最高のM.A.V. 俺とパイロット 作:脳を焼かれた00ユニット
でもこの暑さはだめ。脳が溶ける
書きたいことをうまく書けない~
もう明後日には本編終わっちゃうなんて。
脳は大穴横浜ガンダム説を諦めてないよ
ついき:誤字報告ありがとう。
ろとよで迷ったけど、艦長若いしろもいいね
サイコミュテストのログを
シャリアはシャアを探していた。
「ドレン大尉、大佐はどちらかご存じありませんか?」
「シャリア大尉か。大佐は大方、いつもの場所だろう。何かあったのか?」
「いえ……ありがとうございます」
勘もそう言っている。シャリアはソドンの重力ブロック――半ばシャアの自室の扉を叩いた。
「大佐、私です。今、よろしいですか」
返事はない。されど
シャリアは室内に入ることにした。
「大佐、こちらに……大佐?」
「…………」
椅子に収まったシャアは無表情に見える。
しかし仮面の裏で何かを思案しているのだとシャリアには感じ取れた。
数秒遅れてシャアが反応を示す。
「シャリア・ブル大尉か。キケロガのテストだと聞いていたが」
「先刻、終了しました。私に扱えるものでよかったと安堵するばかりです」
「謙遜することはない、君にも出来ることだ」
お世辞ではないことがわかるシャリアは素直に受け入れる。
「大佐にそう言われては、不可能がないように思えてしまいますね」
「不可能を前提にするのは良くない。それだけのことだよ、大尉」
「大佐のそのお考えが人に可能性を見るのですか?」
「さて、どうだろうか。それで、君の言いたい事はどれかな」
あっさり本題を見破られる。
視線に裏に潜むものに息を呑むも、シャリアは尋ねた。
「大佐のことを全て存じ上げているわけではありませんが……先日の一件です」
コンペイトウを強襲してから、大佐は物思いに耽ることが増えている。
それが気にかかっていた。
『蜃気楼』との接触がよからぬ何かを招いていないかと。
「大佐、あれに何が見えたのですか?」
自分に見えた以上の
「君の懸念は半分だよ」
「……半分?」
「たしかにニュータイプだろう。だが、そうではない」
「では、残りは……」
シャアは頷く。
「友人に嘘は良くない。いつかは私のことを伝えるつもりだった」
シャアが思い浮かべた数々をシャリアはその感性で受け取った。
あるいは、シャアも感傷に浸りたかったからか。
ジオン・ダイクンの子であったころ、シャアとなってからの記憶がシャリアの脳内を駆ける。
「あれは噂話ではなかった、と」
「その噂は耳にしている。面白いシナリオを考えるものだ」
ダイクンのシンパが流したらしい、ダイクンの遺児が生きているという話。
されど、気にするべきはそこではない。
「あの場に妹君がいらしたというのは真実なのですか?」
「間違いない」
「それは…………」
兄妹での殺し合いになるなど。
シャリアは言葉にすることを避けたが、理解したようにシャアは言う。
「君の不幸と比べることではないよ」
「しかし、妹君なら話をすれば」
椅子が軋む。シャアが背もたれに寄り掛かったからだ。
「アルテイシアは優しい子だった。こんな戦場に出る者ではない」
「そうならぬように手を尽くしたつもりだが、戦場にいる」
「誰かが唆したのか、私の読み以上の女だったのか。あるいは私が原因か……」
「それでもあの激情は本物だ」
「そしてその瞳に写しているのは私であって私ではない」
「ならば、大佐はどうなさるのですか?」
シャアの体はゆったりと動いた。
「アルテイシアがニュータイプならば、何とでもなるはずだ」
しかし、と言う。
「大尉はあの時、妙な少女を目にしたか?」
「妙な?」
伝わってくるイメージに該当する人物はいない。
「いえ、私には」
「ふむ……あれが何者かはわからんが、アルテイシアのことといい、何か妙なことが起きている。そして、このグラナダにはその原因になりそうなものもある」
「……シャロンの薔薇とかいうものですか。キシリア様の」
