聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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※このシリーズは架空戦記の物語であり、実在の人物とは関係ないフィクションであります。

※私自身もっと作品の出来を良くしたい一心が抑えきれません。そこで、どなたか心優しい方からのコメントや感想など募集しております。

※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。

※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。

※今回も多くの版権キャラが死亡するという過激な描写が目立つストーリーでありますが、最後の大どんでん返し&ハッピーエンドまでお付き合いください。




現政奉還記 破滅の章10 抗う猛者たち②

[受け継がれた理想の為に]

 

 今まさに全ての繋がりを、絆を絶って、この世の全てを無へと誘う為に滅ぼさんとする純粋なる破滅・小田原修司。

 その修司を止めようと、遂に聖龍隊で物語の垣根を超えて師弟関係を結んでいる聖龍HEADとスター・コマンドーが修司に挑む。

 が、修司の圧倒的な戦力を前に、HEADもスター・コマンドーも全く歯が立たなかった。

 この戦況にメタルバードは、修司が如何に強力な新世代型二次元人の能力を得てしまったのか再認識させられる一方、修司の決意は変わらる事はなかった。

 聖龍隊の伝説・歴史の始まりである繋がりを絶たなければ、この混沌たる世界は美しくならず醜いままなのかと戦場の誰もが苦悩していると。

 

 唐突に、修司が虚無の表情で語り始めた。

「思い出してしまうな……かつて、お前たち二次元人と出逢った事で俺が思い描いてしまった遠い理想郷たる未来を……」

「?」

 突然の修司の語りに困惑するメタルバード達であったが、修司はそのまま独り言の様に語り続けた。

「いつの日か、ヒーローやヒロイン……そう英雄達にも穏やかで平和な時を過ごしてもらいたいが為に聖龍隊を結成した。そんな微かな理想を実現する為に、俺は産まれながらの弱い小田原修司を捨てた……が、どんなにお前たち理想の象徴である二次元人を護ろうと、どんなに裏方で己の手を血で染めようと、俺の理想が叶う事はなかった。この世は醜いままだった」

 修司の一人語りに耳を傾ける一同に、修司は語り続ける。

「そして……! この世が美しくなるどころか、俺の醜い部分を受け継いだ新世代型二次元人という忌まわしきクローンが生み出されるまでに至った。俺は……もうお前達自身はもちろん、お前達が護ろうとするこの世界ですらも信じられなくなった……!」

 世界が美しくなるどころか、自身の醜い心情を受け継いだクローンたる新世代型二次元人を生み出す世界に幻滅し、二次元人達はもちろん彼らが護ってきた世界すらも信用できなくなったと説く修司。

 そんな世界に幻滅する修司に、先ほど修司と戦い合った聖龍隊の面々が声をかける。

「修司くん、あなたは確かに普通の人より周りからの愛情や優しさを感じにくい人間よ……! でも、それでもあなたには優しさがあった。そして何よりも、みんなが幸せになれる未来を思い描き、その理想を実現しようとする意思があった筈よ」

「修司さんには私たちの正義や愛が薄っぺらく感じたのかもしれないけど、修司さんはその理想を掲げる私達を応援し続けてくれた。だから私達も修司さんが掲げる理想を、未来を夢見て一緒に求められたんです!」

 キューティーハニーとブロッサムの真情に、修司は虚無の表情を向けて冷然と返した。

「お前達は愛だの正義だのと説いていたが……俺には愛など感じられず、正義など信じられなかった。そんな俺でも、皆が生きていける理想郷を創ろうとしていたというのに……世界はつまらない、いざこざや発端で争い続け……平和とは程遠い現実だけは無情に流れ続けるばかり。所詮、お前達が説いていた正義も愛も……理不尽な現実では何の意味も持たなかったんだ」

 修司の説き返しに落胆するヒロイン達。だが、そんな修司に喝を入れる者が。

「修司!!」

 戦場に響く怒号にも近い大声で叫んだのは、今では盲目の剣士に至ってしまった早見青児であった。

「修司……! お前の言う通り、俺以上に力を持ったハニーや他のヒロイン達、そして人々を護ってきた英雄達が唱えてきた正義や愛を、お前が生まれ育った現実は受け入れようとはせず、むしろそれとは反対の行い……争いばかりに勤しむだけだった。けどな!」

 青児は強い口調で修司に説教を返す。

「けれど……未来を生きてゆくであろう子供達に、何が正しく、何が愛情なのかを教えてやる為にも……何より未来にその思いを持っていく為にも、ハニーの……みんなが信じてきた思いは消しちゃいけないんだよ!!」

 青児は今や光すらも届かなくなった盲目の目頭を熱くさせて、修司に熱く説いた。そんな青児の熱弁を聞いて、妻であるキューティーハニーは目に涙を浮かべた。

 だが修司は、今までの自分の行いで生まれた矛盾を説く勢いで、そんな青児に俊足で駆け寄った。

「!!」

 眼前まで俊足で駆け寄ると同時に両刀で斬りかかる修司に、盲目の青児は素早く日本刀を抜刀して修司の二刀流の刀を受け止め防いだ。

「青児さん!」

 修司の剣戟を辛うじて受け止めた青児を見て、キューティーハニーが名を叫ぶ。

 そして修司は青児と激しく鍔迫り合いをしながら、青児に自分達の今までの行いを問うた。

「俺達が行ってきた正義……その行いが完全完璧なものだったと思っているのか?」

「……!」

「正義を執行すればするほど、被害者側は喜び舞うが、加害者側は一生永遠に罪の重責を背負い、路頭に迷う事となる……一方が幸せとなり、もう一方が不幸になる。俺が生まれ育った理不尽な現実と全く変わらないじゃないか」

 修司の説明を聞いて愕然とする青児に、修司は自らが振るう刃を押し付ける力を弱めずに説く。

「誰かの幸せが……誰かの不幸に当たる。己の幸せが他人の不幸と言う様に……その逆もまた然り」

 自分の幸せが他人の不幸というのなら、それとは真逆で己の不幸が他人の幸せに繋がると説く修司の話を聞いた一同は騒然とする。

 そして修司と青児は鍔迫り合いの末に刃と刃を弾け合わせて、距離を置くと各々対峙。

 互いに面と向かって対峙する修司と青児の二人は、次の瞬間、一斉に前へと踏み込んで双方同時に駆け寄って各々の刃を振るった。

 一瞬の内に、二つの閃光が火花を散らして弾け、次の瞬間には修司と青児は互いに背を向け合って各々の立ち位置を入れ替えていた。

 虚無の表情を永遠と浮かべ続ける修司が、そっと瞼を開いた次の瞬間、修司と斬り合った青児は静かに地面へと倒れ込む。

「青児さーーん……っ!」

 キューティーハニーの悲痛な阿鼻叫喚が戦場に響き渡る中、青児は静かに息を引き取ろうとしていた。

「修、司……お前と、また…………夢を、理想を……追いたかっ、た………………」

 最後にそう呟くと、青児は静かに光を感じない目を閉じた。

 盲目の凄腕剣士である早見青児をも一刀のもと、斬り捨てた小田原修司の暴挙を目撃してまたも新世代型達は絶望に打ちひしがれる。

「ま、また……! 僕達の力で、聖龍隊にとって大切な人命を……!!」

 新世代型の小野田坂道たちは、自分達の生体エネルギーを吸収して戦力を増強させた小田原修司によって、またも自分たち新世代型にも分け隔てなく優しさを向けてくれた聖龍隊士が目の前で死んだ光景に衝撃を受けてた。

「くそ……クソッ。このまま僕らは黙って戦況を見ているしか、できないというのか……!」

 新世代型の星原ヒカルは、自分たち新世代型は黙って檻の中で不自由なまま戦況の惨劇を傍観するしかないのかと嘆くばかり。

「このままじゃ、このままじゃ……本当に戦っているみんなが死んじゃう!」

「私達の生体エネルギーを吸収してパワーアップした小田原修司を、どうにかして止めないと……!」

 涙目で修司と戦い続けて戦死してしまう猛者達を気遣う彩瀬なるに、檻の中からでも小田原修司をどうにか弱体化などで止められないかと懸命に熟考するエイミー。

 だが、そんな自問自答する新世代型達に小田原修司は冷たい言葉を投げ付けた。

「……今さら、お前ら新世代型に何ができる? SRMが全滅し、多くの猛者達が死に……挙句の果てにはアッコが死ぬのを、ただ見ているしかできなかった貴様ら欠陥品に何ができると言うんだ?」

 心のない自分と同様に、新世代型達ですらも欠陥品と見下す修司の言動に、新世代型達は悲しみに暮れる。

 

 そんな遂に心許していた聖龍隊の同志だった隊士達の命も奪い始めた小田原修司に、一閃の雷が飛来。

「ザケル!」

 その声と共に飛来する雷に直撃する修司だったが、修司は変わらず無傷のまま。

 修司が雷が飛来してきた方へ体を振り向かせると、視線の先で修司を睨み付けていたのは高嶺清麿とガッシュ・ベルの二人に、その傍らに立つ大海恵にティオ、パルコ・フォルゴレとキャンチョメ、カフカ・サンビームとウマゴン(本名:シュナイダー)の姿が見受けられた。

「これはこれは。かつて魔界の王を巡って争い合っていた人間と魔物の者たちではないか。今度は魔界の王と、その側近として人間の俺を倒そうという気か?」

 まるで嘲笑する様な物言いで清麿やガッシュ達に問い掛ける修司の言動に、清麿は悲しい気持ちを堪えて強く言い返した。

「修司……! 人間兵器である自分のクローンを大量生産された事で、世界に絶望し、幻滅してしまった……その気持ちは凄く解る! だが……過去にあんたの理想や大志にも共感してくれた仲間を、友を……何よりも、一番の理解者であったアッコちゃんを殺してまで世界に復讐していくのは虚しいだけなんだ! いい加減、その事に気付いてくれ……!!」

 清麿はかつての友であった修司の変わり様に深く絶望し、悲嘆しながらも、修司に己の過ちに気付くよう強く唱えた。

 だが修司は虚しくも、そんな清麿に唱え返した。

「清麿、聖龍隊の多くの同胞だった二次元人が俺の思い描いた理想に賛同してくれたのは、何も誰もが俺の理想に共感してくれてた訳じゃない。俺が思い描いた理想は、誰もが平和に過ごせる理想郷……すなわち、二次元人も三次元人も種族を問わずに共存共栄できる世界だ。俺のこの理想は、三次元人から未だに「絵から生まれ出たバケモノ」と忌み嫌われている二次元人にとっては、ただ都合が良かっただけの絵空事だっただけだ。人とは所詮、己の利害の一致が無ければ共感してくれない冷たい生き物なんだよ」

 この修司の提唱に、恵が反発する。

「それは違うわ! みんな自分達が楽になる為に、自分達だけが幸せになる為に修司くんの志に付いてきた訳じゃない! 人間だろうと魔物だろうと……いいえ、どんな種族であろうと心優しい人なら誰でも平和に共存できる社会。そんな世界を築こうとする修司くんの理想に大勢の人が感化されたからこそ、私達もその理想を素少しでも現実にしようと今でも聖龍隊の一員として戦っているのよ!? ……修司くん、ホントはそんなみんなの気持ち、あなたなら理解している筈よ?」

 最後は悲しそうに修司に訴える恵の問い掛けに、修司は少しも虚無の表情を変えずに恵たちに話し返した。

「皆が揃って幸せになれる世界……俺はそれを思い描いていた。だが、さっきも言った筈だ。己の幸せは他人の不幸、他人の幸せは己の不幸、と……万民が分け隔てなく幸せになれる世界など、荒唐無稽で滑稽な夢物語だったのだよ。そうだろ? 俺よりも賢い高嶺清麿よ」

「………………」

 虚無の眼差しで修司に問われた清麿は、何も言い返すことなく修司を睨み付ける。

 そして一時の間を置いて、清麿は修司に呟く様に言った。

「……それでも、オレ達はあんたが抱いてた理想を、夢を……何よりもその理想が実現できる現実を、信じる。……だからこそ!」

 次の瞬間、清麿は人差し指と中指を修司に差し向けて相棒のガッシュに号令をかける。

「ガッシュ!」

「ウム!」

「行くぞ、もう修司の理想は修司だけの理想じゃない。オレ達みんな……いいや、聖龍隊みんなの夢なんだ!!」

 清麿とガッシュは修司に狙いを定めると、清麿は呪文を叫んだ。

「ザケルガ!!」

 槍の様に一点突破に特化したザケルガが一直線に修司へと向かう。

 ザケルガは修司に直撃し、更にミラーガールが遺してくれた蒼い羽衣の効果で修司の如何なる攻撃をもすり抜ける身体能力を無効化し、見事修司の体を貫通し、風穴を空けた。

 しかし修司は何事も無かったかのよう清麿たちの方へと歩き出し、それと同時に胴体に空いた風穴が再生し出した。

「クッ……やはりマギウスや神原秋人から会得した再生能力を封じない限り、勝算は無いか……!」

 傷口が瞬く間に再生していく様子を目の当たりにした清麿は、表情を歪ませる。

 そんな清麿にフォルゴレが声をかける。

「清麿! ボクらの司令塔である君が動揺してちゃ、余計勝算なんて見えなくなってしまう! ボク達の術を最大限に生かせる戦法を、頼りにしてるよ!」

 フォルゴレに続き、サンビームも清麿に優しく言う。

「清麿、戦局は難航しているのは私達にも理解できるほど、状況は最悪だ。だけど、此処で諦める君ではないだろ?」

「……ああ、その通りだ。オレ達は最後まで諦めない! 小田原修司、あんたから受け継いだ夢と理想、ここで終わらせる気は毛頭ない!!」

 サンビームの問い掛けに、清麿は闘争心溢れる気迫で眼前に迫ってくる修司に言い放った。

「皆の者! 我らも清麿に……いいや、人間達に負けず劣らず最後まで戦うのだ!!」

『オウッ!!』

 魔界の王ガッシュ・ベルの言葉に、この大戦に参戦してくれた多くの魔物とその相棒であった魔本の持ち主だった人間達も強く応えた。

 

 かつての小田原修司が夢見た、全ての種族が共存共栄する世界。

 そんな夢と理想を受け継いだ聖龍隊の名立たる二次元人達が今、様々な垣根を超えて破滅へと進化した小田原修司へと挑もうとしていた。

 理想を夢見て邁進しながらも、世界に裏切られて全てに失望した小田原修司。

 そんな小田原修司から受け継いだ夢と理想を今なお信じて戦場に参戦する多くの勇士たち。

 彼らの未来は、色とりどりの明るい未来か、それとも真っ白な虚無の世界なのか。

 

 

 

[並び立つ英雄]

 

 かつて小田原修司から受け継いだ夢と理想を信じて戦い続ける聖龍隊の同志達。

 かつて修司によって、人間界と魔界の交流が始まった際には、王を決める戦いに参戦した魔物と人間を巡り会わせてくれた経緯がある高嶺清麿たち。

 修司と激しい戦いを繰り広げるガッシュと清麿たちは、その時の思い出を思い返していた。

 修司の計らいで、魔界で再会を果たした清麿とガッシュ達。互いに涙を流しながら抱き締め合い、再会を心から喜んだ。

 そんな感動の嵐の最中、当時の修司が魔界の王となったガッシュにかけた言葉は……。

「どうだガッシュ? 聖龍隊を中心とした魔界との交流の式典のフィナーレは如何だったかな?」

「ウム、ウム……ッ。ぼんどうに、本当に、ありがとうなのだ……! 修司殿……!!」

 王を決める戦いにも極力協力してくれてた修司の、魔界での式典での終幕に用意された出し物に感激するあまり、目からも鼻からも大量の水を流して感謝感激するガッシュ・ベル。

 そんなガッシュの喜ぶ様子を見届けた修司は、不敵な笑みを浮かべてガッシュに訊ねる。

「ところで……魔界の新たな王、ガッシュ・ベルよ」

「うむ?」涙を腕で拭いながら返事するガッシュに、修司は更に訊ねた。

「此処までのお膳立てをしてやったんだ。まさか魔界の王たるガッシュ・ベルが、何もないとは言わないよなあ……!」

 この時の修司の不敵な言動を目の当たりにした清麿たち人間も、ガッシュ以外の魔物たちも、修司がガッシュに無理難題を吹っ掛けるのかと硬直した。

 そして修司がガッシュに振った要求とは。

「……そのマント、俺にもくれよ」「へっ?」

 修司の平然とした問い掛けに思わず唖然としてしまうガッシュ・ベル。

 修司がガッシュに要求したのは、ガッシュが人間界に居た頃より着用していたマントであった。

 このマントはガッシュの双子の兄ゼオンも同じのを着用しており、体の一部の様に伸び縮みと再生が可能であり、着用者の意思一つで変幻自在のマントなのである。

 修司はガッシュが人間界に居た頃から、このマントを欲しており、前々から自分用のを着用したかったのだ。

 最初この修司の要求に唖然としていたガッシュであったが、人間界に居た頃より協力してくれただけでなく、再び清麿たちと再会させてくれた修司の恩恵に感謝したい気持ちから修司の背丈と同サイズの魔界製のマントを部下に命じて拵えさせ、修司に感謝の印として贈呈した。

「これだよ、これが欲しかったんだ♪」

 実に気分爽快な修司は、マントを使ったジャンケンをガッシュと早速やってみる。

 本来、マントを自在に扱うにはそれなりに鍛錬が必要なのだが、修司は着用後すぐに使いこなしてみせた。

 ガッシュがグーで、修司がチョキ。この結果に修司は失意のどん底に至ってしまい、それを見てた清麿たちは呆然としてしまう。

 

 そんな過去の笑い話を思い返しながら、今清麿たちはガッシュら魔物達と共に修司と激戦の最中。

 しかし修司は閃光の速度を持つガッシュの攻撃や、本来ならば回避不能ともいえる電撃攻撃をも簡単に避けてしまう。

 更に例え万が一攻撃を受けても、修司はその驚異的な再生能力に加え、如何なるエネルギーをも無力化してしまう闇の能力で雷の攻撃そのものを無力化してしまう。

 清麿とガッシュに加勢しようと、恵/ティオ、フォルゴレ/キャンチョメ、サンビーム/ウマゴンたちが修司を攻撃。

 だがやはり如何なる攻撃をも修司は無力化してしまう戦況に、清麿は熟考した。

(どうすれば……どうすれば、修司の全てを無力化する闇の能力を打ち破れる……!)

 そう清麿が人知れず熟考していると、武器を持たずに素手で自分に群がるブラゴやゼオン・ベルを蹴散らして一人黙々と熟考してる清麿に問い質した。

「俺がガッシュから魔界製のマントを貰い受けた昔話を思い返した次は、俺の闇の能力を如何に打ち破れるか考えているのか」

「!! テレパシーか……!」

 清麿はスグに修司が琴浦春香と斉木楠雄から会得したテレパシーで、自分が何を熟考しているのか心の内を読まれている事に気づく。

 そんな漠然とする清麿に、修司は自身の闇の能力を説いた。

「今の俺はな、清麿……純粋な破滅へと進化した今の俺は、自分の体を全て闇と同化させたんだ」

「……! 何だと……?」非常に困惑する清麿に、修司は説き続けた。

「信じられない、と言う顔だな。確かに……自然エネルギーの一つである闇と完全に同化するなど、普通はあり得ない話だ。あの黒ひげすらも、完全に同化する事ができず、相手からの攻撃を無力化できず受け流す事ができなかったからな」

「………………」

「……だがな清麿。今の俺は忌まわしき己のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収した事により、俺自身が持つ闇と完全に肉体が同化されたんだよ。それによって本来は受け流す事ができない攻撃も、闇と同化した俺の体が自然と攻撃を吸収して無力化してくれるんだよ」

「要するに……! 今のあんたは正真正銘の、闇そのものって訳か……!」

「そうだ……流石は賢いだけあるな、清麿。その賢さで、ガッシュと出会う前は周りから軽蔑されていたというのにな」

 修司の説明を聞いて最初は言葉を失う清麿であったが、説明が終わると睨みを利かせて納得する様子。

 すると説明を聞き終わった清麿は、険しい表情で修司に説き返した。

「あんた自身が強大な闇なら……それ以上に強大な光の力で、その闇を打ち消せばいいだけだ……!」

 この清麿の説明に、修司は冷然と答える。

「強大な闇は、微かな光をも呑み込む……大いなる闇の前では、今やどんな光もちっぽけなものだ……!」

 大きな闇の前では、如何なる光をも微弱なものであると説く修司の言葉に清麿達は愕然とする。

 

 と、清麿たちに説いていた修司の背後から、修司に迫る一人が斬り込んでいく。

 修司は背後から迫るその剣士に素早く反応し、闇で作った刃で応戦するものの、清麿たちに説いているのに夢中になっていた為か、武器を弾かれてしまう。

 その剣士は修司の首元に自分の得物を押し当てて、修司を睨み付ける。

「お前か……将人」

 修司に単身斬り込んで、剣を弾いたのはスター・ルーキーズの門脇将人であった。

 将人は自分の得物である劍神:「逐力(オロチ)」を修司の首筋に押し当てる。

「将人、今のお前は俺たち聖龍隊と出会った頃のお前だな……すっかり憎悪に憑りつかれている実に醜い顔だ」

「なんで……! アッコさん達を……!!」

 将人は完全にアッコや仲間である聖龍隊士を殺した修司に殺意を向け、憎悪に憑りつかれていた。

 すると将人は怒りを堪え切れず、今や完全に義手になっている左手に武器を持ち変えると、空いた右手を修司のがら空きの腹部に殴り付けた。

「! やめろ、将人!」

 そんな腹部に殴り付ける将人を、間近で目撃した清麿が制止するものの、将人は修司の腹部に思いっきり拳を叩き込んだ。

 が、次の瞬間。将人が打ち込んだ右拳を、闇と同化している修司の体が吸収したのだ。

「!?」自分の右腕が修司の体に吸引されるのに驚愕する将人。

 そして将人は耐え難い激痛に耐え切れず、右腕を引っ張ってしまう。すると彼の右腕は千切れてしまい、そのまま丸ごと右腕は修司の肉体に吸収されてしまった。

「わっ……わあっ!!」「将人様!」

 右腕を消失し、悲鳴と共に大量の出血で悶え苦しむ将人を見て、彼の従者であるミヤビが名を叫ぶ。

 一方の修司は突如として苦しみ出し、徐に口から何かを吐き出そうと悶える。

 すると修司の口からは、大量の唾液と共に将人が右腕に装着していたミヤビから貰い受けた飾りが吐き出された。

 悶え苦しむ将人を目の当たりに、この惨状を目撃したガッシュが愕然とした表情で清麿に問う。

「き、清麿、これは一体……!」

「完全に闇と同化している修司の体が、将人の右腕までも吸収した上で、完全に分解しちまったんだ……! そして人間の肉体では決して分解できない無機物である飾りだけを、体の防衛機能で体外に排除するため口から吐き出したんだ……」

 既に修司の肉体は、闇と同化している為か、有機物である人間の身体までも吸収して分解してしまう事実。そして人体では分解できない無機物である飾りだけを口から吐き出して除外したと、蒼然と説く清麿。

 

 門脇将人は、過去に左腕を失っただけでなく、今まさに修司に右腕までも吸収されて完全に両腕を損失してしまった。

 そんなもがき苦しむ将人の許に、加速装置で駆け付ける009が心配する。

「大丈夫か!?」

 009が問うと、将人は激痛に苦しみながらも009に言った。

「た、頼む……修司を、前総長を止めてくれ……!!」

「……!」脂汗を掻きながら009に嘆願する将人。

「お、俺みたいな薄汚い悪役だけじゃない……たくさんの人に優しさを振りまいてくれたアッコさんが、ミラーガールが死んでいい訳ない……! そんなアッコさんが最後まで信じ抜いた小田原修司を、どうか伝説にもなった本当のヒーローである009、あんた達サイボーグ戦士が止めてくれ……!!」

