいた方が良さそうな気がします」

「そうね、私も賛成よ……方々にはそのように知らせておきますので、どうぞお好きなように力を振るって頂ければと思います。報酬については都度相談と───」

 

「ああ、要らないですよ、そんなの。こんな状態の国から報酬を貰うなんて気が引けますし……」

「そうもいきませんよ、ソフィー。無償で引き受けては、むしろ困らせてしまうというものです。

……私が二人の窓口として対応させていただきましょう。二人とも、人助けに駆け回って碌に城に寄り付かない様子が今から想像できますから」

 

「はは……そうして頂けると助かりますね。……大変に」

 

 ある意味世にも恐ろしいことを言い出すソフィー。横から諫めるプラフタ。苦笑するミレイユ。

 王国側の二人が何となく彼女達との付き合い方を察し始めたその時、はたと思い出した、という様子でフィリスの手が上げられた。

 

「あっ、そうだ! ついでに一つ聞きたいことがあるんですけど……」

「あ、はい。フィリスさん、でしたね。なんでしょうか?」

 

 

 

「わたし達より先に、わたしの友達がこの国に来てるはずなんです! たぶんここでもアトリエを開いていると思うんですけど、どの辺りにあるか───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───女王様! 第一王子マティアス様ならびに

 スール・マーレン殿、

 ルーシャ・ヴォルテール殿、

 イルメリア・フォン・ラインウェバー殿の()()の手配について報告が───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………え?」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───そう。上手くいったのね」

 

 

「対雷神用に描いた世界……まさかあいつも、そんな滅び方をするとは思わなかっただろうけど」

 

「それで、あなたは……ああ、やっぱり残留思念には違いないのね。……双子の姉の魂に引かれて一緒にこの絵に入って来ていた、のかしら?」

 

「だとすると絵の中の彼女と同様に、あなたも生まれていて……絵が完成した時に魂と混ざった。理屈をつけるとしたらそんな感じになるわね。悪いけど、これ以上はわたしにもお手上げよ」

 

 

「……ああ、ちょっと待って。これからも絵の世界に生きるあなたには、ひとつ伝えておかないといけないことがあるの」

 

 

 

「『黒の絵の具』には気をつけて」

 





※原作既プレイの方へ

 出番があったよ! やったねフィリスちゃん!

 ……なお、現実世界側の描写は以降予定しておりません。あしからず


 マティアス王子の代わりに王家の試練を突破しちゃう双子から着想しました女王ルート。
 原作ミレイユさんの冗談が現実になっちゃった形ですね。せやなしかたなし


※原作未プレイの方へ

・コルネリア商会
 前々作および今作に本来出演するキャラ、コルネリア(クール系ロリ)を(ボス)とする商会。
 アダレットの隣国では既に有名な商会らしく、販路拡大目的に市場調査として都に露店を開く。それも商会主であるコルネリア自らが。タイチョーミズカラガ!?

・旅の人形師一座
 三作皆勤キャラな人形師の父親と、前作からの続投キャラな脚本家担当の娘の二人組。
 父娘揃って実にキャラが濃い。作者の短編の方には出てるので気になる方はそちらを(ry

・ライゼンベルグ
 前作に登場する重要拠点。錬金術を非常に重視している大都市。
 今作のアダレット王国はこちらの対極として描かれたのかもしれません(個人の意見)。

・個人的伝手を使った(?)教会のシスター
 不思議シリーズ通り越してアトリエシリーズに(ほぼ)皆勤賞な、いわゆる『例の御方』。
 リディス―世界においては200~300歳(自称)の幽霊(ガチ)な教会勤務のシスター。
 ……画面に入れると色々バグるのでここまでなのです。

・アダレット王国の王冠
 戴冠式にあたり、次期国王が職人に依頼して作るしきたりがある(原作マティアス談)。
 なお原作でも次代用のそれを作成するのはリディス―である。職人……?

・ロジェの兄貴
 ルーシャの父親。リディス―にとっては伯父にあたる人物。
 すなわち双子とルーシャは従姉妹の関係にあたるのだが、原作で双子がそれを知るのはもう少し後のイベントなため、拙作では幼馴染表記に徹しているという裏話があったりする。
 アトリエヴォルテールの先代主であり、錬金術士としての腕も相応。対ファルギオルにおいてはイルメリアと共に先陣を切るなど、物語的にもそれなりに重要な立ち位置にいる人物。
 ……なのに顔も名前も3DモデルもCVすら用意されてない不憫な御仁。どうして(電話猫感)

・橋を直す道具
 自己増殖する石材(!?)により、半ばで崩れていた石造りの橋を瞬き程の間に修復する代物。
 人工太陽に並ぶフィリスのヤバイ業績の一つ。工事夫という仕事が駆逐されてしまう……

・フィリス
 前作主人公。元小動物系天真爛漫爆裂元気っ娘。原作ではパーティメンバーの一人。
 イルメリアの親友。

・プラフタ
 本だったり人形だったりするソフィーの師匠。永遠の16歳 御年およそ520歳。
 おばあさんとは呼ばないで。

・ソフィー
 フィリスの師匠な前々作主人公。リディスーにおいては格が数段違う存在として描かれている。
 時間停止、概念書き換え、世界を終末に導く炎等、凡そフレーバーテキストに終始するもののやってることの規模が尽くヤバイ(直球)。なおパーティメンバーの一人兼裏ボス枠でもある。

 気になった方は原作を(ry

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