最高のM.A.V. 俺とパイロット   作:脳を焼かれた00ユニット

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まさかの土日更新

テンポを崩すようで嫌だけど
それ以上に癖を我慢できないっ

本話はMuv-Luv、R-15、残酷な描写タグが準備運動をしているよ
今見なくてもガンダム世界の話に支障はないから、そっ閉じしても大丈夫

みんな結構ガンダムもマブラヴも知ってたから、掲載する意味は薄いかもしれない
ヘキと伏線の両方を満たしたかったぁ……
ツッコミどころ、イエスだね!

火曜日は短くてもソロモンの話を出すつもり。ハイ

追記:誤字報告ありがとう。
まさか二重表現を使ってしまうとは思わなかったよ


重力の夢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バケモノと戦う時。

 有効な火力、機動力、少しの防御力を備えた人間はいったい何時間()()()()ことができるだろうか。

 

 あるものはこう答えた。1時間と。

 

 なるほど。感覚的にそれくらいは生き残れそうである。

 

 では、データならどうだろうか。

 

 死の8分――という言葉がある。

 

 これは戦術機が台頭し始めた当初、あらゆるデータが不足しノウハウもなかった時代に、これまでと何もかも――操縦、戦術、運用、機動など――が異なる人型兵器を与えられてバケモノと戦った先達の、平均()()時間である。

 

 この話は訓練兵への訓示であり、バケモノと戦う困難を示すものでもある。

 その後に専門の訓練機関やノウハウが出来てなお、死傷率の高いままだ。

 だからこそ、ある言葉に繋がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(久しぶりね、この夢…………)

 

 灰色に満ちた大地を踏みしめ、シイコは頭を悩ます。

 廃墟の街は人っ子ひとりいやしない。

 

 適当な瓦礫に座って空を眺めた。

 

「ほんと、空だけは綺麗ね…………」

 

 太陽に焼かれぬよう目を細めつつ、空へと手を伸ばす。

 かつての記憶が呼び覚まされた。

 

 動く模型――いわゆるラジコンを買ってもらった時のことだ。

 

――飛行機、はやーい!

 

――こらこら、動き回っては危ないよ。

 

 飛行機を飛ばし、飛ばした飛行機を追いかけて父親を困らせていた。

 あの飛行機になれたらいいのに、とそんなことを考えていた気がする。

 6歳の子供に与える親も親であるような気もするが、まぁ些末なことだ。

 

「最近買ってなかったわね、そういうのも」

 

 戦争の時代、模型に使われるプラスチックや金型の金属は軍事品に加工されるのが世の定め。

 仕方ないことではあるが、シャッターを下ろす店が増えるのは悲しいものだ。

 

「さて……」

 

 意識を今に向ける。

 

「バケモノだらけの大地、というところかしら」

 

 にわかに信じがたいことではあるが、そういう夢なのだろう。

 もとより夢なんてものは荒唐無稽であるもの。整合性を気にすべきところではない。

 

(じゃあ、どうするかってことなんだけど)

 

 放っておけば目が覚めるか?

 

(……そんな、都合のいい話はないわよね)

 

 確固たる証拠はないが――そういう確信はある。

 

 さらにバケモノはこちらをなぜか目の敵にして、見つけ次第に襲い掛かってくる。

 殺されるのを待っているのも嫌な話だ。寝起きの気持ち悪さは実感がありすぎる。

 だとすれば。

 

(戦う? なにで? 逃げる? どこへ?)

 

 見たところ、使えそうな武器はない。ガラクタは転がっているが、即席の武器を組み立てるのも難しそうだ。というか、個人携行火器が自分の身体より大きなバケモノを殺せるとは思えない。最低でも重機関銃だ。

 

 ならば、逃走か。

 しかし、廃墟すべてがテリトリーなら逃げきれるかは分の悪い賭けだ。

 廃墟になった街そのものが広すぎる。

 それに。

 

(…………また、逃げるの?) 

