聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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※このシリーズは架空戦記の物語であり、実在の人物とは関係ないフィクションであります。

※私自身もっと作品の出来を良くしたい一心が抑えきれません。そこで、どなたか心優しい方からのコメントや感想など募集しております。

※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。

※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。

※今回も多くの版権キャラが死亡するという過激な描写が目立つストーリーでありますが、最後の大どんでん返し&ハッピーエンドまでお付き合いください。




現政奉還記 破滅の章13 抗う猛者たち⑤

 

 幾戦の激闘を勝ち抜いてきた猛将たるキャラクター達。

 だが、彼らの戦いを前に、既に身も心も虚無へと堕ちた過去(かつて)の友たる鬼神だった男には何一つ届かなかった。

 歴戦の勇姿たる戦ぶりも、彼らの必死な心境を綴った言葉も。純粋な破滅へと進化した小田原修司には何も響かない。

 ただただ、破滅へと進化した修司によって戦死する猛者たちの数が増え、死体の山が次第に築かれていくばかり。

 此処まで、どれだけの猛者たちが死んだのだろうか。

 

 

 

 果たして、戦死した者たちの無念を晴らすべく、破滅へと進化した者を食い止められるのか。

 それとも彼らの死も無意味に終わり、更なる死者を増加させ、破滅はこの世を完全なる無へと誘うのであろうか。

 

 

 

[死する国連軍最強戦力]

 

 大切な仲間達を、次々に凶刃にて狩り続ける修司の強攻を何としても止めようとする聖龍隊。

 それに対して、もはや今の修司には説得すらも無意味だと悟り、修司を討伐する勢いで取り囲む国連軍。

 そんな相反する二つの勢力に取り囲まれ、修司は無表情で口を開いた。

「……こんな純粋な破滅へと進化という俺であっても、未だに救いたいと思う者たち。それに反して今の俺だからこそ、殺めてでも戦争を止めようとする者たち。此処まで思惑が真逆なのだな」

 この修司の台詞を聞いて、ワイルドタイガーが隣のルナティックに問い詰める。

「おい、ペトロフ。まさかお前さんたち国連軍は、修司くんを殺そうって腹か?」

「あなた達こそ、今の破滅へと進化したと自負する小田原修司を本気で生かしたまま止められると思っているんですか? ……まあ、それならそれで今も昔もあなた達は変わらない。相変わらず低能な正義感ですね」

 修司を殺める気なのかと問うワイルドタイガーに対し、ルナティックはワイルドタイガー達の正義が今も昔も変わらない低能な正義だと唱える。

「おい、聖龍隊の猛者共よ……ッ! 今の修司には、最早なにを言うても意味が無かァね! 此処は本気で修司を仕留めんと、勝てる戦いも勝てなくなるわい!!」

 全身から蒸気を発する国連軍元帥の赤犬も、自分の補佐役であるルナティック同様に修司を殺める気で戦いに出る所存。

 すると此処で修司が、再び戦闘を開始するのか前へと一歩ずつ前進。

 これに対し、国連軍元帥赤犬は今までの戦闘で生き残っている直属の部下ユーリ・ペトロフことルナティックと、大将である黄猿と藤虎の三名と共に修司へと進撃を開始する。

「国連軍! 小田原修司を仕留めるぞォ!!」

 赤犬の怒号にも近い号令を皮切りに、二人の大将と補佐官は修司に攻撃を仕掛ける。

「あ、待て!」

 修司を殺めようと進撃する国連軍に、ワイルドタイガーは止めるが彼らと修司の戦いは始まってしまった。

 

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 黄猿は修司の目前で跳び上がると、両手の親指と人差し指で円を作り、そこから無数の光の弾丸を修司に向けて放った。

 だが現時点で、闇のエネルギーと完全同化している修司に黄猿の光エネルギーは吸収され、無力化されてしまう。

「おやおやぁ、やっぱわっしの光エネルギーじゃあ効きやせんですかぁ」

 自身の能力では今の修司には効果がないと、黄猿は半ば呆れてしまう。

「ふんっ!」

 修司が黄猿の技を無力化させてすり抜けた直後、修司へと激しく斬り込む盲目の剣士藤虎。

 自ら己の目を潰した藤虎の剣戟を、修司は片腕のみの片太刀バサミで受け止めて見せる。

 そして修司が藤虎を鍔迫り合いの後に押し退けると、藤虎は己の重力操作の能力で修司を地面をへこませる程の重力で押し付けて拘束し、自由を奪おうとする。

 だが修司は自身に加わる重力のみを闇の能力で無力化させて、平然と歩みを続ける。

 これを見た藤虎は、修司を止めるべく、ある戦法を行う。

「皆さん方! あっしと小田原修司から離れてくんなし……!」

 そう周りの皆々に告げた藤虎は、修司に向けて重力操作能力で宇宙空間から小惑星を落下せ、隕石として修司に直撃させようと試みる。

 だが修司は自分の真上から隕石が落下するのを察すると、背中のブースターを噴出させて真上へと急上昇し、二対の片太刀バサミで頭上の巨大隕石を細切れにしてみせた。

「わっ、わっ!」「こ、粉々になった隕石が……!」

 修司が細切れにした隕石が上空から降り注ぐ惨事に、ワイルドタイガーやバーナビーたち地上の面々は慌てふためく。

「ふんっ!」

 だがその無数の細切れされた隕石の破片を、藤虎が再び能力を発動させて頭上で停止させる。

 そして一時ばかし隕石の破片を上空で滞空させて落下速度を落とした後に、能力を解除して隕石の破片を緩やかに地上へと落としていく。

「ふぅ」

 安心する藤虎だったが、その藤虎の背後に修司がテレポーテーションで瞬間移動して急接近。

「藤虎さん!」「!!」

 黒い檻の中で、以前国連軍本部で藤虎と親しくなった新世代型二次元人の燃堂力の叫び声に反応し、修司の存在に気付く藤虎。

 そして次の瞬間、修司の片太刀バサミと藤虎の刀が激突。修司も藤虎も一歩も後へは退かない。

 更に修司の背後に光速移動で駆け付けた黄猿も、修司に斬り上げる。

天叢雲剣(あまのむらくも)

 自身の半身以上はある白兵戦用の巨大な光の剣で修司の頭上から斬り付けようとする黄猿。

 だが修司は黄猿の剣戟を、もう一本の片太刀バサミで受け止めてしまい、修司は同時に藤虎と黄猿両者の剣戟を防いだ。

 そして両者の剣戟を防ぎながら、修司は身に纏っている血の鎧から無数の文房具状の武器を飛び出させて、次の瞬間には全身からその武器を射出して前後にいる藤虎と黄猿に浴びせた。

「むぅッ……!」「おおっと」

 全身に文房具状の武器を浴びせられ、思わず退く藤虎に、顔にかけていたティアドロップ型サングラスが欠けてしまい後退する黄猿。

 修司が二人を退かせた直後、修司に向かって元帥赤犬とルナティックが同時に襲い掛かった。

「死にさらせえ……!!」「タナトスの声を聞け……!」

 赤犬は溶岩化した両腕で、ルナティックは両手から高温の青色の炎を発して、修司に襲い掛かる。

 だが修司は臆する事無く、対の片太刀バサミでの二刀流で赤犬とルナティックに反撃する。

 赤犬の灼熱の溶岩は修司の物体をすり抜ける肉体を通過して無意味に終わり、ルナティックの青の炎を纏う拳法は上手く自らの腕で交差させて防いで見せた。

 そしてルナティックを後ろへと放り出した修司は、二対の片太刀バサミでルナティックの背中に交差させた刀傷を負わせた。

「うっ……!」

 背中を切り裂かれたルナティックは悶絶するが、修司の追撃は終わらない。

 これ以上やられまいと、ルナティックは態勢を立て直し、修司と向き合うと両手から再び青色の炎を発して奮闘する。

 が、修司はルナティックが両手から炎を発したのを目視すると、躊躇いなくルナティックの両手首を二刀流の片太刀バサミで切断してしまった。

「ぐっ……!」「ペトロフさん!」

 両手首を切り落とされ、悶絶するルナティックを目撃して鏑木楓が悲痛に叫ぶ。

 すると此処で修司が両手を失ったルナティックに歩み寄りながら、彼に話し掛けた。

「ペトロフ、己の能力の衰えで自暴自棄になり、酒に溺れて暴力的になった実父レジェンドを手にかけ、その憎悪が刻み込まれた顔の手形の火傷……そして、それを目の当たりにした母親から死神と憎まれ……そんなお前の悲劇を俺が真っ白にしてやろう」

 これに対し、ルナティックは腕の痛みに耐えながら言い返した。

「小田原修司……! 私が酒に溺れて母に暴力を振るうようになったMr.レジェンドを、父をこの手で殺めた経緯も……それ故に母から死神と憎まれるようになった記憶も、どれも貴方に消される所以はない! 私の記憶が、思い出の全てが今の私の正義を形作っているんです!」

 ルナティックは両手から血を流しながら立ち上がり、修司に唱え続ける。

「私はただ……父か教えとかれた「悪を見て見ぬふりをしてはいけない、それを止められるような強い男になれ」という教えを胸に、父を止めるべく父を殺めたのです! 未だに己の正義が不完全で、実に弱く脆いかを理解し切れていない他のNEXTヒーロー……そして聖龍隊の輩とは違う絶対的正義を認めてくれた国連軍と共に、あなたを殺してでもこの戦争を止めます!!」

 己の信条や美学を貫くルナティックの力説を聞いて唖然とするNEXTヒーローや聖龍隊。

 修司はそんなルナティックに対して、二対の片太刀バサミを両手に携えて前で交差させると一気にルナティックに詰め寄った。

 交差させた片太刀バサミは、ルナティックの首へと差し向けられた。

 誰もがルナティックの首が切断されそうになるのを覚悟した、その時。

「ふんッ!」

 なんとルナティックを押し退けて、赤犬がルナティックを庇護したのだ。

 驚愕するルナティックに周囲の面々。そして修司が交差させた片太刀バサミで切断したのは、溶岩化して肥大化した赤犬の右腕だった。

「元帥殿!」

 自分を庇って右腕を失った赤犬に、ルナティックは悲痛な声で呼びかける。

 すると赤犬は切断された右腕を再生させると、ルナティックに言った。

「お、おまはんは……まだまだわしの片腕として働いてもらわなきゃあいかん……!」

「元帥殿……!」

 自分の正義の価値観を完全に理解してくれる赤犬の言葉に、ルナティックは感激する。

 と、赤犬とルナティックが語り合っている所へ、修司が赤犬に急接近して赤犬に囁いた。

「赤犬、恐怖心というトラウマには、例え如何なる猛者だろうと尻込みするだろう」

「!?」

 修司の囁きに一驚する赤犬。すると修司はそんな赤犬に右手の手の甲を打ち付けた。

 するとその瞬間、赤犬に強烈な衝撃が与えられ、赤犬は悶絶した。

「ふご……ッ!!」「元帥……!」

 修司が放った強力な衝撃をまともに受けて悶絶する赤犬と、その衝撃に巻き込まれて同じく悶絶するルナティック。

「かつて白モジャによって与えられた地震の衝撃……! まともにそれを浴びた赤犬、お前にとってこの力はトラウマの筈だ」

 かつて赤犬が白モジャ(ONEPIECEの白髭に当たる人物)に浴びせられた地震の衝撃を繰り出した修司。この力を闇の能力で再現して赤犬に攻撃した修司。

 修司が放った地震の衝撃は、赤犬とそれに巻き込まれたルナティックを中心に、大地に亀裂が入るほど強力だった。

「ぐは……ッ」

 外骨格に留まらず、内臓までも粉砕するほどの地震の衝撃を浴びて悶絶する赤犬に、修司は容赦なく闇の覇気を纏わせた片太刀バサミで突き刺して追撃。

「うッ……!」

 本来は全身を溶岩化させる事で如何なる物理攻撃を無力化できる赤犬も、修司の能力を封じる闇を纏った片太刀バサミで体を貫かれれば、再生は不可能。

「うぅ……!」「元帥殿!」

 刺し突かれた後に、横へと刃を引き裂かれた赤犬は血反吐を零しながら倒れ、それを見たルナティックは激しく動揺する。

 だがルナティックが動揺している最中、修司は片太刀バサミを持つ右腕を横へと真っ直ぐに伸ばすと、一気にそれを動かして瀕死の赤犬の首を斬り落とした。

「あ…………ああぁ…………!!」

 目の前で赤犬が断頭されたのを目撃して、ルナティックは激しく動揺し、我が目を疑った。

「うわああああああああ……ッ!!」

 己の美学と正義感を認めてくれた赤犬の死を目の当たりにして、絶叫するルナティック。

 が、そんな悲観するルナティックを、修司はテレポーテーションで瞬間移動して迫る。

 そして二対の片太刀バサミを交差させて、ルナティックの首を狙った。

「鋏・首断ち」

 そう言った次の瞬間、修司は何の躊躇いもなくルナティックの首を交差させた二対の片太刀バサミで切断。

 首から下は地面に倒れ、切断された首は地面に転がった。

「ぺ……ペトロフ!!」

 赤犬に続き、ルナティックまでも戦死した情景にワイルドタイガーは愕然とした。

「赤犬、お前の……いや、俺たちの過激な正義は確かにこの混沌とした世界では必要だったのかもしれない。だが、時には善悪全てを丸ごと消し去ってしまうお前の過激な正義も、俺の非情の正義も、全て真っ白な桃源郷では必要なくなるんだよ」

 赤犬とルナティックの亡骸を見下ろす修司が静かに唱えていると。

 そんな修司を黄猿と藤虎が攻撃する。

「天岩戸」「地獄旅」

 黄猿と藤虎の技が同時に修司に襲い掛かる。

 修司は黄猿の攻撃で爆発に巻き込まれ、同時に藤虎の重力で地面ごと地中へと陥没してしまう。

 黄猿と藤虎は上空からそれぞれ修司の安否を視認しようと見下ろしていたが。

 そんな二人に陥没した地面の地中から二対の片太刀バサミが飛び出しては黄猿と藤虎に飛来してきた。

「!?」「ッ!」

 二本の片太刀バサミのうち一本は、黄猿の体に突き刺さり、藤虎の方は寸前で自らの日本刀で防ぐ事が出来た。

「黄猿はん……!」

 片太刀バサミを防いだ藤虎が、もう一本の片太刀バサミが突き刺さった黄猿に声をかけると、黄猿は苦しそうに言い返した。

「おやおや……! わっしは昔から能力に頼り過ぎる節があったからねェ、まさかこんな鋏の武器でやられちまうとは……!!」

 黄猿が苦しそうに呟いていたその時、一瞬にして藤虎が防いでいた片太刀バサミが消えたと思いきや、同時に黄猿に突き刺さっていた片太刀バサミの刃が真上を向いて、そのまま黄猿の体を上方向へと一人でに切り裂いた。

「ッ!?」

 自分が受け止めていた片太刀バサミが消えたと同時に、黄猿に突き刺さっていた片太刀バサミが一人でに黄猿を切り裂いた状況を察知した藤虎は激しく戸惑った。

 すると消えた片割れの片太刀バサミが藤虎の背後へと瞬間移動し、その切っ先が藤虎の背面を狙っていた。

「ッ!!」

 背後の殺気に気付く藤虎だったが、ひとりでに宙を舞う片太刀バサミはそのまま藤虎の背面に突き刺さり、切っ先が腹部から貫通していた。

「ぐほっ」

 背中から片太刀バサミが貫通した藤虎は血反吐を吐く。

 そのまま藤虎を突き刺した片太刀バサミは自然と引き抜かれ、それと同時に藤虎は黄猿共々地上へと落下し力尽きた。

「ふ、藤虎さん!!」

 地上へと落下する藤虎を見て、檻の中の燃堂力は涙目で叫ぶ。

 一方で、黄猿と藤虎を始末した二対の片太刀バサミは、そのまま宙を舞って自然と陥没した地面へと消えていった。

 その陥没した地面、その深淵の中から修司が二対の片太刀バサミを両手に携えて舞い上がる様にして現れた。

「ッ! 超能力で二対の片太刀バサミを遠隔操作したのね……!」

 片太刀バサミを両手に携えて現れた修司を見て、ミラールは修司が斉木楠雄から会得した超能力で二本の片太刀バサミを遠隔操作して黄猿と藤虎を倒したのだと把握する。

 

 国連軍元帥であり溶岩の能力者である赤犬。

 その赤犬の補佐官に抜擢されたルナティックことユーリ・ペトロフ。

 最強戦力と謳われる黄猿と藤虎。

 この四名をも殺めた小田原修司の苛烈な殺戮は、まだ終わらない。

 むしろこれから始まるのだった。

 

 

 

[増え続ける戦死者]

 

 遂に国連軍のトップ4までも倒した小田原修司。

 そんな修司を前にして、若干ながら尻込みしてしまう存命中の聖龍隊士たち。

「まだ終わらんぞ……!」

 突然の修司の発声に一驚する聖龍隊。

「まだ終わらん……俺が成すべき桃源郷は、まだ始まらない……!!」

 未だに己が成すべき、個性という色がない真っ白な桃源郷を叶える一心の小田原修司の過激な戦闘は始まったばかり。

 

 修司は先ほど超能力で遠隔操作した二対の片太刀バサミを再び握り締め、目前の聖龍隊を襲撃する。

「き、来たぞ!」「小松! お前はオレたちの後ろに下がってろ!」

 来襲してきた修司に、サニーとゼブラは自分達の後ろに小松を退かせた。

「なんで非戦闘員の小松までこの戦場に来たのか知らんが……まあ、どっちでもいい。誰もを平等に桃源郷へと導くのが、俺の最後の使命……!」

 そう言って修司は小松も含めて、サニーやゼブラ達に地走りを撃ち込んだ。

 その修司の斬撃を、ゼブラはお得意の轟音でかき消して、その間にサニーが髪の毛の触手で修司を捕えようと触手を伸ばす。

 すると修司は右腕に銃口を出現させて、その銃口から火炎弾を発射。地上を這って接近してくるサニーの触手を全て焼き尽くしてしまう。

「ッ!」

 自慢の触手が全て焼かれてしまい、口元を歪ませて悔しがるサニー。

 そんなサニーに修司は二対の片太刀バサミを腰に滞納して素手の右手を差し向けると、そのままサニーを超能力で宙に浮かして拘束してしまう。

「うぐっ……!」「サニー!」

 宙に浮かび上がらせられ、身動きできないサニーを見てゼブラが慌てて救出しようと駆け出すが、そんなゼブラもサニー同様に修司は超能力で浮かして拘束してしまう。

「ぐぐぐ……ッ!」

 ゼブラもサニーも、両者ともに身動きを封じられてしまう状況で、修司は二人の目前に同じく超能力で浮かした二対の片太刀バサミの切っ先を差し向けた。

「ま、待ってください!」

 今にも片太刀バサミでサニーとゼブラの二人を刺殺しようとする修司に、小松が制止をかけるが、修司はそんな小松の制止の声に微動だにせず次の瞬間サニーとゼブラの二人に容赦なく片太刀バサミを突き刺した。

「ッ!」「ッ……!」「ああ……!」

 片太刀バサミで刺し貫かれたサニーとゼブラを前に、小松は愕然と絶望した。

「……サニー、俺もお前同様に美しいものが愛おしかった時期がある。だがこの世は所詮、美しいものと醜いものの二つで形成されている。自然の美しさも、人間の醜さも、すべての要素が俺の価値観を激しく歪ませた」

「………………!」

「……ゼブラ。以前にお前とジェラールを共に釈放してやった時に言ったな。俺もお前に適応できるよう努力するが、お前も俺に適応してくれ、とな。俺達は仲間として上手くいってたかもしれないが、俺の産まれた三次元界とお前らのいる二次元界が共生するほど適応はしてくれなかった。結局のところ、俺が描いた二次元人と三次元人の適応した共存の理想は、それこそ夢幻だったんだよ」