「………………」

「た、頼んだぞ……00ナンバーサイボーグ……戦鬼と呼ばれる者、たち…………」

 そう009に言付けた門脇将人は、損失した右腕からの大量出血によって、その場で事切れた。

「将人ーーッ!」「将人様ーーっ!」

 かつては敵対していた将人の死を視認して日ノ原革は咆哮を上げ、将人の従者ミヤビは嘆き悲しんだ。

 そして将人から修司を止めてくれと嘆願された009は、静かに将人の亡骸を地面に置くと目の前の修司と向き合った。

 将人までも死に追いやった修司は、未だに平然としていた。そんな修司を見て、009は心を締め付けられた。

「もう……もう終わりにする! 全ての人の思いを打ち消す修司くん、君の暴走を僕たちで止めてみせる……そう、戦鬼と呼ばれる僕たちサイボーグ戦士が!!」

 将人の遺言を託された009は、修司を絶対に止めようと、戦鬼と恐れられている自分達が止めようと仲間のサイボーグ戦士達と共に決起した。

 そんな009達の戦意を感じ取ったのか、修司は右手から闇の刃を現出させて009達に静かに歩み寄る。

 接近してくる修司に臨戦しようと体制をとる009たちサイボーグ戦士の許に、高嶺清麿たち魔物の軍勢が加勢しに来る。

「! 君たち……」

 加勢しに来る清麿たちに驚く009。そんな彼に清麿が言った。

「あんた達、戦鬼と呼ばれるサイボーグ戦士だけじゃない。此処にいるみんなが、修司から夢と理想を受け継いで戦っている気高き二次元人なんだ。言っておくが、あんた等だけが修司と戦っている訳じゃないぜ、009」

 そう笑顔で話し掛けてきた清麿の言葉に、009も笑みを浮かべて清麿に話し返す。

「ああ、宜しく頼むよ。天才児の高嶺清麿くん」

 並び立つ英雄達は、今まさに修司との激戦に突入しようとしていた。

 

「清麿とジョーか……同じ声優(こえ)だと、ややこしいな。まあ、どっちにしろ、みんな揃って虚無へと送るから良いけどよ。……声優か、俺はそうだな……やはり山寺宏一がお気に入りかな? あの七色の声帯は、まさしく俺と同じで人間離れしている……」

 清麿たちに009たちサイボーグ戦士と対峙する修司は、少しも動じず闇の日本刀を構えて戦いに備えていた。

 

 世界に失望し、かつての夢と理想を捨て去った男・小田原修司。

 そんな修司の夢と理想を受け継いだ、今の世の気高き二次元人たち。

 物語の垣根を越えて、並び立つ英雄達を前に修司の暴挙は食い止められるのだろうか。

 

 

 

[共闘! 魔物軍と9人の戦鬼たち]

 

今や自身のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して、己が持つ闇と完全に同化した事で如何なる能力をも吸収・無力化する事ができる小田原修司。

 高嶺清麿やガッシュ・ベルら魔界の魔物の軍勢すらも容易く蹴散らし、そして義手ではない唯一の右腕で修司を殴りかかったスター・ルーキーズの門脇将人の右腕までも吸収して、右腕を損失した将人は出血死してしまう。

 この状況に、将人の死を見取り、彼の遺言を聞いたサイボーグ戦士の島村ジョーこと009たちが全力で修司を止めようと戦意を奮う。

 が、そんな009たちサイボーグ戦士に高嶺清麿たちガッシュら魔物の軍勢も加勢し、共に修司を止めるため共闘する流れとなった。

 果たして、魔物の軍勢と9人の戦鬼と呼ばれるサイボーグ戦士たちは修司を止められるのだろうか。

 

「ラシルド!」

 一直線に日本刀を突き立てて猛進してくる修司の突撃を防ごうと、清麿は電撃の盾ラシルドを唱えてガッシュの眼前に盾を作り出す。

 だが一点突破の修司は、日本刀の切っ先に力を集中させて、ダイヤを楔で打ち砕く要領でラシルドに日本刀を打ち込んで粉々に打ち砕いてしまう。

「ッ!」

 飛び散るラシルドの破片が顔や魔本に当たらないよう身を低くする清麿とガッシュ。

 修司はそんな清麿とガッシュに斬り込もうとするが、其処にブラゴとシェリーの二人が超重力の術で修司の周辺に強力な重力を発生させて修司の動きを封じる。

 ブラゴの重力の技に動きが制限される修司だが、修司はスグに左手を地面に突き立てて闇の能力を発動。その闇でブラゴの魔力を無力化して周辺の重力を元に戻してしまう。

 重力で修司の足が地面に埋まってしまっている中、修司が地中から足を引き出そうとすると。

「ファイヤぁ!!」

 修司の真下、地中から灼熱の炎を口から吐き出して地中を溶解して出現する006が修司に炎を浴びせる。

 006の火炎放射を浴びて火達磨になる修司だが、すぐに闇と同化している修司の体が炎を吸収して無力化。瞬く間に修司が浴びた大火は消滅した。

「……相変わらず凄いな、006。お前の炎は……」

 修司がそう006に言うと、彼は修司に面と向かって言い放った。

「友達を止めるのは当然ネ! 修司くん、もう馬鹿げた真似はよしなアル!!」

 しかし修司は平然と006に言い返す。

「友達、か……俺には、友情という温かい繋がりも感じられてなかった……いつの間にか、繋がりとは重たく冷たい鎖の様に感じてしまっていた……」

 冷戦と語る修司の言葉に、哀れみを感じてか表情に複雑な心境を浮かべる006。

 と、006と対話している修司の許に、ウォンレイと005が二人がかりで修司を取り押さえ、拘束しようとする。

 が、修司は肉体をすり抜けさせて、肉体派のウォンレイと005の拘束をすり抜けて容易く自由となる。

 そんな二人に修司は地走りを繰り出し、二人へ地を駆ける斬撃を喰らわそうとする。

 この危機に005は屈強な肉体を盾にして、ウォンレイの前に出ると自らの肉体を盾にした。

 と、そこへティオと恵が呪文を唱えて絶対防御壁の魔術を発動。ウォンレイと005を護り切った。

 ティオの防御魔法に斬撃が防がれ、修司は目論見を変える。

「魔界ではない、この世界で魔物が戦う為の魔力は全て人間の心の力が必要……つまり、先に人間の方を倒さなければならないという訳だな」

 ガッシュたち魔物が、自分達が生まれ育った魔界以外の世界で自分の術を使うには、魔本を経由して人間の心の力を使わなければならない。それ故に修司は先に魔本の持ち主である人間の方を先に倒すべきと判断。

 だが、この修司の判断を聞いて006が強く反論。

「な、何を言うか!? 修司くん! 一体キミはどれだけ友達を殺せば気が済むネ!!」

 この006の言葉に、修司は憮然と無表情で返した。

「今の俺には友達という名の繋がりは……重く冷たい鎖は必要ないんだ。もう俺には繋がりなんて要らないんだよ……」

 人との絆を、重く冷たい鎖だと説く修司の言葉に006は悲しく思う。

 そんな修司を、ウォンレイとリィエンの相思相愛のカンフー組が、連携を取って殴りにかかる。修司は二人の連携を右に左にとかわすと、回し蹴りで軽々とリィエンを蹴り飛ばす。

「うぐっ」「リィエン!」

 リィエンを蹴り飛ばされて、一瞬気を彼女に向けてしまったウォンレイにも修司は幾度となく打撃を浴びせて悶絶させてしまう。

 そしてリィエンと同じく打撃で吹き飛ばしたウォンレイに、修司は追撃しようと二人に迫るが、ウォンレイは修司の目前に立ちはだかって格闘を始める。

「ウォンレイ!」

 リィエンが呼ぶ中、ウォンレイは修司と激しく格闘し合った。だが、修司は時おりリィエンに目を逸らしてウォンレイの気を逸らしてた。ウォンレイも修司が愛するリィエンを攻めようとしているのかと気が気でなかった。

 そんな意識が逸れている中、当然の事ながらウォンレイは闘いに集中する事ができず、修司に軽く足蹴にされてしまう。

「ぐっ……!」「ウォンレイ……!」

 修司の格闘術を受けて、地面に転げるウォンレイにリィエンが駆け寄る。

 それでも尚、ウォンレイは守りたい友や仲間達の為に懸命に立ち上がり、修司に挑もうとする。

 そんなウォンレイの姿を前に、修司はウォンレイに語り始めた。

「守る王……それがウォンレイ、今でもお前が持ち続けている信条だったな。だが……俺は守れなかった。どんなに運命を捻じ曲げようとも、その与えられた運命に則るしかいけなかった死していく二次元人達を俺は守れなかった……ウォンレイ、お前はその苦しみを理解する前にリィエンと共に終焉へと向かえ……」

 物語の筋書きという決められた運命を変えれず、死んでいった多くの二次元人達。彼らに対する懺悔という苦しみをウォンレイが理解する前に恋人同士共に終わらせようと説く修司に、ウォンレイは真っ向から言い返した。

「修司! 確かにあなたが行ってきた中で、救えなかった……守れなかった二次元人達も大勢いたという事実は知っている! ……だからこそ! そんな過去に死んでいった二次元人の為にも、私は私だけでも、守れる人々を守り切ってみせる! その中には……小田原修司、其方もいる!」

 今なおウォンレイが掲げている信条を皮肉る修司に対して、ウォンレイは過去に修司が守れなかった二次元人達の分まで自分は守れる人々を全力で守り、その中には修司本人も含まれていると熱く説き返した。

 と、今でも修司を友として見て、その友である修司も救うべき、守るべき友と唱えるウォンレイに、修司は冷淡に言った。

「俺はもう守られる側の人間じゃない……まして、攻めるだけの人間でもない。全てを零にし、全てを虚無へと誘うだけの……虚無そのもの」

 そう言うと修司は再び日本刀を現出させてウォンレイとリィエンに攻め込んだ。

 素早い動きでウォンレイとリィエン組を狙う修司。だが、其処に地面を駆け抜ける修司を、それ以上の速さで足下に蹴り込んで修司を転倒させる高速の戦士が。

 修司は思わず足払いされて転倒しそうになるが、斉木楠雄から会得した超能力で地面に上半身が触れる事無く、体勢を立て直して再び直立する。

 そんな修司を視認して、修司を足払いで転倒させようとした009が立ち止まる。その009の横には、フォルゴレとキャンチョメの姿も確認できた。

「修司くん……! 君は私達の知らない所で、陰ながら多くの弱き人々を救おうと懸命に頑張っていたのは知ってるよ。けれど……暴力だけで全てを解決しても、後に残るのはそれこそ虚しさだけだ! これ以上の暴力は、それこそ何も生み出さない……」

フォルゴレは修司が裏方で様々な活動を暗躍して二次元人を含む多くの人命を救ってきた功績を挙げるが、同時にそんな暴力では虚しさしか残らないと告げる。が。

「お前が言うと説得力あるな、フォルゴレ。かつて若かりし頃、暴力に明け暮れ、両親からも絶縁されたお前だからこそ言える事……だが、世の中とは所詮、己の右頬を叩かれたら相手の頬を叩き返さなきゃ、何の罰も叱咤も意味を成さない虚しい現実。何より俺は暴力で全てを消そうとしている訳ではない……真っ白な桃源郷に皆を導く為、全ての力を無力に変えているだけだ」

 かつて今の姿からは想像できないほどの不良風の出で立ちで、荒んだ心で暴力に生きる日々を送ってた為に両親からも猟銃を突き付けられて勘当された過去を持つフォルゴレの問い掛けに、修司は彼の心意を受け取りながらも同時に世の理と己の真情を説き返した。

 修司は此処でテレポーテーションで移動して009とフォルゴレ達の背後に回ろうとするが。

「!?」修司の瞬間移動は何故か発動しなかった。

 不思議に思う修司が視線だけを動かして辺りを見渡すと、修司の視野に脳を強改造されて天才的知能と超能力を会得したイワンこと001が入った。

「……なるほど、001の超能力による脳波が、俺の超能力を阻害している訳か……」

(修司くん、全ての争いを鎮めるために、ミラーガールを殺めて全ての二次元人を滅ぼすなんて……悲しすぎるよ)

 001の仕業だと瞬時に理解する修司に、001はテレパシーで修司に訴え掛ける。

 そんな超能力を封じられた修司は、まず封じられた超能力を取り戻す為に001を抱いている003を狙った。

「003!」

 愛する003の危機に、009が加速装置で高速移動して修司に駆け寄る。

 修司は駆け付ける009を前に、日本刀で斬り込もうと攻撃。だが009は修司の斬撃を加速装置で見極め、高速移動で修司を撹乱し出す。

 しかし修司も新世代型から会得した能力の一つ、オーバーロード能力で高速移動する009の動きを辛うじて目で捉えてた。

(クッ……修司の高速移動する物体を捉えるオーバーロード能力は、009にとっては厄介な能力……だが……!)

 修司と009の格闘を目視しながら熟考する清麿には、一つの策が。

 此処で清麿は修司に聞かれる覚悟で009に向かって叫んだ。

「009! そのまま加速装置で修司を撹乱し続けるんだ! そうすれば可能性が一つ見出せる!」

「! 分かった!」清麿からの助言を、009は素直に受け止めた。

「ど、どういう事なのだ清麿? 今の修司殿の前では、高速移動は無意味なのでは?」

 オーバーロード能力で高速移動する物体を捉えられる修司に、加速装置での移動は無意味なのではと思ってるガッシュは思わず清麿に問い掛ける。

 

 そして修司の周囲で高速移動し続ける009の動きを、修司がオーバーロードで捉え続けていると異変が起こった。

「うっ……!?」突然、修司が手で頭を押さえて苦痛に喘ぐ。

 それを見た皆は動揺するが、清麿だけはこの状況に理解していた。

「やっぱりだ! オーバーロード能力は酷使し続けると体内の糖分が乏しくなって、最終的に頭痛などの副作用が起こると聞いていた……これで修司はしばらくオーバーロード能力は使えない筈だ!」

 オーバーロード能力を酷使してしまった修司の現状を把握する清麿の説明を耳にし、修司自身も納得していた。

「そうか……会得したばかりで能力が持つ弱点まで考えてなかった。まさかオーバーロード能力の使い過ぎで苦しむ羽目になるとはな……」

 自らもオーバーロード能力を酷使してしまった欠点を理解する修司。

 そんな修司を魔物の軍勢とサイボーグ戦士たちが取り囲み、一斉に攻めようとする。

 が、修司は頭を押さえていた手をすぐに地面に押し当てて、手から闇の波動を流出させる。

「うおっ!?」「な、なんだなんだ!?」

 修司の闇に引きずり込まれ、007やビクトリーㇺが足下の闇に呑み込まれていく。

 そして自分を取り囲む面々を闇に引きずり込んだ修司は、周りの皆を引きずり込むと即座に解放して皆を闇と共に噴出させる。

 007やビクトリーム達を闇に引きずり込み、そして一気に黙らせた修司は、この闇で一時ばかし001の超能力を無力化させて自分の超能力を使える様にした。

 そして修司は、001と彼を抱っこしている003の方へ超能力の波動で攻めた。

「!!」

 001は何とか使える範囲内での超能力で修司からの念力を防ぐ為バリアーを張ったが、修司はそれ以上の力で強引に念力の壁を突破して001と003を押し返した。

「きゃあっ!」修司の念力で吹き飛ばされる001と003の二人。

 そして地面に転げ回る003に、009が慌てて駆け寄る。

「003!」

 009が駆け付けると、なんと003に異変が見受けられた。なんと彼女の目と耳から鮮やかな血が涙の様に流れていたのだ。

「ふ、フランソワーズ!」

 目と耳から鮮血を流す003を見て001は驚愕した。

 そして001は003を抱き寄せ、その場に他のサイボーグ戦士たちも駆け付けると同時に、001は修司に問うた。

「003に……フランソワーズに何をした!?」

 やや感情的になって修司に問い掛ける001に、修司は平然と虚無の表情で返答した。

「003、フランソワーズ・アルヌール……彼女の能力が、如何に本人にとって苦痛なのかを理解した上で、改造された超視力と超聴力を潰したまでだ」

「彼女の為にやった事だって……!」

 修司の返答を聞いて004が怒りを露わにすると、修司は変わらず平然と答え続ける。

「そうだ。003、フランソワーズ・アルヌールはお前たち同様、望まない力を手に入れた……爆音や衝撃音などの激しい戦闘音だけでなく、戦場で散りゆく命が泣き叫び、苦しむ姿や音声までも明確に捉えてしまう。俺は、その苦しみを拭う為にも003の超視力と超聴力を超能力で潰しただけだ」

「要するに……修司くん、君は斉木楠雄から得た超能力で003の目と耳を潰したって訳か!」

 修司の返答を聞いて、普段は穏やかな008も睨みを利かせる。

「003だけじゃない、お前達も望まない改造を受けて、今の様な戦う為だけの戦鬼たる存在に成り得てしまった……俺自身も人間兵器として、望まない争いにどれだけ駆り出された事か。もう正直、お前達の苦しむ姿なんて見るに耐え兼ねない。故に、俺が皆を揃って、争いのない真っ白な桃源郷へと導きたいだけなんだよ」

「勝手すぎるぜ、修司! みんなを争いのない世界に導く為に、アッコちゃんや他の聖龍隊士の命まで奪うに飽き足らず、フランソワーズの目と耳まで潰しちまうなんて……!」

 修司の話を聞いて、002が修司に怒鳴り散らす。

 が、修司は冷然とした表情を変える事無く佇むばかり。

 そんな修司に、目と耳を潰された003が呟き出す。

「し、修……」「! フランソワーズ……」

 苦痛に揺らぎながら修司に何かを伝えようとする003に、001が悲痛な声をかける。

「……修司、くん……あなたは、普通の人よりも感受性が高く、他人の苦痛を自分の苦痛の様に受け取れると、アッコちゃんから聞いているわ……。だからこそ、この世の多くの人々が未だに争いという過ちを繰り返すのを黙って見てられず、こんな大戦を引き起こしてしまったんでしょう……?」

「………………」

「で、でも……あなたがどんなに私の目と耳を奪っても……私には感じる。修司くん、あなたがこの世界の誰よりも苦しんでいる事……! もう、自分を苦しめないで……追い詰めなくていいのよ……!」

「フランソワーズ……」

 黙然と話を聞き入れる修司へ切実に訴える003の悲痛な心中に、001も彼女と同様心が締め付けられそうだった。

 だが、そんな風に切実に修司の悲しみを訴える003に対して、修司自身は平然と話し返す。

「……俺だけじゃない。お前も、お前達も……何よりも、この世界で生きている多くの者たちが今なお苦しんでいる……! この苦しみの連鎖、負の連鎖を止める為にも、俺は立ち止まってはいけないんだ……!」

 さらに修司はサイボーグ戦士たちにこう告げた。

「009、お前達は何の為に戦い続ける? 名も無き者、戦いを忘れた者たちの為に、戦鬼と畏怖されながらも戦い続けているのだろう。だが、その戦いの先に、本当に平和が訪れると思っているのか? 人類の歴史は繰り返す……そして人類の歴史は、争いの歴史そのものだ。そんな人類の為に戦い続けて、本当に平和な世界が築けると思っているのか?」

「そ、それは……」修司からの問いに口を濁してしまう009。

「お前達がどれだけ戦い続けようと……夢や理想を語ろうと、現実は変わらない。俺は、今までの二次元人と三次元人の関係を見てきて、それが嫌というほど理解させられた。だからこそ俺は皆を桃源郷へと導きたいんだ」

『………………』黙り込んでしまうサイボーグ戦士たち。

 すると修司は、次に自分を戦意溢れる眼差しで睨み付けている高嶺清麿とガッシュ・ベルの方へ話を振った。

「清麿、お前には確かアンサートーカー(答えを出す者)の能力があった筈だな。どうだ? 今の俺に対して、次にどんな一手が効くか解るか?」

「……いいや、解らない」修司からの問いに清麿は正直に答えた。

 すると修司が虚無の眼差しで清麿を見詰めながら彼に語り明かした。

「それはお前のアンサートーカーの能力も、俺の闇が極力封じているからだ……と、言いたいが、それだけじゃない。今の俺は正しく、混沌としているこの世界そのものと同じだからだ。お前のアンサートーカーの能力をもってしても、世界を平和に導ける答は出せる筈もない。いや、むしろ………………答なんてないんだ」

「………………!」修司の説きに一瞬動揺する清麿。

「どんなに天才的知能をもってしても、どんなに学識があろうと……争いを起こす者、すなわち人間が平和を築ける筈がないんだ。いくら性能と知識に経験があれば答を導き出せるアンサートーカーであろうと、世界を平和に導ける……そう、俺がこんな過ちを犯さなくても平和にできる答なんて………………最初っから存在しないんだよ」

 如何に優れた知能やアンサートーカーであろうと、争いを起こす人間が平和を築ける訳が無いと説く修司。清麿のアンサートーカーであろうと、世界を平和にする答を導く事はできないと明言する修司。

 そんな修司の明言に、清麿はすっかり言葉を失くし、口を噤んでしまう。

 しかし、そんな清麿の肩に手をかけ、彼に言葉無き激励をかける者たち。そう、仲間達の存在が清麿を奮い立たせた。

「……例え、オレのアンサートーカーの能力でも世界を平和にできなくても……その夢を、理想を共に追い求める仲間や友がいる限り……!」

 清麿はガッシュの力の源である魔本を握り締めて言い放った。

「オレたち二次元人の歩みは止まらない!!」

 この清麿の宣言を、彼らの背後で聞いていた多くの魔物の軍勢や聖龍隊士は雄叫びを上げてより一層一致団結した。

 

 そんな情景を目の当たりにして、修司は冷然と手から闇で作った日本刀を現出させて戦意を示した。

「……そうか、答が無くても突き進むというのか……なら、俺も同じく立ち止まる訳にはいかない。全てを終わらせ、皆を安寧へと導くのみ……!」

 そう刀を構えて修司は臨戦態勢に入った。

 そんな修司を前に、清麿とガッシュ達に並んで009たちサイボーグ戦士も再び戦闘に突入しようと身構える。

 

 平和とは何か?

 その平和を築く事は、果たして人間には可能なのか?

 争いという歴史ばかり繰り返してきた人間に、平和が実現できるのだろうか?