 

 心の奥で燻る火種が叫んでいる。

 相手はジオンではないのに。誰かの声が、心が聞こえる。

 

「……ッ」

 

 頭痛の先。

 脳の裏側に、絵が見えた。

 こちらを見つめる、名も知らない少女の姿。

 無表情な視線からは憐みか、慈愛のようなものを読み取れた。

 

 それにしても。

 

(兎耳、流行っているのね)

 

 一旦、思考から追い出す。

 深呼吸をひとつ、ふたつ。

 

「戦えって……言うんでしょ……」

 

 目を閉じて、開いた。

 周囲に視線を彷徨わせる。

 

 手につかんだのは、まっすぐな鉄筋の先端に大きな瓦礫がついたもの。

 自分の身体よりも大きい。

 

「……まるで蛮族ね」

 

 あまりの風体に苦笑するが、丸腰は避けたいので。

 巨大鉄筋ハンマーとでも呼ぶべき代物を肩に担いで、シイコは歩き出した。

 

「目指すは廃墟からの脱出。人がいるなら、合流したいところだけど……」

 

 そんな都合のよいこともないような気がした。

 

 それでも。

 

「夢なら、叶えて欲しいものよね」

 

 足跡に意識を向けて歩く。

 

 ここは十字路。

 太陽が真上に上っていることから東西南北の判断はできる。

 はじめに向かうのは、この前と同じ北。

 バケモノと遭遇した方角だ。

 

 恐怖から生じた体の震えを意識して抑え、足を進めた。

 

(奴らがいるならある程度の指針が立てられるけど――――)

 

 はたして。 

 

 さびれた商店街を抜けた先。

 

 いた。

 

 気味の悪い口と六本足が特徴的なバケモノ。

 相も変わらず団体行動が大好きなようで、道を占領するパレードめいて密集している。

 

「あー…………そうなる、わよね」

 

 どうやら感知能力も発達しているようで、こちらが視認した瞬間に補足された。

 ゾロゾロと先頭から突っ込んでくる。

 図体のわりに速い。今から逃げるのは間に合わないのだ。

 

 ただ、この前と違うのは。

 準備をして、恐怖を押さえつける戦意があること。

 

「やって、やる!」

 

 両手で鉄筋ハンマーを振り上げる。

 こんな武器を扱ったこともないから、素人丸出しの構えにはなるが。

 

「らぁッ!」

 

 大上段からの叩きつけ。

 重さだけは十分なハンマーなので。

 頑丈らしい瓦礫の塊が食い込んだ。

 バケモノは前部がぺしゃんこになる。

 以外と扱えるものだ。*1

 

(へぇ、血が出るのね)

 

 つぶれた体から放出される液体を目にして、シイコはそう思った。

 だって、それなら。

 

(殺せる――――)

 

 次の瞬間。

 シイコの頭は後続のバケモノに消し飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ……! ハッ、ハッ……うっ」

 

(起き……ない……夢……ってわけね)  

 

 目を開いた時。また、廃墟の大地に足をつけていた。

 相変わらず目が覚めた後に襲ってくる痛みだけはそのままらしく。

 首から引きちぎれていく皮膚と脊椎が折れる感触がやけにリアリティを与えてくる。

 倒れないように堪えるので精いっぱいだ。

 

「……ッ」

 

 首を触る。

 当然、きちんとつながっていた。

 

「悪趣味な夢よ……」

 

 なぜ痛覚を夢の中で再現する必要があるんですか?

 その答えを知るものはいない。

 初回ほどではないが、夢の中で死ぬというのも歓迎したくないことである。

 

「ふぅ」

 

 呼吸をひとつ。

 やけに落ち着いた精神で周囲を見ると、先ほどの始まりと変わらぬ光景。

 なにより、巨大鉄筋ハンマーが元の位置にあった。

 

(と、なれば)

 

 同じ条件でこの夢は始まるらしい。

 

「そしてどこも一本道。いずれあのバケモノがここに来る、と」 

 

 あのバケモノを出し抜いて街の先へ抜けられるか?

 

「数が多すぎて無理ね」

 

 ではほかの場所を?

