最高のM.A.V. 俺とパイロット   作:脳を焼かれた00ユニット

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夕呼先生、今日でいくつにn


やりたい事と書ける事と面白い事はイコールじゃないって奴。
毎話読者を厳選してる気がする
それでも200ちょっとお気に入りがあるのは嬉しい

主人公機械界隈が実質ブレンバーンと言われてるとかほんとぉ?
〇〇の「覚悟」というミーム汚染の塊

ついき:今日も誤字報告ありがとう。
赤ペン先生受けてるみたい。懐かしいなぁ



宇宙要塞攻略作戦(オペレーション・ソロモン):後

 

 

 

 

 

 

 

 話は少し戻る。

 ソロモンへのコロニー・アタックが予告された後。

 諜報部から事前に報告を受けていてもなお、ドズルが計略を疑うのは無理なかった。

 しかし、結果としてドズルはこの妙に(いさぎよ)い通知を信じることにしたのだ。

 

 ドズルは目的を間違える男ではない。軍人として誇りもある。

 ドズルがこの場ですべきは連邦軍主力艦隊の撃破であってソロモンの防衛にあらず。

 開戦まで3時間の猶予があるというなら最大限に使うのだ。

 

「ゼナ、ミネバを頼む。強い子に育ててくれ」

 

「あなた……」

 

 まず、万が一に備えて非戦闘員や傷病者をア・バオア・クーに送り後顧の憂いを断つ。

 

「閣下、私に引けと申されますか!?」

 

「そうだ。ゼナとミネバを送り届ける、それは貴様にしか頼めんことだ」

 

「ご令室と……お嬢様を!?」

 

 次に今後のジオンに必要な人員を彼らの護衛とした。

 

 そうして残った()()ある軍人たちで出来うる限りの要塞化と、残った人員で防衛施設を動かせるように再配置を行った。

 最低限の敬意として、偵察艦隊を飛ばすことはしない。

 

 結果、みっつの()()が発生する。

 ひとつ、ドズルが()()として戦うことが可能になったこと。

 ふたつ、偵察部隊があらかじめ連邦別動隊の尻尾を掴んでいたこと。

 みっつ、タイミングを逃さなくなったこと。

 

 これらは連邦軍にとっては不利な事象である。

 予告なしのコロニー・アタックをしていれば完勝だったことだろう。

 しかしワッケインは狂気にあってなお、品性を疑われることは我慢ならなかった。

 予告なしのブリティッシュ作戦をやらかしたジオンへの当てつけでもある。

 誰にも邪魔させたくないとはある種の傲慢な考えではある。

 

 もちろん、後方移送によってジオン側の戦力も減少している。

 戦艦はグワジンだけだし、巡洋艦やモビルスーツは当初の8割。

 とはいえビグ・ザムは3機残っているのだから、その分の仕事は出来るはずだった。

 

 そして戦いが始まる。

 

 最初にドズルが下した指令は、驚くべきものだった。

 

「これより我らは敵艦隊の迎撃に向かう。ソロモン、()()()()!」

 

 核パルスエンジンが点火し、巨大な宇宙要塞は前進を始めるという。

 

 連邦にしてみたら天地がひっくり返るような事態。

 当然、ドズルがこのような命令を下したことには理由がある。

 それは、非戦闘員の不在によって時間稼ぎの戦闘ではなくなったからだ。

 本来の「連邦軍主力艦隊の戦力を削る」という目的に集中できるのである。

 

 どっしりと腰を据えて戦うやり方も出来るが、今回は難しい。

 巨大質量(コロニー)が迫る場面を見てしまえば、決死隊とて戦意の維持に不安が残る。

 今更この程度で怖気(おじけ)づく部下たちではないのだが、念のため。

 (ゆえ)、限界点の分からない守りの戦いよりもわかりやすい攻めがよいと判断した。

 とはいえ、せっかく敷設した機雷や衛星ミサイルを生かす程度には引き付ける予定だ。

 

 ドズルは質量兵器による攻撃を嫌っているが、ガルマが生きている現在*1はそこまで偏執的に嫌っているわけでもない。作戦目標達成に必要なら、やる。

 

 そして、ソロモンはジオンの重要な防空拠点なのは確かだが、すでに突撃機動艦隊(過剰戦力)がサイド6回りでルナツーに迫っている以上、ソロモンが落ちたとしても連邦に勝ちの目がないことをドズルはよく理解していた。

 失うのは惜しいが、それ以上の対価を得ればいいこと。

 

 結果、艦隊の盾――もとい即席の強襲揚陸艦にソロモンを使うという決断を下した。

 むしろコロニーをソロモンの()()で破壊するつもりさえあった。

 質量兵器には質量兵器をぶつけろ。

 

 さらにバタフライもびっくりな羽ばたきが起こった。

 この「前代未聞の前進」によって、実質的にソーラ・システムを無力化したのだ。

 連邦の秘策、ソーラ・システムは太陽光を収束させ焦点付近を熱量で焼く兵器。

 しかし移動によって焦点がズレてしまえば十全な仕事は果たせない。

 当然、ある程度の移動による差異は予想していようが、こんな「ガンガン行こうぜ」は埒外の行動である。数分で修正できる範囲を超えてしまったのだ。

 

 出だしから予定通りではない戦いである。

 

「ミネルヴァ艦隊は左翼に展開、サンダース艦隊は正面のコロニーに砲撃を集中させろ。メデューム艦隊、出過ぎるな。別動隊がいるのは確かなのだ。MS隊は引き付けてからコロニーの側面を攻撃しろ。我々がコロニーを知っていると教えてやれ! 速度自体は大したものではない。ソロモンをうまく使えよ」

