聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[開戦]
逆賊達が新世代型二次元人達が留置している本命寺を襲撃し、その混乱の果てに新世代型達が黒武士を率いる帝・足正義輝の下に集っていた頃。
2013年11月の事。
いざ、これから黒武士の元へと戦いに向かう戦力である名立たる猛者達の前で各々の指揮官達が招集をかけていた。
聖龍隊士も悪党も、そして国連軍の兵力も、全ての者が頭に【戦】と記している鉢巻を巻いて集っていた。
彼らが集結するのは、連合軍が戦前基地に指定した駐屯基地。ここでこれからの大戦で怪我を負った戦力も、誰であろうと治療も受けてもらえる。
そんな一堂に集う猛者達の前には、各々の指揮官達も集い、猛者達を見据えていた。
猛者達を見据える指揮官達には、以下の者たちが草創たる面子で揃っていた。
悲しげな面持ちの聖龍隊総部隊長、村田順一
厳つい強面で集結する戦力を見据える国連軍元帥、赤犬
同じく国連軍にして大将の黄猿および藤虎
特別部隊長として戦に参戦するガイア・スコーピオン
聖龍隊二番目の総部隊長フロート
聖龍隊新人養成部隊でもあるミラール
不敵な面構えで猛者達を見据える悪党派遣団体総帥の千両道化のバギー
元国連軍大将、冷苦こと青雉
セブンズガードの一角を担う赤塚組頭領、赤塚大作
そして最後に聖龍隊の治療班を総括する看護総長、宇崎星夜
この名立たる面子の中には、先において黒武士の奇襲に遭って深手を負った聖龍HEADは未だに戦闘不能としていなかった。
「どうなるんだ? 聖龍隊に悪党、そして仲の悪い国連軍と……こんなんで大丈夫か?」
「ガイアさんを、その辺の悪党と一緒にしては困る! 何も知らないくせに勝手な事を言うな!」
「フン! 知る訳ねーーだろ! ついこの間まで対立してた奴らのことなんてな!」
「口のきき方に気を付けろ! ぶっ潰されてーーのか!?」
遂に集結した兵力だが、その間で小競り合いが始まってしまった。
「それはこっちの台詞だ!」
「順一総部隊長の気持ちを考えた事があるか!? あの人は、万別関係なく全ての人を救済しようとした方なんだぞ!」
「それで俺たち聖龍隊の本隊と戦か……何ならここで、前の戦の仕返ししたって構わないんだぞ!」
先の大戦で二分した聖龍隊同士の言い争いだけでなく、それぞれの派閥から小競り合いが始まってしまう現状に、赤塚大作こと大将は溜息をつく。
「……はぁ……」
そして大将の溜息に続いて、同じく猛者達がそれぞれ小競り合いを始めてしまう状況に冷苦と順一が呟いた。
「どーーやら、そう簡単に纏まる事は出来ないようだな」
「当然だろう……つい先日まで、僕たちスター・コマンドー側と聖龍隊側に分かれて争ってしまってた……そんなぎくしゃくした所に、悪党や国連軍も引き入れれば統率も難しくなっていくものだよ」
(うーーむ、どうしたもんかのお……)
冷苦と順一が混迷を極める統率の行方に複雑な心境を抱く一方、赤犬はこの状況を鎮める方法を考えていた。
すると、その時だった。
「みんなーーっ! 聞いて欲しいっ!!」
突如、混迷する出撃前の猛者達に大声で呼びかける者が。
皆は、その声に招かれる様に、一斉に顔を向けた。
「あ? 何だ、あの若造は?」
「あれは確か、我が聖龍隊の看護総長……!」
「ナースエンジェルの婚約者でもある、宇崎星夜殿……」
皆に呼びかけ注目を集めたのは、聖龍隊の治療班などを総括する看護総長の宇崎星夜であった。
星夜は皆の視線を一身に受けながら、皆に説き始めた。
「つい先日まで……悲しい事だが、聖龍隊は思想の違いから二つに分断されてしまった。お互いの理想が食い違い、仲間であるにも関わらず、互いを傷付け合ってしまった」
星夜は先日まで、聖龍隊が二分割してしまっては、理想や考えの食い違いで仲間にも関わらずに傷付け合ってしまった経緯を語り出す。
「そして更に……今日に置いては、名高い赤犬元帥やガイア・スコーピオン、そして道化のバギーなどの、聖龍隊とは全く違う戦力もこの戦いに駆り出される羽目に至った」
更に黒武士打倒の為に、悪党や仲の悪い国連軍とも共闘しなければならなくなった顛末を語った。
「聖龍隊・悪党・国連軍……これらの派閥は今までの歴史と言う時間の中で憎しみを生み出し続け……聖龍隊はそれに対抗するために武力を強化するという結果にも至った」
それぞれの派閥との戦闘を重ねる事で、今までは憎しみだけを生み出し続け、聖龍隊はその憎しみを除去する為に武力を増強した結果も語った。
「それでも俺は、友を……ナースエンジェルや聖龍HEADが小田原修司から受け継いだ理想を信じたい。今、黒武士が成そうとしているのは、そんな理想を壊す事だ」
しかし、それでも自分は愛するナースエンジェルたち聖龍HEADが創設者である小田原修司から受け継いだ理想を信じたいと、黒武士はそんな受け継いだ理想を壊す事が目的だと説いた。
「此処にいるみんなは互いに傷つけ合い、憎しみ合った事もある……だからこそ、そんな同じ痛みを理解し合った者同士、わだかまりはない!」
だからこそ、同じ痛みを理解し合った者同士として、わだかまりは無く、共闘できると星夜は力説する。
「今ここに敵はいない! 何故なら皆、黒武士に傷つけられた痛みを持っている! 聖龍隊も悪党も国連軍もない! あるのはただ大切なものを護ろうとする……戦士だ!! それでもまだ聖龍隊を許せないと言うならば……聖龍隊の古株であるこの俺を真っ先に殺してくれ!」
星夜の力説に先ほどまで言い争っていた者たちは静まり返り、彼の言葉に聞き入る。
「かつて、俺の愛した女性を救ってくれた友を、今……黒武士は狙っている! 彼女が黒武士に殺されれば、下手すれば……この世界は終わる! 俺はみんなを、友を守りたい! そしてこの世界も守りたい! でも……世界を守るには、俺はまだまだ無力……! そして浅すぎる! だから……みんなの力を貸してくれ!!」
かつてナースエンジェルの命を救ってくれたミラーガールを黒武士は狙っている。それが果たされれば、下手すれば世界が終わる。自分は皆を、世界を守りたいが無力ゆえに大勢の力を貸して欲しいと嘆願する星夜の力説に、いつの間にかぎくしゃくしていた猛者達の心が一つになる。
皆の心が一つになったのを見極めた星夜は、大声で皆に宣言する。
「同意する者は各指揮官の下に集え! そして怪我をした者は誰かれ構わず、俺の所に来い! 必ず処置をしてやるからな!」
『おおおおおぉぉぉーーーーっ!』
先ほどまでぎくしゃくしていた猛者達は、星夜の熱弁で心を一つにした。
「悪かったな」「いいや、こっちこそ」
星夜の熱弁を聞いて、先ほど言い争っていた者たちは和解した。
「……やるじゃねえか、星夜の奴」
「まさか星夜さんの演説で、バラバラだったみんなの心が一つになるなんて……!」
宇崎星夜の突然の演説で、仲違いしていた個々の猛者達の心が一つとなった現状を前に大将と順一は驚かされた。
「へェ~~~~、まさか聖龍隊最古参の彼が、バラバラだった兵士達を纏めるとはねェ~~」
「うぅむ……宇崎星夜、侮れん奴じゃわい」
自分達にはできなかった戦力を纏め上げてみせた星夜の力説に、国連軍の黄猿も赤犬も拍子抜けした。
すると戦場に集った戦士達が星夜の演説で心を一つにしてみせた、その時。
指揮官達の許に、聖龍隊の伝令兵が駆けつけて来た。
そして伝令兵は各上官達に耳打ちで緊急連絡を伝えた。
「なに!? それは本当か?」
ガイアが驚愕すると、続けて冷苦が呟いた。
「本命寺が敵方に奇襲を受けて炎上だと?」
そう、此処で遂に戦場に集った上官達は本命寺の襲撃を知ったのだ。
「生存者は……!?」
村田順一が生き延びた者はいないのかと伝令兵に訊くと、伝令兵は首を横に振った。
絶望する順一を横目に、大将が伝令兵に訊ねる。