 

(…………調査するしかないわけね)

 

 別に何もしないままだっていいのだろうが。

 

「なにもせず、というのは気に食わない」

 

 それに、あの誰だかわからない少女のことを何も知らないのはよくない。

 と、心の種火が言っている。 

 

 この夢を()()なければならないと。

 

 それがここから起きる唯一の手段だと、直感した。

 

「不気味すぎるけど……進むしかない」

 

 再び鉄筋ハンマーを担いで、今度は西へ向かう。

 

 しばし歩いて。

 

「ふぅん……? 細かいのね」

 

 瓦礫の中に転がった「〇〇商事」と書かれたプレートを拾った。

 

 依然廃墟の街だが、北方面が商店街であるなら、西方面はオフィス街らしい。

 時代背景を探るのなら、かなり古そうに見える。

 

「50年以上は前よね、たしかこういうの。教材で見た覚えはあるんだけど」

 

 学生時代の知識。何分、使わない知識だと思って卒業後はすぐ忘れてしまった。

 とはいえ、大雑把な言葉は知っている。

 

「西暦、とかいったような?」

 

 なれど。

 

(私は西暦の街なんて、とんと知らないのに……)

 

 夢とは脳が記憶を整理するためのもので、いくら荒唐無稽でも知りえる知識から構成されるものであるはずなのだが。

 

「まぁ、今はいいわね。こっちが安全ならそれでいいんだけど」

 

 人、それをフラグという。

 

 そこから100m程度進んだところで。

 

 シイコは察した。

 

「あーあ…………」

 

 すでに囲まれている。

 道にはもちろん、瓦礫の上や形を保った建物の内部、その全て。

 誰かはわからないが、とにかく()()でわかった。これは敵だと。

 

「ッ!」

 

 背後からの奇襲。横にステップして回避。

 

 何か筒のようなものが通り過ぎて、ゴムのように戻っていった。

 

 全方向を警戒しつつ、背後に向き直れば。

 

 それは、六本足とは違うバケモノ。

 相変わらず人間よりデカいが、六本足より細身である。

 なにより、その造形がゾウの前半身を切り取ったような二本足のフォルムだということ。

 

(ゾウモドキってこと?)

 

 形容するならそれがふさわしいだろう。

 

 シイコが鉄筋ハンマーを構えるころには、隠れていた個体がゾロゾロ姿を晒し始める。

 

「罠……ってわけね」

 

 やはり、数えきれない量。ひとりに対する戦力としては異常だ。

 

(馬鹿じゃないの?)

 

 心の内で毒づいた。

 心臓の鼓動がうるさくなる。

 どう見たって生き残れる気はしない。

 まぁ、一応。

 

「あー……話を聞いてくれる気はある?」

 

【…………】

 

 返事はない。

 

「そう……」

 

 心を入れ替える。瞳が拡大した感覚。

 張り詰めた筋肉が補助を受けて全力を発揮する。

 ハンマーを握って戦闘態勢へ。

 

 二本足のどこにそんなパワーがあるのか。

 ゾウモドキは異次元の膂力で飛びかかってきた。

 

(速いッ!)

 

 右足を引き、腰をひねって人体をバネにした加速をハンマーに伝え、横に薙ぐ。

 

 ピンボールのようにゾウモドキが跳ね飛んだ。

 

 しかし、それは高々一体に過ぎない。

 

(避け――――)

 

 他のゾウモドキの攻撃を避けようとして、避ける先がないことに気づいた。

 当たり前ながら、一対一をしてくれるわけもなく。

 数十、あるいは数百が自分を狙っているのだから。

 

「グ、ふっ……ぁ……」

 

 口から血があふれ出す。

 自分の腹に木の幹ほどの大穴が開いていた。

 胴体内部の血が行き場を失い、口から吐き出されたのだ。

 

(素早い個体群ってわけね……)

 

 呼吸も出来やしない。

 

 急速に冷たくなる体を自覚して、シイコの意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ……! うっ……はっ、が、ぁ……」

 

 三度、廃墟の街に目覚める。

 冷えた体を錯覚し、温めるように腕をさすった。

 腹もなぞる。

 肉や皮膚、その実在に感謝した。

 

(ほんと、いい気にならないわ……)

 

 これが本当に死んだというべきものかは自信のないところだが、それはそれである。

 この感覚にも慣れてきた……などと口が裂けても言いたくない。

 そもそも、なぜこんな冷静でいられるのだろうか。

 …………。

 

(……夢だから、ということにしましょう)

 

 変なことを考えてしまいそうなら、わかったことを考えるべきだ。

 つまり。

 

「バケモノには種類と役割がある……ということね」

 

 正直、人間を殺す以外の役割はわからないのだが。

 あの索敵能力と殺傷力は異常だ。

 

(数が多すぎ。役割を分ける意味なんてあるの?)

