最高のM.A.V. 俺とパイロット 作:脳を焼かれた00ユニット
これの何が困るって、人間関係の変化だよ
脳の中であれこれあっても、作品として出せてないから混乱する
いきなり半年飛ばす作者さんとか、すごいよね
日常会は苦手。だから今の内に書いた。
追記:誤字報告ありがとう。
今回は結構自信があったんだけどな……
「懐かしい夢を見た気がする……」
シイコはベッドから上体を起こした。
朝日の見えぬ宇宙。
たいてい
この日はどれでもなかった。
自然な目覚めに感謝しつつ、お腹の上で丸くなった兎を転がす。
からん、ころん。なんて音を立てて地面に落ちた。
一度は一緒に寝て以来、この兎は就寝時間になると格納庫から脱走してくる。*1
乙女の寝所に入り込む不埒ものを叩きだそうと思ったこともあるが――実際にマリーがたたき出した――また戻ってくるのでそのままにしていた。
(……目覚めがいいのは事実だもの)
偶然なのか、理由があるのか。
事実として、悪夢を見る機会は格段に減った。いや、覚えていないと言った方が正確か。
睡眠の質とやらが良くなったのかもしれない。
(そもそも、なんで潜り込んでくるのかな)
最初は寂しいのかと茶化したが、真偽は不明。
兎は寂しがり屋だが、こいつは兎ではないので。
着替えを用意して、シャワールームに向かう。
(もしかしたら心配されてる……なんてね)
最近、あの兎は心配性だとわかってきたところなのだ。雛のように後をついてくる。
さすがにシャワールームは不可侵領域としたが。
どうも、
シラヌイのことはともかく、
(まだパイロット――衛士に選ばれたっていう理由も釈然としない)
戦う力であるから、不満があるわけではない。
ただ、冷静になると居心地の悪さを覚える。
衛士とは、意味がある言葉なのだ。それこそパイロットのように基準を設けた上で。
だから、知らぬというのはモヤモヤしてきた。
シイコとて自身の身の上を話さないほうだが、兎はどうせデータバンクを覗いて把握しているに違いない。そのあたりの無法さは保証できてしまう。
脱いだ服をカゴに入れた。
「むー…………」
そのうえこちらの考えていることを読まれている節まである。
戦闘中はともかく、平時はちょっと問題があるように思えた。
(セコい……っていうのかな、これを)
シャワーの冷たい水が体に打ち付けられていく。
体が目覚め、冷却された思考は回転数を上げた。
(やっぱり、別の目的があって一緒に寝ている気がするのよね……)
現在の関係は不安定なものである。
なんせ目的が微妙に違う。
シイコはジオンを倒したい。その過程でギンを使う。
ギンはシイコに使われたい*2。その過程でジオンと戦う。
(私の手足として動いてくれる。でも、腹の内までを語り合えていない)
微妙な疑わしさ。まず出自不明なので疑わしすぎるけれど。
(ああ、それで…………?)
それだけではない、というのはわかる。
(そういえば、兎は増えていたわね)
ここ最近で増殖したのを思い出す。スクラップを加工した、らしいが。
ウサギガニゲテル! なんて、増えた兎を自分の部屋に持ち帰ったクルーも少なくない。
一応、艦長らと取り決めをしているようで、ただのメカ兎でしかないという。
ただ、面白がった整備兵が機体メンテナンス用ロボ兎に改造してしまっている。
ハッキングし放題な兎が増殖するなんて考えたくないので、ただの兎であって欲しい。
(今更、裏切らないとは思うけど……機械が心を持つって、簡単じゃないのね)
自分にとっても、相手にとっても。
心といってよいのか分からないが、そう表現する他ない。
(結局、本人に聞くしかないわ)
別に、話はするのだ。
ただ、根本的なところへの言及を避けていただけ。
(……でも、知ったからって何が起こるわけでもないのよね)
互いを知らねば信頼できない、なんて
実力があり、利益も相反しないなら手を取り合う。ここは戦場で、それが大人だ。
いくらかの例外もあるが。
ただ、心のモヤモヤを解消したいという私情である。
そう考えたところで、シイコは苦笑した。
(いつの間にか絆されていた……ってこと? これも掌の上なら抜け目ないわね)
