聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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※このシリーズは架空戦記の物語であり、実在の人物とは関係ないフィクションであります。

※私自身もっと作品の出来を良くしたい一心が抑えきれません。そこで、どなたか心優しい方からのコメントや感想など募集しております。

※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。

※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。

※今回も多くの版権キャラが死亡するという過激な描写が目立つストーリーでありますが、最後の大どんでん返し&ハッピーエンドまでお付き合いください。




現政奉還記 破滅の章15 抗う猛者たち⑦

[愛さえも殺めた破滅]

 

 人を、心を、全てを虚無という名の白に誘い、連合軍と戦い続ける黒武士いや小田原修司。

 己のクローンである新世代型二次元人の能力を吸収し、会得した修司は「純粋なる破滅」へと進化。

 そして修司は遂に、かつて自分を愛してくれた二次元人の乙女達をも無残に葬り、亡き者へとしてしまう。

 聖龍スーパーロボット、総括してSRMから始まり、ここに至るまで多くの命が修司によって命が果てた。

 

 

 いつまで、この虚ろな死の連鎖が続くのだろうか。

 

 

[天才の息子から受け継いだ力]

 

「全てを終わらせ、全てを白紙に戻して、全てを虚無へと誘う。それが、それこそ……この俺の戦界創生だ」

 

 この世の命という命を終わらせ、全ての物語を白紙に戻し、全てを虚無へと誘う事こそ、己が果たす戦界創生であると宣言する小田原修司。

 そんな修司の言動を前にして、愕然と固まってしまう村田順一ら戦場の生存者たち。

 個性という鮮やかな彩を飾る色合い。だが、そんな個性という食い違う思考の存在こそが争いが絶えない元凶。その色合いという個性を全て払拭し、無色へと変える事こそ世界を安寧へと導く唯一の手段だと修司は説いているのだ。

 

 だが、そんな修司の悲しき暴挙を止めるべく、戦前で未だに戦意を失わない村田順一たち戦士達は立ち続ける。

「……まだ抗うのか。既に勝敗など無意味だというのに……抗えば抗うほど、苦しみは終わらない現実を受け入れろ」

 虚無の表情で説く修司に対し、順一は力強く説き返す。

「勝敗なんて関係ない! 修司さん、人は抗うから苦しいのではない……苦しみから抜け出す為に抗い続けるんです!!」

 順一の力説を聞いた直後、修司は左手に所持しているショットガンに闇の力を充填させて、銃口を順一に向けた。

 そして溜め切ったエネルギーを巨大な弾として発射して順一に攻撃。

 順一は咄嗟に魔法で鍛えられた手甲を嵌めた両腕を前へと掲げ、前方からの攻撃を防御する。

 結果、修司が放った闇の砲撃を辛うじて防御できた順一だったが、余りの高威力に後方へと弾かれて転倒してしまう。

「う……ッ」「ジュンッ!」

 後方へと弾かれる順一を見て、側にいたフロートが叫ぶ。

 しかし修司の攻撃の手が緩むことなく、修司は第二発目の砲撃をショットガンから放ち、順一へと追撃。

 修司の強力な追撃が順一に直撃する、その瞬間だった。一つの影が転倒している順一の前へと駆け込み、修司の攻撃を持っている武器で弾き返したのだ。

「あ、あなたは……!」

 順一は辛うじて自分を助けてくれたその人物を目前にハッとする。

 修司はその順一の危機を寸前で止めた人物を見て呟く。

「憎しみと運命の影を抱く乙女………………ミスティーハニーか」

 そう、修司の攻撃を弾き返して順一を間一髪のところで助けに入ったのは、聖龍HEADのキューティーハニーの妹に当たるミスティーハニーであった。

「今は憎しみを抱いてはいないわ……! 今は、己の罪と運命を受け入れて生きる乙女ミスティーハニーよ! 修司……」

 ミスティーハニーは悲し気ながらも何処か力強く唱えると、最後には修司を悲しい眼差しで見詰める。

 そうして修司と向き合ったミスティーハニーが歩み出すと、彼女の前進に続いてミスティーハニーがリーダーを務める聖龍隊の汚れ役マン・ヒールズの生存している面々が顔を並べた。

「次は……お前ら、カ」

 修司は虚ろな眼差しで前方のマン・ヒールズの面々を視界に捉えると、闇の覇気を醸し出して臨戦態勢へと身構える。

 だがそんな修司の凄まじくも悍ましい覇気にも動じず、マン・ヒールズの面々は前へと一歩ずつ歩み続ける。

「今の俺に、勝てる者など……等しく居ない。そう、それは……お前らとて、同じだ」

 そう呟く様に唱えた修司は、またしてもショットガンから闇の砲撃を放ち、前方のマン・ヒールズへと攻撃を仕掛けた。

 だが修司が撃った砲撃を前に、マン・ヒールズは覚悟を決めているからか一向に逃げようとはせず、真正面から修司の砲撃を受け止めた。

「マン・ヒールズ!!」

 修司の砲撃が直撃したマン・ヒールズを目の当たりにして、順一が叫ぶ。

 砲撃の衝撃で凄まじい白煙が辺りに広がり、順一達戦前の皆の視界を遮る。

 だが次の瞬間、その白煙が落ち付き、次第に消えていく白煙の中から現れたのは、皆の予想を大幅に狂わせたマン・ヒールズの姿だった。

「!!」「………………」

 その姿を見た順一は驚愕し、修司は無言でその容姿を黙視していた。

 

 ミスティーハニーを筆頭としたマン・ヒールズの容姿、それは全身をあの手塚プロダクションのロゴが入ったパワードアーマースーツで身を固めていたからだ。

「な、なんだ、あの姿……!?」

「手塚プロダクションのロゴが入ってる……?」

 口々にマン・ヒールズが装着しているパワードアーマーに目を奪われ驚きを隠せない聖龍隊士たち。

 しかし修司は冷静にマン・ヒールズの容姿について理解を示す。

「そのアーマー……今は亡き、手塚真氏から受け継いだモノか」

 この修司の理解にミスティーハニーが決意を表す。

「そうよ! かつての貴方と同じ様に、私たち二次元人の可能性を信じ……! その志半ばで亡くなってしまった手塚治虫先生の息子、手塚真先生の意志が組み込まれたこのパワードアーマーこそ、私たち贖罪に生きるマン・ヒールズの戦意と決意の表れ! 修司、この手塚先生がくれた力で、あなたを……そしてこの世界を救ってみせる!!」

 マン・ヒールズの手塚真氏から受け継いだパワードアーマー姿を前にし、更にミスティーハニーたちの決意を前にした修司は微塵も動じる事無く無表情で呟いた。

「……フッ、笑止」

 すると修司は右手の片太刀バサミを地面に突き刺し、それを押し出して必殺技の「地走り」を打ち出した。

 切れ味抜群の斬撃である地走りが真正面から向かってくる中、マン・ヒールズは回避する事なく、ミスティーハニーの指示で動いた。

「行くわよ、みんな!」

 ミスティーハニーの声に応え、マン・ヒールズは全員が右腕を前へと突き出すと、右手からエネルギーが充填されて、そのエネルギーが一気に放出されて前方の修司が放った地走りへと撃ち出される。

 修司が放った地走りとマン・ヒールズのチャージされたエネルギー弾が直撃し、互いに相殺し合い消滅する。

 技と技が激突し、相殺し合った際の白煙をかき消すように、修司は白煙の中を突っ切ってマン・ヒールズへと斬りかかる。

 修司が斬りかかってきたと同時に、ミスティーハニー以外の面々は皆揃って散り散りになり、ミスティーハニーだけがパワードアーマーで強化された剣で修司の剣劇を真正面から受け止める。

 無表情で斬りかかる修司に反して、修司の剣劇を受け止めたミスティーハニーは悲しい面魂で修司を見詰める。

 そして修司とミスティーハニーは互いの刃で押し合って距離を置くと、ミスティーハニーに続けと他のマン・ヒールズの面々が修司に怒涛の勢いで攻めていく。

 デューイや芹沢ルリ子の剣と刀を剣戟で撥ね退け、エリル亡き後のブラック・ラヴァーズの攻撃を修司はショットガンからの凄まじい銃撃で押し退け、月詠イクトの大鎌の攻撃をひらりと後ろに体を仰け反らせてかわし、ジェラール・フェルナンデスの魔法を闇の能力で封じ込めて無力化、森あいやプラスに本郷唯とハルカ・ヘップバーン更には穴戸レナの猛攻をも闇の砲撃を銃口から撃って立ち止まらせてしまう。

「ッ……!」

 マン・ヒールズ全員の攻撃を無力化して反撃する修司に苦戦を強いられ表情を歪ませるミスティーハニー。

 すると再び月詠イクトがマン・ヒールズ全員が今現在装備している手塚プロダクションのロゴ入りのパワードアーマーに備えられてる背中のブースターから火を吹かして高速移動で修司と距離を詰める。