 答のない未来を賭けて、いま小田原修司は過去(かつて)の友と死闘を繰り返す。

 

 

 

[消滅するチカラ]

 

 平和への答を導く事ができない故に起こってしまった大戦。

 その過酷な戦況の中でも果敢に小田原修司へと挑んでいく猛者たち。

 魔物の軍勢とサイボーグ戦士たちが戦前で活躍していた頃。

 

 修司によって目と耳を潰されてしまった003は戦前より離脱。それでも未だに修司の悲痛な思いを汲んで悲しみに暮れる003の意思を受け継ぎ、ガッシュや清麿そして009達は戦い続ける。

 魔物アースからの剣戟を受け止め防ぎつつ、同時に004の右手から射出されるマシンガンの弾を悉く日本刀で弾きながら応戦する修司。

 戦前で戦うガッシュ達魔物は、パートナーである人間達と共に彼らの心の力を魔本を通じて魔力へと変換し、サイボーグ戦士達と共に戦っていた。

 しかし修司に如何なる術を繰り出そうと、修司は悉く技を回避するか自らの闇で無力化してしまうばかり。

 次第に魔物達と共闘している人間達の心の力が弱まり、清麿達の呼吸は荒くなっていた。

「き、清麿、大丈夫か……!?」「恵、みんな……?」

 ガッシュやティオたちが心配する中、清麿達は若干無理をしながら答えた。

「だ、大丈夫だ、これぐらい……」

 だが、明らかに人間達の顔色に疲労が見えている事は明確だった。

「ナゾナゾ博士……」

「キッド、大丈夫……此処でへばっていたら、死んでいった仲間達に顔向けできん!」

 パートナーの魔物キッドに、ナゾナゾ博士は息を荒くして強く返答する。

「シェリー、まだイケるか? ……修司相手に手ェ抜くなんて真似は止した方がいいぜ」

「解ってるわよ、ブラゴ……あなたと良く死闘を展開している修司が相手である以上、手を抜くなんて真似できっこないわ」

 魔物ブラゴからの問い掛けに、パートナーのシェリーはよろめく足下を奮い立たせて修司の方を向く。

 そんなシェリーと同じく、修司の方へ眼光を向けるブラゴに、修司は戦闘中にも関わらず言葉を掛けてきた。

「ブラゴ……昔はお前とカメモン、三人でよく仕合をしたな。だが、そんな昔話も、今や幻想の様だ……」

「修司……! オレはお前とまだまだ闘いたいと思ってた……! 人間で、俺と肩を並べて闘い合えるのはお前だけだった……! それが、こんな事になるとはな……!!」

 修司からの言葉に、ブラゴは人間では数少ない自分と同等に渡り合える修司が大戦という悲劇を起こした経緯に怒りや動揺と言った激情を口調から発していた。

 そんな修司は目の前で自分と対峙する魔物の軍勢と、魔物達と共闘している人間達に問い掛ける。

「清麿、お前達は何の為に戦っている? もう千年に一度の戦いは終わり、魔物も人間も安らぎが待っていたというのに……その安らぎを捨ててまで、俺と戦う理由が何処にある?」

 これに対して清麿が強く主張した。

「解り切っているだろ……! 修司、お前さんが奪おうとしている大勢の人たち、いや、生命の未来を……! オレ達は全力で死守するまで!!」

 この清麿の主張を聞いて、修司はポツリと零した。

「やはり、そう来るか……お前が大海恵からの告白を断り、蔑ろにされてた頃から自分を慕ってくれた水野鈴芽を選んだ様に……そう、俺への抗戦を選んだ訳か」

『!?』

 この修司が零した台詞を聞いて、ガッシュたち魔物にそのパートナーの人間達も驚愕。そして大海恵は動揺からなのか、目を丸くて驚いていた。

 その一方で清麿は、過去の自分の選択に後悔は無いかのように平然と修司からの言葉を受け止めていた。

『ええーー!?』

「どどど、どういう事なのよ恵! 告白って……清麿にしてたの!?」

(な、なんでこんな場面で言っちゃう訳なの、修司くん……)

 驚愕してしまうガッシュやティオを横目に、恵は何ゆえ修司がこの場で言ってしまったのか赤面しながら戸惑っていた。

 そして修司にそう問われた清麿は、少し呼吸を整えてから修司に言った。

「……なんで今それを言うのか、オレのアンサートーカーでスグに解る。修司、あんたは水野とアッコちゃんを重ねているからだろ」

 清麿の言葉に、修司は答えた。

「そうかもしれないな……俺が何ゆえ、お前が恵ではなく鈴芽を選んだのか。それが少しは理解できるから、ついこの場で話してしまったのかもしれないな」

 修司は清麿と向き合ったまま、皆の前で自分と清麿を重ねて語り始めた。

「鈴芽は俺にとってのアッコに近い存在だ。……清麿、お前がまだガッシュと出会う前、お前は天才児として周りから妬まれ、嫌われていた存在だった。だが、その頃から鈴芽はお前を慕い、周りからどんなに蔑視を向けられようとも最愛の異性である清麿、お前を慕う事を忘れなかった」

「………………」

「……それと同じで、アッコも俺がどんなに暴力などの負の感情に呑み込まれようとも……どんな時も、俺を最後まで慕い、信じてくれた。清麿、お前が鈴芽を選んだ理由とほぼ同じじゃないか?」

 修司の語りを聞いた清麿は、険しい顔で答える。

「……そうだ、オレは……周りから疎外されてた頃から俺を慕ってくれた水野の気持ちを無視する事はできなかった。だからこそ、オレは水野を選んだ……」

「………………」

「……だが、それなら小田原修司! あんただって分かってる筈だ。オレにとって水野が昔から自分を慕い、信じ、思ってくれてた様に……アッコちゃんだって、あんたを最後まで思ってくれてた事実を! それなのに、なぜアッコちゃんを……!」

 清麿からの問い掛けを受けて、修司は自分の過去の心境とそれを取り巻く現状を語り出した。

「そうだ……アッコはお前にとっての水野鈴芽と同等に、愛する異性である俺を最後まで慕い、信じてくれた。だが、アッコの鏡の様に美しい瞳に映る俺は、相も変わらず心のない醜いバケモノに総じて変わりなかった」

『………………』修司の話に耳を傾ける皆々。

「人として産まれながらも、人として必要な心を持つ事が許されない禁忌の存在……それが鬼神と畏れられる俺そのものだった」

 愛してくれる異性がいながらも、心のない自分は変わる事のないバケモノだと自負する修司は、さらに衝撃的な話を始める。

「無数の死を与える為に……俺と言う人間兵器は存在していた。人間達が仕出かしてきた行いを、歴史を繰り返す様に……心無いバケモノが人を真似て、人に成ろうとするように」

 人類が繰り返してきた争いや殺戮という歴史を、心無いバケモノたる己が人間に近付こうとするように、修司は戦いの中でしか生きられなくなっていた。

「そして、そんなバケモノに与えられていたのは……鬼という畏敬の名。世界は……心無いバケモノという障害者を兵器として利用する道を選んだ」

 そんな修司の行く末は、鬼神という畏敬の名と共に与えられた人間兵器としての道。そう修司からの告白に清麿たちは愕然とした。

「その後、たった十数年の間、殺戮の時間の中で過ごしてきた俺の中には数々の俺が生まれた……人を憎む俺、人を恐れる俺、人に焦がれる俺、その全てが俺であって俺でなかった。だが、そんな混沌とする渦中の中でも俺と言う自我を保ってくれてたのは……他でもない、アッコたちお前ら二次元人だった」

 与えられた殺戮の時間の中で修司の中に芽生えた、数多くの修司の真情。そんな混沌とする自分の中に存在する自我を平静に保ってくれたのは、他でもないアッコたち二次元人だったと説く修司。

 そして、己の真情を、過去を打ち明けた修司は更に戦前の清麿や009達に告げた。

「全ての世界から一切の争いを無くし、全ての人を幸せにする事が、お前たち二次元人から心を与えられた俺の夢だった。……だが、所詮、人間というのは互いに競い合うという形でも争い続ける醜い生き物。その真実を知った今では、結局その人間の罪を抑制する事しか俺にはできない」

 競争という形でも醜く争い合う人間の真実を知った修司にとって、その罪を抑制する形で全てを無に誘わなければならないと説き明かした。

 一連の修司の説明を聞いて、清麿は左拳を強く握り締めては修司に問い質した。

「それじゃなんだってんだ……! オレがガッシュ達と巡り会ったのも……オレやあんた、二次元人と三次元人が出会ったのも……全部、全部、過ちだったとでも言うのか!?」

 出会いこそ過ちだと説く修司に反発する清麿の眼光に続き、他の魔物とパートナーの人間達も同様に修司を睨み付けた。

 そんな戦前の皆々に、修司は冷静に答えた。

「そうだ、交わってはいけなかったんだ。俺とお前たち……二次元人と三次元人は、決して交わってはいけない種族だったんだよ」

 修司の冷淡な返答を聞いて、蒼然とする戦前の皆々を横目に、清麿は修司との問答を繰り返して発覚した事実を突き付けた。

「……なるほど、そういう事か」「?」

 突然の清麿の発言にきょとんとする修司に周りの皆々。すると清麿は修司に面と向かって言い放った。

「オレ達と問答し合うという事は……あんたは斉木楠雄や琴浦春香から会得したテレパシーをまだ使いこなせていない証拠! だからオレ達に色々と問答して反応を見たかったんじゃないのか?」

 険しい顔で問い詰める清麿に対して、修司は平然と虚無の表情で話し返した。

「それは少し違うな。確かに俺が会得したテレパシーを始めとする能力を、俺自身まだ完全に使いこなせていないのは事実だ……だが、お前達に問い掛けているのはそれとは大きく意味が異なる」

『???』

 修司の返答に誰もが険しい顔つきできょとんとしてると、修司は述べ始めた。

「お前たち、俺ら三次元人に答を導き出そうとする可能性を持った二次元人……その二次元人ですらも完璧な答、平和への答を導き出す事ができない現実を、俺が改めて教授しているに過ぎない。誰もが平等に、そして衝突する事なく共存できるという夢幻の如き、叶う筈のない理想を追い求め続ける二次元人達に……俺が真説を説いてやってるに過ぎないんだ」

 世の理を、真実を説き明かしているだけに過ぎないと返す修司の言葉に苛立ちを覚える清麿。

「何もかも分かり切った事ばかり言いやがって……! 聖龍隊で最も人生経験が豊富だと抜かしていただけに、言い訳も達者だな」

 自分だけが世の苦しみを、真理を知っているかのような口ぶりの修司に、静かに怒りの感情を表にする高嶺清麿。

 

 そして清麿とガッシュを先陣にした人間と魔物の軍勢にサイボーグ戦士たち戦前の面々が、修司と再び戦おうとしていた矢先の事、異変が起こった。

「……? き、清麿!? この光は……?」「! こ、これは……!?」

 いざ修司と戦おうとしていたガッシュと清麿は自分達の体に起こった異変に気付く。

 それはガッシュの小さな手からも、清麿の魔本とそれを持つ腕からも蒼く淡い光が発光し、光の粒が舞い上がる様に上昇していたのだ。

 そして、それはガッシュと清麿だけでなく他の魔物と人間達にも同様の現象が現れていた。

 全員この状況に目を丸くし戸惑っていたが、この状況にアンサートーカーの清麿と、ガッシュの双子の兄ゼオンのパートナーである同じアンサートーカーのデュフォーが呟いた。

「これって、まさか……!」「まさか…………心の力?」

 なんと魔物達の術の原動力である人間の心の力が漏れていると説く清麿とデュフォー。

 二人の言葉を聞いて周りの魔物と人間達は驚愕するが、そんな混乱の中で修司が発した。

「お前達の心の力もまた、魔物にとっては魔術を使用する際の力の根源……すなわち特殊能力の源だ。そして今、特殊能力者の始祖であるアッコの死の影響がようやくお前達にも現れたという事だ」

「! アッコちゃんが死んだから、ボク達の心の力が失われ始めているって事か!?」

 修司の説明を聞いてフォルゴレが一驚すると、修司は冷淡に説いた。

「その通り……そして行く行くは魔物達の潜在能力でもある魔術は完全に使えなくなり、最終的には存在そのものが意味を失くす。つまり…………死あるのみだ」

 最終的には魔物達の魔術は完全に使えなくなり、最後には存在そのものに意味が無くなり、死に直結するのだと説く修司の説明に愕然とする一同。

 だが、この絶望的状況にも清麿は諦めなかった。

「……なら、オレ達の力が無くなる前に……あんたを倒すまでだ!!」

 そして清麿は魔本を開いて、ガッシュに指示を出す。

「ガッシュ! 修司に狙いを定めろ!!」「ウヌ!!」

 すると清麿が提示する魔本が通常よりも強く輝き出した。

「コイツは……! クリア・ノートを倒した時にも出た、金色の光……!」

 この金色の光を近くで見たガッシュの兄ゼオンは、大声でその場の魔物とパートナーの人間達に呼びかけた。

「全員! ガッシュと清麿たちに思いを集中するんだ!! 皆の思いが力となり、ガッシュと清麿の力となる!!」

 このゼオンの言葉に呼応され、魔物と人間達は最後の希望とガッシュと清麿に全てを委ねた。

 そして全員がガッシュと清麿に向かって祈る様に、心の力を送ると清麿が持つ魔本は更に光を強める。

 皆からの思いを受け取り、ガッシュと清麿は技を繰り出そうと、清麿は呪文を強く唱えた。

「シン・ベルワン・バオウ・ザケルガ!!」

 通常よりも更に巨大な龍となった雷の龍が、咆哮を上げて修司へと一直線に襲い掛かる。

 その雷の龍を防ごうと、修司は前方の闇の壁を張って防御しようとするが、清麿とガッシュだけでなく他の多くの魔物や人間達の力も凝縮されて強化されたバオウザケルガを前に、修司の防御術は簡単に突破。

 強化版バオウザケルガは、そのまま修司の上半身を完全に喰らい尽くした。

 

 魔物と人間達の力を受け取り、強化版のバオウザケルガを修司に直撃させたガッシュと清麿。

 修司の上半身は完全に消滅し、亡骸はそのまま背中から地面に倒れていた。

 そんな修司の亡骸に近付き、変わり果てた修司の姿を視認するガッシュと清麿の二人。

「清麿……」「………………」

 自分達の最大の理解者でもあり友でもあった修司の命を奪ったのは自分達なのだと思い知る二人。

「清麿くん……」「ガッシュ……」

 そんな落胆する二人に、後方から大海恵とティオが声を悲し気に声をかける。

 すると落胆していた清麿が顔を上げて、気高い面魂で皆の方に振り返った。

「大丈夫だよ、みんな。これでこの戦争は終わったんだ。これしかなかったんだよ」

『………………』清麿の言葉に、皆は沈黙するばかり。

 修司を倒す、殺すしか戦争を止める術は無かったのかと今さらながらに後悔の念に苛まれる一同。

 そんな皆を励ます様に、清麿は明るい素振りで言った。

「さあ、修司が死んだ今、どうやって檻の中の新世代型達を解放するか検討しないと……」

 清麿は戦争が修司の死で終わった今、未だに檻の中の新世代型達を如何に解放するか熟考しないといけないと皆に説き回る。

 そんな清麿の説き掛けに皆は困惑していたが、ガッシュも清麿に続いて魔物たちに語り掛ける。

「さあ! 負傷者は早く治療を受けさせるのだ! 治療班、今すぐ怪我人の介抱を……」

 と、清麿とガッシュが並んで目の前の皆々に説いていた正にその時。二人の背後に立ち尽くす影が、戦闘で舞い上がる硝煙の中から浮かび上がる。

『!!』

 皆が清麿とガッシュの背後に立ち尽くす影に気付いたのも時すでに遅し。

 清麿とガッシュが背後のそれに気づいて振り向いた瞬間、二人の体を巨大な刃が貫通した。

「が、ガッシュ……!」「き、清麿……っ」

 腹部に刃が貫通した清麿、首元の背面から下半身まで刃が貫通したガッシュ・ベル。

 二人に巨大な刃が貫通したのを目の当たりにした魔物と人間達は騒然。

「ガッシューー!!」弟ガッシュの事態に兄ゼオンが絶叫する。

 清麿とガッシュの背後から二人を巨大な刃で突き刺したのは、他でもない死んだと思われていた修司本人だった。

「流石だよ、ガッシュ、清麿。クリア・ノートを倒した時と同じように魔物達の力を集結させて発動させたシン・ベルワン・バオウ・ザケルガ……流石の俺も死んだと思ったよ」

 そう語り掛ける修司は、ガッシュと清麿に突き刺した闇の刃を消して、力尽きたガッシュと清麿を地面へと倒れ込ませる。

 この時の修司の消滅した筈の上半身を目撃して、戦前の魔物達とサイボーグ戦士たちの戦いを見守っていた赤塚大作が焦燥の表情で声を荒げた。

「ウソだろ……!? あ、頭や心臓がある上半身が……消し飛んだ上半身も、傷と同様……完全に、再生しちまうってのかよ!!」

 修司はガッシュと清麿の最大攻撃を受けて消滅した上半身を、至高の再生能力で再生させて、皮膚下の筋肉組織がむき出しの上半身をしていた。

 そしてガッシュと清麿を刺殺した修司の再生してなかった皮膚も、次の瞬間には瞬く間に再生していき完全に元の状態へと戻ってしまった。

 完全に再生した挙句、ガッシュと清麿を刺殺した修司を見て、魔物達と人間達は修司に激しい感情を差し向けていた。

 そんな者たちを視界に捉え、修司は平然と彼らに言い渡した。

「消えゆく力の中で、守り切れなかった王と友の死を直視した者達よ……これが、変え様のない現実(いま)そのものだ。ただ無情に大切な命が消えゆくだけの世界に何の意味があるのだろうか……目を覚ませ、この醜い現実(いま)を変える手段は最早存在していない。悲運な運命を避ける唯一の手段は、そう……真っ白な虚無という名の桃源郷だけだ」

 そう冷淡と言い渡す修司の言葉を聞き入れて、魔物と人間の軍勢は抑えていた感情を一気に爆発させて一斉に修司へと群がった。

 怒号が飛び交う中、修司はガッシュと清麿を刺殺した巨大な二対の刃を手に、一斉に襲い来る軍勢へと斬り込んでいく。

「リィエン、技を使わせてくれ……!」「うん……!」

 ウォンレイとリィエンの二人は、涙を流しながら修司に魔術を繰り出そうと身構える。

「シン・ゴライオウ・ディバウレン……!!」

 延々と涙を流しながら呪文を唱えるリィエンの思いを受け取り、ウォンレイは修司に強力な技を打ち出す。

 だが、修司はウォンレイの技を素早く横へと回避すると、そのままウォンレイとリィエンの二人へ斬りかかる。

「! リィエン!」「ゴウ・レルド!」

 技を避けれられて一瞬戸惑うウォンレイであったが、素早くリィエンに指示を促した事で、リィエンは呪文を唱えてウォンレイに大きな盾を装備させる。

 ウォンレイは大きな盾で修司の二刀流の刃を防ごうと構えたが、修司の闇の刃はウォンレイが装備している盾を難なく切断してウォンレイ自身を斬り付けた。ウォンレイは盾を装備していた片腕と胴体を切り裂かれて片腕を切り落とされてしまう。

「ウォンレイ!」

 片腕を切り落とされて胴体にも致命傷を受けたウォンレイを間近で捉え、リィエンは絶叫。そんな彼女を修司は次の標的として捉える。

「リィエン……!」

 相思相愛のリィエンを護ろうと、ウォンレイは片腕を失った体そのものを盾にしてリィエンに抱き着く様に彼女の盾となった。

 だが、修司が振るった刃はリィエンを護ろうとするウォンレイをも貫通する斬撃を繰り出し、結果ウォンレイごとリィエンは切り裂かれて両者同時に致命傷を負った。

「り、リィエン……!」「ウォンレイ……」

 互いに友を救えなかった悲しみの涙を流しながら、お互いの悲愴に満ちた顔を見詰めながら横たわるウォンレイとリィエン。

 地べたに横たわり絶命する二人を見て、魔物と人間達の絶望は更に色濃くなる。

「ウォンレイ! リィエン!」「……!」

 二人の名を天に向かって叫ぶキャンチョメに、ガッシュや清麿に続いて仲間が戦死した現実に打ちひしがれるティオ。

 それからも自分に群がってくる魔物と人間の軍勢に修司は容赦なく二刀流の刃を振るい続ける。

「ぐはっ」「キッド!」

 小柄なキッドにも無慈悲に刃を振るい斬り付ける修司を見て、ナゾナゾ博士は無情にも三度目の愛する者を失う悲しみを受けた。最初は医者である自らの手で救おうとしたが救えなかった孫、そして百人の魔物の戦いでキッドを失った悲しみ、そして今修司に斬り捨てられたキッドの死による絶望。

 そんな修司の暴挙を止めるべく、そして何よりも魔物と人間達の軍勢に加勢する為に駆け付けるサイボーグ戦士の009こと島村ジョーが修司の前に立ちはだかった。

「……ジョー……」

「修司くん……! 君にはもう、人としての心は残ってないのか……!!」

 修司に涙目で問い詰める009からの質問に、修司は虚無の表情で答えた。

「言った筈だ、それとも忘れてしまったのか? ……俺は昔の、そう二次元人達に出会う前の俺に戻っただけだ。産まれながらに心が無い、バケモノという名の欠陥品である俺自身に……!」

 その修司の返答を聞いて、009は遂に修司を殺めてでも彼を止めようという決意が生まれた。

 そして加速装置による高速移動で修司と闘い出したのだが、修司は慌てる事無く冷静だった。

 すると修司は超加速で移動する009の動きを完璧に捉えて、彼の両脚を狙って刃を振るった。

「ッ!」

 修司が振るった刃は見事に009の両脚を斬り付け、両脚を傷付けられた009は同時に加速装置が働くなってしまう。

 両脚を傷付けられ、動きを奪われた009に修司は冷徹な言葉を掛ける。

「既にオーバーロードの酷使による頭痛は、清麿たちと問答している間に治まっている。もうお前の加速装置での高速移動は簡単に捉えられるよ、ジョー」

「ッ……!」

 両脚を傷付けられて自慢の高速移動を封じられただけでなく、使用不能に陥っていたオーバーロード能力も再使用できると告げられて口元を歪ませる009。

「ジョー!」

 そんな009を助けるべく、002ことジェットが両足に内蔵されているジェットエンジンを蒸かして空へと上昇し、上空から修司を光線銃で狙撃する。それと同時に全身武器の004が右手のマシンガンを連続発射させて修司を銃撃。

 だが、上空からの002の光線銃での狙撃と、前方からの004からのマシンガンでの連射を浴びても冷然としている修司は、ゆっくりと歩き出すと前方の004へと歩み寄る。

「くっ、なら……!」

 すると修司を接近させまいと004は両膝を前へ突き出す様にしゃがんで、両脚に内蔵されているマイクロミサイルを発射。修司にマイクロミサイルを迎撃した。

 舞い上がる硝煙の中に一瞬ばかり消える修司に、004は(やったか?)と内心焦燥に駆られる。

 と、次の瞬間。その硝煙の中から漆黒の斬撃波が飛んできて、004の胴体にバツ印の傷を浴びせた。

「004! くそっ」

 修司からの斬撃を受けて悶絶し、倒れる004を見下ろして002が急いだ瞬間。

 超加速で地上へと舞い戻った002を修司は刃を軽く振り払った程度で外す事無く斬り付けて、002の改造された体を切り裂いた。

「ッ……!」

 一瞬で斬り付けられた002は何が起こったのか理解する前に斬られてしまい、そのまま地面へと反動で墜落してしまう。

「確かお前にも加速装置が付けられていたんだったな、002……だが、所詮は009の加速装置の旧式。009の動きに比べたら、お前の超加速は今の俺には目をつぶってでも捉えられる」

 002に内蔵されている加速装置は009の旧式。故に既に009の動きを捉えられている修司にとって002の超加速は目を閉じてでも補足できる動きなのだという。

 

 消滅していく力の中でも諦めを知らなかった猛者たち二次元人の信念。

 だが、修司が得た不死性はその僅かな希望をも打ち砕いて、最後まで信念を貫き通した二次元人達を死に追いやった。

 最大の戦力を失った魔物と人間達の軍勢は、深い悲しみと絶望に苛まれながらも修司に挑むが、多くの戦士たちを相手に修司は止まらなかった。

 そして魔物と人間達の軍勢と共闘するサイボーグ戦士たちですらも、修司の驚異的な力の前に次々と散っていく。

 

 遂に二次元人達の能力が、ミラーガールの死によって消滅していく中、また彼らが希望を見出せる時が果たして訪れるのだろうか。

 

 

 

[広がる絶望の波紋]

 

