最高のM.A.V. 俺とパイロット 作:脳を焼かれた00ユニット
こういうのって初手が最大瞬間風速だったりしない?
道はあっても書き貯めがないのでゆっくりなんだ
追記:今週やばやば……。
本話もすごいはやい誤字報告ありがとね。いくつかそのままなのはあえてだから許して
→なんてこと。普通に誤字もまだあった。ありがとう
戦術機。正式名称を戦術歩行戦闘機。
それは
宇宙開発用の大型MMU(
モビルスーツ。
作業機械から発展した新たな宇宙服。
異なる世界。過程は違えど起源を同じくする両者は、なにゆえ出会ったのだろうか。
ザクを落とした後、シラヌイは軽キャノンの小隊に囲まれて。
ジオンの新型に思われてピリピリしたものの、中にシイコがいるとなれば比較的平和な話し合いが持たれることになった。
『信頼されてるな』
「自慢の仲間よ」
『そうか………』
現在、端末を用いてギンはブリッジと通信をしている。
話せる範囲でギンは事情を語った。
『なに? そんな与太話を信じろと』
『与太話でも結構だが、目の前の現実はある』
『しかしねぇ……私には艦の皆を守る義務があるのだから、所属不明MSなんてものを載せるにはいかんのだよ』
『貴君の立場なら、そうもなる。
ならば、その利を私は示そう。
聞けば連邦はモビルスーツの習熟訓練に難儀していると見える。
こちらは我が国最高峰の技量を持った衛士――諸君が言うパイロットの体系的戦術データを持っている』
『それが嘘でないと言えるか?』
『ここに証拠がある』
『……本当かね、中尉』
「あら、そうですね。確かです」
ザクと戦う間、確かに体系的な戦術の片鱗をシイコは感じていた。
もっともそれは、モビルスーツと戦うためでは無さそうだったのだが……そこまで言う必要もないので黙っておく。
『……参謀本部に聞かせてやりたい話だな。ひとまず乗船を許可する。ハッチ開け!』
しばしの悩みを艦長は抱いたが、ユニカムであり信頼に足るシイコ中尉の保証もあったので、結局この所属不明機を受け入れることになった。
そして格納庫に収納された機体を見て、事務員はもちろん整備兵も……いや、整備兵だからこその感想を得る
(美しい…………)
キャノンたちも連邦の魂を背負った機体だ。誇りもある。
けれど、それとは軸が違うのだ。
月並みな表現なれど、美しさが違う。
ましてやその腹から出てきたシイコ中尉に妖精のような美を覚えるものすらいた。
ゆえに気になる。
明らかに連邦やザクとは異なる体系から作り出されたであろう、この機体が。
一体、どんな前提――想定されたであろう場面、要求されたスペック、そしてなにより、この美しい機体が相手取る相手とは?
その衝撃は武装解除後に触れた武器で再燃する。追求されたであろう合理に。
マニピュレーターを必要としない火器管制システム、非常に独創的な構造のブルパップ式マシンガン、質実剛健の実体剣。
整備兵は皆、姿の見えぬメカニックたちの技術に尊敬の念を覚えた。
そんな衝撃が格納庫を襲う中、シイコはシラヌイから持ち出したタブレット端末を持って艦橋にいた。
「君がギンとやらか。改めて自己紹介しよう。私が艦長のオットー・ミタスだ」
『オットー艦長、お会いできて光栄だ。ギンと名乗っている』
タブレットに映し出された青年と呼べる顔は、微笑みながら返事をする。
オットーは頷き、続けた。
「正直、私は君の話を持て余している。日本帝国軍の所属というがその名は歴史の教科書にあるだけだ。戦術機という言葉にも宛はない」
『すべて事実だ』
無表情ながら機嫌を損ねましたと言わんばかりのギンに、オットーは
「別に君の話を嘘というつもりはない。軍属として、考慮しなければならんだけだ。君にも事情はあるのだろう。我々は幸運にも独立艦隊だ。ある程度の裁量権があり、それを行使することに躊躇しない。つまり受け入れはできる」
『そうか』
「そのうえで話をしたい。体系化されたモビルスーツ――いや、戦術機といったか? そのデータがモビルスーツに有用か。それを実証してもらう」
別の世界線では
そんなときに出てきたエースの戦闘データ。使えるのなら使いたいと考えるのは自然だ。
『問題ない。しかしこちらの望みは伝えたとおり、俺を使うのがシイコであることだ』
純国産戦術機たる