なんせほぼ四六時中一緒にいることになるのだ。
スクランブルがかかればシラヌイの中だし、それ以外は頭上に乗っかってくる。
挙句に同衾である。
なおマリーは「同衾なんて破廉恥ですよ! それだったら私が……」と言い続けており、現在も見つけ次第、兎は連れていかれる。*3
「でも同衾……っていうほど夢はないのよね」
なんせアレは性別どころか生物ですらない。
そんな話題を考えたからか。
(25歳…………)
最近、余裕が出てきたせいで自分の年齢を直視してしまう。
連邦軍では結婚していたり婚約者がいるのも珍しくない。
別に肩身が狭いとかそんなんじゃない。単に考える暇がなかっただけ。
「結婚なんて、想像できないけど」
栓を止める。タオルを掴み、水滴をふき取った。
「フフッ。
『おはよう』
シャワールームから戻ったシイコを兎が出迎えた。
「おはよう、今日はお寝坊なのね?」
大抵、この兎はシイコが目覚めると同時に話しかけてくる。
珍しく転がっていたのだから気になるものだ。
『そういう日もある』
「ふぅん?」
答えるつもりがなさそうなことを察したので。
姿見の前に座り、シイコは髪を櫛で整えていく。
『裏切らないぞ』
突然。
背後からの主語がない言葉に一瞬だけ、手が止まった。
「…………」
『シイコである意味もある』
言葉に詰まる。本当に、見透かしたようなことを言う兎だ。
「……朝から口説くなんて、兎らしくなったのね?」
ようやく出した言葉はそんな、皮肉めいたもの。
兎は気分を害した様子も見せずに答えた。
『うさん臭いのは認める。そして口説く意図はない』
「……それはそれで、むかつく」
仮にも女子に言うものではない。
兎の方へ振り向く。
シイコは兎のほほを両手で掴み、目線を合わせるように持ち上げた。
ぷらん、ぷらん、と兎を揺らす。
『……なんだ、これは』
「お仕置き」
『一応聞こう。なにに対して?』
「乙女の心に土足で入ったことに対して」
『…………』
兎の無機質な瞳が明滅する。
抗議しようとして、結局意味がないことに気づいたのだろう。
まず抗議したいわけでもないし。
耳がしょげた。
『次からは伺いを立てることにしよう』
「じゃあ、言ってみて?」
『…………なぜ』
「いいから、ほら早く」
兎にもそれは面白がっている人間のセリフだとわかる。
まぁ、言うのだが。だって
『……お姫様、その綺麗な心の内を見せてくれ』
古典文学に出てくるようなコテコテの言葉を聞いたシイコは、噴き出した。
手を離れて兎が転がる。
「フフッ……気持ち悪いから、ダメよ」
『あまりにひどい』
「悔しかったら、心に響く言葉を言うことね?」
別に、悔しいというわけではない。
兎は悔しいと思わない。メカ兎だけど。
緊張が解けたことを確認して、兎は一番言いたいことを言った。
『いつでもいいからな』
主語どころか目的語すら吹き飛んだ言葉。
しばし、時が凍り付いた。
「…………そう」
それだけを言う。
体温の上昇を検知したが、兎は何も言わないことにした。
やがて。
身支度を終えたシイコは立ち上がる。
「さて、いくわ」
『ああ』
兎も後に続いた。
『今日は半舷休日か?』
「そうね、昨日は
補給基地を攻撃してからも散発的にやってくる偵察にシイコらが対応すること約半月。
ようやくソロモン攻略作戦に備えて艦隊がやってきたため、役割を他に任せて一行はコロニー内で最後の自由時間を取ることになっていた。
◇
午前中は念のために艦内で待機して、いよいよ昼過ぎ。
シイコたちはコロニー内に降り立った。
メンバーはいつものパイロット組と兎。
普通は誰かを残すものだが、艦隊規模の味方がいるのでこういうこともできる。
「うう、体が重い……」
「ノア、体調が悪いなら言ってね?」
「はぁぃ……でも我慢するぅ」
猫背のまま歩くノアをマリーが叩いた。
「疑似重力程度でへばるなんて、トレーニングが足りないんじゃないの?」
「うるさい……」
仕返しにマリーの脛を蹴っ飛ばす。
「
「ふふっ、仕掛けたのはマリーのほうでしょ?」
マリーの訴えをシイコは笑顔で受け流した。
「うぐっ」
『そうだぞ、少しは静かに出来ないのか?』
「じゃかしいっ! というか、なんでシレっとコイツもいるんですか!」
