ホラー度マシマシざわめきの森(当社比)。
とはいえ無軌道にブッ込んだわけではないです。これも今後の伏線なのですよ。ええ。
絵の中のイベントは特に捏造が多めになる予定。
というのも原作に忠実に描こうとすると、思ったより小説としてのテンポが悪かったのです。
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この看板を読 んだあな■たへ ■
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■お気の■毒です が、あなたは呪◆◆れ てしま■まし た
呪い を解きた◆けれ ば、墓場 ■までおい でくだ■さい ■ ■
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「───ぐすっ。なんでぇ……? あたし、何か悪いことしたぁ……?」
「わー! だ、大丈夫だから泣かないで! 看板に書いてあることなんて気にしちゃダメだよ!」
絵の中に広がる世界への興味を意識に、目を閉じれば身を包んだ一瞬の浮遊感。
再び開けた視界に飛び込んだのは、数舜前まで眼前にあった画廊の面影すらない月下の森景色。
奇怪に捻じれた大木。薄明りを放つ草花。
怪しく畝る黒の水面。人ひとりを優に超える巨大南瓜。
怒涛と押し寄せる非現実に、非日常に、慄き勇み歩を進めていたのも束の間。
案内板とばかりに掲げられた看板を読み上げ、今にも泣き出しそうな顔で振り返ったスールを、慌てて宥めるリディーの姿がそこにあった。
「しっかしまあ、これ見よがしにデカい看板立てといてコレってのが、また悪意というか遊び心というかだよなあ……」
「そう、ですねぇ」
「しかも、お化けが出そうで怖い、なんて震えながら進んだ先で見つけちまうんだから、なかなかスーも災難だぜ」
「……そうですねぇ」
そんな双子から少しばかり距離を開け、訳知り顔で頷くマティアス。
他方、そんな彼に相槌を打ちつつも、双子から視線を外さずにいたルーシャは首を傾げて。
「それでもリディーを一人にはできねぇってついて来るんだから良い姉妹───どうした?」
「いえ、なんと言いますか……あの看板、
そこは、長く人の手が入っていない、といった風情の森の中。
いわゆる『如何にも』な雰囲気に調和させるためか、少なくとも作りたて新品には程遠い、古く草臥れた看板を今一度見上げて、ルーシャは疑問の声を上げた。
───二人は知っている。
この絵に住む「お化け」達が「呪い」など物騒な言葉を使いつつも、実態は絵に入ってきた者とただ「遊び」たいだけの無害な存在であることを。
いわばこの『ざわめきの森』は、不思議な絵という媒体によって実現された、非常に大掛かりな『お化け屋敷』であるのだと。
元来、絵の中の世界とは作者が頭に思い描いていた世界が具現化したとも言えるもの。
内部にも時間経過の概念こそあれ、経年劣化痕の類いは往々にして「そうあれかし」と描かれた代物だろうと思われる。
つまりこの絵の作者は誰もが想像する『お化け屋敷』が丸ごと一つの世界となった様を想像し、それを思うままキャンパスに叩きつけたことが推察できるのだ。
真実は既に遠い歴史の彼方だが、そう間違ってはないだろう認識を二人は共有していて。
「新品ピカピカの看板では雰囲気が出ないですし、そこそこボロボロだったとは思うんですが……あんなふうに
「……言われてみりゃそうだな。なんつうか、看板に
『けけけ……。呪わレた子、 あ そ みーっけ、けケケ…』
「ひいいいいいっ!? お、お化けぇ!? やだ、やだやだー! こっち来ないでー!!」
「スーちゃん!?」
「え……」
「あれは、魔物、か……?」
黒。