DNA検査においてシイコは適格者だったのだ。
それだけではないが。
「その程度ならよかろう。中尉もいいな?」
「はい」
シイコ中尉はタブレットに流し目をしながら答える。
その様子に艦長は憂慮した。
(あの中尉が随分入れ込んでいるな? 洗脳の類も考慮せねばならんか)
シイコ中尉は戦闘機乗りだったころからのユニカムであり、モビルスーツに転向してからも実力は確かだった。その戦法はとにかく苛烈。
家族をジオンのせいで失うのは珍しくないが、オットーの知る彼女はもっと鬼気迫る雰囲気を持っていたのだ。それがこうも変わってしまうのは、理由があるはずだった。
「我々は近くサイド4周辺にいるジオンのパトロール部隊を蹴散らすつもりだった。しかし先の遭遇戦で段取りが狂ってしまってな。おかげで正式に
『それが最初の仕事か』
「そうだ。できるかね?」
『軍属はやれと言われればやるものだ』
「生意気なやつだ。総員配置に就け! 機関始動、微速前進!」
「微速前進、ヨーソロー」
操舵手が復唱し、サラミスの炉に火が灯された。
「予定戦闘宙域までしばしある。準備をしたまえ。細かいことはシイコ中尉に任せる」
「はっ!」
見事な敬礼を披露し、ギンとシイコはブリッジを出た。
艦内の廊下を進む途中、ギンは思念を飛ばす。
『いい艦長だ』
「わかる?」
『自分に自信と責任感、そして度量がある。艦内の乗員も多少の愚痴はあれ、尊敬しているらしい』
「そうね。艦長はあのルウムの生き残り。まだ若いけど、上司として文句はないわ」
『ルウム、戦争初期の宇宙戦だったか』
「あら、知ってたの?」
『いや、調べた』
オットーは知らぬことだが、特殊なOSのギンは所謂電子戦ができる。ミノフスキー粒子散布下ならいざ知らず、平時で痕跡を残さず艦内のあらゆる電子データを見ることに困難はない。
バレたら速攻叩き出されるというのに、知識の収集をしたいギンは躊躇を捨てていた。
「いたずらはほどほどにね」
『弁えている』
そうしてたどり着いたのはパイロットの待機室。
二人の少女が談笑していたが、気配を感じて視線を向けてきた。
「先輩! 大丈夫でしたか?」
シイコは無重力から飛び出してきたポニーテールの少女を受け止める。
「心配することはなかったわ。ちょっとお話をしただけ」
「よかったぁ……びっくりしました。スクランブルかかったと思ったら先輩は変なものに乗ってるし、ザクが転がってるしで……銃口なんて向けちゃって……」
「無理ないことよ、気にしないでいいわ。私も突然のことだったから」
「ううう……! 先輩が無事でよかったです」
少女はぐりぐりと頭をシイコの胸にこすりつけた。
シイコは微笑みながらその髪を梳いてやる。
戦闘時の苛烈さと正反対の母性がそこにはあった。
少女はもっと撫でてと甘えるが、そのことをよく思わないのはもうひとりの方だ。
「マリー、近すぎ。先輩が嫌がってる」
ウルフカットの少女はツリ目で睨む。
「え〜? 嫌がってるわけないじゃない。ねー先輩?」
「まぁ、そうね?」
「えへへ、先輩好き〜」
「私もマリーのことは好きよ〜」
「むぅぅぅぅぅぅぅ!」
ムカチャッカファイアーした少女に、マリーは意地悪い表情を浮かべる。
「先輩に抱かれたいなら素直に言えばいいのに。ノアは恥ずかしがり屋だねぇ〜」
「…………」
静かにキレた少女――ノアは飛び出して、マリーの肩をつかんだ。
「ちょ、ちょっとなに……うわぁ!」
「むふー」
そのまま無理やり引き剥がし、シイコの腕の中に収まる。
「もー! あんたはいつもそう!」
ふよふよ漂って壁にぶつかったマリーが文句を言う。
「まぁまぁ、二人とも出迎えありがとね」
「どういたしまして!」
「ふふん………」
シイコが取りなして場は収まった。
そこでいつの間にかシイコの手を離れ、宙に浮かんだタブレットから声。
『そろそろ説明を求める』
「ああ、あなたですか。先輩に変なことを吹き込んだのは」
『吹き込んではいない』
「そうね。教え込まれちゃったかも」
「は、はぁ!? 許せません………すぐにぶっ壊してやる!」
「パーツの一つ一つ………ねじ切る」
『シイコ、変なことは言わないでくれ。2人の敵意が増した』
「ふふ、冗談よ冗談」
「なんだ冗談ですか……じゃなくて!」
「ん…………」
冗談ならなぜそんな艶やかな表情を?