「そうだ。大尉、君からキシリア閣下はどう見える」
含みがありそうな質問だった。
シャリアはここで踏み込むべきだと悟る。
「ニュータイプに希望を見ていらっしゃるように見えますが、それは手段かと」
「何か別の目的がなければ我々に便宜を図ることはしますまい」
「それに今日のテストも口では満足しておられましたが、意識は別にありました」
「まるで、我々とは違う何かを見つけたような」
その答えにシャアは満足したらしい。
「…………やはり友人とは良いものだ」
「君はアレを獣に例えたが、私にはアレも
「そしてそれは遠大な計画とやらだろう。野放しにすれば我々の勝ちの目がなくなる」
シャアがグラナダへ来たのはもちろん指令ありきではあるが、コソコソと何かをたくらむキシリアを探るためでもあった。
「アテがおありなのですか?」
「グラナダにあるのは薔薇だけではないらしいということだ」
「それは……」
シャアが何かを語る前、艦内に響く警報音。
すぐに館内放送で声も届く。
『大佐! 緊急入電です。ソロモンが!』
「なに?」
事態は終局に向かい始める。
◇
連邦軍にとって、シャアの強襲は寝耳に水の事だった。
威嚇ならともかく少なくない戦力を失い、再編までの時間もかかる。
今、最もやってほしくないことだった。
なにより再び煮え湯を飲まされたワッケインが冷静に感情を昂らせる器用な真似をする有様。
厳戒態勢をすり抜けられたらそうなるものだ。
そんな中、シイコはサラミスに戻りコックピットの中でシミュレーションをしていた。
相手は赤いガンダム。あの一戦で収集したデータから組み上げたものだ。
「遊ばれていた、か」
実際、セイラも言っていた。
「兄も次はビットを使うでしょう。後ろにいた彼も出てきます。その時が本番です」と。
もうなぜ識っているのかとツッコむ気も出ない。
ビット兵器とやらの厄介さは折り紙付きだ。
知覚外から繰り出されるのもそうだが、後手を強いるのが特に酷い。
『それでも初見で対応出来ただろう。不可能では無い』
「ならいいんだけど」
繰り返すうち、慣れてきた気配はある。
しかし人の意志はない。実戦でこの経験が使えるかは未知数だ。
そんな不安めいたものを感じ取った兎は言う。
『そもそも、シイコだけで戦うものでもない。俺たちでだ』
「へぇ。それなら付録の相手は任せちゃってもいいの?」
『別に構わんぞ』
「ふぅ~ん……」
シイコは兎の額に手刀を浴びせた。
『……?』
もう一度。
『……まて、何だ今の』
二度、三度。
『どういう情緒なんだそれは』
「頼りないと言われているようでむかつく」
『曲解が過ぎるだろ……』
兎は額を毛繕いでもするような挙動を見せる。
『君とは2カ月程度の付き合いだが、俺は頼りにしているし、感謝もしている』
シイコは落ちて来た前髪を横に流した。
「……何? その辛気臭い語り口は」
『伝えられるときに伝えるべきだと思ったからだ』
「ふぅん。まぁ、私も……少しは感謝してる」
『少しなのか』
シイコは湿った視線を兎に送る。
「あなた、隠し事多すぎるのよ」
『……聞いてくれれば答えるんだが』
「じゃあ、
『…………それは駄目だ』
それ見たことか。視線の湿度が上昇した。
「ほらそう言う。なら好みのタイプを教えなさい、揶揄ってあげるから」
『雑なドアインザフェイスはやめろ』
「そもそもあなたって生物が好きなの? それとも無生物?」
『なぜ続ける』
兎の抗議は黙殺された。
「あぁ、あなたが誰を好きでも相手が機械を好いてくれるかは別問題だものね。
ごめんなさい、酷な質問をしたわ」
『……普段より毒が強いぞ。機械だって泣くんだからな』
ちなみに、
「いいじゃない、世界で初めて泣いた機械になれるわよ」
『そんな称号は求めていない』
「それで、あなたは何が好きなの?」
必要以上に開眼された瞳が兎を縛り付ける。
兎は観念したように腹を見せた。
『はぁ……君が好みだとでも言えば満足か?』
