「まぁ」や「ねぇ」など、小さな「ぁぃぅぇぉ」を多用する文章は原作テキスト準拠です。
他のタイトルで見た覚えはあんまりないので、リディー&ス―ルの特徴と呼んでもいい、ハズ。
「「───
「……どうしてこうなったのかしら」
通りを歩いていた双子に道を尋ねた女性、イルメリア。
つい先日よりメルヴェイユに居を移した錬金術士である彼女は今、自身のアトリエにて目の前に下げられた二つの頭に天を仰いでいた。
地元の錬金術士だという姉妹に曰く。
独学で磨いてきた自分達の錬金術に限界を感じていること。
亡き母との約束を果たすためにも、腕前を上げねばならないと思い決めていること。
その第一歩としても、国の敷いた制度試験を突破できるだけの実力が欲しいということ。
そしてこの王都に、他に頼れるような錬金術士のアテなど望めるべくもないのだということ。
「───あたしたち、なんとしても錬金術、上手くならなきゃいけないんです!」
「『国一番のアトリエ』にならなきゃいけないから! それが、お母さんとの約束だから……!」
「そう……事情はわかった。アタシをからかってるわけじゃないみたいね」
そんな年若い少女達の嘆願に、イルメリアは腕を組んだまま鷹揚に頷いてみせた。
当の王国が件の制度を始めるにあたっての招致招聘に応じた錬金術士、その
「で、これがその試験課題、と。…………なるほど。意地が悪いわね、これ」
「えっ?」
「上手い具合にレシピに穴が作られてる。アレンジしないとまともな道具は作れない……というか思ってたよりレベル高いわね。これはまた随分と豪快な足切りだわ」
「えぇー……ルーシャってば、何してくれてんの……」
制度の参加希望者に配られる課題に仕掛けられた意図を流し見で看破し───その難度の高さに少なからず驚きつつ───イルメリアは双子への返答を考えるべく思考を巡らせる。
長年の施政により、国内にはめぼしい錬金術士が殆どいない事を理由とした自身の招致。
それが錬金術士を優遇する新制度と併せ、在野の錬金術士を集める呼び水というのも承知の上。
そこに加えて出来れば、という風情であったが───数少ない国内の錬金術士の教導についても期待の目を向けられていたのは己の勘違いではなかろう。
加えて眼前の二人についても腕前は未確認だが、その意欲の高さは十分に伝わってきている。
教える側に立つ自分というのも、いつかはと密かに考えていた事だ。……少々早い気もするが。
「…………いいわ、考えてあげる。ただし、あなた達も一晩じっくり考えなさい」
そんな諸々の思索の末にイルメリアが選んだのは、やや猶予を設けた受容の姿勢。
はっと息を呑みながら顔を上げた二人へと、彼女の言葉は釘を刺すように続けられる。
「それと、あなた達の年齢で保護者を通さずに決めていい事じゃないし、必ず話はしておくこと。それで考えが変わらないようだったら、またこのアトリエに来なさい。わかった?」
即答は流石に互いの為にならない。
それと同時に、申し出自体には気を悪くしてはいないと表した形の返答であった。
「わーい! わかりました、
「し、師匠はまだ早い!」
しかし、一歩譲れば三歩踏み込んでくるのがこの
「……あーもう! ほら、帰った帰った! アタシはこれからまた仕事があるのよ!」
「はーい、じゃあ帰りまーす。イル師匠、またー!」
「あんたもか! だから早いって言ってんでしょうが!」
訂正、
示し合わせたように通じ合う双子に、知れず口角を上げたままの怒声が飛ぶ。
「……はぁ。ええ、またね。バイバイ」
子供らしい微笑みを見せる二人に、気勢を失くして投げやりに手を降るイルメリア。
見た目より数段図太いらしいと悟った双子の背を、見送る彼女の顔に浮かぶは呆れ笑い。
「……それにしても、イル師匠、かぁ」
「…………」
「えへへ、意外と悪くないじゃない……!」
なお、陥落済みであった。
「あれでも一目で見抜かれるとは流石イルメリアさん……しかし、あの様子ですと……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「───ただいまー。お父さーん、ちょっと話が……あれ?」
「……いないの? はぁ、またどこほっつき歩いてるんだか……」
師匠のアトリエ(双子の中では確定済み)から自宅へと戻ってきたリディーとスール。
言われた通りにと父親の姿を探した二人の視線は、先日の焼き直しが如く室内を泳いだ。
「まぁ、いないならしょうがないね。いい時間だし先にご飯に……あっ」
「リディー? ……あちゃー、食材切らしちゃってたんだ」
心情としてはすぐに話したかったが無理なら仕方ない。
というか師匠(双子の中で以下略)にはああ言われたけど、別にいい気がする。バカ親父だし。
……そんな思考を口に出すこともなく共有していた二人が、何事もなく日常に戻ろうとしていたその時であった。
「うん。買いに行くしかないね。まぁ、こないだの依頼の報酬があるから…………ん?」
一家の生活費が収められたその場所を覗いたリディーの身体が、はたと凍り付いて。
「……ん? あ、こんなとこに書き置きが。お父さんかな? なになに…………は?」
これまたいつかのように貼り付けられていた紙に気付いたスールが、それを手に取って。
"───さっき通りに出たら、描きやすそうな絵筆が売ってたから、買っちゃった♪"
"で、食材を切らしてたのと、買うお金も無くなったことに気付いたのは、その後でだな……"
"………………すまん!"