 最大呪文で修司に攻撃をし、修司の上半身を消失させた高嶺清麿とガッシュ・ベル。

 だが、それでも修司は死なず、驚異的な再生力で復活し、清麿とガッシュを刺殺。

 清麿とガッシュを失った悲しみと絶望そして怒りで感情的になった魔物と人間達の軍勢は、一斉に修司へと群がる。

 しかし修司は清麿とガッシュを刺殺した二刀流の刃でウォンレイとリィエンを、そしてキッドをも殺めて、彼らの仲間達に追い打ちをかける。

 修司を殺めてでも止めようとサイボーグ戦士たちも加勢に加わるが、009は両脚を斬られて加速装置が使えなくなり、それに続いて004と002の二人も戦闘不能に。

 この惨劇の果てにこそ、修司は夢も希望も争いも存在しない桃源郷が待っているというが、果たして。

 

 ガッシュや清麿だけに飽き足らず、ウォンレイとリィエン等の多くの仲間達をも斬り捨てていく修司の暴虐に魔物と人間達の軍勢は果敢に挑んでいく。

「メルっ……」「う、ウマゴン……!」

 紅蓮の鎧を装着するウマゴンことシュナイダーに搭乗して大地を駆け抜ける機動力で修司を翻弄していたサンビームだったが、ウマゴンに搭乗した状態で修司にウマゴンと同時に斬り付けられて戦闘不能に陥る。

「シン・ドルゾニス」「うおおおッ!!」

「シン・バベルガ・グラビドン」「修司ィ!!」

 両手をドリル状のエネルギーを纏わせて修司を貫こうとするグスタフとヴィンセント・バリーの二人に、超重力の術で修司を攻撃するシェリーとブラゴの二人。

 これに修司は両手をドリルの様に変化させたバリーの攻撃を二刀流の刃で弾いて、バリーを押し返すと、そこにブラゴの超重力が圧し掛かり修司に重力が襲い掛かる。

 だが修司はブラゴの重力の術を自身の闇で無力化させて平然と歩もうとしている所に、ブラゴは術の力を借りずに修司と真っ向から対決する。

「ブラゴ……」

「修司……! 惜しいぜ、ホントに惜しいぞ……!! お前とこんな形で決別しちまうなんて……!!」

 修司とブラゴが向き合っていると、そこに先ほど修司に弾かれたバリーも息を切らしながら話し掛ける。

「小田原修司……あんたが力を追い求めていたのは、単に弱い自分が憎かっただけじゃない筈だ。弱者を守り、弱者を救う……そんな存在へと成り得たかったからこそ、オレ達が認める最強の存在へと変われたんじゃないのか……! そう、あのミラーガールの存在のお陰で……!!」

 バリーは修司が強く変わったのは、ミラーガールのお陰ではなかったのかと問うと、修司はそのバリーの問い掛けに答えた。

「確かに俺は憎かった……! 何もできず、周りから見下される様な異質な存在である自分自身が……! だが、そんな欲望を持ってしまったからこそ、俺は多くの災いをも招いてしまった……そう、二次元人に能力を与え、多くの争いの発端になってしまったアッコと同じくな」

 この修司の返答を聞いて、バリーとブラゴは怒りで修司に殴り掛かった。

 修司はバリーとブラゴ双方のパンチを両手で同時に受け止めると、二人が修司に言った。

「あんたとの闘い、いつも楽しみにしていたんだぜ……!」

「オレ達は心から……あんたと肩を並べて共闘できる時を心待ちにしていた」

 ブラゴとバリーは、自分と同等の実力者として修司を認め、そんな修司と仕合い、そして共闘できる日々に喜びを感じていたと打ち明ける。

 だが、この二人の言葉に修司は冷たく言い返した。

「お前達の強者と戦いたい……そんな欲求・欲望もまた争いを加速させる要因の一つ。俺自身も過去に抱いていた欲望の一つだ。だからこそバリー、ブラゴ……お前ら二人は俺が倒す。かつて俺を認めてくれた数少ない友だった存在として……!」

 そう言うと修司は、ブラゴとバリー相手に激しく拳と拳で戦い始め、修司はブラゴとバリーのパンチを全て己の拳のみで激突させて相殺する。

 そんな激しい戦いを間近で見ているシェリーとグスタフ。するとグスタフはバリーに加勢しようと呪文を唱えて、バリーの技を発動させようとした。

「ディオガ・ゾニスド……」

 するとブラゴとバリーの二人と激しく拳を相殺し合っていた修司は、右手から闇の小型のナイフを現出させて、それを呪文を唱えようとしていたグスタフに向けて投げ付けて、グスタフの心臓にナイフを突き刺した。

「グスタフ!」

 心臓にナイフを突き刺されてその場に蹲る様に倒れ込むグスタフを見て大声を上げるバリー。

 バリーはそのまま感情に流されて修司に殴り掛かるが、修司はそのバリーの拳をひょいと横へかわすと右手に刀を現出させてバリーの腹部を貫く。

 修司に腹部を貫かれたバリーは、そのまま地面へと倒れた。

「バリー! くっ、修司……!!」

 同胞のバリーまでも手にかけた修司に睨みを利かせるブラゴは、すぐさまパートナーのシェリーに指示した。

「シェリー! 呪文だ……!」

 だが「わ、分かってる。だけど……さっきから呪文を唱えても本が力を発動しないのよ!」とシェリーが激しく動揺しながらブラゴに返す。

 シェリーの返答を聞いてブラゴは「何だと!」と同じく動揺してしまう。

 そんな二人に修司が説いた。

「アッコが死に、魔物の潜在能力を引き出せる人間の心の力そのものが消滅しかけているんだよ……ブラゴ、シェリー。もう苦しむな、悲しむな。全て遠い遠い過去に置いて、真っ白な桃源郷へと行こうじゃないか」

 この修司の説明に、シェリーとブラゴは怒りを露わにして修司に言い返した。

「冗談! 過去の辛かった思い出も、今では自分が強くなった貴重な経験……! 修司、それをあなた自身が身をもって知っている筈!」

「過去の辛い苦境が今の強い自分を作り出した……過去があるから人も魔物も強く成長できるんだよ!!」

 二人がそう言い返した直後、修司は一気に踏み込んで二人に斬りかかってきた。

「シェリー! なんとか呪文を……」

「ええ! オルガ・レイ……」

「遅い」

 ブラゴがシェリーに指示して、シェリーが呪文を唱えようとする直前、修司は呪文を唱え終わる手前でシェリーとブラゴに襲い掛かる。

 修司は二刀流の刃を同時に振り下ろして、ブラゴとシェリーを同時に斬り付けた。

 修司からの斬撃を受けて、ブラゴとシェリーの二人はその場に倒れ込んで血の海に沈んだ。

 ブラゴとシェリーという最強クラスの仲間までも戦死した戦況に、大海恵とティオは焦っていた。

「あ、あああ……」「ティオ! 辛いのは分かるけど、集中するのよ……」

 目の前で次々と仲間達が修司に斬り捨てられていく惨状を前にして、悲しみと恐怖と絶望で目の前が真っ暗になりかけるティオに、恵は必死に呼びかけていた。

 そんな二人に修司が、自分に襲い掛かってくる魔物の軍勢を次々に斬り捨てながら、ティオと恵へと歩み寄りながら話し掛ける。

「誰よりも他者を護れる力を持ちながら、その力を凌駕する破滅の力の前に親しい友や王を……そして仲間達を守れず死ぬのを見届けるしかできないティオと恵よ」

「「………………!」」

「誰かを護る事で自分自身を犠牲にし、自分を酷く傷付けていないか? 他者を守る為に自分を犠牲にして、それが周りから当たり前の様にされて感謝も次第に薄れていく……そんな現実で良いと思うのか?

 修司に問い詰められ、恵とティオは困惑していた表情を力強く変化させて修司に反論した。

「それでも私達は……!」「大切な人達を護り続ける!!」

 次の瞬間、恵はティオの技を発動させるため呪文を唱えた。

「ギガラ・セウシル!」

 すると修司の周囲にドーム状の壁が張られ、修司は閉じ込められてしまう。

 だが修司は次の瞬間には、自分を閉じ込めるそのドーム状の術の中から一瞬で姿を晦ましてしまう。

「え!」「!?」

 閉じ込めた筈の修司が消えた事態に酷く戸惑う恵とティオ。

 すると修司はいつの間にか恵とティオの背後へと移動しており、二人を捉えていた。

「!!」「あぁ……!」

 背後を取られて非常に焦燥する面持ちを浮かべる恵とティオ。修司はテレポーテーションで瞬時に移動して二人の背後に回ってしまったのだ。

「サイ「遅い」と、恵が呪文を唱えようとした直前、修司は躊躇う事無く恵とティオに斬りかかった。

 二人に斬りかかり、斬られた恵とティオからは鮮血が噴き出して二人は地面へと倒れてしまう。

「……これはジャンプキャラにも言える事だが……技の名や呪文を言う前に攻撃すれば、大抵はそれで済んでしまう話だ」

 そう修司は恵とティオの亡骸を見下ろしながら呟く。

「ふ、二人をよくも……!」「パピー、こうなったらあの技よ!」

 友達に成れた魔物達を次々に殺めていく修司を前に、静かな怒りに打ちひしがれる魔物のレオパルドン・パピプリオに、パートナーのルーパーはパピーに指示を出す。

 そしてルーパーはパピーに技を出させる為に呪文を言った。

「モスレイド!」

 するとパピーの口から強い痒みと催涙効果のあるガスが吐かれて、このガスで修司を制止しようと出る。

 だが修司にはこのガスは効果が無かった。

「え……!?」「な、なんで……?」

 何ゆえに効果が無いのかと困惑するルーパーとパピーの二人。そんな二人に修司が説いた。

「今の俺には痛みなど、逆境になる感覚そのものが消滅している……パピー、ルーパー、お前らのモスレイドも今の俺には無意味に等しい」

 この修司の説明を聞いて愕然とするパピーとルーパーの二人。するとパピーは勇気を振り絞って修司に飛びついた。

「パピー!?」「ルーパー! ジョボイドで修司を攻撃するから、呪文を早く!」

 パピーの決死の行動に、ルーパーも理解した上で急ぎ呪文を唱えた。

「し、修司相手ならこれぐらいは……ディオガ・ジョボイド!」

 すると修司にしがみ付いていたパピーの口から強大な酸が放出され、修司の体を溶かしてしまう。

「や、やったか!」

 酸を吐きかけたパピーは修司から離れて、修司を酸で溶かしてやっつけたと思い込んでいた。

 だが次の瞬間、修司の体から舞い上がる白煙の中から大きな斬撃が飛んできて、パピーに直撃。パピーはそのまま傷口から血を噴き出して後ろめりに倒れ込んでしまう。

「パピー!!」

 我が子の様に思ってるパピーが血を噴き出して倒れた情景を目の当たりにして絶叫するルーパー。

 すると斬撃が飛んできた白煙の中から現れたのは、酸を浴びた上半身がドロドロと半分溶解している修司だった。

「どんなに体を溶かされようと、どんなにこの体が焼かれて炭へと変えられようと……純粋な破滅へと進化した俺を殺すまでには至らない」

「ッ……!」

 死んだ我が子と重ねているパピーを倒されたルーパーは修司を睨み付ける。

 すると修司は。

「安心しろ、もうお前とパピーを離れ離れにはさせん。お前もパピーの元へと逝け」

 そう言うと修司は右手の日本刀から必殺の「地走り」を繰り出してルーパーへと斬撃を飛ばす。

 ルーパーはパピーを失った虚無感からか避け様とも思わず、そのまま修司の地走りを受けて地面に倒れた。

 パピーとルーパーの二人を倒した修司が振り返ると、目の前には怒りの表情で目から涙を延々と流しながら目前の修司を睨み付けるフォルゴレとキャンチョメが立っていた。

「修司……! よくも、よくもみんなを……」

「みんなをよくも……もはや、君は既にボクらが知っている小田原修司ではない!」

「なんだ……今さら気付いたと言うのか? お前ら……」

 キャンチョメとフォルゴレの台詞に、修司は呆然と反応する。

 そしてキャンチョメとフォルゴレは怒りと悲しみの思いで術を発動させた。

「シン・ポルク!」

 それはキャンチョメの想像を具現化させる最大にして極悪な呪文。

 キャンチョメは相手が修司という事で、自身を巨大な鎧武者の姿に変化させて巨大な太刀で目前の修司に刃を振り下ろす。

 だが修司は焦らず、如何に凶悪な呪文であっても所詮は相手に現実味な痛覚や精神的苦痛で追い詰めていける「幻」だと周知している為に、修司は幻を見透かせる瞳を開眼させた。

闇眼(あんがん)

 すると修司の瞳は禍々しい程の闇が広がり、その瞳が捉える幻は全て修司自身に見透かされ、実体を的確に捉えられるのだ。

 この闇眼でキャンチョメの幻を見通した修司は、巨大な鎧武者の足元にいる涙顔のキャンチョメを視認してしまう。

「キャンチョメ、俺には幻術と言った幻は効かないぞ。今の俺にはハッキリと見える……絶望と悲しみに暮れる、お前の姿が」

 次の瞬間、修司は両手から弓と矢を現出させて、修司は弦を引いて矢を射出しようと手を引いた。

 そして修司は闇の矢を手から放して射出。闇の矢はキャンチョメが作り出した幻を貫通して、涙を流し続けるキャンチョメに矢が直撃。キャンチョメの胸部に矢が貫通した。

「キャン、チョメ……?」

 すぐ側でキャンチョメに矢が直撃して貫通した光景を目撃して愕然とするフォルゴレ。

 そんなフォルゴレが見届ける中、キャンチョメは力尽き、地面へと倒れ込む。

「キャンチョメーー!!」

 血相を変えてキャンチョメの名をフォルゴレが叫んだと同時に、キャンチョメが死んだ事で作られていた幻も消滅。

 フォルゴレは急いでキャンチョメの元に駆け寄るが、修司が放った闇の矢を受けたキャンチョメの息は既になかった。

「う、うぅ……!」キャンチョメを失ってしまい、悲しみに暮れるフォルゴレ。

 そんなフォルゴレもキャンチョメ同様に安らかに死へと導こうと、修司がフォルゴレに攻撃を仕掛けようとしていると。

「ソルド・ザケルガ!」

 との呪文と同時に、修司に自身の三倍も大きな雷の剣を叩き付けようとするゼオンが修司に襲い掛かる。

 修司はゼオンの技を闇の日本刀で受け止め防ぎ、ゼオンと距離を置いたところで改めてゼオンと対峙する。

 そこにゼオンのパートナーであるデュフォーが駆け付けると同時に、ゼオンはフォルゴレに言った。

「まだだ……まだ絶望する時ではないぞ、人間! 例えガッシュが、清麿達が死んでいったとしても……我々が諦めなければ良いだけの事!」

 絶望的な状況の中、修司に戦意を向けるゼオンとデュフォーの二人を前に、修司は唐突に二人に問い掛けてきた。

「ゼオン、魔界でガッシュと再会してからはどうだった? 王となったガッシュの補佐として働く傍ら、聖龍隊の導きで魔界での居場所を与えられたデュフォーとは上手くやっていけてたか?」

「………………」

「デュフォー、どうだった、魔界での日々は。親からはもちろん、自分を散々利用してきた科学者からも危険視されて捨てられて、居場所を失ってたお前に居場所を与えるべく、魔界との交流の際、ガッシュとゼオンに頼み込んでお前を魔界での役職に就かせてやった経緯……お前にとっては充実してたか?」

「………………」

 修司からの問答にゼオンとデュフォーは敢えて何も返答しなかった。

 実は人間界で完全に居場所を失っていたデュフォーを見て不憫に思った過去の修司が、魔界との交流会で魔物達と人間達を再会させた際にゼオンとデュフォーをも再会させていた。そして清麿と同じくアンサートーカーであるデュフォーに居場所と役目を与えてほしいと嘆願した修司の要望を王であるガッシュと補佐であるゼオンは快く受け入れ、デュフォーを人間では特別にゼオンの側近として魔界に受け入れたのだった。

 そんな過去の昔話をした修司を前に、修司からの問答にゼオンとデュフォーは返答した。

「修司、其方が最初にデュフォーを魔界に移住させてくれと言ってきた時は正直驚いた。魔界で人間が共生するなんて前代未聞だったからな」

「だが、俺は少しばかし感謝しているのは本音だ……親はもちろん科学者からも見捨てられ、居場所を完全に失い世界を放浪するだけの毎日だった俺に、その居場所と役割を与えさせるために魔界に移させてもらえるようガッシュとゼオンに嘆願してくれた修司には、少しばかり感謝している」

過去(かつて)の俺は、少し勿体ないとばかり思っていた……デュフォー、お前のアンサートーカーとしてのずば抜けた才能と知識を。だから俺は、そんなお前を受け入れるだけでなく、その能力を最大限に生かせる居場所を考えた。それがお前が共闘したり、協力もしてやった魔物達がいる魔界だった」

 そうゼオンとデュフォーと対話する修司は、突然両手から武器を現出させて戦意をむき出す。

 修司の戦闘態勢を目前で認識したゼオンとデュフォーは、修司を倒すべく魔本を開示して戦闘に備える。

 すると攻撃する前に、デュフォーが修司に打ち明けた。

「修司、俺は今の日常を……魔界でゼオンたちと過ごせる日々を失いたくない。あんたが与えてくれた、時には夢にも思える幸せな日々を、与えてくれたあんた自身に奪われるなんて御免被る」

 デュフォーに続き、ゼオンも修司に言った。

「ガッシュも清麿も……友であり理解者であった其方と戦うのは忍びなかったであろう。だが、その二人はもう死んだ……これ以上、多くの同胞や仲間達の命を奪うだけなら、我々が全力を以って修司を倒す……例え、其方を殺してでもだ!」

 最後は大粒の涙を流して修司に苦しい心中を打ち明けるゼオンの台詞を聞いて、デュフォーは呪文を唱える。

「ジャウロ・ザケルガ」

 すると巨大な輪が宙に出現し、無数の電撃の矢が射出された。この矢は操作可能で、発射中も自由に動ける。ゼオンはこの矢を全て修司に向けて飛ばした。

 だが修司は闇の波動を放出してゼオンが操る電撃の矢を全て消滅させてしまう。

 そんな状況を前に、デュフォーはゼオンに言う。

「ゼオン、ミラーガールの死で俺達の心の力も消滅し始めている。強力な技はおそらく出せても一発だけ、それ以外の技も強ければ強いほど回数が減っているだろう」

「承知した。数少ない、勝機の中から勝利を勝ち取るぞ、デュフォー!」

 意気投合しているデュフォーとゼオンは、互いに目で合図を取り合うと、再び修司に向けて技を放つ。

「バルギルド・ザケルガ」

 今度は拷問用の呪文を唱え、修司に激痛を与える電撃を浴びせて戦闘心をへし折る作戦に打って出る。

 しかし修司は電撃を浴びても平然と二人に言葉を返した。

「今の俺には痛みを感じないところか、へし折れる心をも失くしている状態……あのチェリッシュを苦しめた拷問用の技で俺を止められるとでも?」

「「………………」」

「……それ以前に、俺は既に世界の真実を知った事で痛みに対して耐性がついてしまった。争いを続ける人間、平和を知らず生まれ育った子供、スラム等のゴミ捨て場しか生き場が無い幼い子供……そんな悲しくも変わる事のない現実が既に俺の心を失くしているんだ」

 修司の台詞を聞いて蒼然とするゼオンとデュフォー。

「ゼオン、心の力がもう残り少ない! 今すぐにでも手を打たなければ……」

「デュフォー! お前に残った心の力を全て注いで最大呪文を解き放て! 一気にケリをつける!!」

 心の力がミラーガールの死の影響で消滅していく状況を伝えるデュフォーに、ゼオンは最大呪文で一気に修司とケリをつけると返事する。

 そしてデュフォーは残っている自分の心の力を最大まで解放し、ゼオンに最大呪文を発動させる。

「ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 ゼオン曰く破壊の雷神である彼の最大攻撃術は、雷神の超大口径の砲身から大量の電撃を放出。その電撃が全て修司に全面的に直撃。

 雷撃の中で、修司の姿は瞬く間に消滅していった。

 

 最大火力の術を修司に直撃させて消滅させられたゼオンとデュフォーの背後に、消滅から逃れた修司の左腕だけが飛んできて地面に落下するが二人はそれに気付くほど余韻が無かった。

「ふ、ふぅ……終わったの、だな?」

「ああ、俺のアンサートーカーの能力でも修司の存命は確認できない」

 一息入れるゼオンにデュフォーは修司の生存確率は見込めないと断言すると、二人は一気に力が抜け、その場に座り込んだ。

「は、ははは……こんな戦い、魔界の王を決める戦いでは味わえなかったよ」

「俺も生れて初めてだ。常識を遥かに凌駕した戦い……運が良かったんだ。俺達が生き残れたのは、運が良かったからだ」

 そう語り合うゼオンとデュフォーの二人。すると二人は急に、この戦争で死んでいった多くの仲間達の死を痛感し、虚しくなった。

 自分達は生き延びられた。だが、多くの魔物や人間、何よりも王であるガッシュが死んだ今となっては、勝利の余韻すらも感じる暇もなく、ゼオンとデュフォーの二人は心の奥底から虚しさばかりを痛感するのだった。

 ゼオンとデュフォーの二人が戦いが終わり、多くの仲間達が死んだ現状に茫然としていた。

 まさにその時。

「ゼオン!! デュフォー!!」と、赤塚大作の声が二人に届いた。

 二人が大将の声に気付いて後ろを振り返ると、その瞬間二人の胸部に細い槍が突き刺さり、二人の体を貫通した。

「うっ……」「ぐっ……」胸部を槍で貫かれ、悶絶するゼオンとデュフォー。

 二人の体を貫通する闇の槍を突き刺したのは、ゼオンの最大攻撃を受けて完全に消滅したと思われていた小田原修司だった。

 修司はゼオンの攻撃を受ける直前、自ら左腕を切断して放り投げ、それ以外の肉体が消滅しても左腕だけで再生し、蘇生していたのだった。

 左腕から全身を再生させた修司の肉体は、再生した左腕以外の皮膚がまだ再生し切っておらず、筋肉むき出しの脈が波打つ悍ましい姿をしていた。

「う…………腕だけで再生しやがったと言うのか!?」

 自ら切り捨てた左腕のみで肉体を完全再生して復活した修司を見て、魔物のテッドが驚愕する。

「やはり兄弟だな、ゼオン。ガッシュに負けず劣らず、昔以上にパワーアップした破壊の雷神の電撃で俺を消滅させようとは……だが言ってたと思うが、お前達が呪文を唱えるその僅かな隙がある限り、その隙をついて俺は自ら左腕を切り離して肉体の完全消滅を防ぐ術が生まれたんだ」

 そう瀕死のゼオンとデュフォーに説き掛ける修司は、槍を引き抜いて完全にゼオンとデュフォーの二人の命を奪う。

 地べたに前のめりに倒れるゼオンとデュフォーは、もう動くことは無かった。

 魔界の王に続き、その双子の兄にして補佐であるゼオンをも死んだ事で士気が下がった魔物の軍勢は、修司の周辺で黙然と修司を見据えるばかり。

 しかし、そんな絶望的状況でも、魔物と人間のペアは諦めてなかった。

「ま、まだだ! まだ戦えるものは戦おう……、!? ど、どうしたんだ、ロップス?」

 周りの魔物や人間達に戦い続けようと呼びかけようとしていた人間のアポロ・ジェネシスが相棒のロップスに目を向けてみると彼に異変が起こっていた。

 なんとロップスは未だに修司の激しい攻撃に直撃していないにも関わらず、衰弱していたのだ。

「ロップス、どうしたんだロップス!」

 アポロが懸命に衰弱するロップスに声をかけていると、同時に自分の身にも異変が起こり始めている事に気づく。

「うっ……こ、これは……」

 なんとロップスに続いてアポロ本人も意識が朦朧とし始め、自我を保つ事が難しくなっていた。

 するとロップスとアポロのペアに続いて、他の魔物と人間のペアにも異変が。

「あ、アース……」「エリー殿、気をしっかり……」

「し、シスター……力が、抜ける……」「モモン、どうしたという、の……」

「ぱ、パル……!」「カルディオ、立つんだ……!」

 修司の攻撃から生き残っていた多くの魔物と人間のペアが次々と力尽きる様に倒れていく惨状に、009や赤塚大作たち他の猛者達は激しく困惑するばかり。

「ど、どういう事なんだ……!? 修司くん! いったい何をした?」

 両脚を傷付けられて動けなくなっている009が問い詰めると、修司は平然と答えた。

「ようやくだ、ようやく始まった……アッコが死に、数多の特殊能力を持つ二次元人の力そのものが失われ、本当の意味で静寂が訪れる……」

「何だと……!」

 修司の台詞に大将が険しい顔つきになると、修司は続けて述べた。

「魔物と、そのパートナーである人間達。そして彼らを繋げる心の力……その心の力という潜在能力もまた、人々を争いへと導く特殊能力の一つ。だが今、アッコの死の影響がようやく全ての魔物とそのパートナーである人間達に現れ始めた。全ての魔物も、そのパートナーである人間も力を失い、やがては命そのものが消滅し、全てが安寧で真っ白な桃源郷へと誘われるだろう」