「ッ………………!」

 死する前にサニーとゼブラに現実(いま)の自分の心境を語った修司は、躊躇なく二人に突き刺さった片太刀バサミを超能力で引き抜いて命を奪った。

 サニーとゼブラの死を目前にした小松は、絶望し切った表情で二人の亡骸を見詰めてた。

「さて、次は小松だが……何ゆえ、非戦闘員であるお前までこの戦いに参加している? 普通に考えて、トリコ達の足手まといになると思わなかったのか?」

 修司に問い掛けられた小松は、次の瞬間遠くを見つめていた瞳を閉じて開き、力強い眼力で修司に返答した。

「それは……! 修司さん、僕はあなたに……いいえ、本来は黒武士に伝えておきたい言葉があったからです」

 小松の言葉に修司が耳を傾けていると、小松は真剣な顔付きで修司に言い放った。

「し、修司さん! あなたがどんなに辛いかは想像できます! だけど……だけど! あなたであろうと誰であろうと、人の夢を壊したり奪ったりするのは断じて許される事ではないんです!!」

「………………」

 小松の真剣な想いを耳にし、修司は一時ばかし眉一つ動かさず硬直した。

 が、しかし「うっ……!」修司は小松にも無慈悲に片太刀バサミを突き刺して刺殺した。

「確かに。人の夢を壊したり阻害したり、はたまた否定する権限は誰にもない。だが、人が夢という理想を追い求め続ける限り、争いという悲劇が繰り返されるのもまた事実だ。小松よ……」

 修司は片太刀バサミを引き抜いて、小松を絶命させた。

「小松ーー……ッ!」

 またしても同じ総合部隊の仲間が死んだ情景に嘆くミラール。

 

「このーーっ!」「っ……!」

 仲間たちを次々に倒していく修司を悲痛な思いで止めに行く葉月いずなと鹿島リン。

 だが修司は覇気を纏わせた片太刀バサミの一振りで放った衝撃波で、いずなが操るくだ狐達を容易く一掃してしまう。

「っ! 私のくだ狐たちが……!」

 更に修司は接近してヨーヨーで攻撃してくるリンが操る傀儡アリスのヨーヨーを左手の片太刀バサミで敢えて雁字搦めにさせて、アリスのヨーヨーを封じた直後に先ほど赤犬にも放った地震の衝撃をアリス本体に放って人形であるアリスを粉々に粉砕してしまった。

「アリス……!」

 大事なくだ狐達にアリスを薙ぎ払われて愕然とするいずなとリン。

 修司はそんな勢いよく攻め込んできた二人の懐に駆け込むと、同時に二人を片太刀バサミで斬り込んだ。

「うっ……」「っ……!」

 修司に斬り捨てられた葉月いずなと鹿島リンの二人は、そのまま地面へと前のめりに倒れ込んだ。

「いずな! リン! ……クッ」

 一気に二人も仲間を失ったミラールは、悔しさを噛み締めて修司に向かってミラージュ・ガンを連射する。

 しかし鏡魔法での光エネルギーは無慈悲にも修司の闇の能力に吸収されて無力化される。

「修司の奴……!」「行け、ヒーローマン!」

 激怒した岩崎月光はハチカヅキを担いで修司を殴り掛かり、それに続けとジョーイはヒーローマンに指示を出した。

「……異常化した物語の登場人物たちを端正する役目を担った月光、お前はこの様々な物語が一体化した混沌の世界こそ端正しなければならないと思わないか?」

「ウッセェ! 修司、おかしくなっているのはこの世界じゃねえ……アンタ自身が狂っちまってる!!」

 修司と一しきり会話を挟んでから、月光は修司にハチカヅキでの打撃攻撃を仕掛ける。

 だが修司は瞬時に真上へと跳び上がり、片太刀バサミを振りかざして月光が振るうハチカヅキの鉢へと一気に振り下ろした。

 修司が振り下ろした片太刀バサミは、月光が振るうハチカヅキが被る鉢に斬り込みを入れ、そのままハチカヅキの顔面を斬り付けた。

「! ハチカヅキ……!」

 鉢と顔の間から夥しい量の出血を溢れさせるハチカヅキを目前にし、驚愕する月光。

「げ、月光様……」

 顔面を深く斬り付けられ、斬られた鉢の裂け目から覗く大量の出血を流すハチカヅキの虚ろな眼差しに月光は更に慄いた。

 だが月光が血まみれのハチカヅキの顔に慄き、意識が奪われていると、そんな月光にハチカヅキの鉢を斬り付けた修司が地上へと着地すると同時に態勢を低くして、月光の両足首を片太刀バサミで切断した。

「うわっ」

 両足首を切断されて転倒してしまう月光に、修司は追撃で至近距離からの地走りを繰り出した。

「!!」

 目前で放たれる地走りを前に、驚愕する月光だったが、回避する事もできず、そのまま地を走る斬撃の餌食となってしまう。

「月光!」

 地走りの餌食となった月光を目撃し、エンゲキブは悲愴な面持ちに表情を変化する。

 すると其処に電撃を纏った拳で修司に攻撃するヒーローマンが迫ってきた。

 しかし修司はヒーローマンの電撃を纏った拳を素手で受け止め、感電しても微動だにしない。

 しかもその時、修司はO・Dの万物を崩壊させる能力を使用し、ヒーローマンの片腕を砂状に崩壊させてしまう。

「ヒーローマン!」

 ジョーイが叫ぶ中、修司は更に能力を強め、完全にヒーローマンを砂状に崩壊させ、消滅させてしまった。

「そんな……ヒーローマン……」

「ジョーイ!」「ジョーイ、しっかりしろ!」

 ヒーローマンを失い茫然自失となるジョーイに、リナとサイが駆け付ける。

 ふと修司は視界に、月光やハチカヅキ、そしてヒーローマンを失って茫然自失に至る者たちを入れると、彼らに左腕を差し向け、同時に左腕に銃口を出現させては火炎弾を発射。火炎弾はエンゲキブにジョーイ、リナとサイの足元に着弾すると同時に爆発し、四人を一度に爆死させた。

「安心しろ、誰も残しはしない。皆そろって、仲の良かった友と一緒に虚無の桃源郷に導き、誘ってやる……」

 四人を一度に吹き飛ばした修司は、虚ろな眼差しで呟くのだった。

 

「くっ、こうなったら……総力戦だ!」

 スカイハイの一言に、ロックバイソン/ドラゴンキッド/折紙サイクロン/ファイヤーエンブレムらNEXTヒーロー達が怒涛の勢いで修司に進攻する。

「ま、待つんだ! むやみに突っ込んだら、かえって危ない……!」

「みんな、待って!」

 ワイルドタイガーや娘の鏑木楓、そしてバーナビーが気に留める中、三人以外の生存しているNEXTヒーロー達は修司に攻め込んだ。

 NEXTヒーロー達に続けと【デジモンクロスウォーズ】の工藤タイキ、蒼沼キリハ、天野ネネ、陽ノ本アカリ、剣ゼンジロウ、天野ユウ、明石タギル、最上リョウマ、戸張レン、州崎アイル、真下ヒデアキ達も修司に進撃する。

 更に数での進攻に自信が付いたのか、【DOG DAYS】のシンク・イズミ、高槻七海、レベッカ・アンダーソン、ミルヒオーレ・F・ビスコッティ、エクレール・マルティノッジ、リコッタ・エルマール、ロラン・マルティノッジ達も修司へと猛進し出す。

「……少し鬱陶しいな」

 そう修司が思わず零すと、修司は両手で印を結んで技を繰り出した。

「天変地異……!!」

 すると突然、修司の周辺で強大な竜巻や暴風、そして雷が発生。それらは修司に進撃しようと駆け出したNEXTヒーロー達や【デジモンクロスウォーズ】そして【DOG DAYS】の面々を強襲。部隊は忽ち壊滅してしまう。

「そ、そんなバカな……!」

 いくら相手が強すぎるとはいえ、一気に壊滅させられるほどなのかと驚愕するワイルドタイガー。

 そして修司の周囲には、暴風や竜巻で巻き上げられたり、雷に直撃して動かなくなったスカイハイ/ロックバイソン/ドラゴンキッド/折紙サイクロン/ファイヤーエンブレム/工藤タイキ/蒼沼キリハ/天野ネネ/陽ノ本アカリ/剣ゼンジロウ/天野ユウ/明石タギル/最上リョウマ/戸張レン/州崎アイル/真下ヒデアキ/シンク・イズミ/高槻七海/レベッカ・アンダーソン/ミルヒオーレ・F・ビスコッティ/エクレール・マルティノッジ/リコッタ・エルマール/ロラン・マルティノッジ達の亡骸が無残にも転がっていた。

「酷い、酷すぎるぜ……」

 死地を共に乗り越えてきた仲間達の死を目の当たりにし、その惨状に落胆するワイルドタイガー。

 

「さて、スター・ルーキーズで残っているのは……ワイルドタイガーにバーナビー、楓……日ノ原革にコトハ、そして哀れにも将人を失って悲しみに暮れるミヤビ……六道りんねに真宮桜……それから後は、まだ聖龍隊に入隊したばかりの新参者ばかり。そして最後はやや怖気づいている総部隊長のミラールか。これはこれで後片付けが楽だな」

 修司は目の前を見渡して、まだ生き残っているスター・ルーキーズの面々を視認すると彼らの完全粛清を行おうと刃を握り締める。

「バニーちゃん、楓」「「?」」

 と、ここで真剣な面持ちで話し掛けてきたワイルドタイガーにバーナビーと楓が反応する。

「例えこの先、何があっても……俺は、二人には生き延びてほしい」

「「!!」」

 このワイルドタイガーの重みある言葉に、バーナビーも楓も一驚する。

 そして二人に言い残したワイルドタイガーは、単身修司へと突っ込んでいった。

「虎徹さん!」「お父さん!」

 バーナビーと楓の悲痛な呼び声にも反応せず、ワイルドタイガーは一気に修司の懐に入ると、修司の胴体にハンドレッドパワーで強化した腕力で拳を打ち込もうとする。

 しかしワイルドタイガーの拳は、修司の体を簡単にすり抜けてしまい、修司に直接的なダメージを入れる事は叶わなかった。

「虎徹、能力が減退しても尚、ヒーローとして闘い続けるお前を俺は称賛する。お前のその意気込みがあれば、ユーリの父であったMr.レジェンドも少しは真っ当に生きてくれてたかもしれない。ルナティックがお前に一目置いていたのは、正直自分の父親とお前を重ねていたからだ」

「だからどうしたって言うんだ! 修司くん、君だって自分を認めてもらいたい一心で今まで頑張って来たんじゃないのか!?」

「そうだ……だからこそ、今の世は完全に俺という存在を……俺という武力を欲してしまう様に至った。俺という悲劇の根源、争いの発端は完全に消滅しなければならない……俺のクローンと共にな」

「自分が嫌いだからって、自分のクローンまで消しちまう事はないだろう!」

 修司と激しい戦闘を繰り広げるワイルドタイガーだったが、此処で一分が過ぎてしまい、彼の能力が途切れてしまった。

「ッ、まだまだ……!」

 しかし能力が切れたとしても、ワイルドタイガーは自力で修司を殴りにかかる。

 修司はワイルドタイガーの拳を容易く避けながら、右手の片太刀バサミに力を込める。

「絶えずヒーローとして邁進し続けるお前達の勇姿には驚かされる。だが、混沌の世を救う事も……俺の欠落した心を癒してくれるのも……」

 次の瞬間、修司は一瞬の間合いでワイルドタイガーに斬り込んだ。

「到底、二次元人では不可能なんだ……!!」

 自分が原因で混沌とした世の中を救うのも、自分の欠落した心を癒せるのも、二次元人では無理だと説く修司の一太刀で、ワイルドタイガーが装着していたロボットスーツも大破し、虎徹自身も血反吐を吐いた。

「虎徹さんッ!」「お父さん!!」

 修司に斬られ、スーツは大破、そして虎徹はそのまま前のめりに倒れて動かなくなった。

「大切な存在を失ったのは、これで二度目だったか? バーナビー、そして楓……両親を一度に失い、母親を病死で失い……無力ゆえに失う。これが現実という苦痛だ」

 修司の力説にバーナビーと楓は下を俯いたまま沈黙する。

 

 すると歩んでいた一人の猛者が立ち止まり、周辺の仲間達に強く唱えた。

「まだだ……まだ終わらせない!」

 皆がその声に振り向くと、そこには全身ボロボロになりながらも未だ気高い顔付きで戦意を失っていない村田順一の勇姿があった。

 と、順一に続いて屈強な肉体の隊士も順一の隣で仁王立ちをする。

「アウッ! まだまだ、おれ達は戦える! 死んでいった仲間達の為にも、最後まで諦めねえぞ!!」

 順一とフロートの勇姿に感化されて、今まで怖気付いていたミラールも勇気を振り絞って立ち上がる。

「……そうよ。まだ生きている。生きている以上、私たちはまだまだ戦え、そして抗える! 修司の決めた運命に抵抗できるのよ!」

 こうして聖龍隊でも指折りの三人、村田順一/フロート/ミラールの三人が肩を並べて修司と向き合う。

 修司は未だ抗戦する構えの三人と、三人を見て勇気を振り絞った他の聖龍隊士の顔を見て、再び二対の片太刀バサミを両腕に携えて戦闘準備する。

 

 次々と倒れる歴戦の猛者たち。

 築かれる死体の山が増える中、魔鳥の御旗に集った多くの生存する戦士達は諦めない。

 死者の数が増え続けようと、戦士の中に宿る勇気という灯は未だ消えない。

 

 

 

[絶望という破滅]

 

 数多の激戦を潜り抜けてきた聖龍隊の猛者たち。

 だが、そんな彼らでも純粋な破滅へと進化した小田原修司の前では無力同然だった。

 そんな修司の猛攻を食い止め、この悲しみしかない大戦に終止符を打とうと、聖龍隊三大総合部隊の総部隊長である村田順一/フロート/ミラールが肩を並べる。

 その三人に続けと、存命中のバーナビー/楓/日ノ原革/コトハ/ミヤビ/六道りんね/真宮桜が支援体制を築く。

 全ては、破滅へと進化した小田原修司、彼が招く絶望を断ち切る為に。

 

「このッ」

 六道りんねが死神の大鎌で修司を攻撃するが、修司は容易く攻撃を回避する。

「りんねさん!」

 すると其処にニュー・スターズの生存メンバーであるマカ=アルバーンが同じ大鎌を武器とする者同士として駆け付ける。

 だが、りんねとマカの二人が揃ったのを視認した修司は、二人に向けて爆発効果のある火炎弾を手首の銃口から発射。

 りんねとマカの二人に火炎弾が直撃する寸前、二人の目前に割って入ったフロートが腕に内蔵された盾で爆撃を防いだ。

「☆シールド!」フロートの防御に救われたりんねとマカ。

 三人を見据える修司だったが、そんな修司に遠距離からミラールが銃撃を連射して攻撃。

 最初は何とも思わなかった修司だが、次第に自分の体をいたずらにすり抜けていく無数の銃撃に鬱陶しさを感じたのか、片太刀バサミで弾を防ぎながらミラールに近づいて行った。

 だが、そんな修司の歩みを阻むかのように順一が修司の前に立ちはだかり、修司と激しい乱闘を展開する。

 順一の信念が詰まった拳が、修司の顔面に直撃するが、修司は平然としており、修司は反撃として二刀流の片太刀バサミで順一に斬り込んでいく。

 修司の斬撃を、順一は後ろへ退きながら避けつつ、反撃の機会を窺う。

そして後退した順一は、右手を勢いよく前へと突き出して凄まじい衝撃波を目前の修司に叩き込んだ。

 だが修司は平然と順一の衝撃波を受けても何ともない様子。

 そこに日ノ原革とブラック☆スターが同時に修司へと襲い掛かるが、修司は二人の剣戟を難なく後ろへ退いて回避すると二対の片太刀バサミで革とブラック☆スターの背中を斬り付けた。

「ぐ……ッ!」「あ……ッ!」

 背面を斬り付けられた二人は悶絶するが、修司は追撃とばかりに二人に斬り込んでいく。

 と、斬り込もうとする修司にミラールとフロートが一斉射撃を仕掛け、修司の動きを一時的に止めた。

 一瞬ばかり銃撃で動きを止めた修司だったが、即座に両腕に装備された銃口から爆発性の火炎弾を発射してミラールとフロートの二人を狙撃。火炎弾は二人に着弾し、爆発・炎上し、ミラールとフロートは一時的に火達磨に。

 と、修司がミラールとフロートを狙撃した直後、バーナビーと鏑木楓が二人掛かりで修司の両腕を全力で押さえ込み、修司の動きを自力で封じる。

「今です、皆さん!」「みんな、今のうちに早く……!」

 修司の両腕を押さえ込んで仲間達に攻撃の機会を与えるバーナビーと楓の二人。

 二人が作ってくれた好機に、六道りんねとマカ=アルバーン、日ノ原革とブラック☆スターが一斉に修司に襲い掛かる。

 だが修司は自分の両腕を押さえ込み、動きを封じてくるバーナビーと楓に強靭な石頭で頭突きし、二人を悶絶させた。

 修司の石頭からの頭突きを受けて、思わず離れてしまうバーナビーと楓。そして二人が離れた事で自由が利いた修司は飛び掛かってくる六道りんねとマカ=アルバーン、そして日ノ原革とブラック☆スター、それそれ二名一組に手の平を差し向けた。

 するとりんねとマカ、革とブラック☆スター達は空中に浮かされてしまう。

「こ、これは……!」「え、エスパーの力……!」

 マカとりんねは自分達を浮かせる修司の能力が、超能力である事を瞬時に察する。

「さ、斉木楠雄の力か……!」「また新世代型二次元人の力を使いやがって……!」

 使用している新世代型二次元人の超能力が斉木楠雄のものだと察する革とブラック☆スターは、苦渋の表情で藻掻いていた。

 すると四人を超能力で空中に浮かせている修司は、開いていた手の平を閉じると手首に見受けられる銃口を開口して、左右の二人組を同時に至近距離で銃撃した。

「「わあッ!」」「「うおッ!」」

 りんねとマカ、革とブラック☆スターはそれぞれ火炎弾での銃撃を至近距離で浴びた為に大きく損傷して後方に吹き飛んでしまう。

 冷徹な顔で四人を銃撃で吹き飛ばした修司。その修司の背後から、先ほど修司に頭突きで悶絶させられたバーナビーと楓が襲い掛かるが。

 修司は二人が飛び掛かる直前に、左目を紅く怪しく輝かせて「闇眼(あんがん)」を発動させる。

 修司の闇眼を直視してしまったバーナビーと楓の二人は、その瞬間に自分達の体から黒い炎、通称「獄炎」が自然発火してその業火の熱さでもがき苦しむ。

「わあああッ……!」「きゃあっ」地面を転げ回るバーナビーと楓。

「な、なんだ。あの黒い炎は……!?」

 黒い炎に包まれてもがき苦しむバーナビーと楓の二人を目撃し、檻の中の真鍋義久たち新世代型二次元人は驚愕する。

 すると同じく黒い炎を目撃した道化のバギーが冷や汗を流しながら説明し出す。

「アレは小田原修司の闇の眼力、闇眼から放たれる地獄の業火「獄炎」だ。相手の生命力を火種に燃え続けるから、水とかじゃ絶対に消えない上に、普通の炎よりも高温ゆえに、その苦しみは想像以上……!」

「な、なんだって!? 闇眼……!?」

 同じく檻に閉じ込められているプロト世代のギュービッドが驚いていると、バギーは更に説明した。

「小田原修司の闇眼は、獄炎を発生させるだけじゃない。その紅く怪しい瞳を直視したものに幻覚を見させて惑わしたり、または発狂するまでの恐怖を植え付けたりと多種多様……! 幻覚・催眠・獄炎による攻撃と、用途は様々だ」

「幻覚って……それこそ【NARUTO】のうちは一族の写輪眼みたいじゃないですか!」

 バギーの説明を聞いて、新世代型の室戸大智は激しく動揺する。

 