「し、新世代型は!? アイツらは無事なのか?」
すると伝令兵は今掴んだ情報を包み隠さず伝えた。
「そ、それが……焼け落ちた寺院からは遺骨も見付かっておらず、今のところ生死不明です」
新世代型二次元人が全員、生死不明であると知り、表情を険しくする上官たち。
すると此処で赤犬が目前の指揮官達に言い放った。
「何を悲しんどる場合か! ここで黒武士を倒さなかァ、またいつ奴が進撃してくるか分からんっちゅうに……! 今は新世代型の事よりも、その親玉である黒武士や帝を討ち取らなァあかんぜッ!!」
赤犬の非情な怒号に大将やガイア達は苛立つが、現在不在のHEADに代わって聖龍隊を指揮している順一は決断した。
「……確かに、今ここで黒武士を倒さなければ後々面倒な事になる。今は新世代型達が生き延びている事を信じて、前進するしかない!」
この順一の決断に、他の指揮官達も同意せざる得なかった。
そして二次元・三次元連合軍は、黒武士とその上官である帝・足正義輝の元へと進軍するのであった。
[進軍]
まず先攻隊が、敵方である帝と黒武士が待ち受ける荒野の先の丘へ偵察に向かった。
先攻隊を率いるのは、聖龍隊特攻決死隊の隊長でもあるウェルズ・J・プラント。
ウェルズの後を付いていくのが聖頭親属である木之元桃矢に月野進悟そして森谷賞の三人。
そんな先攻隊の偵察行動を手助けする役目として、ゲゲゲの鬼太郎率いる妖怪部隊が同行する。
そして先攻隊が荒野の中間にある岩の後ろから、双眼鏡で丘の上で進撃してくる連合軍を今かと待ち受けている黒武士と足正義輝の姿を確認して連合軍本隊に連絡する。
「こちら先攻隊。丘の上に黒武士と帝が並んで突っ立っているのが見える。どうぞ」
ウェルズからの指令に、本隊と共に待機している赤犬が問い返す。
「黒武士も、帝も……どっちもおるんやな?」
「ああ、二人とも何食わぬ顔で、これから戦場になろうとしている荒野を眺めているぜ。特に帝なんか、薄ら笑いを浮かべてやがる」
「そうか……まあ、二人の所在が判明した以上、わしらも出撃せにゃなるまい……その前に、先手必勝として長距離ミサイルをぶっ放すがな」
「あの黒武士や帝に近代兵器が通じるかどうか分からねえが、先手必勝というのは俺も同か……、! ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「どないしたん!?」
突然のウェルズの制止に赤犬は怒号に近い発言で問い返すと、ウェルズは双眼鏡から遠視で認識できる情報を伝えた。
「なんで……なんでアイツらがあそこにいるんだ!?」
ウェルズが目撃したのは、なんとこれから戦場となろう荒野を見下ろす足正義輝と黒武士の傍に、本命寺襲撃から行方知れずになっている新世代型二次元人達が全員勢揃いしていたのだ。
「なに!? ほんまに新世代型の連中か!?」
ウェルズからの報告を聞いて、赤犬や本隊と共に待機している指揮官達は激しく動揺した。
一方で、荒野の丘の上から戦場になる地を眺めている足正義輝と黒武士の傍にいる新世代型二次元人達は。
「こ、ここでこれから戦争が始まるんですか……!?」
「うむ! この地で黒武士と連合軍による、まさしく未来を賭けた大一番が始まろうとしているのだ!」
動揺する室戸大智からの質問に、義輝は意気揚々と宣言する。
「連合軍の大軍勢に、黒武士はたった一人で戦う気なの?」
「うむ! 戦場での戦術などは、全て黒武士に任せているので、どの様な策で連合軍と戦うのかまでは予でも把握し切れん」
戸惑う様子の涼野いとに義輝は全てを黒武士に委ねているのだと高々と言い切った。
「……今頃、聖龍隊や連合軍の皆さんは、どうしてるのでしょうか……」
星原ヒカルが戦況の状況に関心を持っていると、そこに帝と並んで突っ立っていた黒武士が新世代型達に歩み寄ってきた。
新世代型達は黒武士に多大な警戒心を向けながら目を向けていると、黒武士は新世代型達に右手を差し伸べては言葉を呟いた。
「……それほどまでに気になるなら、我の目を貸してやろう……!」
威圧感を感じさせる黒武士が言葉を言った次の瞬間、黒武士が翳した右手から何か透明な波動の様なものが放出され、新世代型達に浴びせられた。
すると次の瞬間、新世代型達の目には、岩陰に隠れて通信をするウェルズ達と、本隊でウェルズ達と交信している赤犬たちの姿が飛び込んできた。
「こ、これは……!」
突然視界に現われた光景に驚愕するDJ.Coo達に、黒武士は告げた。
「我は今、この戦場で進軍してくる軍勢の動きを全て見切っておる。奴等がどんな言動をしているのか、把握できておるのだ」
「そ、それって……一種のテレパス!?」
「否! これは戦場に漂う嫌悪な空気が我に全てを感じさせておるからこそ、見える景観なのじゃ。実際、人の心を読み取るまではできん」
黒武士の説明に斉木楠雄がテレパシーなのかと驚くが、黒武士はそれを真っ向から否定した。
その一方で、新世代型達も捉えている岩陰で本隊と通信しているウェルズ達は。
「本命寺襲撃の際に行方不明になっていた新世代型の連中だ! 全員いる!」
「ほ、ホントか!? なんでアイツらが黒武士や帝と一緒に……!?」
ウェルズからの通信で行方知れずの新世代型達が帝や黒武士と同伴している経緯に戸惑う大将に、千両道化のバギーが物申した。
「や、やっぱり……新世代型と黒武士は裏で繋がっていたって事か!? やっぱり旧い世代のおれらを皆殺しにするつもりなんだよ、あいつら!」
「おい、バギー! そんな馬鹿げたこと本気で思っとるんか?」
バギーの不適切な発言に海峡のジンベエが怒鳴り付ける。
「と、とにかく! 帝や黒武士への先制攻撃は待った! 今、攻撃を仕掛ければ新世代型の連中も巻き添えを喰う!」
ウェルズが先制攻撃を中止する様に本隊へ忠告したのだが。
「……ふん、なにを甘っちょろい事ぬかしよるんじゃ! 敵方である帝や黒武士と行動を共にしている新世代型など信頼できん! 何より、今あいつらに先制攻撃を仕掛けにゃ、少ない勝機は益々減滅するんじゃぞ!」
と、国連軍元帥赤犬が先制攻撃を強制発令しようとした。
「待ちやがれ赤犬! 新世代型は黒武士にかどわかされた可能性だってあるんだ! 先制攻撃するのは待ってくれ!」
そんな赤犬を大将は制止するが。
「フザけた事いっとるんじゃなかァ! 先にこっちから攻撃せにゃ、黒武士は万全の状態でわしらの軍勢に抗戦してくるんじゃぞ! それ以上に……悪を前に躊躇いは、それこそ罪じゃ!」
そう怒号を大将に浴びせる赤犬は、挙手すると同時に長距離ミサイルを操作する国連軍兵士に命じた。
「目標! 丘の上の帝・足正義輝と黒武士の一派! 発射準備……!」
「ま、待ちやがれって……!」
赤犬は大将や他の指揮官達の意見を聞かずに、丘の上へ向かって長距離ミサイルを発射しようと準備を進ませる。
そして「元帥殿! 長距離ミサイル、発射準備整いました!」と兵士が敬礼しながら伝言。
これに赤犬は躊躇う事無く命じた。
「目標、足正義輝ほか黒武士! ……発射じゃ!!」
「発射!」「発射ァ!」
周りの意見を聞かずに、赤犬は独断で兵士達に長距離ミサイルを発射させた。
「ば、バカ! なんて事を……!」「ああ……!」
大将や戦場の中間にいるウェルズ達が唖然とする中、ミサイルは無慈悲にも発射されてしまう。
「み、ミサイルが飛んでくるぞ!」
「うわあっ!」
「い、急いで逃げないと!」
燃堂力やキャサリン・ルース、
「同胞よ! そんなに慌てふためく事はない。あれぐらいの攻撃、黒武士なら容易く止めてくれるだろう」
すると皆は帝の言葉を聞いて、ミサイルが飛来してくる上空へと見上げた。
そして一直線に地上へと降下してくるミサイルが、間近まで迫ったその時。
黒武士は、高々と跳躍して100cmはあろうかという長刀を抜刀して、飛来するミサイルとすれ違った。