 

 戦闘指揮所から()に出ている部隊に指示を出すドズル。

 

 戦闘は順調に推移しているはずが、妙な胸騒ぎがある。

 迫るコロニーを見て、彼は違和感を覚えた。

 

「ふぅむ、連邦が攪乱幕を使わないのか。自軍の邪魔を嫌ったか?」

 

 これまでを知っているからこその事実から生まれた疑問。

 

「ミサイルやマシンガンを警戒した可能性がありますな」

 

 副官も思案した。

 

「だとしてもおかしい。まず奴らが気にするのは砲台や艦艇のメガ粒子砲のはずだ。次にMSをどれだけ損害を抑えて接近させるか。今回はコロニーの前に攪乱幕を作れば損害を抑えられるにも関わらずだ。突撃艇を使えない理由があるのかもしれんが」*2

 

「見せ札とお考えで?」

 

「そうだ。しかし、直掩の部隊が少なすぎる。ただの弾避けにサイド4が貴重なコロニーを使わせるなどというのは合理的ではない」

 

 最近、サイド4の市長が兄に演説レスバを挑んでいたことを思い出す。

 合理的な奴の姿か? いや、人は一面にあらず。ドズルは警戒心を失わなかった。

 

「ううむ、わかりませんな……」

 

 副官も頭を悩ます。

 ドズルは連邦がコロニー・アタックを伝えた意図を探ろうとしていた。

 政治的視点はともかく、軍事的にはドズルは優秀なのである。

 陣形的に先頭のコロニーが盾なのはわかる。横一列が良いと思わないでもないが。

 問題は後続の位置。コロニー間を結ぶ三角形の頂点にある。

 

「迎撃前提、もっといえば破壊されることまで織り込み済みだな」

 

 では、迎撃手段は。

 

「当然、艦砲射撃とMSだろう」

 

 破壊時点の状況は。

 

「引き付けて……」

 

――やらせはせん、やらせはせんぞ!

 

「なんだ……?」

 

「閣下?」

 

「いや、構うな」

 

 立ち眩みに肩を貸そうとした副官を手で制す。

 

「なんのことは……」

 

 瞬間、ドズルは誰かが耳元でささやく声を聴いた。

 

「そういうことか! そこまでやるかワッケイン」

 

「なにか、お判りに?」

 

「コロニー迎撃部隊を下がらせろ! これは罠だ。防衛ラインをB2地点に再構築!」

 

「は? はっ、第3から第5部隊を後退させろ!」

 

 副官が呆けたのも一瞬。

 通信兵を通じて各部隊にドズルの命令が伝わる。

 しかし、ミノフスキー粒子のせいで伝達速度には差があった。

 

「我々が集まる瞬間を狙っておったのよ。中にたんまり爆弾を蓄えている」

 

「そんなことが……?」

 

 ドズルの言葉に副官が驚いていると、観測手は叫ぶ。

 

「コロニー内で高熱源反応!」

 

「なん!?」

 

 間髪入れずに轟音。そして指揮所を一時(いっとき)、光が満たす。

 

「ああっ!?」

 

 レーダー手は悲鳴を上げた。

 

「何が起きた!? 報告急げ!」

 

 副官も叫ぶ。 

 

 そして指揮所――ソロモンが揺れた。

 

 計算し尽くされた爆発によって生じた大小さまざまな破片が指向性をもって牙を剥く。

 ()()と化したコロニー片はジオンの艦艇やモビルスーツを目掛けて突進。

 予想外の方法による質量攻撃によって次々と爆発が起きた。

 さらに機雷や衛星ミサイル、ソロモンの地表面に対してのダメージも無視できない。

 

「ラット艦隊通信途絶! スローン小隊応答ありません!」

「第14から39砲台が沈黙!」

「衛星ミサイル、半数が消失!」

「4番ゲート崩落! 6番ゲート損傷!」

 

「か、閣下」

 

「うろたえるな!」

 

 ドズルの一喝で浮足立った部下たちの様子が落ち着く。

 

「奴らはすぐにやってくるぞ、残存艦隊の再編を急げ。F2から戦力を回すのだ」

 

「はっ!」

 

 通信兵は通信機にかじりついた。

 

 防衛施設をはじめとした戦力に痛手を受けたジオンだが、連邦側も狙った効果を得られたとは言えなかった。ソロモンの前面にはそれなりのダメージを与えたが、艦隊やMS隊の主力はソロモン内部、あるいはソロモンの影に位置したためにそれなりの数が生存している。

 とはいえ、最低限の結果は齎された。

 ソロモンの防衛施設の大半が沈黙したことで連邦軍は勢いづく。

 

 ただジオン軍が混乱したとて、それも次第に収まるもの。

 漂ってきたコロニーの爆破残骸をソロモンの衝角が粉砕するころには落ち着いていた。

 依然、コロニーは2基存在する。

 

「連邦の策には感心するほかない。だが、これで勝ったと思われてはならん」

 

 電文を読んだ副官が耳打ちした。

 

「閣下、偵察隊がサイド1の方向に光る物体が集まっていると」

 

「そうか。すでに乱戦距離よ、内部の艦隊を発進させい! 俺もビグ・ザムで出る!」

 

 ドズルは席を立つ。

 

「はっ、ご武運を」

 

「おう、貴様らも艦に乗り込め。指揮機能はグワランに」

 

