最高のM.A.V. 俺とパイロット   作:脳を焼かれた00ユニット

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遅れちゃった……誤字やばいかも
悲しぃ星のダンスしていたわけじゃないよ。ほんとに。

登録解除ラッシュになるかと思ったらびっくり。うれしうれし
でも今話も似たようなことになるんじゃないかなって。
理論や納得も大事にしつつ滅茶苦茶も二次創作の醍醐味!
GQ本編もなんかすごいことに。これ大丈夫?別のアニメだったりしない?*1
前話で忘れたけどループタグはないよ


ついき:誤字報告ありがとう。標準を知れる……
PC版の1行に収めるため選択する語彙がいつもアレだからね
スチームで今日の10時までマブラヴが60%オフ!

*1
失敗作くん大好き




コンペイトウ遭遇戦

 

 

 

 

 

 

 

「ただのパイロットを呼び出すなんて、司令は何を考えているのかしら」

 

『さてな。心当たりはない』

 

「ついに悪戯が露見したんじゃないの?」

 

『わざわざ注意をするほど暇に思えんが。むしろその時間で略式処刑だな。仲良死か』

 

「……変な語彙を発揮しないでくれる? 艦長たちまで巻き込むんだから」

 

『まぁ、冗談だ。あり得るとしても戦後だろう。今ではない』

 

「戦後でも困る。で、本当はなんだと思う?」

 

 シイコは知らないところで何してるんだコイツ、という視線をぶつけた。

 兎は涼しい顔――機械のくせに――をして答える。

 

『鹵獲した奴関係だとは思うが……確証はないな。技術員が慌ただしいのは知っている』

 

「ま、それくらいよね。どこから聞いた話?」

 

『ニックが愚痴っていた』

 

「そっちもまた何かしてるのか……」

 

 彼はもはや何徹目かわからない。戦場での技術兵ほどお労しいものもないだろう。

 

『大穴で正体不明の機械を使っているとして投獄だな』

 

「あり得る話だからやめてくれる? 縁起でもない」

 

 余力のない今だから許されている特例のようなものだ。戦後は解体されかねない。

 シイコと兎は連絡艇に乗ってシラヌイでソロモン――名を改めコンペイトウに向かっていた。

 巨大MAを収納する場所などそこしかないためである。

 幸い、整備用の環境は5割ほど残っているようで解析作業も進んでいた。

 

 戦闘の影響で復旧しきれていない通路の数々。一部区画は酸素すら怪しい。

 兎を抱えてシイコは本来の道を迂回しつつ、無重力の中を泳いで指定された区画に向かう。

 最低限の修理のために整備兵や連絡兵が至るところで仕事をしている。

 不必要に顔が売れてしまっているシイコはすれ違う人それぞれに興味を持たれた。

 ある人はサインを求め*1、ある人は羨望や憧れを、ある人は嫉妬や嫌悪を向ける。

 嗅覚のようにそれらを認識してしまうシイコは若干うんざりしながら、敬礼を返した。

 

「私はパイロットをやっているっていうのに……」

 

 つい、愚痴のようなものが漏れてしまう。接触通信のため聞かれることはないが。

 

『葬式のようなありさまになるよりはマシだろう』

 

「戦意高揚に貢献せよって? ご機嫌取りをするのは私じゃないのよ」

 

『その割には手馴れているようだが。将来は政治家にでもなるか?』

 

「つまらない仕事はやりたくないわ」

 

 家族同然の皆を鼓舞するならともかく、不特定多数の前で道化を演じるのは御免だった。

 角を曲がると窓越しに見える格納庫の中で直立する超巨人。

 その周りをせわしなく動き回る作業員となぜか混ざっている兎らを横目に見ながら進む。

 

「やっぱり大きいわね。ジオンの奴らはどうしてこの技術を素直に使えないのか……」

 

『人間、技術は戦争に使いたがるものだろう。平和運用など夢の中だ』

 

「それは、わかっているけど。はぁ……」

 

『随分ナーバスだが、夢見でも悪かったか?』

 

「わからないわ。ただ、平和を望んでいないのは私自身なのかもしれないって思っただけ」

 

 兎が腕の中で身じろぎをした。

 

『……驚いたな、てっきり割り切っているタイプだと。どんな心境の変化が?』

 

 指摘されてシイコは口ごもるが、あえて言葉にする。

 

「……ジオンを滅ぼしたいのは本当だけど、あれだけ()を聴いてしまえばね。

 連邦が勝つにせよ負けるにせよ、軍縮はあるでしょう。そうなったとき、あの子たちが路頭に迷わないためには共通の敵が必要になる。治安維持部隊の席は多くないのだし。

 こういった考えがジオンの奴らと同じじゃないかって思うのよ」

 

 ピコピコとコミカルな音が兎から発された。慰めのつもりだろうか。

 

『少なくとも、後輩(なかま)を想っているうちは違うだろう。

 あいつらもそこまでしてもらいたいとも考えていないだろうしな』

 

「ま……余計な心配と言えばそれもそうね。とにかく生き残らないことには」

 

『そういうことだ。まだ終わっていないのだから、油断はするなよ』

 

「当然よ」

 

 やがて指定された部屋の前にたどり着いた。

 シイコは兎を見る。兎は首を振った。盗聴器の類はなし、の意味。

 

(司令官レベルがいるっていうのにカメラもない? イヤな話の予感がするわね……)

 

 扉前の警備兵2人に敬礼すれば、彼らがノックをする。入室許可と共に扉が開いた。

 中に見えたワッケインに向けて敬礼。

 

「第13独立部隊より参上しました。お呼びでしょうか」

 