マリーがシイコの頭に乗った兎を指した。
『居ちゃ悪いのか?』
「うっ……悪くは、ないけど……先輩とデートするつもりだったのに……」
「残念賞~」
「無駄口叩く口は~!」
「ふががが」
アイアンクローを仕掛けられて、ノアは呻いた。
シイコが言葉を差し込む。
「ほらほら、時間は有限なのよ。友達と会うんでしょ?」
思い出したようにマリーは手を止めた。
「あ、はい! 士官学校の友達が来ているそうなので」
「なら、早くいってあげなさい? 次がいつかなんてわからないんだからね」
「もちろんです。先輩のすごさを布教してきますから!」
「それはしなくていいけどね……」
シイコは苦笑した。
「いえ、します! そうと決まればノア、付いてきなさい!」
「いただだだ、そのままヤメロー……」
集合時間を確認した後、ノアを引きずるようにして、マリーは走っていった。
それを見届けて兎は声を出す。
『今日は朝から、いつにないほど騒がしかったな』
「そうね……なんだかんだで、離れた友達と会うのは嬉しいのでしょうね」
『そういうものか。実はアレが友達と思い込んでいるだけではないのか?』
「……あなた、マリーにだいぶ辛辣よね」
『アレに合わせたコミュニケーション方法はこれだと……違うのか?』
「う~ん……」
実際、マリーの当たりが強いのは確かなものの。
(悪気はないのにねぇ……)
「もうちょっと、優しくしてみない?」
『善処しよう』
シイコはお手を上げるしかなかった。
シイコと兎はコロニー内を見て回る。
「……みんな、元気そうね」
コロニー内は戦時とは思えぬ活気であふれていた。
マーケットは人が零れ落ちそうな勢いだし、土木業者も元気に家を建てている。
人々の会話がうるさいくらいに絶えず聞こえるほどだ。
『よかったな』
「ええ、ほんとうに」
コロニー内テロを止められたおかげでこの光景がある。
もちろん無傷ではない。建物の破損はもちろん、死傷者だって少なくない。
だが、住民たちは腐るだけでなく前向きな心持で復興をしていた。
普通の生活を取り戻すために奮闘する姿は輝いてすら見える。
『しかしこれほど人間が密集しているとは……』
「驚いた?」
『それもある。しかし感慨深い、と言えばよいのか』
兎にとって、
『これほどの数がデータ以外で観測できることに喜びを覚える』
「あなたって、時折変な目線になるわね」
『そこまでか?』
「観測出来て嬉しい、なんて言うのは実験動物を見る科学者くらいなものよ?」
『むっ……そんな意図はない。ただ、人が生きている感動を表現したかった』
「なら、言葉をもっと学ぶことね」
『機械っぽい言い方をしているつもりだが』
「無理に機械のような言い方をしなくていいのよ」
『そういうものか』
ピコピコと兎の耳が動く。
(前にいた場所は、よほど人の数が少なかったのかしら)
そう思いながらシイコは足を進めていき。
そして気づけば路地裏、それも壊れた建物の前に立っていた。
「ここは……そのままなのね」
『この倉庫は所有者が逃げたらしいから、立て直す人もいないのだろう』
確かに、
大通りから遠くないとはいえ、この場所はコロニーとしても優先度が低いのだろう。
ここまで来たんだし、と。
今まで聞かずにいたことをひとつ、聞いてみる。
「どうしてこんなところにいたの?」
問いを受けて、頭上の兎は考えるような姿勢を見せた。
喋る情報を精査するような態度だ。
結局それは3秒にも満たない。
『……最初は宇宙を漂っていたが、あのザクとやらに追い回されるのを面倒に感じてな』
「へぇ」
『落ち着いたところを探しているうちに廃棄された輸送船を見つけた』
シイコは続きを促す。
『情報を読むとここに入る予定だったから、他の輸送船に便乗して侵入した』
「港での検査はどうしたの? 人の目とかあるでしょ」
『電子情報は改ざんしたし、肉眼でなければやりようはある』
「さては結構、悪さしてる?」
『……それで誰もいない場所を探して、ここに来た』
兎は言及を避けた。
「ふぅん……」
頭上から若干の震えを感じる。
少し、低い声が出たからか。
どうやら、この兎にも恐怖めいたものはあるらしい。