 指揮を副官に引き継いで、ドズルは格納庫へ移動。

 整備された3機の超巨人が出迎える。

 

「壮観だな」

 

「閣下、準備は出来ております!」

 

「ご苦労」

 

 わずかに残った整備兵を労う。

 地面を蹴れば、無重力に従って体は浮いた。

 

「これがあればジオンは安泰よ。しかし、3機か」

 

 ドズルとてひとりで3つも動かすことはできない。

 その時、2人のジオン兵がやってくる。

 

「閣下、我らもお供いたします」

「水臭いですよ、おひとりだなんて」

 

「よく来てくれた。連邦の艦隊に一撃を入れに行くぞ」

 

「「はっ」」

 

 もとよりこの場に残った者であるから、覚悟を問うことはしない。

 こういった兵こそ失いたくないものだが、戦局はそんな場面にないのだ。

 

 こうして3機のビグ・ザムは出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「余所見なんて!」

 

 棒立ちのザクをライフルで撃墜。

 散弾と化したコロニーがジオンの艦艇を破壊していく様子に気を取られたようだ。

 知り合いでもいたのだろうか。すぐに後を追ったのであの世で会えるだろう。

 

「はぁ、はぁ……キリがない」

 

 そろそろ、次々と敵が湧いてくる状況に疲労も蓄積するころ。

 流れた汗を強化装備の被膜(スキン)が吸収した。

 

『大丈夫か?』

 

 わざわざ問いかけてくる兎に犬歯を見せる。

 

「この程度、なんともないわ。ただ……」

 

 シイコは右下に映るバーが赤くなっていることを確認した。

 

「さすがに、ライフルのエネルギーが尽きそうね……」

 

 戦術機のシステムは衛士の視界に装備とその残弾を表示してくれる。

 今回、それを改良してE-CAP内の残粒子量を観測できるようにしていた。

 

『もって3発ってところだな』

 

「無駄撃ちはしてないんだけど、ね!」

 

 背後から加速してきたザクをまた1機、ライフルで星にする。

 ただこのご時世、1機だけで来るわけもないので。

 背中を見つめる視線に反応してこちらも反転、跳躍ユニットで機動戦に入った。

 

『これで撃墜42か。流石だ』

 

「すぐ増えるし――」

 

 マシンガンの弾道を渦が回るように回避し、接近と両立する。

 

「有機的で自由なんだから!」*3

 

 高揚感のまま、向かってきたザクにガンマウントから突撃砲(36mm)を斉射。

 これは重要部を抜ける攻撃ではない。

 とはいえ、正面から弾幕が襲ってくれば人間、動きも鈍る。

 すれ違いざま、隙だらけな下半身の噴出孔に120mmを叩きこまれたザクは崩壊した。

 

「ほんと、数だけはいるッ」

 

 間髪入れず迫ってくる追加のザクにライフルで反撃、撃墜。

 しかしまだいる。

 

《奴を止めろ!》

《閣下のために!》

 

 耳障りな声に顔をしかめる。

 

「正義感など、馬鹿にして!」

 

 また1機をライフルで墜とし、もう1機と行こうとして。

 

「弾切れ!」

 

 躊躇なく――武器に拘れば死ぬため――ライフルを投げつけ、長刀を抜刀。

 殺傷力など必要ない。ザクのパイロットが一瞬、気を取られれば十分だった。

 

《近いッ!?》

 

「ぶつければ!」

 

 マシンガンをルナ・チタニウム製のシールドで受け流した後にバッシュ。

 

「くっ……」

 

 左腕に走る幻肢痛に顔をしかめる。

 それでも衝撃を堪えて。

 ひるんだザクの頭部にシールドの角を叩きつける。

 

《蛮族がッ》

 

「自己紹介、ありがとう」

 

 パイプごと頭部が引きちぎれ、露出した隙間に逆手で長刀を差し込み損傷させる。

 拡大した弱点に突撃砲をたらふく食べさせて撃破。

 爆発をシールドで耐える。

 

「はぁ……後続は?」

 

 周囲を探るも。

 

『付近にはなしだ』 

 

 未だ戦闘は終わらないが、こちらに来る敵機はないようだ。

 

「そう……」

 

『コロニーの残骸で見晴らしが悪いか』

 

「ええ、司令もよくこんなことを考えたものね」

 

『正直、こちらにも障害となっているところはある』

 

 いくら計算していたとはいえ、少なくない残骸が周囲に漂っている。

 というか直掩も少し巻き込まれた。*4

 暗礁宙域とまでいかぬとも、浮遊物で電波障害や視界不良が起こっていた。

 

「それも使い方よ。周辺の味方はわかる?」

 

『この距離なら。優勢といっていいだろう』

 

「コロニーは?」

 

『コースをずれてはいないようだが』

 

「そうね……」

 

 シイコは呼吸を整える。

 

『一度、戻って補給しても構わないと思うぞ』

 

「ええ、そのつもり。ただ……」

 

 虫の知らせか。(機体)の表面をじりじりとした痺れがなぞっている。

 

「集まっている? なぜ――」

 

 ソロモンのほうへ目をやれば、人の気配が集中しているように感じた。

 そこに疑念を覚えた瞬間。

 

 戦場をコロニーサイズ(コロニーレーザー)と錯覚しそうなメガ粒子の奔流が貫いていった。

 

『これは……』

 

「なんの光!?」

 

 まぶしさに目をくらませていれば。 

 

《で、デカすぎる!》《ビームが効かない!?》《光って……うわぁ!》《足がある!?》

 

「――ッ!」

 

 突如、戦場のげっそりするような青白い寒さ(黙示録の騎士)が襲い来る。

 さも、脳を圧迫するように。

 

(なに、これは!? 軽キャノンが蒸発する!?)