「ご苦労だったな、シイコくん」

 

「いえ」

 

 ワッケインも軽く敬礼を返して、両者手を下ろす。

 背後で扉が閉まる音。

 実のところ、シイコとワッケインは初対面ではない。

 軽キャノンを受領する際、不思議な巡り合わせもありルナツーで顔を合わせていた。

 故に緊張はないが、それはそれ。上官であることに変わりない。

 

「先の戦いでは活躍したと聞く。あのシラヌイとやらも」

 

「もったいないお言葉です」

 

 挨拶には謙遜で返す。

 ワッケインの視線が小脇に抱えた兎へ向いた。

 

「それが例のマシンというわけか、発言を許す」

 

 雰囲気だけお堅いまま兎は答える。兎の足では敬礼が出来ないので。*2

 

『お会いできて光栄だ、ワッケイン司令。見事な指揮能力と聞いている』

 

「お世辞はいい。君はなぜこちらに付いた?」

 

 偽りを許さない鋭い眼光を兎の丸い瞳が受け止めた。

 

『その問いは単純だ。シイコが連邦軍(そちら)についていたからに尽きる』

 

「ならば大尉がジオンに()れば牙を剥けたのは我々だと?」

 

『そういう話もある。ならば捕らえるか?』

 

 あまりに不遜な発言だが、ワッケインは一笑に付した。

 

「生意気な奴め、オットーの話通りだな。今、そうすればキャノンが反乱するだろうに」

 

『気づいていたか』

 

 OSの中身を弄れば全く予期していなかった()()だって起こる。*3

 それだけOSに手を加えるというのはまともな人間なら許可しない。

 それでもうまく動かない程度の話であるはずだったが。

 

「そのうえで許可をしたというだけだ。司令が狭量ではいけない」

 

『お世辞は撤回しよう、ワッケイン司令』

 

「やかましい」

 

 息を吐いたワッケインにシイコが話しかける。

 

「それで、御用とは」

 

 これが本題などとは誰も思っていない。

 それだけ部屋にいたひとりが印象的なのだ。

 

「ああ。まず彼女を紹介しよう」

 

 シイコがワッケインの視線を辿れば、こちらを見つめる若い瞳と目が合った。

 

「セイラ・マス少尉だ。彼女が君を呼んだ」

 

「紹介されました、セイラ・マスです。お会いできて光栄よ」

 

「どうも、セイラさん」

 

 品を感じる敬礼に金色が揺れ動いた。若い男なら視線を奪われそうな美がある。

 答礼しつつも、シイコの意識はそこにない。 

 

(この感覚、白いキャノンのパイロット?)

 

 戦場で()()気配を感じれば、警戒度も上がる。

 ただの一兵卒が艦隊司令を動かすとは思えない。やはり何かあるのだ、この話には。

 

 そういった内心を見透かしたようにセイラは微笑む。

 

「やはり、わかってしまいますか。ニュータイプというものは」

 

「ニュータイプ?」

 

(なに? この感じの悪さは……)

 

 一回り以上年下に見つめられただけのはずが、足元を揺らされるような不安を感じた。

 

「ええ。私も、そしてあなたも」

 

「……私が?」

 

「亜光速のビームは撃たれてからでは躱せません。撃たれる前に察知しなければ。

 それは常人には不可能ですが、異次元の危機感知能力をもってそれをあなたは成した」

 

「それでもジオンのプロパガンダに乗る気はないわ。司令、彼女は何を」

 

 シイコがワッケインに視線を向ければ、口を開く。

 

「彼女にはのっぴきならぬ事情がある。それは」

 

 しかし、その言葉を他ならぬセイラ自身が止めた。

 

「ニュータイプの間に隠し事は出来ません。私がお話いたしましょう」

 

「……そうか」

 

 改めてシイコに向き直るセイラだが。

 

「……ッ」

 

 極彩色の輝きを錯覚しそうな瞳に見つめられ、シイコは無意識に息をのんだ。

 

「私の本当の名はアルテイシア・ソム・ダイクン。かのジオン・ダイクンを継ぐものです」

 

 カリスマというべきものを周囲に放つような迫力がそこにはある。

 語られた名は。

 

「ダイクン……!?」

 

 シイコですら知っている、ニュータイプ論を最初に掲げた人間。

 ジオンがジオンたるきっかけとなった存在だ。

 その子供だというのか。まず子供がいること自体初耳である。

 

(このプレッシャーがそうだとでも言うの……!?)

 

 だが、それの意味するところは。

 

「司令、どうしてジオンの人間を……!」

 

 ほぼ反射的にワッケインを見たシイコ。腰の拳銃に手をかけるのも忘れない。

 だが、当のワッケインは平然としている。

 

「彼女は名を変えてはいるが、正式な連邦軍の人間だ。ジオンではないよ、大尉」

 

「なっ……」

 

(司令はそこまでやるの!?)