 と、修司の闇眼から放たれた獄炎で体が焼かれているバーナビーと楓に、村田順一が拳を地面に打ち付けた際の衝撃波と突風で二人を包み込む獄炎を打ち消した。

「よしッ! ジュン、獄炎消火サンキューーな! ミラール、おれ達は再度修司に攻撃だ!」

「ええ!」

 順一が獄炎を鎮火したのを見届けたフロートは、ミラールと共に戦前に出て銃口を修司に向ける。

「喰らいやがれッ!」

 フロートに続き、ミラールも修司に向かって銃撃を開始。修司は瞬く間に白煙に呑み込まれ、煙の中に消えていく。

 そして修司に集中砲火を浴びせたフロートとミラール。二人が銃撃をやめた、その時だった。

 白煙の中から凄まじい斬撃が飛び出し、一直線にフロートとミラールを襲った。

「うおッ!」「きゃっ!」

 白煙から飛び出てきた地を走る斬撃「地走り」を浴びて、吹き飛ぶ二人。

 フロートは、その屈強な鋼の肉体深く斬られ、ミラールはコピーする対象者を捕捉する為の黒紫色の水晶が斬られて深く罅割れてしまってた。

「く、くそ~~……! ミラール、大丈夫か?」

「イテテ、コピー変身能力を使う為の要である魔法水晶が罅割れて使い物にはならなくなったけど……まだ戦えるわ!」

 フロートとミラールは立ち上がり、修司と対峙する。

 すると修司は瞳を大きく見開き、闇眼から紅い輝く閃光を一筋ばかし発した。その一閃がフロートとミラールの間を通った、次の瞬間。

 紅い閃光が突如として連鎖的に爆発して、凄まじい爆発による衝撃がフロートとミラールに襲い掛かる。

「ぐッ!」「わっ!」

 爆発に呑み込まれて再度、大打撃を受けるフロートとミラールの二人。

 既に満身創痍の二人に、修司は歩み、詰め寄り始める。

「それッ」

 と、そんな修司に背後から順一が跳びかかり、修司にしがみ付いて必死に動きを封じようとする。

 しかし修司は背後からしがみ付いた順一の頭を鷲掴みすると、そのまま軽々と片腕のみで順一を前方へ放り投げてしまう。

「うわッ!」

 前方へと投げ飛ばされてしまう順一。しかし順一が作り出したその隙をついて、バーナビーと彼の能力をコピーしている鏑木楓が二人同時に修司へと攻撃。

「「はぁッ!」」

 だがふたりの攻撃を察知した修司は、物理的な攻撃をすり抜ける今の体質を発動させ、バーナビーと楓の攻撃をすり抜けて回避してしまう。

 自分達の攻撃がすり抜けた拍子に体勢を若干崩してしまうバーナビーと楓。そんな楓に修司は片太刀バサミを振り上げて、その鋭利な切っ先を楓に突き刺そうと構えた。

「楓ちゃん!」

 修司が振り上げた片太刀バサミを降ろす瞬間、バーナビーが楓との間に飛び込み、修司の突き刺しを身を挺して庇護する。

 修司が降ろした片太刀バサミの切っ先は、バーナビーが着用しているスーツを貫通し、僅かながらにバーナビーの肉体に食い込んだ。

「バーナビー!」

 それを見て楓が悲痛に叫ぶが、バーナビーは修司が自分に武器を突き刺した瞬間を狙い、修司の腹部に思いっきり全力の拳を殴り付けた。

 一瞬の出来事だったのか、バーナビーの打撃をまともに受けた修司は片太刀バサミを手放してしまい、そのまま後方へと吹き飛ぶ。

 だが修司は体勢を維持し、バーナビーを前に立ち続ける。

「ぐっ……!」

 一方のバーナビーは左腕に突き刺さった片太刀バサミを自力で抜き取り、それを地面に捨てると再び修司と対峙する。

 そんなバーナビーと合流する楓。すると修司は二人が合流した次の瞬間、再び闇眼から爆発する紅き閃光「爆裂閃光」を放ち、バーナビーと楓の二人に攻撃。

「避けるよ!」

 バーナビーは楓に言うと同時に自らも横へと回避して爆裂閃光を回避しようとするが、連鎖的に大爆発する閃光の衝撃までは回避できず、楓と共に爆風で転倒してしまう。

「くっ……! 爆裂閃光は一瞬の間合いがあるだけで、それを過ぎると連続的に光が爆発する為に威力も範囲もバカにならない……!」

 修司の爆裂閃光は、光が放たれた一瞬の間合いがあるだけで、後は連鎖的に爆発する閃光の爆破の威力も範囲も桁違いだと冷静に分析するバーナビー。

 と、修司は次にテレポーテーションで瞬間移動して左腕を損傷してるバーナビーに急接近して片太刀バサミを振るう。

「ッ!」

 修司が振るう片太刀バサミを、辛うじて着衣しているパワードスーツで防ぎつつも、修司の血から生成された鋭利な片太刀バサミは無慈悲にバーナビーのスーツを少しずつではあるが確実に破損していく。

 遂には両腕・胸部そして若干の頭部部分を破壊し、バーナビーの身体は無防備に晒されていく。

「これ以上は!」「させない!」

 するとバーナビーを斬り続ける修司の左右から、六道りんねとマカ=アルバーンが大鎌を振るって迫り、修司の剣戟を止めると同時に攻める。

 だが修司は二人が迫る瞬間に、テレポーテーションでその場から離脱し、バーナビーとりんねとマカが同じ場所に集った瞬間に大技を叩き込んだ。

「無限刀 鬼嵐」

 次の瞬間、無数の斬撃が無慈悲に三人を襲い、バーナビーもりんねもマカも斬撃の嵐に巻き込まれ、無残に斬られてしまう。

「「「うわあッ!!」」」

 無数の斬撃を浴びて、全身切り傷だらけになってしまう三人が絶叫を上げた直後、修司は虚無な瞳で三人を捉えてトドメを刺そうと歩み寄る。

 殺されて堪るかと、りんねとマカは力を振り絞って修司に大鎌を振り上げる。が、修司は双方の大鎌を意図も容易く両手の人差し指と親指のみで摘み止めてしまう。

「「!!」」

 愕然とするりんねとマカの二人。だが修司はこれだけでは終わらなかった。

 なんと修司は自分のクローンである新世代型二次元人のO・Dの万物を砂状に崩壊させる能力を発動させ、りんねとマカの大鎌を砂状に崩壊させ始める。

「な……ッ!」「っ!」

 自分達の武器が砂状に崩壊していくのを目の当たりにして、りんねとマカは驚愕する。

(ま、マカ……!!)

 しかもマカが扱う大鎌は、武器に変化しているソウル=イーターである為、そのソウルが自身が崩壊していく中でパートナーのマカの名を発した。

「そ……ソウル!」

 涙目でソウルの名を叫ぶマカだが、修司が能力を止める事無く、そのままりんねの大鎌と共にソウルも崩壊してしまった。

「ソウル……」

 完全に砂状に崩壊したソウルの残骸を目前に、蒼然自失してしまうマカ。

 そんな彼女に修司は、自らの意思で片太刀バサミを変形させて、針状の槍へと変えると、それをマカに向けて押し出した。

「危ない!」

 茫然となるマカに向けられた槍から彼女を庇おうと、りんねがマカを抱き寄せる形で我が身を盾にする。

 しかし修司が放った槍は、身を挺したりんね共々マカの体を貫通し、二人は串刺しになってしまった。

「りんね君!」「りんね様っ!」

 マカを護ろうとしながらも、針状の槍で二人同時に貫かれた状況を目撃し、真宮桜と六文は唖然とした。

 ソウルに続きりんねとマカをも殺めた修司は、りんねの死に唖然とする桜と六文にも手をかけようと瞬間移動で二人の眼前に迫る。

「「!!」」

 突如として眼前に迫ってきた修司を前に何もできないでいる桜と六文。

 すると能力を駆使して高速移動して修司に迫るバーナビーが、修司に跳びかかって桜と六文への凶刃を妨害する。

 しかし修司はバーナビーの頭を鷲掴みして、そのままバーナビーの頭を自らの膝に打ち付ける「ヤシの実割り」でバーナビーの頭蓋を痛め付けて放り出す。

「バーナビー!」「バーナビーさん!」

 頭部を痛め付けられて地面に放り出されるバーナビーを目前に、桜と六文が叫ぶ。

 そしてバーナビーを痛め付けた修司は再度、桜と六文に凶刃を振るい付けようと身構えた。

 そんな修司の凶行を阻止しようと、日ノ原革とコトハそしてミヤビの三人が同時に修司へと襲い掛かる。

 が、修司は三人の攻撃をひらりひらりとかわすと、攻撃をかわしながら相手を斬り付ける技「白狼流し」で革たちだけでなく桜と六文までも斬り捨てた。

「この……ッ」

 修司の白狼流しに対抗しようと武器を構えた革だったが、修司は革の武器を容易く片太刀バサミで弾き飛ばしては他の面々と同様に革を容赦なく斬り捨てる。

 修司の白狼流しによって斬り捨てられた桜と六文そして革にコトハとミヤビは地面に倒れて動かなくなった。

 

「クソっ!!」「これ以上……これ以上、仲間を死なせたくない!」

 桜や革たちまでも戦死し、フロートとミラールは苦渋と後悔の心境で修司に向けて銃撃を連射。

 だが修司はそれらの銃弾を全て片太刀バサミで弾きながら前進し、フロートとミラールの方へと進撃する。

「させません!」

 と、そこにバーナビーと楓が再び修司に跳びかかるが、修司は闇の能力で複製した地震の能力で、両拳を左右の空中に叩き付け、空間に亀裂が入るほどの衝撃を生み出してバーナビーと楓に攻撃した。

 修司が放った空間に亀裂が入るほどの衝撃波を叩き込まれたバーナビーと楓は、頭蓋骨から上半身までの骨から身体にかけて大打撃を浴びて、深く損傷し地面を抉りながら吹き飛ばされた。

「バニー! 楓!」

 フロートやミラールが愕然とする中、修司は二人の目前まで迫ると、二対の片太刀バサミで斬りかかった。

 だがフロートが片腕の「☆シールド」でミラールを庇い、自身を自衛する事が出来ずに斬られてしまう。

「ミラール! ぐはッ」「フロート……!」

 修司の斬撃を浴びながらもミラールを庇ったフロートが目の前で斬られる惨状に、ミラールは蒼然とした。

「く、クソ……ッ!」「フロート!」

 修司に斬り付けられた個所を押さえながら口から血を零し悶絶するフロートを遠視して、順一が急いで駆け付けようとするが。

 修司は無慈悲にフロートの屈強かつ鋼鉄の改造された肉体を鋭利な片太刀バサミで斬り捨て、フロートを絶命に至らしめた。

「し、修司……!!」

 フロートも他の聖龍隊士と同様、修司の事を思いながら死に絶えた。

「フロート!」「フロートッ!!」

 自分達と同じ、総合部隊の総部隊長を務めているフロートの死に、ミラールも順一も落胆した。

 

 既に情や慈悲などの心を失くし、完全に純粋な破滅へと変わり果てた小田原修司。彼の凄惨な戦いは全ての命を奪い尽くすまで終わる事はないのだろうか。

 産まれた時の心のない存在以上に切ない小田原修司を止めるのは、無理なのか。

 悲しき戦闘は、まだ続くばかり。

 

 

 

[複製の自我]

 

 二対の片太刀バサミに加え、闇眼から放たれる爆裂閃光などの戦術までも使いこなして過去の仲間達を死に至らしめる小田原修司。

 修司は白くひび割れた皮膚に覆われる上半身を、自らの血を結晶化させて生成した鎧を纏わせ、更に両腕には火炎弾を発射できる銃口を装備して戦い続ける。

 修司の片太刀バサミからミラールを庇った為に自らは自衛できなかったフロートを斬り捨て、修司は傍らで蒼然としているミラールをも斬り捨てようと片太刀バサミを振り上げた。

「もうやめてください! 修司さんッ」

 と、ミラールに斬りかかろうとする修司に一番弟子である順一が呼びかける。が、修司は振り上げた片太刀バサミを止めようとはしない。

 が、順一の声で我に返ったミラールは、すぐにミラージュ・ガンの銃口を修司に向けて引き金を引いて発砲。

 だがミラールの銃撃を受けた修司の風穴があいた体は、凄まじい再生能力で瞬く間に塞がってしまう。

 しかし修司の動きが一瞬ばかり止まった隙に、ミラールはすかさず後方へと素早く退避して態勢を立て直す。

 そして再び修司にミラージュ・ガンを向けて対峙。

 修司はミラールと一時ばかり向き合っていたが、更にそこに修司へと歩み寄る猛者が声をかける。

「も……もう、やめ……」

 途切れ途切れの弱々しい声で訴えかけるその声の主に振り返る修司。

 修司やミラールそして順一の視線の先に居たのは、先ほど修司が放った震動の力で吹き飛ばされ、頭蓋から上半身の骨や肉を砕かれて頭から流血しているバーナビーだった。

「もう、やめるんです……解ってる、筈です、よ……こんな戦い、を……続けて、虚しいのは……自分、自身である、事が……!」

 バーナビーは朦朧とする意識の中、必死に修司へ問い掛けていた。

 するとバーナビーの向かい側でも、先ほどバーナビー同様に修司の震動の能力で吹き飛ばされた鏑木楓が同じく頭から血を流しながら修司に話し掛ける。

「修司さん……貴方なら、解ってる筈……! 今の自分がどんなに虚しく、そして悲しい戦況を作り出しているか」

「………………」

「もう、やめよう? 私、また修司さんに鍛えてほしい……正義の味方ではなく、本当に辛い立場でいる弱者を護れる存在として戦える……そんな一人に、また指導してほしいな」

 黙然な修司に笑顔で語り続ける楓。

 

 すると修司は両手に装備していた二対の片太刀バサミを地面に突き刺すと、空いた両手から闇の能力で生成した弓矢を成形し、矢先をまずはバーナビーに向けた。

「し、修司!」

 ミラールが愕然とした表情で制止するが、修司は有無も言わずバーナビーに向けて矢を射た。

 放たれた漆黒の矢は、一直線にバーナビーに飛来し、無慈悲にバーナビーのパワードスーツを貫通して彼の心臓を射抜いた。

「………………ッ!」

 死の寸前、バーナビーは自身の心臓に矢が貫通したのを実感して絶命した。

「ば、バーナビー……!」

 心臓を射抜かれて前のめりに倒れるバーナビーを目撃した楓は衝撃を受ける。

 バーナビーを漆黒の矢で射抜いた修司は、弓矢から再び二対の片太刀バサミに持ち替えるとバーナビーをも失って愕然とする楓を標的に絞った。

 修司は楓の目前にテレポーテーションで瞬間移動し、振り上げた片太刀バサミで楓を斬り捨てようと迫る。

 だが突然目の前に瞬間移動した修司を、楓は瞬時に察しては鍛え抜かれた判断力で振り下ろされた片太刀バサミを両腕に装備されている刃を受け止める部分であるブレードエッジで受け止め、修司の斬撃を防いだ。

「見事だな、楓……! 聖龍隊で虎徹やバーナビー共々、鍛え抜いてやっただけの事はある」

「修司さん……! 今まで、どんなに多くの人々を異常者(ヒール)認定した上で、異常者(ヒール)とされた人々の命を刈り取って来たとしても解っている筈……人の歴史や思い、その命が積み重ねてきたモノを完全に消し去る事は不可能だって事を……!!」

 激しく修司と鬩ぎ合う楓の主張を、黙然と聞き入れるだけの修司。

 しかし先ほど修司の強攻で楓のスーツは所々が大破しており、修司は其処を狙い定めた。

 修司は激しい鬩ぎ合いの末に一瞬ばかり楓と距離を僅かながらに作ると、修司は楓の大破したスーツの部分に片太刀バサミを突き刺して、楓の本体を直接負傷させた。

「!」「楓! ッ」

 スーツの割れ目に刃を突き刺された楓は苦痛で表情を歪ませ、その情景を目撃したミラールはすかさず楓を援護する為にも修司に向かってミラージュ・ガンを撃った。

 だが修司は楓に突き刺した右の片太刀バサミとは反対の左手に持つ片太刀バサミを巧みに回転させて、ミラージュ・ガンの銃撃を全て弾いて防いで見せる。

 その間も修司は楓に突き刺した片太刀バサミに力を入れて、より深く楓に片太刀バサミを突き入れて彼女の命を奪おうとする。

 が、楓はなんと自力で自分に突き刺された片太刀バサミを掴み、修司の斬撃を引き抜こうと抗う。

 それに気づいた修司は楓に突き刺していた片太刀バサミを一気に引き抜く。

「ッ!」

 片太刀バサミを強引に引き抜かれた事で、片太刀バサミを掴んでいた楓の手は鋭利な刃の部分で切ってしまう。

 そして強引に楓に突き刺していた片太刀バサミを引き抜いた修司は、その右手で片太刀バサミを持ち替えると、今度はその切っ先をスーツで覆われていない楓の素顔目掛けて突き刺そうと仕掛ける。

 修司からの突き刺しに、楓は辛うじて瞬時に顔を横へと逸らして片太刀バサミから逃れ、微かに頬に切り傷を負った程度で済んだ。

 すると今度はミラールの側にいたフロートが自身の左腕に内蔵された迫撃砲で修司を砲撃。修司は瞬く間に白煙に呑まれ、視界が遮られる。

 その隙に楓はボロボロの状態で修司から遠退き、態勢を立て直そうとするが。

 修司を包む白煙の中から、先ほどバーナビーの命を奪った漆黒の矢が無数に飛び出てきた。しかも矢は全て楓目掛けて飛来してきた。

「楓!!」

 ミラール達が楓に呼びかけると、彼女はそれよりも早く自己反応して飛来する漆黒の矢を全て回避して難を逃れる。

 が「楓、危ない!」「え!?」と、ミラールが楓に再度呼びかけ、楓も後ろを振り返ると、なんと全ての矢が急に軌道を曲げて楓の背後目掛けて再び向かって来ていたのだ。

 修司が放った闇の能力で作られた漆黒の矢は追尾性能があり、その無数の矢は全て楓の背後から迫ってきた。

 そして次の瞬間、無数の漆黒の矢は楓の背後から迫り、彼女の体に浴びせられた。

「楓ーーッ!!」

 ミラールが叫び、他の皆々も矢を浴びた楓に注目する。楓は無数の矢を浴びて、前のめりに横たわり動かなかくなった。

 そんな楓を修司は凝視していると、絶命寸前の楓が再び修司に訴える。

「修司、さん……自分の、クローンを……呪われた自分の血筋を、世界に大量に生産された事を、悲観しないで……あなたの、修司さんの力を……意志を、世界はそれだけ望んでいる事なんだから…………私も、修司さんを……修司さんとの、日々を、望んでる……世界を、社会をより良くする為に努力し続ける修司さんの姿勢を、意志を……私も、受け継いだの、だから………………」

「楓……!!」

 修司に最後の力を振り絞って己の主張を訴えた鏑木楓もまた、父である虎徹たち同様に息絶えた。楓が息絶えたのを見届けたミラールは茫然とするばかり。

 

 遂にNEXTヒーロー達までも全滅してしまい、途方に暮れ始める雑兵たち。

「も、もう駄目だ……! 国連軍の最強戦力だけでなく、聖龍隊の主力部隊までも全滅しちまうなんて……やっぱ、やっぱ小田原修司には勝てないんだァ!!」

 多くの隊士達が絶望する中、下がりつつある士気を何とか高めようと決して諦めない精神で三人の総合部隊長が主張した。

「……まだだ。まだ終われない……!」

「そうだぜ。まだおれ達の抗いは止まらねェ……!」

「そうよ、終わらせない……! 私達の伝説、いえ、物語はまだ終わらない!」

 既に満身創痍の体を奮い立たせ、順一もフロートもミラールも修司への抗いを示す。

 

 三人の意思を目前にした修司は、二対の片太刀バサミを両手に携えて臨戦態勢を取る。

 すると、そんな修司の姿勢を視認して参戦している一人の猛者が観戦側から戦闘の側へと踏み込んだ。

「……その通りだ! 誰であろうと、人の人生……いや、物語って一生を終わらせる権利は無ェ!!」

「「!」」「ガイア……!」

 厳つい眼差しで修司を睨み付けるスコーピオン同盟の首領ガイア・スコーピオンの主張に、フロートとミラールは驚き、順一は目を丸くする。

「修司、確かにお前さんの干渉で多くの二次元人、いや物語は大きく狂っちまった筋書きになっちまったのも多い……だがな、お前さんが関与した事で救われた二次元人、その二次元人の大きく変わった物語で救われた連中も少なからず居るって事を忘れるな!」