 そしてイクトは再度修司に巨大な大鎌を振り回して攻撃。だが修司はイクトが振り回してきた大鎌の刃を容易く避けると同時に、イクトの腕を力強く掴む。

「ッ!」

 右腕が握り潰される勢いの怪力で掴まれて地面に叩き付けられるイクト。

 だが修司の追撃の手は緩まず、更にイクトを何度も何度も地面に叩き付ける。

 すると修司が掴んでいたイクトの右腕が崩壊し、それと同時にイクトは勢い余って放り飛ばされてしまった。

「……そうだった」

 いつの間にか右腕が崩壊したのを目の当たりにして、修司は何かを思い出す。

 一方で自身の右腕がバラバラに崩壊したのと同時に勢い余って遠くに吹っ飛んでしまったイクトは背中を激しく地面に打ち付けながらも懸命に起き上がった。

「イクト! 大丈夫?」「ああ、何とかな……!」

 駆け付けるミスティーハニーにイクトは修司を睨み付けながら起き上がる。

 修司はそんなイクトの崩壊した機械仕掛けの、そう機械の腕を見詰めながら呟く様に問い掛けた。

「……そうだったなイクト。以前、そう……Mrフェイクの策で気がふれた日奈森紡に右腕を切断され、聖龍隊が作成した精密機械の義手にしていんだっけな」

 そう、イクトは以前あのMrフェイクの仕掛けた謀略で気が狂ってしまった日奈森紡によって右腕を切断されてしまい、今現在は精密機械仕掛けの義手を常備しているのだった。

 義手である右腕を意図的ではないにしろ修司に破壊されたイクトは、そんな状況下でも決して戦意を失わずに修司を力強い瞳で捉え続ける。

 するとどうであろうか。なんとマン・ヒールズ全員が装備しているパワードアーマーとイクトの破壊された義手が青白く輝き出し、反応し合い始めたのだ。

 驚くイクトやマン・ヒールズの面々に、虚無の無表情でその状況を見詰める修司。

 と、皆々が驚いていると、イクトの破壊された義手が青白い光に包まれては次第に形が復元されていったのだ。

「こ、これって……!?」「どうなってるんだ……!!」

 義手が元通りになっていく様子を目撃してミスティーハニーもイクトも我が目を疑った。

 すると其処に上空から、イクトの義手がパワードアーマーからの青白い光で復元されていく様子を視認した鉄腕アトムが舞い降りてミスティーハニーとイクトの前に着地。

「あ、アトム……!」「……!」

 突然のアトムの来訪にミスティーハニーもイクトも驚愕。

 するとマン・ヒールズの前に着地したアトムはイクトとミスティーハニーを前に説いた。

「イクト君、それは今は亡き手塚先生と、その血を受け継ぎながらも二次元人の可能性を説いてた半ばに過労死してしまった息子さんである眞さんの意志を基に造られたパワードスーツの効果だよ」

「ま、眞さんからの……!?」

 アトムの説明を聞いて目を丸くするミスティーハニーに、アトムは説明し続ける。

「そう。僕ら二次元人を生み出した手塚治虫先生と、その手塚先生が生み出した二次元人の可能性を説いてた御子息の眞さんの輝かしい思想から造られた君たちマン・ヒールズが着用しているパワードアーマースーツには、それこそ無限の可能性が秘められているんだ! その力で修司くんを……純粋なる破滅へと変わり果ててしまった修司くんを一緒に止めよう!!」

 アトムからの嘆願に、彼の説明を一しきり聞き終えたイクトとミスティーハニーは一瞬きょとんとした顔を力強い面魂に変えると、腰を上げてチーム一丸となってアトムと共闘しようと態勢を立て直す。

 鉄腕アトムと共に戦う体制を布くマン・ヒールズを背中に、アトムは修司に面と向かって熱く語り掛け始める。

「修司くん! 君が今の世界に絶望し、自分のクローンである新世代型二次元人の存在を許せないばかりに、純粋なる破滅へと変わってしまった君の心境は痛いほど解る……!」

「………………」

「……だからこそ君に伝えたいんだ! 確かに人類は長い歴史の中で数多くの過ちを繰り返してしまう……でも、それだからこそ! 人々はその過去の過ちを繰り返さない為に、過去を決して忘れないんだ! 修司くん、君が未来だけでなく過去までも消滅させるというなら、ボク達は決死の思いで君を止めてみせる!!」

 アトムの熱弁を前にした修司。だが彼は眉一つ動かさずにアトムに返事する。

「……アトム、俺は心底お前が羨ましかった。それこそ妬ましいほどにな。お前はロボットでありながら限りなく人間に近い心というものを持っていた。産まれ付き欠けている心を持った俺は、愛情や優しさを感じ取れるお前の心が羨ましく、妬ましいほどに夢見ていた」

『………………』

 修司の話を黙然と聞き入るアトムとマン・ヒールズの面々。

「……だが、そんな意味のない夢を、願望を抱く日々も終わりだ。この世の全てを……過去も未来も現在も……全てを真っ白に塗り替えて、本当に美しい桃源郷に創り変える……!」

 修司の台詞にアトムとマン・ヒールズの面々が凍て付いた次の瞬間、修司は右手に片太刀バサミを、左手にショットガンを装備して浮遊しながら急速前進して向かってきた。

「来たわよ!」

 マン・ヒールズがリーダー、ミスティーハニーが皆に呼びかける。

 修司は地面との摩擦がない状態で浮遊しながらアトムやマン・ヒールズの面々に接近して片太刀バサミで斬りかかってきた。

 修司からの容赦ない斬撃を寸前で避けていく面々に、修司は更に追撃として左手のショットガンを連射して強力な銃撃をお見舞いする。

 ショットガンからの銃撃はマン・ヒールズに直撃するが、パワードアーマースーツによって銃弾は防がれて大事には至らなかった。

 修司の斬撃と銃撃にマン・ヒールズは抗戦し続け、必死に応戦する。しかし修司の猛攻にほぼ防戦一方だった。

「クソッ、なんとか反撃できないか……!」

 修司の猛攻を回避しながらイクトは反撃の手段を講じていた。

 するとイクトは先ほどパワードアーマースーツの効力で修復された自分の右の義手に、なにか言い知れない力が漲る感覚が走るのを体感した。

 その力は紛れもなくパワードアーマースーツから伝わる力であり、イクトは一か八か行動に移る。

 イクトは右手の義手を修司へと突き出してみる。すると機械仕掛けの義手が展開し、砲口が開いた。そして砲口にエネルギーが充填されると、そのエネルギーが一気に放出されて修司へと一直線に放たれた。

「えっ?」

 突然イクトの義手から放たれた強大なエネルギー砲に戸惑うミスティーハニーたち他のマン・ヒールズ。

 その強大なエネルギー砲撃を一身に浴びる修司。

 余りにも強力なエネルギー砲に義手から発射したイクト本人が一番驚愕してた。

 一方、イクトが発射したエネルギー砲を浴びても、全身が黒焦げになる程度で済む修司。修司は即座にマギウスや神原秋人の再生能力で傷を完治してしまう。

「ダメか……!」

 ガイトが悔しそうにしてると、再生した修司を見てミスティーハニーが分析する。

「でも多少のダメージを与えられている様子だわ! もっと強力なエネルギーをぶつけてやれば……」

「で、でも! アレ以上、強大なエネルギーを発射するなんて無理です!」

 ミスティーハニーの判断に森あいが無謀だと唱える。

 するとアトムがマン・ヒールズに言った。

「できます! ボク達の力を合わせれば、きっと……!」

 鉄腕アトムからの言葉に後押しされ、勇気付けられるマン・ヒールズ。

 そして全員が一か所に集い、修司に向けて右腕を突き出して一斉砲撃の体制を取る。

 再びイクトが義手を展開して砲口を開き、アトムもそれに続いて右腕を開口して強力なレーザーキャノンを発射する態勢を取った。

「アームキャノン!」

 アトムとイクトが右腕からアームキャノンを充填させて発射する手前、他の面々の右手にも同様にエネルギーが充填されて修司に向かってレーザー砲撃が向けられた。

『チーム・ストライク!!』

 ミスティーハニーたち皆の掛け声を合図に、全員が修司に向かって強力なレーザー砲撃を発射。皆のレーザーは一体化し、野太い一つの光線として修司に直撃、修司はそのレーザーにかき消されて跡形もなく消滅した。

 

「や、やったか……!?」

 ジェラール・フェルナンデスが目の前で消滅した修司を目撃して、今度こそ本当に修司を倒したのかと疑心暗鬼に至ってた。

 皆が辺りを見渡してみると、レーザー砲撃を浴びた修司の肉体は粉々に吹き飛び、辺りに焦げた肉片が散乱していた。

「終わった、のね……」「ああ、終わったんだ……」

 修司が完全に死んだと思い、意気消沈する芹沢ルリ子にデューイ。

「修司、まさかこんな結果になるなんて……」

「修司、俺は愛を得られなかったが、アンタは愛そのものを感じられずに苦しんでいたんだな……」

 本郷唯もプラスも修司死亡に悲しみに暮れる。

 ミスティーハニーもイクトも悲愴感に苛まれる中、同じく修司が死んだと思われる現状を悲しく受け止めるアトムが何かに気付く。

 それは辺りに散乱した修司の焼け焦げた肉片。その粉々になった肉片から白煙とは違う煙が噴出し、その煙が上空で渦を巻いて一つとなり、次第に形になっていってた。

「あ、あれはいったい……!?」

 沙羅が激しく戸惑う中、その上空で一体化して形成されていく煙から声が。

「まだだ、まだ終われない……!」「!! し、修司……!?」

 上空で纏まる煙から修司の声がして、ミスティーハニー達は驚愕した。

 すると上空で一つに纏まった煙が人型に形を成すと、その人面が修司のものへと変形したのだ。

「そ、そんな……!!」

「ッ、肉体を粉々に焼け炭にしても、煙からでも再生しちまうってのかよ……!!」

 気体からでも再生してしまう修司に絶望するハルカ・ヘップバーンにイクトたち。

 すると人の上半身に形成された気体状の修司は、気体の体で地上のマン・ヒールズとアトムを煙の剛腕で殴り付けた。

「うわッ!」

 気体とはいえ物凄い風圧を受けて思わず吹き飛ばされてしまう面々。

 そして皆を殴り付けた修司は、巨大な気体の体を凝縮し、元の純粋なる破滅の姿へと戻って地上に舞い降りる。

 元通りになった修司は、吹き飛ばされたマン・ヒールズとアトム達を視界に捉えて語り出す。

「忌まわしき俺のクローン、新世代型二次元人から会得した再生能力を駆使すれば、たとえ肉体が滅んでも気体からでも再生できる。いや、それ以前にお前たち、俺を殺すのに躊躇ったな?」