「じゃあ、もうひとつ」
呼吸を挟む。
兎を抱え、目線を合わせてシイコは問う。
「ここに来たのが私じゃなかったら、その人を乗せた?」
亡者のごとき昏い瞳が兎を捕らえる。
静寂のような時間は長く続かない。
兎は短い前足でシイコの額を
「ちょっと?」
抗議の声。
それを抑える無機質な視線が、群青色の瞳に突き刺さった。
『その質問はナンセンスだ』
「…………」
口を
視線の中に吸い込まれそうな錯覚を覚えたから。
兎は鳴いた。
『最初から君が目当てだ。それ以外は知ったことじゃない』
見つめあうこと数秒。
均衡は、シイコが破顔したことで崩れた。
「ふ、ふふっ。やっぱり、気持ち悪いわよ。その言い方」
『えぇ…………』
割と気を使ったのに。
兎の耳がシナシナに折れる。
「フフッ。ここにもう用はないわ。さ、いきましょ」
シイコは再び兎を頭上に
『……いいのか?』
まだ質問されても仕方ないと思っていそうな言葉だが。
「今は、十分よ」
『……そうか』
シイコの足は大通りに向けられた。
そうして観光めいたことをしていれば、集合時間になる。
「先輩~!」
「やっと、解放される……」
買い物をしたのか、紙袋を抱えたマリーとげっそりした様子のノアが合流した。
「あら、もういいの?」
「はいっ、十分布教しました!」
「それはいらなかったかな……」
後輩の熱量にちょっとシイコは顔をひきつらせた。
「それと、先輩にはこれをどうぞ!」
紙袋から差し出されたのは、透明な水の入ったボトル容器。
シイコは直感的にこれがよいものだと思った。
「まさか、これは……」
マリーが笑顔で答える。
「はいっ、やっと手に入ったんです。オービスの化粧水が! やっぱり官給品じゃ物足りないですよね」
それは有名美容メーカーの商品。
含まれる成分はオーガニックのみという、このご時世でなお拘りぬいた化粧水である。
しかもどんな技術を使ったのか、一本で化粧水と乳液を兼ねるオールインワン。
もちろん、流通量も少ないため値段もバカ高い。
戦いばかりのシイコだったが、最近、変に余裕が出て来て今までの美容に対する無頓着さに焦りを覚えているくらいだ。
25という数字の肌は、気を抜けば死ぬのだ。本当に。
ビームで焼かれれば肌荒れも気にならないというブラックジョークだってある。
「嬉しいわ、ありがとう。でも、よく手に入ったわね?」
ただ、化粧水は戦場ということもあって入手難易度は平時のそれではないはずだが。
それに答えたのは、ノアだった。
「実は、地球の商社が売り込みに来てた。あいつら金の匂い、大好きだから」
「軍の輸送船だけじゃ手が足りなかったってことね」
「たぶん、そういうことだと思う」
シイコはコロニーの賑やかさに商売人が多いことも理由だと理解した。
ただ、軍というのは機密の塊だ。古来から商人と軍は贔屓にしているが、こんな前線に出てくるのは普通の理由だけでは物足りないこともわかる。
何より、商人はスパイを兼ねることも多い。
「ちょっと、不気味よね」
「うん。正直、あんまりいい予感はしない」
2人して肩を落としていると、マリーがテンション高めに紙袋から何かを取り出した。
「実は、ジャジャーン。こんなのもありましたよ先輩!」
「……カード?」
それは59mm×86mmのカード。
いわゆるトレーディングカードと呼ばれるものだろう。
「そうです! 見てください、先輩が映っているんです!」
見れば、確かにキラキラな装飾をされたカードの中心で、アイドルめいたポーズを決めたシイコの姿が描かれている。
きゃぴ~ん☆ という感じだ。
肖像権をガン無視した所業にシイコは再び顔をひきつらせた。
「え、なにこれ……知らないんだけど……」
シイコとしては、こんなポーズを取った覚えもない。
『はぁー、連邦のAIもよくやるな』
そこでようやく静観していた兎が声を上げた。
「どういうこと?」
シイコが尋ねれば。
『入隊するときの写真か何かを勝手に加工したんだろうな。若いし』
「若いは余計よ!」
『ぐぇっ』
兎は地面に叩きつけられて苦悶の声を上げた。
「でも、すっごい可愛いですよ先輩!」
一方、マリーは輝かんばかりの表情である。
「うっ……」