「………………」

「……オレ様だって、フランスの片田舎から裏社会に最初飛び出して、薄汚い人間の部分を垣間見た事で叩き込まれてきた【仁義ある悪党道】から足を踏み外しそうになった。だけど、そんな所に、お前さんと関わった事で運命を変えて存命してくれたちせちゃんと出会えた事で、オレ様は忘れかけてた人の情や仁義ってモンを取り戻せた」

「………………………………」

「オレ様だけじゃねえ!! 多くの二次元人、いや三次元人だって色んな二次元人と関わってこれたからこそ自分の運命を、未来を明るく変えられた奴らだって存在してるんだ!! 修司!! てめえがやろうとしてんのは、そんな明るくなった運命を得られた連中の未来を全部失くしちまう事なんだぞ!! オレ様はちせちゃんのお陰でスコーピオン同盟を結成できた。そんなちせちゃんを殺めただけに飽き足らず、運命を救われた連中の全部を奪おうとするテメエの行いを……オレ様は、全力をもって邪魔してやる!!」

 ガイアの力説に、修司は黙然と無表情で聞き入れるだけだった。

 確かに本筋の物語とは大きく変わってしまった多くの物語、そしてそれに伴い運命が変化した多くの二次元人。

 しかし、そんな変わってしまった物語という世界観にその物語の中で生きる運命が変わった二次元人と触れ合う事で、救われた存在も存在しているのもまた事実。

 

 そんなガイアの恋心にも通じる力説を聞いて、檻の中に囚われている争いの元凶たる新世代型二次元人たちは奮い立たされた。

「……そうだぜ。全部が全部、悪い方へと変わっただけじゃない!」

 新世代型の真鍋義久の力強い言動に感化され、他の新世代型たちも声を挙げた。

「修司さん、確かに貴方が関わった事で多くの物語や二次元人が変わった。でも、それは本当に全て悪い事だけだったの!?」

「貴方と会えた事で……貴方に救われた事で存命できた二次元人が、また別の命を救えた。それまでも間違ってた事だっていうの!?」

 琴浦春香と棗鈴が真剣な表情で修司に訴える。

「俺たちはガイアだけでない、他にも大勢の二次元人や三次元人たちと出会った事で多くを学べた! そんな経験までも過ちだとは思えない!!」

「私たち新世代型は、確かに貴方の遺伝子を基に複製された二次元人……でも、貴方が生み出したのは自分のクローンとも呼べる私たちの存在だけえじゃないわ!」

 幸平創真(ゆきひらそうま)と薙切えりなも続けて修司に問う。

「ガイアさん達スコーピオン同盟が言ってた、どんなに理不尽な現実の中で生き続けようと、自由に生き続ける自分の意思までも否定される筋合いはないんだって!」

 イオリ・セイもスコーピオン同盟から教え説かれた話を思い返し、修司に説く。

「どんなに今が辛くても、どんなに自分達の出生が悲劇だろうと……!」

「今を生きる事は忘れない! 悲しんで、泣くのも良いけど……前に進む為には本気で笑ってみるのも一興だ!」

「悲しんでばかりじゃ人は成長できない。前に進む為には、まず笑って見せる。これが大事なんだ!」

 新世代型達は過去にガイア・スコーピオン達から学んだ人生道を心に刻み、唱えた。

 

 そんな力説を説いていく新世代型二次元人達の言葉を耳に入れた修司は、重い口を開いて発言した。

「……そうか、それがお前らの自我。目覚めてしまった複製たる者者の自我か」

『……!』

 修司から複製の自我だと言われた新世代型たちは一驚する。

「貴様ら存在そのものが過ちである存在に、未来を生き抜こうとする自我が目覚めてしまったのは、それこそ本末転倒……! 忘れた訳ではあるまい。お前達は、いや俺達は存在してるだけで他者を、そして世界を破壊し、滅ぼしてしまう異質なる存在……! 故に、混沌たる世界と共に消えねばならない宿命にあるという事を忘れるな……!!」

『………………!』

「お前達の微かな生への希望ですら、間違いだと未だに解らぬのか……!」

 愕然とする新世代型たちに、修司は虚無な瞳で唱え続ける。

「俺達は生きる希望すら持ってはいけない命だと、いい加減理解しろ……!!」

 自分達は生きる希望すらも持ってはいけない世界を破滅させてしまう命、そう説かれた新世代型たちは再び黙り込んでしまった。

 

 すると、そんな主張をする修司にガイアが怒鳴った。

「修司ッ!! 新世代型といえば、お前の子供みたいなもんだろ!? 自分の子供に生まれちゃいけないとか、生きる希望持つなとか、よく言えるな!!」

「こっ、子供って……」

 ガイアの【小田原修司の子供】発言に、新世代型の纏流子は呆然としてしまう。

 すると修司は二対の片太刀バサミを構えて、ガイア・スコーピオンに歩み始めた。

 修司がガイアを標的に捉えたのを認識したスコーピオン同盟の面々は、一斉に体制を立てて修司に抗戦する構えを取る。

「兄者だけに戦わせません! 我々も戦闘に突入といきましょう!」

「おうッ! これ以上、修司の好き勝手にさせて堪るか!」

 キラー・ウォーター・クリスタル・スコーピオンの指示に、蛭川光彦も同調する。

 

 遂にスコーピオン同盟と純粋なる破滅に変化した小田原修司との戦闘が勃発した。

 

 

 

[悪役の意地]

 

 先に悪役の集いであるスコーピオン同盟から、笑う事こそ前に進む活力であると説かれていた新世代型の面々は、純粋な破滅たる修司に面と向かって力説した。

 だが修司は、自分たち破滅の血族は生きる希望すらも持ってはいけない生命体であると反論。

 これに豪語したガイア・スコーピオンが遂に修司討伐に動き出す。

 ガイアに続けと、他のスコーピオン同盟も全員が修司に対して戦闘を仕掛ける体制を布く。

 かつて小田原修司政権によって国を追われ、居場所を奪われた悪役達が、大勢の二次元人を守る為に少数の二次元人を犠牲にしなければならなかった法案を施行させた修司と今まさに戦い始める。

 憎しみの果てに希望があるのか。それとも悲しみの果てに破滅が待ち受けるのか。

 虚無の心へと変わり果てた修司に、自由奔放な生き様を貫くスコーピオン同盟の面々が抗いを示すのだった。

 

「喰らいやがれッ!」

 灼熱の蠍怪人ガイアは右腕のハサミから炎の玉を豪快に発射して修司を攻撃。

 しかし修司は【ガッチャマンクラウズ】の枇々木丈から会得した火炎能力による背中のブースターで地上を高速移動して駆け抜け、ガイアの攻撃をかわしていく。

「私が足止めします……!」

 ガイアの双子の弟にして極低温の能力を持つキラー・ウォーター・クリスタル・スコーピオンは、地面を沿う様に修司に向かって氷柱を生成して攻撃。

 すると地面を沿って生えた氷柱は修司の足元を瞬く間に凍らせて、修司の足を完全に地面に固定。修司の動きを封じてしまう。

「今だっぺ! ランダージョ、銃弾をありったけ修司に撃ちまくるっぺ!!」

「了解ニャ!」

 完全武装しているスコーピオン同盟の傘下であるグラスホップとランダージョが、修司へここぞとばかりに銃撃をお見舞いする。

 しかし二人が連撃した銃弾は全て修司に直撃したものの、修司の物質を通過する身体能力で全ての銃弾は修司の肉体をすり抜けて無力化されてしまう。

「クソっ! ダメか!」

 それを視認して、傘下の潤と恵一の柊兄弟は表情を歪ませる。

 すると修司は無表情のまま何かを研ぎ澄ます様に集中し始め、次の瞬間修司は全身から灼熱の業火を放ち、自ら火達磨となった。

「な、なんだアレは!?」

 スコーピオン同盟の傘下にして、今ではホワイト・ヘアーズ、地獄の白髪団の族長を務めている元悪徳記者の蛭川光彦が火達磨となった修司を見て騒然とする。

 同じく火達磨の修司を見たクリスタルは冷静に分析した。

「お、おそらく……先ほど高速移動で使ってた枇々木丈の火炎能力を用いて、自らの全身を発火、その高温の炎で私の氷を融かす算段なのでしょう」

 クリスタルの分析通り、修司は自分の足元に凍り付いていた氷を自らが発火した炎の高温で瞬く間に融かして自由に動ける様にしてしまう。

「イキマスヨ、ミナサマガタ」

「いっくわヨ~~っ!」

「本気で行かせてもらうぜ!」

「小田原修司、覚悟!」

 ガイアとクリスタルが作った蠍型怪人型ロボットのメガロ・スコーピオンの合図で、スコーピオン同盟傘下のデジモン三人衆エテモン/マミーモン/アルケニモン達が同時に修司へと攻撃。

 しかし修司はメガロの電撃砲などの強力な攻撃を受けても尚、驚異的な再生能力から瞬く間に回復してしまうからか無傷で終わってしまう。

「共に行くぞ、P.A.N.D.R.Aのみんな! ……クイーンの、いいや、薫たちの仇……!!」

 今やガイアの生き様に感銘を受けてスコーピオン同盟に降った超能力者の兵部京介が、配下のエスパー集団【P.A.N.D.R.A】の皆々に修司へ総攻撃を仕掛けよと命ずる。そんな兵部の心中には、先に修司との戦闘で戦死したスター・コマンドーのチルドレン達を思い浮かべていた。

 そして兵部の指示で同時に修司へ総攻撃を仕掛けるP.A.N.D.R.Aメンバーたち。だが……

「がはッ!」「ぐふっ」

 修司は新世代型二次元人達から会得した能力などを駆使して、意図も簡単にP.A.N.D.R.Aの面々を軽々と返り討ちにしてしまう有様。

「……さっさと終わらせよう。こんな茶番……」

 そう呟いた修司は、迫りくるP.A.N.D.R.Aのマッスル大鎌やヤマダ・コレミツ達を両手に装備する二対の片太刀バサミで一瞬の内に斬り捨てて亡き者にしてしまう。

「!!」

 自分の配下の仲間を簡単に斬り殺す修司の手腕に驚きを隠せない兵部。

「テメエら!」

 同じくガイアも愕然とする。

 だが修司は次々と無残にもP.A.N.D.R.Aのメンバー達を惨殺し、あっという間に兵部を残したP.A.N.D.R.Aメンバーを全滅させてしまう。

「そんなバカな……!!」

 兵部は、自分と苦楽を共にしてきたP.A.N.D.R.Aメンバー達が残らず殲滅させられた戦況に戦慄した。

「兵部! 今の修司にむやみやたらに突っ込んだら危ねえよ! いくら馴染みのチルドレンのお嬢ちゃん達を殺されたからってよ!」

 修司に微かな憎悪を滾らせた為にP.A.N.D.R.Aのメンバーに特攻を命じてしまった兵部に、ガイアが注意を呼び掛けるが時すでに遅かった。

 この修司の暴挙を止めるべく、過去に当時の聖龍隊政権によって処刑されそうになった【シュガシュガルーン】のピエールと【ゼロの使い魔】のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドとフーケの三人が、ミラーガール死亡に伴い消滅しかけている魔力を最大まで発揮させて、修司の周りに魔法陣を成形。最大魔力で修司を消滅させようとするのだが。

 修司は魔法が発動する前に右手を魔法陣に差し伸べると、闇の能力を発動させて魔法陣を強制的に解除・無力化してしまった。

「いけません! ミラーガール亡き今、能力は消滅の一途……特に魔力は消滅寸前なのに魔法を使うのはかえって危険!」

 魔法組にクリスタルが注意を促すが、修司はそれよりも早く片太刀バサミを変化させて漆黒の弓矢に変形させると、その矢をフーケ目掛けて放った。

 矢はフーケ目掛けて追尾する様に飛来し、フーケに直撃した。

「フーケ!」

 ワルドとピエールが急いでフーケに駆け寄ると、そんな三人の間近に修司が瞬間移動で迫る。

「散々、魔界などで悪事を働いてきたピエール、ワルド、フーケよ……! 所詮、貴様らは他のスコーピオン同盟共々、安息の時は訪れん……! だが安心しろ、俺が直々に貴様らを安息へ……静寂なる桃源郷へと導いてやろう」

 目前に迫る修司の言動を前に、三人は揃って修司に反論した。

「それはゴメンだね! 確かにボクらは君ら聖龍隊によって死刑寸前まで追い込まれて以来、安息の時は無かった。けれど、今はそれでもいい。信頼できる仲間と……ガイア達と一緒なら何処だって居場所なんだ!」

「だが小田原修司、お前が導くという何もない桃源郷だけは御免被る! スコーピオン同盟こそ、私たちの唯一無二の居場所なんだ!!」

「ワルド様だけじゃないわ、多くの心温まる仲間達と一緒の時間と場所こそ……小田原修司、あなたにだって奪う事の出来ない私達の家なのよ!」

 ピエールにワルド、そして矢を受けて苦痛に喘ぐフーケの強い反論に眉一つ動かさない修司。

 すると修司は武器にしてた漆黒の弓矢を再び二対の片太刀バサミに変形させると、それを交差させる様に構えて三人に言い放った。

「その安息の時も場所も、俺が真の桃源郷に変えてやる……! 所詮、お前ら罪人に安息の時など似付かわしくない故に、ナ……!」

 次の瞬間、修司は交差させていた二対の片太刀バサミを前へと振るった。

「お前ら!!」「「「!」」」

 ガイアが叫ぶが、三人が驚愕した瞬間には修司が振るった片太刀バサミはピエール達の首を刎ねていた。

 断頭された三人の頭部が地面を転がり、それを見たガイアは怒りで震え上がった。

「うおおおおおおおおおおおおッ!!」

 怒り狂ったガイアは何も考えず一直線に修司へと殴り掛かる。

 が、修司は容易にガイアの攻撃をかわし、片太刀バサミを持ったままの右拳をガイアの腹部へと打ち込んだ。

「ぐほッ」

 強靭な甲殻で覆われているガイアの腹筋にも痛烈に響く修司の打撃に、ガイアは悶絶する。

 そしてそのままガイアは打ち込まれた修司の打撃で吹き飛ばされてしまった。

「兄者!」「ピピッ……!」

 クリスタルとメガロは吹き飛ぶガイアを目撃して唖然とする。

 するとガイアを殴り飛ばしたばかりの修司の目前に、スコーピオン同盟傘下の水銀燈と雪華綺晶が出現し、修司に直接攻撃を仕掛けようとする。

 しかし修司は二体のローゼンメイデンの攻撃に瞬時に反応し、彼女達が攻撃するよりも素早く動き、二体の頭部を両手で鷲掴みして捕えてしまう。

「うっ!」「っ!」

 水銀燈と雪華綺晶は頭部を強く鷲掴みされて悶絶するが、修司は力を弱める所か逆に強めて今にも頭部を握り潰す勢いだった。

「アリス・ゲームによって運命を翻弄され、同じローゼンメイデン同士で争い合ってた哀れな人形たちよ……その非業の運命も、この世の未来共々俺が滅してくれよう」

 そう頭部を鷲掴みにしながら語り掛ける修司に、水銀燈が激痛に耐えながら反論する。

「……確かに……! 同じローゼンメイデン同士で骨肉の争いをしていた頃もだったわ。だけど、今は無益な争いではない……本当に心の通い合った仲間同士で、同じ時を過ごせる幸せが私達にも訪れた……! 小田原修司、あなたが聖龍隊という安らぎを得られた様に、私達もまたスコーピオン同盟という掛け替えのない居場所を得たよの……!!」

 そう修司に強く反論する水銀燈の言葉にも眉一つ動かさない修司は、更に頭部を掴む両手の握力を強める。

 次第に修司の屈強な握力で水銀燈と雪華綺晶の頭部は軋み始め、砕け散る寸前だった。

「水銀燈! 雪華綺晶!」

 二体のローゼンメイデンの危機に、同じスコーピオン同盟の恵一と潤の柊兄弟が修司の暴挙を止めようと駆け出す。

 が、兄弟が駆け出した瞬間、修司は二体を捕らえたままテレポーテーションし、柊兄弟の目前へと瞬間移動したのだ。

 そして修司は両手で捕えている二体のローゼンメイデンを駆け出そうとする柊兄弟の顔面へと叩き付ける。

「うわッ!」「ぐっ!」

 潤も恵一もローゼンメイデン達で顔面を叩き付けられた衝撃で吹っ飛んでしまう。

 そして砂埃舞う中、地面へと倒れる柊兄弟に、やや頭蓋をひび割れされた水銀燈と雪華綺晶の許に修司が歩み寄る。

「愛を感じず、愛を得るために道を踏み外した柊恵一に弟の柊潤よ。愛を感じられないというのは、俺の様に心そのものが欠落し、親などの如何なる愛情を感じられなかった人間の事を言うのだ。お前達の様に、愛を感じられず、夢を得られなかった不良とは訳が違う」

 歩み寄ってくる修司の言葉に、柊兄弟は修司を睨み付けながら反論した。

「修司、確かに自分達は夢を持たず、夢を壊す真似ばかりしてきた。だが、お前は愛情を感じられずとも聖龍隊という組織の中で、聖龍隊という仲間と共に夢見てた理想があった筈だ! その理想を、夢までも捨て去る気か!?」

「小田原修司! そりゃ俺たち兄弟は喧嘩ばかりで、昔から周りに迷惑ばかりかけてきた極悪兄弟かもしれねえ! でもな、それでアニメタウンという故郷を追われても尚、一緒にいてくれるスコーピオン同盟っていう仲間達ができたんだ! そんな俺ら兄弟の最後の居場所までもテメエに奪われて堪るか!!」

 恵一に潤の反論を聞き入れながらも修司の歩みは止まらない。

 すると次の瞬間、修司はテレポーテーションで瞬間移動したのか柊兄弟の目の前で忽然と姿を消した。

「「!?」」目の前で消えた修司に驚愕する柊兄弟。

 と、その時。修司は呆然としている柊兄弟の背後に現れ、二人目掛けて二対の片太刀バサミを刺し貫こうと構えた。

「恵一! 潤!」

 その瞬間、唖然とする柊兄弟を庇おうと水銀燈と雪華綺晶がそれぞれ兄と弟の前に飛び出し、修司の凶刃を防ごうとした。

 が、修司の無慈悲な凶刃は水銀燈と雪華綺晶の体を貫き、そのまま振り返った柊兄弟の体にまでも突き刺さってしまった。

「あ、あ……」「す、水銀燈……!」

「うぅ……」「雪華綺晶……!!」

 片太刀バサミが貫通して息絶える寸前の水銀燈と雪華綺晶に、恵一と潤は苦痛に喘ぎながらも声をかける。

 しかし修司の無情の攻撃は留まらず、水銀燈と雪華綺晶が刺さったままの片太刀バサミを横へと引いて、柊兄弟の体を切り裂いてしまう。

「うっ……!」「ぐっ……!」

 体を切り裂かれた恵一ことウサミミ仮面と潤はそのまま地面へと倒れて動かなくなる。

「恵一ッ! 潤ッ!」涙目で兄弟の死を嘆くガイア。

 だが修司は更に片太刀バサミに突き刺さったままの水銀燈と雪華綺晶に対して、片太刀バサミの形状を変化させて無数の大きな棘を生やして、内部から水銀燈と雪華綺晶を大破させた。

「水銀燈、雪華綺晶……! ッ」

 仲間である二体のローゼンメイデンまでも失い、クリスタルは口元を歪ませる。

 

 柊兄弟に続いて二体のローゼンメイデンまでも手にかけた修司の目に映ったのは、柊兄弟を殺められてボロボロに泣き崩れているクロミの姿だった。

 人間形態のクロミに気付いた修司は、不敵な言い回しでクロミに歩み寄ろうとする。

「そう泣くな、クロミ。柊兄弟の許にはスグにお前自身も逝かせてやる。誰一人残さず、平等に滅してやるのが今の俺なりの導きだ」

 そう言いながらクロミに歩み寄る修司。

 だが、そんな修司を止めるべく、クロミの下僕であるバクが修司に飛び掛かる。

「クロミ様は殺させないぞーー!!」「バク!!」

 単身ほぼ捨て身で修司に突っ込むバクの無謀な行動に、クロミが呼び止めるが、修司は逸早くバクに片太刀バサミを振って切り裂いてしまう。

「ば、バク……っ!」

 下僕と言いながらも自分を直向きに想ってくれるバクの死を目の当たりにしたクロミは茫然自失となる。

 そして足元に転がるバクの亡骸を、足蹴にして脇にずらした修司が再びクロミに顔を向けると、クロミは既に戦意を喪失した為か元のヌイグルミの様な姿へと戻ってた。

 そして元の姿に戻ったクロミは大粒の涙を流しながら修司に懇願し始める。

「もうやめてよ……! 柊様も、潤様も……バクまでも殺して、何が残るっていうの……!? アンタ自身わかっているんじゃないの? こんな惨劇続けたって、自分の心は晴れないって……」