悲鳴に振り返ったルーシャ達の目に入ったのは、光を呑み込まんばかりの黒の塊。
記憶にある光景の通りのようで、どこかが、何かが、
足元からぞわりと忍び寄るような、沸き立つ違和感と怖気に襲われながらも。
『呪ワレた子は……僕たチガ連れ あそ ぼ て帰っチャウぞー!』
「っ、二人とも、下がれ!」
「壁役はマティアスさんに任せて、
「「りょ、りょうかーい!」」
一瞬の目配せで腹を括ったルーシャとマティアスは、黒の魔物の前へと飛び出すのだった。
「───リディー。もうあたし、ダメだよ……。あたしきっと、一生呪われたままなんだ……」
「げ、元気出してスーちゃん! 看板に書いてあったでしょ!? 『呪いを解きたければ墓場まで来い』……って! だから、墓場を目指せばいいんだよ、うん!」
「……見た目以外は普通の魔物だったな」
「でしたね……」
お手本通りの戦術にてあっさり退散した黒の魔物に、肩透かしを受けた気分で立ち尽くす二人。
思えば視覚に異常を訴えてくる体色はともかくその
剣の腹で受けた攻撃も同程度だったと呟き、置き所のない感情を抱えたマティアスが頭を掻く。
「あ、あ~……どうする、二人とも? 一度戻るか?」
「う、正直そうしたいけど……呪われたままなんて絶対やだよぉ……」
「うん。なんとかして呪いを解かないと、ずっとお化けにつきまとわれたりするかもですし」
「……だよなあ」
震えるスール。寄り添うリディー。件の看板を眺めて微妙な顔を浮かべるマティアス。
ここにきて否定も肯定もできなくなった彼から、投げやりな感情が独り言になって零れ落ちた。
「……ま、看板に本当のことを書かなきゃいけないなんて決まりもないけどな」
「…………もうやだ」
「マティアスさーん!! 今は余計なこと、言わないで―!!」
「あ、やべ……すまん、スー」
「何をやってるんですか……」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『───おうおう、ちょっと待ち あそ な! ここはオレたち『木賊』のなわばりだ! ぼ 通りたければ、俺たちに あ そぼ いい肥料をよこしな!』
「あり得ない、あり得ない……。木が喋るなんてあり得ない、あたしは何も見てない……」
「……スーちゃんほどじゃないけど、私も結構怖くなってきたなぁ」
「ええ、なんといいますか……雰囲気出てますねぇ」
「山賊ならぬ『木賊』……はともかく、威勢が良いだけに変に混じる声が逆に不気味だな……」
進む一行の足を止めたのは、森の奥へと続く道を挟み立ち並んだ幾本もの木々の声。
粗野な男性を思わせるどら声に時折混じる幼子のような掠れ声に、耳を押さえるスールの後ろで残る三人もまた顔色悪く溢した。
「……要求通りにするとお思いですかー、とかなんとか言って爆弾で吹き飛ばそうとするなよ?」
「ぐっ!? ……やりませんよ! わたしを何だと思っているんですか!」
「えっ。……やらないんだ」
「……リディー? あなたの中のわたしの認識について一度話し合う必要がありそうですね?」
まるで
そこに素で漏れたらしいリディーの
「あはは……それで、どうしたら良いのかな?」
「……どうもこうも、肥料を持ってくる、と解答が示されているのですから従うしかありません。絵の中の世界は
「おおー、堅実な意見。ひょっとしてルーちゃん、不思議な絵についても詳しいの?」
「えっ。…………ええ、まあ。人並みには?」
「……くくっ」
そして
思わず気まずげに目を逸らした彼女に、その心情を察したマティアスからくぐもった忍び笑いが漏らされるのだった。
「……こほん! とにかくここまでの傾向からして、おそらく必要な肥料とやらもこの世界の中に用意されていることでしょう。さっさと探し出して先に進みますよ」