 修司から問われて何も言い返せないマン・ヒールズ。

 修司は続けてアトムにも問うた。

「アトム、お前こそ俺に対して手加減してしまったんじゃないのか? いや、そもそもロボットは「ロボット三原則」を基本に稼働している……アトム、お前自身もだ。だからこそ人間である俺に対して本気で殺したり傷付けたりできなかったんじゃないのか? それがロボットの限界なのだよ……!」

「っ………………」

 修司か指摘を衝かれたアトムは、悲しげな表情を浮かべてしまう。

 すると修司は自らに力を込み上げながら唱えた。

「戦いとは、戦争とは所詮理不尽かつ無情……! 敵であるならば情け無用で容赦なく、殺意を向けなければ生き残る事はできないのだよ……!!」

 そして全身から凄まじい破滅のオーラを放出するほど気を高めた修司は、新世代型二次元人の斉木楠雄から得たテレポーテーションでアトムやマン・ヒールズの間近まで瞬間に移動して迫ってきた。

『!!』

 一瞬で目前まで迫る修司を前に、マン・ヒールズもアトムも激しく動揺する。

 アトムは咄嗟に再び右腕を展開してアームキャノンを発射しようと身構えるが、その瞬間に修司が右手の片太刀バサミでアトムの右腕を切断してしまう。

「アトム!!」

 右腕を修司に切断されたアトムを前に、ミスティーハニーが叫ぶ。

「……アトム、今の俺を未だに人間と識別している以上、攻撃の直前に生まれる微かな隙は……デカいぞ」

 修司はアトムに、自分を人間として見ている以上生まれてしまう攻撃直前の微かな躊躇いという隙から簡単に反撃されてしまうと説く。

 そして右腕を斬られて後方へと転倒するアトムに、修司は追撃の地走りを打ち込んだ。

 修司が放った大地を駆ける斬撃「地走り」がアトムに襲い掛かる寸前、デューイと芹沢ルリ子が二人掛かりで修司の地走りを武器で受け止め、防ぎ切った。

「くッ……」「相変わらず、凄まじい威力だこと……!」

 地走りを受け止めたデューイと芹沢ルリ子は苦悶の表情を浮かべていると、修司はそんな二人に急接近して斬りかかる。

 修司の剣戟を辛うじて己の武器で受け止め防いでいくデューイと芹沢ルリ子。だが、修司は瞬時に両手の武器を消滅させるとがら空きの素手で二人の武器を掴んだ。すると……

「!」「武器が……!」

 ルリ子とデューイは驚愕した。修司が武器を素手で掴んだ瞬間、武器が砂状に崩壊して消滅してしまったのだ。

 修司のクローンである新世代型二次元人のO・Dの万物を崩壊させる能力で、ルリ子とデューイの武器を一瞬で崩壊させたのだ。

 そして武器を失った両者に、修司は両手に出現させた二対の刃で容赦なく刺殺した。

「うッ……!」「ッ……!」

 声も満足に挙げられずに、デューイと芹沢ルリ子は腹部に刃を突き刺されて、そのまま刺殺されてしまった。

「デューイ! ルリ子!」

 二人同時に仲間を失い、悲嘆するミスティーハニー。

 だが修司の怒涛の猛攻は止まらず、修司はマン・ヒールズの懐に飛び込む。

「がはッ!」「ガイト……! うっ」

 過去に修司が結成させたブラック・ラヴァーズの隊長であり、聖龍HEADの堂本海斗の双子の兄であるガイトを一瞬で斬り捨て、続け様にそのガイトの恋人である沙羅までも斬り捨てる修司。

 突然の修司の猛攻でガイトと沙羅の命を奪われて唖然とするブラック・ラヴァーズの残党を、修司は右手の片太刀バサミで容赦なく斬り捨て、左手のショットガンで無慈悲に撃ち抜いて惨殺する。

 修司の凶刃に斬り捨てられるイズールにユーリ、マリア。そしてショットガンからの銃弾によって情け容赦なく命を奪われていく姉妹のシェシェとミミにレディー・バット、血の海に倒れる蘭花とあらら。

 こうして修司はデューイと芹沢ルリ子に続いて、ブラック・ラヴァーズを全滅させると、残りのマン・ヒールズを虚無の瞳で捉える。

「うっ……!」

 修司の生気のない虚無の瞳に見詰められ、背筋が凍り付く森あい。

 するとその時「みんな一旦退け!!」と、月詠イクトが修司の前へと飛び出した。

「イクトくん!」

「俺が時間を稼ぐ、その間にみんなは態勢を立て直してくれ……!」

 ミスティーハニーが呼び止める中、イクトは自分が時間を稼ぐと敢えて死に役を買って出たのだ。

 だが、そんなイクトにも修司は容赦なく片太刀バサミを振るう。

「うッ……!」

 まず修司は先ほどパワードアーマースーツの力で復元されたイクトの右義手を再び片太刀バサミで切断、イクトの右腕を奪う。続けて修司は無慈悲にイクトの左腕をも切断し、切断された左腕からは夥しい量の血が噴き出す。

 両腕を失い、思わず尻餅をついてしまうイクトに修司は問答無用で追撃とばかりに今度は彼の両足を一度に斬り捨て切断してしまう。

「ああ……ッ!」「イクト君……!」

 遂に両手両足共に切断されて、達磨状態に陥ってしまうイクトは苦痛で悶絶し、その殺伐とした情景にミスティーハニーは蒼褪めた。

 そして何の抵抗も出来なくなったイクトに、修司は左手に装備するショットガンの銃口を突き付けて言った。

「さらばだ、イクト」

 次の瞬間、イクトの顔にショットガンの散弾が無数に浴びせられ、イクトは無残に戦死してしまう。

「イクトくーーん……!」

 イクトの戦死に、ミスティーハニーは悲しみに暮れる。

 しかしイクトが作ってくれた僅かな時間の間に、生き残ってるマン・ヒールズは態勢を立て直し、修司に反撃の機会を窺っていた。

「まだだ……まだ戦える……!」

 そんなマン・ヒールズ残党の戦意を酌んで、アトムも右腕を失いながも再戦しようと奮い立つ。

 ミスティーハニーを筆頭とした残ったマン・ヒールズの面々は、再び修司にアームキャノンを発射し、攻撃。だが人数の減ったアームキャノンでは威力不足であり、修司には全く効かなかった。

「終わりだ……!」

 修司はドスの効いた声でそう言うと、両手の武器を合わせて一体化させ、一つの銃身が長いマグナム銃へと変形させて両手で構える。

 そして特殊な形状のマグナムから、一発二発と続けて銃弾を発射。銃弾は森あいとプラスに直撃。

 すると何とも恐ろしい事が。二人の体に減り込んだ銃弾は、体内で膨張。

「うわーーーーーーっ」「ぐあーーーーーーッ!」

 森あいとプラスが断末魔を上げると、体内で膨張した銃弾は紅く怪しい光を放ちながら大爆発。森あいとプラスの体は粉々に吹き飛んだ。

「そんな……っ!」

 か弱い森あいや屈強なプラスまでも無慈悲に粉々にした修司の所業にミスティーハニーは絶望視した。

 と、思わず修司に背を向けてしまった穴戸レナが視界に入った修司は、情け容赦なくレナの背中を斬り付けて、彼女を惨殺。

 すると仲間の仇と、斬りかかってきた本郷唯の剣戟を簡単に避けた修司は、逆に唯を片太刀バサミで断頭して殺めてしまう。

 唯の首が足元に転がる中、修司は残っているミスティーハニーにハルカ・ヘップバーンそしてジェラール・フェルナンデスを狙う。

 駆け出した修司がハルカ・ヘップバーンに斬りかかろうとした寸前、彼女を庇ってジェラール・フェルナンデスが剣で修司の斬撃を受け止めた。

 だが修司の持ち前の怪力によって、ジェラールが使ってた剣は意図も簡単に叩き折られ、ジェラールは一刀両断に縦へと切り裂かれてしまう。

 左右に切断されたジェラールの亡骸を前にして、恐怖で失禁してしまうハルカ・ヘップバーン。そんな彼女を修司はショットガンで散弾を浴びせて殺める。

 遂にマン・ヒールズで最後の一人となったミスティーハニーは、仲間を失った喪失感に苛まれながらも最後まで抗戦の意志を示す。

 そんなミスティーハニーを修司がショットガンで狙撃しようと構えると、修司が銃弾を発射すると同時にアトムが我が身を盾にミスティーハニーを護った。

「アトム!」

 ミスティーハニーが驚く中、アトムは修司に攻撃できない代わりに我が身を盾にし始めた。

 アトムながらの抵抗に、修司は容赦なく片太刀バサミで何度もアトムを切り刻み、時おりショットガンを浴びせてアトムの鋼鉄の体をボロボロに半壊していく。

 遂に修司の猛攻を浴び続けたアトムの体はボロボロになり、アトムは途切れかける意識の中でも修司を思ってた。

「修、司くん……きみ、は……本当、は……優し、い、ここ、ろ、が……ある、は………………」

 悲しみと絶望の中で変わり果てた修司を思いながら、アトムは完全に機能停止した。

「アトムーーーーっ……!」

 ミスティーハニーが悲しみの叫びをあげる中、修司は彼女にも攻撃を仕掛ける。

 修司が振るう片太刀バサミを、ミスティーハニーは悲嘆の心境で受け止めつつ、ハニーフルーレで反撃していく。

 だが攻撃を浴びても瞬時に再生してしまう修司の驚異の肉体を前に、ミスティーハニーの体力は消耗するばかり。

 そして闘いの末、遂にミスティーハニーは力尽き、満身創痍の傷だらけの体を地に沈めた。

「ミスティーハニーーーーッ!!」

 遂にマン・ヒールズ最後のミスティーハニーまでも戦死し、直面した村田順一は悲観する。

 