 

 どう考えてもただの亡命には思えない。一体、上層部でどんな陰謀が渦巻いているのか。

 同時に、この部屋に保安員や盗聴器類がないのも頷ける。こんな話、とても記録に残せない。

 言葉を失ったシイコにセイラ(アルテイシア)が薄く微笑む。

 

「私はジオンではありません。父の提唱した理論を悪用するザビ家を滅ぼしたいだけ」

 

「詭弁でしょう、それは」

 

「いいえ。貴女が憎むジオンとは、ザビ家が主導する独裁国家のはずです」

 

「……わかったような口を」

 

「わかります、私には。貴女の求めるものも……」

 

 セイラと視線を合わせていると、(にく)の内側を覗かれているような不快感がある。

 それなのに、視線をそらしたくてもそらせない。

 

――さぁ、心を開いて。

 

 脳髄を直接言葉で揺らしてくるような、催眠めいた声が響く。

 

――あなたは平和を求めている。

 

――ならばわかるでしょう、私の手を取る価値が。

 

――皆の無念をぶつける先を。

 

――共に為しましょう、ザビ家(ジオン)の排除を。

 

(わた、しは……)

 

 心を重ねられたような感覚が、自他の境界を曖昧にする。

 思考がとりとめのないものとなり、人の()()を崩そうと。

 

――そう、私たちはわかり合えるのです。

 

 

 

 

 

 

『悪いが、悪戯はほどほどにしてくれ』

 

「……ッ」

 

 兎の声が精神に壁を作り出す。

 体の自由を確かめるように、シイコは頭を振った。

 

「確かに、覗きすぎはよろしくありませんね。謝罪いたします」

 

「あなたは……」

 

 音を立てて鼓動する心臓を落ち着けるために呼吸を繰り返す。

 

「ニュータイプ同士の感応というものです。やはり、私の見立ては間違っていませんでした」

 

「……人の心に土足で入ることがニュータイプの在り方なのね?」

 

「謝罪いたします、と申し上げました」

 

(ご令嬢のような風体は偽装。随分ふてぶてしい女だこと)*4

 

 シイコが刺々しい言い方をするのも無理ない話だ。

 話題にされたことはこれまでもあったが、はいそうですかと頷くのは無理というもの。

 正確には、ニュータイプを特別なものとは思いたくない。

 それは()()にしか価値を置いていないようではないか。

 

『指導者の娘ならば、面の皮も厚くなるものだろう』兎が心に語りかけてくる。

 

(どうかしら。私にはもとからそういう性質だと思うけれどね)

 

『……若さも見えるが、鉄火場を潜った娘だろう。油断出来る相手ではない』

 

(そうね)

 

 声は出していないというのに、セイラは兎をしっかりと見据えていた。

 

「あなたは随分、心配性なのですね。ならこれは良い話ではなくて?」

 

『なんだと……?』

 

 兎と視線を合わせたセイラがさも会話しているように振舞う。

 ぶるり、と兎は震えた。

 

「ご安心を。あなたの懸念通りにはなりませんよ」

 

『…………』

 

「ご理解いただけたようでなによりです」

 

 外野からはセイラがひとり口走っているように見える。

 

『確かに、これは少々……不愉快かもしれない。すまないな、シイコ』

 

 これまで度々心を読んでいたことについてだろうが。

 

(今更? そっちは気にしてないわ)

 

『……感謝する。しかし優しさを受けた人間が理由なくこのようなことをするのか?』

 

(なに? あの娘の肩を持つの?)

 

 腕に力を込められ、兎のパーツがギチギチと音を立てた。

 

『そういうわけではない……いつもお前を一番に考えている』

 

(へぇ~? 煽てればいいと思われているようで癪なんだけど)

 

 捕食者(キツネ)めいた視線をシイコは兎に向けた。

 

「ふふ」

 

 その様子をわかっていますよ、と言わんばかりの表情でセイラが見つめる。

 

「なに笑っているの?」

 

「いえ、見た目よりお若いなと」

 

 心の在り方が。つまり幼稚だと? そこまで察したシイコの声は冷えたものだった。

 

「は?」

 

『…………』

 

「…………」

 

「…………」

 

 1分と少しの会話(キャットファイト)。それだけなのに部屋の中で恋人が破局したような雰囲気が流れる。

 その空気を邪険に思ったのか、ワッケインが口を開いた。

 

「私には関知できない*5話だが。挨拶は済んだと思っていいか?」

 

「はい、もちろん」

 

「……はっ」

 

 にこやかな表情のセイラと対照的に軍人の仮面を被ったシイコも答える。

 ワッケインは頷いた。

 

「それでは本題に入ろう」

 

 ワッケインは驚くべきことを告げる。

 

「作戦の第二段階がまもなく行われる。それは月のグラナダを落とすことだ」

 

「まもなく、ですか」

 

「そうだ。戦局を鑑みれば、今しか機会はない」

 

「しかし、いくらグラナダとは言え民間企業もあります。関係悪化は免れないのでは」

 

 大半はフォン・ブラウン市にあるが、グラナダにもないわけではない。

 別に軍人の考えるべきことではないのだが、人間なら指摘しないわけにもいかない。

 

()()()()、ということだ」 

 

 短い言葉の中に、重力があるようだった。

 異様な雰囲気に()されながら、シイコは続ける。

 

「……それにグラナダといえばジオンの生命線。護衛艦隊もいるのでは?」

 

 グラナダ攻めはあり得る話だと聞いていた。しかし今の戦力で攻略できるものか。

 無理をすればなんとかなるかもしれないが、それは最終手段であるはずだ。

 そんなシイコの懸念をセイラが答えた。

 

「その点は問題ありません。キシリアの隷下全軍はルナツーに向かっており、残るは数隻のみ。十分に可能性はあるでしょう」

 

 ルナツーに敵が向かっていることは十分まずいのだが、今更迎撃に向かえないのもわかる。

 

「……つまり、相打ち覚悟というわけですか」

 

「そうだ。しかし、情報の信憑性が欲しい。そこで大尉に来てもらった」

 

 シイコは要件を察した。

 一兵卒にする話ではないと思えばそういうことかと。しかし、まだ足りない気もする。

 つまり情報源はこの女(セイラ)なのだろう。あまりにも可笑しいが。

 もちろん諜報部も関与しているはずだ。

 

「人をウソ発見器のように使わないでいただきたいものです」

 