ノアはその疑問をぐっとこらえた。
「なんですかこの喋るタブレットは」
『シラヌイのメインOSだ。ギンという』
何いってんだコイツ?という表情の視線がタブレットに突き刺さる。
『…………』
「…………」「…………」
「ほら、2人も自己紹介して?」
「……仕方ないですね。マリー・グラマン少尉です」
「ノア・グラマン少尉」
「はい、よくできました。二人は士官学校を出たばかりなんだけど、実力は確かなの。2人がM.A.V.でそれを私が教導する形なわけね」
「そうよ、あんたなんかよりずっと深い仲なんだから!」
「ん、相思相愛」
シイコに撫でられている2人は満更でもない表情だ。
『なるほど。しかし個人的関係値までは聞いていない。なぜマウントを?』
「…………」「…………」
『構ってもらいたいだけならば素直に言えばいいだろう』
空気が一瞬で冷えた。
「先輩! こいつ私嫌いです!」
「私も………」
『??? なぜ?』
「ふふふ、なぜかしら」
『不可解だ……。運用データを使うなら君たちになるだろうから、俺としては仲良くしたいのだが……』
「先輩はあげませんから!」
「ん、あげない」
両側からシイコを抱きしめる両名。
『どういうことだ…………』
「それじゃ、打ち解けたところでブリーフィングルームに行きましょうか」
『これが? これが打ち解けたということなのか?』
「ふふふ、この子たちは恥ずかしがり屋だから」
「がるるるるる」
「シャー」
『威嚇しているようにしか思えない……』
ギンはタブレット上で困った表情を浮かべるしかなかった。
ブリーフィングを始める。
これはコロニーからの救援要請による連邦軍の正式な任務だ。
作戦地点はサイド4の10バンチ周辺宙域。
目標はジオン公国のパトロール艦隊改め、サイド4侵攻部隊の撃破だ。
想定される戦力はムサイ2隻とザク6機。後続もあり得る。
作戦はザクをモビルスーツ隊が押さえている間に自治組織の宙間戦闘機がムサイを落とす。
その後は残存戦力を全戦力で殲滅だ。
奴らは一週間戦争での破壊に飽き足らず、小遣い稼ぎにサイド4へやってきたらしい。
ピクニック気分の奴らに母艦を失う恐怖を教え込んでやれ!