 二次元人を生み出した漫画の神様、手塚治虫。

 そんな手塚治虫という天才の息子である手塚真は、過労死する直前まで自分たち三次元人と共存する二次元人の可能性を信じ抜いて死亡。

 手塚真が遺した遺志を受け継ぎ、二次元人の可能性を託された元敵役・悪役の世間から嫌われているマン・ヒールズ。

 そして手塚治虫が生み出した心を持つロボット、鉄腕アトム。

 神の願いを託された心あるロボットと、神の息子の意志を受け継いだ嫌われ者のマン・ヒールズ。

 尊く、そして気高き意思を持つ二次元人がまたしても戦死してしまったのである。

 

 

 

[動き出す三次元の武将たち]

 

己のクローンである新世代型二次元人の能力を吸収して「純粋なる破滅」へと進化した小田原修司は、遂に聖龍隊屈指の裏方部隊でもあるマン・ヒールズと共闘してた鉄腕アトムを倒した。

 手塚治虫の息子である眞氏の意志から造り出されたパワードアーマースーツを着装して修司に挑んでいったマン・ヒールズがアトムと共に放ったアームキャノンは修司を跡形もなく吹き飛ばしたが、修司は自らの肉体を気体に変えて生存。

 そして再び肉体を再生させた後、容赦なくマン・ヒールズを惨殺し、共闘してくれたアトムをも迷う事無く破壊。

 天才の息子と呼ばれた手塚眞が信じた「二次元人の可能性」を託されたマン・ヒールズも、その父である手塚治虫が生み出した鉄腕アトムも、心身ともに虚無へと至った修司に呆気なく倒されてしまったのだった。

 

 ミスティーハニー率いるマン・ヒールズ、そしてマン・ヒールズと共闘した鉄腕アトムをも倒した小田原修司が悠然と立つ中、そんな修司を見詰めて村田順一たちは蒼然としていた。

「………………………………」

 順一は目の前で繰り広げられる惨劇に言葉を失ってしまう。

「……もう、もうダメなんだ。小田原修司は……俺達の始祖は、この世の全ての命を殺し尽くさない限り止まらないんだ……」

 小田原修司の闇の能力で生成された漆黒の檻の中に幽閉されている真鍋義久たち新世代型二次元人は現状この絶望に打ちのめされていた。

 そんな絶望に押し潰されかける新世代型二次元人達の悲痛な心境を察知したのか、順一がハッと我に返って檻の中で惨状を傍観するしかできない新世代型二次元人達に呼びかける。

「ッ、そんな事ない! 君たち新世代型の始祖たる修司さんは、僕らが……いいや、例え僕一人になろうと必ず止めてみせる! だから君たちも諦めるんじゃないッ」

 順一からの励ましも、漆黒の檻の中で囚われている新世代型二次元人達には余り響かなかった。

 今や周知してしまった自分たち新世代型二次元人が小田原修司の代用品として生み出されただけのクローンである事実。そしてその小田原修司にも拒絶され、修司がその新世代型を滅ぼす為に新世代型を生み出した世界を滅するべく、新世代型の能力を会得して純粋なる破滅へと進化した経緯。これらの変え様のない現実に、新世代型二次元人たちは只管に絶望するしかなかった。

 ……だが、そんな絶望に打ちひしがれる新世代型二次元人に、同じ漆黒の檻の中に囚われてしまってる一人の少女が優しく言葉をかける。

「……琴浦さん、みんな……」

 声をかけたのは、プロト世代の少女である黒鳥千代子。彼女は自分を助けてくれた経緯から今なお親友である新世代型の琴浦春香を始めとした皆々に優しく言葉をかけ続ける。

「確かに、新世代型のみんなは三次元人から……ううん、世界の人達にとっては小田原修司の代用品としての価値しか見られないのかもしれない。でも、私は琴浦さんたち新世代型が単に小田原修司のクローンという存在には見えないよ!」

『………………………………』

「琴浦さんには琴浦さんの、他のみんなにも個人個人で小田原修司にはない素晴らしい才能や感性が備わってる。それは単に小田原修司のクローンとしてだけじゃない、この広い世界に生きる輝かしい生命の一つ一つとして輝いている! 過去を背負い、現実(いま)を懸命に生き抜いて、未来という先へと自分の夢や思いを運ぼうとしている素晴らしい命なんです! 小田原修司のクローンとして終わるだけのちっぽけな生き物じゃない筈です!!」

 黒鳥千代子ことチョコの力説に、琴浦春香たち新世代型二次元人の胸中が微かながらに温められる。

 するとチョコに続いて、黒魔法のインストラクターであるギュービッドと彼女の後輩である桃花・ブロッサムも絶望に苛まれてる新世代型二次元人たちに呼びかける。

「そうだぜアンタたち! チョコの言うとおりだ。宇宙でドレフに対して意気込んでたあの時の気持ちを忘れちまったのかい! いくら小田原修司のクローンという出生は消せない過去だろうけど、未来までは誰にも奪われてないだろう? 現実という今を生き抜いて、未来を夢見て突き進む意思まで失うんじゃないよ!! タクっ」

「チョコちゃんや先輩の仰る通り! 新世代型の皆さん、始祖である小田原修司の悲しみに呑み込まれちゃダメです! アッコさんだって言ってたじゃないですか。私たち二次元人は三次元人に生きる希望を、道筋を照らして導いてあげる存在だと……それなのに、私たち二次元人が自分の生きる未来までも絶望視してちゃ本末転倒じゃない!」

 ギュービッドや桃花の言葉に、我に返り、次第に下を向けてた顔を上げ始める新世代型たち。

 そんな新世代型二次元人たちにチョコが更に

「琴浦さん、みんな。自分の価値は他人から与えられるんじゃない、自分自身で見出さないと意味がないの! 小田原修司の言葉に惑わされちゃダメ、自分の意思をしっかり持って前を向かないと……!」

 チョコからの励ましを受けて、琴浦春香も他の新世代型二次元人たちも自然と心を揺さぶられ、下げていた顔を前へと上げていく。

 そして顔を上げた新世代型二次元人たちの目に飛び込んできたのは、他ならぬ虚無の表情に落ち着く「純粋なる破滅」へと進化した小田原修司の顔だった。

 全ての種族の平和と安寧の為に日夜戦い続けた修司の前に飛び込んできた現実、それは人間兵器であった自分の量産された代用品であるクローン、新世代型二次元人が蔓延る世界。平和とはかけ離れた異質な存在である自分のクローンで溢れ返る世界。

 そんな世界と現実に絶望し、悲観した末にこの世全ての命を滅ぼして人類が積み上げてきた歴史という記録そのものを白紙にしようと今に至る修司。

 現実に絶望し悲観する今の純粋なる破滅に進化した小田原修司の虚無の表情を見て、新世代型二次元人達は自然と小田原修司の悲しい実情に共感していた。

 

 と、その時。

 新世代型二次元人たちが自分の実情に共感したのを察知したのか、純粋なる破滅である修司がテレポーテーションで新世代型二次元人たちを幽閉している漆黒の檻の前まで瞬間移動してきた。

『!!』

 突如として目前まで瞬間移動で接近してきた修司を前に、新世代型二次元人たちは息を呑む。

 すると修司は感情のない冷え切った虚無の眼差しで檻の中の新世代型二次元人たちを見下ろしながら吐き捨てた。

「勝手に俺の気持ちに、絶望に共感するな……! 俺は全ての忌まわしき存在の元凶、原罪そのもの……そんな俺から生み出されたお前たち新世代型二次元人に共感され、同情されるなんて吐き気がする」

 更に修司は続けて新世代型二次元人達に吐き捨てる。

「現政奉還という大戦も、ジャッジ・ザ・シティを始めとする新世党の反乱も……元はと言えば俺の複製、クローンである貴様らがこの世に生を受けたからこそ起きてしまった。俺もお前らも、他人から同情なんかされない……いや、同情すらされてはいけない穢れた命、元凶という存在である事を受け入れろ……!!」

 修司から冷たい言葉を浴びせられる新世代型二次元人たち。

 しかし先ほどチョコたちから励ましを受けた琴浦春香は、勇気を出して一人孤高に戦い続ける修司に向かって、檻の格子の隙間から自身の右手を差し伸べる。

 だがその瞬間、修司は琴浦が差し伸べた右手を片太刀バサミを軽く振り払って斬り付ける。

「っ!」「こ、琴浦!」

 修司が振るった刃は格子から差し出されてた琴浦の手を斬り付け、それを前にした真鍋義久たちは叫喚する。

 修司の血を結晶化させて生成した片太刀バサミで手を斬り付けられた琴浦春香は、手から腕にかけて切り傷から流れ出た血が滴っていた。

「琴浦! 大丈夫か……っ」

 手を負傷し傷口を咄嗟に反対の手で塞いでしまう琴浦春香に真鍋義久が慌てて声をかけるが、琴浦は手に負った傷を逆手で塞ぎ苦痛に顔を歪ませながらも、再び顔を上げると迷いの無い目で語り出す。

「私は……私は、アッコさんや聖龍隊の人達と出逢って分かったの……! 差し出した手に相手が必ず手を交わしてくれる訳じゃない、時には手を振り払われてしまう事の方が断然多いって……それでも手を差し伸べ続ければ、いつかは必ず相手と手を交わす事ができる筈だって!」

『…………………………』

「どれだけ差し出した手を振り払われようと……諦めず手を差し伸べれば、いつかは相手と……たくさんの人と手を交わせる事ができるのよ!!」

 今までに無い琴浦春香の力強い言動に、その場の誰もが暗く重く感じていた心中の内に熱く滾る想いが湧き上がってきた。

 

 如何に相手と親睦を深めたくとも、相手がそれを望んでいるという訳ではない。

 時には差し出した手を弾かれ、向こうから交流を、繋がりを断ってしまう。

 それでも諦めず、懸命に何度も手を差し伸べ、相手と絆を深める事が可能なのかもしれない。

 人と人を結びつけるのは、人の縁。その縁を結び付けれるのは、他ならぬ人そのもの。

 