すると次の瞬間、ミサイルは真っ二つに切断されて空中で大爆発。玉砕された。
すれ違い様にミサイルを全て斬り付けた黒武士の大業に、新世代型達は誰もが口をあけてポカンとするばかり。
一方の、ミサイルを全て撃墜されてしまった戦況に本隊の赤犬はというと。
「ぐぬぬ……! やはり奴には近代兵器では歯が立たんか……!!」
しかしその反面、大将たち一部の指揮官達は新世代型達にミサイルの爆発が及ばなかった事態に安堵していた。
「仕方がなかァ……全軍! 黒武士に向けて進軍せい!! 奴の首を討ち取るんじゃァ!!」
赤犬の指揮で、国連軍兵士達は一斉に動き出した。
「聖龍隊も前進! 今、此処にいないHEADの分まで戦い抜くんだ!」
総部隊長村田順一の命で、聖龍隊も国連軍に続いて進軍を開始する。
「つ、遂に始まっちゃった……黒武士と連合軍……新世代型二次元人と旧二次元人との戦争が……!」
連合軍の全軍隊が進軍するのを、黒武士から与えられた瞳力で視認する琴浦春香は蒼然とした面持ちで愕然としていた。
[戦術]
本隊が黒武士に向けて進軍し始めた頃、先に黒武士たちの動向を探りに来ていたウェルズ率いる決死隊と、それをサポートする鬼太郎率いる妖怪部隊はというと。
「遂に本隊が動き出した……俺たちは本隊と合流するまで、この場で待機。合流した所で黒武士打倒に向けて共に前進。俺たちだけで黒武士を相手にするのは危険だからな」
「ええ、ウェルズさん、あなたの言うとおりにしましょう」
ウェルズの判断に、鬼太郎も同意して頷いた。
するとその時、丘の上で既に岩陰に潜んでいるウェルズ達の存在に気付いていた黒武士は、ある戦術を行った。
そして新世代型二次元人たちの前で、黒武士は印を結んでみせた。
「って、おいおい、NARUTOかよ」
真鍋義久が思わずツッコムが、黒武士はそれに反応を返さずに己が術を発動させた。
そして場所は変わってウェルズ達が待機している岩陰へと戻る。
「な、何あれ?」
岩陰では、目の前に現れた黒い靄に猫娘が指を差す。
すると黒い靄は瞬く間に形を成して、それそれが3体の存在へと変化した。
「こ、こいつ等はまさか……!?」
ウェルズは目の前に現れた三人を見て、愕然とした。
目の前に現れたのは、全身が黒いだけでかつて新世党で暗躍していた
「こ、こいつらって……!」
「確か、宇宙でさくら達が倒した筈の
月野進悟に木之元桃矢が動揺していると、ウェルズが状況を理解して説明した。
「こいつ等は……前に修司がやっていた闇の能力を用いた技、影人間だ! 闇と同様の影の力で実体を持った操り人形だ! みんな、気をつけろ!」
ウェルズが説明し終わると、待っていたかのように影で作り出された
「くっ……鬼太郎! こいつ等は死人を象っただけの影だ! 思う存分、攻撃しても大丈夫だぜ!」
「分かってます!」
ウェルズに言われて、鬼太郎は迷う事無く影人間達に攻撃を仕掛ける。
そんなウェルズや鬼太郎たちの戦況を、黒武士から賜った瞳力で捉えていた新世代型達は愕然としていた。
「ま、まさか……! 母上達の姿を模した影を、傭兵に使っているというのか?」
黒武士の戦術に驚愕される
すると、この戦術に新世代型達が黒武士に文句を言い始めた。
「おい! 自分は戦わず、影人間だけで戦争を済ませようとしているのか!」
「卑怯だぞ!」
男子達は皆挙って、自力で戦場に出撃しない黒武士を卑怯者扱いすると、黒武士は男子達の方を睨み付けた。
「ひっ!」
男子の誰もが黒武士の一睨みに身が縮まるが、そんな彼らに黒武士は言った。
「別に、我は戦場を前に逃げ出そうとする気は毛頭ない。じゃが、今は出陣の時ではないだけ……」
「しゅ、出撃の機会を窺っているという訳なのか……?」
瀬名アラタからの質問に、黒武士は無言で首を頷かせた。
一方、本隊と合流する前に黒武士が放った影人間と戦闘に突入してしまったウェルズ達は激しく衝突していた。
「くっ!」
小銃を連射して影人間である羅暁や針目縫たちと応戦するウェルズだが、今は亡き本物と同様の戦闘力を秘めている影人間に苦戦を強いられていた。
「指鉄砲!」
ゲゲゲの鬼太郎も、多種多様な技でセレディ・クライスラーの影人間と応戦するものの、素早い身のこなしで攻撃がかわされてばかり。
「う、ウェルズ隊長! こいつら、影人間の癖に動作が速く、戦闘力も常人以上です!」
「ッ……既に死んでいるとはいえ、生前のこいつらの身体能力を完全にコピーしていやがる……!」
森谷賞からの訴えに、ウェルズも表情を歪ませる。
羅暁の激しい攻撃を、爪を長くさせて防ぎながら懸命に反撃に転じていく猫娘も、時おり羅暁討伐を阻害する針目縫の邪魔立てに焦りばかりが生じる。
「流石は新世代型、といったところかしら……迂闊に近付くのも困難よ」
「そりゃっ」
砂掛け婆はお得意の砂攻撃で相手の視覚を奪おうとするが、視覚ではなく感覚で基本戦う影人間には効果が無かった。
「むむ、こりゃワシの砂じゃ効き目がないとみたね……参ったものぞ」
「おぎゃあ、おぎゃあ」
子泣き爺は全身を石に変化させて、セレディの影人間に圧し掛かるものの、影人間のセレディは凄まじい怪力で子泣きを持ち上げては、鬼太郎たちの方へと投げ返してしまう。
「こ、子泣き!」「うわっ」
重量級の石に変化した子泣きを投げ付けられ、砂掛けも猫娘も回避する。
「ぬりかべぇ~~」
ぬりかべは、そんな猛威を振るう三人の影人間に向かって倒れこみ、下敷きにしようとするが、影人間達は素早い身のこなしで倒れてくるぬりかべを避けて距離を置く。
「攻撃の手を緩めるな! 撃って撃って撃ちまくれッ!」
ウェルズは諦めずに銃撃の弾幕を張って、三人の影人間を仲間と共に撃ち続けるが、元々は影である為か、実体のある銃弾が黒い体をすり抜けて貫通してしまい、ダメージを与えられなかった。
「くっ、攻めない時は実体を影にして、物理攻撃を無力化するのか……厄介な奴等だぜ」
ウェルズが苦戦する戦況に額から汗を流していると、鬼太郎が前線に飛び出していった。
「僕に考えがあります……!」「き、鬼太郎!?」
戦前に飛び出す鬼太郎を見て、ウェルズや猫娘達は一驚。
そして三体の強力な影人間に急接近した鬼太郎は、霊毛チャンチャンコで三体の影人間を包み込む様に捕らえると、そのままチャンチャンコに包まれた三体に強力な電撃を放流した。
「体内電気!」
鬼太郎の体内から放出される電撃を浴びて、チャンチャンコに包まれた三体の影人間も苦しみ出す。
そして一定時間、鬼太郎が体内電気を放流するとチャンチャンコを開いて中から電撃で黒煙を上げる三体の影人間を放り出した。
すると鬼太郎の体内電気でダメージを与えられた三体は、瞬く間に消滅してその姿が消えてしまわれた。
「や、やったようだな……」
ウェルズ達は、ようやく強敵である影人間を倒した事に安堵してると鬼太郎が声を掛けてきた。
「さ、ウェルズさん達は一旦戦前基地に戻ってください。さっきの影人間との戦闘で体力が消耗しているでしょう」
しかし鬼太郎の気遣いにウェルズは明確に話し返した。
「心配はいらねえ、俺たちもこの場に待機して、本隊と合流を果たす。そしてその後は黒武士目掛けて突入するだけよ」
「で、でも! 弾薬も減って、体力も消耗しているって言うのに危険すぎる……!」
鬼太郎に続いて猫娘も心配するが、ウェルズは強気に反論した。
「平気だぜ! かつて人間兵器に自分を売り下げて、重責を背負ってまでも戦い抜いた修司に比べれば、これぐらい雑作もない事よ!」
「ウェルズさん……」「………………」
かつての修司の心労を思いながら戦い続ける覚悟を示すウェルズに、猫娘も鬼太郎も何も言えなかった。
「さ、もうすぐで本隊と合流する! それまで一休みすれば十分ってもんだ!」
そう粋がるウェルズの余裕感じさせる笑みを見て、鬼太郎は彼らの意気込みを無駄にしない為にも、それ以上の発言は敢えてしなかった。