『艦載機にビーム兵器が乗るとは……すさまじいな、エネルギーCAP』
着座して出撃待機しているシイコにギンが話しかける。
シラヌイの右手にはシイコの軽キャノンから持ってきたビーム・ライフルが握られていた。
「あら、初めて?」
『戦術機は実弾兵器が主だ。荷電粒子砲を積む機体もあるが……』
「それなら、良い経験ね」
『ああ、貴重なデータが取れるだろう』
「……それより、私はこのスーツがちょっと気になるわ」
シイコが腹部をひっぱれば、パチンと音がして形状回復する。
普段のパイロットスーツとは異なる赤を基調とした特殊な服だ。
『強化装備のことか。確かに、年頃の乙女にとっては気になろうな』
「乙女って……私もう25よ?」
『嫌なのか?』
「悪い気はしないわね」
『ならばよかろう。それよりこの強化装備はいいぞ。まずラバースーツは耐衝撃や感覚欺瞞、網膜投影、筋電位感知、筋電位操作、防弾防刃、放射線遮断、レスキューパッチ、他にも各種高度な機能を備えている上にプロテクターはバッテリーやコンピューターが内蔵された最小高性能演算装置だ。衛士のあらゆる情報を逃さず集積することで最適な――――』
突然止まらなくなったギンの言葉を遮る。
「わかった、わかったわ。すごいスーツってことは」
けれど、と鑑みる。
いかな高性能とはいえ、このラバースーツは体に吸い付きすぎる。
プロテクターのおかげでマシなものの、それだって
それは確かに技術の粋を粋を集めたもの。
技術者が昼夜を惜しんで衛士を生存させるため試行錯誤の末にできたものだ。
それはいい。
だがこんな成人ゲームのようなスーツを好んで着たいとは思わないだろう。
もとは男性兵士が死にすぎたために女性兵士を徴兵する過程で意識強制のためにこんなありさまになっているのだが、独立戦争緒戦で男女比が大変なことになっている連邦とはいえ、こんなことはしていない。
(ある意味有用なのかもしれないけど、上は何を考えてこんなものを……)
シイコは割とギンのいた国を心配した。
『しかしシイコ、正確な情報というのはなによりも代えがたい。それも強化装備の詳細を知らぬというのは』
「わかった、わかったから『直接』にしておいて頂戴。こういうところは機械よ」
悪気はないのだろうが、営業マンめいたものは気が滅入る。
『皮肉を検知』
「まったくもう……」
そうして必要情報の振り返りをしていれば管制官から指示が飛ぶ。
『シイコ機、発艦どうぞ!』
「時間というわけね。シラヌイ、出るわよ!」
カタパルト式ではないサラミス。艦底のハッチから逆さまに
現在、続いて出撃したマリーとノアらと編隊飛行に移っている。
『やっぱりそのモビルスーツかっこいいですね、先輩が乗ってると!』
『モビルスーツではない。戦術機だ』
『どっちでもいいでしょ!』
『なっ……!』*1
「…………」
『先輩?』
『問題発生?』
シイコはその眼前にそびえたつ広大な宇宙に圧倒されていた。
初搭乗時はコロニー内であったので、この『網膜に直接写し込まれる宇宙』がどんなものかを想像できなかったのだ。
無限に広がる暗闇の中に存在する光の川。
子供が遊ぶように煌めく星々は童心に帰ったように錯覚させる。
それは、キラキラと呼んで差し支えない。
機械越しとは思えないほどのクリアな
『見えるか』
「ええ、これは……すごいわね」
『これは美しいと呼べるか?』
「そう、ね。そう呼んでいいと」
『そうか……ここに来て、最初に見たのは宇宙だった。この感動を共有できればと』
「機械にも感動はあるのね?」
『その言い方はひどく傷つく』
「冗談よ」
ピコピコと明滅する『抗議』の意。
艦長と話していたアバターを使えばもっとわかりやすいのに。
なにかしら意味があるのだろうとシイコは感じた。
『先輩! ちょっと大丈夫ですか!?』
トン、と軽い音。
対外的には無反応だったので、痺れを切らしたマリーが接触回線をつなげたようだ。
「ごめんなさい、大丈夫よ。心配させちゃったわね?」
『よかった……変なものに洗脳されているんじゃないかって』
『そんなことはしない』
『信用できるわけないでしょ!』『ん! ん!』
『言いがかりすぎる……』
後輩に話しかけれたことで、シイコにひとつ、夢と呼べそうなものが出来た。
「いつか、あなたたちにも見て欲しいわね」
宇宙は本来、美しいということを。
それからシイコは改めて軽キャノンとの違いに慣れようとしていた。
潔すぎるまでの左右にある操縦桿オンリー。加えて強化装備に内蔵したスロットル。
操縦性に関してはレバーとボタン、フットペダル操作よりは直感的で扱いやすい。
何よりこのキャンセル操作というのは目玉と言えるだろう。
行動を先行入力しておき、状況次第で行動をキャンセルしたりラグなしで派生できる。*2
なんだこれは。