 なんとミラーガールの死によって、遂に魔物とそのパートナーである人間の力までも消滅し始め、やがては全ての魔物とそのパートナーである人間の命までも消滅してしまうと修司は説いたのだ。

 この修司の説明を聞いて、戦前より少し退いて戦いを見守っていた大将たちは蒼然とした。

 そんな蒼然とする者達を尻目に、修司は次第に微かな声すらも聞こえなくなってくる魔物と人間達の軍勢の中で、己の耳に届かなくなっていく数々の声に安堵した。

 

「……ああ、静かだ。とても心地のいい静寂……誰の苦痛も絶叫も爆音も聞こえない、正真正銘の静かなる桃源郷。これは、その第一歩だ……」

 

 ガッシュと清麿を殺めて、それに続いて他の名立たる魔物と人間達を死に追いやった修司。

 最後には魔王補佐であるゼオンと、魔界に移住しているデュフォー達をも刺殺した修司。

 そして遂に始まるミラーガールの死によって広がる絶望の波紋が、魔物と人間達にも届き、彼らの力だけでなく命までも消滅させる切っ掛けに繋がる顛末。

 魔鏡聖女の死によって広がる絶望の波紋は、遂に多くの二次元人達の能力と生命に多大な影響を齎すまでに至るのだった。

 

 

 

[死という名の静寂]

 

 ミラーガールを、そして数多の同志を殺戮し始める純粋なる破滅・小田原修司。

 その修司を止めんとするべく、高嶺清麿とガッシュ・ベルそして009を始めとするサイボーグ戦士たちが修司の前に立ちはだかる。

 が、修司はその圧倒的な力で魔物やサイボーグ戦士たちを制圧し、遂に清麿とガッシュの最高火力の技を受けても死ぬことは無く、逆に清麿とガッシュを殺めてしまう。

 二人の死を皮切りに、魔物の軍勢は一気に修司に群がり、彼を倒そうと躍起になるが、どの魔物達も修司に勝つ事はできなかった。

 009たちサイボーグ戦士も、修司が新世代型二次元人から得た能力の前では歯が立たず、次々と倒れていった。

 そして恐れていた事態が。

 全ての二次元人の特殊能力の始祖でもある魔鏡聖女ミラーガールが死んだ事で、その影響が遂に戦場で戦う二次元人達にも現れたのだ。

 魔物の軍勢は、魔本から人間の心の力を源に戦うのだが、その心の力までも消滅していき、やがて魔物もそのパートナーである人間達も力尽きて次々に倒れていく。

 そして一時ばかし訪れた不気味なほどの静寂の中で、小田原修司はその静寂に酔い痴れ、無表情ではあったものの、心の底から安らぎを感じていた。

 小田原修司はこの静寂を更に広め、全てを無に誘う事で真の桃源郷へと赴くのであろうか。

 

 高嶺清麿やガッシュたち魔物を、そしてサイボーグ戦士達を戦闘不能に至らしめた小田原修司。

 彼の周りには、既に動かなくなった無数の魔物とそのパートナーである人間たちの姿が見受けられた。

 中には修司に斬り捨てられて、中にはミラーガールの死によって力を失いそのまま倒れた者などに分けられていたが、そんな無数の亡骸の中で修司は静かに佇んでいた。

「……ああ、静かだ……こんなに心地いい静寂はどれくらい前だったのだろうか……」

 ただ一人で現状、自分を取り巻く死という静寂を心地よく思い噛み締める修司。

 修司が一人、無数の死による静寂に心酔している現状に至った戦況を見届けて、先ほど修司に脚を傷付けられて自慢の加速装置が使えなくなってしまった009は表情を曇らせていた。

「……これが……これが……修司くん、君が望んだ桃源郷だと言うのか……!!」

 目から涙を溢れさせて修司に問い詰める009に、修司は冷然と答える。

「いいや、違う……これが始まりなんだ。数多の死、数多の命の終わりが招く無限の静寂こそ……真に争いのない理想郷、いや桃源郷へと続く道なんだ……」

 そう修司が009に説いていると、そこに戦前で修司と合戦していた魔物の軍勢が全滅したのを目視して駆け付ける聖龍HEADの面々が。

「修司ィ!!」

 怒声にも近い大声で叫びかけるメタルバードに続き、他の聖龍HEADも修司の前に駆け付ける。

「修司くん……此処まで、此処まで修司くんは世界に失望しちゃったの?」

 涙目で修司に訴え掛けるセーラームーンに対して、修司は無表情でHEADを見据えるばかり。

 すると修司は口を開いた。

「……まだだ、まだ本当の静寂までは程遠い……本当の静寂、本当に争いのない静かな桃源郷へ導かねば……! その為に、過去(かつて)の友であるお前らを消さねば……」

 そう呟く様に言うと、修司は眼前の聖龍HEADに向けて必殺の地走りを繰り出して攻撃。

「くっ……!」

 口元を歪ませるメタルバードが跳躍すると同時に、他の聖龍HEADも跳んで修司が繰り出す地走りを回避する。

 そしてメタルバードと共に跳躍して攻撃を回避したウォーターフェアリーが修司に問う。

「修司さん……貴方は異なる種族が平和に、そして共存できる社会を……世界を築こうとしていたのに、なんで……!」

 すると修司は大地を駆ける斬撃・地走りを繰り出す日本刀に変わって武器を弓矢に変形させて返事した。

「人間同士が争うというのに、種族が違う者同士が共存できるというのか」

 同じ種族である人間同士が争い合うというのに、異なる種族が共存できる訳がないと説く修司は、自分の周辺に散っている聖龍HEADに無数の矢を射出して攻撃した。

 修司が放った無数の黒い矢から回避しようと、聖龍HEADは各自俊敏に動き回る。

 しかしこの時、修司が放った黒い矢は追尾式であり、必死に駆け巡る聖龍HEADを黒い矢が後ろから追尾してくる。

「っ……ダメ、追い付かれる……!」

 真紅がそう切羽詰まった顔で言った次の瞬間、無数の黒い矢は聖龍HEADに突き刺さった。

「きゃあっ!」彼女達の悲鳴が戦場に響き渡る。

 しかしこの時、責めて仲間だけでもと自らの体を盾にして、一身に黒い矢を体で受け止めたヒロイン達も見受けられた。

「せ、セーラームーン……!」

 一身に黒い矢を受け止めたセーラームーンを見て、キング・エンディミオンや他のセーラー戦士たちが倒れるセーラームーンに駆け寄る。

「結ちゃん!」「結!」

 コレクターハルナとコレクターアイに直撃しそうになる黒い矢を、我が身を盾にして防いだコレクターユイ。

 すると傷付いて動けなくなったコレクター三人組の許に、修司がテレポーテーションで接近してその無表情な顔で迫ってきた。

「「「!」」」

 修司の急襲に驚く三人だったが、そんな三人の心境など尻目に修司は傷付き倒れるコレクターユイに闇で作った日本刀を振り上げて斬りかかろうとする。

「し、修司くん……!」

 コレクターユイは傷付き倒れながらも、修司が心変わりする様に切に願っていたのだが、その願いも虚しく修司はコレクターユイに刀を振り下ろす。

 が、其処に「修司くん!」とコレクターアイがコスチュームを和装に近い身形に変化させて修司に薙刀で応戦する。

「その姿……」

 修司が和装に似た身形で、しかも武器を薙刀に変化させて戦うコレクターアイと対峙していると、コレクターアイは修司に答えた。

「これは……アッコちゃんが宇宙ステーションでゴッド・ドレフと戦った時に変化したナデシコスタイルをベースに犬養博士がこの大戦の為に拵えてくれたスーツよ! 修司くん、あなたが殺してしまったアッコちゃんが多くの命を守った気高いコスチューム……あなたが傍観していた宇宙での戦いでアッコちゃんが奮闘していた姿なのよ……!」

 目に涙を溜めながら修司の問い詰めるコレクターアイ。

 だが、このコレクターアイの訴えに対して、修司は無表情を変えずに話し返した。

「その変化の力こそ……! 数多の二次元人だけではない、多くの命を争いへと導く根源なんだ……! その力をアッコ同様に持ち、いや、アッコから正統に受け継いだお前ら変身ヒロインを滅ぼさなければ……世界はやがて俺がいなくても滅びるだろう」

「まだ言うの……ッ!?」

 変身する力こそ、数多の生命を争いへ導き、破滅に誘う根源だと説く修司に、コレクターアイは悲痛な表情で反論する。

 そして修司は自身が振るう日本刀を受け切るコレクターアイの薙刀を強引に弾いて、無情にもコレクターアイに一太刀浴びせた。

「うっ……!」修司に斬られて悶絶するコレクターアイ。

 そして修司に斬られて黒い和装のスーツから鮮血を噴き出して倒れていくコレクターアイを見て、結と春菜の二人が叫んだ。

「愛ちゃーーん!!」「いやあーー……っ!」

 そしてコレクターアイを無情にも斬り捨てた修司は、自身の顔に噴き付いたコレクターアイの返り血を手で拭いながら零した。

「これでいい……これで。少しずつ昔の……過去(かつて)の繋がりを絶ち切ってこそ、皆が安らぐ桃源郷が待っている……」

 己が望む静寂な桃源郷を目指すべくして、繋がりである過去の仲間達を容赦なく無慈悲に斬り捨てる修司の言動に、結と春菜は衝撃を受けた。

「修司、くん……!」

 コレクターユイを傷付けられ、その挙句の果てにコレクターアイを殺されて、コレクターハルナは感情を昂らせた。

 そして激情したコレクターハルナは次の瞬間、彼女の昂った感情に感化されたからかコレクターハルナの姿が突如として一変。

 凄まじい光を放つと共に、コレクターハルナはエビルハルナへと変身。

 エビルハルナに変化したコレクターハルナを見て、修司は言う。

「友を殺された復讐心で変身したか……恨みや憎しみは結局、悲しみしか生み出さないのかもな」

 次の瞬間、修司とエビルハルナは激突。激しい光が生じた。

 互いに武器と武器とを激しく鍔迫り合うと、双方は一旦後ろへ退いて距離を置く。

 無表情の修司に対して、エビルハルナも同じく無表情であったが、唯一違うのは彼女の両目からは延々と涙が流れている事だった。

 修司は逆手に握る日本刀を持ち換えて、普通に片手で握り締めてエビルハルナと対峙。

 すると其処にHEADを師と仰ぐサイキックチルドレンの明石薫が飛来し、エビルハルナの隣に立った。

「薫か……」「ハァ……ッ、修司……!!」

 冷然と薫を見詰める修司に対して、薫の方は同志やHEADら仲間達を次々に殺していく修司に対して既に怒りの感情しかなかった。

 薫はそのまま修司に向けて最大火力の超能力を打ち出して、修司と激しい超能力同士の闘いに発展。

「もう終わらせる……!! こんな心が傷付くだけの戦いなんて、終わらせる……!!」

 凄まじい念力を発動した為か、目から血の涙を流す薫の言葉に修司は呟き返す。

「……そうだな、もう終わらせよう。俺も、こんな争いはうんざりだ。一刻も早くお前達の命を終わらせ、全てを安寧で静かな桃源郷へと導かねばな……!」

 そう言うと修司は右手から発する念力を更に強め、対峙する明石薫とエビルハルナを念力で押し返し、弾き飛ばした。

 修司に弾き飛ばされて地面に転げ回る薫とエビルハルナ。そんな二人を追撃しようと修司は瞬時に日本刀を作り出して、地走りを繰り出した。

「! 春菜さん!」

 自分達に向かってくる地を駆ける斬撃・地走りを目前に、薫は師でもあるHEADの春菜だけでもと、念力でエビルハルナを押し弾いて彼女を斬撃から逃れさせる。

 だがエビルハルナだけを押し出した薫だけは、修司が繰り出した地走りを浴びて深手を負ってしまう。

「薫ちゃん!」「薫!」「薫……!」

 自分を助ける為に押し出してくれた薫を見て声を上げるエビルハルナに、薫の危機に即急に駆け付けるチルドレンの野上葵と三宮紫穂。

 三人は修司の地走りを受けて腹部から血を流す薫に駆け寄っていたが、そんな四人の許に修司はテレポーテーションで瞬時に距離を詰め寄って日本刀で斬りかかる。

 だが、そんな修司の剣戟を紫穂が武器にしている刀で受け止めて、傷を負った薫を庇った。

 しかし剣術では圧倒的に修司の方が上手。修司は紫穂が振るう刀を容易く弾いて彼女を無防備な状態へ。

 そんな紫穂に修司は無慈悲に日本刀を振るい付けようとした。

 その時「チルドレン!」と、スコーピオン同盟の傘下でもある兵部京介が瞬間移動で修司と紫穂の間に移動し、修司が振るう刀を超能力で止めようと試みた。

 が、この時、兵部京介は計算違いしてしまってた。

 なんと修司が振るう日本刀は、超能力も無力化してしまう闇の能力で作られた代物だったからか、超能力で止める事ができず、修司が横一線に振り払ってきた日本刀の斬撃を諸に浴びてしまった。

「うっ……」

 修司が振るった刃を兵部京介は一瞬の判断力で後ろへ退いた為に、辛うじて腹部を掠めただけで済んだ。

「少佐!」「兵部!」

 スコーピオン同盟で、兵部京介の配下であるエスパー達にガイア・スコーピオンが声をかけるが。

 そんな兵部京介を修司は左手で頭部を鷲掴みして、彼の超能力を封殺してしまう。

 其処へ修司は右手の武器を敢えて消して、素手で兵部京介を思いっきり殴り始めた。

「ぐっ! ごほっ……!」

 無表情で兵部京介の顔面を殴り続ける修司は実に不気味だった。

 そして粗方、顔面を殴って兵部京介の顔を変形させた修司は左手で彼の頭部を鷲掴みしたまま、今度は腹部に向けてボディ:ブローを打ち込んで兵部京介を苦しめる。

 二発、三発目と兵部京介の腹に拳を打ち込んでいく修司に、先ほど深手を負った明石薫が駆け付ける。

「兵部さん!」

 だが、そんな薫に向けて修司は鷲掴みしていた兵部京介を投げ付けて返り討ちにしてしまう。

「うっ!」投げ付けられた兵部京介と空中で激突して悶絶する明石薫。

 すると、激しい超能力対決を繰り広げていた修司に傷を負っているコレクターユイが悲し気な顔で迫ってきた。

 修司はコレクターユイのセイント・スーツから繰り出されるエネルギー波を闇の波動で打ち消して迎え撃つ。

「絶対……絶対、修司くんを止める……! 愛ちゃんや、死んでいった多くのみんなの為にも……!!」

 己の決意を強く唱えるコレクターユイに、修司は再び瞬間移動で瞬時にコレクターユイの目前まで迫り、彼女の頭の毛を毟る勢いで鷲掴みにする。

 頭の毛ごと鷲掴みにされたコレクターユイが痛みで表情を歪ませていると、コレクターユイは修司に訴える。

「修司くん……本当の自分に戻って……!」

 だが、修司はコレクターユイに向かって冷たく吐いた。

「俺には心は無い。それが……本来の俺だ」

 本当の自分は心のない欠けた存在だと返す修司は、そのままコレクターユイを真上へと放り投げて彼女が落下すると同時に真上へと日本刀で斬り上げた。

「やめてくれッ!」

 メタルバードの嘆願も虚しく、修司は真下へと落下するコレクターユイを斬り上げて、彼女の命を奪う。

「結さん!」「そんな……!」「………………!」

 師であるHEADのコレクターユイの死を目撃して、明石薫に野上葵そして三宮紫穂は悲嘆した。

 だが誰よりも悲嘆したのは、コレクターアイに続いてコレクターユイまでも殺められて絶望するエビルハルナだった。

 エビルハルナは怒りと悲しみが混ざり合った複雑な激情で修司に襲い掛かる。

「うわあーーーーーー……っ!!」

 悲しみの怒号を叫びながら修司に襲い掛かるエビルハルナ。

 しかし修司は、そんなエビルハルナと擦れ違い様に彼女を一瞬の内に斬り付けて、エビルハルナの命も奪い取った。

 修司に斬られて、エビルハルナは変身を解除して元のコレクターハルナの姿へと戻って地面に倒れる。

 

「修司……! 聖龍隊を創設し、聖龍隊を支えてきた仲間である、同期のコレクターズまでも斬り捨てるのかよ……」

 

 修司によってコレクターズの三人も斬り捨てられた惨状に、メタルバードは落胆するしかなかった。

 怒り、悲しみ、憎しみ。様々な感情が入り乱れ、怒号や悲痛が飛び交う戦場。

 だが、そんな騒音が響く戦場に死という絶対な静寂が流れ始めていた。

 死という静寂が、安寧な桃源郷へと近付いている証なのだろうか。

 小田原修司は静寂な、静かな桃源郷を目指し続けている。

 

 

 

[憧れだった二次元人]

 

 純粋なる破滅・小田原修司によって齎される静寂という名の死。

 その死を与えられて、次々に戦死していく数多の猛者達。

 怒り、悲しみ、憎しみが蔓延するこの戦いを誰が終わらせられるのだろうか。

 

 創設メンバーでもあり同期でもあるコレクターズの三人をも殺めた修司を倒すべく、聖龍HEADは修司に攻撃を仕掛ける。

「はァッ!」

 悲しい思いを堪えて修司と激しく剣戟するキューティーハニー。

 すると其処にウォーターフェアリーも加勢して、水の剣で共に修司と合戦する。

 無論、その戦いに加勢しようと他の聖龍HEADも修司に群がる。

 だが修司は群がる聖龍HEADを、刀の一振りだけで払い除け、意図も簡単に吹き飛ばす。

 鬼神と呼ばれ、畏れられてた頃よりも遥かに凄まじい威力の一振りに、聖龍HEADは迂闊に近づく事さえ侭ならない。

「生きる事は戦いだ。つまり生きるとは……傷つけ合うという事だ。俺は、そんな傷つけ合う世界を無へと誘う」

 刀を振るい、凄まじい衝撃波を繰り出す修司は、その衝撃波に吹き飛ばされる聖龍HEADに説き掛ける様に語る。

「修司、お前は既に……本当に全てを滅ぼすだけの破滅へと変わっちまったのか? もう、小田原修司という存在を捨て切っちまったと言うのか……!」

 修司と激しく剣戟しながらメタルバードが問うと、修司はメタルバードを剣戟で退かせてから返す。

「俺は俺だ、それ以上でもなければそれ以下でもない。故に……純粋なる破滅そのものだ」

 己を完全に、小田原修司ではなく純粋なる破滅だと説く修司に、修司とは義兄弟の盃を交わしたジュピターキッドとその恋人ウォーターフェアリーが投げ掛ける。

「義兄さん、自分のクローンである新世代型二次元人の出生に失望しただけでなく……今まで関係を築いてきた二次元人達の多くまで消滅させる気なのか!」

「修司さん……かつて、私の命がミラーガールのセイント・コンパクトで甦ったのも、修司さんがアッコさんと巡り会ったのが根本だとしたら……私の様に運命が変わってしまった二次元人は存在そのものが大罪だと言うのですか?」

 二人の質問に、修司は無表情な顔で返答した。

「そう、全ては……俺とアッコの出逢いから始まってしまったのかもしれない。俺と巡り会ったことで、アッコのコンパクトがセイント・コンパクトへと代わり、それから数多の二次元人の運命を捻じ曲げてしまった。……だが、そんな物語の秩序を乱すミラーガールの存在や彼女のお陰で変われた俺でさえも、変える事ができなかった多くの悲運なる二次元人の運命までは変えられなかった……その悲劇も、俺とアッコが巡り会って生まれた混沌も、全てを無にする為に……俺は最後まで戦い続ける」

 自分とアッコが巡り会っても尚、変えられなかった、いや救えなかった数多の悲運な二次元人たち。その悲劇も混沌も、全てを無に誘うと死んだ様な無表情な顔で語り明かす修司。

 修司はそのまま聖龍HEADと乱戦しながら、二次元人達に語り出した。

「勝手に憧れを拗らせ、聖人君子だと祀り上げていただけだった……二次元人も三次元人同様、不完全な生き物だった。故に争いを繰り返すばかり……」

 聖龍HEADと乱戦を繰り広げながら、修司は自分のクローンを生み出した世界に至らしめた二次元人への失望も唱え出す。

 特殊能力による技を闇の能力で封殺してしまう修司に対して、聖龍HEADは接近して直接格闘技などで打撃を与えようと試みてみたが、それに対して修司は左手から闇の能力で作り上げたショットガンを現出させて間近に迫る聖龍HEADを至近距離で銃撃しようと引き金を引く。

「「!」」

 修司からのショットガンでの銃撃を寸前で気付いて回避するキューティーハニーにセーラーマーズ。

 修司は間近のHEADには剣戟で、中距離へのHEADに対してはショットガンでの銃撃で応戦しながら再び唱え出す。

「なぜ人が差別されなければならない、なぜ支配されなければならない……人が虐げられ、支配される時代は終わらせなければならない」

 この修司の発言にメタルバードが訊き返す。

「その負の歴史を終わらせる為に……今の世を生きるオレ達を全員まとめて抹殺する気か、修司!」

 しかしメタルバードの訴えは修司に届かず、修司はショットガンを乱射して周りのHEADを銃撃。

 修司の闇の銃弾は命を奪うまでには至らなかったものの、その銃弾を浴びて感じる激痛は通常の何倍もの苦痛だった。

「くっ……!」「さ、流石に闇の銃弾は効くぜ」

 銃弾を受けて苦痛にもがき苦しむキング・エンディミオンにメタルバード。メタルバードの鋼の肉体にも、闇の銃弾は効果があった。

 

「も……もうやめてくれ!」

 と、その時。修司が聖龍HEADと激戦を繰り広げていると、檻の中に閉じ込められている新世代型二次元人達の方から悲痛な声が。

 聖龍HEADを攻撃する修司の手が止まり、修司が振り向くと檻の中から修司を制止したのは新世代型の瀬名アラタだった。

「もう、やめてくれ……小田原修司。そんなにオレたち新世代型が憎いなら……自分のクローンの存在が許せないなら、オレ達だけを煮るなり焼くなり好きにしてくれれば良いだろ……! もう聖龍隊を……自分の友達だった聖龍隊を殺すのはやめてくれ!!」

「アラタ……」

 涙を流しながら修司に訴えるアラタの悲痛な思いに、側でアラタの真情を聞いた鹿嶋ユノたちは胸を締め付けられた。

 だが、そんなアラタの悲痛な真情を聞いても尚、修司の空虚な心は揺れ動かなかった。

「俺の代用品として、代理戦争をしていた連中が何をほざくかと思えば……戦争という、広大な暴力と殺戮に手を染めた貴様らなど、あのセレディ・クライスラーたちワールドセイバーと何ら変わりない」