「それって一回戻るってこと? うー……早く墓場まで辿り着いて呪いを解きたいのにぃ……」
「まあまあ、スーちゃん。お母さんとの約束その5、『悩むよりも前に行動すべし』だよ」
暗く湿潤な森林の中、苦手な虫やお化けが出そうどころか何度も顔を出している憂鬱な探索行がまだまだ続きそうだと悟り、しょんぼり肩を落とした妹を慣れた様子で慰める姉。
多少ぐずりつつも頷いたスールが顔を上げ、来た道を戻るべく一行は背後を振り返り───
『キュアァァァ……!』
「っ、黒い魔物!」
「出ましたか!」
いつの間にか、背後に迫っていたらしい黒影が一行の視界に入る。
鎌のような腕部を振り上げ、奇怪に響く鳴き声を上げた魔物に、ルーシャとマティアスは素早く警戒の構えを取った。
「出ましたかって……何か知ってるの、ルーちゃん!?」
「あ……いえ、詳しい事は分かりませんが、不思議な絵の世界にはよく現れる魔物だそうですよ。どうやら結構手強い魔物だというので、相応に警戒していたというわけです」
「絵の世界、の。……それじゃ、やっぱりあれは……!」
「……? スー?」
一方、二人の反応に疑問を示したリディーへと、どこか取り繕うようにルーシャが説明する。
他方、それを耳にしたスールは何かを考え込むように視線を落とし───話した彼女は不思議に思いつつも、目の前の魔物へと意識を戻した。
「……とは言っても
『おうおう、ちょっと待チな! こコハオレたち『木賊』のなわバ リダ!』
『てめぇみた イナ悪イ奴には あ そ イバラでお邪魔の刑だ!』
『キュアァァッ……!?』
「───捻っ、てえ……?」
先と同様に、指示を出さんとしたルーシャの声が、虚空を泳いだ。
「「え、えぇー……?」」
「……魔物にも反応するのか、こいつら……?」
相変わらず奇妙な掠れ音が混じる『木賊』の声を合図に、勢い良く生育した格子状のイバラ。
細く鋭いそれらに突き上げられ、見た目にも戸惑った様子で吊り上げられる黒の魔物。
眼前で起きた事象に呆然と、もがく魔物と周囲の木々を見上げる一同。
されど度肝を抜かれた彼らの頭に、森の空気と微妙に合わない気風の良い声が再び降り注ぐ。
『ここ こ ここはオレたち『木賊』のなわばり だ!』
『通り たけ ば、ひひ 肥料を 肥料を 肥料をよこし な!』
『なわ ばり なわ なわ なわわわわ』
『ひ りょ』
『あ そ』
『キュ、キ……キュア、ァ……!?』
「「「…………」」」
ぐさり、ぐさり。
ぐちゅ、ぐしゃ。
文字にするならそう表現されるだろう濁った水音が、頭上で鳴り響く。
誰からともなく、真っ青になった顔を突き合わせた四人は、ごくりと喉を鳴らして。
「……いい肥料を、探しに行きましょうか」
「ああ。ここは要求を呑むしかなさそうだ」
「だね」
「うん」
『へへへ、そういうこった。いい肥料、楽しみにしてるぜぇ?』
偶然か必然か、今度は掠れた響きのなかった声に。
返事をする度胸は、誰の中にも無かった。
※原作既プレイの方へ
原作ネージュの現代に伝わる絵の具に関する台詞からして、本編中に登場した不思議な絵には、何れも相当な情念が込められていることが窺えます。
ざわめきの森の作者はオバケが目的だったのか、それともどうしても誰かと遊びたかったのか。
正規ルートから外れたところに麦畑つきの小屋とかある辺り、考察の余地は色々ありますよね。
※原作未プレイの方へ
原作では調子に乗ってアレコレやった結果、怒った幽霊達にズタボロにされるルーシャちゃん。
特にゲーム序・中盤のストーリーにおいて一番身体を張ってるのが彼女だったりします。
しかしその際の悲鳴が「ひぎゃあああああ!?」や「ぎにゃあああああ!?」なのは淑女としてどうなのか(笑)。やっぱりどっちかというとギャグ時空にいるんだよなあ、この娘。