 自分たち小田原修司のクローンである新世代型二次元人の遺伝子を研究して多くの生物兵器などを生み出してたタイの製薬企業から今に至るまでの全てが始まった時から、新世代型二次元人達はミラーガールやメタルバードなどの聖龍隊に国連軍そしてアジアの武将達との出逢いから多くの人々と繋がりという名の絆を得られた。

 そんな自分達を取り巻く多種多様な個性という色合いに満ちた世界を滅ぼす事は誰であろうと、例え自分達の始祖である小田原修司であっても許されない事なのだと、新世代型二次元人達は心に深く刻み込んだ。

『なんど! 血塗られた血筋が私達を呪おうと……!』

『なんど! この手が世界を握り潰そうと……!』

『俺『私『僕たちの世界は……壊れる事はない!!』

 小田原修司から受け継いだ血に塗れた呪われた血筋が自分達を呪おうと、己の呪われた遺伝子が世界を滅ぼす顛末に至らしめようと、自分達を取り巻く美しい世界が壊れ滅びる事は決してないのだと、強く修司に主張する新世代型二次元人達。

 そんな老若男女問わない新世代型二次元人達から強く主張された小田原修司。

 だが、修司は虚ろな表情と瞳で檻の中の新世代型二次元人達に強く吐き捨てた。

「だが、お前達の呪われた血筋が消える事は永遠にない……! お前達は何も守れない! その呪われた血が延々と流れ続ける体を引き摺って、尊き者たちが……この世界が破滅を迎えるのを眺め続けるしかないのだ!!」

『……!』

「この世界が……俺たち忌まわしき血族を生み出した世界が朽ち果てるまでな!」

 自身のクローンである新世代型二次元人達に吐き捨てた修司は言い終わった瞬間、自らの筋肉を過去に軍事政権に打ち込まれたD-ワクチンで強化させ、自身の両腕を肥大化させて攻撃力を増強した。

「さあ、そこでじっくり観ていろ……! 己の始まり、己の始祖たる俺によって、愛すべき者も憎む者も、全てを滅ぼされる様を見届けろ……!!」

 修司が己の筋力を増強させてまで、残った命を根絶やしにしようとする気迫を前に、新世代型二次元人達は顔面蒼白に至った。

 

 すると、此処まで聖龍隊や国連軍の戦い、そして今さっきの新世代型二次元人達の決意を目撃した者たちが戦前へと歩み出てきた。

「……ヒュ~、OKOK。鬼神、お前さんの決意は酌んでやるよ。だが………………オレ達を倒さなきゃ、この世全てを真っ白にする事はできねえぜ?」

 その声に修司が視線を向けると、そこに勢揃いしていたのは。

「で……デイ・マァスン!」

 中国の地方武将である雷の蒼龍デイ・マァスン。しかもその隣には

「古より築かれた人類の歴史! その歴史という歩みすらも消滅させるというのなら、某も黙ってはいられぬ!!」

 モンゴルの熱血漢の若虎シン・ユキジの姿も見受けられた。

 そんなアジアの勇猛な武将二人が肩を並べている最中、今に至るまで激しい戦火で黙然と傍観するしかできないでいる聖龍隊の新人組【SAO】と【AW】そして【マギカ】の面々の横を素通りする形である二人の武人も戦前へと出る。

「若いの。こんな常識外れの戦いに震え上がって何も出来ないのは少しばかり共感できる。……だがな、大切なモンを、譲れねえ何かを賭けてまでも怖気付いて戦えねえってのは情けねえぞ」

「おいおい、右目の旦那。この子たちはまだまだ子供、それも女の子ばかりじゃないか。男なら、戦えない女の子を労わって代わりに戦ってやろうって心構えの一つぐらい持ったらどう?」

「タク・モンジュロ……!」「猿飛、佐助さん……!?」

 自分達の横を素通りして戦前に出てきたデイ・マァスンの側近タク・モンジュロと、モンゴル軍が忍頭である猿飛佐助の登場にキリトもアスナも目を丸くする。

「大丈夫、大丈ーー夫。後はおじさん達に任せておきなさい! 女の子はなるべく戦ってほしくないんだよねッ」

「猿飛、ここは戦場だ。女子供なんて関係ねえ、だが戦えねえ奴は引っ込んでろ!」

「あーーらら、右目の旦那も手厳しいこと言うね。まっ、この場は生き抜く為にも共闘って形で鬼神と一戦交えるかな」

 アスナ達にウィンクして優しい言葉をかける佐助に、モンジュロは敢えてて厳しい言葉を返すが、それに対しては佐助も最後は厳つい顔で修司を睨み付けて応える。

 すると二組の武将が名乗りを挙げてた矢先、今まで修司との激しい戦火を見届けるしか出来ずにいたアジアの武将達も名乗り上げだす。

「チックショー―、こうなったらもう破れかぶれだ! 鬼神を倒して明日を見るか、鬼神に倒されて何もかも消されるか……この黒 劉席(コク・リュウセキ)、一世一代の大博打!! こうなりゃ当たって砕けろってんだい!」

 かつて存在していた中国共産党の元幹部であった、昔のまま巨大鉄球を武器に振り回す豪快な不運なる武将、黒 劉席(コク・リュウセキ)も鉄球を引きずりながら戦前へと名乗り出る。

 そんな劉席は先立ってシバ・カァチェンに引き連れられて意気揚々と黒武士打倒に集結した次世代の武将の一人であり、元は自分の部下でもあったゴ・マータンに声をかける。

「おい、マータン! いつまでも怖気付いて小っこく震え上がってるんじゃねえ! この俺様も一緒に立ち向かってやるから、最後の最後まで諦めんじゃねえ!!」

「う……うっせぇ阿保席! ここ、このマータン様が怖気付くって……? ……そんな訳ねえじゃ無いですか! 鬼神がなんだ、小田原修司がなんだってんだ……純粋なる破滅だか何だか分かりませんが、このマータン様の奇刃で滅茶苦茶に切り刻んでやりますよ、はい……」

 かつての上司である劉席に怯え切ってた尻を言葉で叩かれて、修司に対しての恐怖心を少しばかり拭った流浪人ゴ・マータンは自慢の武器である奇刃を構えて戦前へと恐る恐る歩み出る。

 と、ゴ・マータンが劉席に奮い立たせられて再び勇気を出して戦前に並び立ったのを視認して、彼と同じ次世代の武将である乙女も再び立ち上がり戦前に立つ。

「ま、マータンも勇み立つのであれば……このイン・ナオコも戦前に出ない訳にはいかないな。元々私は、この現政奉還で全ての乙女達に平穏と幸せを齎す為に剣を振るってきた。そして今、聖龍隊の……二次元界の数多の戦乙女達が同じ時と戦場に生きる私達と共闘した末に戦死していった。この悲劇を無駄にしない為にも……そして何より、この世の全ての乙女たちの幸せの為にも! 小田原修司、お前だけは倒さねばならない!!」

 中国漢族の地方武将にして熱血大将、そして自分の身の丈以上の大きさを誇る巨剣を扱う乙女イン・ナオコが、修司との戦いで自ら断髪した黒髪を結び直し、短いポニーテールにして戦前に勇み立つ。

「ぼっ、ぼぼぼ、僕も……僕だって。ナオコさんやマータンさん、そして名立たるアジアの武将が一緒なんです! それ以上に、将来立派な武将になるという夢を叶える為にも……小田原修司! あなたに勝って見せます!!」

 そんなイン・ナオコと同様、アジア武将では最年少の武人である山中鹿之助も、相棒でお目付け役である雌鹿おやっさんと共に戦前に並び立つ。

「こ……ここは当然ながら私も参戦する所存! かつて兄者と語り合った、日本人とハングル人だけでなく、全ての種族が共存共栄する理想を実現する為にも……我が兄者を、小田原修司を討伐する!!」

 小田原修司の実妹である有沙と結婚している韓国の国将軍サイ・チョウセイも己が剣を天へと突き立てて勇み立つ。

「怖い、怖い怖い怖い……け、けれど。また幸平くん達の手料理を食べたいのも本心だし……もう! こうなったらヤケッパチだ! ぼくもみんなと共闘する! うぅ……」

 新世代型二次元人である幸平創真たちの手料理を忘れられず、彼らを救いたい一心で臆病ながらも勇気を奮い立たせる中国ウイグル族の名士シャ・キンカ。

「キンカさん、御心が強く強くなられましたね。……かつて、聖龍隊を葬る為にアジア各所に戦火を着け、第一次アジア大戦を勃発させるべく貴方をも利用した我々が言うのも何ですが……本当に成長なさいましたね」

「俺達の悪行も、キンカの心の成長に繋がったのならば……少しは報われるもんかな」

「ひゃっひゃっひゃ……わらわ達の悪行が評価される事など、この先一生、永遠に訪れんわ。……まあ、少しばかし形は違うが、鬼神に一矢報いる復讐を果たせると言うのなら……この現政奉還も少しはわらわ達に利益を与えてくれるのかもな」

 かつてシャ・キンカを始めとするアジアの人々を利用し、ヤン・ミィチェン等の武人が活躍した第一次アジア大戦を引き起こした闇の心を討伐する裏切りの一族【闇心討伐(あんしんとうばつ)黒衣衆(くろこしゅう)の白蓮坊、黒蓮坊、そして大闇刑蘭共々、ガトリンガーや損尼(そんに)欲尼(よくに)も並列する。

「もうお告げとかそんなんじゃなく、わたし自身の意思で挑みます! ……鬼神様、自分の子供達と向き合えない悲しみから破滅の化身へと転身してしまって……この鶴姫、ズバババーーンと貴方様の悲しみを拭い取って差し上げます!」

 修司が純粋なる破滅に変化したのは、彼が自分の子供である新世代型二次元人と向き合えないからだと自己解釈する鶴姫は、お告げなどではなく自分自身の意思で修司と戦う覚悟を決めた。