しかし本隊が黒武士が留まっている丘まで進軍している最中にも、黒武士は闇の能力で次々と造兵を生み出していた。
そう、あの新世党の面々を影人間として戦場で跋扈する駒として。
[混戦]
ゲゲゲの鬼太郎の活躍で、どうにか影人間である三体を突破した先攻隊は無事に進軍してきた本隊と合流を果たす事ができた。
しかし連合軍が黒武士が仁王立ちしている丘の手前まで進軍すると、黒武士は前もって闇の能力で生み出しておいた影人間達を戦場に投下。
戦場には今は亡き新世党の姿に模した影人間達が連合軍相手に戦い始め、混戦状態へと縺れていた。
「いけーーーー!」「潰せーーーー!」
戦場で影人間達と戦う猛者達の罵声に怒号が飛び交う中、黒武士はただ黙って丘の上から戦況を傍観していた。
そんな黒武士の傍らで、同じく戦場を眺めている帝・足正義輝とは裏腹に、新世代型二次元人達は殺伐とした戦場を丘の上から眺めて蒼然としていた。
「はっはっは! 見ろ、同胞達よ! これぞ予が求めていた熱気……人々が明日を、未来を賭けて奮闘する滾った姿よ!」
人々が未来を賭けて奮戦する様を、喜ばしく思う帝の言動に新世代型達は呆れる始末。
「そんなに人が傷付くのが嬉しいんですか?」
不機嫌そうな顔で鹿島ユノが問い掛けると、帝は真剣な顔付きで返答した。
「否! 予が求めているのは人々が傷つけ合う事ではない……人々が、真に己自身の意志で熱き息吹を吹き返し、この世界を往生する様なのだ!」
新世代型の誰もが帝の言葉に首を傾げる中、帝は更に熱く語った。
「前にも申したが予が求めるは、平和と言う温和な時間の中で悪戯に時を弄んでおる現代の若者達という嘆きを覆す、己が信念と頂に上り詰めようとする熱き意志! 平和な一時の中で夢や野心を持たず、頂にも興味を抱かない
帝の説明を聞いても、世界の失われていく活気や熱気を取り戻す為に此処までの戦を仕掛けている帝の考えに頭が追いつかない新世代型達。
その頃、戦場では。
黒武士が生み出した多くの今は亡き新世党に変化している影人間達が、連合軍の猛者達と激戦を展開する。
「行くぞーーーーっ!」
「我らは常勝、聖龍隊なりッ!」
連合軍の猛者達は、武器を持ち、臨戦態勢に入っている新世党に模した影人間達相手に耐え忍んだ。
影人間達が戦場を跋扈し、戦況をかき乱している最中、特攻決死隊のウェルズは新たな部隊を率いて黒武士が直立する丘の手前まで急行していた。
「よし、此処からなら外す事はないだろう……」
ウェルズは土煙も舞い上がる事無く、良好な視界を見渡して引き連れた部隊に命じた。
「対戦車ライフル部隊! 丘の上の黒武士目掛けて一斉砲撃! 狙え……」
ウェルズの指示で対戦車ライフルの銃口を黒武士に向ける隊士たち。そして
「今だ、撃てーーーー!!」
ウェルズの合図で、対戦車ライフル部隊は同時に銃を発射。巨大な銃弾が黒武士目掛けて直進する。
砲撃が黒武士に当たる直前、新世代型二次元人達は爆発の衝撃に備えようと顔を腕で防御する。
だが、黒武士は自身に対戦車ライフルの銃弾が直撃する寸前、鞘に納めていた長刀を抜刀し、一太刀の下で銃弾全てを真っ二つに切断して地面に落とさせる。
「なッ!?」
全ての巨大で強力な銃弾を真っ二つにされてしまい、ウェルズは愕然としてしまう。
そして丘の上で戦況を傍観している自分自身にも、攻撃の手が来ると踏んだ黒武士は口を開いた。
「……どうやら、この場で戦況を眺めているばかりでもいられないようだな」
そういうと黒武士は自らも戦場に飛び込んで、直接参戦しようとしていた。
そんな黒武士の考えが直感で解った新世代型達が、一歩一歩と歩む黒武士に視線を送っていると。
「……そうだ。お前達の後始末をせねば、なるまいな」
『!』
新世代型達が黒武士の発言に衝撃を受けた次の瞬間、黒武士は手と手を組んで印を結ぶと新世代型達の足元から黒い靄が現われ、それと同時に靄の中から鉄格子が突出してきた。
「うわっ!」
突然足元から現われる鉄格子に驚く真鍋たちだが、そんな新世代型達を取り囲むように、四角形の鉄格子が周りを取り囲んだ。
最後に足元には冷たい鉄の床と、天井には平らな鉄の屋根が覆い被さり、完全に新世代型達は黒い監獄の中に捕らわれてしまった。
「うわあ!」「お、俺たち捕まっちまった!?」
細野サクヤに燃堂力たちが騒然とする中、黒い檻の中の新世代型達に黒武士が告げた。
「その中で己が犯した大罪を悔い改めながら……戦場で多くの命が傷付け合うのを見るがいい」
そう言って戦場に向かおうとする黒武士に、真鍋義久が怒声を放った。
「ちょっと待てよ! ……罪って何なんだよ、俺たちが一体なにをしたっていうんだ……!」
すると黒武士は新世代型達を睨み付けながら言い放った。
「己等は……いや、我等は生まれ出た瞬間から既に大罪を犯した身の上……生まれた事そのものが過ちなのだ。多くの者を混沌に引き込み、混乱の渦中に引き入れる……まさしく、存在そのものが我らの大罪なのだよ……!」
黒武士から、自分達は存在そのものが大罪だと告げられて、反感を覚える新世代型達だったが、黒武士の迫力に押されて何も言い返せなかった。
そして黒武士は新世代型達を黒い牢獄へと押し込んだ後、戦場へと駆け抜けていった。
戦場に駆け抜ける黒武士を、新世代型達は不安な胸中で、帝はコクリと明るく頷いて見送った。
だが、混戦極まる戦場の端っこで、連合軍や影人間達の戦闘に参加せずに、隠密に帝と新世代型達の許に近付いていく若者が一人。
「ふぅ、此処まで混戦していると硝煙に紛れて接近しやすいもんだな。さぁってと、待ってろよ新世代……」
スキンヘッドの青年は、厳つい形相で一人黙々と帝と黒い牢獄に捕らわれた新世代型達に接近していく。
[乱戦]
新世代型二次元人たちを、自身の闇の能力で作り上げた漆黒の牢獄に押し込めて幽閉させた黒武士。
新世代型達を閉じ込めた黒武士は、そのまま自らが生み出した影人間達が跋扈する混戦する戦場へと駆け出した。
戦場で黒武士は、漆黒の長刀を抜刀すると容赦なく周囲の猛者達に斬りかかって行く。
「このッ」
斬りかかって来る黒武士の猛攻を、黒埼一護たち死神部隊が食い止めるが、黒武士の刃を受け止めるだけでも並大抵の事ではなかった。
すると一護の反撃を受け流した黒武士に、今度は朽木ルキアと白哉の兄妹が黒武士を止めようと迫る。
「はァ!」
ルキアの掛け声と共に兄妹は揃って黒武士に猛攻を仕掛ける。だが黒武士は兄妹の攻撃を難なく回避してみせると、超人的な跳躍で上空へと退避する。
跳び上がって上空へ退避した黒武士を発見し、今度はデビルマンが目から紅いレーザービームを発射して黒武士を撃墜させようとする。
だが、黒武士は漆黒の長刀でデビルマンのレーザー攻撃を撥ね返して防ぐと、強烈な斬撃を放ってデビルマンに反撃する。
デビルマンはその斬撃を鋼鉄の硬度を持つ黒い翼で防御すると、態勢を立て直して黒武士へ殴り掛かる。
すると黒武士は、デビルマンの豪腕から繰り出される拳を難なく受け止めて防ぐと、そのままデビルマンと一時的に激しい乱闘へと突入する。
だが、黒武士は引力に則って、そのまま地上へと落下していき、デビルマンとの乱闘を掻い潜った。
地上へと着地した黒武士。彼はそのまま周りを包囲していた猛者達と激しい攻防戦を開始。斬り合い、殴り合い、乱戦状態でも黒武士は傷一つ付かない。
そんな黒武士に、狙いを研ぎ澄ませて攻撃を仕掛けようとする者たちがいた。
「ザケル!」
強烈な黄色い閃光とも呼べる電撃が黒武士目掛けて直撃した。
しかし黒武士は、右脇の間から左手を抜き通す形で構えると、如何なる能力をも無力化してしまう闇を左掌から放出する事で強力な電撃を無力化してやり過ごした。
黒武士へ電撃の攻撃が無力化されるのを視認して、攻撃を指示した青年が言葉を発する。
「くっ、やはり闇の能力は健在か……ザケルが効かないとは」