「ッ……!」

 自分達をテロリストであったセレディ・クライスラーたちと同等に見下す修司の言動に、瀬名アラタは涙を流しながら口元を歪ませた。

「修司さん! 確かに僕たちは知らなかったとはいえ、代理戦争に手を貸し、あのセレディたちワールドセイバーと変わらないかもしれない……! だけど! 貴方だって気付いているのではないのですか? セレディは、彼は……やり方は間違っていたけど、心の底から世界の平和を望んでいた事を! 修司さん、今の貴方はかつてのセレディ・クライスラーと同じです!」

 そんな修司に、セレディ・クライスラーと同じなのは今の修司だと説き明かす出雲ハルキに、修司自身はこう返した。

「確かに俺も……あのセレディ・クライスラーと同じく、平和な世界を……誰もが平等に生きていける世界を夢見ていた事もあった。……だが! 人間が人間である限り、人々はまた不毛な争いを繰り返すだけだろう。同じ過ちを繰り返す人間は、また俺のクローンを用いて疑似戦争やら代理戦争やらを繰り返して悲劇の連鎖を繰り返すだろう。そう……あの東郷儀一という自分の権力にしがみ付く、私利私欲に溺れた権力者達の思うがままにな!」

「!! ……ッ」

 遂には自分の父にまでも非難を浴びせる小田原修司の言動に、東郷儀一の息子・東郷リクヤは激しい感情を煮え滾らせた。

 そんな新世代型二次元人達に唱えていく修司は、衝撃を受ける新世代型達に告げた。

「望まぬ力 望まぬ戦い 望まぬ運命 ならば世界を拒めば良い」

 二次元人として望まぬ力に戦い、そして辛い運命を与えられるだけならば、それらを与えてくる世界を拒めばいいと告げる修司の言葉に新世代型達は愕然とする。

 

 かつて二次元人達に多大な憧れを抱いた小田原修司。だが、今の彼はそんな二次元人にすら完全に失望してしまってた。

 だが、そんな修司を食い止めようと抗い続ける生き残っている聖龍HEAD。

 純粋なる破滅・小田原修司と激戦を繰り広げる聖龍HEADを目視し、嘆き悲しみ続ける檻の中の新世代型二次元人達。

 すると、そんな絶望的状況が続く中、新世代型達と共に檻の中に閉じ込められている一人の少女が戦いを傍観していたが沈黙を破って口を開く。

「……違う」「え……?」

 その少女の呟きに、新世代型の琴浦春香が反応。そのまま少女は檻の中から戦場で聖龍HEADを苦しめ続ける修司に訴える。

「違う! 琴浦さん達は……新世代型の二次元人のみんなは、あなたが思っている様な酷い人たちじゃないの!」

「チョコちゃん……」

 その少女とは新世代型二次元人達と共に檻に閉じ込められているプロト世代の一人、黒鳥千代子ことチョコだった。

 チョコの突然の発言に同じ檻に囚われている新世代型達も、彼女と同じプロト世代のギュービッド達も、戦場で修司に苦戦を強いられる聖龍HEADはもちろん、修司本人も戦いの手を止めてチョコに注目する。

「何が違う? 鬼神と畏れられ、破滅の化身メシアへと成り下がり……何よりも心が欠けた欠陥品である俺の、水よりも濃い血を受け継いだ破滅の血族・新世代型と俺、何の違いがあるという……!」

 決意の固い表情を浮かべるチョコに、修司は続けて語り掛ける。

「そいつら、俺の血を受け継いだ破滅の血族たる新世代型と俺、何の違いがあると言うんだ? 己の利権を……私利私欲の為に物欲に争いや衝突を繰り返し、醜悪なまでに問題ばかり起こしてきた新世代型。そんな正真正銘の欠陥品と心が欠けた欠陥品たる俺……完全に似た者同士じゃないか」

 と、自分と新世代型達を同等に欠陥品だと劣っているという発言をする修司に、チョコは神妙な顔で話し返した。

「私は、あなた以上に新世代型と呼ばれる二次元人の琴浦さんや大勢の人たちと関わってきました。確かに中には我が強く、自己中心的な言動が目立つ人たちも多かった……新世党の様に、私利私欲の為だけに大勢の人命を奪ってきた酷い人たちも存在していました。だけど! 此処にいる新世代型二次元人は……私の友達は違う! 誰もが貴方のクローンに近い種族だと知りながらも、その現実を受け入れて、一生懸命前へと向かおうと頑張っている……そして何より。修司さん! あなたも新世代型のみんなも、欠陥品なんかじゃない! 新世代型もあなた自身も、愛や優しさを感じられる一人の人間なんです!!」

 チョコの力説に新世代型達も修司も耳を傾けている中、チョコは更にハッキリとした口調で修司に言い放った。

「あなたも新世代型二次元人も、ちゃんと心を持っているんです!」

 己を心が欠けた欠陥品だと、新世代型二次元人同様に自分を見下す修司に、チョコはどちらも心を持った人間なのだと力説する。

 が、それでも感情を顔に出さず、無表情でチョコの話を傍聴する修司は揺れ動かなかった。

「心がある、だと? どうせ、アッコや他の聖龍隊士から俺の昔話でも聞かされたんだろうが……本来の俺というのは、心というものを全く感じなかった正真正銘の欠陥品という名の障害者。そんな障害者の血を、いや心をコピーして生み出された新世代型が違うとは甚だしい。鬼龍院羅暁やセレディ・クライスラー、その他大勢の外道と大して変わりないだろ、こんな複製品は」

 それどころか、新世代型を個々の命とは認めず、自分の欠けた心をコピーされて生み出された外道な連中と変わらない複製品と罵る修司。

 だが、それでもチョコは修司に訴え続ける。

「アッコさん達から色々と聞きました。私たち大勢の罪なき二次元人も守るため、不本意で異常者(ヒール)排除法を制定したり……自ら愛する二次元人達を手にかけて殺めてきた事を。でも……その裏には障害者としてのあなたの苦渋の選択が、思いがあった。誰かに認めてもらう嬉しさ、そして愛される喜び、そんな微かな希望を求めていたからこそ、あなたは迷いながらも前へと歩き続けて、自分の夢である「真の平和」を実現出せようと陰ながら努力してきた。そして、そんな夢や理想を持てる切っ掛けを作ってくれた二次元人を本当の家族以上に大切にする様になったって事を、私は知っています」

 チョコの切実な訴えにも眉一つ動かさずに微動だにしない修司。

 

 認めてもらう嬉しさ、愛される喜び。そんな些細な幸せが障害者の修司には微かな希望だった。

 しかし世界に認めてもらった反面、強大な力を持つ自分の存在に過信し過ぎた世界は理想とは程遠い世界へと変わり果ててしまった。

 それでも世界を変えてくれるであろう二次元人を信じ続けた小田原修司だったが、最終的に世界が己のクローンたる新世代型二次元人を生誕してしまう。

 これにより全てにおいて失望してしまった小田原修司は、この世の全てに幻滅してしまい、結果この様な戦いを起こしてしまったのだ。

 

 哀しみを捨てて 心を失って 想いを犯して 先にいければ、あぁそれでいい 身体が ささやく 囁く 囁く

 

 何かを求める事によって、もっと大切な何かを忘れてしまう。それが人間の愚かさだ 

 

 己の哀しみの感情を捨てて、心も失って、他人の想いを押し殺して。それで良いのだと、理想の為だと己の中に囁き掛ける。

 理想だろうと夢だろうと、何かを求める事によって、もっと大切な何かを忘れてしまう人間の愚かさ。

 その果てが、現実(いま)の小田原修司なのだろうか。

 

 ミラーガールに留まらず、かつての同志である聖龍隊士を悉く殺傷していく純粋なる破滅・小田原修司。

 そんな自分達の始祖である小田原修司の暴虐の限りを目の当たりにして、新世代型二次元人は悲嘆に暮れるものの、修司はそんな新世代型を未だ軽蔑する。

 プロト世代で新世代型と共に檻に閉じ込められている黒鳥千代子ことチョコが訴えても、修司の空虚な心は動じなかった。

 憎しみと怒りと悲しみが入り混じれる戦場で、小田原修司の哀愁の進撃は止まらない。

 かつて鬼神と畏れられた男の戦いは、いつ終わるのだろうか。

 

 ミラーガールに引き続き、多くの聖龍隊士を血祭りにあげて静かな進撃を続ける小田原修司。

 遂には同じ聖龍隊創立に携わったコレクターズの三人、ユイ/ハルナ/アイの三人も殺害して全てを終わらせようとする修司。

 そんな修司を必死に止めようと、生き残ってる聖龍HEADは怒涛の勢いで修司に抗戦するのだった。

 しかし、純粋な破滅へと変化した修司を聖龍HEADは止めれず、戦況は変わらず苦戦していた。

 闇の能力に加え、新世代型二次元人達から会得した能力を駆使して聖龍HEADを追い詰める修司は、無表情で周りの生き残ってるHEADに告げる。

「出逢ってはならない者たち……出逢わせてはならぬ者たち。俺は、そんな出逢いという名の過ちを犯してしまった。その出逢いから生まれた繋がりを、全て俺自身の手で断ち切らねば贖罪の意味を成さない」

 この修司の発言に、修司と激しく応戦するメタルバードが反論する。

「オレ達との出逢いを……繋がりを、お前だけで全て断ち切れると思い上がるな!」

 メタルバードは修司から始まった繋がりを、修司だけで全て断ち切る事は不可能だと強く説いた。

 しかし修司の強攻は留まらず、聖龍HEADの東京ミュウミュウズに修司は逆手に握る日本刀で真っ向から衝突し、彼女達を一瞬で斬り払って軽々と退かせてしまう。

 そんな修司にローゼンメイデンの蒼星石が庭師の鋏で交戦するが、修司は闇の日本刀で応戦して激しい剣戟を仕合う。

 そして蒼星石を修司は日本刀で弾いて後方へ退かせて圧倒させる。

 修司は此処で、自分とは違い正義や愛を信じて戦ってきた聖龍HEADのヒロイン達に問うた。

「正義とは、愛とは何ぞな? 同じ人を裏切り欺く人が作りし正義、愛と相反する憎悪をも抱く人間、人間が掲げた正義に人間が抱く愛憎……そう、心が生み出す感情はいつの世も混沌そのもの」

 そんな修司の問答に、聖龍HEADのヒロイン達は強く返答した。

「愛……それは相手の思いを、心を受け止める事。それが人を愛するという事なのよ、修司くん」

「心を受け止める、それこそが愛……相手の痛みも己の痛みとして受け入れる事こそ、人を愛する第一歩なのよ」

 悲痛な表情で修司に答えるセーラームーンにキューティーハニーの返答を聞いても、修司の無表情は変わらなかった。

 己の問答に返答するヒロイン達を前に、修司は無表情な顔で語り始めた。

「疑いやいがみ合い、傷つけ合う事なく……格差を無くし、誰の子供も自分の子供と同じくらい愛する。そんな綺麗事の様な理想が実現できない現実など、護る意味など無かったんだよ」

 そんな修司の語りを聞いて、ミュウイチゴが切実に修司へ訴える。

「そんな事ニャいな! 人は痛みを分かち合い、同じ痛みを知る事で……より強い絆を深められると、私達は聖龍隊で学んだニャ!」

 痛みを知り、分かち合う存在。それ故に人は絆を深められるのだと修司に説くミュウイチゴ。

「修司。君が受け入れられない新世代型の二次元人だって、ボク達が叶えられなかった夢や理想を受け継いでくれる次なる世代の二次元人とは思えないのかい?」

「ウラヌス……俺の穢れた血を受け継ぎ、醜い争いを繰り返すだけの新世代型に、俺たち聖龍隊が実現できなかった夢や理想を代わりに叶えてくれると本気で思っているのか? 実におめでたい」

 新たなる次代の者へと受け継ぎし夢や理想と言った想い。それを次の世代に受け継がせるのは無理なのかと問い掛けるセーラーウラヌスに、修司は真っ向から否定した。

 かつての同志達にも冷たい言葉を返してくる修司に、修司の兄弟分であるジュピターキッドが唱え掛ける。

「例え、義兄さんが全てに絶望して、全てを無色に塗り替えてしまおうと……僕たち聖龍HEADは、絶えず義兄さんを……小田原修司という人間を、大切に思ってる」

 ジュピターキッドに続いてメタルバードも、修司が繰り出す凄まじい地走りを回避しながら修司に投げ掛ける。

「修司、お前は……決して、ひとりじゃない。みんないる。みんな、お前のことが大好きだ」

 どんなに変わり果てようと、周りの皆は変わらず修司を愛し続けていると訴えるメタルバードだったが。

 修司は冷め切った無表情な顔で自分と戦闘する聖龍HEADに唱える。

「人が本当の意味で解り合え、信じ合える時代が来ると、俺は信じたい、信じたかった……だが、人間が個々の存在そして意思を持つ限り、解り合え、信じ合える時代など来る筈が無いんだ」

 修司は此処で特大の地走りを発生させて、真正面に居るウォーターフェアリーとナースエンジェルを仕留めようと仕掛ける。二人は修司が繰り出した特大の地走りを回避して難を逃れる。

「修司! お前のクローンである新世代型二次元人を世界が生み出してしまった事が例え過ちだったとしても……それで全てを真っ白に塗り替えてしまおうという自分自身も間違っていると思わないのか!」

 するとエンディミオンに続いて堂本海斗も修司に問うた。

「俺達が護ってきた世界を……みんなが生きる、この世界を歪めてしまってるのが新世代型だと! 修司さんは思ってるのか……!?」

 激しい戦闘の最中、キング・エンディミオンと堂本海斗が修司に問い掛けると、修司は平然とした無表情な面持ちで説いた。

「間違っているとすれば、この世界を歪めている本当の真実は……この世界に存在するもの全てだ」

 全ての間違いは、世界を歪めている真実は、世界に存在するもの全てだと説く修司。

 

 

 

[戦死していく、かつての同志たち]

 

 と、修司と激戦を繰り広げながら、修司と問答している聖龍HEADの面々に変化の兆候が。

「? ……おかしい、私の魔力が段々と弱まってきてる……!?」

「か、身体が……カナの体も、なんだかぎこちない……」

 自身の魔力が弱くなっているのを感じ取る木之元桜に、人形である自分の体の動きがおかしくなってきている事を察し始める金糸雀。

 そして、それは他の生き残っている聖龍HEAD、コレクターズ以外の聖龍HEADにも表れ始めた。

 この皆に起きた兆候を見て、メタルバードが激しく動揺する。

「ッ……やっぱりか。アッコが死んだ事で、オレたち二次元人の特殊能力が消滅しかけている。もうすぐでオレ達が使える能力は、全て消えちまう……!」

 ミラーガールこと加賀美あつこが死んだ事で、二次元人の特殊能力が消滅し始めていると気づくメタルバードに、修司が言った。

「そうだ、バーンズ。お前ら二次元人の特殊能力が消える事で、力が招く争いという悲劇も訪れる事はない……まあ、その前にお前ら二次元人はアッコを失った事で存在そのものが消滅するがな」

 修司の説明を聞いて、数多の二次元人が驚愕する。

「ちょ、ちょっと待てよ!? 思いたくもないが、二次元人の特殊能力や存在が消えるって事は……要するに小田原修司、あんたが俺たち新世代型から会得した能力も消えて、自分自身が弱くなっちまうって事じゃないのか!?」

 話を聞いて新世代型の真鍋義久が訊ねると、修司は平然と返答した。

「そうだな、いずれは俺がお前らから得た能力も消えるだろう……だが、お前らは何か勘違いしているんじゃないか? 俺は自分を強くさせる為に能力を得た訳じゃない。二次元人と言う存在、力そのものを無力化させて、また争いが繰り返されるのを防ぐ為だ。まあ、アッコではなく俺を始祖として生み出された貴様ら新世代型の能力まで消え失せるかは分からんがね」

 淡々と述べる修司の台詞に真鍋たち新世代型は表情を強張らせる。

 新世代型二次元人以外の二次元人は、その多くが始祖であるミラーガールを起源にしている為に彼女の消失で存在そのものが消えかける。が、小田原修司を始祖とする新世代型二次元人の場合は、始祖である小田原修司の呪われた遺伝子を受け継いでいる為に消失するかは、修司自身でも解らないと説かれて困惑する。

 そして修司は、ミラーガールの死で能力を失い掛けている聖龍HEADに容赦なく襲い掛かる。

「きゃあっ!」「さくら!」

 修司が魔力を失い掛けて上手く戦えなくなった木之元桜に刃を突き立てようとした寸前、小狼が声を荒げて修司とさくらの間に割り込んだ。

 そして修司が突き立てた刃が小狼の腹部を貫通してしまう。

「しゃ、小狼くん……!」「さくら……大丈夫か……!」

 刃が貫通した腹部から夥しい量の血を出す小狼を前に、さくらは涙目で愕然とする。

 そして修司は小狼を出血死で殺めようと、彼の腹部を貫通する刃を引き抜こうとしたが、小狼は素手で自分の腹部を貫通する刃を掴んで離さない。

「お、俺はさくらよりも魔力が低いし、何より弱い……! 此処でさくらを失う訳にはいかないんだ……! アッコさんが例え死んでも、その意志を受け継ぐさくら達の存在を護れるなら、俺は……!!」

 顔から尋常でない汗を流しながら、激痛に耐える小狼は修司をまっすぐ睨み付けて語る。

 そんな二人が対話している所に、横から木之元桃矢が日本刀を振り上げて迫ってきた。

「うおおーーーーッ!」

 桃矢が振り上げた刀は、そのまま両手で小狼が押さえる刀を握る修司の両腕を完全に切断してみせる。

 桃矢によって両腕を切断された修司は、憮然と切断された自分の両腕の断面を見詰めた。

 そして切断されたからか、修司の切り離された両腕は小狼に突き刺さる刃と共に消滅。

「う……っ」「小狼くん!」「おい、小狼!」

 貫通していた刃が消えたとはいえ、傷口から未だに出血している小狼は蹲る様に倒れ込む。そんな小狼をさくらと桃矢は心配する。

 だが、そんな三人を見据えていた修司が、次の瞬間には切断された両腕を一瞬の内に再生させて元の状態へと戻ってしまった。

「あ……!」「くっ、不死身の再生能力は厄介だな」

 切断された両腕を瞬く間に生やした修司を見て、さくらと桃矢は動揺してしまう。

 そんな状況を遠目で観ていた、新世代型の神原秋人にマギウスの時縞ハルト達の心境は重かった。何故な驚異の再生能力は秋人から、不死性の肉体はマギウスから修司は会得しているからだ。

 無表情で恐ろしさ一杯の修司は、そんな重傷を負った小狼を更に斬りかかって完全に命を奪おうとするが。そんな修司の前に堂本海斗と蒼の騎士が立ちはだかり、修司の進撃を阻む。

 その間に、ナースエンジェルが急ぎ重傷を負った小狼の許に駆け付け、彼の傷を治療しようとする。しかし

「……おかしい……治癒能力が発動しない!?」「え!?」

 ナースエンジェルの発言にさくらも動揺する。重傷を負った小狼を救えるのは、状況的にナースエンジェルだけだからだ。

 そんな激しく動揺する二人に、メタルバード達と戦っている修司が戦闘しながら言った。

「どんな深手の重傷も治し癒せる治癒能力も、また等しくアッコの死によって失われる特殊能力の一つだという事を忘れているのか。ナースエンジェル、最早HEADで最も怪我人を治癒してやれるお前の能力も消滅していってるんだよ」

「そ、そんな……!」「そんな! それじゃ、小狼くんの傷が治せない……!」

 修司の説明を聞いて愕然とするナースエンジェルとさくらの二人。

 修司はそのまま他の聖龍HEADの攻撃を避けながら速やかにナースエンジェルとさくらの許に移動。

「そのままでは苦しいだろう……小狼、今すぐに楽にしてやるぞ。それがせめてもの侘びというもの……」

 そして二人の間近に移動した修司は、深手で虫の息の小狼にトドメを刺そうとするが、そんな修司をさくらがシールド(盾)のカードを用いて自分たち三人を壁で覆って防御しようとする。

 だが、さくらが発動させたシールド(盾)の魔力が瞬く間に消失していき、壁は即座に消滅。そこを修司が有無も言わさず刃を振るって凄まじい衝撃波を三人に喰らわす。

「きゃあっ」「っ!」

 抉られる地面と共に吹き飛ばされるナースエンジェルとさくら、そして深手の小狼。

 全身を土煙で汚されながらも起き上がろうとするさくら。倒れる彼女の前には、深手を負って今にも絶命しそうな小狼の姿が。

「し、小狼くん……!」

 何とか小狼を救いたいと願うさくらに、修司が冷淡な言葉を吐き掛ける。

「さくら、力を失い掛けているお前には、もう関係ない事だが……相手を惑わしたり、攻撃系などの戦いの為だけにあるカードしか持たないお前に小狼は救えない。今や魔力も治癒能力もアッコの死によって消滅してきてるが、それ以前にお前には小狼を救う力は持ってないじゃないか。大切な者を護れない、救えない力しか持てないお前に何ができると言うんだ」

 修司からの説き掛けを聞いて、さくらは目の前が真っ白になった。

 そんなさくらが苦境に追い立てられてたその時「さ……さく、ら…………」と、小狼はさくらの名を口にしながら失い掛けてた命が完全に消えた。

「し、小狼、くん……」

 愛する小狼の死が、さくらを更に深い深い絶望と虚無へと堕とし、彼女の心は完全に壊れて空っぽになった。

「さくらーー! くッそーー……!」

 小狼の命を奪っただけでなく、妹のさくらの心までも壊した修司の暴挙に木之元桃矢は完全に怒り狂った。

 そして周りの制止も聞かず、修司に単身突撃する。

「桃矢! やめろーーッ!!」

 メタルバードが制止する中、桃矢は修司とすれ違い様に斬り合い、勝負は一瞬で付いた。

 結果は。僅かな差で修司が桃矢を斬り捨て、桃矢は地面へと倒れ込んだ。

「桃矢さん!」「くそっ、僕らはこのまま手をこまねいて見ているしかないのか……!」

 小狼、さくらに続いて彼女の兄である桃矢までも修司に倒されるのを傍観して、さくらの同級生だった山崎千春と夫の貴史は苛立ちを隠せない様子。

遂に小狼そして桃矢までも失って、戦場の誰もが、そして誰よりも喪失感に苛まれる木之元桜は蒼然とする。

 そして彼女と等しく、自身が使える治癒能力が使えなかった事で小狼を救えなかった後悔に苛まれるナースエンジェルに、修司がぽつりと零した。

「りりか、お前の治癒能力は聖龍HEAD、いや聖龍隊でも至極の治癒能力だ。だが……その能力が封じられれば、所詮は誰も救えないだけの、誰よりも無力な一人の女だ」

 修司の冷徹な言葉の一つ一つに涙を堪えるナースエンジェル。そんな彼女に修司は更に説く。

「お前が筋書き通りに死んでいたら……お前は必要以上の悲しみを知る事は無かっただろうに。りりか、生とは所詮……悲しみを知るだけの時間なんだよ」

 生とは所詮、悲しみを知るだけの間だと修司に説かれたナースエンジェルは、悲痛な表情で修司に反論した。

「修司さん……! 生きると言うのは、苦しみや悲しみだけじゃない……喜び等の多くの感情や気持ちを、みんなと分かち合える大切な時間なんです!」

 ナースエンジェルから説き返された修司は、無表情な顔のままで彼女を見据えるばかりだった。

 そして修司は続け様にかつての仲間であったHEADに地走りを放つ。

 HEADは修司が繰り出す地走りを辛うじて回避しながら修司と応戦する。

「……! 義兄さん。義兄さんが今してるのは、過去に死んでいったり敗れ去っていった敵役達だって抱いていた思想だ! 過去に消えていった敵役たちが成就しなかった願望を、義兄さんが成就できると思っているのか!?」