これでは焼却処分しろ、とも言い辛い。
「販売元は
冷静なノアの指摘が傷にしみる。
「…………ちょっと、助けたの後悔しそう」
冗談の範疇であるが、シイコは遠い目をするしかない。
『シイコ以外はあったりするのか?』
「ああ、うん。あったよ」
ノアが紙袋から取り出すと、いろいろ出てきた。
レビル将軍といった人から軽キャノンなどの兵器まで様々である。
キラキラしたものは少ないので、先程のカードはレアカードなのだろう。
「パック販売だった。だいぶあくどい稼ぎ方してるよ。買ったのはマリーだけど」
さしずめ、ノアはいらないカードを押し付けられたというわけだ。
『ははーん。お、シラヌイがあるな。いいのかこれ?』
「私に聞かれても困る。まぁ、コロニーとしては助けてもらった恩、なんじゃない?」
『それもそうか。ただ、その恩で灰になりそうな奴がいるけど』
「…………まぁ、先輩のかわいい姿は保存しておきたいし」
『ああ……お前もそっち側だったな、そういえば』
兎とノアはシイコのほうを見れば。
「先輩がこんなかわいいのに何がダメなんですか? 教えていただければ私が販売会社に乗り込んで訂正させますから!」
「ヤメテ……ヤメテ……」
「え? 目を輝かせる? いいと思います! 他にはどうですか?」
傷に塩を塗り続けるマリーの姿がある。
『ありゃだめだな』
「うん……」
シイコの再起動にはしばらく時間がかかりそうだった。
そして約一名の声がでかいので、周囲にその存在がバレることも当然。
「もしかしてアンタ……シイコ中尉か?」
話しかけてきたのはハチマキをかけたオッチャンだった。
外部からの刺激で幸か不幸か、シイコは再起動を果たす。
なお、質問に対してYesだとも言えないので、ぼかすしかない。
「……あなたは?」
はしゃいでいた表情をひっこめて、マリーたちも険を帯びる。
殺気にあてられ、オッチャンは慌てて弁明した。
「あっ、別に何かしようってわけじゃねぇんだ! 下っ端だが、俺も同胞団でよ……その伝手で聞いたんだ。あん*4時にアンタがザクをやってくれなきゃ俺の家がつぶれてたからよ。感謝を伝えたかったんだ」
「まぁ……そういうことでしたか。ありがとうございます」
余所行きの表情でシイコは微笑んだ。
「そ、それだけだからよ! これからもジオンをガツンと言わしてくれ!」
オッチャンは来た方向へと戻っていった。
「ふーん、見る目ある人もいるじゃないですか」
我がことのようにマリーは笑顔になる。
体に染みついた警戒の動きは解かないが。
「本当はパイロットが目立つのはよくないんだけどね?」
ダイレクトアタックなどの危険が増えるので。
「うっ、すみません……」
「まぁ……今回は事故のようなものだから、仕方ないわ。次に生かせばいいのよ」
「……はいっ!」
沈んだ表情も晴れやかになった。
「それじゃあ、そろそろ――――」
帰りましょう、と言いかけたところで。
視界の向こうに、金色を見かけた。
突如襲い来る、脳を震わせるような感覚。
(この感覚は……なに……?)
視界が眩い光に染め上げらえていくような錯覚すら覚える。
――あなたは、いったい……?
光の中で問いかけてくる、女性的なシルエット。
ほんの一瞬に満たない時間だが、確かに視線が交差した。
「先輩?」
話しかけられてようやく、金縛りじみたものから解放される。
見渡しても光はどこにもない。
(今のは一体……)
前にも似たようなことはあった。
しかし、今回はシルエットとはいえ姿まで見えている。
(幻聴に続いて幻覚……?)
『一瞬、呆けていたが。どうした?』
直接、兎の声が届いた。シイコは答えを思い浮かべる。
「疲れているのか、変な人が見えただけよ」
『……痛みなどはないか?』
「ないわ。だから奇妙なのだけど」
『リーディング……あり得るのか? ……脳波にも異常はないな。この場では何とも言えん』
「でしょうね……」
表層に浮かべた意識を打ち切って、シイコは表向きの答えをする。
「……いえ、何でもないの。さ、帰りましょう?」
「はいっ!」
「帰ったら眠りたいなぁ……」
一行は艦に足を向けて歩き出した。
ソロモン早く書きたい。
脳にあるものを出力するの、難しいね