 涙ながらに修司に懇願するクロミの感情を前にし、修司は重い口を開く。

「俺の心は、もう既に晴れない……どんなに命を刈り取っても晴れる事のない、どう足掻こうが世界と同じく晴れ渡る事のない仄暗い虚無の心。もう俺にはこれしか道が残されていない……かつての仲間だった命も、敵だった命も全て真っ白な桃源郷へと送り出すしかできないんだ」

 そう何処か悲し気に語る修司の虚ろな言動に悲しみが絶えないクロミ。

 そんなクロミを修司は片太刀バサミを思いっきり振り下ろしてクロミを頭部から切り裂いてその命を奪った。

「クロミちゃん!」

 クロミの死に、ホワイト・ヘアーズのエクレール・トネールは悲しみに暮れた。

 

 バクとクロミまでも手にかけた修司の凶行に怒りを募らせたスコーピオン同盟の生き残りは、俄然修司へと攻撃を再開する。

「仲間の仇ニャ!」「ああ!」

 涙で視界がぼやけながらも重火器を豪快に打っ放し修司に砲撃を浴びせていくランダージョとグラスホップ。

 今や筋肉質な肉体へと変貌した二人の総攻撃に、多少ながらも鬱陶しく感じたのか、修司はランダージョとグラスホップの方へと顔を向ける。

「……目には目を、と行くか」

 そう呟くと、修司は片太刀バサミを消して代わりに闇の能力で特大の対戦車ライフルを作り出して、その銃口をランダージョとグラスホップの方へと向けた。

「ランダージョ! グラスホップ! あぶねえ!!」

 ガイアが叫んだのも空しく、修司が構えた闇の対戦車ライフルから射出された特大の銃弾はランダージョとグラスホップへと放たれた。

「「うわあッ!!」」

 修司が放った特大の弾は二人の真正面の間近に着弾し、爆発。ランダージョとグラスホップは爆発に巻き込まれてしまう。

「ニャア……」「だっぺ……」

 爆発に巻き込まれて目を回す二人。しかし修司の追撃は留まらず、修司は武器を弓に変形させると地面に倒れるランダージョとグラスホップの真上に向けて無数の矢を射出。

 射出された無数の矢は、そのまま目を回して倒れるランダージョとグラスホップ目掛けて真下へと落下していく。

「ランダージョ! グラスホップ!」

 ホワイト・ヘアーズリーダーの蛭川光彦が叫ぶが、ランダージョとグラスホップが気付いた時には既に無数の矢は間近まで迫っていた。

 そしてランダージョとグラスホップに無数の矢が浴びせられ、二人は大量の矢が突き刺さった状態で絶命してしまった。

 

 修司が放った無数の矢でランダージョとグラスホップの命までも奪われたスコーピオン同盟。

 それでも冷然と表情を変えない修司に苛立ち、再び兵部京介が修司に迫った。

「小田原修司ッ!!」

「兵部京介……信じてた上官に裏切られ、それが切っ掛けでエスパーでない人間を憎む様になり、エスパーだけの理想国家を思い描いていたお前が、まさかガイアという人外の存在と出会った事で昔の思考を変えるとは……薫たちも驚いていたぞ」

「僕の考えは一部を除いて変わってない……! 僕は今でもエスパーの未来の為に日々戦っている! ただ……そんな僕たちを受け入れた上で一緒に今を懸命に駆け抜けてくれる仲間が、ガイア達と出会っただけの事!!」

「ホントにお前はエスパーの為に戦っているのか? ……確かにお前は未だに自分を裏切った普通の人間への憎しみが感じられる。だが、それ以上に今まで感じ得られなかった穏やかで心からの安寧の日々を与えてくれるスコーピオン同盟への思いの方が強まっている。今のお前はエスパーの為に戦っている訳ではない……仲間の、スコーピオン同盟の為に勇んでいるのではないのか」

「……! 産まれながらに他人からの愛情を感じられないというのに、君はまるでテレパシー使いの様に相手の心理を読み解くのが得意なんだな。余計に腹が立ってくる……!」

「どうだ? 相手の心理を、思考を読み解く故に、相手を不快にさせてしまう事実は……! この様なエスパーと普通の人間との違いが、大きな溝を生み、蟠りを生むのだ……! 我が忌まわしき子供にして、毒親とテレパシーの娘である琴浦久美子と琴浦春香がいい例だ」

「「!!」」

 激しく死闘を繰り広げる兵部京介と修司の会話を聞いて、琴浦親子は愕然とする。

 と、激しく闘い合う兵部と修司だったが、ここで兵部が修司に超能力で強化した手で掴みかかろうとした矢先、修司がその腕を逆に掴み返し、そのまま兵部の腕をへし折ってしまう。

「うッ!」腕をへし折られ、悶絶する兵部。

 兵部が苦痛に喘いでいる最中、修司は片太刀バサミで兵部を斬り捨てようと攻撃の態勢に入る。

 が、そこに同じスコーピオン同盟傘下で武闘家のシルクァッド・ジュナザードが助太刀に入る。

「兵部!」「! ……シルクァッド」

 修司の攻撃を阻害したシルクァッドに兵部も顔を上げる。

 シルクァッドの妨害から修司は体勢を立て直すために、一旦後退。

 そして兵部は無理やり超能力で痛められた腕を一時的とはいえ強引に治して、シルクァッドと共に修司へと進撃する。

 修司は兵部とシルクァッドの二人と激戦を繰り広げ、二人の攻撃を巧みに回避したり受け流しながら反撃していく。

 シルクァッドの卓越した強靭な格闘技、兵部の超能力で強化された攻撃。しかしどれも修司の前では無意味に等しかった。

「そもそも兵部、お前の超能力は俺の闇の能力でほぼ無力化されているというのに無駄な抵抗を……」

「黙れ! 僕たちP.A.N.D.R.Aの……いや、スコーピオン同盟の冒険はまだ終わらない!」

「その通り! 我々の、スコーピオン同盟としての物語はまだ続くんだ!」

 激しく修司と交戦しながら主張する兵部とシルクァッド。

「全てが無意味で、全てが無駄に終わる……そう、純粋なる破滅へと進化してしまった俺の前ではな」

 そう修司は呟くと、自身の体を宙にひねる様に舞い上がらせると両足を交差させてシルクァッドの繰り出した右腕を挟み込み、そのまま全身をひねってシルクァッドの右腕を容易く折ってしまった。

「うっ」「シルクァッド!」

 交差法という体術でシルクァッドの右腕を使い物にできなくした修司の技に兵部も驚く。

 すると修司は地面に着地して、左手の平を兵部の方に突き出して、闇の能力を発動させて兵部を強引に引き寄せる。

「うわっ!」

 修司の闇の引力に引っ張られた兵部に、修司は自身に向かって突っ込んでくる兵部を狙って片太刀バサミで真っ二つに切り裂こうと構えた。

 誰もが兵部が修司に真っ二つに斬られる場面を安易に予想した。

 が、その瞬間。兵部は修司が振るった片太刀バサミに触れる直前、体をくるりと回転させて片太刀バサミから身を反らす。

 そして同時に修司の頭部に両腿で挟み込むと、そのまま体をくねらせた反動で修司の首の骨をへし折ってやった。

「やったぜ兵部!」

 二人の激戦を見守っていたガイアたち仲間のスコーピオン同盟が喜んでいると、地面に着地した兵部が息を切らしながら言った。

「いや、シルクァッドの十八番(おはこ)じゃないけどね……」

 そんな修司の首を折ってやった兵部にシルクァッドが左手を差し出した。兵部もそれに左手で交わそうとした。

 が、その時。まさに二人の左手同士が交わされる寸前、両者の左手がばっさりと切断されてしまった。

「「!!」」

 左手の切断面から夥しい量の出血を噴き出す二人。

 愕然とする二人が横に顔を向けると、そこには首が明らかに異常に曲げられた小田原修司が片太刀バサミを振るった姿が確認できた。

 しかも修司は自力で首を元に戻して、左手を失った両者に虚しい視線を向ける。

 そして左手を失って愕然としている二人に、修司は二対の片太刀バサミを俊敏に振るって、一瞬の内に兵部京介とシルクァッド・ジュナザードの首を斬り落とした。

「兵部!! ジュナザード!!」

 断頭されて地面に倒れる二人の亡骸を目の当たりにして、ガイアが絶叫する。

 兵部京介、そしてシルクァッド・ジュナザードまでも戦死。

 

 修司は更に残りのスコーピオン同盟の面々も手にかけようと、一番近くにいた毛利玲生と雄大寺挑を標的に見定めた。

「………………」「「……!」」

 修司の虚無の瞳に見詰められた二人は、覚悟を決めたのか各々の武器を手にして修司に戦いを挑む。

「「うあああああああッ!!」」

 掛け声と同時に修司に向かって駆け出す玲生と挑。しかし余り激しい戦闘に特化してない二人に対して修司は容易く両者の武器を二対の片太刀バサミで破壊してしまい、そのまま鋭利な片太刀バサミを玲生と挑、二人の首元に突き刺した。

「あ……ッ!」「うっ……」

 玲生と挑は首に貫通する片太刀バサミに悶絶しながら果て、修司が片太刀バサミを引き抜くとそのまま地面に前のめりで倒れ込んで動かなくなった。

「玲生! 挑……!」

「あの二人までも手にかけるとは。小田原修司、何処まで非情に成り下がっているんでしょうか……!」

 二人が倒されたのを見て、ガイアは愕然とし、クリスタルは唖然と立ち尽くすばかり。

 

 己が最も忌んでいる我が子とも呼べる新世代型二次元人達から力を吸収して「純粋なる破滅」へと進化した小田原修司。

 その修司と激戦を繰り広げた数多の猛者達は次々と戦死。

 小田原修司によってかき乱された運命の輪の中で巡り合った悪役同盟「スコーピオン同盟」達も続々と死に絶えていく。

 小田原修司VSスコーピオン同盟。

 巨大な力、小田原修司。

 制するのは、『力』か。『正義』か。『愛』か。『夢』か。『理想』か。『現実』か。

 それとも……『』どんな枠にも囚われない存在か。

 如何なる枠にも囚われない自由な存在であるガイア・スコーピオン、そのガイアの生き様に感銘を受けて共に行くスコーピオン同盟の面々。

 そんな「正義」や「主人公」とは正反対の「悪」や「敵」役であるスコーピオン同盟の面々。

 彼らは未来を決して奪われて堪るかという、悪役の意地が、信念があった。

 

 全てを虚無に誘う小田原修司

 悪役の意地で最後まで戦い続けるスコーピオン同盟。

 二次元人によって運命を救われた修司と、修司によって運命を狂わされて今のスコーピオン同盟という居場所に辿り着いた悪役たち。

 

 虚無と意地の戦いは、まだ始まったばかり。

 

 

 

[狂わされた運命の果てに]

 

 遂に「純粋なる破滅」へと進化した小田原修司は、数多の物語や運命軸が一体化した為に集った悪役同盟「スコーピオン同盟」の傘下をも手にかけ始めた。

 P.A.N.D.R.Aの面々に続き、フーケやワルド、ピエールにローゼンメイデンの水銀燈と雪華綺晶、柊兄弟にクロミとバクのコンビ、ランダージョとグラスホップのほんわかコンビ、スコーピオン同盟でも格上の強さを誇ってた兵部京介とシルクァッド・ジュナザード、そして毛利玲生と雄大寺挑の命が奪われた。

 名立たるスコーピオン同盟のメンバーを死に追いやった修司は、残党であるホワイト・ヘアーズ、アルケニモンたちデジモントリオ、ザ・インキとブロッドン、そしてスコーピオン同盟では新参者であるアルセーヌ率いる怪盗帝国の三人に、首領であるガイア・スコーピオンたちスコーピオンブラザーズ三人を静かに見詰めていた。

 自由を愛し、運命に打ち勝ち、現実(いま)を生き抜くのに必死なスコーピオン同盟は小田原修司から生き抜けるのだろうか。

 

 多くのスコーピオン同盟の傘下を殺めた小田原修司を前に、ガイア・スコーピオンや残党のスコーピオン同盟の面々は険しい面持ちで修司を睨み付けてた。

 するとがら空きだった両手から、再び自らの血を結晶化させて二対の片太刀バサミを生成して装備する修司は、その虚無な瞳でスコーピオン同盟傘下のホワイト・ヘアーズを見詰めて標的として見入る。

「ッ!」

 修司の視界に捉われ、次の標的が自分達だと自認したホワイト・ヘアーズのリーダー、蛭川光彦は他のホワイト・ヘアーズの面々同様、ヘル・バイクという厳ついバイクに跨った状態で修司と面と向かう。

「……まだ無残にも、哀れに生きてしまっているんだな、お前ら外道共は。まあ、それもこれまで。今の純粋なる破滅へと進化した俺にかかれば、今まで悪運だけで生き延びてきたお前らなど赤子の手を捻るよりも容易く葬られる」

 今や過去の暴走修司の砲撃で髪は白髪、皮膚は真っ白で体温も容姿も死人同然の姿に落ちぶれたホワイト・ヘアーズの面々を見定め、彼らを嘲る言動を呟く修司。

 そんな修司の言動を前に、ホワイト・ヘアーズ別名【地獄の白髪団】の蛭川光彦は修司を見詰め返して言い返した。

「……ああ、俺達はまだまだ生きてくよ。お前……いや、今の甘い汁をすすっている政権の思惑通り、死んで堪るか」

 すると蛭川光彦に続き、他のホワイト・ヘアーズの面々も口々に修司へと言い返す。

「ああ! 最初はアンタの思惑通り、出生記録までも抹消されて、アニメタウンまでも追われて……それでも私たちはスコーピオン同盟という居場所で生きていられる!」

「あなたや現政権である三次元政府の思惑通り、死んでしまうなんて真っ平ごめんだよ!」

 須王静江とエクレール・トネールに続き、梓川水乃と梓川雪乃の性悪姉妹も修司に言った。

「そりゃ、昔のわたしたちは反吐が出るほど性悪で陰湿な外道だったのは認めるよ! でも、そんな私達でも仲間として受け入れてくれたガイアたちスコーピオン同盟の連中までも一緒にしてほしくないね!」

「そうだそうだ! 行き場のないボク達を受け入れてくれたスコーピオン同盟のみんなまでバカにすんな!」

 水乃と雪乃に続き、東山薫子と北川の二人も言い付ける。

「小田原修司、あなたが二次元人を自分の思い通りの……そう、理想通りの素敵な人々だけで構成させる事で、二次元人をより素晴らしい人種だと三次元人に植え付ける魂胆だったのは今の私たちは理解しているわ」

「だからこそ、真っ当でない二次元人であった私達を罪人として罰し、行き場を奪った所業は理解できる。が……!」

 薫子と北川に続き、ホワイト・ヘアーズで唯一の韓国人であるハン・ユリが訴えた。

「だからと言って……私達の数少ない身内や味方だった人々を、裏で消していた三次元政権の悪行を見て見ぬ振りしてたのは許せない! 私の母までも、精神病院で自殺に見せかけられて……」

 一粒の涙を零すハン・ユリの証言を聞いて、同じスコーピオン同盟の怪盗帝国のアルセーヌ達が騒然とする。

「ちょ、ちょっと待って! 裏で味方だった身内などを消していたのが三次元政権って……」

 アルセーヌの問いかけに、ホワイト・ヘアーズでは修司と同じ三次元人である斉藤石雄に練馬琢也元医師が説明する。

「我々の味方だった協力者や、弁護人である弁護士を、社会的に私達の存在を抹消したかった三次元政権が裏で事故や病死に見せかけて消していたんだ……! 全ては排除法という合法的手段で我々の所有財産を奪い取りたかった政府の思惑でな!」

「そ、そんな……!」

 重犯罪者として財産を没収される異常者(ヒール)排除法。その法案に法り、凶悪犯罪者となった人間から財産を奪い取りたかった三次元政権の謀略によって弁護人や身内などの味方が裏で消されてた事実を知って、今まで異常者(ヒール)を見下していた小田原修司が全ての要因と見てきたアルセーヌたち怪盗帝国は驚愕した。

「ハン・ユリの母親だけじゃないわ。私達の家族の大半が、死亡または社会的信頼を失って、私達の味方になれなくしたケースもあるの」

「今やイジメも重犯罪になった事で、私達の家族や教員、そして教育委員会の人々も社会的信頼を失って路頭に迷ってる……」

 同じく三次元人である痴漢冤罪人の鈴木マリナたちに、過去に陰湿なイジメを行った田中クミ達も悲愴な面持ちで語り明かした。

 そんなホワイト・ヘアーズの面々の愚痴を聞いて、小田原修司は無表情な顔のまま鼻で笑った。

「……フ、全部お前らの自業自得だろうが。それに何より、俺が全てお前らに絶望を招いた訳でもない。問題を早々に解決する為に、三次元政権が手を打って、味方だった弁護人や身内を陰で消していただけだ。災難だったのは、お前らの味方になってしまった為に、時には社会的信頼だけでなく命までも失ってしまったお前らの身内だろ」

 と、修司が正論を述べると、再びホワイト・ヘアーズのリーダーである蛭川光彦が悲し気な表情で修司に言う。

「分かっているぜ。お前が俺たちの身内や味方を直接消してた訳じゃない……異常者(ヒール)排除法で甘い汁を吸っている政権が、裏で消していたって事をな」

 この蛭川光彦の発言に、修司は問い返す。

「ならば何故、お前達は生きる……? もはや、お前達は生きる事、存在している事だけで他の存在を苦しめ、生きている事自体が罪だというのに……!」

 この修司の非情な質問に対し、蛭川光彦たちホワイト・ヘアーズは毅然とした態度で答えた。

「確かに……! 俺達はスコーピオン同盟に加盟する前までは、他人や周りに害をなすだけの……そう、害虫の様な存在だったのは認める。けどな! そんな俺達を改心させる切っ掛けをくれて、今なお仲間として受け入れてくれるガイア達スコーピオン同盟のみんなと過ごす日々までも否定される所以、お前にも誰にも無ェ!!」

 自分達は確かに周囲を傷付けるだけの害虫の様な存在だったと今では受け入れた上で自認しているホワイト・ヘアーズの面々。だがそんな自分達を受け入れた上で改心する切っ掛けを与えてくれたスコーピオン同盟の仲間との日々までも否定する権限は修司は疎か誰にもないと啖呵を切って返答する蛭川光彦。

 そんな蛭川光彦たちホワイト・ヘアーズの面々の思想と言動を聞き入れても尚、修司は冷然とホワイト・ヘアーズに言う。

「……まあ、いい。所詮、お前達が如何に自分が冷たく、意地汚い下種だと自認していたとしても……それでお前らの罪が消える訳ではない。故に、俺が手を下さずとも何れは世界の政権がお前らを消し去るだろうが……今の【純粋なる破滅】へと進化した俺が、お前らの言うとおりに排除法の甘い汁をすすっている政権に代わって存在そのものを断罪してやろう」

「……フッ、結局お前さんは新世代型の血を得て進化してもしなくても、俺らを消し去らなきゃ気が済まないって訳か」

 どんなにホワイト・ヘアーズの面々が改心しようと、その彼らの過去の所業を知っている修司にはホワイト・ヘアーズを全員消し去らなければ気が済まない事実に蛭川光彦は飽きれてしまう。