相手に行動を悟らせないという意味では自身の戦術そのものだし、そのうえ行動を欺いて誘導出来る可能性すらあるとなれば、それ以上の効果がある。
ほぼ思考だけで動くことも加味し、今まで出来なかったことも可能かもしれない。
当然それは、常人離れした思考速度を要求されるが。
(絶対に
加えて本機能は衛士――パイロットの操縦データも複数必要なのだが、勝手にギンが思考介入によって読み取ってしまっている。シイコは敵を倒せるなら止めようとも思っていない。
(とはいえ、心配なところはある)
ひとつがエネルギー。
戦術機のエネルギー源は
モビルスーツの熱核融合炉はほぼ無尽のエネルギーを生み出せるため、その差は無視できない。
流石に数回の戦闘でエネルギー切れはない。
他には火力面。実体剣は確かに不足ないが、ビームサーベルと打ち合えるかは不明だ。
射撃戦も機関砲で抜けない場面はあるかもしれない。
対策はある。そのためのビーム・ライフルであるし、もとからサーベルと打ち合うような戦術をしていない。機関砲だって関節や機関部ならザクにダメージを与えられるのは実証済み。
(結局、技量次第。なら問題ない)
他には通信機器。戦術機は電波妨害をある程度想定しているが、ミノフスキー粒子なんてトンチキなものを想定していない。その影響は未知数だ。
とはいえ……。
『なるほど、これがミノフスキー粒子か』
「問題ない?」
『頭痛がする程度だ。サポートに不足はない』
「へぇ、頭痛って表現面白いわね」
『不快であれ無視できる程度なら、それは『頭痛』という他ない』
「確かに」
まぁ、大きな問題はないらしかった。
(深い情報は読めないけど、絶対裏があるわね。これは)
シイコとてジオンをやれるなら別に構わないことである。
『マリー少尉、ノア少尉。そちらの戦術データリンクへのアクセス許可を貰いたい。現状本機だけの火器管制システムでは隙を作る可能性がある』
思い出したようにギンが僚機に
通信というより、対象の通信機器を乗っ取って
『……いいんですか、先輩』
「まぁ、許可しないと勝手に繋げそうよ」
『悪辣……』
すでに勝手をしてる。それがわかっているし、大事にすれば最悪シイコの首が飛びかねない。
『もちろん本機の戦術データをそちらにも共有するためでもある。手は尽くすべきだ』
『……先輩のためです。口車に乗ってあげますよ』
『感謝する』
当然にログは偽装するし見つからないようにバックドアは残しておく。
戸惑うほどその手法は慣れ親しんだものであり、ギン自身驚いていた。
そうしていれば、仲間もやってくる。
『ヘイ、お嬢さんたち。今日はよろしく頼むぜ』
合流してきたのはムーア同胞団という自治組織に所属する戦闘機隊。
「ええ、まかせて頂戴」
『心強いこった。俺らは母艦をやる。モビルスーツは任せるぜ』
「もちろん、そちらこそしくじらないでね?」
『ユニカムは違うってか? 任せな、これでも実力者だけで構成したんだ。それより、終わったら一杯どうだい?』
「フフッ、おひとりでどうぞ」
『そーだそーだ!』『寂しくね』
『あーあー、残念残念。聞いたか? いくぞお前ら!』
『ハハッ、振られてやがんの』『52敗目か?』『56だぜ』『そりゃいい!』
作戦通りに行動すべく、戦闘機隊は分かれていった。
『ああいう軽薄な奴、私は嫌いです』
「あら、結構紳士的だったのに」
『話しかけてくる時点でってことです!』
頬を膨らませたハムスターのように抗議してくるマリーにシイコは苦笑する。
「流石にそれは無理よ」
『先輩に話しかけない方が無礼』
「そういうことでもないんだけど……」
『シイコ』
ギンから思念が飛ぶ。
「あれは……あたりみたいね」
『先輩?』
『まだ見えませんけど……』
シイコにもそれは不思議な感覚だった。
暗闇と星の中、確かにムサイを2隻
ニュータイプ。そんな言葉が思い浮かんで、頭を振った。
(違う、目がよくなっただけ。そう、目が――――)
ジオン公国に所属するパトロール艦隊、ムサイ2隻。
うち一隻の中で艦長と副長が言葉を交わしていた。
「まったく、中立コロニーなどと嘯くスペースノイドの風上にも置けん奴らだ。むせび泣いてジオンの旗のもとに集うのが道理だというのに……おい、先遣隊との連絡はまだつかんのか?」
「はっ。情報によりますと連邦のモビルスーツと交戦したとのこと」
「例のキャノンとかいうブリキ人形か。ビーム兵器だかなんだか知らんが、数はザクが有利だ。負けるはずもあるまい。命令に背くとは奴らも矯正すべきか?」
「返信ありました。『我ラ降伏ヲ拒絶ス』とのことです!」
通信手がコロニーへと迫った降伏勧告の結果を伝える。
「ふん、所詮形だけのものだ。奴らが塵となる結果は変わらん。
これより本艦隊は中立を騙りながら連邦を匿った反逆者どもの処刑を行う!