 当然、本物は使っているだろう。

 まず人が嘘を見抜けるというのは眉唾と思うところなのだが。

 

「悪いとは思う。しかし、少しでも判断材料が欲しいのだからな」

 

(それが10割には思えないのだけれど)

 

 疑念はありつつも、軍人なので。

 どう思うかと問いかけられればやってみるしかない。

 やられたことをやり返すだけ。

 感覚は掴んだ。気に食わないが、()()()というのは大きい。

 以前ならできるわけがないと一顧だにしなかったろう。

 

(ギン、手を貸しなさい)

 

『もちろん』

 

 目を閉じて――――開く。

 兎を通じてシラヌイと見えないパスが繋がる感覚。

 しかし、増幅器を使わずともシイコは既に覚醒しつつあった。

 視界()虹のような絵を描く。

 セイラを捉えた。

 

――心の動きは誤魔化せない。本当のことを見せてもらう。

 

――ええ、もちろん。

 

 当然のように()()をしてくる。

 

――それで? 私の仲間を危険に晒す行為に嘘はないと言えるか?

 

――言えます。命を懸けても構いません。

 

――あなたの命がどうこうという話じゃない、馬鹿にしないで。

 

――それは残念です。

 

 目を閉じる。言葉に邪魔をされたが、少しは()()()

 

『大丈夫か?』

 

(ええ、でもこれは……いろいろ疲れるわね)

 

『だろうな。今はこれ以上をするべきじゃない』

 

 声に頷いて目を開く。

 視界はもとに戻っていた。

 

「……嘘は言っていないかと」

 

 笑顔のままのセイラが不気味だったが、シイコは直感のままワッケインに答えた。

 

「ほう……キサマにも聞いておこう。機械はどう見る?」

 

 嘘かどうか。

 兎にも話を振られる。ワッケインは兎を信じきれないが、実績は頼れると判断した。

 特に不利益の生じる話でないから、兎は正直に答える。 

 

『嘘の()は見えないな』

 

 あえて心を見せているように思える余地もあるのだが。

 

「そうか」

 

 しかし、ワッケインはそれで納得した。

 

(最後の一声が欲しかった、というところかしら?)

 

『そう見えるな』

 

「そして、キシリアの護衛には私の兄がおります」 

 

 畳み掛けるようにセイラは続ける。

 兄がジオン内部でザビ家への復讐を考えていること。

 しかし、その方法は人を殺しすぎるということを。

 

「兄は鬼子です」

 

 そのふざけた行為を()()()()兄に引導を渡そうとしていることを。

 

「つまり……兄妹喧嘩に私たちを巻き込もうとしているの? 冗談じゃないわ」

 

 言ったところで仕方ないのだが、軍人としては指摘するしかない。

 

「しかし、(キャスバル)は――シャアは止まりません。誰かが止めるしかないのです」

 

「赤い彗星……?」

 

 シイコとて知っているビッグネーム。

 直接の交戦はないが、直掩していた巡洋艦をやられた。

 いや、むしろ無視されたというべきか。かつての記憶が刺激される。

 

(……ッ)

 

 頭痛――沸き上がる殺意を堪えた。

 

 それがダイクンの息子でザビ家に従い、ザビ家と連邦を共倒れさせようとしている?

 一体どこの猿芝居か。

 

 セイラは続ける。

 

「シャアはパイロットとして()一流です。それに加え、傍にはジオンのニュータイプまでいる。

 私一人では荷が勝ちすぎているのです。そこで、シイコさんの力も借りたいと思いました」

 

()の力というより、シラヌイの力でしょう? つまらない嘘をつくわね」

 

 シイコの目が細められた。

 

「誤解させるつもりはありませんでした。シイコさん自身の力()ですよ」

 

(虚言、でもないのよね)

 

『ああ、俺にもそう見える』

 

 しかし妙なうさん臭さがある。この少女は一体何を見ているのだろうか。

 

(ん……?)

 

 その時、視界の端でワッケインの眼力が増したのをシイコは察知した。

 同時にシイコはこれだと直感する。

 確か、連邦のガンダムを奪ったのも赤い彗星だったはず。*6

 その周りに知人がいてもおかしくない。

 

「司令……」

 

 ワッケインの瞳は覚悟を表していた。 

 シイコもジオンに対して復讐心はある。

 だが、自分と()の異なる深い復讐の心に冷静になるというべきか。

 

「この話を聞いた大尉には、当然守秘義務が課せられる」

 

「一蓮托生だと?」

 

「そうだ」

 

()()になったばかりで少佐にするつもりですか、司令は」*7

 

「そうならないようにするつもりだ。もちろん勝算はある」

 

(まさか、ジオンの総帥府と連邦が繋がっている……?)

 

 数段思考を飛んだ直感。だが、ないと断言できない怖さがある。

 シイコの背中に冷たい汗が流れた。

 

『今は気づかない方がよかったな』

 

(……そうね)

 

「勝算とは?」

 

 シイコの質問。

 

「キシリア・ザビを討つ。そのために、あのモビルアーマーを出してやれば驚きもするだろう」

 

 司令官(ワッケイン)の言い草には驚き以外の意図も見え隠れするが。

 まず大前提を無視できない。敵軍の兵器は奪ってすぐ使えるわけでもないのだ。

 

「……使えるのですか?」

 

「賑やかしにするつもりはない」

 

 イヤな予感がしてきた。

 セイラが言葉を継ぐ。

 

「ジオンもザビ家一色ではありません。同道してくださる方もいらっしゃいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり今日で正解のようだ」

 

 6つの付録を付けた赤い機体。

 その腹の中で仮面の男が呟いた。

 