"さすがに反省中のお父様より"
「………………よし、地下室にある画材を売っぱらおう、リディー」
「えっ!? ………………なるほど」
数秒の沈思の後、スールから出されたのは実に手っ取り早くも身も蓋もない集金案。
思わずという調子で目を見開いたリディーはしかし、同じだけの空白を経て平坦に頷いた。
常の彼女ならば、妹に提案された行動を止める側に回っただろう。
その脳裏に過った、地下室には立ち入らないように、という前々からの約束等を理由に挙げて。
されど衝撃による硬直が抜けさり、事態に理解が及んだリディーの口は冷えた呟きを溢す。
とりわけ、
「……約束を破る人は、約束を破られても文句言えないもんねー……ふ、ふふ……私が毎月家計のやり繰りにどれだけ苦労してるかも知らないで……ふふふ……」
「そ…………そそそそうですよ、リディーお姉様! ま、まったく、あのバカ親父めぇ……っ」
他方、思いのほか黒々としたオーラを放ち始めた姉に、自身の分の怒りが引っ込むスール。
なにぶん、吐き出された不満について、父と共に丸投げしていた自覚は大いにあったが故に。
……最近こっそり買って気付かれないよう祈っていたぬいぐるみの事を思い出したりもしつつ。
「……それでなくても、お父さんが毎日毎日地下室にこもって何やってるのかも気になってたし。次々画材を買ってきて何を描いてるのか、この機会に確かめておくのもいいよねって」
「おおぅ、オーラが引っ込んだ……うん、そうだね。バカ親父が何してるか、暴いてやろう♪」
「うっわぁ……! 綺麗な絵……!」
「うん……! これ、お父さんが描いたのかな……?」
胸の内に溜まりに溜まり、ついに蓋を突いた憤懣と共に押し入った地下の
そんな二人を迎え入れたのは、巨大ながら精緻な描き込みの窺える一枚の絵画だった。
───虹色の雲海に浮かんだ、花咲き乱れる浮遊島。
歪曲した縁から零れ、色彩豊かな空へと注がれていく青い水。
明らかにこの世のものではない、にもかかわらずどこか写実性を感じさせる───少なくとも、作者は実在の景色として描いているかのような───力の込められた風景画。
……果たしてこれが本当に、
素晴らしい絵に対する紛れもない感動と共に、抗えない疑念が双子の思考をよぎって。
「わかんない……。わかんないけど、もう少し近くで……!」
惹きこまれるように、双子は壁に飾られた絵画へと歩を進めていく。
その二対の瞳に、この世ならざる天界が如き景色だけを映して。
されどそうして踏み込んだその足は、地下室の床を叩くことなく
「……あれ? 何だか、気が……遠く……?」
瞬間、身から滲み始めた光を、すとんと閉じた瞼が覆って。
倒れゆく二つの身体を、丸く形を変えた
焦がれ魅入られた絵画へ向かい、飛び跳ねたとき。
「「───っ」」
少女達の姿は、もう何処にもなかった。
※原作既プレイの方へ
S〇Pかな?(すっとぼけ)
『初回』の描写って割とホラーっぽさあったなと思わないでもないのですよ。
イルちゃんサイドの背景をちょっと捏造。
後に明かされる事情からして、まさに三顧の礼で彼女を迎えてそうですよね、アダレット王国。
……まあ、後で在野から
きっとミレイユさんはガチャ運強い(確信)。
※原作未プレイの方へ
イルメリアは前作『フィリス』からの続投キャラ。
主人公勢以外では珍しい、作中世界観で錬金術の到達点とされる『賢者の石』にも手を届かせているだろう描写が存在する人物です。『今をときめく超一流の大天才錬金術士(ガチ)』。
……まあ、主人公勢≒プレーヤー達は最終的にスナック菓子感覚で使いますけどね、賢者の石。
持ち込めば『到達点』すら量産しちゃう
なお本作の彼女に師事する流れには若干省略入ってます。
気になった方は原作を(ry
そして子供達が稼いだ生活費で画材買うバカ親父さんは原作通りです。マジかお前。
まあ流石に反省はしてましたし、画家として絵を売ったりの収入はちゃんとあるらしいんで……
ちなみにCVは子〇氏です。みんな大好きテラ〇安。実はアトリエにも出てたぞテラ子〇。
〇安ボイスなダメ親父が気になった方は原s(ry