「純粋なる破滅、か……いやはや、なんと実に悍ましいモノへと変化したのだね、小田原修司。だが、我輩が母国イギリスにも悪影響を齎す君の暴走を止めるのも、英国外交官である我輩の役目……なのかも。ま、ここは一つ他の武将達と共闘してやれるだけの事はやってみようではないか」

 常に「長い物には巻かれろ」の思考を持つイギリス外交官でもある武将モーリス・ナイロンも、現状から皆と共闘して修司に対抗しようと考えを改めるのだった。

「兄貴、幹部衆のみんな……見ていてくれ。赤塚将吉、人生最大の大修羅場、必ず乗り切ってやる!」

 今や戦死した実兄の赤塚大作や赤塚組の幹部衆の弔い合戦と、大将の弟である小将こと赤塚将吉は睨みを利かせて武器にも使用している大工道具を握り締める。

「……皮肉にも、今の太平なアジアがあるのは2年前のアジア大戦が始まりじゃった。修司たち聖龍隊がアジアに平和を導いてくれたお陰で、悪政を蔓延らしていた当時の共産党は滅び、それに代わってワシが中国を治められる様にと修司たちが世界に呼びかけてくれたんじゃ……」

「………………………………」

「今の平和な中国が、いやアジアがあるのは全て聖龍隊の努力の賜物じゃ! そしてその聖龍隊を当時引き連れていた修司が今まさにアジアだけでなく世界そのものを滅ぼそうとしている……! 武蔵丸、ワシはやるぞ。ワシは確かにまだまだ未熟者ではあるが、みんなが……名立たる武将達と共に最後まで修司に抗って見せる!! お前も最後までワシと共に戦ってくれるか?」

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 2年前のアジア大戦で崩壊した共産党に成り代わり、中国を治めている少年、徳竹康。その竹康の側近にして戦界最強の異名を持っているサイボーグ武者、武蔵丸も意気込みを固める。

 と、名立たる武将達が軒並みを揃えている中、一人だけ多くの二次元人と修司の激戦を目の当たりにしてすっかり意気消沈してしまってる台湾が国将軍のシバ・カァチェンにイン・ナオコ達が呼びかける。

「おい、シバ・カァチェン! 何を呑気に尻を着いている? 私たち次世代の武将を呼び掛けたあの勢いはどうした!? 死んでいったサコンや多くの二次元人たちの為にも、今ここで戦わなかったら全てお終いなんだぞ!」

「カァチェンさん! 恐いのは僕も同じです。だからこそ一緒に勇気を振り絞って最後までこの大戦を戦い抜きましょう!」

 イン・ナオコや山中鹿之助の激励を受けたシバ・カァチェンは、弱々しいながらも腰を上げて、武器である逆刃薙(さかばなぎ)を握り締め、修司と対峙する。

 そんな大勢の武将達の闘志を目の当たりにし、誰よりも英雄達の背中を見続けてきた聖龍隊のあの男も再び闘志を燃やした。

「そうだ……僕は見続けてきたんだ、聖龍隊に憧れていた頃から今に至るまで。多くの英雄達の背中を、勇姿を……! 村田順一! わが師、小田原修司と御相手致す!!」

 

 

 中国が地方武将の一角を担う漢族郷士の蒼龍デイ・マァスンと側近タク・モンジュロ。

 その好敵手であるモンゴルの若虎シン・ユキジとモンゴル軍の忍頭の猿飛佐助。

 元中国共産党幹部の不運なる武将、黒 劉席(コク・リュウセキ)

 黒劉席の元部下であり、流浪人である次世代を担う若武者ゴ・マータン。

 中国が漢族の女武将にして巨剣を振るうイン・ナオコ。

 未だに行方知れずの主、ハルノフを探している中東の見習い武人、山中鹿之助とお目付け役の雌鹿おやっさん。

 修司の義弟にして韓国将軍サイ・チョウセイ。

 食いしん坊で臆病ながらも新世代型二次元人との繋がりを求める中国ウイグル族の名士シャ・キンカ。

 かつて鬼神・小田原修司に復讐する為だけにアジア各地を戦火に沈めて大戦を引き起こした裏切りの一族、黒衣衆(くろこしゅう)の面々。

 今なお修司を鬼神として崇める故に、修司に優しさを取り戻してほしいと願う中国ウェンリンで海神の巫女を務めている鶴姫。

 長い物には巻かれろの考えを持ちながらも、純粋なる破滅に変化した修司を倒すべく己も共闘する意思を示す英国外交官のモーリス・ナイロン。

 実兄である赤塚大作や赤塚組の幹部達の弔いの為にと、生き残ってる自分も修司に死闘を仕掛けようと意気込む赤塚将吉。

 皮肉にも悪政を布いていた旧共産党政権が崩壊した後に、代わって中国を治めている少年・徳竹康とその側近であるサイボーグ武者の武蔵丸。

 次世代の武将達を引き連れながらも、その一人であるマン・サコンに庇われて彼の命を亡くしてしまった経緯からすっかり意気消沈してしまってる台湾が国将軍のシバ・カァチェンも戦前に並び立つ皆々を前に、萎れていた勇気を辛うじて振り絞った。

 そして最後に、小田原修司の一番弟子でもある村田順一が、師である修司と再び死闘を繰り広げようと三次元界の武将達と共闘する構えを示す。

 

 なんと皮肉ながらも、修司と同様に二次元人との共生で己の生き様や運命を変えられた三次元人が、同じ三次元人である修司と真っ向から対峙した。

 その中には、幼き頃から聖龍隊の、二次元界の多くの英雄達の背中や勇姿を見続けてきた村田順一も見受けられた。

 名武将たちと純粋なる破滅に進化した小田原修司の戦いが、今始まろうとしている。

 

 

 

[脈動する武将達]

 

 数多の二次元人たちが戦死していく中、そんな二次元人たちの死に様を目の当たりにした三次元界の武将達が、打倒修司に向けて戦前に並び立つ。

「さあ! ド派手なPartyの始まりだ!!」

「いざ! 勝負ゥゥゥッ!!」

 中国の地方武将である漢族の蒼龍デイ・マァスンとモンゴル軍が新国将軍の若虎シン・ユキジの雄叫びを皮切りに、武将達は一斉に修司へと雪崩れ込んだ。

 そんな一斉に雪崩れ込んでくる武将達を前に、修司は微塵も動揺せず、冷静に片太刀バサミを逆手に持つと、それを後ろへと身構えて、一気に前へと押し出す様に振るうと、刃から巨大な斬撃が放たれて最前線の武将達に襲い掛かる。

「ッ! モンジュロ!」「御意!」

「佐助ェ!!」「ほいほいっと」

 マァスンとユキジは各々側近であるタク・モンジュロと猿飛佐助に指示を飛ばし、そして四人同時にそれぞれの得物で修司が放った巨大な斬撃を防ぎ切る。

 修司の斬撃を防いだところへ、修司が急接近しては両手の装備を共に片太刀バサミにしてマァスンとユキジに同時に斬りかかってきた。

 マァスンとユキジはそれぞれ、六爪と二槍で修司の剣戟を受け止めた直後に応戦するものの、マァスンの雷の斬撃もユキジの烈火の連撃も修司には効果なしだった。

 と、其処に村田順一が地面に拳を打ち付けて凄まじい衝撃波を地表を沿って修司に直撃させようとするが、修司はそれを地走りで相殺してしまう。

「順一!」「順一殿!」

 マァスンとユキジは順一の攻撃に驚いていたが、そんな二人や他の武将達の士気を高めようと順一は唱えた。

「祈願はしておいた! あとは勝つだけだ!」

 この順一の言葉に、誰もが士気を高められた。

 すると其処に遠距離からチマチマと、鶴姫と大闇刑蘭がそれぞれ弓矢と数珠で修司に攻撃するものの、修司の物体をすり抜ける身体能力で矢も数珠もすり抜けてしまい、効力が見られなかった。

 そんな鶴姫と刑蘭に修司は左手の片太刀バサミを瞬時にショットガンに変化させて、二人目掛けて禍々しい漆黒の銃弾を放ち、攻撃。

「きゃっ」

 思わず悲鳴を上げる鶴姫に、唖然とする刑蘭。すると二人に飛来してくる漆黒の銃弾を、イン・ナオコが得物である巨剣で打ち返し、二人を守った。

「わあっ、ナオコさんありがとうございます!」

「ふぉっふぉっふぉ、ナオコとやら。ここは一先ず感謝しようではないか」

「ふんっ、鶴姫はともかく、二年前の戦争を引き起こした黒衣衆を助けたのは気に入らないが……今はそうは言っていられないからな」

 跳び上がるほど感謝する鶴姫に、一応は感謝の意を伝える刑蘭を前に、ナオコは二年前のアジア大戦を引き起こした黒衣衆を助けた自分を癪に感じながらも戦いに戻る。

「受けてみやがれ! 俺とマータンの合体技を!!」「ふんッ!」

 黒劉席が武器の鉄球を振り回して起こした竜巻に、マータンの奇刃から発生した雷が一つとなり、電撃を帯びた竜巻が修司を襲う。

 だが修司は右手の片太刀バサミを目前に構えて、一気に縦一直線に振り下ろすと電撃を帯びた竜巻はなんと一刀両断されて消滅してしまった。

「ゲゲッ、竜巻までも斬っちまうなんて、相変わらず常識外れの剣技を持っていやがるぜ」

「ケケケ、でもまだまだオレ達の戦力はこんなもんじゃないですよぉだ」

 二人で作り出した電撃を帯びた竜巻をも容易く一刀両断した修司を目視しても尚、劉席とマータンの戦意は折れてはいなかった。

「おやっさん! お願いします!!」

 山中鹿之助はおやっさんとの連携で修司に跳びかかるものの、修司は突進してくる鹿之助の連結棍棒での攻撃を片太刀バサミで受け止めつつ容易く鹿之助を弾き返してしまう。

「うわっ!」

 修司に弾き返されて地面に転げ回る鹿之助に、修司は追撃の地走りを繰り出す。

 だが地走りが鹿之助に直撃する寸前、恐怖心でいっぱいの心中なのに勇気を振り絞って臆病者のシャ・キンカが鹿之助の前に飛び出して、常に背負っている鉄製の鍋で修司の斬撃を防いでみせた。