『大佐?』

 

 通信越しの声に男は答える。

 

「いやなに。ささやくのだ、私のひらめき(ゴースト)がな」*8

 

『……大佐にはわかるのですか。私には、見えませんが』

 

「視角*9が違うだけのことだ。君も見えるさ」

 

『それならよいのですが……』

 

 青いスカート付きと赤い機体は遠い小惑星の影からソロモン――コンペイトウを監視していた。

 そこには連邦軍の主力艦隊が厳戒態勢で停泊している。

 

『ミノフスキー粒子も戦闘濃度にあるようです』

 

 隙のない配置。

 しかし、仮面の男に言わせれば。

 

「連中も自分たちが油断していないと勘違いをしている。サイコミュのテストにはお誂え向きだ」

 

『仕掛けますか』

 

「ああ。シャリア、君はここでいい。映像をキシリア閣下に届けてくれ」

 

『はっ、大佐こそご武運を』

 

「任せたまえ」 

 

 赤い機体――ガンダムが小惑星の影から出る。

 だが、無策でコンペイトウへ進むわけではない。

 その手段が6つの付録――サイコミュ兵器・ビットだ。

 ガンダムはサイコミュによって動力付き遠隔自律式小型砲台(オールレンジ兵器)を操作する。

 

「誘われて出てくるか?」

 

 ビットをガンダムから外す。

 連邦軍が察知できない距離でありながら、推力を自前で持つビットなら攻撃できる距離。

 仮面の男がサイコミュを起動させる。シートの裏で光が明滅した。

 

「――――行け、ビット」

 

 闇夜に紛れ、一列に整列した尖兵たちが連邦の艦隊に襲い掛かる。

 

「出てこなければ戦果となって貰う」*10

 

 

 

 

 

 

「調子はどうですか」

 

「昨日の今日で万全とはいかんよ」

 

 コンペイトウの秘匿格納庫――やけに警備が厳重――に移動したシイコたち。

 セイラの問いかけにひとりの作業服の男が答えた。

 その後ろでは整備兵たちがビグ・ザムと妙な姿のキャノンの周りにいる。

 一見して連邦軍に見えるが。

 こちらに気づいた男がシイコに目を向けてくる。

 

「君が『蜃気楼』のパイロットか。会えて光栄だよ」

 

「……あなたは?」

 

 衛士だ、と修正しようとする兎を横目にシイコは誰何した。

 オヤジと言われる年齢の男は自身の蒼い髪を抑える。

 

「クルスト・モーゼス。しがない技術屋だ」

 

「――ジオンか」

 

 ビグ・ザムを整備できるのはそれくらいだ。

 

「おお、怖い。ま、それくらいの挨拶は仕方ねぇな」

 

 突然スイッチの変わったシイコが発した殺気を浴びてなお、クルストは笑って流した。

 

「彼は正式に亡命してきました。シイコさん、わかっていただけますね?」

 

「……ふぅ。それくらいの分別はあるわ」

 

 荒れ狂いかける内心。兎がピコピコと音を上げれば気も抜ける。 

 セイラの言葉に応答。

 

「……で、そのヘンテコな機械が例のシステムを作ったとかいう」

 

 クルストは抱えられた兎にも視線を向けた。

 

『そうだが』兎が肯定する。

 

「司令はそこまで話しているのですか?」

 

「隠し事はよくないだろう」

 

 しれっと答えるワッケイン。よくなくない。

 シイコにはカウンタープログラムを作らせようとする動きにも見えた。

 

 ジト目のシイコを放ってクルストは興奮気味に兎へ話しかけた。

 

「機械が本当に喋るのか。それよりあのオペレーション・システムのことだ。私も一時期はそういったことをしていたが、あの完成度は驚きに値する。あれは……実に素晴らしいものだ。時間が許すなら語り合いたいくらいだよ」

 

『そうだろう、()の努力の賜物なのだから。いくらでも語ろう。シイコ、彼はいい奴だ』

 

 煽てられて兎も有頂天になる。早々に買収されたらしい。

 途端、『グエッ』と悲鳴を上げる。またシイコに締め付けられた。

 

「あなたはどっちの味方なの?」

 

『……シイコだ』

 

「よろしい」

 

 緩められた腕の中で兎の耳がしおれる。

 

「ふむ……面白い関係だな」

 

 研究者としての血が騒ぐのかクルストはその寸劇を見て頷く。

 

「それより、ジオンが集まって何をしているの?」 

 

「サイコミュ、というやつの整備だ」

 

 若干トゲトゲしいシイコの問いにクルストが平然と答えた。

 ビグ・ザムに視線が集まる。

 

「サイコミュ?」オウム返しをするシイコ。

 

「ジオンの新型インターフェースのことです。いわば手を触れずとも武器を動かすもの」

 

 さらっと答えたセイラ。

 シイコはなんでわかるんだ、という目を向ける。無視された。

 

「ごく初期のものだが、ビグ・ザムにはそれが搭載されている。私もこの製作に関わっていた」

 

 今度はクルスト。

 シイコは納得した。道理で。

 

「あの変なツメのことね」

 

「そうだ。……あのツメは賛否両論だった。しかし――もう閣下はいらないか。キシリアの要望でな。大方、変な造形をさせることで廃案に追い込もうとしたのだろう」 

 

「で、なぜか生産されたと」

 

「そういうわけだ、まったく政治はわからんね。それともうひとつ、Iフィールドバリアだな」

 

 バリアと言えば、シイコにもわかる。

 あのデカブツがビームを弾いていたことは記憶に新しい。

 

「連邦が遅れている技術ですが、ものにできれば優位に立てます」

 