 果敢に地走りを回避していく兄弟分のジュピターキッドからの問い掛けに、修司は地走りを繰り出しながら返答した。

「確かに……クリア・ノートなど、かつて主人公たちに敗れ去った敵役たちが抱いていた思想と、今の俺が思い描く理想は同じものだ。だからこそ、そんな過去に消えていった敵役の悲願を俺が成就しなくてはならない……!」

 そう言うと次の瞬間、修司は瞬間移動でジュピターキッドの目前まで接近し、逆手で握る日本刀の形状をした闇の武器でジュピターキッドを斬り付けた。

「!」

 ジュピターキッドは瞬時に硬化させた茨の鞭で修司が下方から斬り払う斬撃を防ごうとするが、修司の剛腕から繰り出される斬撃に鞭が弾かれて、ジュピターキッドの鞭は宙を舞い、次の瞬間にはジュピターキッドは斬り付けられてしまう。

「ジュニア!」「ジュニアーーッ!」

 仲間のメタルバードと叔父であるウェルズの悲痛な大声が響き渡る。

「ジュニア!」「ジュニアくん! ……っ」

 ジュピターキッドの恋人であるウォーターフェアリーに続き、セーラームーンが悲痛な表情で何かを決意する。

 そしてジュピターキッドが斬られた直後、セーラームーンは修司に駆け寄り、彼の目前で修司に問う。

「修司くん……! 本当は虚しいだけなんじゃないの? 自分の……いえ、私達が追い求めた理想とは遠い現実に絶望し、その現実全てを真っ白にしてしまえばいいと言うあなたの悲しみは理解できる。けれど、悲しみで現実は変えられない……人の輝かしい思いこそ、人の未来を、現実を変えられるんじゃないの……!?」

 セーラームーンの必死の嘆願を目前で訴えかけられた修司。次の瞬間、修司は日本刀を振り上げて一瞬の内にセーラームーンを斬り付けた。

「セーラームーン……!」「うさぎーー!!」

 セーラームーンから鮮血の血飛沫が噴出するのを目撃して、メタルバードもキング・エンディミオンも絶叫する。

 

「ごめんね……まもちゃん、そして修司くん……」

 セーラームーンは純白のドレスを紅く染め、先に戦死してしまう事そして救ってやれなかった友への謝罪を述べて地へと倒れ込む。

「うさぎーーーーッ!!」

 キング・エンディミオンは絶望のあまり悲嘆し、絶叫するばかり。

「うさぎ……!」「うさぎちゃん……!」「うさぎちゃん、そんな……」

 目の前で仲間であり親友であるセーラームーンが死んだのを目の当たりにしたセーラーマーズ、セーラーマーキュリー、そして赤塚組の海野なるが落胆する。

「そんな……そんなっ!」

 セーラームーンが死んだ事実に絶望したセーラーヴィーナスは、思わず修司に向かって単身突っ込んでしまう。

 そんなヴィーナスを修司は二刀流の日本刀で迎え撃ち、容易くヴィーナスを返り討ちにしてしまう。

「美奈子!」

 セーラームーンに続いて斬られたヴィーナスを見て、マーズが悲痛に声を上げる。

「修司、くん……」

 一方のヴィーナスは、最後まで救えなかった修司を哀しみの眼差しで見据えながら眠る様に戦死した。

「修司……ッ!」

 此処で堪忍袋の緒が切れる形で、セーラーウラヌスたち外部惑星の守護者が修司に襲い掛かる。

 が、修司は一気に襲撃する外部戦士たちを前に全く動じず、悉く彼女達を二刀流の刃で斬り払い、片付けてしまう。

「修司さん……あなたの夢、最後ま、で……」

 セーラーサターンは、最後まで修司の夢を応援したかったと声にもできず、戦死する。

「ほたるちゃん!」

 同年代のサターンが死ぬのを目の当たりにした木之元桜は悲しみに暮れる。

「修司くん!」

 もう修司に仲間を斬らせたくない、その思いから内部戦士のマーズ/マーキュリー/ジュピターも一斉に修司に攻撃。

 だが修司は三人の攻撃を回避すると、難なく迷うことなく三人を斬り捨てて命を奪う。

「修司ッ!!」

 そんな仲間の命を次々に奪う修司の暴虐に怒りを震えさせながら、キング・エンディミオンが修司と一騎打ちする。

 しかし剣術では圧倒的に修司の方が上であり、キング・エンディミオンは簡単に剣を弾かれて修司が振るう二対の日本刀で幾度も斬り付けられて絶命してしまう。

「修司……お前の夢、俺も……果たしたかった……」

「衛!」「衛のあんちゃん!」

 エンディミオンは最後に、修司が夢見ていた理想を自分も果たしたかったと言い残し、口から微々たる鮮血を噴き出して死亡。メタルバードと大将が悲観する。

 セーラー戦士に続いてキング・エンディミオンをも斬殺した修司に、悲しみを抱いて今度は魔法騎士の三人が合体魔法攻撃で修司を攻撃。

 修司は火・水・風の合体魔法を浴びて一時は全身に夥しい重傷を負うものの、瞬時に傷は再生して元の状態へと戻ってしまう。

「マジックナイト……!」

 聖龍隊で師弟関係を築いているおとぎ銃士の赤ずきん達が、修司に攻撃する魔法騎士に駆け寄って加勢しようとすると。

「君たちは来ないで! ……修司くんは、私達で何とかする……!」

 と、魔法騎士の獅堂光に抑制されて、思わず立ち止まる赤ずきん達。

 すると火・水・風の合体魔法を浴びた修司が、漆黒の刃を振り下ろしてその斬撃による衝撃波で光たちの合体魔法を切り裂いて道を切り開く。

 そして修司は己の斬撃で開いた道を歩み、正面にいる光/海/風の三人に歩み寄っていく。

 空虚で死んだ様な表情の修司に対して、悲しみに暮れながらも懸命に今の現実に立ち向かおうとする三人。

 だが、そんな三人の魔法騎士に向かって修司は情け容赦なく前へと踏み込むと同時に素早く抜刀。光たちはそれに対抗するべく俊敏に反応するが、修司と斬り合った結果、光/海/風の三人を修司は難なく斬り殺した。

 修司に斬られた三人は、修司への変わらない友情を思いながら涙を流して地に倒れる。

「マジックナイト……ッ!」

 三人の魔法騎士が戦死するのを目の当たりにして、メタルバードはまたしても歯を食いしばる。

 すると修司はそのまま駆け出して、あろう事か今度はカードキャプターの方へと突っ走って漆黒の刃を振るわせる。

 さくらはソード(剣)のカードで修司が振るう剣戟を受け流していくが、修司はそんなさくらに左素手を突き出した。

「! さくらちゃん!」

 ナースエンジェルが叫んだ次の瞬間、修司はさくらに向けて全ての能力を無力化してしまう闇の波動を繰り出して、さくらの魔力を封じてしまう。

 魔力を封じられて、ソード(剣)も防御に使えるシールド(盾)も使えなくなってしまったさくらに、修司は逆手に握る漆黒の日本刀を押し出して彼女の首を切断。

「さくら!!」「さくらちゃん!」

 首の斬り傷から夥しい量の血を噴き出して倒れるさくらを見て、メタルバードとナースエンジェルは阿鼻叫喚。

 さくらをも斬り殺した修司は、続いて治癒能力をも失って何もできずに仲間達が次々と死んでいくのを見届けるしかできず途方に暮れているナースエンジェルに視線を向けた。

 そして修司はナースエンジェルへと歩を進めると、ナースエンジェルは涙を浮かべて悲観した表情で修司と向き合う。

「りりか……仲間の、友の死をただ見ているだけなのは実に辛いだろう。だが、その辛さを乗り越えた先に、本当の安寧が待っている……命同士が争わない方法は、もうこれしかないんだよ」

「りりか、逃げろッ!!」「りりか!」

 修司が説きながらナースエンジェルに歩み寄っていくと、早く逃げる様にと遠くで戦いを見守っている看護総長の宇崎星夜とマン・ヒールズのデューイがナースエンジェルの本名を叫ぶ。

 二人の大声を聞きながらも、ナースエンジェルは逃げずに迫ってくる修司に問うた。

「修司さん……修司さんは、本当にもう何も感じないの? 自分を愛してくれたアッコさん、そして聖龍HEADの仲間達の命を奪っても何も感じないの……?」

 涙目で切実に訴えるナースエンジェルの問いに、修司は空虚な表情で答えた。

「感じない……何にも感じないんだ。かつて、どれだけの深い絆を結んだ仲間を斬り捨てても……今の俺には微塵も何の感情も湧かないんだ」

「………………!」

 その修司の返答を聞いて、ナースエンジェルは静かに受け答えた。

「……そうですか。修司さんは、もう治らないんですね。私の……いいえ、どんなに傷を癒す力だろうと、今の修司さんのボロボロに傷付いた心を治してあげれる力は、この世にないんですね……」

 世界に裏切られ、心が傷付いた修司を癒せる力は存在しないのだと説くナースエンジェルの発言に、戦場に居る誰もが言葉を失った。

 そして修司の傷付いた心を最後まで案ずるナースエンジェルにも、修司は刃を振るい、その命を終わらせた。

「りりかーー……ッ!!」「りりか…………くそーーっ!!」

 遂にナースエンジェルまでも手にかけた修司の凶行に、宇崎星夜もデューイも深く落胆する。

 するとナースエンジェルが修司に斬殺された次の瞬間、それを目撃した宇崎星夜が思わず帯刀している日本刀を抜刀して修司に単身駆け出してしまう。

「うわーーーーッ!!」

 愛する女性ナースエンジェルを殺されて、感情的になった星夜は聖龍隊から常備されている日本刀を構えて修司に特攻。

「星夜、やめろ!」

 それを見たデューイが制止するものの、星夜の足は止まらない。

 そんな星夜に修司は漆黒の日本刀の切っ先を、向かってくる星夜へと差し向ける様に身構えると、その切っ先から突きの斬撃を射出。

「突き」

 修司の刃その切っ先から放たれた小さな斬撃は、駆け抜ける星夜の心臓を貫通。心臓を一発で射貫かれた星夜は、そのまま力尽きて前のめりに倒れ込む。

「星夜!」「星夜くん……!」

 マン・ヒールズのデューイも、星夜やナースエンジェルの旧友である水原花林も、星夜が力なく倒れ込むのを見て愕然とする。

 冷然と星夜をも斬撃で射貫いて仕留めた修司に、大切な仲間を次々に殺されて感情が昂ったキューティーハニーが剣を振り上げて修司に襲い掛かる。

 修司は冷静にキューティーハニーの剣戟を受け止めると、キューティーハニーは険しい涙目で修司を睨み付けながら訴える。

「修司くん……! もう、これ以上何を言っても無駄だと言うの……!? もう、世界中の人々が幸せになる夢や理想を追い求めていた頃の修司くんには戻らないというの……!!」

 キューティーハニーの問い掛けに、修司は彼女が振るう刃を己の武器で受け止めながら答える。

「そう、俺がかつて思い描いていた理想……そんな理想も夢も、全ては遠い遠い荒唐無稽な幻想だったのかもな」

 次の瞬間、修司はキューティーハニーの剣を強く己の武器で弾いて、がら空きになったキューティーハニーの胴体に鋭い斬り込みを入れた。

「っ……!」

 傷を負ったキューティーハニーが痛みに悶絶していると、修司は追撃とばかりにキューティーハニーに無数の突きを連射して、キューティーハニーの体に無数の穴を空けた。

「っ………………」

 全身に小さいながらも風穴を空けられたキューティーハニーは、その場に座り込み悶絶。

 修司はそんなキューティーハニーにトドメを刺すべく、日本刀を逆手に握ると、それを押し出す要領でキューティーハニーに斬り込んで、彼女の体を切り裂いた。

「!? ……ハニー……!」

 修司の凶刃にやられたキューティーハニーの気配が消えた事で、盲目の剣士であるハニーの夫・早見青児は血相を変える。

 と、そんな修司の周囲を大量の水が取り囲み、修司を包囲する。

 自身を包囲する洪水に冷然と表情を変えずに状況を見極める修司。すると修司を包囲する揺らめく大水の中から何体の影が。

 次の瞬間、水中の影が水飛沫を飛ばしながら水の中から飛び出ては、修司に殴り掛かってきた。

「マーメイドプリンセスか……」

 自分を包囲する大水の中から飛び出して連続攻撃を仕掛けてくるマーメイドプリンセスの七海るちあ達の拳を、身を反らしてかわしていく修司。

 すると修司は水中から攻撃してくるマーメイドプリンセス達の拳を掻い潜り、彼女達が回遊する渦に手を突っ込む。

 その瞬間、修司を包囲しマーメイドプリンセス達が回遊する渦に強大な電気が放流され、渦の中を泳いでいたマーメイドプリンセス達は感電してしまう。

『きゃあああっ!!』

 るちあ達が絶叫する中、電気との化学反応で水が蒸発すると同時に水素と酸素に分解。気体として蒸発した為に水中を泳いでいたマーメイドプリンセス達は地面に投げ出され、倒れてしまうが、其処に修司が横たわる七海るちあ達を見下ろして呟く。

「水素と酸素に分解した気体に、火を燈すとどうなるんだろうな……」

 修司の考えている事が明確に瞬時に理解した七海るちあ達は顔面蒼白となる。

 そして修司が気体に着火させようとした矢先、修司の背後から堂本海斗が鬼気迫る。

「やめろ! 修司さんッ」

 しかし修司は背後に迫って来ていた海斗の後ろにテレポーテーションで瞬時に移動し、ハッと気が付く海斗の首を右手で掴むと苦しむ彼に言う。

「海斗よ。愛に飢え、愛を得たお前には到底、この世界の醜態は理解できないだろう。俺の様に、生まれながらに欠けた心を持つ者でしか、この世界の悲劇をより深く理解する事はできないだろうな」

「………………!」

「愛が、友が、絆が爆炎の中で、共に消えろ……」

 そういうと、修司は左手を挙げて指同士を擦り合わせようとした。

「や、やめろーーーーッ!!」

 海斗が制止するのも意味なく、修司は指から気体に着火して凄まじい爆発を起こし、己も海斗もそしてマーメイドプリンセス達も爆発に巻き込ませた。

「海斗!! みんなーーッ!」

 遠くでHEADの戦いを見守っていたマン・ヒールズにして海斗の双子の兄ガイトが叫ぶのも虚しく、爆炎は高らかに炎上する。

 その大火の中から、黒焦げになり、見るも無残な焼死体になった堂本海斗やマーメイドプリンセス達を見届けた小田原修司だけが単身静かに無傷で出てきた。

「あ……あああぁ………………!!」

 かつては敵対しながらも、今では完全な仲間や兄弟として上手く過ごせていたマーメイドプリンセス達に弟の堂本海斗の無残な最期を目撃して、ガイトは悲嘆した。

 マーメイドプリンセス達を燃やし尽くす業火の中から無傷で出てきた修司に、遠方からローゼンメイデンの真紅が怒りに満ちた表情で修司目掛けて一直線に飛来し、修司に飛び切りの拳「絆パンチ」を打ち込もうと襲来。

 修司の方も自分に向かって飛来する真紅の襲来に気付き、逃げる事無く手にしていた武器を消失させると身構えて、拳を突き出す直前の態勢を維持する。

 そして真紅が拳を構えて修司に強烈な打撃を喰らわせようとしたその矢先、修司も真紅に向けて力を込めた拳を正拳で打ち込んだ。

 真紅の拳と修司の正拳が直撃し、凄まじい衝撃波が二人を中心に地面と空中を振動させる。

 そして次の瞬間、修司の正拳突きに負けて真紅が後方へと吹き飛ばされてしまう。

「うっ……!」力負けしてしまう真紅。だが、彼女の身に起きたのはそれだけではなかった。

 なんと修司の正拳を受け止めた真紅の右腕が突如としてひび割れ、右手から続々と全身に亀裂が入り、真紅の右半身が粉々に砕け散ってしまったのだ。

「真紅!」

 姉妹でもあり仲間でもある同じローゼンメイデンの蒼星石が右半身を失う真紅を叫ぶ。

 その一方で、修司から受けた強烈な正拳で右半身を失った真紅に、修司は更なる追撃として正拳を放った右手とは反対の左手を右脇から突出させる体勢で突き出して、その左手の掌から凄まじい衝撃波を放出。満身創痍の真紅の間近で打ち込む。

 その結果、修司の左手から出た衝撃波を真正面の目前で受けた真紅は、一瞬の内に辛うじて残っていた頭部や左半身をも衝撃波で粉々にされて吹き飛んでしまった。

「真紅ぅ!」「真紅! ……くっ」

 真紅が消し飛ばされたのを目撃して、金糸雀は悲痛な面持ちで泣き叫び、スコーピオン同盟の水銀燈は表情を歪ませる。

「修司ィ!」

 真紅を消し飛ばした修司に怒りの矛先を向けて、蒼星石と翠星石の双子が修司を襲来。

 だが修司は再び右手に闇の能力で作った日本刀を逆手の状態で握り締めると、それを勢いよく押し出す様に振り翳し、強烈な斬撃を二人にお見舞い。

「くっ……!」

 蒼星石は辛うじて庭師の鋏で斬撃を防いで直撃だけは免れたが「きゃあっ」双子である翠星石は斬撃をまともに浴びてしまい、半壊状態に陥ってしまう。

「翠星石! ……くっ」

 双方ともに地面に撃墜してしまう二人。蒼星石は半壊状態の翠星石に駆け寄ろうとするが、なんと蒼星石の方も足を斬撃で吹き飛ばされて消失してしまってた。

 蒼星石は必死に半壊状態の翠星石へと体を引きずって近寄ると、半壊状態の翠星石に声をかける。

「翠星石、大丈夫か……!」

 だが、半壊状態の翠星石は虚ろな眼差しで返事が無かった。

 そんな二人にトドメを刺そうと、修司は地面に横たわる二人に向かって、地を駆ける斬撃「地走り」を打ち込んで蒼星石と翠星石を同時に葬ろうとする。

「あ……!」

 修司の地走りに気付いて、どうにかしようと焦る蒼星石。

 するとそんな蒼星石を意識が朦朧としている筈の翠星石が押し出して、修司の地走りから蒼星石を庇った。

(す、翠星石……!!)

 翠星石に押し出された蒼星石が最後に見たのは、翠星石の穏やかな笑顔だった。

 そして翠星石は修司の地走りを浴びて、完全に消滅してしまった。

「す、翠星石ーー……!!」

 紅と緑の瞳から涙を流して悲嘆する蒼星石。そんな彼女に修司が呟く。

「安心しろ、蒼星石……誰も残しはしない。誰も、そう……かつて俺に絆を与えてくれたお前達を、俺は一人残らず安寧へと送り出す」

 そう呟くと、修司は再び二発目の地走りを悲観する蒼星石に向けて放った。

 翠星石を目の前で失った悲しみに暮れる暇もなく、蒼星石も翠星石の後を追うように修司の斬撃に消えていった。

「翠星石、蒼星石……!」

 真紅に続いて双子のローゼンメイデンまでも消滅した顛末に、雛苺が堪えていた涙を流し始めていると。

「誰も逃しはしない……! 誰も、誰の悲しみもそのままにはしない……!」

 と、意気込む修司が残っている金糸雀と雛苺を狙って、上空に黒い閃光の如き突起物を放ち、その突起物が金糸雀と雛苺目掛けて落下して、二人を貫通すると同時に地面に固定してしまった。

「金糸雀! 雛苺!」

 ミュウイチゴが地面に固定された金糸雀と雛苺を目撃して、急いで救出しようとするが。

 その前に修司が地面に固定された二人に目掛けて特大の地走りを放って、二人を仕留めようとする。

「ああ……!」「! ……」

 成す術もなく、金糸雀も雛苺も修司の斬撃にかき消されて消滅してしまった。

「! 小田原修司……!」

「落ち着け雪華綺晶! お前が行って、何ができるって言うんだ……!」

 同じローゼンメイデンが次々に消滅していく現状に感情的になってしまうスコーピオン同盟の雪華綺晶に、首領であるガイア・スコーピオンが制止する。

 次々と修司の手によって惨殺されていく聖龍HEADを視認して、戦場で彼女達と共闘していた猛者達は背筋に悪寒の様な衝撃が走るのを感じてた。

「ッ……修司さん……!」

 遂に心が完全に死んでしまったのかと、ミュウイチゴたち東京ミュウミュウズの面々が目に涙を溜め、悲しみを堪えて修司に挑んでいく。

 しかし修司は此処で、闇の能力で作った日本刀を消して、それに代わって両手の甲に鋭利でやや曲線を帯びた爪の様な突起物を闇の能力で形成すると、その爪でミュウイチゴ達と戦い始めた。

 強烈な足技で修司に跳びかかるミュウミントとミュウザクロ。しかし修司は二人の蹴りを軽々とかわすと、跳びかかってきた二人が自分の左右を通過する際に鋭利な爪で切り裂き、乙女の柔肌を血で紅く染めた。

「きゃっ!」「っ……!」

 太ももに深々と切り傷をつけられ、痛みで表情を歪ませるミントとザクロ。

 二人が地面に転倒しているその頃、ミュウレタスとミュウプリンが同時に修司へと近接戦闘を仕掛ける。が、修司は二人の攻撃を全て両腕のみで防ぎ切り、そして反撃に鋭利な爪でレタスとプリンを切り裂いた。

 切り裂かれたレタスの緑のコスチュームそしてプリンの黄色いコスチュームも、ミントとザクロ同様に血で紅く染まり上がり、そんな鮮血に染まる二人に修司は鋭利な爪を突き刺してトドメを刺そうとする。

 が、トドメを刺そうとする修司に、ミュウイチゴとディープ・ブルーの二人が間一髪で制止しては修司に激しく攻撃を開始。

 だが修司はミュウイチゴ達の攻撃を全て受け流すか簡単にかわしていってしまう。

 悪戦苦闘するミュウイチゴ達に対して、修司は早々に戦いを終わらせる為にもと、容赦なくミュウイチゴに鋭利な爪を突き刺そうと拳を突き出した。

 と、その瞬間「いちご!」と、蒼の騎士ディープ・ブルーがミュウイチゴの前に飛び出して、ミュウイチゴに代わって修司の攻撃を受けてしまう。

「雅也!」

 ミュウイチゴが叫ぶ中、修司の鋭利な爪が貫通したディープ・ブルーの腹部と爪が飛び出した背面からは夥しい量の血が流れてた。

「うぅ……」

 腹部を貫通されて悶絶するディープ・ブルーを、修司は爪を突き刺したままもう反対側の爪でディープ・ブルーの首元を切り付け、ディープ・ブルーの首から大量の血が噴き出す。

 首の切り傷から大量の血を噴き出すディープ・ブルーの返り血を浴びても尚、修司の表情は変わらなかった。

「雅也っ!!」

 ミュウイチゴが泣き叫ぶ中、修司はディープ・ブルーに突き刺していた爪を引き抜き、出血多量で絶命したディープ・ブルーの亡骸を放り捨て、今度は恋人を殺められて激しく動揺しているミュウイチゴを狙った。