 すると水乃とエクレールそしてハン・ユリが修司に言った。

「あんたが物語の世界に来た事で、私達の運命も大きく狂ってしまった」

「聖龍隊の、そして三次元政権の権力で居場所はもちろん出生記録までも消されて……ガイア達に救われなければ私たちは全員、ギロチンで首を切られてた事でしょう」

「確かに私達は罪を犯した……けど、居場所だけでなく出生記録までも消すなんて酷すぎる……!」

 三人の女性の悲痛な訴えを聞いた修司は、冷然と返した。

「……確かに、出生記録までも消す様に法案に組み込んだのは俺の意思だ。だが、国にとっても存在そのものが国益に害をなす異常者(ヒール)の出生記録を始めとする存在証明を完全消滅させたのは、俺だけの意思ではない……国を思う、国に忠義を立てる者の意思によって、国によって消されてるだけゾ」

 この修司の返答を聞いて、またもアルセーヌたち怪盗帝国の四人は愕然とした。

「!! 私たち異常者(ヒール)に認定された人々の居場所や記録を完全に消しているのは、小田原修司の意思だけでなく、国の意向だっていうの……!?」

 愕然とするアルセーヌたちに、ホワイト・ヘアーズの斉藤石雄と練馬琢也が答える。

「そうだ。小田原修司が制定した排除法を、今なお施行している現政権のやり口だ」

「赤字になった国の費用を黒字に埋めるために、罪を犯した重犯罪者やテロリストに認定した人間から多額の財産を没収する為に、修司が制定した排除法が今なお利用されているに過ぎないのだよ」

「そ、そんな……!」

「僕たちの居場所を奪った排除法を本当に利用しているのは修司ではなく、現政権だっていうのか……!?」

 二人の話を聞いて、怪盗帝国のトゥエンティにラットは蒼褪めた。

 と、ここで修司が話を終わらせる様に二対の片太刀バサミを両手に装備してホワイト・ヘアーズに歩み寄り始める。

「そろそろツマラナイ話を終わろうか。如何にお前らが訴えても、国は、世界はお前らの罪を許さず、存在そのものを抹消しようと追撃し続けるだろう。だが、俺がその追撃を終わらせる。お前達も全員、真っ白な桃源郷へと送り出してやる事でな」

「へえ、こんな嫌われ者の俺達も桃源郷に送り出してくれるってのかい」

 歩み寄ってくる修司の言葉に、蛭川光彦は嫌味たっぷりに吐き返す。

 そして修司とホワイト・ヘアーズの面々が対峙し、その距離が縮まっていく最中、双方は語り合った。

「まあ、結局は……」

「ああ、同じことだろうよ」

「そこだけは昔と同じだ……」

「ああ、そこんところは俺達も全員一致だ」

 次の瞬間、修司とホワイト・ヘアーズの皆々の声が合致した。

 

「俺はお前達が、大嫌いという事実だ……!」

『俺達はお前が、大嫌いという事実だ……!』

 

 お互いに相手を毛嫌いしている事実を再確認した修司とホワイト・ヘアーズ。

 その直後、修司はふと立ち止まると、その瞬間にホワイト・ヘアーズは跨っていたバイクにしっかりと搭乗してエンジンをふかし、同時にバイクから出現する業火に呑み込まれ、バイクと共に全身火達磨となっては燃え盛るヘルメットから覗く顔は厳つい髑髏へと変貌していた。

「地獄の白髪団 ホワイト・ヘアーズ、か」

 燃え盛るバイクに跨る炎上するヘルメットを着用する髑髏の者たち。ホワイト・ヘアーズを捉えて呟く修司。

 燃え盛るバイクに跨り、一気にエンジンをふかしたホワイト・ヘアーズの面々は一斉に全速力でバイクを発進させて目の前の修司へと一直線に突進していく。

 バイクが速度を速める中、ホワイト・ヘアーズは全員が自分を覆う業火を更に強めて、強まった業火は一体化し、やがてホワイト・ヘアーズは巨大な火の鳥の姿へと変化して修司に突撃していった。

 立ち止まった修司は、左手の片太刀バサミを消して、右手の片太刀バサミを抜刀する構えで身構えて突撃するホワイト・ヘアーズに備える。

 そして火の鳥形態で修司に突っ込んでいくホワイト・ヘアーズは、そのまま修司に突撃し、修司を大火の中へと沈めた。

 修司に突撃し、修司を火達磨にしてやったホワイト・ヘアーズは自分達の業火を少しばかり鎮火させて、急ターンしては一時停車して修司の方へと見返す。

 一方の修司は全身に着火された業火を、自然と己の闇の能力で吸引する事で消化してしまい、更には火傷などの外傷も驚異の再生能力で回復してしまう。

 そんな修司を視認したホワイト・ヘアーズのリーダー、蛭川光彦は小さな声で遠くで対決を見守っていたガイアに言った。

「……ガイアさん……」

「???」

「……すまねぇ……」

 蛭川光彦がガイアに詫びの言葉を呟いた次の瞬間、蛭川光彦を始めとするホワイト・ヘアーズの面々がそれぞれ、首をすっぱり斬られたり、縦斜めに切断されたりと、様々な切り口で斬られてしまい、最後には同じく斬られたバイクと共に大爆発して吹き飛んでしまった。

「蛭川ーーッ! ホワイト・ヘアーズッッ!!」

 蛭川光彦らホワイト・ヘアーズの皆々がバイクの爆発で吹き飛んでいく惨状を目撃して、ガイアは驚嘆した。

「他愛もない。流石は罪無き者に害を与えるしか能のない外道。死ぬ時も呆気ないものだな」

 修司は自身に浴びせられた業火を自力で消火し、突撃する際に抜刀した片太刀バサミを右手に構えて死に絶えたホワイト・ヘアーズを見下していた。

 

 自他ともに大勢から嫌われていたスコーピオン同盟でも異質な下種の集まりホワイト・ヘアーズ。

 その彼らまでも平然と冷酷に斬り捨てた修司の残忍な戦いは終わらない。

 次はホワイト・ヘアーズの面々と同じく、修司の三次元界介入で運命が大きく狂わせられ、現状や容姿が大きく変化してしまっているザ・インクとブロッドンのインク組を標的に絞った。

「さて、次はお前らから逝こうか……重油の如く、粘着質で陰湿な外道だったインク共よ」

 修司に虚無の瞳で見定められて、ザ・インクとブロッドンのコンビは一瞬硬直してしまう。

 だが、普通の二次元人から今のインクの化け物に変わり果ててしまった自分達をも受け入れて仲間と認めてくれたスコーピオン同盟の命を次々に刈り取っていく修司の凶行を前にインクコンビは奮い立った。

「……! 小田原修司、息子のトーマだけでなくその他大勢の聖龍隊の若者達までも惨殺するに飽き足らず、私達を仲間と受け入れてくれたスコーピオン同盟のみんなまでも殺害するなんて……!!」

 ザ・インクは修司が先に殺めたスター・コマンドーの隊士であるトーマ・H・ノルシュタインの父親フランツ・ノルシュタインの姿に変身して問い詰める。

「全ての人々を……いいや、人命を平等に桃源郷へと送り出すと言って惨殺していく貴様は、過去の我々以上に鬼畜な輩へと変わってしまったようだな」

 続けてザ・インクは元野球選手であるジョー・ギブソンの姿で修司に訴える。

「今の私達は、過去の自分がどれだけ外道だったか理解しているが……小田原修司、お前は外道にも劣る哀れな存在だ」

 そして最後に江頭哲文の姿で修司を非難。

 しかし修司は表情を微塵も変えずにインクコンビに問う。

「……過去に大勢の人々の心を平然と傷付け、命を殺め、そして未だに存命するだけでも二次元人の存在意義に傷を付けて罪を犯しているお前らの言葉など何の意味もない。お前らの大罪も、贖罪も……全部、真っ白な桃源郷で塗り潰してやるよ」

 すると修司は両手に装備する二対の片太刀バサミを着火させて、燃える片太刀バサミ二刀流でインクコンビに向かって駆け出した。

 修司は背中のジェットブースターから火を噴き出しながら驀進し、燃える二刀の片太刀バサミでインクコンビに斬りかかる。

 が、修司が二組に斬りかかった瞬間、ザ・インクは右腕を、ブロッドンは尻尾を硬化させて修司の剣戟を受け止めた。

『忘れた訳ではあるまい……! 小田原修司、貴様の闇の能力は特殊能力を封じるだけで、身体能力までは封じ込めない。故に、我々のインクの体を変化させる身体能力までは封じれないと……!」

『ウゴ……ッ!』

 重複された声帯と鳴き声で修司からの斬撃を防ぎながら説くザ・インクとブロッドン。

 そして激しい火花を散らして互いに後ろへと弾みで退く両者。

 すると今度はザ・インクとブロッドンが修司に仕掛けようと、二組は互いに融合し変形。

 ザ・インクとブロッドンは全身が真っ黒な強靭な軍馬に跨った騎士、通称インク・ナイトへと変身。

「ぜ、全身が黒い騎士に変身した!?」

 インク・ナイトへと変身した二組を目撃して、檻の中に捕らわれている新世代型の直枝理樹たちは驚愕すると、同じく檻の中に捕らわれているバギーが解説する。

「ザ・インクとブロッドンは同じ重油の様な物質に変異した二次元人同士として、合体すれば従来以上の能力を発揮する! 壊れた自動車やバイクなんかと融合して走行可能にする事も出来れば、あのインク・ナイトに合体変身する事でより強靭な肉体と戦闘力が備わる様にもなる……!」

 以前よりザ・インクとブロッドンの二組の情報を周知していたバギーからの説明を聞いて、再び驚きを表す新世代型たち。

 その頃、インク・ナイトに合体したザ・インクとブロッドンはその姿で修司へと進撃を始めた。

 長槍を前方に構えて修司にへと突進するインク・ナイトに、修司は衝突する寸前に横へと回避行動をとり、インク・ナイトの突撃をかわす。

 そして回避した直後、修司は再び武器を漆黒の弓矢に変えた上で、構える矢をなんと火を纏わせた、火の矢を射抜いてインク・ナイトへと反撃。

 修司が放った火の矢を次々に浴びて、多少ながらも体が燃え上がり始めるインク・ナイトはそれでも果敢に修司へと進撃を続ける。

 インク・ナイトは武器を槍から特大のボウガンへと変形させると、修司に向かって矢を射出。しかし修司も闇の能力で生成した漆黒の盾を左手に装備して、インク・ナイトが放った矢を防ぐ。

 修司とインク・ナイトの攻防は続き、双方とも相手の攻撃を防ぎつつ、すかさず反撃に転ずる展開に。

 すると徒歩で攻防を展開する修司に対し、乗馬の姿で戦場を駆け抜けるインク・ナイトの戦況に、修司は右足で強く地面を踏み付けて、その衝撃でインク・ナイトが走行する進路の地面から岩を突出させて走行を妨害しようと図る。

 突如として目の前から岩が飛び出してきて一瞬ばかし動揺するインク・ナイトは、辛うじて進路を塞ぐ岩を避けて走り続ける。

 インク・ナイトが地面から出現する岩を避けて走行するのに苦戦してるのを視認した修司は、それから本来は拳を地面に打ち付ける事で成し得る技を、足を代用してインク・ナイトの進路に岩を出現させて行動範囲を狭めていく。

 そうしてインク・ナイトが修司の足踏みによって現れる岩に苦戦しながら走行していると、修司は此処が狙い目とばかりに両腕の装備を合体させて一つの巨大な砲口を作り出し、その砲口から巨大な火炎弾をインク・ナイトに向けて豪快に発射した。

「危ない!」

 修司が放った特大の火炎弾を見て、檻の中の新世代型である大宮忍が叫ぶ。

 その声に反応してか、インク・ナイトは辛うじて修司が砲撃する火炎弾を回避し、切磋琢磨にかわしていく。

 修司は其処にさらに拍車をかける様に、足踏みして地面から岩を出現させながら同時に両腕を合体させた大砲で特大の火炎弾を連続発射していき、インク・ナイトの走行を妨害しながら火炎弾を直撃させようと攻撃を続ける。

 インク・ナイトの方は、地面から現れる岩を回避しながら同時に修司から放たれる火炎弾を避けるのに精一杯だった。

 それが続いていると、遂にインク・ナイトは走行進路先に出現した岩にぶつかってしまい、激しく体勢が崩れた瞬間を突かれて修司から特大火炎弾を当てられて炎上してしまう。

『うおおおおおおおおおおお……ッッ!!』

 全身が大炎上するインク・ナイトに、周りが騒然とする中、修司は火達磨状態のインク・ナイトへと突っ込んでいく。

 一方でインク・ナイトは苦労の末に何とか自力で自分を包み込む炎を鎮火させたのだが、其処へ修司が接近してはインク・ナイトの体に触れた。

 するとその瞬間、インク・ナイトの体が発光し始め、修司はその光を吸引する様に周囲は見えた。

 修司は自分が会得した新世代型二次元人の能力の一つ「うつつの生命力を吸い取る能力」を用いて、本来は不死身に近いインクコンビの生命力を奪って強引に死に至らしめようという魂胆だろう。

『う、ううう……っ!』

 次第に自身の生命力が吸収されていくのを実感し、苦しみ出すインク・ナイト。

 それでも生命力吸引をやめない修司の凶行を前に、修司とインク・ナイトの一騎打ちを見守っていたスコーピオン同盟のメンバーの我慢が限界に達した。

「もう止めるんだ、小田原修司!」

 アルケニモンの鶴の一声を皮切りに、マミーモンとエテモンの二人も耐え切れずに修司へと総攻撃を仕掛ける。

 すると修司はインク・ナイトの生命力を吸引する右手を添えたまま、反対の左手から闇の能力で生成した盾を装備して三人のデジモンの攻撃を防御しようとすると。

 そんな修司をインク・ナイトが触手を伸ばして、修司の防御の態勢を妨害して仲間達の総攻撃の支援を行う。

 その結果、修司はデジモントリオの総攻撃を浴びたのだが、修司は全くの無傷だった。

 と、修司に生命力を吸引され続けたインク・ナイトは遂に膝を着いた瞬間に変身が解けてしまい元のザ・インキとブロッドンに戻ってしまう。

 一方の修司は、右手をデジモントリオに向けると、右手から漆黒の闇の球体を発射し、デジモントリオに放った。

「な、なによ? あの黒い球……?」

 初めて見る修司の技を前に、エテモン達は唖然とするばかり。

 すると黒い球体がデジモントリオの前まで来た瞬間、黒い球体が突如として爆発したかと思いきや、凄まじい引力を発してデジモントリオを引きずり込んだ。

「な、何!? わあっ」

「これって一体……うわぁ!」

「あ、アルケニモン……! うおっ!?」

 エテモン・アルケニモンそしてマミーモンの三人は一瞬で黒い球体へと引きずり込み、消えてしまう。

「で、デジモントリオ!!」

 その様子を見たガイアは叫ぶが、三人を吸引した黒い球は修司に操られるかの様に上空へと上昇し、そして皆の頭上で跡形もなく散ってしまう。

「これでデジモントリオも完全に消滅した。残りは……」

 修司は隣で力尽きるザ・インキとブロッドンに目を向ける。

 次の瞬間、修司は右手から特大の火炎弾を生成し、それを有無も言わさずザ・インキとブロッドンへと投げ付けた。

 修司が火炎弾を投げ付けると、その火炎弾は大爆発。修司をも呑み込んでザ・インキとブロッドンを完全に蒸発させてしまう。

「ナ、ナンテ事ヲ……!」

「デジモントリオに続いて、インクコンビも蒸発という手段で消し去ったか……!」

「ッ……!!」

 火炎弾の爆発でインクコンビを蒸発させて始末した修司を見て、メガロ・スコーピオンとクリスタルそしてガイアは愕然とする。

 

 闇の球体でデジモントリオを消滅させ、インクコンビは業火の爆発で蒸発させて始末した修司。

 そんな修司は虚無の表情で歩き出し、次なる獲物を選び出す。

 と、今までスコーピオン同盟で散々世話してくれた先輩方が次々に倒される場面を目撃して、多くの悪役たち同様に修司が生み出した異常者(ヒール)排除法によって居場所を奪われ、運命も狂わされたアルセーヌたち怪盗帝国の四人が此処で立ち上がる。

「……もう、もうっ……私達の居場所は奪わせない!」

 そう怯えながらも主張するアルセーヌたち四人の怪盗帝国の面々は、勇敢か無謀か、修司の前に立ちはだかる。

「お、お前らイケねえ! お前らじゃ修司には勝てないぞ!!」

 ガイアが四人を制止するが、それでも四人は修司と一戦やり合う覚悟らしい。

 これ以上、自分達の居場所を、運命を奪われて堪るかと修司に特攻する怪盗帝国。

 しかし四人からの攻撃を、修司は右に左にへと残像が見えるほどの俊敏性でかわしながら歩み寄る。

 すると修司は先ほどデジモントリオを倒すのに用いた強力な引力を備えた球体を右手から軽く投げ付けてきた。

「あ、アレはさっきの!」

 ストーンリバーたち怪盗帝国が驚愕した次の瞬間、闇の球体は四人の間近まで接近すると同時に強大な引力を発して四人を引きずり込もうとする。

「きゃっ!」「あ、アルセーヌ様……!」

 思わず強大な引力で引きずり込まれそうになるアルセーヌを、トゥエンティたち三人の側近が協力してアルセーヌの腕を掴み、辛うじて球体に吸い込まれるのを防ぐ。

 しかし四人が協力し合って球体からの引力から自分達の身を護っている最中、それを凝視していた修司がぼそりと呟いた。

「……俺が編み出した闇の球体の力が、たかが引力程度だと本気で思っているとは滑稽だな……」

 その修司の発言に怪盗帝国が唖然とした次の瞬間、なんと今まで引力を発して周囲の物を吸引していた闇の球体が紅く輝き出し、そして大爆発したのだ。

「うわあっ!!」

 アルセーヌたち怪盗帝国は凄まじい爆発に巻き込まれて容易く吹き飛ばされてしまう。

「ううぅ……」

 地面に傷だらけで倒れ込む怪盗帝国の四人に修司は容赦なく迫り、命を絶とうとする。

「あ、アルセーヌ様だけでもお守りするぞ!」

 トゥエンティの掛け声で、他のスリーカードの二人も修司に迎撃を開始。

 しかしトゥエンティがトランプのカードを手裏剣の様に投げるが、修司は全てのカードを片太刀バサミ一本で見事なまでに弾き落してしまう。

 続けてラットが炎のトイズで修司に着火させて火達磨にして見せるが、既に炎系の能力を会得している修司は一瞬で全身の炎を鎮火させる。

「……既に枇々木丈の炎の能力を会得している俺に、炎系の能力を使うとは滑稽だな……」

「ッ……!」無表情な修司の台詞にラットは言葉を失う。

 そして最後にストーンリバーが日本刀を抜刀して修司に斬りかかるものの、修司は二対の片太刀バサミで軽度に剣戟をした直後にストーンリバーの日本刀を片太刀バサミで細切れにしてしまった。

「ッ!?」

 自慢の日本刀が細切れにされて驚愕するストーンリバーに、修司は呆れながら言った。

「この世に生を受けたばかりの、まだ日も浅い二次元人と戦闘経験豊富な俺との間にある剣術の差が大きい事ぐらい分からないものか」

 そう腰を抜かすストーンリバーを横目に、修司はたまたま近くにいたアルセーヌに凶刃の矛先を向けた。

「きゃあっ!」「あ、アルセーヌ様!!」

 悲鳴を上げるアルセーヌにストーンリバーが叫ぶが、修司の凶刃は容赦なくアルセーヌに振り下ろされた。

 だがその瞬間、修司の前にトゥエンティが割り込んできて、アルセーヌに振り下ろされそうになった凶刃を我が身を身代わりに受け止め、斬られてしまう。

「と、トゥエンティ……!」「あ、アルセーヌ、様……」

 愕然とするアルセーヌに満足げに振り向くトゥエンティ。彼はそのまま上半身を斜めに斬り捨てられて夥しい出血を噴き出しながら犠牲になった。そう、アルセーヌ一の忠臣として。