 セイラの指摘にシイコも同意する。

 

「確かに、あれが使えれば……けど、そんな簡単な話?」

 

『難しいだろうな。技術はそう簡単に吸収できない』

 

 兎の言葉にクルストは頷いた。

 

「なおのこと私は専門外だからな。であるから、他の技術者も引っ張ってきた」

 

 クルストの言った通り、この場には多くの技術者がいる。

 連邦軍とて他の整備が忙しいのに、そんな余裕はないはずだった。

 

「……司令はどこまで織り込み済みなのですか?」

 

「私は司令官だ。入国管理局長ではないよ」

 

 あまりに手際が良すぎる。

 疑いの視線をワッケインは受け流した。

 ともすれば、一番怪しいのはワッケインかもしれなかったが、口には出さない。

 それは何か均衡を崩す一言になってしまうと、シイコは予感していた。

 

 一方、セイラは宙を泳いでヘンテコなキャノンに向かう。

 

「なにあれ……」

 

 視線を向けたシイコは困惑した。

 それはキャノンといいつつ、肩のキャノンが外されているのだ。

 代わりについた傘のような大型装置とそこから機体を覆うような大きさの盾に線が伸びていた。

 あの形では格闘戦など絶望的に見える。

 

 その青く塗装された変なキャノンのコックピットから髭面の男が出て来た。*11

 セイラは挨拶をする。

 

「ラルさん、そちらはどうですか」

 

「姫様、どうもこいつはじゃじゃ馬ですな」

 

「そうでしょうとも。やってくれますね?」

 

「もちろん」

 

 男は敬礼で返した。

 

 

 

「ラル……ランバ・ラル!?」

 

 その様子を離れた場所で聞かされたシイコは驚愕する。

 

『青い巨星とやらか』

 

 これもまた二つ名持ちのパイロットだ。なぜ、連邦にいるのか。

 それと親し気に会話するセイラが怪物のように思えてくる。

 あれで未成年? 成長した姿を想像したくなかった。

 

「コンペイトウは連邦が奪取したはずなのに」

 

「ははは。ま、そうお固くなるな。戦争は砂糖菓子じゃないんだよ」

 

「私の理性を試したいならそれ以上を言わないで欲しいのだけど?」

 

「こりゃ悪いね」

 

 クルストにシイコが冷え切った視線を浴びせても、堪えた様子を彼は見せない。

 

 シイコたちには知る由もないが、ランバ・ラルはシャア(キャスバル)殺しに積極的賛成をしていない。ドズルの一件は武人としての結果を尊重したが、それでもセイラ(アルテイシア)が精いっぱいのお願いをするから、義理を果たそうとしているというのが真相だ。

 

「それで、司令は私たちにこのジオン同窓会を見せに来たのですか?」

 

「そうではない。君になら、わかるのではないか?」

 

 ワッケインの試すような視線。

 

『……なるほど』

 

「ああ……」

 

 シイコと兎は察した。あるいは察せてしまった。

 

「なるほど、それがニュータイプか」

 

「司令まで言い出しますか」

 

 非難がましい視線にワッケインは毅然と答える。

 

「私にとってニュータイプか否かはさしたる問題にはならない。

 私に言わせれば、能力がある不幸を嘆く時間を何かの役に立てた方が建設的ではないのか?」

 

「……それは、そうですが」

 

 釈然としないシイコ。

 ワッケインは続けた。

 

「ジオンのプロパガンダが嫌であれば、君なりのニュータイプを体現して見せればいい」

 

「私なりの、ニュータイプですか」 

 

「そうだ。ジオン・ダイクンがニュータイプであったかは我々も知らない。政府は否定するがな。

 だからこそ、その()()を盗用したジオンに『ニュータイプ』を使われた。

 ならば、本物のニュータイプがそれに踊らされる必要はない。

 セイラ少尉にはセイラ少尉のニュータイプ(自己意識)があるように、君も君のニュータイプを決めたまえ」

 

「…………」

 

「と、オットーならば言うだろうな」

 

 話にオチがついた。

 

「確かに、艦長の言いそうなことです。司令もニュータイプなのでは?」 

 

 なんだかんだ面倒見のいいところは特に。

 

「あいにく、私はその必要を感じていないからな。さて、それよりもだ」

 

 ワッケインは本題に戻った。

 

「まず、そこの機械に手を貸してもらう。貴様が鹵獲したのだからな」

 

『それ自体は大した負担ではないが。そうまでして急ぐことか?』

 

「その理由は彼にもある」

 

 ワッケインはクルストに目を向けた。

 クルストは頷く。

 

「私から話そう。私は確かにジオンにいた。

 どこかといえば、ルウム戦役後にキシリアが創設したニュータイプの研究機関だ。

 始めはNT研究にフラナガンを始め全員が躍起になった。

 しかし、キシリアはある時期から月に妙なものを作り始めたのだ。

 フラナガンもそれに賛成したが……」

 

 何かを思い出したのか、クルストの身体が突如として震え出した。

 

「あれは、あれはあってはならぬものだ!」

「ニュータイプどうこうではない、キシリアは起こしてはならぬ獅子を起こそうとしている!」

「早急に止めねば人類が滅ぶ、やつらはそれをわかっておらん!」

 

 それまでの理知的な雰囲気を薙ぎ払うような狼狽具合に、流石のシイコも一歩心を退いた。

 心拍数も上がってきたのか、クルストは肩で息をし始める。

 その様子を見て、ワッケインがシイコに目配せした。

 

「などと、彼は言っている。こればかりはセイラ少尉にも判断できかねるようでな」

 

「また、ウソ発見器ですか」

 