「いちご!」

 ミュウミントの声で我に返るミュウイチゴだったが、時既に修司はミュウイチゴの目前まで迫り、彼女の腹部を真正面の下方向から斬り払う様に鋭利な爪で切り裂いた。

「し、修司さん……っ」

 震える声で修司の名を呟くミュウイチゴは、そのまま胴体を切り裂かれて地に倒れる。

「いちごさん……!」「いちごーーっ!」

 ミュウレタスとミュウプリンが慟哭しそうになる直前、修司は今にも泣き出して戦意を失い掛ける直前の二人に急接近して、鋭利な爪で二人の首筋を同様に切り裂いた。

 修司の一撃で同じく地に倒れるミュウレタスとミュウプリン。

「このままじゃ、やられる……!」

 足を切り裂かれて身動きが取れない自分達も、続け様に殺されてしまうと焦るミュウザクロ。

 彼女の予想通り、修司は俊足で移動し、ミュウミントとミュウザクロへと接近する。

「そうはさせない……!」

 ミュウザクロは武器で修司と最後まで抗おうとするが、修司はミュウザクロの武器を爪で弾いて、そのまま振り上げた爪を振り下ろしてミュウザクロの顔から胸部を切り裂いた。

 美しい顔を縦に切り裂かれて上半身を血で染めるミュウザクロを見て、ミュウミントが悲鳴を上げる。

「おねえさま!!」

 だが修司の猛攻は止まらず、最後にミュウミントを殺めようと両手の爪を振り翳して彼女に急接近。

 ミントは辛うじて動く身体で修司と抗戦しようと武器を使おうとするが、その前に修司によって攻撃を受ける。

 両腕の爪を同時に交差させる様に振り下ろして、ミュウミントにクロス状の傷跡を負わせて彼女を仕留めた。

 遂に東京ミュウミュウズまでも全滅してしまい、それを目視した最終兵器のちせは昂る感情で体を震わせ、高揚する感情を抑え切れなかった。

「ッ……!」

「ちせ! 貴女が行ったって勝ち目は無いわ!」

「ちせちゃん!」「ちせ!」

 修司に向かって飛来していくちせを見て、赤塚組のミズキが制止するがちせは止まらず、ちせを思い続けるスコーピオン同盟の首領ガイアと聖龍隊一般隊士のシュウジは見届けるしか出来なかった。

 修司の上空から、修司に向かって怒りのレーザー攻撃を何重にも射出していくちせ。彼女のレーザーを、修司は闇と同化している肉体で光エネルギーを吸収して無力化する事で全て無傷で済んでいた。

「ちせ……本来、多くのキャラクターと共に死ぬ筈だったお前を生かしてしまったのは俺の罪の一つだ。物語を大きく歪曲させた俺の原罪でもあるお前の存在が、手塚先生たちが遺してくれたこの二次元界を穢してしまう大きな要因になってしまうんだよ」

 そうちせを見上げながら呟く修司は、両手の爪を消して、代わりに銃口を手の甲に装備すると、その銃口から炎の弾を発射して上空のちせを狙撃する。

 枇々木丈の火炎攻撃技でちせを撃ち落とそうとする修司。その修司の迎撃をちせは果敢に急速に飛行して回避する。

 が、突然ちせの動きが鈍くなってしまった。修司が斉木楠雄から会得したサイコキネシスでちせの動きを遅くさせてしまったのだ。

 超能力で動きを鈍らせられたちせが困惑していると、地上から修司の砲撃が撃ち上がり、それがちせの背面の機械の翼に直撃してしまう。

「ちせ!」「ちせちゃん!」

 シュウジとガイアが叫ぶ中、翼を攻撃されたちせはそのまま落下して地面に激突しそうになる。

 だが、ちせは辛うじて地面に激突する寸前にエンジンを蒸かして急停止。間一髪、地面へと舞い降りた。

 これにはシュウジもガイアも安心して胸を撫で下ろすが、そこに修司が地面へと着陸したちせに瞬間移動で急接近して、ちせの首を直接両手で締め上げにかかった。

「ぐっ……!」

 修司に首を絞められて悶絶するちせに、修司は首を絞めながらちせに話しかける。

「もうすぐ終わる……! 俺が始めてしまった原罪を……罪の始まりを、今ここで終わらせる時だ……! ちせ、お前は俺と同様……生きていてはいけなかったんだ」

 だが、これにちせは首を絞めつけられながらも強く反論した。

「ッ……そんな事、ない……! 修司、あなたが私たち二次元人と出逢った事で、前を向いて生きてこうと意志を持った事は……決して、間違いなんかじゃない……!」

 ちせは修司が二次元人と出逢った事で、生きる活力を見出した過去は決して間違いではないと説いた。

 そう修司に語り掛けたちせは、自分の首を強く絞めつける修司の両腕を掴むと、そのまま修司の両腕を力強く握った。

「人が生きるのは……大切な人を、守りたい人を守る為……! 修司、今の貴方が既に心を失って、全てを消したい衝動に駆られているというのなら、私は……」

 平然とする修司に、ちせは強く唱える。

 すると次の瞬間、ちせの体が強く光り輝き出したのだ。

「! ちせ!?」「ちせちゃん!?」

 首を修司に絞められるちせが突然発光し出し、一驚するシュウジとガイア。

 と、強く輝き出すちせを一時見詰めてたミズキが突然発声する。

「……! あれは……! みんな逃げて! ちせから離れるのよ!!」

 突然のミズキの呼びかけに、周りは戸惑うばかり。

「ど、どうしたんだよミズキ!」

 大将が訊ねると、ミズキは血相を変えて答えた。

「ちせは……ちせは、修司を道連れに死ぬつもりなのよ!!」

「「な、なんだって!?」」

 ミズキの返答に、シュウジもガイアも驚愕する。

 一方で、ちせの光は更に強まり、その間もちせは修司の腕を放そうとはしなかった。

「さ、さがるぞ! 後退しなきゃ、オレ達も爆発に巻き込まれる……!」

「バーンズ! ちせを助けなくてもいいのかい!」

 後退する様にウォーターフェアリーとジュピターキッドに指示するメタルバードに、先ほど修司に斬り付けられて重傷を負っているジュピターキッドが救出しないのかと問い詰めると、メタルバードは苦悶の表情で言い返した。

「ちせは……アイツは覚悟を決めたんだ。修司を止める為にも、オレ達を助ける為にも……何より、大勢の命を守る為に、自分の命一つを犠牲にして修司を止めようとしているんだ……!!」

「そ、そんな……!」

 メタルバードの言葉を聞き、愕然と言葉を失うジュピターキッド。

 と、その時だった。

 凄まじい爆発が起こり、物凄い砂煙と衝撃波が辺りを覆い隠す。

 誰もがその爆発の方に視線を送ると、砂煙が激しく舞い上がる地面の各所には、ちせの身体の一部だった機械の部品が点在していた。

「ちせーーッ!!」「ちせちゃーーん……!!」

 ちせの死に男泣きするシュウジとガイア。

 誰もがちせが自分の命を道連れに、修司を吹き飛ばしてくれたと思った。

 だが、絶望は砂煙の中から平然と現れた。

 なんと無傷の小田原修司が砂煙の中から平然と徒歩で登場し、その虚無の表情を皆に見せ付ける。

「ウソだろ……ちせちゃんの死は、全くの無駄だったって事かよ……!!」

 男泣きするガイアが悲愴感に苛まれる中、正式な恋人だったシュウジが怒りを露わにして、ちせを死に追いやった修司に小銃を連射しながら突撃していった。

「うおおおおおおおおおおおッ!!」

「シュウジ! ダメよ、あなたまでちせと同様、無駄死にするだけよ……!」

 小銃を連射して突撃するシュウジに、ミズキが制止させようと呼びかけるが、シュウジの突進は止まらず、シュウジは修司に銃弾を浴びせながら駆け寄る。

 だが修司は、全ての銃弾が体をすり抜けていた事で、シュウジからの銃撃を全て無力化させたことで平然と突っ立っていた。

 そして目前まで迫ってきたシュウジに、修司は再び日本刀を現出させてその刃から地走りを繰り出し、突撃してきたシュウジの体を真っ二つに切断して仕留めてしまう。

「シュウジのあんちゃん!」

 ちせに続き恋人のシュウジまでも戦死したのを目の当たりにし、大将は苦悶の表情で顔を歪ませた。

 

 次々と戦死していく聖龍HEAD。

 里見八犬伝を基にされたコレクターユイたち。かぐや姫をモチーフにされた美少女戦士セーラームーンたち。魔法騎士レイアースの三人。カードキャプターさくら。白衣の天使ナースエンジェル。愛の戦士キューティーハニー。七つの海を統べるマーメイドプリンセス達。命を持った人形ローゼンメイデン。遺伝子改変によって変身能力を得た東京ミュウミュウズ。そして本来は死ぬ運命であった最終兵器であったちせ。

 小田原修司と共に聖龍隊の基礎を築いた統率者にして創設者。そしてそんな頭目に認められて新たに加えられた二次元生命体たち。

 

 だが、遂に修司の凶行でオリジナルに近い聖龍HEAD以外のメンバーは全員全滅してしまった。

 このまま修司の凶行は続き、残った聖龍HEADも片付けられてしまうのだろうか。

 メタルバードたち残された聖龍HEADはどうするのか。

 

 

 

[生き残る為には……!]

 

遂に聖龍HEADは、風神メタルバード、地神ジュピターキッド、そして水の妖精ウォーターフェアリーを残して、全員が修司によって全滅させられてしまった。

 聖龍隊結成時から、聖龍隊という組織を創設した頃から、世界情勢が著しく変化していく現状で新たにHEADに加えられた頃から、共に聖龍隊の頭目として、そしてアニメタウンを統括する役職に就いていた仲間達が殺伐と蹂躙されていく。

 そんな戦況を圧倒されながら傍観していたメタルバードやジュピターキッド達は、静かに仲間であったHEADを手にかけた小田原修司を見詰めていた。

 修司は、ただただ静かに虚無の表情でメタルバード達を見据えているだけだった。

 そんな修司を見詰めてたメタルバードは、修司から目を逸らし、立っている修司の周辺に転がる仲間だった亡骸に目を移す。

 

 コレクターユイ、コレクターハルナ、コレクターアイたちネットの妖精と呼ばれるコレクターズ。

 魔導士の血縁者でもあり、カンフーの達人である木之元桜の恋人の李・小狼。

 セーラームーンを始めとしたキング・エンディミオンたち星の守護者。

 異世界セフィーロで魔術を会得した魔法騎士の三人。

 魔力を秘めたカードの使い手、木之元桜。

 如何なる傷をも治療してくれてた白衣の天使ナースエンジェル。

 ナースエンジェルの婚約者である宇崎星夜。

 愛の戦士と呼ばれる科学の異端児キューティーハニー。

 七つの海を護るマーメイドプリンセス達とアクア・レジーナの夫、堂本海斗。

 命を持っていたであろう今や残骸と成り果てているローゼンメイデンたち。

 動物の特性を会得した東京ミュウミュウの乙女たちとディープ・ブルー。

 かつては最終兵器として恐れられながらも運命改変により、頼れる仲間であったちせ。

 ちせと同様に運命を変えられた彼女の恋人シュウジ。

 

 共に聖龍隊という巨大な組織の中で励んでいた仲間達の亡骸を見渡して、メタルバードは悲観するばかりだった。

 しかしメタルバードは、創設期から共に聖龍隊という組織を強くしてきた参謀のジュピターキッドやその恋人でもあるウォーターフェアリーを横目で視認し、互いに目と目を合わせると続いて正面の修司に向かって語り始めた。

「……まだ終わらないのか。まだ、終わらせる気はないのか……! かつての仲間達を殺していき、聖龍隊という伝説そのものを全て白紙にしちまうまで、お前はオレ達を殺し続ける気なんだな、修司……!」

 修司に語り掛けるメタルバードに、少し離れた地点で立ち尽くす修司は返答する。

「……そうだな。確かに、まだまだ終わらない。この混沌と醜く変化してしまった二次元界、その世界を腐敗させてしまった原点である聖龍隊という伝説を終わらせるには、その聖龍隊に関わった者たち全員を虚無へと送らねばならない……」

 この修司の返答を聞いて、メタルバードは静かに修司に訴え出した。

「……いい加減、戻れよ修司。かつて周りから迫害されて何も出来なかった弱い自分、そんな自分が出会いという幸せを得て変わっていった頃の自分に戻るんだ、修司……!」

 しかし修司は何もメタルバードに言い返さない。それでもメタルバードは絶えず修司に問い掛ける。

「修司、お前は恐れている……かつての自分、かつての自分と同じだった人間という存在に。人間の無限の可能性を恐れている自分に嫌悪感を抱いていやがる」

 そして最後にメタルバードはジュピターキッドとウォーターフェアリーと共に戦前に飛び出す直前、修司に言い放った。

「修司、本当の自分を恐れるな。戻るんだ、本当の自分に。本当の……自分に!!」

 言い終わった瞬間、メタルバードとジュピターキッドとウォーターフェアリーは同時に前へと駆け出し、修司へと一直線に突撃した。

 この時、メタルバードもジュピターキッドもウォーターフェアリーも、三人とも腹を決めていた。修司を殺してでも倒そうと。

 

 修司に突進中、メタルバードは頭部を変形させて矢じりの様な形状に変形すると、その頭部からエネルギーの矢を射出し、修司目掛けて飛ばす。が、修司は自分の頭ほどの大きさもあるエネルギーの矢を軽々とかわしながら前へと歩み、メタルバード達と距離を縮める。

 すると今度はジュピターキッドが修司に向かって茨の鞭を振り回し、修司を攻撃すると同時に束縛しようと試みる。が、修司はジュピターキッドが操る鞭を容易く回避すると、その直後にはジュピターキッドに闇で作り上げた刃で斬りかかる。

 ジュピターキッドが修司の太刀筋を辛うじてかわしていくと、そんな修司に反撃されて戸惑うジュピターキッドを助太刀しようとウォーターフェアリーが水で鎖鎌を作り、修司を攻撃。しかし修司はウォーターフェアリーの鎖鎌にも動じず、平然と回避しながら三人に反撃するのだった。

 

 三人の猛攻に囲まれる修司だが、即座に修司は二対の刃を逆手で握った両刀の構えで自分を囲む三人に対して刃を振り付け、三人とも滅多切りに斬り付けてしまう。

「くっ……」

 修司に斬り付けられて、浅手とはいえ傷を負わせられたジュピターキッド達は一旦修司から距離を置く。

 両刀の刃から斬り付けられたジュピターキッドとウォーターフェアリーの二人と違い、鋼の肉体を持つメタルバードも修司の闇の刃から受けた傷が身体に残っている事に気づく。

 メタルバードは修司の闇の武器からも生じる、凄まじい闇の覇気の威力に動揺した。

 すると、修司の間髪入れない激しい反撃に遭いながらも、戦意を失わない三人のうち、ウォーターフェアリーが残り二人に告げる。

「バーンズ、ジュニア………………私、行くわ」

「!」「! あ、アプリ……!」

 ウォーターフェアリーの発言にメタルバードもジュピターキッドも戸惑ってしまうものの、ウォーターフェアリーは背中に虹色の羽根を出現させて高速で修司に向かって飛来した。

 ウォーターフェアリーの来襲に、修司は二刀流の闇の刀を構えて応戦する姿勢だった。

 修司の闇の刃と、ウォーターフェアリーの水で作り上げた虹の武器が激突し、凄まじい衝撃波が二人を中心に発生する。

「アプリコット、お前の運命も所詮は俺によって捻じ曲げられてしまった業……フロークが死に、生き残ってしまったお前は新たな運命を選ぶしかできず、この世界へと移転してしまった。一度消滅したお前が生き返り、再び生を謳歌してしまったのも大きな過ちの一つなのだ……!」

「修司さん……! 確かに私は命の水を復活させるために一度は消滅した……けれど、それが再び生を受けて、新たな運命を選択したからこそ今、この世界であなたやジュニア達と生きてこられた! 私は、修司さんやジュニア達と生きている今を恥じた事は今後もないでしょう!」

 ウォーターフェアリーに彼女が蘇生した経緯こそが、この世界を混沌に誘ってしまう過ちの一つだと説く修司。だがそれにウォーターフェアリーは聖龍隊の多くの仲間達と生きている時間は本当に大切なもので、恥じた事は無いと強く説き返した。

 するとウォーターフェアリーは此処で水の武器を二対の刀に変化させて、二刀流で闘う修司と激しく合戦する。

 だが、剣術では到底修司に勝ち目のないウォーターフェアリーは、修司と時おり距離を置いては遠距離から修司に向かって水の手裏剣やくない等を投げ付けて、修司と攻防を展開する。

 そんなウォーターフェアリーに加勢する為、ジュピターキッドとメタルバードも果敢に修司に挑む。

 ジュピターキッドの鞭も、メタルバードのレーザーソードの攻撃も修司は軽々とかわし、二対の刀で弾き返す。

 と、ここで修司は二対の刀を一つにして、一本の巨大な太刀へと武器を変形させると、その大太刀を両手で振り回して豪快に周辺の三人と交戦する。

 修司はここで跳躍すると同時に、大太刀を振り上げて勢いよくウォーターフェアリーの頭上に振り下ろす。

 ウォーターフェアリーは修司が振り下ろす大太刀を防ごうと、水の防壁で修司の闇の大太刀を防御しようとするが。修司の闇の大太刀はウォーターフェアリーの水の防壁を一瞬だけ受け止められながらも、即座に防壁を切断して突破。ウォーターフェアリーに修司の大太刀が直撃してしまう。

「アプリ!」「ッ!」

 ウォーターフェアリーが斬られたのを間近で見て、ジュピターキッドもメタルバードも愕然。

 一方のウォーターフェアリーは修司が振り下ろした大太刀に直撃して、水色の衣服が紅く染まった。

「う……っ」

 大太刀で斬られたウォーターフェアリーは眠る様に息を引き取り、その場に倒れ込んでしまう。

 婚約者の死に、ジュピターキッドは感情が昂り、かつては兄弟分であった修司に総攻撃を仕掛ける。

 ジュピターキッドは地面から無数の植物の荊を続々と出現させて、その荊で修司を攻撃。が、修司は自分に迫る荊を全て振り払い、斬り払ってみせる。

 そして全ての荊を斬り払った後、修司は一気に前へと踏み込んでジュピターキッドの目前まで迫ると、彼を一太刀の元で斬り捨ててしまう。

「ジュニア……!」

 遂にジュピターキッドまでも戦死し、メタルバードは蒼然とする。

 

 遂に聖龍HEADでも最古参であり、創設者のメンバーでもあったジュピターキッドもウォーターフェアリーも戦死した戦況に、メタルバードは愕然と立ち尽くす。

 そんな愕然とするメタルバードと向き合う形で忽然と立つ修司。両者が向き合い、静寂だけが戦場に流れる。

 自分と向き合う修司に、メタルバードは胸中から溢れ出す悲しみを必死に堪えて修司に問い掛けた。

「オレは、オレは……修司、お前と出会えたからこそ。今に至るまで多くの仲間を、繋がりを得られた……! お前のお陰でオレは…………孤独から抜け出せた」

 故郷である王国が滅び、王族である両親とも死別したメタルバードことバーンズ。そんな彼は修司と出会ったからこそ、そこから多くの仲間や絆を得られ、孤独から抜け出せたと説き明かす。

 そんなメタルバードに修司は歩み寄り、メタルバードも修司に語り掛け続ける。

「オレはお前から……多くの絆を与えられたんだ」

 メタルバードは必死に、修司に感謝の気持ちを伝えていくが。

 修司がメタルバードの目前まで歩み寄った、次の瞬間。

 修司はメタルバードの鋼鉄の肉体に闇の刃を突き刺し、メタルバードの変身能力を闇の能力で吸収。するとメタルバードから元のバーンズへと姿が変わると、修司は更に闇の能力で今度はバーンズの生体エネルギーを吸収して、バーンズの生命力そのものを吸引し始めた。

「うッ……!!」

 修司の闇の太刀から能力を無力化されただけでなく、生命エネルギーも吸収されて弱弱しくなっていくバーンズ。

「バーンズ!」「バーンズさん!」

 次第に生命機能を失っていくバーンズを見て、大将や檻の中の新世代型二次元人たちは一驚する。

「修司……! お前の、お前の苦しみは……全ての命を安らぎに送らない限り、収まらないというの、か………………」

 そう修司に問い掛けていく中、バーンズは白目になり、そして命尽き果て倒れ込んでしまった。

 

 ウォーターフェアリー、ジュピターキッド、そしてメタルバードも遂に修司によって倒された戦況に、蒼然とする戦場。

「へ、HEADがやられた……!」

「やっぱり、小田原修司に勝てる訳がなかったんだ……!」

「‎に……逃げよう!」

 次の瞬間、戦場で佇んでいた兵士や隊士達が恐怖で萎縮し、一斉に逃げ腰で逃避行し始めた。

『うわああああああああああ……ッ!!』

 逃げ惑う兵士達に、大将が必死に宥め掛ける。

「何処に逃げるって言いやがる!? もう、何処の世界にも逃げ場なんてないんだぞ!!」

 大将の掛け声に、反応する兵士もいるが、未だに我が耳に届かない者たちもいた。

 すると、そんな恐怖で混乱する兵士達に修司が呼び止める。

「大将の言う通りだ……もう何処の異世界にも俺は瞬間移動する事ができる。もう逃げ場なんて何処にもないんだ……大人しく死という安寧へと向かうがいい」

 そう言うと、修司は両手に剣を携えて混乱状態の戦場に駆け込んで斬り込もうと走り出す。

 その駆け出す修司を見て、更に恐怖で混乱する兵士達。

 するとそんな戦場に踏み込もうとする修司の目前に、大将や多くの武将達が立ちはだかった。

「修司! これ以上……これ以上、大切な仲間の命は奪わせないぞ!」

 大将の一声に同調する様に、他の武将達も修司を睨み付ける。

「生き残れ! 修司から生き残る事こそ、今を生きている俺達が真に成すべき事だ!!」

 修司の前に立ちはだかる大将は、戦場で生き残っている仲間達に修司から生存する事こそ自分達が成すべき事だと主張する。

 大将の掛け声を聞いて、大将と共に修司の前に立ちはだかる武将達も主張する。

「鬼神から生き延びる為には……結局、鬼神を倒す以外あり得ないって事だ……!」

「その通りでござる……!」

 蒼龍デイ・マァスンと紅虎シン・ユキジの意気込みに、更に意気込む武将達。

 

 すると、そんな武将達と対峙する修司の背後から、一閃の閃光が修司の頬を掠める。

 修司の頬に付いた傷は瞬く間に再生し、修司が背後を振り向くと其処にいたのは。

 004に肩を担がれて辛うじて立っている両脚を負傷した009が他のサイボーグ戦士達と共に、修司に向けて光線銃を構えている光景だった。

 先ほど両目と両耳を塞いで身動きを止めている003以外のサイボーグ戦士たちが、揃って修司に光線銃を向けていると、009に修司が問い掛ける。

「もう両脚を破壊して、加速装置も使えないというのに……009、お前達はまだ俺に抗うと言うのか」

『………………』

「もう終焉は訪れている。お前達がどんなに抗おうと、終わりという名の末路は変わらない」

 この修司の台詞を聞いて、009は修司を睨み付けて言い放った。

「いつか終わりが来るなら……何度だって壊れてもいい」

 終わらない戦い……それを生み出す、人の生み出す業の深さ……それでも信じて戦い続け、求め続ける本当の平和……それ故の、悲しみの涙。

 そんな業深いサイボーグ戦士達の悲しみを受け止めた修司は、彼らの悲しみや苦境を拭う為に、一瞬の内に抜刀してサイボーグ戦士達の方へと踏み込んだ。

 そして一瞬の隙に、修司はサイボーグ戦士達を斬り捨て、009を始めとする戦鬼達は地面へと倒れていった。

 

 遂に無名・著名な二次元人に限らず、聖龍HEADですらも全滅させていく小田原修司。

 純粋なる破滅へと進化した修司への抗いは、全く未来を勝ち取る運命すらも見出す事がなく、多くの命が失われる戦況が続く。

 果たして、この小田原修司に抗い、戦い続ける先に見出せる未来は猛者達の前に訪れるのであろうか。

 

 

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