「あ、ありがとうございます! シャ・キンカさん」

「う、うん、これぐらい……ブルブルっ」

 キンカに礼を述べる鹿之助だったが、キンカの方は緊張の糸が解れたのかその場で白目を向いて卒倒してしまう。

「おお、偉大なる鬼神・小田原修司よ。どうかその怒りと悲しみを鎮めたまえ…………えいっ!」

 地面に擦り付けるぐらい額を地に着けながら土下座の態勢で修司に近づいていくモーリス・ナイロンは、修司の目前まで接近した隙をついて一気に武器で斬りかかるのだが。修司はナイロンの剣戟を防いでは虚無の表情で言う。

「ナイロン、お前の長い物には巻かれる精神は兼ねてより心得ている。そして相手に油断させてから上手く立ち回ろうとする戦術も、な」

 次の瞬間、修司は受け止めてたナイロンの武器を凄まじく弾き、ナイロンも武器諸共吹っ飛んでしまった。

 数多の武将達が乱れ舞い跋扈する戦場で、あの赤塚大作の弟である将吉こと少将が修司に向けて金づちを遠投して攻撃するが、修司は飛来してくる金づちを全てショットガンで撃ち返して防いでしまう。

 少将は相棒の大虎に跨って修司に接近し、口の中に含ませていた釘を吐き出して修司の顔面に鋭利な釘の先端を当て付けた。

 少将が吐き出した釘は修司の眼球に当たり、一時的とはいえ修司の目を潰すことに成功。

「今だ! 修司のあんちゃんに総攻撃だ!!」

 少将の合図に、徳竹康と武蔵丸が少将と共に修司に総攻撃を仕掛けた。

 武蔵丸の巨大なドリル状の槍が修司の体を貫き、高速回転する先端で追撃していく。

 が、修司は即座に自力で武蔵丸の槍を引き抜いて、武蔵丸と一旦距離を置くと驚異的な再生能力で胴体に空けられた風穴を塞いでしまう。

 すると今度は修司の義弟である韓国将軍のサイ・チョウセイが剣で修司へと突撃してきた。

「兄者ーーッ!!」

 チョウセイの突撃を修司は容易く片太刀バサミで受け止めると、チョウセイは修司と鍔迫り合いながら問答を始めた。

「兄者、いい加減目を覚ましてください……!」

「俺の目は当の昔に覚めている……! 俺という呪われた存在をクローンという形で量産し続ける世界に真の安寧を与えてやるのだ」

「兄者! 自分のクローンを量産されてしまった悲劇は同情できます! ですが、兄者のクローンとして生み出された新世代型二次元人には無限の可能性があるのです! 彼らの未来を守る事こそ、今の私にできる最大の義……すなわち正義なのです!」

「……ふぅ、お前は未だに正義という価値観に踊らされているのだな。人間が生み出した曖昧な価値観に踊らされ、何が本当に必要な行動なのか分かり切ってないな」

「で、ですが……それでも私は! 己が掲げる正義を! そして新世代型二次元人を守る! そう、例え兄者、貴方を倒してでも!」

 そして問答を終えた直後、鍔迫り合いをしていた修司とチョウセイは互いに押し合って距離を置いた。

 と、修司とチョウセイが距離を取ったその時。「みんな! 修司どんから離れろッ!」と、徳竹康が大声で修司の周辺にいる武将達に呼びかけた。

 武将達が急ぎ修司の近くから離れると、皆が離れたのを視認して武蔵丸が上空から修司の目の前に着地すると改造されている巨体から落雷発生装置を作動させて、武蔵丸を中心に辺り一帯に雷が落ちる。

 武蔵丸最大の攻撃技である落雷に何度も直撃する修司。だが、修司の落雷で黒焦げになった肉体は瞬く間に再生してしまう。

 そんな瀕死にもならない修司を目の前に、多くの武将達は口元を歪ませる。

「ケケケケケ、何度も何度も生き返りやがって……もういい加減死んどけーーッ!!」

 自棄になったゴ・マータンが奇刃を修司に向けて投げ付けるが、修司は投げられた奇刃を容易く避ける。が、それはマータンの計算通りで、マータンは修司に急接近して鉄製の爪で修司の全身を切り裂く様に引っ掻き回し、最後にはブーメランの様に手元に戻ってきた奇刃をで修司の胴体を鋸の要領で切り裂いた。

 地面に押し付けられ、奇刃で体を切り裂かれる修司だったが、修司は素手で自分の体を切り裂いている奇刃を掴み、片腕だけで奇刃とそれを持ったマータンを持ち上げては遠くに投げ飛ばしてしまった。

「わわわわわッ!」「ま、マータン……うわっ」

 修司に放り投げられたマータンは、運がいいのか悪いのか劉席の真上に飛んできては彼を下敷きに落下してしまう。

 そしてマータンによって傷だらけにされた修司は、立ち上がるとまたしても傷だらけの体を再生して戦闘を続行する。

 周辺の武将達を手当たり次第に斬り付け、猛攻を続ける修司を止めるべくデイ・マァスンとタク・モンジュロの主従組が修司に挑む。

「モンジュロ、見せ場だぜ」「御意! マァスン様」

 マァスンとモンジュロの連携戦法は確実に修司を追い詰め、修司に幾度となく傷を負わせる。が、修司の驚異的な再生能力の前では無力に等しかった。

 すると今度は逆にマァスンとモンジュロが修司に追い詰められ、苦戦を強いられる。

 だが其処に、マァスンとモンジュロとは好敵手の関係に当たるシン・ユキジと猿飛佐助が助太刀に入ってきた。

「マァスン殿! 助太刀致す!!」

「癪だけど、これ以上うちらの戦力削がれちゃ敵わないからな」

 ライバルのマァスンを助太刀する事に何の躊躇いもないユキジに対し、佐助は普段からいがみ合っているモンジュロやマァスンを助太刀するのを少しばかり不服に思うのだった。

「大将! 俺様の影で鬼神を縛っておくから、その間に攻撃攻撃!」

「心得た! 佐助!」

 佐助が忍術で修司を縛り付けている間に、ユキジが二槍の猛攻で修司を滅多打ちにしていく。それを見た佐助も、縛り上げると同時に修司へ攻撃を開始。

「ほい来た! 攻めた攻めた」「有無! いざ!」

 佐助の影の術で手玉にされる修司に、ユキジが猛攻の追撃を幾度となく突く。

 すると修司は闇の能力で佐助の忍術を解き、ユキジの二槍の猛攻を右手の片太刀バサミのみで受け止めると、佐助とユキジを同時に凄まじい剣戟で吹き飛ばした。

「うおッ!?」

「ぬおッ!? じゅ、純粋なる破滅に変化しても尚、鬼神として実力は健在か……!」

 佐助とユキジは修司の凄まじい覇気に威圧され、修司を見据えたまま硬直してしまう。

 悍ましい覇気を放ってた修司は、次の瞬間一気に前へと踏み込んで戦場を駆け抜ける勢いで硬直しているユキジと佐助に斬りかかってきた。

「!」「大将ッ!」

 一驚するユキジを、佐助が大型手裏剣を盾に庇おうとしたその瞬間。

「うおおおッ!!」

 斬り込んでくる修司を、真横からイン・ナオコが得物の巨剣で動きを防いでユキジと佐助を助太刀した。

「な、ナオコ殿!」

 ナオコの巨剣で前進を防がれた修司が後方へと退くと同時に、ユキジがナオコの名を呼ぶと彼女はやや赤面で言い返してきた。

「ふ、ふん! これぐらい造作もない事だ。まったく、いつの世も男というものは……」

 と、男への悪態を照れ隠しとばかしに吐き散らすナオコに、彼女の真意を全く察しないユキジが反論しようとするのを佐助が制止する。

「甘く見るな、男ども! 世の乙女たちの為にも、このイン・ナオコ負ける訳にはいかないのだ……!」

 そうやや恥ずかしそうに言い終わったナオコは、巨剣を振りかざして修司へ突撃。だがナオコの巨大な武器での攻撃は隙も大きく、修司は難なくかわし続けてしまう。

 そして右に左へとナオコの攻撃をかわした修司は、難なくナオコと距離を詰めて彼女に接近し、片太刀バサミで斬殺しようと迫る。

 が、ナオコが修司に片太刀バサミを振り上げられて斬られかける寸前、村田順一が二人の間に入り込んで修司が振るった片太刀バサミの斬撃を左手の手甲で受け止めて防いで見せた。

「じゅ、ジュン!」「ナオコ殿、大丈夫ですか?」

 順一は修司が振るった片太刀バサミを弾き返して、修司を押し退ける。

「僕は、三次元人を支え、導く二次元人の一人……修司さん、貴方が夢見ていた二次元人と三次元人の関係性、いや協力した姿こそ、今の戦場そのものです!」

 そう強く修司に宣言する順一の周辺には、多くの武将達の勇姿が見受けられた。

 

 そんな勇猛に奮い立つ武将達を前に、修司は彼らをも先に殺めていった者たち同様に倒そうと宙を浮いた無摩擦状態で駆け込み、一気に斬りかかろうと襲撃。

 襲撃してくる修司に対して武将達も返り討ちにしようと、一斉に進撃しては修司に挑んでいく。

『同じ三次元人として………………負けられないんだ!!』

 修司と同じ三次元人として。

 修司と同じ時代を築いた武将として。

 決して今の修司に負けてはならないという強い意気込みが、武将達の背中を押していた。

 その中には……過去(かつて)の修司と同じ孤独であった台湾軍が国将軍シバ・カァチェンの姿も確認できた。

 