 察した通りの要求にシイコはうんざりしそうになる。

 しかもうさん臭さのレベルがオカルト雑誌並みの話だ。

 

「失礼だけど、変な本でも読んだのでは……?」

 

「そういうな。やってみないことにはわからないだろう」

 

 ワッケインはそういうが。

 事実、このような話は宇宙世紀になっても元気である。

 木星に未知の帝国があって、地球を滅ぼしに来るとか。地球が弾丸となってコロニーを滅ぼしに来るとか。はたまた宇宙の光には意思があって人を憎んでいるとか。

 

「はぁ……はぁ……信じろとは言わん。だが、連邦が滅んでも私は知らんぞ」

 

 クルストは呼吸を抑えようとしていた。その視線は真摯に訴えているように見える。

 

「うーん……」

 

 それなら見てやろう、とシイコは思った。

 どうも、気乗りしない。

 

『馬鹿な……』

 

「ギン?」

 

 だが、一方のギンは違った。なぜかさっさとナニカシタようで。

 これまでにないほどの驚愕した()が伝わってくる。

 

(これは……?)

 

 それは赤い地球というイメージ。

 だが、何をどうすればそうなるのかシイコにはわからなかった。

 

『いや……なんでもない。確かに、あってはならないことだ……だがなぜ』

 

「しっかりしなさい、どういうこと?」シイコは困惑するしかない。

 

『これは……今は知らない方がいい』

 

(だからなぜって聞いているんだけど……?)

 

『それもということだ』

 

(??? あなた、頭でも打った?)

 

『きわめて正気だ。しかし、すまない。これは手に余る……』

 

 ()()での情報すら出し渋るギンの様子にシイコの戸惑いは深くなる。

 

「ほう……その反応、真というわけか。ならば都合がいい。

 大量破壊兵器を持つ事実は平和維持(ピースメーカー)の恰好の口実となろう」

 

 一方のワッケインは予想通りと言った様子。

 しかし突如、非常警報がけたたましく鳴り響いた。

 

「なんだ!」

 

 ワッケインの要求に慌てて駆け付けた警備員が叫ぶ。

 

「ジオンの襲撃と思われますが……敵数不明です!」

 

「なにっ」

 

「ビグ・ザムは出せんのか!?」「彼女が寝ているんです、無茶言わないでくださいよ!」

 

 クルストが整備兵に怒鳴っても否定の声が返ってくる。

 

「ふぅ……――ギン」

 

『わかっている』

 

 こうなれば仕方ない。

 心の中にモヤモヤはあるが、それだけでヒスるほどシイコは壊れていない。

 シイコが視線を向ければ格納庫にシラヌイが入ってくる。

 

 意味不明な事態に意味不明な事態が重なって整備兵たちは混乱した。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ」「モビルスーツが格納庫を練り歩いている!」「お前薬やってんのか?」

 

「なっ、あれは自力で動くのか!?」

 

 呼吸を整えた(正気に戻った)クルストが兎に視線を向ける。

 だが、その場に兎たちはいない。どこかと探せばすでに移動していた。

 

『どうやら、急ぐ理由はあるらしいな』

 

「どっちにしても、原因を突き止めなきゃ。司令、よろしいですか?」

 

「ふぅ……よろしい。シイコ大尉、正体不明な脅威を退けたまえ」

 

 すでにコックピットに向かっていたシイコにワッケインは指令を下した。

 

「はっ!」

 

 シイコは敬礼で返し、コックピットに収まる。

 

「司令、私も白で行きます」

 

「用意がいいな、まったく。よかろう、行き給え」

 

「承知しました」

 

 どういうわけか、近くに用意していたらしい白キャノンにセイラも乗り込んだ。

 

「扉開けろ! 狭いだろうが!」「固定できるものは固定しておけ!」「ネジ一本なくすなよ!」

 

 一時は混乱した整備兵たちも正気に戻りつつある。

 

「時期が来たら教えてもらうから。いろいろ」

 

 ハッチの閉じたコックピットの中、シラヌイとリンクしたシイコは呟いた。

 

『わかっている。行くぞ』

 

「ええ。シラヌイ、発進します!」

 

 跳躍(ジャンプ)ユニットに点火。

 青い炎を煌めかせ、シラヌイは宇宙(うみ)に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう…………来るか」

 

 仮面の男――シャアがその存在に気づいたのは、ビットで艦艇を12隻、モビルスーツを20機ほど落とした時のことであった。

 

 蒼い流星が弧を描きながら向かってきている。 

 さながら宇宙に存在しない蜃気楼を生み出すように。

 

「一直線だな、これは期待していいと見た!」

 

 シャアは撃墜数を見て、サイコミュテストの戦果としては申し分ないと判断。

 艦艇群を攻撃させていたビットを戻すことを決めた。

 しかしただ戻すのはつまらない。ついでの攻撃をしようとする。

 ビットに意識を集中。

 

「――――当たるか!」

 

 蜃気楼に向けて背後からの掃射。

 躱せるはずもない。事実、蜃気楼は躱せなかった。

 しかし求めた爆発が起きない。

 

「思い切りがいいな。01(ゼロヒト)もそうだったが、連邦も質がいいパイロットはいる」

 

 腕を確かめる目的――およそ3割程度――*12だったとはいえ陽動に惑わされず、直撃するビームにだけシールドを放棄して防いで見せた腕前にシャアは笑みを深くする。

 

「しかしあれで中身が無事とは思えんが……それを見せてもらおうか」

 

 ビットより速く接近する蜃気楼を迎え撃つため、バーニアを噴射しガンダムは前進する。

 

『大佐、何を!?』

 

「シャリア、君はそのままだ」

 