「フフッ。その気持ち悪い言い方、直すんじゃないわよ」
『だから直……ん?』
兎が見つめる、シイコの表情は一転して笑顔だった。
「なにか?」
『…………いや』
不安ならそう言えばいいだろう、などというノンデリ発言は兎も流石に慎んだ。
そして兎が持ち上げられる。
そのままシイコの腕の中に収まった。
『どうした?』
「あの感覚は……なんだったの?」
シイコが思い出すのは先の不可思議なモノ。
セイラの語るニュータイプとの感応、ではないと思う。
けれど真に迫るような喪失感を覚えては、体が意識とは別に震える。
「あの声は、確かに私だった。でも、もうひとりは知らない」
『…………』
「あなたでもなかった。本当に、知らない人。なのに、私は悲しいと思っている」
腕に力が籠められる。
「これは、何? 知っているなら、教えて」
『…………』
兎は困った。
何が困るかと言えば、その情報がシイコに与える精神的影響を予測出来なかったから。
言うことに問題はないのだが、平均的な人間は拒絶反応を示すだろうと。
今はなおのこと精神的に揺れているようだったし。
ただ、沈黙は肯定という言葉もあるように、その逡巡はシイコに嗅ぎつけられるものだった。
「また、隠すんだ」
声音から失望を感じる。
兎は自覚した。これが恐れかと。他人に拒絶されるかもしれない恐怖を
結局、知った気になって信じられていなかったのは自分だった。兎がチキンとは。
そしてこの恐怖と戦う人間に尊敬の念を覚える。ならば、敬意を払わねばならない。
この偉大な人に。
鼓動する心臓に波長を合わせる。
『……端的に言えば、シイコ。君の身体を造り変えている、その弊害だ』
「……へぇ?」
説明を求められている。
『俺は
そうして最適化された脳はいわゆるESP――超感覚を得る。
それが他の要因と重なる結果として、虚数空間に存在する因果情報を受信してしまう』
「……ちゃんと理由があったのね」
『……それだけか?』
「
脳を弄っています、と言われてあっさり受け入れる人間が世に何人いるか。
「はぁ、安心した。むしろ、ニュータイプだのなんだと言われる方が違和感があるわ」
『残念なお知らせだが、おそらくニュータイプとやらも間違いではないぞ』
「些細なことよ」
『まぁ……』
事の大きさ的には。
「要するに、夢のようなものだと思っていいのね?」
『……理解としてはそれでいい』
「
『そうだ』
「なら、まぁ……いいわ。それで」
それは割り切りが良すぎて兎が困惑するほど。
『自分で言うのもなんだが、もう少し詰められると思っていた』
「なんでよ。確かにショックはあるけど、それだけ。予想通りね。
この喪失感だって、本物にしないために私は戦うのだから」
『尊敬するよ、本当に』
兎はそう思った。
ただ、それはそれとして雲行きも怪しくなる。
「ああ、でも……そうね」
シイコの表情が嗜虐性を帯びた。
「嫁入り前の身体を無断で弄繰り回すなんて酷いんじゃない?」
『聞き覚えのある言い方はやめてくれよ……』
兎は依然、捕まっている。
「なら今更、逃げようなんて考えていないでしょうね」
『……思っていない。だから解放を』
兎は生物的な危機感を覚え始めていた。兎ではないけれど。
「あなたコロっと壊れそうだし、私が守ってあげるだけよ」
何か視たのか。腕の力は更に増した。
『そこまでヤワな機械じゃない』
「なら最後までついてくること」
『……是非もなし』
「万が一逃げたら地の果てまで追いかけまわすから」
『……怖ぇよ』
果たしてその原動力はなんだというのか。兎にはわからなかった。
「先輩ー! そろそろ休憩しませんか?」
ハッチを叩く音がしたので、開けてみれば。
マリーがボトルとレーションを手にしていた。
「あら、もうそんな時間?」
見れば4時間は経っている。即応できるように待機していたが、確かに長い。
「そうなんです。先輩も根を詰め過ぎないでくださいね?