「いや、いやあああああああ……っ!!」

 自分の忠臣の一人であるトゥエンティが無残に斬り捨てられ、血の海に沈んだ惨状を前に絶叫するアルセーヌ。

 修司はそのまま攻撃の矛先を変えずにアルセーヌへと再び斬りかかろうとするが。

「や、やめろーーッ!」

 と、ラットが修司の足にしがみ付いてアルセーヌへの攻撃を阻害しようと試みる。

 が、修司は自分の足にしがみ付いたラットを見て、両足の装備を変形させて長く鋭い針へと変えると、その針で一瞬の内にラットを貫き、彼の命も絶ってしまう。

「うっ……」

 上半身が針で貫かれたラットはそのままか細い声を発して亡くなってしまう。

「ラット……? ラット……!」

 トゥエンティに続いてラットまで失ってしまったアルセーヌは次第に生気を失いかける。

「このーーッ!」

 すると刀身を細かく切断されて、もはや根元の部分しか残ってない日本刀で修司に突っ込んでいくストーンリバー。

 ストーンリバーはそのまま緩い動きの修司を極端に短くなった日本刀で突き刺すが、修司が痛みを感じる事はなかった。

 そして突き刺したまま茫然とするストーンリバーの首を、修司は右手の片太刀バサミで情け容赦なく断頭。

 切断されたストーンリバーの首がアルセーヌの足元まで転がるのを視認し、アルセーヌは恐怖で涙目になっていた。

 最後の忠臣すらも失い、今まさに修司に斬り殺されそうになるアルセーヌは、涙目ながらに修司に訴える。

「……なんで……なんでなのよ! 確かに私達は学園のみんなを、周りを欺いて悪事を働いた。けれど、人を陥れたり人命を奪ったりする様な下種な悪事まではした事ないわ! それなのに、それなのに……なんで私達が此処まで苦しまなきゃならないのよ!? 小田原修司! あなたは異常者(ヒール)排除法を作ってまで、私たちの様な悪役までも根絶やしにして満足!? それ以前に、あなた自身は私達の様な悪役と違って聖人君子の様な潔白な人間だと自負してるの? そんなあなたに私達を追い詰め、苦しめ、挙句の果てには惨殺される所以はないわ……!」

 と、アルセーヌが訴え続けていると、修司はそれを断ち切る様に言い切った。

「分からないか?」

「?」

「分からないのか。人の善意や良心を利用して、それを欺いてまで悪事を働く貴様らの存在そのものが罪だという事を……確かに、俺は聖人君子で潔白な人間ではない。だが俺の……二次元人から与えられた良心という心は、貴様ら悪意ある者の大罪を目の当たりにすると、自然とその良心が暴走し、今なお多くの罪人を罰する名目で命を摘み取ってきた。俺が排除法を作り、世界中の欲の皮が突っ張った権力者たちに悪党どもの財産を国が没収するという法案を口実に、世界中に排除法を強制的に施行させたのもその為……! 悪という悪は根こそぎ、根絶しなければ意味がない」

「………………!」

「……だが、その未来永劫続くであろう排除法による権力者達の欲望を増幅させる決まりも終焉だ。善も悪も、全ての欲望にまみれた命は俺が真っ白な桃源郷へと導く事で、追われるもの追うもの全てが安寧へと辿り着ける」

 修司の言論に言葉を失くすアルセーヌ。そんな彼女にガイアが叫びかけた。

「逃げろアルセーヌ! 今の修司には何を言っても無駄だ!!」

 アルセーヌがガイアの言葉に反応した微々たる瞬間、修司はその瞬間をも見逃さず、右手の片太刀バサミを振り上げた。

「……あ……!」

 そしてアルセーヌが反応した次の瞬間、修司は振り上げた片太刀バサミを一気に振り下ろしてアルセーヌの頭部を斬り付けた。

 ザクッという鈍い、頭蓋骨を叩き切った音が響き渡ると同時に、アルセーヌの頭部から大量の血が噴き出した。

「アルセーヌッ!!」

 ガイアが悲痛な声を挙げる中、アルセーヌの死体は地面へと力なく倒れる。

 

 小田原修司は長年、責任や義務で心を押し潰されてた。

 大義の為に、多くを捨ててきた。二次元人から与えられた心も例外ではない。

 異常者(ヒール)排除法で権力者に富を与え、国税をも減額させた修司。だが楽に手に入れた幸せは簡単に壊れてしまう。

 心を押し潰し、大義の為に良心をも捨て、多くの者に富を与えてきたが、結局はただの夢幻の如く。

 

 そんな修司の良心は既に消滅し、本当に今では純粋なる破滅へと変わり果ててしまったのであろうか。

 

 

 

[蠍兄弟の意地]

 

 聖龍隊や国連軍だけに留まらず、修司はスコーピオン同盟の傘下に降っている面々も手酷く葬ってしまう。

 仲間を全員倒されて、意気消沈するガイア/クリスタル/メガロのスコーピオン兄弟。

 だが、ガイアの闘志という炎はまだ消えてはいなかった。

 絆とは、苦しみを、困難を……苦楽を共にしてきた人との間にできる強固で壊れないもの

 ふっとガイアは立ち上がり、それに続き、クリスタルとメガロもガイアに続けと歩み始める。

 仲間達が死に、自分達だけになろうが決して諦めない闘志を燃やして、スコーピオン兄弟は小田原修司へと進撃する。

 

「……しねえ……」

「………………」

「無駄にはしねえ……! アイツ等の、仲間の奮闘を無駄にはしねえ……修司! ちせちゃんまでも殺めたテメエの鬼畜な所業、オレ様達が終わらせてやる!!」

 黙り込む修司に怒鳴り散らすガイアに続き、弟達も修司に訴えかける。

「小田原修司……! 世の中の権力者たちが自分達の権力を強める為、あなたのクローンを大量生産した経緯に憤りを感じているのは理解します。ですが! 全ての要因に繋がった多くの命を亡き者にするのは些かやり過ぎなのでは!?」

「ピッ、ピポ、小田原修司。自らの代用品を大量に生み出された事で想像以上の悲しみを負ってしまった哀れな人間……その人間であるアナタを止めるのもまた、ワレワレの役目……」

 クリスタルとメガロの二人からも説かれながらも修司は未だに冷然とした無表情のまま。

 そんな三人の蠍兄弟の進撃が始まると、修司も三人を倒すべく背中のジェットブースターを噴火させて高速移動で大地を駆ける。

「来たぞ!」

 ガイアが両脇の二人に呼びかけた直後、修司は先手にガイアに片太刀バサミで斬りかかった。

「ぐッ!」

 物凄い衝撃と共に斬りかかる修司の刃を、眼前で辛うじて両手のハサミで受け止めるガイア。

「今です!」

 すると修司がガイアと鬩ぎ合いをしている最中に、クリスタルが修司の背中のジェットブースターを自身の能力である冷気で凍らせて使用不能に至らせる。

「長くはもちませんが、これでしばらくはジェットブースターを使っての高速移動はできないでしょう……!」

 冷静に修司の背中のジェットブースターを凍らせたクリスタルに続き、機械仕掛けの蠍メガロが内蔵されているマイクロミサイルを全弾発射し、全て小田原修司に直撃させる。

 しかし小田原修司は相変わらず無傷であり、一時修司から距離を置いたガイアが尻尾のハサミを使って修司の頭部を鷲掴みにする。

「これでどうだ!!」

 ガイアは修司の頭部を尻尾のハサミで捕えた直後、両手のハサミから高温の炎をこれでもかと放射して修司を火達磨にする。

 が、修司は持ち前の火炎系能力での耐火性と、吸引する闇の能力によって瞬く間に自身の体を覆う炎を鎮火させてしまう。

「クッ、炎系はやっぱダメか……!」

 悔しがるガイア達の目の前で、修司はガイアの炎から得た高温で背中の凍て付いたジェットブースターを溶かして上空へと飛び上がる。

 そしてガイア達の頭上から火炎系の爆撃を振りまき、爆撃でガイア達を攻撃する。

「ハハハッ! オレ様に火炎系の攻撃は逆に効かない事をお忘れかな?」

 相手の攻撃による高温や炎をも体内に吸収する事で自身の力を増幅させられるガイアが余裕綽々で修司を挑発してるが。

「あ、兄者! 私やメガロには普通に効いているんですが……」

「あ、やべ。お前らの事うっかり忘れてたよ」

 クリスタルの問いかけに答えるガイアの返答に呆れてしまう二人。

 すると上空を滞空する修司は、右手の片太刀バサミを構えて一気に地上のガイアへと再び斬りかかる。

「何度来たって同じだ!!」

 ガイアは再び右腕を武装色の覇気で硬化させて修司の斬撃を防ごうとするのだが。

 次の瞬間、ガイアの硬化した右腕は綺麗に修司に斬り落とされてしまった。

「兄者!」「アニジャ」

 クリスタルとメガロが焦燥する。

「ガイア!」

 黒い檻の中で戦いを傍観するしかできない新世代型の真鍋義久たちも目を見開いて慌てふためく。

 だが、ガイアは多少苦痛に表情を歪めながらも、すぐに斬られた右腕に力を込み入れる。するとガイアの斬られた右腕は一瞬で切断面から生えて、再生したのだ。

「す、スゲェ……!」

「な、なんか、トカゲの尻尾みたいで少し不気味……」

 一瞬で斬られた腕を再生して見せたガイアに目を丸くして驚く瀬名アラタたち男子に反して、鹿島ユノたち女子は少し蒼褪めてしまう。

「ふぅ、まったく……再生するのにも体力使うんだからやめてくれよな」

 と、ガイアが文句を言っていると、次の瞬間修司がテレポーテーションでガイアの背後に瞬間移動して今度はガイアの首を斬り落とそうと図る。

「兄者、危ない!」

 兄ガイアの危機に、クリスタルは突発的に氷の槍を生成してガイアの首を斬り落とそうとする修司の顔面に槍を突っ込ませた。

「わっ、わっ」

 その間にガイアは急ぎ修司から距離を置くのだが、修司の方は顔面から後頭部にかけて槍が貫通したにも関わらず、後方へと退いては瞬く間に顔面に空いた穴を再生させてしまう。

「むむむ……! マギウスの再生力や不死性をも得た以上、どう対処するかが問題ですね」

 クリスタルが冷静に分析していると、ガイアがクリスタルに言った。

「オレ様の首を狙った様に、オレたちも修司の首を狙えばいいんじゃね? オレ様が首を切られたらオワリな様に、修司だって首を切られればお終いかもよ?」

 ガイアの話を聞いて、クリスタルはやや不安そうながらも答えた。

「そうですね。今は他に小田原修司に有効な策が見つからない以上、それを狙った方がいいかもしれませんね」

 こうして三人は小田原修司の首をどうにかして斬り落とせないか戦況を見定めつつ進撃するのだった。

「本気で行くぜ……!!」

 そう言うとガイアは自分の全身を紅蓮の炎で纏い、自身を強化。

 更に弟のクリスタルも凍て付く冷気を纏い、凍て付く白い蒸気を発する。

「フレア・ウィング!!」

 そしてガイアは紅蓮の炎で強化した自分を、更に背中にジェットブースターを装備して高速移動する修司に対抗するべく、四対の炎の翼を背中に出現させてみせる。

「闇眼……!」

 修司は、そんなガイアとクリスタルの強化術を目の当たりにし、自らの眼力で彼らの強化された点を補足する。

(……3000、いや、5000度も上昇している……!)

 自らの眼力「闇眼」でガイアとクリスタルを視た修司は、ガイアの体温が何と溶岩をも超えた五千度にも達している事実を知る。

 それに反してクリスタルは、自然界に辛うじて存在する「絶対零度」に至るまで体温が急激に冷え切っていた。

「す、スゲェ……! ガイアが炎を纏った上に、炎の翼を背中に……」

「クリスタルさんも体中がキラキラと煌めいて……ガイアさん達、とっても綺麗」

 それぞれ超高音と超低温に体温を変化させて自身を強化したガイアとクリスタルを遠視して、新世代型の真鍋義久と琴浦春香は目を丸くした。

 すると此処でまたもバギーが解説をする。

「ガイアとクリスタル、あの蠍兄弟は出生が謎に包まれているが、ガイアは高温に炎の体質、クリスタルは水晶の体に超低温の氷の体質。どちらも周囲の温度を吸収する事で自身の体温を変化させて自らを強化させる事ができる……! クリスタルは通常以上に氷の武器の耐久性はもちろん、攻撃性能も高まるが……それ以上にヤバいのはガイアだ。ガイアは常日頃からマグマの風呂に浸かって休息するほど高温に強く、本気になればマグマ以上に自身を高温に上昇させて、炎系の技や体術なんかを強化させたり使える技が増えたりすると聞いてる……」

「あ、アンタ。なんかやけに解説してくれるじゃねえか……」

 バギーの解説ぶりに新世代型の纏流子が驚ていると、バギーが怒鳴り返してきた。

「ウッセエ!! もう、こうなったら檻の外で小田原修司と戦っている連中の活躍に期待するしか、大戦に勝つ事はもちろん檻から出る事も叶わねえだろう!!」

 涙目で怒鳴るバギーの言動に、彼から必死さが嫌というほど伝わる新世代型たち。

 

 そして五千度の高温で炎を纏い炎の翼を生やしたガイアと、絶対零度まで体温を超低温に変化したクリスタルは、修司と激突する。

 まずガイアが背中の翼を広げて修司に急接近し、灼熱の拳で修司に殴り掛かるが、修司はそれを退いてかわす。

 すると今度はクリスタルが凍て付く波動を一直線に放ち、地面に無数の氷柱を出現させながら波動が修司に向かっていくが、修司はその波動を剣技である地走りで打ち消してしまう。

 其処にガイアが諦めず灼熱の体で修司に直接攻撃を仕掛ける。

 と、修司と激しく格闘しているガイアは顔色一つ変えずに闘う修司を目前に言葉を零した。

「へぇ、暑がりだったお前さんが汗一つかかずに戦闘しているとは……本当に破滅っていう人ならざる存在に成っちまった様だな」

 今のガイアは近くにいるだけでも、汗を流すだけではなく火傷してしまう程の高温だというのに、純粋なる破滅へ変化した修司は元の暑がりだった頃の体質とは根本的に変わり果てている事に気付く。

 それからも激しく格闘し合うガイアと修司。そこにクリスタルも参戦して二人掛かりで修司と激しく攻防を展開する。

「フレイム・ウィップ!!」「フリーズ・アロー!」

 と、ガイアとクリスタルは一旦修司と距離を置いてから、ガイアは炎の鞭を、クリスタルは凍て付く弓矢で修司を攻撃。

 ガイアの炎の鞭が修司の右腕を捕え、その隙に修司の左胸部をクリスタルの氷の矢が突き刺さり、瞬く間に修司の左上半身を凍り付かせる。

 すると炎の鞭で修司を捕えているガイアが、修司の右腕を捕えたまま鞭を引き寄せる様に修司へと接近し、修司の顔面にVの字の形にした灼熱のハサミを叩き込んだ。

「焼き鏝・Vの字スタンプ!!」

 高温に熱せられたガイアのハサミを殴り付けられ、顔面にVの字の大火傷を負った修司はそのままの勢いで吹き飛ばされてしまう。

 だが此処にクリスタルの追撃も加算された。

「ビック・フリーズ・アロー!!」

 クリスタルは生成してた弓矢を更に巨大化させ、大きな氷の矢を射って吹き飛ぶ修司に追撃する。

 吹き飛ばされた修司だったが、自身の体に纏わる氷は枇々木丈から会得した火炎能力を用いて自力で溶かしてしまい、顔面の大火傷は神原秋人の再生能力で瞬く間に再生して消えてしまう。

「チッ、やっぱ首を切り落とすか粉々に吹き飛ばすしか倒せねえみたいだな」

「物騒ですが、それしかないみたいですね。兄者」

 驚異の再生能力を持つ修司を見て、ガイアとクリスタルは中々物騒な話し合いをする。

 するとガイアが弟達であるクリスタルとメガロに告げる。

「クリスタル! メガロ! オレ様が修司に接近するから、お前らは接近できるよう隙を作ってくれ!」

「了解です!」「ピッ、了解シマシタ」

 ガイアの指示に、共闘してるクリスタルも今までの戦闘を観察して状況分析してたメガロも合意。

 指示を出したガイアは再び炎の翼を広げて地上すれすれで滑空し修司に急接近。これに修司は装着している血の鎧その右腕に装備している砲口で火炎弾を砲撃しながらガイアと一定の距離を置く。

 しかしガイアは相手の火炎攻撃や周囲の高温を吸収する体質で、修司の火炎攻撃を無力化するだけでなく自身の攻撃力をも増強してしまう。

(ッ……枇々木丈の火炎攻撃はガイアには無意味。それどころか火に油か)

 火炎攻撃を吸収して強化されるガイアを視認し、修司は表情に出さなかったものの考え込んでしまう。

 すると此処でガイアと距離を置きながら疾走する修司に、クリスタルとメガロの二人が狙いを絞ってた。

「フリーズ・アロー」「スパーク・キャノン」

 クリスタルは氷の矢で、メガロは電気の砲撃を放って修司に攻撃。二人の攻撃はすっかりガイアに意識が向いていた修司に直撃。

「へっ! 目の前の敵に集中し過ぎて周りが見えなくなる悪癖は健在だな!」

 ガイアは目前の相手や事柄に集中し過ぎて周りを疎かにしてしまう修司の悪癖を皮肉る。

 そしてクリスタルの氷の矢で全身を凍らせた挙句、メガロの電撃砲を浴びた修司は一時的に動けなくなってしまうが。

 全身を覆う氷と纏わり付く電気を、修司は一気に振り払い、強引に自力で解放されてしまう。

 そして修司はクリスタルとメガロに視線を向けるが、ガイアの姿が見受けられない事に気付く。

「ギガント・フレイム・ソード……!」

 修司が気付いた時には、ガイアは修司の背後に急接近しては大型の燃え盛る両手剣を生成して携え、その大剣を豪快に振るって修司の首を切断。断頭された修司の切断面は燃えていた。

「やったぜ!!」

 これで修司との激戦も終わったかとガイアが陽気に歓喜したのだが。

 なんと胴体から零れ落ちそうな修司の首断面と、胴体の断面が謎の黒い粘り気のある物質でくっ付いており、それが糸を引いていたのだ。

「「「!!」」」

 これを見たガイア達は驚愕するのだが、その粘り気は更に落ちそうになる修司の首を胴体の断面まで引き寄せ、最終的には粘り気がまるで接着剤の様に働いて修司の首が接合してしまった。

「俺の闇に少しばかり粘り気を足してな、それで首と胴体がさほど離れない様にした訳さ。首と体がくっ付いていれば、秋人の再生能力で簡単に接合できるからな」

 修司の説明を聞いてガイアは愕然とする。

「ッ! クソっ、首を切り落とす策は失敗か……!」

 修司の首を切り落とす策が失敗に終わり、焦り始めるガイアは新たな指示を繰り出した。

「クリスタル! メガロ! こうなったらオレ様達の最強必殺技を合体させて、修司の野郎を粉々に吹き飛ばすぞ!!」

「「了解!」」

 ガイアの指示を受けて、クリスタルとメガロは体制を整える。

 

「ヘル・フレイム・ドラゴン!!」

 ガイアは全身をドラゴンの姿の炎で包み込み、一気に炎のドラゴンを放つ。

「アイス・フェザー・バード!!」

 クリスタルは巨大な美しい氷の鳥を生み出し、強烈な冷気を放つその鳥を飛ばした。

「エレキテル・ハイパー・キャノン!!」

 メガロは自身に貯蓄されている電気をほぼ全て放出し、強力な電撃を砲撃として撃ち放った。

 そして蠍兄弟が放った最強必殺技は一体化し、黄金の輝きを放つ一閃へとなり、その一閃が修司へと直撃。

 黄金の一閃が直撃した瞬間、修司は大爆発の中に呑み込まれ、消える。そして爆発の後、修司の残骸である破片が周囲に散乱した。

「やったぜ!! オレ様達の合体技で、修司の奴を粉々にしてやったぞ!!」

 修司を倒せたと思い、ガイアは喜々と舞い上がった。

 スコーピオン兄弟の戦いを傍観してた周囲の面々は、修司が粉々に散ったのを目の当たりにして唖然としてた。

 だが、その時。辺りに散らばった修司の残骸、その破片から黒い靄の様な煙が舞い上がり、それが一か所に集まり出したのだ。

「な、なんだ!? この煙は……!」

 突如として残骸から噴き出る黒い煙に戸惑うガイア。

 すると一か所に集結する黒い煙が次第に人型へと形を成していくのが皆の目にも理解された。

 やがて一か所に集結し、人型に形を成した黒煙が完全に物質化すると、皆々は驚愕。

「ま、まさか……!!」

 クリスタルはもちろん、誰でも同様に我が目を疑った。

 爆発で散らばった残骸の破片から噴き出た黒煙、それが完全に「純粋なる破滅」に変化したばかりの小田原修司へと戻ったのだ。

「………………」

 虚無の表情で完全に再生してしまった修司を前に、ガイア達スコーピオン兄弟は愕然とする。

「ウソだろオイ……! 残骸に果てようとも、煙からでも再生しちまうってのかよ……!!」

 残骸からでも黒煙から完全再生してしまう修司の驚異的な再生力を前に、呆然とするガイア。

 すると蠍兄弟の攻撃で粉々に吹き飛んでしまった為に血の鎧を完全に失った修司は、同じく粉々に吹き飛んだ得物にしている片太刀バサミを再び自分の血で生成して両手に携えた。