 

 いまいちその理由にも心当たりはない。

 強いて言うなら大きさと小回り。 

 

(倒されたから大きく作った……とか)

 

 ゾウモドキなら人でも倒せはするのだろう。それこそ銃があればなんとか……。

 六本足は戦車(ロクイチ)なら?

 

「いや、厳しそうね……」

 

 弾薬という制限がある以上、装填や弾切れの隙をつかれそうである。

 そして死んでも湧いて出てきそうな勢いであったから、殲滅も難しい。

 

(でも、こんなの(鉄筋瓦礫ハンマー)よりは絶対にマシよ)

 

 やはり銃が欲しくなる。

 ないものねだりをしたくなる惨状。

 あまり役に立たないとは思いたくないものだった。

 

 空を見る。

 

「はぁ…………」

 

 やはり空はいい。荒れかけた心が落ち着いていく。

 

「よしっ」

 

 シイコは再びハンマーを担いで歩き出した。

 

「……次は南側」

 

 塔でもあれば偵察に便利なのだが、倒壊済みようだ。

 移動用の車両だって小型から大型車まで軒並み粉砕されている。悲しい。

 廃墟の街を徒歩で進む。

 

 相手の索敵能力がそれなり以上に高いことが分かった今、足音には気を配る。

 加えて周囲の観察も。

 

(やっぱり。人知れず廃墟になったというよりは、攻撃を受けたっていう風情ね)

 

 では誰にだろうか? あのバケモノどもか?

 それにしては不自然に建物が残ったままだ。

 やろうと思えばすべて壊せる膂力はありそうなのに。

 それとも。

 

(……考えたくないけど、自分に有利なフィールドを作るっていう設定なの?)

 

 視界が悪く、隠れる場所は山ほどある。

 デカい奴は廃墟を吹き飛ばしながらこれそうなのに、人間はそうできない。

 

(いえ、それなら何もない平原のほうが私にとっては困る……なら、なぜ?)

 

 イヤな予感を振り切るように足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

「?」

 

 気づけば、最初の位置に立っていた。

 何があったのか? 

 そう思ったところで。

 

「ッ!? が、あ、ああ、ああああああアアアアッ!?」

 

 これまでの比ではない頭痛が襲ってきた。

 思わず頭を抱えて倒れ込む。

 

「あ、ぎぎ、うううああああああぁぁぁぁ」

 

 痛みは引かず、むしろ増すばかり。

 

(頭、頭が………嘘、でしょ……)

 

 頭皮にナニカが嚙みついているような。

 頭部に強い負荷を与えられた感覚。

 そのまま髪もろとも頭皮を剥がれ、骨が万力で軋まされる。

 やがて頭蓋骨は砕かれ、鋭い歯が脳に――――。

 

(う、うううううううう…………!)

 

 地面を転げまわって痛みをごまかすしかできない。

 幻肢痛のようなものだと思っても脳は「痛み」だと認識しているようで。

 吐き気すら襲ってきた。

 この地獄めいた状況が続くのかと思っていれば。 

 

 チクリとした痛み。

 何かを流し込まれた感覚のあと。

 

「ふっ、ふ、うう……はぁ……はぁ……」

 

 痛みが急に引いていった。

 というよりは、痛覚を遮断されたような雰囲気だが。

 

「あの子が……多機能だって言ってたのは、こういうことね……」

 

 そもそもバケモノと戦う前提のスーツなのだろうか。

 新たな疑問も出たがともかく、これでまともに思考できる。

 片手で頭を押さえながら記憶の欠片を探す。

 

(そう、南は住宅街だった……)

 

 一軒家という世にも珍しい建物が並んでいるのを見たのはこれが初めてのことだった。

 もっとも、すべて崩れていたのだから正確には違う。

 

 なんにせよ、少しの高揚感を覚えつつ、静かに家の廃墟を探していた時だ。

 「碓氷」だとかの謎の記号を見つけた。

 

(ああいうのを昔、見たことあるような…………)

 

 落ち着いた今、シイコが記憶を探ればそれらしいのがひとつある。

 地球の祖父の家だ。

 先祖はブショーとかいうものだと自慢された際に目撃したのだ。

 

(そうだ……漢字とかいう)

 

 宇宙世紀はほとんどが英語を読み書きに使うから土地固有の言葉はあまり見ない。

 それにしたって特徴的な言語だった覚えがある。

 