 

 百余の魂が縋り付くように手を伸ばしてくる幻覚。

 腕、足、肩、首。

 触れられた箇所の体温が急速に奪われていくような。

 

『シイコ、正面から受けるな!』

 

(はッ!)

 

 間に入り込んだ声で我に返る。

 思考を埋めかねない重さが消えた。

 

「……ありがとう。今のは?」

 

『奴のせいだろう』

 

 ()()に従って視線を向ける。ズームするまでもない。

 ここから離れた場所でも存在感を表している。

 戦場を縦横無尽に貫くビームの根本、モビルスーツを超越した超巨人の姿があった。

 1機どころか3機が花弁のように密集する様だ。

 いたるところで破壊の光が生まれている。巡洋艦も一撃という出鱈目具合。

 

「ジオンはあんなものまで!?」

 

 軽キャノンはもちろん、艦砲射撃すら意に介さぬ様子で破壊をまき散らしている。

 

『秘策というやつだろう』

 

「……楽をさせてはくれないようね。みんなは?」

 

『無事だ。声が聞こえなかっただろう』

 

「……ええ」

 

 理屈はやはり不明なものの、シイコは戦場の断末魔が聞こえるのを理解していた。

 先ほどの声がそうだろう。その中に聞き慣れた声がなかったのは、幸いか。

 

『ただ、安全地帯でもない。敵が調子づけば危険だ』

 

「そう、でしょうね」

 

 深呼吸。ひとつ、ふたつ。

 緊張を紛らわす。

 強い瞳で超巨人を睨んだ。

 

 放置すれば被害の拡大は間違いない。

 特に、自分のフネまで流れで落とされたら悪夢だ。

 なにより普通の人(マリーやノア)がアレに勝てるヴィジョンがない。*5

 シイコは超巨人をどうにか出来るか、出来ないかを考える。

 結論は一瞬で得た。

 

「――――やるしかない」

 

『英雄願望はやめろよ』

 

「わかってるでしょ?」

 

 思考を覗けるのだから、聞かずともよい。

 それでも問うたのは。

 

(暗に休めって言いたいんだろうけど、そうもしていられなくなったし)

 

 余裕はなくともここで食い止めるべき。

 まぁ、これも聞こえてるのだろうが。

 

『……そうだな。要塞(デカブツ)落とし、このシラヌイなら出来る』

 

「ええ」

 

 ギンも同意し、シラヌイは超巨人へ向けて加速する。

 

「たぶん、さっきのは別動隊がやられたのね」

 

『ソーラ・システムというものか。太陽光を利用など、よく考えているものだ』

 

「アテに出来なくなっちゃえば、意味ないよ」

 

『それもそうか』

 

 事実、先ほどの一射でミラーの半数を破壊されてどうしようもなくなっている。

 とまれ、現場はやれることをやるだけだ。

 

 

 

「ん?」

 

 弾幕の嵐を躱しながら接近を続けていれば。

 いつの間にか、隣を並走していたトリコロールカラー(実質白い)の軽キャノンに気づく。

 

『ハンドサインか』

 

「みたいね」

 

 同じ危機感を持っているのか。

 変なハンマーを備えた軽キャノンが意思を伝えて来た。

 それに光通信で返事を返せば、彼女は超巨人の1体に突き進んでいく。

 

(パイロットはこの前の金髪? そう……)

 

 今度話をしてみようか、なんて思いつつ。

 こちらも別の巨人に狙いを定める。

 

『シイコ、弾幕が異常だ。あの密集を解かねば近づけないぞ』

 

「あの軽キャノンもそのつもりみたいよ」

 

『乗っかるか』

 

「そうね」

 

 協力できるならするべき。そう考えたところで。

 

『――ん? 待て、ミノフスキー粒子が……来るぞ!』

 

「さっきの!?」

 

 ギンは観測から、シイコは匂いでミノフスキー粒子の収束を検知した。

 慌てて回避行動を取る。

 

 超巨人たちの()()()が光った刹那。

 

 再び、戦場を切り裂く過剰なビームが出現した。

 

「狙いはコロニーか!」

 

 肌がひりひりと焼けていくような感覚の中、シイコはビームの行く先を悟る。

 わかったとて、どうしようもない。 

 赤い光の渦は後続コロニー(2号基)の腹を大きく食い破った。

 破片がまき散らされ、コースのずれたコロニーは明後日へ向かい始める。

 

 戦場の動揺が肌に伝わるような。

 

「戦艦以上の破壊力って……」

 

『互いにフィールドを干渉させて威力を上げているのか? 凄まじいことを考える』

 

 起きた現象としては3本のメガ粒子砲を1本に束ねて威力を高めた、といったところ。

 

「……正直、もう直掩なんてやってられない気がするわね」

 

『それ以前に士気が危ういだろうな』

 

「まぁ、こんなの見せられたら。直撃なんて考えたくないわよ」

 

『案外、なんとかなるかもしれんぞ。試すまでわからんのが問題だな』*6

 

「過保護で涙が出そう」

 

 軽口で心を落ち着かせて。

 敵主力のフルボッコを受けながら突き進む健気なコロニー(3号基)を見やる。

 次に、ソロモンを見た。想定より相対距離が近いような。

 

「気のせいだと思うんだけどソロモン、動いてない?」

 

『残念ながら、動いているようだな』

 

「ああ……不測の事態は重なるものね」

 