気負うなと言ったのは先輩なんですから」
「ありがとう、私は大丈夫よ」
自分で思うより焦りはあるかもしれない。
作戦前最後だろう配給を受け取る。今は食堂も使えない。
自慢の後輩の頬を撫でれば、くすぐったそうに笑う。
「うひゃひゃっ、ボトル触った手じゃ冷たいですよ!」
包帯は外れたが、顔の半分に火傷の跡は残ってしまった。
表情の変化に気づいたマリーは火傷をなぞるシイコの手に自らの手を重ねる。
「これも、先輩のせいじゃありません。むしろ軍人らしくなったと思いませんか?」
ちょっと気に入っています、なんていう様子に笑みがこぼれた。
いつの間にか、強い心に育っている。
同時に、自分の復讐に他人を付き合わせるわけにはいかないという思いは強まった。
「中尉だものね。頼りにしているわ」
「えへへ、はい!」
『そんな老婆心みたいな年では……グェッ』
兎は黙らされる。
「ああ、居たんですか。でも残念ですね。あなたに配給も愛もありませんよ」
マリーが兎に勝ち誇るような視線を向けた。
『そういうところが子供なんだよな』
「違いますが!?」
階級も何も無いメカ兎はダル絡みする相手に最適だろう。
兎も理解している。
「ううう。その無表情、ムカつきます!」
『どうぞご自由に』
「そういえば、あなたに食欲はあるの?」
振られるとは思っていなかった話題にきょとんとしつつ。
『ないが、気になるものはある』
「へぇ、草でも食べる気なんですか?」
『違うが』
「ならどうして?」
『知りたい味がある。オコノミヤキとヌードルとギョーザとタコヤキとトーフを混ぜたものを』
シイコとマリーは数秒固まって、同じ反応を示した。
「…………よくわからないけど、ゲテモノじゃない?」
『……否定できないんだな、これが。ただ、どうにも気になる』
「機械って変わってますね~」
「まぁ、個人の趣味は自由よね」
『お前らにも食わせてやるからな』
「嫌ですよ」「ご遠慮するわ」
『なんて奴らだ……』
話にひと段落ついたところで。
マリーは手の感触を名残惜しそうにしつつ、立ち上がった。
「では待機変わります。あとでノアにも声をかけてやってください」
「もちろん」
シイコは頷きを返す。
「それと……見逃すのは今回だけだから」
マリーの視線が兎に向く。
『どんな立場なんだよお前は』
兎の発言は無視された。
「そういえば、先輩。艦長が呼んでましたよ」
シイコが艦橋を訪れる頃は、各員の作業も落ち着きを見せていた。
「艦長、お呼びだとか」
入室して敬礼すれば、振り返ったオットーも返してくる。
「ああ、わざわざ呼び出して悪かったな大尉。皆、君の顔が視たいというものだから仕方ない」
「えぇ? 艦長が初めに言ったことじゃないですか」
「ユーリ、艦長を隠れ蓑にするのは感心しないわ」
操舵士の指摘を通信士が刺した。
「曹長もでしょう? 良い目に見られたいからって人を悪く言うのはよくないでしょ」
「なんですって?」
「そこ、余計な私語は慎め」
副長が注意すれば、双方気の抜けた返事をする。
オットーが続けた。
「御覧の有様でな。碌に休めて居ない若者がとがっている」
「ふふ、構いませんよ」
「そう言ってもらえると助かる。美人を見たいのは男の本能だからな」
「あら、お上手ですと言えばよろしい?」
「そうだな、受け取ろう」
「ならこの程度、艦長が収めるべきですがね」
副長のちくちく言葉にオットーは咳払いをしてから、要件を話す。
「司令部から通達だ。先鋒は任せると言うらしい」
「この艦は」
「艦隊左翼だな。心配せずとも落ちはせんよ」
「そうですよ」と操舵士が言えば各々続く。
「そうです。我々は優秀ですから。艦長はともかく」
副長がそういえば、艦橋に含み笑いが連鎖した。
「副長は3ヶ月間減俸だな。上官への不服従で」
「おや、手厳しい。ならへばりつくしかありませんな」
「ああ言えばこういう。そういうわけだ、大尉。艦は任せろ。
君は好きに前線で暴れてくればよろしい。それが我々の生存にも繋がる」
「………はっ」
「君もな。頼んだぞ」
『任せてくれ、と言っておこう。艦長』
「うむ。では持ち場に付き給え。作戦開始はまもなくだ」