「ニホン語……とかいったはずよね」

 

 ふと、似たような言葉を聞いた気がした。

 

――日本帝国軍。

 

(ニホンテイコクゴン……まさかね)

 

 なんにせよ、ニホン語を思い浮かばなかったその時点では「変な記号だなぁ」以上の感想を持つことはなく、こそこそ隠れながら道を進んだわけである。

 

 きちんと周囲に気を配っていたし、足跡も抑えて静かに進んでいたにも関わらず。

 

「ガラス片に映る背後のバケモノを見たときには、ぱっくんちょというわけね……」

 

 一切の気配なく後ろを取られたというのは正直、ショックである。

 戦場であったならお陀仏まったなし。別に夢だって死にたくはないのだけど。

 ではなぜ背後を取られたのか。

 今回の場合、原因として考えられるものは。

 

「あのバケモノたちは、なぜか殺気を持たない」

 

 そんな荒唐無稽な推測。

 殺しに来ているのに、殺す気がないとはいったいどういうことなのだろうか。

 いや、殺意どころではない。意思すら薄弱なように見える。

 

「わからない……あのバケモノたちはなんなの……?」

 

 さらにいえば、今回殺害してきたのはまた別種であろう存在だ。

 人の顔つきそのままで、気味悪い笑みを浮かべた白い奴。

 大きさも自分より少し大きい程度だった。

 

(ヒトモドキ……といったところね)

 

 隠密に長けた個体。どうせ、数えきれないほどの量が潜んでいるのだろう。

 今相手をするなら最悪のバケモノだ。

 

(どれも相手にしたいわけでもないけど……)

 

 同時に、心の内で種火が最も熱くなるのはヒトモドキ。

 意志があるんだかないんだかわからないが、あれと戦えとでも言っているのか。

 

(なら軽キャノンを出して欲しいくらいね……)

 

 最初からそう思っていたので、ここにないということは望み薄だ。

 

「…………ッ」

 

 頭痛。

 いい加減、この突発性偏頭痛にも慣れてしまいそうだ。

 

 頭痛から立ち直ったとき、シイコは驚くべきことに気づいた。

 そう、あのバケモノたちのことだ。

 ヒトモドキ――否。

 

兵士(ソルジャー)級……なんで、私はそんなことを知ってるの?)

 

 これに限っては絶対見聞きしたはずのない言葉である。

 

闘士(グラップラー)級、戦車(タンク)級……知らない、こんなの……)

 

 さらに。

 

「うっ…………」

 

 自分が死んだ瞬間を写真として脳に焼き付けられるイメージ。

 写真ならこうなんだな、なんて呑気な感想を覚えていられない。

 大地に足がついていない浮遊感と気持ち悪さがある。

 

「なん、なのよ……」

 

 苛立ちというか、不快感というか。

 形容しきれない感情に戸惑いつつも、とにかく足を進めることにした。

 

「最後は……東」

 

 気持ち、足が重たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 廃墟の十字路に戻ってきた。

 

 結論を言うと、死んだ。

 

「……嫌になるわね」

 

 時間差で襲ってくる痛みに耐えながら、東の様子を思い出す。

 

 体感、1kmを過ぎたころまでは廃墟だった。

 

 その先が草木ひとつ、それこそコンクリートの合間に咲く花すらない有様なのだ。

 コロニー公社のデブリ清掃機だってこんな仕事できないだろうと言えるほど綺麗な境界線。

 もはや人工的な荒野とでもいうべきものだった。

 人どころか建物ひとつないのは初めて見たと言っていい。

 別にそれだけならよかったのだが。

 

 当然というような面でバケモノどもがわんさかいたことである。

 なんならモビルスーツくらいの大きさの奴まで。

 

 見渡す限り荒野とバケモノ。

 絵画であれば、そこそこ評価を得られるかもしれない。

 

 実際はただの「一寸先は闇」であったわけだが。 

 

「はぁ……どうしろっていうの……」

 

 シイコは天を仰ぐしかなかった。

 早く覚めないかな、この夢、と。

 本当にバケモノだらけの大地はやめてほしい。

 状況が「詰み」を示している。

 

 そんなことを言ってもシイコは思考を続けた。

 