『対応は迅速に、というわけだ』

 

「人使いが荒いこと」

 

 話をしながらも戦場を動き続ける。

 敵艦隊に進路を変更。

 

『奴はどうも、足回り60度にビームを撃てないらしい』

 

 ギンが分析した超巨人の模型(モデル)を表示する。

 頭と足をくっつけたような不思議な造形だ。

 巨大な粒子砲が前面と上面をカバーし、周囲を小型の粒子砲が囲んでいる。

 しかも()()()付近はビームを無効化するバリアがあるらしい。

 

「大型の定石よね、足元」

 

 超巨人を通り過ぎて敵艦隊に接近し、その上で敵艦隊に背を向けることになるのだが。

 

『ああ。危険は伴うが、正面よりは確実だ』

 

「あとは白いのとタイミングを合わせる」

 

『派手に動けばお互い、わかるだろう』

 

「それまであちらが生きていればいいけどね。付け根の綿毛みたいなやつは増槽?*7 撃つとしたらそこになるわね」

 

 超巨人の足の付け根に緑色の球体が左右3つずつ存在した。

 

『でなければあれほどの巨体、維持するエネルギーはないと思っていい』

 

「苦労してそうね。そこを突かせてもらうけど」

 

 敵艦の粒子砲を避けながら超巨人の下部に回ろうとすると。

 

《好き勝手はそれまでだ! 蜃気楼!》

《貴様はここで消えていい!》

 

「新型!?」

 

 殺意の波動。

 正面から迫るビームが機体表面をかすめていく。

 2機のモビルスーツが突っ込んで来た。

 左右に展開して追い込もうというらしい。

 

『ほう、ガンダムとやらの簡易量産機か』

 

「三つ目のハリボテよ!」

 

 回転機動(バレルロール)で射撃を回避しながら、片方に突撃砲を斉射。相対速度を合わせる。

 

《豆鉄砲など……笑止!》

 

 機体に傷をつけること(あた)わず。弾丸は弾かれていく。

 

「それはどうかしら?」

 

 意識の隙間を突いてワイヤーを胴体に直撃させた。

 

《小細工だとして!》

 

 三つ目が反撃にビーム・ライフルを撃ってくる。

 初弾は左の跳躍ユニットで加速し、次弾は慣性機動で、最後は減速して回避。

 ワイヤーの機動を利用して背後を取った。

 

「狙いがいいから、甘えている!」

 

《接触回線……女!?》

 

 ワイヤー越しの声に敵パイロットが隙を晒す。

 逃げられぬよう、背中に長剣を刺し込んで固定した。

 

《クソっ、盾にしやがって……!》

 

 もう1機は誤射を恐れて撃てないらしい。

 敵意にあふれた意思が流れてくる。

 

(それだけやる気なら、あと腐れなくて助かるけど)

 

「ギン!」

 

 シイコは合図を送った。

 

『ぶっつけ本番なんだがな』 

 

「四の五の言わない!」

 

 さらに檄を飛ばす。

 シラヌイのカメラ・センサー類が一層強く光れば。

 三つ目の機体はわずかに震える。カメラも赤く変色。

 異変を察したパイロットは操縦桿を動かすが。

 

《馬鹿な……動かない!?》

 

 操縦を受け付けない惨状に驚愕する。

 それを確認してシイコは長剣を引き抜いた。そのまま併走。

 

「出来るものね」

 

『ジオンのシステム、確かに興味深い』

 

《お前、何を》

 

「教えるくらいなら、やる!」

 

 シラヌイはその場を離れる。

 

《的になるか!?》

 

 その瞬間を待っていた敵が一斉に攻撃をしかけてくるが。

 それらを回避。時折表面()掠めている(グレイズ)

 

「雑兵ではない!」

 

 警戒しつつ離れる。

 一方、敵機が相方の無事を確かめるために近づいた。

 

《大丈夫か?》

《やめろ、離れるんだ!》 

《なにっ》

 

 繋がったままのワイヤーが照らされて一瞬だけ光る。

 シイコは兎のハッキングとOS改良能力からある程度の予感(確信)があった。

 兎もまた、基地のデータを引っこ抜いた時点で必要な材料をそろえてしまったので。

 三つ目――ゲルルグが動き出す。

 

『しばらく機体(カラダ)を借りるぞ』

 

《なんだお前? まさか――ヤメロォ!》

 

 つまり、乗っ取り(オーバーライド)である。*8

 ゲルルグのコックピットに現れた兎の映像が最悪の結果を示唆する。

 ぎこちない動きのまま、味方にライフルを向けられたジオン兵は。

 

IFF(マーカー)が機能してないのか!?》

 

 警告の甲斐あって、一射、二射を寸前で躱す。

 されど三射目が直撃。儚い花が咲いた。

 

《ヘックス! くそっ!》

 

 それからうめき始めた声を意図的にシャットアウトする。

 これができるなら、ということで今度は敵艦に突っ込んでいく。ゲルルグを連れて。

 メガ粒子砲の弾幕を掻い潜る。

 

「動けるみたいね」

 

『ああ。しかしこのような使い方は……それこそ四の五のか』

 

「センチになる心はあるのね?」

 

『どうも自分のヒト殺しは思いの他ショックらしい。シラヌイでは感じなかったことだ』

 

《ゲルルグがなぜ!?》

《馬鹿野郎! 俺を撃つな!》

《ちがっ、勝手に!》

 

「機械に罪なんて問えないんだから、気にしなくていいんじゃない」

 