シイコは敬礼して退出した。
思えばクルーとは半年にも満たない付き合いだというのに随分よくしてくれた思いがある。
軍艦は独立した寄り合い所帯であるから、問題もよく起きるものだ。
けれどこの艦でそういった話はなかった。ほとんどが職業軍人である以上に艦長以下の乗組員に徳の心がある。
ならば。
「皆が生きて帰れるように戦わないとね」
『そうだな。前向きな意思は良いことだ』
格納庫に向かう途中、シイコは部屋の前で挙動不審なノアを見つけた。
少々悪戯心が疼いて、背後から忍び寄る。
「捕まえた」
「ん……捕まった」
あすなろ抱きを食らったノアは案外おとなしく体重を預けて来た。
「どうしたの?」
シイコはノアがなにやら手に持っているのを見つける。
「ん……えっと……先輩に」
部屋に置くか直接渡すかを迷ったのだろう。
結局、ノアは直接渡すことになった。
「これは、花? すごいわね、天然ものじゃない」
密閉された透明な容器。その中に紫の花が咲いている。
「うん、先輩に渡そうと思って」
「よく手に入ったわね」
「お金だけはあるから……それで、だから」
「ゆっくりでいいのよ?」
タイミング的にはサイド4の時だろうか。それからずっと渡すタイミングを伺っていたらしい。
可愛らしい乙女の仕草にまたシイコのいたずら心が刺激される。
一方、感謝を伝えるためだけに花とはちょっと重くないか? 兎は訝しんだ。
「ん……どうぞ、先輩。帰ってこれるようにおまじない」
向き直って、おずおずと渡された花をシイコは受け取る。
「ありがとう。なら、私からもおまじない」
「ひゃっ」
ノアの額に口付けを落とせば、ノアは一瞬呆ける。
次の瞬間、面白いように赤くなった。
「ん……ん……!?」
「それじゃ、行きましょうか」
「? ???? ?」
忘我状態のノア、その手を引いて格納庫へ向かう。
『いつか刺されるんじゃないか……』
「何か言った?」
『……いや、なにも』
兎はこれが天然なのか、どこからか学んできたものなのかを考えたくなかった。
格納庫に帰ってきたシイコを整備兵たちが迎える。
宙を漂ってシラヌイに向かうシイコに、ニックが短距離通信を繋げた。
「シイコさん、損傷は修理済みです。詳しくは兎さんから聞けるとは思いますけど
刀身をコーティングしておいたのでサーベルとも打ち合えるはずです」
「いつもありがとう、助かるわ」
「えっと、その。今回も帰って来てくださいね!」
手を振って返事をしながら、シイコはコックピットに着座する。
インテリアがひとつ増えたコックピット。
アビオニクスが光を伴って起動する。
通信、姿勢制御、兵装各種システムのオンラインを確認した。
電力を供給されたパネルが光を帯び、
網膜に映し出された外の様子に、心地よい酔いを感じた。
『ニックも言っていたが、刀身に斥力を付与している。
これでサーベルが持つIフィールドと反発させれば、一方的な打ち負けはしない』
「それは結構なことね。他に更新点は?」
『各種駆動系の調整と……セーフティの解除だな』
「セーフティ? そんなものあったの」
『人の頭を弄る奴にセーフティを載せないでどうする』
「確かに。そう考えると、あなたを造った人は良心的ね」
『そうだな……。ただ、これは頭の方じゃない。機体の方だ。
そして自分じゃ入力できないようになっている。当たり前だが。
今から言うコードを覚えておいてくれ。必要な状況はこちらで伝える。あと自壊コードもだ』
「注文が多いわね。それだけ信頼してくれてると思うことにするわ」
『月は常にイレギュラーだ。備えて損はない』
「そうね。でも自壊コードを伝えたことだけは許さないから」
『えぇ……』
そして連邦時間、12月29日。
ルナツー陥落の報を受けたワッケインは決断する。
ここにグラナダ攻略作戦は発令された。
「地球連邦軍各位に通達する。地球連邦、ひいては地球圏の今後はこの一戦にかかっている」
「敵主力をサイド4が押さえている今が最後の機会だろう。ゆえにこの機を逃す手はない」
「最大火力で正面から確実にグラナダを叩く。全艦、出撃!」
◇
月面都市、グラナダ。