 そして二刀流の片太刀バサミで一気に駆け出し、前方の蠍兄弟へと突っ込む。

「!! アレだけの攻撃を受けても、まだ戦えるのかよ……!!」

 激しく動揺するガイア。だが修司の特攻は容赦なく突撃してくる。

「兄者危ない!!」

 と、ガイアに向かって一直線に突っ込んでくる修司の前にクリスタルが立ちはだかった。

 そしてクリスタルは氷の剣を生成して、修司の片太刀バサミと激しく剣戟を始める。

 一進一退の剣戟を繰り広げる修司とクリスタル。しかし剣術では僅かばかりクリスタルより修司の方が勝っていた。しかも修司は攻めに攻める二刀流の剣戟であった為に次第にクリスタルが振るう一本の氷の剣が脆くなり始めていた。

 そして遂に氷の剣は砕け散ってしまい、クリスタルは反撃の態勢を整える為に一旦後退し、自分の周囲に氷の長槍を生成してそれ等を一気に修司へと放つ。

 だが修司はクリスタルに突進しながら、氷の槍を全て二対の片太刀バサミで斬り砕いていき、クリスタルに急接近。

 クリスタルが再び氷の武器を生成しようとした矢先、その寸前を狙って修司はクリスタルの硬い甲殻の隙間に片太刀バサミを突き刺した。

「う……ッ!」

 いくら外殻が硬いとはいえ、その隙間に刃物を差し込まれれば内部は柔らかい肉体。クリスタルは悶絶してしまう。

「クリス……ッ!!」

 実弟のクリスタルに刃が突き刺されたのを目の当たりにし、ガイアは愕然とする。

 更に修司の追撃は留まらず、片太刀バサミを突き刺した外殻の隙間にもう一対の片太刀バサミを差し込んで、強引にクリスタルの外殻を刃で引き裂く様に切り裂いた。

「ぐはッ!!」

 強引に外殻を切り裂かれて大破されたクリスタルは青い血反吐を吐いて悶え苦しむ。

「ッ……!!」

 クリスタルが苦痛に喘ぎながら倒れる情景を前に、ガイアは言葉を失くす。

「あ、兄、者………………」

 そのままクリスタルは外殻を切り裂かれて亡くなった。

「クリスタル……ッ!!」

 ガイアは目に涙を溜めて悲しみに暮れる。

「クリスタル兄者のカタキ……!!」

 クリスタルの死を目の当たりにしたメガロは、両手のハサミ内部に仕込まれている大型の刃物に電気を纏わせて修司に振り上げる。

 だが、先ほどの合体攻撃で電気エネルギーを消耗してしまったメガロの武器に帯電させてた電撃はすぐに消失してしまい、修司はそんな帯電していない武器を素手で掴んで受け止めてしまう。

 そしてメガロの武器を掴んだ次の瞬間、修司は自力でメガロの刃武器を握力だけで握り砕いてしまう。

 両手の武器を同時に破壊されて激しく動揺するメガロに、修司は追い打ちとばかりに思いっきり右拳を腹部に叩き込んだ。

 修司の打撃はメガロの頑丈なボディを貫き、内部の電線や回線を掴み取った。

 そうして修司は電線などを引き抜きながら、メガロのボディから己の拳を引き抜いた。

「メガロ……!!」「ア、アニ……ジャ………………」

 ガイアの目の前でメガロは機能停止し、完全に大破してしまった。

 

 クリスタルに続き、兄弟二人で自作した機械仕掛けの弟メガロまでも奪われて、意気消沈するガイア。

 だがガイアはまだ闘志を失っていなかった。

 スコーピオン同盟の首領として、そして何よりスコーピオン兄弟の長男として最後まで修司と戦う意地まで失ってなかった。

 ガイアは既に燃料にしている体内の血液が不足している、いわば貧血状態に陥りながらも朦朧とする意識を奮い立たせて修司に向かっていった。

「この……ッ!」

 そしてガイアは鋼鉄並みに硬い外殻に包まれている右腕で修司を上から殴り付ける。

 だが修司は平然とそれを真顔で受け止めた。

 ガイアは引き続き、今度は尻尾を背後から上へと振り回し、修司の頭上に強烈な尻尾での打撃を与える。

 だがこれも修司は平然と受け止めてしまう。

 すると修司は頭上から自分の頭を殴り付けてきた尻尾を掴むと、それを一気に引っ張ってガイアの体から引き抜いてしまった。

「うッ!」

 尻尾を引き抜かれた痛みで表情を歪ませるガイア。

 修司は更に両手に片太刀バサミを装備し、ガイアの両腕を一度に叩き切った。

「ああ……ッ!!」

 肩の部分からバッサリ両腕を切断されたガイアは堪らず両膝を地面に着けて弱り果ててしまう。

 そんな既に戦意をも失いかけているガイアを目の前に、修司は冷淡とガイアに話し掛けた。

「ガイア、俺は正直お前みたいに気持ちのイイ悪役は嫌いじゃなかった。それこそ、お前が師と仰いでいる【タイムボカンシリーズ】の三悪トリオの様な気持ちいい悪役と同類だった」

「………………」

「……でもな、正義がいるから悪が、悪がいるから正義が……そんな関係性を持ってしまってる以上、古より正義と悪の戦いから始まる負の歴史は終わる事が無いんだよ。ガイア、俺はその関係を終わらせ、今度こそみんなが揃って安心できる境地にまで皆を導きたいだけなんだ……」

 そうガイアに語った次の瞬間、修司は右手の片太刀バサミを真横へと振り払って、ガイアの首を一刀両断にしてしまう。

「ガイアさん……!!」

 遂にスコーピオン同盟最後のガイア・スコーピオンまでも戦死し、檻の中の琴浦春香たち新世代型二次元人は蒼然とする。

 

 自由を愛し、冒険に生き、権力に振り回されながらも己の信条に沿って生きてきたガイア・スコーピオン。

 そんなガイアに惹かれ、闇社会で育てられたクリスタルを始め、多くの悪役達は彼に従ってきた。

 だが正義と悪、古より続くこの力関係が生み出してきた争いという負の歴史もまた事実。

 そんな負の歴史を止める為にも力を振るい続け、数多の命を刈り取る小田原修司。

 歴史は長く、そして多種多様に記録を蓄積する。その歴史を培う人の生き様を、今の小田原修司は受け入れられないのだ。

 

 

 

[奮い立て! 猛者たちよ]

 

 スコーピオン兄弟の戦いによって、血の鎧だけは辛うじて失う事となった小田原修司。

 しかしスコーピオン兄弟は遂に激しい決闘の末に三人とも戦死し、スコーピオン同盟は全滅。

 また「純粋なる破滅」に進化したばかりの時の姿に戻った修司を前に、残された猛者たちは如何に戦い抜くのであろうか。

 

 全身がひび割れた白い肌に白い頭髪、額には小さな角が二本見えており、背中には揺らめく焔が靡いている最初の頃の「純粋なる破滅」の小田原修司。

 国連総長・足正義輝が起こした大事件【現政奉還】

 だが現政奉還は義輝だけの意思ではなく、己のクローンを勝手に生み出された事で心が崩壊してしまった小田原修司の意図も含まれていた。

 修司は己のクローンを生み出すに至らしめた、この世の全ての尊い存在を抹消し、それから絶望を与えた己のクローンである新世代型二次元人を根絶し、そして最後に現政奉還の発端である足正義輝を倒した後に己自身の命も消し去ろうという魂胆なのだ。

 

 地獄への道は善意で舗装されている。

 良かれと思って行ったことが悲劇的な結果を招いてしまう事。または、悲惨な出来事の発端となる出来事が皮肉にも善意の行いであることを言う。端的に言えば「大きなお世話」。

 小田原修司の半生も、彼が望まずとも結果的にはこの行為に当て嵌まってしまった。

 愛情を感じられない自分を変えてくれた二次元人、彼らと自分たち三次元人が共生できる未来を築く為に様々な道を突き進んできた修司。

 その道は決して平坦どころか清廉潔白の様に綺麗な道ばかりではなかった。

 大切な存在を、そして弱者を護る為に時には汚い道も突き進み、己の手を汚した事も少なくなかった。

 最終的には己の目的を、そして何より大切な人々を守る為に修司は国連に人権を譲渡して自ら人間兵器へと成り下がった。

 それでも修司は自分を変えてくれた二次元人から与えられた心で信じた。いつか正しい心を持つ人間が平等に共生できる未来が訪れる事を。

 しかし国連から人権を返還された修司に待っていた未来は、彼自身が絶望する結果だった。

 己の意思とは反対に生み出されたクローンである新世代型二次元人。そんな新世代型が巻き起こす数々の問題と衝突。

 未来が明るく正しく訪れると信じてきた修司に訪れたのは、人間兵器に墜ちて多くの血を浴びて穢れた己をモデルに生み出されたクローンである新世代型二次元人が蔓延る時代。

 そんな時代に絶望した修司は、そんな未来に導いてしまった自分の所業を全て真っ白に消去しようと今に至る。

 

 そして問題の新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して進化した修司、通称「純粋なる破滅」の修司は自分の前に立ちはだかる猛者たちに向かって唐突に語り始めた。

「俺はかつて、未来を夢見ていた……心正しき者なら種族を問わず共生できる未来。だが、訪れた今の時代に蔓延るのは、薄汚い俺自身をモデルに生み出された新世代型二次元人という穢れた命……」

 修司の目は遠い先を見据えた様な、空虚な瞳だった。

「記録を、思いを、過去を後世に残していく事こそが……やがては後々の未来で華開く結果と相成ろう。だが開いた華が毒のある華だったら? しかも周囲の命どころか生態系までをも侵食し、崩壊させる様な華だったら……そんな華こそ、他ならぬ新世代型二次元人だ」

 修司は周囲の命に留まらず、生態系をも破壊してしまうのが新世代型二次元人だと説く。

「文明は何を齎した? 人間は本当に進化したのか? その答えこそが……新世代だ」

 淡々と語る修司の話を黙然と聞き入る村田順一や赤塚大作たち。

 そんな数多の二次元人や三次元人たちを前に、修司は呟いた。

「ヒーローなど…………もう、古い考えなのかもしれん」

 この修司の発言に異議を唱えたのは、他ならぬ村田順一だった。

「そんな事はありません! ……僕はまだ聖龍隊に入隊する前、街で暴れ回っている異常者(ヒール)を倒して民間人を守り切ってた貴方は……何より、グールでもあるマイちゃんを保護して聖龍隊でその力を正しく導いてくれた修司さんは紛れもなくヒーローでした! 僕はそんな修司さん……いや、聖龍隊の多くの英雄に憧れて今に至ります!」

「……それで? その結果、お前はどうなった」

「!」

「……お前はその結果、戦いという悲しき運命を突き進む事となり、多くの同胞とも呼べる二次元人たちと敵対し、そして敵として倒していった。争いに巻き込まれたお前は果たして本意と呼べたのか?」

「………………」

 修司からの問いかけに黙り込む順一。

 しかし順一はすぐに顔を上げて修司に話し返した。

「……確かに! 僕らが辿ってきた道は戦いの、争いばかりの棘道でした。だからこそ! 僕らは戦い続け、多くの命の先頭に立って皆を導かなければならないんです! 修司さん、確かに新世代型二次元人は貴方のクローンには違いありませんが、そんな彼らとだって共に共存できる未来が……一緒に築いていける輝かしい未来がある筈です!!」

 熱く修司に説き返す順一に対して、修司は相変わらず虚無の眼差しで遠くを見詰めながら語る。

「お前達の……いや、俺たちの力が……敵を引き寄せ……敵は争いを生み出し……争いは、悲劇を生む。そんな永遠の悪循環を断つ為にも、俺が始めてしまった混沌の時代を全て真っ白に塗り替えなければならないんだ……そう、全ての命を消し去る事で」

 すると修司は再び戦いに繰り出す為に、敢えて再生させなかった両腕の傷口から血を滴らせ、その血を結晶化させて二対の片太刀バサミを生成して両手に装備した。

 そして両手に片太刀バサミを握り締めた修司は、一直線に眼前の猛者たちに襲い掛かる。

「来たわよ!」

 ミラールが戦前の皆々に警鐘を告げると、全員が修司との激しい攻防を予想して身構える。

「………………!」「カァチェン……!」

 逆刃薙(さかばなぎ)を握り締めて、今まさに向かってくる修司に多大な恐れを抱いているシバ・カァチェンにイン・ナオコが呼びかける。

 するとカァチェンは今は既に修司によって亡き者にされたスター・ルーキーズの一員であるナツ・ドラニグルから言われた台詞を思い出した。

「誰にだって、自分の未来を選ぶ資格はある」

 大戦が始まる前にナツ・ドラニグルから言い聞かされてた格言を思い返し、シバ・カァチェンは満身創痍の心を奮い立たせ、再び修司に斬りかかろうと駆け出した。

「! カァチェン、無理するな!!」

 大将が呼び止める中、カァチェンは意を決して修司と真正面から激突。

 皆が呼び止める中、修司の刃とカァチェンの刃が激突。激しい火花を散らして辺りを照らす。

 そして一時ばかり双方ともに刃をぶつけ合わせてたが、修司の強力に敗れてカァチェンは後方へと弾き飛ばされてしまう。

「うっ……!」「カァチェン!」「カァチェンさん」

 地面へと倒れ込むカァチェンに、ナオコや山中鹿之助たちが駆け寄った。

 カァチェンの方は、心中に僅かに灯る闘志とは裏腹に、本能的に感じ取ってしまった修司の危険度に怖気づいてしまってた。

 修司の方はというと、カァチェンを弾き飛ばした直後に再び徒歩へと移動手段を変えて、のらりくらりと自由気ままに周りの猛者たちを二対の片太刀バサミで斬り捨ててた。

「人は愛情を知ってしまった時、憎しみを抱くリスクを背負ってしまう。俺も……お前達から、それを愛を教わり与えられた時から、底無しの憎悪が心中に溜まっていくのを感じた」

 修司は、過去に二次元人から愛情を教え与えられたと同時に、愛情とは反する憎悪までも己の心中に蓄積されてきたのを感じていたと告白。

 

 愛情を知ってしまったが故に憎悪までも抱く様になってしまった修司。

 そんな修司は迫りくる聖龍隊士をも平然と斬り捨て、その命を奪っていく。

 死神代行で名を挙げた黒崎一護をも、修司は仲間だった彼をも容赦なく斬り捨て、一護の返り血を浴びてその歪で白い肌を紅く染める。

「一護ーーッ!」

 仲間の一護の死を目の当たりに、朽木ルチアが修司に斬りかかるが、修司はこれを難なくかわして逆にルチアを一刀の下で斬り捨ててしまう。

 それからの修司も一護やルチアの仲間達を平然と斬り捨て、更には護廷十三隊の面々も無慈悲に斬り捨て、その血を浴び続ける。

 まるで血煙の如く返り血を浴びながら、修司は無表情で仲間だった猛者たちを平然と容赦なく斬り捨て無双する。

 そんな修司の前に、連合軍に加盟して打倒・黒武士に賛同していたトラファルガー・ローが立ちはだかる。

「お前も……真っ白で空虚で静かな一時を与えてやる」

 そう呟いてローに向かっていく修司に対して、ローは得物である長刀を構えて呟き返した。

「弱ェ奴は死に方も選べねェ」

 そして修司とローの一騎打ちは一瞬で終わった。

「ぐふっ」

 口から血を噴き出し、地面に前のめりに倒れるトラファルガー・ロー。

 

「やめて……やめて。もう、やめてよ……!」

 檻の中では、今にも精神が壊れかけているキャサリン・ルースが、自分達の生体エネルギーで進化した修司の凶行に涙を流していた。

 そんな気弱になる皆々に、同じ新世代型の鬼龍院皐月が言った。

「皆の者!! 外では大勢の武人達が我々の為に命を懸けて小田原修司と戦っているのだ! その勇姿を見届ける事こそ、今なにも出来ない我々が出来得る最善の行動ではないのか!!」

 皐月の問いかけに皆は一同に顔を上げる。

「見よ、聖龍隊だけではない。アジア各地の武将達までも小田原修司と奮戦している……皆それぞれ覚悟を持って戦いに挑んでいるのだ!」

 すると皐月は次の瞬間、皆に言い放った。

「覚悟無き者は自分の涙も自分で拭えはしない」

 威風堂々たる彼女の格言に、落ち込んでいた多くの新世代型二次元人は微かながらに奮い立たせられた。

 

 隊士や兵士達を悉く斬り捨て、殺めていく修司。

 そんな修司の前に、修司と昔馴染みである赤塚大作こと大将が既に満身創痍ながらも立ちはだかった。

「修司ッ!!」

 怒声を浴びせる大将の一声に、修司も立ち止まり、大将を見詰める。

「修司、もうこれ以上……自分を苦しめる道を突き進むのはやめろ」

 大将は、修司がこの大戦で自分自身を大いに傷付け、苦しめている現実を突き付け、修司に戦いをやめるよう促す。

 だが修司は次の瞬間、大将に斬りかかり、大戦をやめない意思を行動で示す。

 大将は碇槍で修司の斬撃を受け止め防ぐが、修司の悲しき意思を身をもって知って考えを改める。

「そうか……テメエがその気なら、仕方がねェ」

 そう言うと大将は碇槍の先を修司に向けて言い放つ。

「お前を止める手段が、今じゃ完全に殺し合いしか無いって言うなら……俺は全力をもってテメエを殺す! それがアッコの……先に死んでいった聖龍HEADや仲間達への弔いだ!!」

 更に大将は無言を貫く修司に説き続ける。

「正解は一つじゃない。物事には色んな解決法がある。逆に解決法が無い時だってある。ただ、一つのやり方に囚われるな」

 そんな大将の意志を聞いて、修司は大将に問うた。

「……偏見、差別、そんな過去はもちろん未だに世界から完全に無くならない負の感情が消える訳が無いというのに、お前達はまだ愚かに世の理から抗おうというのか」

 修司に問われた大将は、口元をフッと笑ませると威勢よく修司に啖呵を切った。

「どんな奴等も蔑視はしねえ。それが俺を生み出してくれた人の教えだ」

 如何なる人種や障害を持った人だろうと、蔑視はせずに全ての人々に笑いを与え続けた赤塚不二夫の教えを受け継いだ大将の答。

「今の俺には……守るべき、大切な仲間が……子分たちがいる……! だから負けられねえんだ!」

 そう言い切る大将の側には、ミズキや山崎貴史ら赤塚組の幹部達が自然と集い、修司に挑む構え。

「修司、お前がそんなみんなの仇となるなら……俺は全力をもってお前を倒す!!」

 威勢よく啖呵を切る大将。だが修司は虚無の表情で大将たちに言った。

「……本末転倒だな……」

 修司は遠い目で大将達に説き語る。

「その感情が、やがて世界の……未来を覆う闇へとなる……」

 次の瞬間、修司は二対の片太刀バサミを持参して大将たちへと突っ込んでいく。

 

 如何なる種族や人種をも差別する事無く仲間と認め合う赤塚組の勇姿に、多くの猛者達が奮い立たせられた。

 奮い立つ多くの武将たちは、小田原修司と決着をつけられるのであろうか。

 

 

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