『いや……これは俺がシイコに強いていた愚かさだ。その(とが)を背負わねば』

 

「真面目は早死にするわよ」

 

『その気はないとも』

 

「そうして頂戴、ね!」

 

《こっちにだけロックがあるぞ!》

《補正を切れ! 手動(マニュアル)で撃つんだ!》

《卑劣な真似を……!》

 

 会話の最中も戦闘は続く。

 オーバーライドしたゲルルグのライフルで。シラヌイの長刀で。

 

《スラスターの動きなのか!?》

《命知らずが来る!》

《俺はこんなことのためにッ》

 

「これ、使わせてもらうから」

《ぬあっ!?》

『もうひとつ』

《機体が!?》

 

 拝借したザクマシンガンで。敵同士の相打ちで。

 戦場に光が増えていった。

 

 背中合わせで宇宙に立つ。

 

『なるほど、これが背中を預けるというものか……』

 

「私も、エレメントは久しぶりよ」

 

『懐かしい響きだ。採点は?』

 

「即席にしては上出来ね?」

 

『それは、手厳しいな』

 

「フフ。お互い、やることがわかってるのはいいことよ」

 

『……ああ。こういった形で衛士のサポートが出来るのは感動的だ』

 

 声に出さず、僅かな時間で情報のやり取りが行える恩恵は大きい。

 また、両者がワイヤー*9で繋がっているため、お互いの距離を意図して縮めたり離したりできる利点もあった。

 

《消えッ》

 

 突撃(ヴァンガード)に反応してサーベルを抜いたゲルルグの射程からシラヌイがワイヤーで離れる。

 巻き取りの反動で円運動したゲルルグ(ギン)がサーベルで敵機を両断。

 シラヌイも円運動するが、今度はワイヤーを延長して間合いを錯覚させる。

 ゲルルグ(敵機)のコックピットハッチの隙間に長剣を刺し込み、もう1機を撃破した。

 

『これは……すごい』

 

 歓喜を示すようにシラヌイのカメラが発光する。

 もしかすると、初めてのサツジンによってノウがオカシクなっているような気も。

 とはいえ。

 シラヌイの補助をしながらゲルルグも制御するという負荷に耐える価値はあった。

 

「データの成果ってやつ?」

 

 連携については。

 

『そうだな。しかし、この立場になれば少し無鉄砲が過ぎる』

 

 小言に微笑みを返す。

 

「僚機なら、合わせて見せなさい」

 

『……善処しよう』

 

 そして、狙いの巡洋艦に到達。

 チベと呼ばれる重巡洋艦である。

 

 シラヌイが()()したのは艦首砲と艦橋の間。

 ゲルルグは傍で待機させる。

 

《モビルスーツ、取り付かれました!》

《直掩は何をしている!》

《フランシィは誤射があると言っています!》

《ぬ、うう……》

 

 艦からは攻撃できぬ位置に陣取れば、敵機は味方殺しを遠慮して撃てなくなる。

 艦橋で慌てるジオン兵を見ながらシイコは質問――半ば命令した。

 

「巡洋艦、いける?」

 

『ただのOSに無茶を仰る――やってみせるさ』

 

 ワイヤーを艦橋付近に突き刺し、艦内システムにアクセスする。

 シラヌイの座席背部が発光。

 

(ああ、そっちが光るのね)

 

 なんて感想をシイコが持つうちに。

 時代の割に貧弱な電子防御(ファイアウォール)を焼き切ってシステムを書き換えた。

 

《なっ……通信装置に不具合が発生!》

《そんな……対空機銃が味方を撃っています!》

《メインエンジン、制御できません!》

《何が起きて……機関室はどうなっている!》

 

 事態を把握しきれない近場の敵機を対空機関砲で、敵艦を後部主砲で撃ち落として。

 チベを最大加速させる。艦内で人間がゴロゴロと転倒。

 

「出来るじゃない。このままぶちかますわよ」

 

 疲れはあるだろうに、シイコの好戦性は衰えない。

 

『ああ。しかしここまで簡単だとはな……』

 

「今時、艦艇をハッキングなんて廃れてるのよ。ミノフスキー粒子で」

 

『それにしたって不用心が過ぎるとは思う』

 

《か、艦長! 本艦がビグ・ザムに向かっています!》

《なに!? なんとしても止めろ!》

《だめです、コントロール受け付けません!》

《機関室、扉がロックされてッ》

《破壊してかまわんッ ええい、閣下のご迷惑になることだけは……!》

 

 未だ光を放ち続ける超巨人――ビグ・ザムに最短経路で直進する。

 大型ゆえに歩幅の広いビグ・ザムだが、速度は艦艇に劣るのだから、いずれ追いつく。

 

「ジオンの艦艇(フネ)っていうのが気に食わないけど、単艦突撃(コレ)はいいわね」

 

『サラミスでやるのはやめてくれよ。流石に頭が痛い』

 

 片頭痛のような意思を伝えられてシイコは苦笑する。

 

「薬はないんだから、しゃんとなさい?」

 

『注文の多いことだ……そろそろ始めるぞ』

 

「ええ、派手にね」

 

 ビグ・ザムを射程に捉え、主砲を撃ち始める。

 そのうちの一発がビグ・ザムの足先を吹き飛ばした。

 対空機関砲は引き続き周囲に弾幕を形成。

 

「あははっ、味方にやられて慌てている」

 

『まぁ……好都合ではあるな』

 

 無警戒というわけではないが、ワイヤーもあって艦橋付近からシラヌイは動けない。

 そこでシイコは希望を出す。

 