――そうとも、私が見極める。

 

『しかし……』

 

「モビルスーツ戦のデータも必要だろう」

 

『…………承知しました』

 

 リック・ドムに乗ったシャリアは迷った結果、戸惑いながら指示に従うことにした。

 

 

 

「制限時間はビットが戻るまでとでもしよう。運の良さはどうだ?」

 

 肉眼で視認できるまで相対距離を詰めたシャアはライフルを放つ。

 シラヌイは稲妻のような機動で回避した。

 仕返しのビームが飛んでくるも、シャアは危なげなく射線から外れる。 

 

「狙いもいい。連邦のビーム兵器、使われると脅威にはなるか」

 

 それからの数射の射撃戦はどちらも命中のないまま距離だけが縮まっていく。

 強いて言えば、シラヌイにビームが掠った(グレイズ)した程度だろう。

 

 戦闘は接近戦になる。まずは小手調べのバルカン。

 

「これを避ける? そうか、存外軽装と見た!」

 

 一発の被弾も許さないような機動にシャアはシラヌイの構造を察した。

 積極的に距離を詰めるため、前進。

 

「加速はこちらが上だな」

 

 迫るガンダムにシラヌイはライフルに実弾兵器を混ぜて迎撃する。 

 

「……この程度とは!」

 

 ライフルを回避し、実弾を弾けばサーベルの距離になった。

 当然、ガンダムはサーベルを振るう。

 

「やる!」

 

 シラヌイはスラスターを過剰稼働させて上面に回避。

 むしろカタナのような実体剣で斬りかかってくる。

 

「なんだ……この感じは、まやかしか!」

 

 回避するついでに蹴り飛ばそうとすれば、奇妙な感覚がシャアを包む。

 蹴りぬいた空間には何もいなかったのだ。しかし、わかれば容易いこと。

 

「そこ!」

 

 サーベルを振るえば確かに切り裂いた感覚。

 だが。

 

「肉ではない」

 

 ガンマウントを切り裂かれたシラヌイが右手のライフルを向けた。銃口に光が集まる。

 近距離において必殺のそれを。

 

「手品は正面から!」

 

 サーベルで叩き斬る。爆発を嫌って後退したシラヌイに追撃のキックを浴びせた。

 態勢を崩され、明確な隙が出来る。

 

「ん?」

 

 手品はまだあった。

 サーベルでトドメに腹を切り裂こうとしたとき、シャアは気づく。

 短刀がビーム・サーベルの柄に刺さっていたことに。

 ミノフスキー粒子の解放を感じ取って手放せば、予想通りにサーベルは爆発。

 

「存外、出来ると見た」

 

 手加減をやめて仕掛けようとしたまさにその時。

 

 ビー。という敵機の接近を告げる警報音の数舜前にシャアは近づく機体を察知した。

 

「援軍か? 遅い!」

 

 ビーム・ライフルの標準を合わせて、トリガーを引こうとしたその瞬間。

 

――――ダメです大佐!

 

「アルテイシア!?」

 

 ひらめき(ゴーストの囁き)が見せたのは鬼気迫る様子でこちらに向かってくる実妹の姿。

 あんな表情が出来るなんて知らない。らしくない感情がシャアを惑わす。

 ライフルは発射されたが、標準はブレた。

 

「ええい、外すとは!」

 

 自身の感情の高ぶりに困惑していれば。

 ビットが戻ってきた。

 

「……此処が潮時か」

 

 ガンダムはビットを回収。

 そのまま6機のメガ粒子砲で牽制し、シラヌイたちに回避行動を強要させて。

 シャアとシャリアは撤退していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――離れろシイコ!

――でも!

――こいつは違う! 僕に任せりゃいい!

 

「なんだったの? あれは…………」

 

 ガンダムに蹴られた瞬間、流れ込んだ声にシイコは困惑する。

 どこか温かい、けれど絶対に届かないような寒さすら感じるそれ。 

 

『シイコさん、大丈夫ですか』

 

「ええ…………」

 

『それはなによりです。戻りましょう』

 

「そうね…………」

 

『…………』

 

 未知の感覚。

 せっかく助けに来てくれたセイラにも上の空の返事しか出来なかった。 

 

 

*1
戦時だぞ

*2
まず持ち込むな。

*3
やっちゃったぁ事案

*4
小説版毒婦セイラさん風味

*5
ほんとに知らない

*6
シャアはすぐグラナダに行っていることになるため、ガンダムでの戦闘データはゼロヒトとの戦いしかない

*7
中尉→少佐

*8
絶賛無料公開中

*9
物事を見る角度

*10
艦隊がボコされるの意

*11
逆冒険王状態

*12
基本これで倒せるのがシャアのおかしいところ










パブリクを温存していた驚愕の事実。
みんなさっぱりさせよう。
XM3の由来(名前)はEXAMという説があるっぽい

本編完結までに完結できるかな。出来たらいいな。

今日の話はどうなってしまうのか。たのしみ


「ところで、格納庫のみんなにすごい目で見られていたんだけど。やっぱりこの服……」
『…………』


〇キャノンIFバリア試験機
ビグ・ザムの解析とクルスト・モーゼス博士らの技術提供によって
なんとか急造されたテスト機体。
肩のキャノン砲をIFバリア発生器に換装している。
だが、IFバリアとは名ばかりの実態盾(それも前方のみ)に薄く膜を張る程度しかできない上、消費電力も想定の2割増しとなった。
それでも、連邦にとっては初のIFバリア()搭載機である。
プロパガンダ的側面が強く、当然量産は出来ない。



ぴーえす
これどんな顔したらいいんだろう……!?

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