ジオンの生命線を握る重要拠点は今、非常事態警報が鳴り響き、人々は我先にと逃げていた。
「キシリア様、やはりソロモンはこちらに向かってくるかと」
「そうか」
一方、基地司令室ではキシリア・ザビ配下のジオン兵たちが出来る限りの対応を行っている。
しかし、状況は絶望的だった。戦力も僅かで質量兵器など降ってくるのは。
「チベの出港準備は完了しておりますが」
副官の進言をキシリアは一笑に付す。
「ここで逃げ出す指揮官を兵は認めんだろう。私はここに残る」
「は……」
「シャアに正式なソロモン迎撃の命を伝え、例の物を使わせよ。奴ならうまくやるだろう」
「はっ」
副官は後ろに下がり、キシリアは映像の中のソドンを見つめて呟く。
「この逆境をはねのけてこそ赤い彗星だろう。見せてくれよキャスバル坊や」
そして指令を受け、発進した当のソドン艦内では主要人物を囲んで議論が行われていた。
「現在ソロモンは慣性移動にあります。すでに月軌道へ投入済みかと」
レーダーを見ながら観測手は告げた。
「戦闘艦4隻とモビルスーツ程度でどうにか出来るものではありませんが」
マリガンが事実を指摘する。
「それをどうにかするのが、我々だろうが!」
「落ちつけ、トクワン。策はある」
シャアがそう言えば、ソロモンの様子が3Dで表示された。
「ソロモンは先の戦いで東側のサミットが消失している。バランスは最悪だ。
故に、少しでも突けば
映像に飛翔体が登場し、ソロモンに直撃する。
ソロモンは中心から砕け、バラバラになる試算が表された。
「ギリシア様秘蔵の新型弾頭ですか」
「そうだ。コレについてはマリガンの方が詳しいだろう」
水を向けられたマリガンは頷く。
「確かに……それならば不可能ではないかと」
「ううむ、しかし大佐。迎撃されては意味もないのでは?」
ドレンが懸念を話す。
「その心配はないというキシリア閣下の話を信じるしかあるまい」
「む……」
キシリアの名を出されてはそれ以上を追及するものはいなかった。
シャアは次の説明をする。
「だが、連邦とてそれは理解しているだろう。これは予防線だ。
むしろ我々が気にしなければならないのは」
「最大望遠です」
シャアの目線を受けたオペレーターが中継映像を見せる。
そこには特殊な弾頭を抱えたパブリクの姿がある。
「核……ですか。まだこんな手札があるとは」
シャリアの驚きが口に出た。
「おそらく規模からして30といったところか。
我々は同時に2つのことを
「ソロモンの阻止と核の排除ですね」
「しかし、状況が酷いことに変わりありませんよ」
マリガンのマジレスにトクワンが噛みついた。
「それをやって見せてこそジオン公国軍人だろう!
そうでしょう、大佐!」
「うん。そしてここにいるものにはそれが出来ると私は信じている
そして、これを成せば今後の我らは名誉を得るだろう。
それもキシリア閣下の覚えめでたくだ。ならば……分かるな」
仮面の目が光るような印象をその場の人間は見る。
ドレンがため息を吐いた。
「まったく……大佐は人を煽てるのがお上手だ。
どちらにしてもやらねばならないのですから、名誉はあって不足ないですな」
「ああ、流石は大佐だ。ジオン軍人の鑑よ!」
「はぁ……乗ってしまったが運の尽きですか」
「出来ることをやるしかありませんね」
「私は部下にも恵まれている幸せ者だな。それでは始めるぞ」
ソドンの艦橋に喝が響いた。
艦橋から格納庫に移動するまでの通路。
前を行くシャアにシャリアは尋ねる。
「大佐は、キシリア様の計画をどこまで読んでおられるのか?」
「そう見えるのも無理ない。戦いとは2手3手先を読むものだ」
「それは……」
「そしてこの連邦のなりふり構わぬ姿勢は好機でもある」
「好機ですか?」
「連邦とザビ家が共倒れしてくれるならばな。だが、懸念もある」
シャリアはシャアの考えを読んだ。
「例の……謎の少女ですか」
「ああ。彼女だけは我々の埒外にある。下手な真似をして欲しくないものだ。
それにアルテイシアを巻き込むと言うのなら……」
漆黒の意思が仮面の奥に見えた。
Xを開放したら割とシイコの強化服姿が視れて満足
自給しようとしたらトレスすらできない絵心だった