「ねぇ、主砲の操作をこっちに回せない? 機関砲でもいいんだけど」

 

『あまり推奨できないが……』

 

「出来るの? 出来ないの?」

 

 渋る兎は圧に負けた。トリガーを主砲と同期させれば。

 

「ふふっ、いいわねこれ!」

 

 大きな玩具を与えられてはしゃぐように、シイコはメガ粒子砲を敵艦に撃ちこむ。

 

『これだけなら可愛いものなんだが……』

 

 またひとつ、大きな火達磨が生まれた。

 

 ジオンも異常事態を理解しつつ、対応に迷っている様子だ。しきりに通信を飛ばしてくる。

 だが通信装置を掌握している以上、クルーが事情を説明することはできない。

 ここで話が出来れば、被害の拡大を抑えるために撃沈する選択肢もあった。

 

《ゴンドワン、何をしている! 連邦に寝返ったか!? うわっ》

 

 不用意に近づいてきたスカート付き――ドムが対空砲に焼かれる。

 人死には止まらない。加速する。

 

「悲しいけどこれ、戦争なのよね」

 

『…………』

 

 異星起源種がいなければ地球(こきょう)()()なるのだろうか。

 なんて、益体もないことを思考から外す。

 現在の第一義は、衛士の生存なのだから。

 それより気になるのはシイコの様子だ。

 

《機関室開きました!》

《爆薬を仕掛けろ! 自爆してでも止めるのだ!》

《はッ》

 

『栄養剤は必要か?』

 

「え? ああ、心配しなくても大丈夫よ。なんだか気分がいいの」

 

『それは、どう?』

 

「う~ん、透き通っている感じね。よく見えるわ」

 

『そうか……異常があれば切断する』

 

「ええ、任せる」

 

 今まで揺れていた精神波が不自然に落ち着いているのは、不安を覚える。

 システムリンクが悪影響を与えていなければよいが。

 ()()がこの意志の拡張とでも呼べる現象をどう感じるかの資料はないのだ。

 判断基準はこれまでのデータのみ。

 だが、その不安も後回しにするほかない。

 

『あちらも覚悟を決めたか』

 

「遅いくらいよね。ジオンはお仲間に優しいって言いたいの?」

 

 これ以上呼び掛けても無駄と理解したようで、チベに対して攻撃が始まる。

 旧式とはいえ重巡洋艦、傷が出来てもすぐに落ちることはない。

 

《だ、ダメです! 起爆装置、作動しません!》

《馬鹿な、誰がそんなインチキを……自沈すらかなわぬのか……》

 

 有効射程に入ったところで12門の艦首ミサイルを斉射。

 ほとんどは撃墜されるが、1発がビグ・ザムの根本に直撃した。

 増槽に誘爆したようで、足の一本が崩壊。

 

《閣下ァ! 我らごと撃ってください!》

 

「その忠誠心を他で発揮するべきだったわね」

 

 決定打には至らない。が、超巨人たちの結束は乱れた。

 片足のビグ・ザムがこちらに振り向く。赤い光が前方に収束。

 

『来るぞ』

 

「いつでもいけるわ」

 

『3、2、1――今!』

 

 カウント終了と同時にワイヤーを回収したチベから飛び立てば。

 ビームの直撃した艦首が溶解して消し飛んだ。

 膨大な熱量が各部へ伝播し、チベは大爆発を起こす。

 それは離れていても熱を感じるほど。

 

「乙女の柔肌を焼こうだなんて」

 

 爆発に煽られそうになったシラヌイの姿勢を制御した。

 原因となった超巨人を視界に収める。

 確かに、緑のカツラは威圧感があった。

 

『さて、正面から突撃することになったが』

 

「臆したの?」

 

 意地悪い笑みに返す。

 

『まさか。吶喊(ヤークト)もやってみせる』

 

「いい返事ね。合わせなさい」

 

『ああ』

 

 最大加速でビグ・ザムに向かう両機。

 超巨人の大口径砲はすぐに連射出来ないようで、側面を向けて弾幕を張ってくる。

 

「今更その程度の弾幕で止まるわけッ」

 

『この機体(カラダ)は、動ける』

 

 前方が光で埋まるように錯覚するが、その細い穴を縫うように機動。

 ビームの雨を避けながら、周囲を探れば。

 別のビグ・ザムが違う方向へビームを照射するも、拡散していくことに気づいた。

 

「ビーム攪乱幕! 温存していたやつね」

 

『ああ、これが合図だろう』

 

「花火を上げた甲斐はある!」

 

 白い軽キャノンも()()()。この瞬間を逃す展開はない。

 シラヌイで相対するビグ・ザムの下へ潜り込もうとする。

 ビームを避けてしまえば抵抗は――。

 

「違う!」

 

 直感のまま回避機動。

 残った片足から質量兵器が飛んできていた。

 

「ツメ!?」

 

『何を考えてこんなものを……』

 

 対空兵器(クロー)をゲルルグのライフルで破壊。

 さらに向かってきた2つも回避するが。

 

余計な(追尾)機能までッ」

 

 反転してきたツメ同士を衝突させた。もう動かないらしい。

 なんだったんだこれは。

 

『ともあれ、シイコ!』

 

「弾丸は有り余ってる!」

 

 言葉は意思を強めるため。

 目標の増槽に長刀で傷をつけた後、鉄の嵐をぶつける。

 

 その間、ゲルルグは別のビグ・ザム――白い軽キャノンが交戦しているのと別個体――を牽制し、自由な行動を妨害する。

 