(あの数は絶望的だけど……向きは間違いじゃない。重要なのはタイミング)

 

 東側にこそ活路があると感じたシイコは再び道を進む。

 

 それからは検証だった。

 命を弾数と見ているようで不快感を覚えるが。

 それでも。

 

(ここで()()()のは、嫌)

 

 種火もそう言っている。

 歯を食いしばって耐えるしかない。

 

 まずはバケモノがこちらを感知する方法を調べた。

 結論としては、不明。

 聴覚と視覚はあるようだが、嗅覚は検証できず。

 音や物体に対して反応はする。だがそれはおまけ。

 あくまで人間という存在を未知の器官で感知するとしか思えない結果になった。

 

 次にバケモノたちの運動性能の検証。こちらはわかりやすかった。

 速さは自動車並み、力は人間以上、飛べないが跳べはする。そんなところ。

 

 さらに副次効果としてある性質に気づいた。

 

(私を追っている間、小型の連中は建物を壊さない)

 

 ならば、倒すよりも時間稼ぎの方法を考える。

 材料を集めに廃車や建物の残骸を漁った。

 そして。

 

(まさか生身で使うことになるなんて……)

 

 なぜか()()()()()()()即席ワイヤー装置(スティグマ)。 

 荒い出来だし、拳銃のように手持ちしなければならないタイプである。

 頭に設計図が浮かぶ意味の分からない現象に襲われたが、気にしていられなかった。

 

「廃墟で時間を稼いで……荒野に行く」

 

 そんな作戦を立てた。

 当然初めから成功するわけなんてなく。

 なんども失敗を繰り返した。

 ワイヤー巻取り装置が故障したり、移動中にワイヤーを掴まれたり。

 そもそも移動距離が足りなかったり。

 

(一体、どれほど死んだのやら……)

 

 いちいち数えていられないので、不明である。

 

 そうした甲斐もあって。

 

 ようやくタイミングを掴んだ。

 

 

 バケモノを引き連れ、這う這うの体で荒野にたどり着くと。

 

 弧を描く軌道で何かが荒野のバケモノたちに突き刺さる。

 

 爆音と共にバケモノたちは文字通り、爆ぜた。

 

 それからも絶えず放物線を描く投射物が降り続け、そのたびにバケモノは吹き飛ぶ。

 

(ハハッ……ざまぁないわね)

 

 子供っぽいが、バケモノが吹き飛ぶ映像というのは。

 心がスカっとするような爽快感を覚える。 

 

 しかし忘れてはならない。後には大量のバケモノが迫っていることを。

 

 とはいえ。

 

(もう動けないのよ……)

 

 残念ながらここまでに体力は使い果たした。

 赤いバケモノの群れが迫りくるのを座して見るしかない。

 

 そして意外と俊敏な動きをする六本足が、飛びかかってくる。 

 

(――――)

 

 何もなければ、また食われて最初から。

 これまでの苦労を思えば、御免蒙るというもの。

 死の瞬間が迫る。

 

 突然、背後からの飛翔体。

 

 襲い掛かってきた六本足が、蜂の巣となって地面に倒れた。

 

 それだけではない。

 絶えず降り注ぐ飛翔体が、バケモノどもに突き刺さっていく。

 

(――――来た)

 

 シイコはそれが銃声だと理解した。

 ここ最近、なじみのある音だ。

 

 背後から到来した圧倒的な弾幕がバケモノたちをすりつぶしていく。

 

 それを呆然と見ていると、背後から拡声器らしい声がかかった。

 

『そこの衛士! どこの部隊か知らないけど、(あたし)たちが来てよかったわね』

 

 振り向いたシイコの目に入ったのは。

 

「あれは……」

 

(シラヌイ? なんで夢に……)

 

 4機の青い不知火。

 疑問点は尽きないが。

 

(ああ……でも……)

 

 もういろいろ限界なので。

 瞼が重力にひかれて閉じていく。

 

『ちょ、ちょっと……!? ああもうっ、こちらB小隊、生存者を発見!』

 

『中尉、どうしますか?』

 

『どうするもないわ、残敵を掃討! 生存者がいたんだから!』

 

(これで、起きれたら……)

 

 子守歌(銃声)を聞きながら、意識は落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
鍛えているので(?)
















脳はアージュだと水月が好き。青髪はマケインじゃないっ


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