そう悔しそうに呟く青年、高峰清麿とそのパートナーである現在は魔界の王であるガッシュ・ベルが黒武士を睨み通す。
「清麿! あの黒武士は、本当に修司殿と同じ闇の能力者なのだな……! そして修司殿を……!」
「ああ、信じたくないが……あの黒武士が本当に新世代型なら、自分達の始祖である小田原修司を殺めた事になる……チッ、胸糞悪い!」
二人は話に聞いていた、黒武士が新世代型でその始祖でもある小田原修司を殺めた情報を鵜呑みにして、怒りが込み上がっていた。
そんな二人の周りに、かつて二人と共闘した事もある魔物と、そのパートナーである人間による部隊が駆けつけて来た。
「ガッシュ!」「清麿くん、大丈夫?」
「ティオ、恵さん。俺たちは無事だ……だが、あの黒武士の強さは並大抵のレベルじゃない」
駆け寄ってきた魔物の少女ティオとそのパートナーでもありアイドルでもある大海恵に、清麿は黒武士の強さの危険度を伝える。
そんなガッシュと清麿に駆け寄ってきた、魔物と人間の部隊を視認して、黒武士が呟く様に言った。
「フッ、なるほどその魔物たち……故郷である魔界では、単身でも強大な強さを持つが、人間界ではパートナーである人間の意思が無ければ戦えない種だったな。単独で戦えない欠点を持ちながら、人間と共闘する事で通常以上の力を発揮する事が可能な種……我と違い、独りでは戦えない者らか」
「!」
「な、何を言うのだ黒武士よ! 確かにお主の様に一人でも凄まじい戦闘力を持つ猛者には理解できないかもしれないが……私たちは人間と共に戦う事で、一人では発揮できない力を出せるのだ!」
黒武士の発言に遺憾を示すガッシュ・ベルに対し、清麿は黒武士が発した独りというニュアンスに違和感を覚えた。
と、黒武士の周りを包囲するガッシュたちに通信が。
「皆さん! 黒武士から離れてください!」
通信の相手はSRM総司令官に昇進したマリネだった。マリネの言うとおり、ガッシュや清麿達は急いで黒武士から遠ざかる。
すると上空の彼方より、閃光の如き砲弾が飛んできて黒武士に直撃。黒武士は吹き飛ばされてしまう。
砲撃を撃ったのは、戦場を跋扈する猛者達の一番後方から支援砲撃などを専門に行うSRM所属のスーパーロボットによる後攻部隊だった。
SRMの強力な砲撃を受けて吹き飛ばされる黒武士。しかし彼は砲撃と共に抉られた地面の中から起き上がると、何事も無かったかのように立ち上がる。
それをレーダーで視認したSRMの面々は驚愕した。
「アイツ……バケモノか!?」
スパロボの鋼鉄の体をも傷つける砲弾砲撃を受けても立ち上がる黒武士を見て、SRMの面々は血相を変えた。
そんなSRMの猛攻を受けた黒武士は、このまま彼らを放置すれば戦況を有利に運ばれると思ったのか、またも超人的な跳躍で跳び上がり、姿を消した。
跳び上がった黒武士は、そのまま大軍勢の後方で支援砲撃を続けていたSRMの戦艦の上に飛び乗ると、長刀を戦艦に突き刺してそのまま駆け出しては一直線に切り裂いていく。
「うわっ!」
切り裂かれた戦艦の切口からは、夥しい炎が出火し、艦内にいた聖龍隊士達は慌てふためいた。
戦艦を切り裂いた黒武士は、そのまま次の戦艦も同様に切り裂いて、戦力を削ごうと図る。
だが、このまま黙って黒武士の思い通りにさせまいと、SRMの鋼の勇士達が挙って黒武士を狙う。
「全員、黒武士を狙い撃て! 戦艦を守るのだ!」
銀河旋風ブライガーの司令塔であるアイザック・ゴドノフが指揮する中、スパロボ部隊は黒武士を狙撃する。
しかしスパロボ達が連射してきた弾を、黒武士は全て刃を振り回して撥ね返してしまう。
そして攻撃してきたスパロボの部隊に黒武士は攻撃してきた。
「な、何をするのだ? 生身の、それも日本刀一本で……!」
突然自分達が操縦する機体に飛び乗ってきた黒武士に戸惑うアイザックだが、次の瞬間黒武士はその日本刀でブライガーの左肩を切断して斬り落としてしまった。
「な、なに!!」
自分達が操縦する機体が呆気なく黒武士に片腕を斬り落とされて愕然とするアイザック。
そのまま戦闘不能に陥るブライガーを見て、仲間達が声を上げる。
「あ、アイザック!」「なんて事だ……!」
ガンダムを操縦するアスラン・ザラとキラ・ヤマトの両名が騒然としていると、そんな二人が操縦するガンダムにも黒武士は飛び乗ってきた。
「し、しまった!」
アスランが動揺したのも束の間、黒武士は彼が操縦する機体の胸部を切り裂いて、ガンダムを大破・操縦不能に陥れる。
「アスラン!」「操縦不能……脱出する!」
ヤマトが名を呼ぶ中、アスランは地上に機体が落下して爆発する前に脱出する。
するとお次はヤマトが操縦するガンダムに黒武士が迫る。
「く、くそ!」
ヤマトは急いで武装している銃で黒武士を狙撃するも、黒武士に弾を撥ね返されるか、または黒武士が着用している漆黒の鎧が弾を弾き返してしまう。
このヤマトの危機に、ガンバスターに搭乗するタカヤ・ノリコや艦隊の艦長であるマリュー・ラミアスが援護射撃して黒武士を迎撃する。
しかし黒武士は全ての射撃を撥ね返して、代わりに強力な斬撃を放ってガンバスターの武器とマリューが指揮する戦艦の砲口を破壊してしまう。
そして黒武士は、遂にヤマトが操縦するガンダムに接近する。
「これでも喰らえッ!」
ヤマトはレーザーサーベルを抜刀し、巨大な刃で黒武士を一刀両断しようと迫る。だが黒武士はヤマトが操るレーザーサーベルを長刀で受け止めて、動きを封じてしまう。
「う、ウソだろ……! 対ガンダム様にも造られている巨大レーザーサーベルだぞ……!!」
ヤマトが愕然としていると、黒武士はレーザーサーベルを弾いてヤマトが操縦する機体へと急接近すると同時に、豪快に機体を切り裂いた。
「くそ……脱出する!」
ヤマトも悔しくも機体から脱出して難を逃れる。
黒武士は連続で二体のガンダムを破壊すると、他のスパロボの面々にも機体に飛び乗っては鋼のボディを切り裂こうと駆け抜ける。
「く、来るな!」「馬鹿シンジ! よく狙って撃ちなさいよ!」
接近する黒武士相手にすっかり怖気づいてしまう碇シンジに、アスカ・ラングレーが怒号を飛ばす。
そして黒武士は、そんな動揺し切ったシンジが操縦するエヴァの機体を切り裂くと、続いてシンジに怒号を飛ばしたアスカが操縦するエヴァにも斬りかかり、機体に激しい損傷を与えた。
「俺たちスーパーロボットの面子にも容赦なく攻撃してくるとは……」
「ハッキリ言って正気の沙汰じゃないな」
「あんな奴、おれ達だけで倒しちゃおうぜ! 豹馬にいちゃん、健一にいちゃん」
並みの人間の大きさでスパロボにも容赦なく斬りかかって来る黒武士を見て、正気ではないと判断するコンバトラーVのメイン操縦士・葵豹馬とボルテスⅤのメイン操縦士・剛健一の二人に、早々で自分達だけで倒してしまおうと言うザンボット3の神勝平。
そして三人は合体攻撃で黒武士に猛攻を放つが、黒武士は僅かな隙間を掻い潜って合体攻撃を回避して三体のロボットに襲い掛かる。
黒武士の反撃に、機体は著しく大破してコン・バトラーVもボルテスⅤもザンボット3も一時的に戦闘不能に陥ってしまう。
「そ、そんな……! 今まで数々の修羅場を掻い潜ってきたスパロボの戦士達ですら、歯が立たないなんて……」
予想以上の強さを誇る黒武士の戦闘力に、SRMの戦艦に搭乗して指示を飛ばしていた葛城ミサトも唖然としてしまう。
この乱戦の中で、黒武士は並々ならぬ聖龍隊関係の猛者を撃破し、更に鋼の戦士とも呼ばれるスパロボの戦闘部隊に多大な損傷を与えた。
黒武士が跋扈する戦場では、未だに雑兵である影人間も多く居り、そんな混戦乱戦の戦場で黒武士も縦横無尽に駆け抜けて戦況を乱していった。
[真実]
戦場で黒武士が、戦況をかき乱しているその頃。
その戦場にはいない一部の猛者達の存在が。
その猛者達の一部が、戦場目掛けて今、荒野を駆け抜けていた。
「リミッター解除ォ!!」