《閣下! クソっ、最後に白いのだけでもッ》

 

 パイロットの通信が聞こえてくる。

 どうやら死角のシラヌイへの攻撃を割り切り、別のビグ・ザムと交戦する白い軽キャノンを殺るらしい。大型粒子砲が赤みを帯びた。

 よほどの人間がいるのだろう。

 他者を自分より優先する行動は天晴れだが、それは死を呼ぶ。

 

『エネルギー上昇しているぞ!』

 

「好都合!」

 

 右下の残弾表記が一気に減少し、120mmが尽きたころ。

 増槽の連鎖爆発が起きた。

 さらに増槽の供給ルートからメインエンジンに破壊のエネルギーが伝播。

 主砲のために作り出された、行き場のないエネルギーが自身を巨大な火球へと変える。

 

「ぐうううっ」

 

 爆発の余波で吹き飛ばされるも、シラヌイの姿勢制御はきちんと働いた。

 

――ハハハハハ! 勝ったぞ!

 

「なにっ!?」

 

 ビグ・ザムの撃破に安心しかけた気のゆるみ。

 異様な気配に思わず視線を向ければ、同じく大爆発する超巨人と。

 それを包み込まんとする影の幻覚が見えた。

 

「…………」

 

 それも瞬きの間に消えてしまう。

 

(一瞬でも、臆したというの? 私が……) 

 

『シイコ、まだ残っている』

 

「ええ……ッ」

 

 ヤマアラシのような殺気をぶつけてきたビグ・ザムのビームを飛びあがって回避。

 

《よくも閣下を……!》

 

 先ほどの爆発で攪乱幕は消え去っている。

 暴れ狂うような弾幕が接近を困難にしていた。

 

『ライフルも効かんか』

 

 ゲルルグの攻撃ではびくともしない。

 

「こっちもダメね」

 

 突撃砲は言わずもがな。

 こうなると確実なのは。

 

『コックピットにサーベルを突き刺すしかないな』

 

 シイコも頷く。

 ただ、ビームを推力(ブースト)で回避しつつ、ひらめいたことを伝えた。

 

「案外、オーバーライドも出来るんじゃない?」

 

 否定すべきところだが、演算結果は可能性を示している。

 

『どうだろうか……確かにあのバリアが重力場ではないなら』

 

「残弾もないし、やれることをやるしかないわよ」

 

『……そうだな。試すのは自由だ』

 

 エネルギーが少ないのか、白い軽キャノンも砲撃を加えるが攻め手に欠ける様子だ。

 そもそも単騎で超巨人を落としたのだから、全力を使っていてもおかしくない。

 

『なら、前に出る』

 

「お願い」

 

 エネルギーの切れたライフルを捨て、サーベルも放棄したゲルルグが先行。

 その影を回収したサーベルを手にシラヌイも追いかける。

 白キャノン*10は何かを察したのか別方向から牽制をしてくれた。

 

 熱核融合炉(ジェネレーター)のセーフティを無理やり解除し、ゲルルグをオーバーロード状態へ。

 そのままビグ・ザムへ突撃し、ワイヤーを回収すれば閃光をまき散らして大爆発。*11

 

《なんだ!?》

 

 意味不明な行動に映ったようで、ビグ・ザムの動きが止まった。

 その困惑から立ち直る前に爆炎の中からシラヌイが吶喊。

 

「これでっ」

 

 上面、コックピット付近と予想される場所にワイヤーを突き刺した。

 

『制圧する』

 

《な、なっ――》

 

 ワイヤーから流れる電流を通じてギンがビグ・ザムのシステムを乗っ取っていく。

 ジェネレーターを停止させられ、操作も封じられた超巨人は動かなくなった。

 

 それを見届けて、シラヌイもビグ・ザムの頭上に降りる。

 

「……出来たみたいね」

 

『ああ、メインシステムは共通らしい。少し、変なものを使っているが』

 

「そういうのは、後で」

 

『わかっている』

 

 光通信で機能停止を伝えれば、白キャノンは母艦の方へ帰っていった。

 

 時を同じくして、最後のコロニーがソロモンと衝突。大きな破壊を生む。

 ソロモンの東側凸部分が崩壊した上、内部も衝撃で滅茶苦茶になった。

 

「決着、かしら」

 

『そう思いたいところだ』

 

 未だ散発的に光は生まれているが、組織だった抵抗も直になくなる。

 こうして大勢が決したことで、ソロモン要塞は陥落。

 

 しかし、そのために連邦も艦隊戦力の6割を喪失した。

 ソーラ・システムも半壊し、再使用は不可能と判断されるに至る。

 奇しくもジオン側の目論見はある程度達成されたのである。

 

 連邦が得たのは復旧に時間のかかるソロモンと、巨大モビルアーマー1機のみ。 

 苦しい作戦結果となった。

 

 

 

 

 

*1
生きていると信じるしかない

*2
基本、ドズルは考えをこんな口にするタイプではない

*3
「シラヌイは有機的で自由な動きが出来るからこの程度のことは卒なく熟せて当たり前」の意

*4
コラテラルダメージではある

*5
自分を普通ではない扱いしていることに気づいていない

*6
熱エネルギーらしいし。なお保険適用外

*7
たぶん

*8
簡単に言えば同時使用2のネオ・ジオング式

*9
異常に頑丈

*10
略称

*11
元のパイロットはすでに殺人的なGで死亡していた








目指す場所が遠い

連邦ングならぬ連邦ザム。ゴロが悪いね
タイタンズくんたすけて夏バテが来る
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