全艦最大船速!」
「最大船速、ヨーソロー」
操舵手によってムサイ2隻は標的としていた10バンチコロニーへ舵を切る。
「しかし艦長、よろしいのですか? 参謀本部の指令を受けてから事を起こした方が」
「ふっ、心配あるまい。ドズル閣下は武のお方。結果を出せばお判りいただけるはずだ
そしてこの戦果を持って本国へ返り咲けば、貴様らも昇進は間違いないだろうよ」
「…………はっ」
副長は引き下がり、レーダー手が悲鳴を上げた。
「艦長! 0方向より高速で接近するものあります! 高熱源体!」
「なに? 自警団の奴らか? 懲りない連中だな。また蹴散らしてやろう」
嗜虐的な笑みを浮かべる艦長。レーダー手の表情は険しい。
「いえ、これは…………し、信じられません! モビルスーツらしきもの!」
カップが倒れる。飲みかけの合成コーヒーが宙を舞った。
「なにぃ!? 連邦が来たというのか? こんな僻地に!」
「艦長」
副長の言葉で男は最低限の落ち着きを取り戻す。
「くっ、そうだな。ええい、ザクを回せ! ブリキ人形を吹き飛ばすのだ!」
『…………だそうだが』
「便利ね、それ」
隠す気があるんだかないんだかわからない盗聴にシイコは苦笑した。
『ミノフスキー粒子が撒かれた。以後は厳しい』
「十分よ」
『先輩!』
ムサイの存在をキャッチしたマリーが声を上げる。
「いつも通りよ。私が突貫するから二人はM.A.V.で対応、いいわね!」
『了解!』『了解』
「突撃!」
(見せてもらうわよ……このシラヌイを!)
『ロック解除――戦闘システム起動』
蒼い炎を燃え上がらせてどこまでも加速。
体を押しつぶすGに耐えながら、シイコは敵に向かって突き進んでいく。
向かってきた緑の巨人を視認。
(ザクが1、2…………情報通り6機ね。引き付けろって言われたけど)
口角が持ち上がるのを止められない。
思考が好戦的な獣に変わっていく。
何か良くないことが起きているかもしれない。それでもよかった。
獲物がひょっこりやってきたんだ。ならば。
「――食ってやる」
全部を。
一切の減速をしないシラヌイに驚いたのか、1機のザクの動きが鈍った。
そいつのM.A.V.もつられて動きを止めてしまう。
(あーあ。そんなことしちゃったら!)
当然最初の獲物になる。
最初に止まった奴を勢いそのままにドロップキックし、そのまま誘拐。*3
脚部が悲鳴を上げるが、無視した。
すれ違いざまにもう1機にはライフルをお見舞いする。爆発。
「ははっ!」
命が消える。それは悲しいことだが。
誘拐した足下のザクに腕部のナイフシースから展開した短刀をコックピットへ突き刺した。サブアームがマニピュレータへ短刀をわずか1秒で受け渡す。
動かなくなったザクを踏み台に、散開した残りへ向かって跳躍、加速。
『なんで突っ込んでくる!?』
『落ちつけ! 1機しかいない!』
『そうだ、このまま――』
爆発。また命が消えた。
戦場の声が聞こえる。
ギンの機能か、幻聴か。
『ひとつ! ノア交代して!』
『わかった』
マリーとノアが初撃の混乱をさらにかき回す。
『キャノンか!? 連邦の犬め!』
『クラウン! 一人じゃ無茶だ!』
だがほんの少しの時間でザクたちは態勢を立て直した。初撃の優位性は長く続かない。
しかし。
「こっちを見ろ、ジオン!」
その立て直したザクにシラヌイが突っ込む。
『クソっ、またコイツ!』
『弾幕張れ!』
『わぁってる!』
マシンガンの弾幕で防ごうとするが。
――不可能じゃない。
(左、右、右、左、左――)
ボタンを押すように左右の跳躍ユニットの加速を強めたり弱めたり、あるいはユニットそのものを傾けることで3次元機動を生み出した。
『なんで当たらん!』
『泣き言言うな! 囲っていれば当たる!』
目を回しそうだ。
だが。
(風を切るとは違う感覚――自由に飛べている!)
