婚約破棄された悪役令嬢を拾って人生勝ち組になろうとしたら、ドS過ぎて逆に飼われてる   作:こういうのがお好き?

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第21話 初めて見ました。案外、小さいのですね

 

俺は、その日も何も考えずに風呂場の扉を開けた。

 

そして――

すべてを、見た。

 

「ふぅ……やっぱり、この温度、落ち着きますわね

「お嬢様、肩まで浸かってください。湯冷めします」

 

聞こえてきた声は、信じられないことに、二重奏だった。湯気の向こう、湯船に沈んでいたのはルイーゼ一人じゃない。もう一人、無表情で髪を結い上げた裸のリゼが、湯の中で膝を抱えていた。

 

二人の裸体が、神々しく湯に浮かんでいた。

 

「……犬?」

 

湯気の奥から、ルイーゼの涼やかな声。

 

湯に濡れた金髪が肩から胸元にかかり、豊かな双丘が湯面の揺らぎに合わせて優雅に波打っている。一方、リゼは髪をまとめて白い肌をさらしながら、静かにこちらを見つめていた。

 

「まさか、あなた――このタイミングで、風呂に?」

「ち、ちがう! ちがうちがうちがうんだ、偶然! 入ってるなんて知らなかった!」

「それにしては、見つめる時間がずいぶん長いようですが?」

 

ルイーゼの目が細くなり、口元に冷笑が浮かぶ。

 

「犬のくせに、湯の中の雌を見て興奮するとは。浅ましすぎて笑えますわ……いや、むしろ笑ってあげましょうか? “よくもまあ、そこまで品性を落とせましたわね”って」

「ぐぅ……!」

 

すると、横にいたリゼが、湯船の中でゆっくりと立ち上がる。

 

「覗き魔の定義に、新たなカテゴリが追加されますね。“家の主と侍女の入浴中に堂々と扉を開ける変態”」

「言い方がひどい!!」

「事実の描写です。もし弁明が必要であれば、後ほど法廷を用意します。死刑判決が確定したあとで」

 

ルイーゼがふっと笑い、濡れた指でリゼの頬を軽くつつく。

 

「まったく、あなたって本当に冷たいのね」

「お嬢様が温かすぎるのです……胸も、心も」

「ええ、そうですわね。わたくし、胸が広いんですもの」

 

二人が笑い合う姿を見ながら、俺はなぜか胸が締めつけられる思いがした。

 

身分の違いも、生い立ちも越えて並び立つ彼女たち。俺なんかより、ずっと真っ直ぐに通じ合っていて――

 

「……ああもう、変な意味で興奮してる自分が最悪だ!!!」

 

桶が飛んできた。

 

「そうやって、自分で勝手に燃え上がって自爆するの、哀れを通り越して滑稽ですわね。まさに……犬芸」

 

 

数時間後。

 

俺の部屋のドアを開けると、そこにはさっきの入浴天使――もとい、処刑執行人コンビが並んでいた。

 

「先ほどの件について、“公平性”という観点から処理しますわ」

「……!?」

 

ルイーゼは腕を組み、威厳たっぷりに俺を見下ろす。

 

「あなたが、わたくしとリゼの裸体を“偶然”見た件。その罪を問わない代わりに、当然ですが――あなたも見せなさい」

「はあああ!?」

 

背後からリゼがそっと囁く。

 

「公平性の確保。家の規律維持。羞恥による矯正。どれも必要な処置です。拒否は死刑」

「お前の辞書には“猶予”とか“温情”とかないのか!?」

「ありません。“羞恥”なら項目がありますが、読み方は“しつけ”です」

 

逃げ場はなかった。

 

俺は、恐る恐る、シャツに手をかけた。

 

まず、上半身。脱ぐたびにルイーゼの視線が鋭くなる。

 

「ふぅん。筋肉、あるようで、ないようで。中途半端ですわね……見せるなら、せめて見せられる身体にしなさいな」

「この身は毎朝薪割りで鍛えてるんだよ! 素人目にはわかりづらい努力なんだよ!!」

 

次に、ズボンへ。

 

ズルッと下ろし、ついに全裸――

 

「……殿方の、その、初めて見ました。案外、小さいのですね――」

 

 ぴくっ

 

「……動いた!? えっ、なに!? 今、動きました!? 何を想像したの!? あたくし!? リゼ!? 何!? どれ!?」

「いやこれはその、風! 冷え! 本能反射で!」

 

リゼが低い声で宣言する。

 

「反応時間、約1.4秒。極めて迅速。分類:条件反射型忠犬。トリガー:罵倒。備考:非常に教育しがいがある変態」

「やめて! 分析やめてぇ!!」

 

ルイーゼが額に手を当て、天を仰ぐ。 

 

「……終わってますわね」

「はぁ……まさか、ここまでとは思いませんでした。感動的なまでの一貫性」

「褒めてる!? どっち!? 罵って!? どうせなら徹底的に罵って!!」

「命乞いの声が、犬の鳴き声に聞こえてきましたわ。あなた、もう人間のステージにはいませんのね」

 

床に膝をつく俺。

羞恥で顔は真っ赤、身体は真っ裸。

 

ルイーゼがぽつりと呟いた。

 

「……まあ、でも。こういう生き物が一匹くらいいても、屋敷の格が落ちるわけでもありませんし」

 

リゼが小さく微笑む。

 

「お嬢様は、胸だけでなく、心も広い……いえ、どちらかというと、胸のほうが際立ってますが」

「ふふ……ありがとう。わたくし、誇りに思いますわ」

「主の器の広さ(物理)ですね」

「やかましい!!」

 

こうして俺の尊厳はまたひとつ脱げ落ち、羞恥の炎は勢いを増して燃え上がるのだった――

 

――飼われてるんじゃない。これはもう、完全に調教されてる。

 

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