婚約破棄された悪役令嬢を拾って人生勝ち組になろうとしたら、ドS過ぎて逆に飼われてる   作:こういうのがお好き?

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第6話 夢の中でも、わたくしを見てなさい

 

目を開けると、俺は――玉座の前で四つん這いになっていた。

 

真紅の絨毯、荘厳な大広間、天井には王冠のようなシャンデリア。

その奥。

高く高く設けられた玉座に、ルイーゼ・ロザリンド嬢が、座していた。

 

「……わたくしの夢に、足音を立てて入ってくるとは。犬にしては、礼儀がなっておりませんわね」

 

その声が聞こえた瞬間、俺の本能がひれ伏した。

 

「ル、ルイーゼ……ここは……?」

「わたくしの精神の領域。夢の中でも、わたくしは“あなたのご主人様”ですわ」

 

ぞくっと背筋が粟立つ。

俺は夢の中でも、ルイーゼの“犬”なんだ。

それが嬉しくて、床に鼻先を擦りつけたくなった。

 

「顔を上げなさい。犬にも視界は必要でしょう?」

「ワンっ! ありがとうございます!!(※目線許可)」

 

恐る恐る顔を上げる。

視界に飛び込んできたのは――女王然とした美貌。

 

ルイーゼは、現実よりもさらに冷たく、そして現実と同じくらい美しかった。

 

「……ふぅん。ちゃんと目が合いましたわね。進歩しましたこと。犬にしては、よくできましたわ」

 

その一言で、俺の脳がバグった。

うれしい。今、俺、生きててよかった。

 

「……まさか、褒められて喜んでるのかしら?」

「ワンっ! はい!!」

「救いようがありませんわね……それでも、可愛いところがあるから困りますわ」

 

うおおおおお、今の“可愛い”って、褒めてたよな!?

夢でも全力で惚れさせにきてる!!!!!

 

「では、お手を」

「はいッ!!」

「おかわり」

「ワンッ!!」

「――よろしい、喜びを表現することを許しますわ」

「ワン!!!」

 

……俺は今、最高に幸せだ。

 

「ところで、あなた」

 

ルイーゼが少しだけ、足を組み替える。

その足元に、俺は跪いていた。

 

「現実でもわたくしの“鍵”を預けられているのに、夢の中でまで自由な欲望を持つ気ではありませんわよね?」

「い、いえっ……決してッ!!」

「それが不愉快ですのよ」

 

ルイーゼが立ち上がる。

その影が、俺を完全に包み込む。

 

「欲望のすべては、わたくしが掌握している。夢の中でさえ、あなたが許されるのは――わたくしを想って震えることだけですわ」

「く〜ん!!(※震えてます)」

「……ほんとうに、忠犬という言葉がよく似合いますわ。もしもこの夢が永遠に続いたら、あなたはずっと――わたくしの足元で、尻尾を振っていなさい。現実より、よほど幸せでしょう?」

「はいッ!! 夢の中に住みますッ!!」

「ふふ……ええ。あなたの魂も、わたくしの犬小屋に入れて差し上げますわ」

 

――目も、言葉も、欲望も。

全部ルイーゼのものになってるって実感できた、至福の夢だった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

朝。俺は珍しく、夢の余韻で目が覚めた。

 

ルイーゼ様の玉座。命令。犬扱い。

足元に這いつくばり、鞭ではなく視線だけで打たれ、最後にはこう言われた。

 

「……夢の中でも、わたくしを見てなさい。現実より幸せでしょう?」

 

……最高だった。

 

俺は布団の中で小さく呻いた。

あんな夢なら何度でも見たい。むしろ住みたい。引っ越したい。

 

「……その顔、まさか夢の続きを反芻してるのかしら?」

「ぶっ……!」

 

いつの間にか立っていた。

ベッド脇に、ルイーゼ。

ドレスの襟を整えながら、俺をじっと見下ろしていた。

 

「……あら。図星、ですのね」

「い、いえっ!? ちがっ、ただの睡眠学習というか、その……!」

「ふぅん。ではお聞きしますわ、犬。昨夜の夢で、わたくしに何をさせたのかしら?」

「っ……!」

 

言えない。言えるわけがない。

玉座に座ってたとか、お手させられたとか、魂まで繋がれたとか。

 

「……まさか、わたくしを跪かせたりしたのではありませんでしょうね?」

「し、してないっ!! ……たぶん!!(※ギリギリセーフ)」

「“たぶん”?」

 

ぴしっ。

 

鞭の音。

空気が裂ける。

快感が走る。

 

「っワンっ……!!」

「あなたという犬は、夢の中でまでわたくしを弄ぶとは……最低ですわ。でも――それをわたくしが看破できてしまうあたり、やはり“ご主人様”ですわね?」

 

ルイーゼの瞳が、わずかに細められる。

 

「そんなにわたくしに命令されたいの? 夢の中だけでなく、現実でももっと躾けられたいの?」

「はい……!! もっと! どうか、現実でもっ!!(※お願いです)」

「下品ですわね。でも、そうやって鳴く姿がいちばん愛らしいのだから困りますわ」

 

ぴしっ! ぴしっ!

 

鞭が肩、背中、足元を正確に刻む。

 

「夢の中の罪は、現実で贖っていただきます。その代償としては軽すぎますけれど、今日一日は罵倒強化日といたしますわ」

「ありがとうございますううう!!(※ご褒美きたああああ!!)」

「ついでに、夢の続きが見られるように、今夜は“犬小屋での就寝”を命じますわ。

 

冷たい床で、主のぬくもりを夢想なさい。雑種にふさわしい眠り方ですわね?」

 

「ンンンンンンワン!!!(※床はベッド)」

 

 

夜。

 

俺は本当に、ルイーゼが用意した“毛布一枚の犬小屋”に入れられた。

 

天井は低く、壁は冷たく、

だけど、ほんのり香るルイーゼの気配だけが――俺を満たす。

 

「この床が、今夜のベッドですわよ。気が済むまで、反省なさい」

「ぶひぃ……ありがとうございますぅ……(※一生ここにいたい)」

 

夢にルイーゼを無断で出演させた罪。

 

ああ、なんて幸せな――

罪と罰のラブストーリー。

 

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