五感すら感じる錯覚に陥りながら、広大な宇宙を飛ぶ事実に感動を覚えた。
この感動は自分のものか、それとも――。
衛星を引っ張る惑星のように、シラヌイはザクを纏ってソラを飛ぶ。
『こいつ、普通じゃない!』
『そもそも誰かわかんねぇよ! キャノンじゃない!』
2倍の数の差はすでに過去。今は3対3という同数だ。
そのうえ2機が1機に気を取られているなら。
『ん、ひとつ』
爆発。また命が消えた。
『なんでこいつ撃ってこない!』
『遊んでやがる!』
「ふふ、フフッ」
笑いが止まらない。今まで声なんて聞こえなかったから、余計に。
(私が、翻弄している。ジオンを!)
健全ではないかもしれない。けれど心地よいなら。
戦争なんて普通じゃないことをしている以上、普通である必要はあるか?
粘着質な深い沼に沈んでいくような感覚。
『先輩!』
「ッ!」
後輩の声に意識を浮上させる。
自機から見て0時方向へ跳躍。
『なっ』
『コム!』
追いかけていた奴が突然目の前に現れたら、驚きもする。
握ったままの短刀を滑り込むようにコックピットへ突き刺す。
(今のは……いえ、それは後!)
『ッ! 外道が!』
今しがた動かなくなったザクを盾に、最後のザクへライフルを撃つ。
直撃、爆発。
「そんなことを言う資格!」
(そう、みんなを奪ったお前らには――)
『先輩! 無事ですか!? すごい動きしてましたよ!』
興奮冷めやらぬといった様子で抱き着いてきたマリー機の軽キャノンを受け止めつつ、シイコは意識を今に帰した。
「ふふ、そんなに?」
『それはもう! びゅーん! すばー! でした!』
『ジグザグしてた』
あまりに擬音だらけな言いぐさに微笑む。
「大丈夫、大丈夫よ……ふぅ」
今になって心臓の鼓動が凄まじく鳴っていることに気が付き、深呼吸する。
『本当ですか? ならよかったです』
『血圧、心拍、体温、概ね許容範囲だ。問題ない』
『あっ、始まった瞬間ダンマリになった奴!』
『必要がなかっただけだ』
『疑わしい……』
「ちゃんと仕事はしてくれたわよ?」
主に情報処理を。
『ええーっ、本当ですか? 喋るOSっていうなら喋らないと!』
『君らだって喋れても喋らないときはあるだろうに』
『それは人間だからできること……ふっ』
『なぜ誇らしそうなんだ……周辺宙域のスキャン完了。敵影はない』
「そう」
最初にムサイを見た現象。あれは幻覚だったとして、他にムサイがいるようには、シイコも思えなかった。
『嘘ついてたら承知しないわよ! ノア、周囲警戒に行くわ。付き合いなさい!』
『えー……』
『えーじゃない!』
無論、シイコも油断せず周囲を探り続けている。
そのうえで戦いの中で感じたものを飲み込もうとした。
戦場の声。不思議な高揚感。
そして何より、シラヌイを動かしているうちに見えた誰かの影。
「誰なの? あなたは――――」
『…………』
問いかけは闇の中に消えていく。
ほどなくしてムサイを落としたという報も届き。
コロニー防衛作戦は、一旦の成功を得た。
しかし中立を標榜していたコロニーが連邦につくというのは――それもソロモンがあるラグランジュ5で――ジオンにとって無視できないことであるのは明らか。
戦線にどんな影響があるのか。それはまだ、わからなかった。
シイコが衛士強化装備を来ているイラストが見たい……見たくない?
誰に依頼すべきかもわからないけど
伝えるために必要な情報を載せれてない気がする。精進!
マブラヴとジークアクスのご存じ度合い
-
マブラヴをご存じ
-
ジークアクスをご存じ
-
両方ご存じ
-
両方ご存じない