「って、そんな事できるの大将!」
「出来ねぇよクソォォ」
「って、出来ないんかい!」
「俺はいつだって全力だ、チクショーーーーッ」
得物である破槍に乗って、荒野を駆け抜ける大将に海野なるやアツシが呼びかける。
赤塚組は、武装準備に豪く時間がかかってしまい、遅れて戦場に向かっていた。
「目覚めろ俺の中の何かァァァ」
「大将よしなさい、血管が切れるわよ!」
物凄い形相で戦場に急ぐ大将の顔を見て、隣で滑空しながら追尾しているミズキが制止する。
だが大将は、いや彼らは既に通信で得た情報から、本命寺から行方不明になった新世代型二次元人たちが黒武士に監禁された事を聞いて慌てて駆け付けていたのだ。
「待ってろ新世代! 俺らが駆け付けてやっからな! ウォォッ!」
大将は凄まじい大声を発しながら、仲間と共に急いで戦場へと走り抜けた。
その頃、戦場では。
「うぎゃあっ」「ぐはっ」
黒武士による猛攻は続いており、猛者達は続々と黒武士に斬り捨てられていた。
しかし黒武士は何故か彼らにトドメを刺さずに、しかも急所を敢えて外して猛者達を生かしていた。
この状況に、戦場の辺にある赤十字の旗を掲げた救急医療士が怪我をした猛者達の手当てに奔走していた。
聖龍隊看護総長である宇崎星夜は、この殺伐とする現場を指揮しながら自らも怪我人の手当てに追われていた。
場所は戻って戦場の真っ只中。黒武士は名立たる能力者たちを退けて、戦況をかき乱し続けていた。
「……ぐッ……」
「ん~~、赤犬、大丈夫かい? 戦況は思ったよりも芳しくないよぉ」
黒武士に自分が指揮している軍勢が退かれている戦況に苛立ちを覚える赤犬に、黄猿が戦況を報告する。
「あの黒武士め……! ふざけているんか!? 迫り来る兵士を、全て峰打ちで返り討ちにしおってからに……!!」
赤犬は、黒武士が兵士達にトドメを刺さずに命まで奪ってない状況に困惑しながらも怒りに満ちていた。
そんな様々な感情が混迷する戦場で、縦横無尽に暴れ回る黒武士の猛攻を遠視している黒い檻の中の新世代型達は途方に暮れていた。
「ウソだろ……聖龍隊に国連軍までも加盟している連合軍を、まるで赤子の手を捻るみたいに軽々と退けるなんて……!」
黒武士の想像以上の戦力に圧倒され、自分達と同じ新世代型が多くの人々を傷付けていると思っている瀬名アラタたち新世代型は愕然とした。
新世代型達が囚われている檻のすぐ近くでは、この戦乱をただただ眺め続ける帝・足正義輝の姿が直立していた。
すると、そんな新世代型達が捕えられている檻に、聖龍隊の猛者たちが駆けつけて来てくれた。
「お前ら、大丈夫か!?」
「あ、貴方は死神代行で有名な……黒崎一護さん!」
駆けつけてくれた黒崎一護を始めとする聖龍隊の猛者達に、斉木楠雄たち新世代型は歓喜する。
「待ってろ、今その檻をぶっ壊して出してやるからな!」
そう言う一護に、傍で戦乱を傍観していた義輝が声を掛ける。
「ほほう、其之方は確か死神を代行する者、黒埼一護、と申したかな? いやはや、黒武士を止める前に囚われの新世代型を救い出そうとは天晴れであるぞ!」
「ウッセェ! 帝、アンタは新世代型を助け出し、その上あの黒武士を倒した後で相手してやらァ!」
一護は帝に怒声をぶつけると、その直後に大技を新世代型達が捕えられている檻にぶつけて、檻を大破させて中の新世代型達を助け出そうと試みるも。
「チッ、ダメか! いくら大技を叩き込んでも、ヒビ一つ入らねえ……!」
一護が黒い檻の破壊に手こずっていると。
「そこを退け、一護!」
と、戸惑う一護の後ろから、同じ聖龍隊の浦飯幽助が声をかける。
「
幽助の必殺技が炸裂するが、彼の技は檻の鉄格子に撥ね返されて同じく破壊する事はできなかった。
「! 俺の霊丸でも歯が立たねえってのか!」
流石の幽助も、己の必殺技が効かない漆黒の鉄格子に動揺する。
すると、駆け付けた聖龍隊の面々の前に、黒武士が檻の屋根の上に瞬時に移動して現れた。
「く、黒武士!」
黒崎一護たちは激しく動揺するが、そんな新世代型達を救出に駆け付けた聖龍隊に黒武士は言った。
「意味のない事をするな、哀れな聖龍隊の……いや、運命に抗う猛者達よ。お前達がやろうとしている未来への系譜は、全て意味を成さずにただ悪戯に終焉へと向かうだけの足取りなのだ」
しかし、この黒武士の発言に黒崎一護が間髪入れずに言い返す。
「なんなんだ、お前……最初っから今に至るまで、訳分かんねえ事ばっか言いやがって!!」
黒武士の発言が理解できない一護は強く言い返すものの、黒武士はそんな一護たちに凄まじい斬撃を放った。
「離れろ!」
檻周辺に接近していた聖龍隊士は、一目散に黒武士の斬撃から退避する。
その攻撃で上がる砂煙の中に、黒武士が檻の中の新世代型達を背にして地上に降り立った。
そして、のそりのそりと黒武士は歩み出すと、砂埃塗れになった聖龍隊士に向かって、刀の切っ先を向けて身構えては戦意を示す。
「はぁ…………やろうってのか」
切っ先を向けて戦意を示した黒武士の真意を汲み取って、黒埼一護が黒武士を睨み付ける。
そして黒武士と、新世代型二次元人救出に駆け付けてきた聖龍隊士は戦闘に発展した。
そんな激しい黒武士と聖龍隊士達の戦闘をスグ側の丘の上で傍観している帝は、聖龍隊士の熱気を感じながら視線を釘付けにしていた。
すると、そんな帝の背後から一人の人物が忍び寄っていた。
「動くな」
その人物は帝の背後を取り、帝の背に拳銃を突き付けて一声掛ける。
その声に新世代型達も気付き一斉に顔を向けると、帝の背後を取った人物の顔を見て驚いた。
「じぇ………………ジェイク!!」
帝に銃を突き付けた人物、それは以前にタイの研究施設で出会い、それからタイのバイオハザードを抜け出るまで行動を共にしていたジェイク・ミューラーだった。
強面で帝に銃を突き付けるジェイクは、新世代型達が自分に気付いたのを視線を逸らして認識するが、帝に突き付ける銃はそのままだった。
「……おおっ、其之方はジェイク・ウェスカーではないか! 新世代型達を死守する為に、聖龍隊と共にタイの都市を脱出した歴戦の猛者よ! 其之方もまた、この大戦に密かに参戦していたのか?」
「おおぅ、俺たちが遭遇したタイのバイオハザードの一件にも随分と詳しいじゃないか。でもその前に! 俺の事をウェスカーと呼ぶのはやめてくれよ」
「ははッ、それは相済まなかった。其之方は実父であるアルバート・ウェスカーを快く思ってなかったのだな、ハハッ!」
「ウルセェ! そんな事はどうでも良いんだ! お前さん、国連総長だよな? この下らねぇ現政奉還なんて真似しやがった……そんなアンタが、なんで俺たちが遭遇したタイのバイオオハザードの事を知っているんだ?」
「はははッ、そんな事か。知っていても当然。何故なら、新世代型達を研究施設に誘拐させた人物・ゴールドマンを裏で操っていたドレフ、そのドレフに指示を与えていたのが予の配下である黒武士だったからに過ぎんからだ」
「な、なんだと!?」『!!』
帝からの返答を聞いてジェイクも新世代型達も驚愕した。
タイのバイオハザードを引き起こしたゴールドマン、そのゴールドマンと協力関係にあったドレフ、そしてそのドレフと裏で通じていたのが帝の配下である黒武士だったというのだ。
帝から全ての発端を裏で操っていたのが黒武士だった事を聞いたジェイクは驚きつつも、突き付けている拳銃を更に突き付けて帝に物申した。
「……いや、今はそんな事はいい。アンタ、いい加減に新世代型二次元人共を解放しろ! 今すぐ!」
ジェイクから新世代型達の解放を突き付けられた帝は高笑いしながら返事した。
「ハハハッ、そうか! 其之方は同じ苦労を経験してきた新世代型達を解放するために、遥々ここまで駆け付けてきた訳なのだな! ハハッ」
「よく笑っていられるな、背中に銃を突き付けられているっていうのによ」
帝の言葉にジェイクが苛立っていると、帝はその隙を利用して常備している
「く、クソ!」
ジェイクは慌ててスグに別の拳銃を装備しては帝に突き付けるのだが、その銃すら帝は
更に帝はそのままジェイクと
「く……ッ」「じぇ、ジェイクさん!」
帝に追い詰められて表情を歪ませるジェイクに、檻の中から琴浦春香が声を掛ける。
そんな苦渋の表情を浮かべるジェイクに、帝は言った。
「まだまだだぞ、朋よ。予に、この
「……!」
未だに本気の力を発揮していないと豪語する帝の発言にジェイクは愕然とする。
そんなジェイクに、帝は更に話し続けた。
「……しかし、其之方が一度出会った新世代型を救い出す為に、遥々ここまで駈け付けたのは、ある意味運命だったと言うべきかな?」
「どういう事だ……!」
地面に背中を擦りつけながら問い返すジェイクに、帝は次の瞬間衝撃的な真実を言い放った。
「ジェイク・ウェスカーよ。其之方もまた、吾らと同じ……新世代型二次元人の一人であるのだ」
『!!』「……!」
帝の発した言葉に、新世代型達も、そして彼らを助けに馳せ参じたジェイクも衝撃を受けた。
そしてその帝の発言を聞いて、傍で戦闘をしていた黒武士が動きを止めてジッと帝とジェイクの方を見据えた。
「おりゃああああああッ!」
そんな黒武士に、背後からウェルズが決死の特攻を仕掛けようと日本刀を突き出して飛び掛るのだが、黒武士はそんなウェルズの特攻を背中を向けたまま横へと移動して回避すると同時に、飛び掛ってきたウェルズの顔面に手甲を叩き付けて悶絶させてしまう。
ウェルズを悶絶させた後も、黒武士はジェイクを見据える。
「俺も……新世代型、だと?」
「そうだ。其之方もまた吾らと同じ、小田原修司の遺伝子をモデルに生み出された新世代型二次元人の一人であるのだ。同時に、かのアルバート・ウェスカーの息子としても生を受けたがな」
「俺も…………新世代型…………」
帝から明かされた衝撃の事実に、しばし愕然とするジェイク。そんなジェイクを檻の中の新世代型達は心配そうに見詰める。
するとジェイクは帝を睨み付けたまま立ち上がると、眼を飛ばしながら帝に突っ返した。
「……それがどうした?」「?」
あんまりにも自分の出生の更なる真実を知っても理性や正気を保持するジェイクに帝も不思議がると、ジェイクは過去に言われた言葉を帝に突き出した。
「昔、ある女に言われた事がある。親が酷いからって何だって言う……生きる事に信念が持てないのは、自分の問題だ。ってな」
ジェイクはそのまま帝を睨み付けながら、帝の周りを歩きながら
「俺は俺だ。アルバート・ウェスカーの息子でもなけりゃ、小田原修司の呪われた遺伝子を持つ異端児でもない! 俺は俺……この世でたった一人の、ジェイク・ミューラーだ!!」
このジェイクの台詞を聞いて、帝は大いに笑った。
「ふふ、フハハハ! そうか! それが其之方の出した答か! いや、素晴らしいぞ!」
遂にジェイクに拍手を送り出す帝の言動に、ジェイクは呆れ、新世代型達は唖然としてしまう。
「ふざけるな! その前にさっきも言ったとおり、新世代型達を解放しろ……」
と、ジェイクが帝に言い寄ろうとした、その時。
ジェイクの前に聖龍隊士と戦闘を続けていた黒武士が瞬間移動してきては、今にも帝に敵意を向けているジェイクの腹に掌ていを打ち付けた。
「ぐっ!」
突然の黒武士からの不意打ちに流石のジェイクも悶絶してしまう。
そして黒武士はジェイクを足蹴りして、新世代型達が閉じ込められている黒い檻の方へと吹っ飛ばされる。
すると黒い檻の真横の鉄格子がぐにゃりと曲がり、大きく隙間を開くと、その隙間が吹っ飛ばされたジェイクを飲み込んで、ジェイクも新世代型達同様に黒い檻の中に叩き込まれてしまった。
ジェイクが檻の中に叩き込まれると、ジェイクを呑み込んだ大きな隙間は、またもぐにゃりと真っ直ぐに元の状態へと戻った。
「ッ、くそッ」
鉄格子がぐにゃりと変形して戻るのを止めようと駆け込む海道ジンであったが、彼の思いも虚しく鉄格子は元の状態に。
そしてジェイクも新世代型達同様に檻の中に閉じ込めた黒武士は、檻の中のジェイクに告げた。
「お前も新世代型だったとはな……だがこれで、お前にも破滅の運命が始まる時を体感させられる」
謎の言葉を残すと、黒武士は再び戦場で数々の猛者と激戦を繰り広げ始める。
黒武士によって、ジェイクまでも檻の中に閉じ込められてしまった現状。
そんな現状の中、檻の中の新世代型達に異変が起き始める。
それは突然の頭痛から始まって、脳裏に辺り一帯が真っ白な空間が広がって見える光景だった。
果たしてジェイクは?
そして新世代型二次元人が見た真っ白な光景とは一体?
[赤鼻の救世主?]
激化の一途を辿る戦況の最中、明らかになったジェイク・ミューラーの真実。彼もまた、新世代型二次元人の一人だったのだ。
そんなジェイクも、他の新世代型同様、自らが作り出した黒い檻の中に閉じ込めた黒武士。
黒武士はその後も続け様に、戦場を跋扈する猛者達と激しい攻防戦を展開する。
「く、クソッ。俺までも、このザマか……!」
呆気なく檻の中に閉じ込められてしまい、自分の落ち度を悔しがるジェイク。
そんなジェイクに、以前世話になった琴浦春香たち新世代型が話しかける。
「じぇ、ジェイクさん……」
「済まねえ、ジェイク……まさか、お前までも巻き込まれちまうなんてな」
ジェイクに謝罪する琴浦に真鍋義久。するとジェイクは素気なく返した。
「良いって事よ。此処に来たのは、全部おれの独断。お前達は何も気にしなくていいさ」
「ジェイク……!」
以前にも増して、人柄の良さを見せ付けるジェイクにキャサリン・ユースらは感激する。
と、その時。再び、新世代型達に激しい頭痛が襲い掛かってきた。
「うっ……!」「なんだ、また頭痛が……!」
「お、おい? あんたら大丈夫か?」
頭を押さえ込んで苦しがるイオリ・リン子に猿田学達を前にして、プロト世代のギュービッドが動揺する。
「お、お前ら、大丈夫か……、ッ! い、イテェ……」
と、頭痛に襲われる皆を前にしていたジェイクにも同じ症状が現われたのだ。
「そんな! ジェイクさんまで……!?」
「彼もまた新世代型だ……もしかすると共有感知の影響が彼にも出たのかもしれない」
新世代型達と同じく頭痛に襲われるジェイクを前に戸惑うチョコに、海道ジンはジェイクにも共有感知の影響が出た可能性があると推測する。
すると新世代型を襲っていた頭痛は、次第に弱まり治まっていった。
皆が頭を押さえて起き上がると、その時に燃堂力が檻の中のあるものに気付いた。
「……ん? な、なあ、みんな! これってもしかして鍵じゃねぇの?」
燃堂の視線の先には、何故か檻の内側に付いている錠前だった。
「こいつを開けられたら、俺たち出られるんじゃねぇ?」
真鍋義久の発言を聞いて、皆は少しばかり希望が湧いた。
だが、錠前を開錠する術を皆は持ってはいなかった。
「ジェイク! あんたの腕で、この錠前を開けられないか?」
「無理だな、ちょうどピッキングの道具も持ってねえし、今の俺には開けられねえよ」
真鍋はジェイクに願い出るが、ジェイクは開錠の為の道具を持ち合わせていなかった為に開けられなかった。
そんな檻の中の状況を遠視して、黒武士と対峙している聖龍隊の面々は慌てて声を発した。
「中から檻を開錠できるのか……誰か! 開錠できる上に、檻に行ける者はいないか!?」
ウェルズは叫ぶが、いま檻の近くで戦闘している聖龍隊の中で鍵の開錠をできる者はいなかった。
聖龍隊が慌てる中、黒武士はそんな彼らを嘲笑うかのように斬り付けていく。
するとその時、戦場の奥から砂埃の中を突っ切って、一体の人影が現われて声を挙げる。
「おれ様がいるぜ! その手柄、おれに寄越せッ!」
その人物は、全身をバラバラにできる能力ゆえに車輪を持って車の様に移動する事ができる通称:千両道化のバギーだった。
「あ、あいつ……!」
「確か、千両道化のバギー、だったか?」
砂埃の中から飛び出して名乗り出たバギーを見て、真鍋や幸平創真が声を発する。
「ギャハハハ! 新世代型め、この大悪党のバギー様が直々にお前らを助けてやるんだ。感謝しろよ、バカ共め!」
バギーカースタイルで戦場を駆け抜けて突撃してくるバギー。だが、そんな彼の前に黒武士が生み出した影人間が立ちはだかった。
「ギャハハハ! 影人間だが闇人間だが知らねえが、おれ様の敵じゃないぜ!」
そう高笑いするバギーは、攻撃を受ける直前に自らの体をバラバラにして攻撃を回避すると素早く反撃する。
「このヤロめッ」
バギーは靴に忍ばせている隠しナイフを突き出して、自らの能力を駆使して影人間達に斬りかかって消滅させた。
「ギャハハハ! まだまだだ!」
その後もバギーは己の能力を最大限に活かして攻撃しながら新世代型達が囚われている檻へと接近する。
「ド派手に決めるぜ! バラバラフェスティバル!」
敵に取り囲まれた際には、自身の体をバラバラにして周囲の敵に自分のパーツを直撃させる大技で牽制しながら反撃する。
「ギャハハ、見たか! おれ様こそ無双の大悪党、千両道化のバギー様だ!」
そう得意気になって檻へと急接近するバギーの前に、あの黒武士が立ちはだかった。
「ゲゲッ、く、黒武士!」
目の前に立ちはだかる黒武士を前に、バギーも激しく動揺して立ち往生。
すると黒武士は無言でバギーの首を長刀で刎ねて切断してしまう。
目の前で首が刎ねられる情景を目撃して、檻の中の新世代型達も愕然とする。
しかしバギーは死ななかった。
「ギャハハ! おれ様に斬撃やナイフ、刃物は効かないんだよ!」
バラバラ人間ゆえに、首を切断されてもスグにくっ付いて元通りになれるバギーに刃は効かなかった。
だがしかし、それでも黒武士は面白い様にバギーの体を切り刻み、細切れにしてしまう。
細切れにされても元通りになるバギーは、その無意味な斬撃に怒りを感じた。
「シツコイっての! このぉ、黒武士め!!」
怒ったバギーは分離した足先から赤い爆弾を発射して、黒武士を吹き飛ばそうとする。
「特製マギー玉! 消し飛びやがれッ」
しかし黒武士はバギーが放ったマギー玉を漆黒の長刀で撥ね返すと、バギーは目前まで迫るマギー玉を前に唖然としながら解いた。
「整いました。マギー玉とかけまして、スーパーマリオブラザーズの裏道と解きます」
「その心は?」
近くにいたウェルズが合わせると、バギーは次に周りの皆に一斉に合わせた。
「皆さんもご一緒に。せーーの…………土管(ドカン)!!」
「マギっちかよ!?」「キャプテンバギー!」「ウマイ!」
マギー玉の爆発に巻き込まれながらも一句整えたバギーに、ウェルズがツッコム中、バギーの手下達は賞賛を送った。
そんなバギーの漫才みたいな光景を前にして、唖然とする檻の中の新世代型達。
すると、そんな新世代型達の前に身体をバラバラにして爆発の衝撃を拡散させる事で命だけは助かったバギーが降ってきた。
「イテッ」
檻の前に落下してきたバギーは、地面に着地すると同時にバラバラになっていた身体を元通りにして、よろめきながら立ち上がった。
そんなバギーに新世代型達が話し掛けてきた。
「だ、大丈夫か、あんた?」
「ゲッ、お前らは小田原修司のクローン!? ヤベェ所に飛んできちまった!」
レドに言われて気付いたバギーは、慌てふためく。
「恐がらなくてもいいぜ、赤っ鼻のおっさん。それよりもあんたに訊きたい事が……」
「誰が赤っ鼻だ!! ぶっ殺すぞ、テメェら!!」
ジェイクに赤い鼻を指摘されて激情するバギーに、真鍋義久が訊ねた。
「そんな事より千両道化のバギー、あんた錠前外しの道具とか持ってねえか?」
「ああん? 錠前外しの……? そんなもん、世界中の財宝を手に入れようと日夜頑張っているおれ様は常備している品だぜ」
「そ、それなら助かった! お願いだよ、檻の中にある錠前外して開けてくれよ」
ギュービッドがお願いするが、バギーは乗り気ではなかった。
「えぇ、で、でもよ……お前ら、此処から出たら黒武士の味方に加わって、おれらを全滅させる気じゃねェのか?」
「我々にその様な気は毛頭ない!! おい、道化のバギーよ! 一刻も早く我等を此処から出しさえすれば、後々私が直々に貴様に褒美として多額の礼金を差し出してやってもいいのだぞ」
「え! ホント!?」
「ちょ、ちょっと姉さん!?」
「皐月ちゃん、良いの!? こんな奴にお金渡すだなんて……!」
「大丈夫だ、流子、蛇崩。私は昔から自分の野望を達成する為ならば、こんな意地汚い奴とでも協定を結んだり、手を組んだ事も多々ある。世の中、何事も全て正攻法で上手くいくとは限らないのだ」
そう語る皐月の申し出を聞いて、バギーは早速檻の開錠に取り組んだ。
「そんじゃ! まずは檻の中に入らないとな……いざ、バラバラ侵入!」
そう言うとバギーは自分の身体をバラバラにして、鉄格子の隙間を潜り抜けていく。
そして全ての身体を檻の内側に侵入させたバギーは、早速懐に常備忍ばせている錠前外しの道具を手元に並べて置いた。
「ふんふふん♪ それじゃ、早速取り掛からせてもらいますか……」
バギーは鼻歌を交えながら内側に取り付けられている鍵の開錠に取り掛かった。
すると一時錠前の開錠に取り組んでいたバギーが、作業を止めた。
「ん? ど、どしたの……?」
真鍋がバギーに問い掛けると、バギーは何と檻の内側に付いていた錠前を外して中の皆に言い放った。
「鍵も何も………………これ、ダミーの錠前じゃねェか!!」
『ええぇっ!?』
鍵を開錠しようとしたバギーが明らかにした偽物の錠前に、新世代型達は全員驚愕してしまう。
「これじゃ外すも何も、この檻、元から鍵なんて無い代物じゃないか!」
バギーに言われて真相に気が付いた面々は唖然とする。檻は外側からはもちろん、内側からも脱出不可能だったのだ。
「お前ら、しっかりしろよ! これじゃ、おれ様が侵入したのも意味ないじゃ無いか。おれ、もう出る!」
そう言ったバギーは、鉄格子の前まで来ると再び身体をバラバラにして隙間を潜って抜け出そうと試みる。
しかし、バギーは何故かそうしなかった。
「……あれ? バラバラになんねェ……?」
いや、バラバラになれなかったのだ。分離する筈の身体が分離せず、困惑するバギー。
「ウソだろ、オイ……! 能力が使えねェのか!?」
此処でバギー達は、檻の中では能力が使用不能である事に気付いた。
「マジかよ、オイ! 誰か、おれを助けろッ!」
慌てふためいて涙目で助けを求めるバギーの声に、新世代型達も困惑する。
「おい、あの赤鼻の奴、結局何しに来たんだ?」
「さ、さぁ……」
涙目で慌てふためくバギーを見て、ジェイクが呆れ果てる一方で真鍋も戸惑うばかり。
そんな混乱するバギーが泣き叫ぶ現状の檻に、砂煙の中から現われた黒武士が歩み寄ってくるのを目視したバギーは切実に訴えた。
「お、おい黒武士! おれ様、間違って檻の中に入っちまったんだよな。此処から出してくんない?」
すると黒武士は涙目で訴え掛けるバギーに、はっきりと言い切った。
「……運が悪いな。その檻は、この大戦が終焉を迎えるまで解く気は無い故に……まあ、ついでにお前さんも檻の中から我等が起こした争いの顛末を見届けるのじゃな」
「な、なんだよソレ!? おれ様ついでなの!? ……マジ許せん、黒武士……!」
黒武士から、ついでに檻の中に入っている様に言われたバギーは怒りで身を震わす。
そして黒武士はバギーも檻の中に入ったまま出られない現状を視認した直後に、再び戦場を駆け抜けて並居る猛者達と激戦に挑む。
果たして黒武士の猛攻を猛者達は止められ、新世代型二次元人たちを救い出せるのか。
そして更に、戦場には居ない一部の三次元人の武将達はいづこに。
黒武士が目指しているものは一体……。