 

 

[圧倒・威圧されていく武将達]

 

 最初は意気揚々と小田原修司を打倒しようと戦前に並び立った武将達。

 だったが、多数の武将達と独りの修司と言えど、その戦力の差は絶望的だった。

「きゃっ」「うわッ」

 修司の攻撃を受けて地面に倒れてしまう鶴姫と山中鹿之助。そして他の武将達も、修司との連戦で満身創痍に至り、次第に戦意を削がれ始めてしまう。

 

「ハァ、ハァ……!」「ぜぇ、ぜぇ……!」

 そんな苦しい戦況でも、尚修司に戦意と闘志をむき出しにして息を切らしながら対峙するデイ・マァスンとシン・ユキジの二人。

 最後まで戦い抜こうとするマァスンとユキジの意志を酌み、従者であるタク・モンジュロと猿飛佐助の二人も修司と対峙を維持。

「てぃやーーッ!」「みなぎるァァァッ!!」

 マァスンの六爪とユキジの二槍が修司に襲い掛かるが、修司は二人の突撃を二対の片太刀バサミで意図も簡単に受け止めては容易く弾いてしまう。

「唸れ……鳴雷!!」「幻影!!」

 モンジュロの雷球と佐助の無数の影が修司に放たれるが、修司は覇気を纏わせた片腕で雷球を容易く弾き返した上に、群がる影も全て闇の能力で無力化してしまう。

 それでも修司に挑んでいくマァスンとユキジは、一心同体の技を修司にぶつけた。

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」

 蒼き雷と紅蓮の焔が一体化し、凄まじい一閃の煌めきとして修司を襲う。

「はぁッ……!」

 しかし修司は全身から凄まじい闇の覇気を放出し、マァスンとユキジの合体技を弾いた上で消滅させてしまうのだった。

「くっ……! オレ達の力を合わせても、今の鬼神には手も足も出ねえのかよ」

「なにか……なにか策はないであろうか?」

 マァスンもユキジも修司への対抗策はないかと険しい面持ちで苦悩する。

 

 と、その時だった。

「兄者ーーーー……ッ!!」

 戦意を失い、消耗しつつある戦場に響き渡る一人の荒ぶる声に全員が顔を向けた。

 皆の視線の先に居たのは、修司の義弟である韓国将軍サイ・チョウセイだった。

「兄者! もはや今の兄者を打ち倒しても止めねばならないのは、義弟でもある私しかいない! 無言即殺! 兄者の悲しき因果を、今ここで終わらせる! このサイ・チョウセイ、迷いは無い!!」

「アイツ、韓国将軍の正義バカ……」

「鬼神の義弟でもあるチョウセイ殿は、なにか鬼神殿を倒す策でもあるのだろうか……?」

 力強く熱唱するチョウセイに、マァスンは呆れてしまい、ユキジは何か修司を倒す策がチョウセイにはあるのかと疑問視していた。

 だがこの時、チョウセイには迷いはもちろん修司への対抗策など全くもって持ち合わせていなかった。

 ただ、己と自分、日本と韓国の間を取り持ってくれてた修司への熱い恩義と義兄弟としての義を壊したくない一心で、修司に特攻していった。

「信義不倒! 信じる義は、決して倒れはしない!!」

 チョウセイは一閃の光に包まれて跳び上がると、一気に降下して修司に凄まじい勢いの光る跳び蹴りを喰らわした。

 だが、修司はチョウセイの輝く蹴りを片腕のみで受け切っては、平然と立ち尽くしていた。

 そんな修司を目の当たりにしても、チョウセイは諦めずに己の剣で修司と激しく剣戟を始める。

 修司の片太刀バサミとチョウセイの剣が激しくぶつかり火花を散らす。

 そんな激しい剣戟の中、修司はふとチョウセイと語り合う。

「チョウセイ、俺は最初嬉しかった……尖閣諸島という下らぬ領土問題で、仲違いしてしまう日本と韓国の関係を……俺たちが義兄弟になる事で、その溝を埋める事ができたと思った」

「………………」

「だが……俺が国連に圧力をかけて尖閣諸島など、領土問題という争いの種を国連管轄の領地に仕立て上げたとしても……未だに反日・反韓の思想は消えやしない。人々は、ちっぽけな領土の為に、未来を創る為の共生という道を投げ出してしまうんだ」

「……兄者」

 修司からの問いかけにチョウセイの胸は締め付けられ苦痛を感じた。

 互いに自国の領土だと主張し合う日本と韓国の深い溝の原因となってた尖閣諸島。その尖閣諸島は修司と結託した国連によって、国連保有の領土となり、最終的にはアジア最大の州立刑務所が建設されて、アジア各地の凶悪犯を収容する施設へと変貌した。

 だが、領土問題が解決しても尚、様々な理由で仲たがいしてしまう日本と韓国の悲しい争いを、修司とチョウセイは悲観していた。

「……所詮、日本と韓国が共生できないように……人と人が共存する事は不可能なんだ! 俺は、広い世界を見て……何よりも、俺という呪われた血筋を引いているにも関わらず、身内同士で醜い争いを起こす新世代型達を見てきて気付かされた! 多種多様な思想を持つ人間同士が共存共生する未来など、夢幻の如き幻想に過ぎなかったんだ!」

 多種多様な思想を持つ人間が共生できない事を、クローン同士で醜く争い合う新世代型二次元人を目の当たりにした修司は再認識されたと悲嘆を零す。

 だが、それでもチョウセイは強く修司に唱えた。

「だが……それでも私は信じたい! 日本人とハングル人、そして種族や人種を問わず全ての心ある者が共存共栄できる未来を! 兄者! 兄者はそんな可能性を二次元人から教え説かれたのではないのですか!!」

「だから、その教えこそが夢幻の虚構だと言っているのだ……! そんな虚構など……いや、虚無など俺は認めない。だからこそ、蟠りも諍いもない真っ白な虚無へと皆を誘うのだ……!!」

 しかし修司は二次元人から教わった理想こそが虚構であり、そんな虚構を存在させるぐらいなら全てを自身が創り出す虚無へと誘うと説く。

 そんなかつて抱いていた理想や夢を全否定している修司を目の当たりにしたチョウセイの目頭は、次第に熱く熱くなり、涙腺が刺激される。

「私は、泣かん……涙は弱さ、弱さは悪と己が信条に打ち付けているというのに……! 兄者と剣を交えれば交えるほど、兄者の悲しみが剣を伝って私にも感じてくる! 自然と涙が溢れてしまう……!」

 そんな目頭が熱くなるチョウセイに、遠くから鶴姫たちが声援を送る。

「頑張ってください、チョウセイさーーん! 諦めちゃダメですよ!」

「か、巫殿……!」

 突然の声援に戸惑うチョウセイ。すると

「チョウセイさーーん、聖龍隊や国連軍にも劣らない正義を見せてくださーーい!」

「チョウセイさん! 修司さんの義弟である貴方ならもしかしたら……日本と韓国、両国の未来の為にも生きて勝たなければなりません!!」

「鹿之助、順一殿…………」

 と、二人からも声援を送られたチョウセイは、修司と対峙し合うと得物である剣の切っ先を天へと突き上げて唱えた。

「!! 信義不倒! 私は私の信じる正義を貫く!!」

 そしてチョウセイは凛然とする面魂で修司を睨み付けると、一気に勝負をかけるべく剣を構えて奥義を繰り出した。

「無! 言! 即! 殺!!」

 鋭い四つの斬撃が修司の体を斬り付け、チョウセイはかっこよくポージングを決める。

「絶対正義! 悪と無駄口、削除成り!!」

 悲しみと絶望の果てに義兄小田原修司を倒したと思い込むチョウセイは、勝鬨を挙げた。

 だが、そのチョウセイの背後から、まだ死んでいなかった修司が片太刀バサミでチョウセイの胴体を貫いた。

「うッ……!」突然の腹部から感じる激痛に一驚するチョウセイ。

 そんなチョウセイに修司は囁いた。

「夢や理想、綺麗事では……現実は変えられない」

 そう言うと、修司はチョウセイの体に突き刺した片太刀バサミを引き抜いた。

「チョウセイ!」「チョウセイさん!」

 マァスンと順一が叫ぶ中、チョウセイは腹部の傷口を押さえながら前のめりに倒れ込む。

「私は此処で、終わる、漢か……否……!」

 チョウセイは最後まで、己の理想や正義を信じて討死した。

「クッ……傍若無人で、自分が信じ抜いた正義に妄信していやがったとはいえ、義理の兄貴に殺されちまうとは……!」

 マァスンは、自分が掲げる正義だけを妄信するチョウセイの死に様を痛感する。

 

 己の正義を頑なに信じ、悪を決して許さぬ義の将軍、韓国将軍サイ・チョウセイの討死を前にしても、チョウセイを討った義兄の修司は平然としていた。

 そんな修司の背後、死角から巨大な刃が襲い掛かる。

「ウヒャーーーーっ!」

 背後からの刃に、修司は背を向けたまま片太刀バサミの刃で背後からの刃を受け切り防ぐ。

 修司の背後から巨大な刃、大鎌を振り翳してきたのは、【闇心討伐(あんしんとうばつ)】・黒衣衆の六人の内の一人、白蓮坊(はくれんぼう)に扮している【ミスター味っ子Ⅱ】の斉洋早蔵(さいようそうぞう)だった。

 その白蓮坊の不意打ちを防いだ修司に、今度は修司の真正面から白蓮坊の弟である黒蓮坊こと安蔵(あんぞう)錫砲丸(しゃくほうがん)で殴り掛かる。

 しかし修司は瞬時に背後の白蓮坊を押し退けると、左手のショットガンで殴り掛かってくる黒蓮坊へ散弾を浴びせようと構える。

 が、黒蓮坊は逸早く修司の銃撃態勢を察し、瞬時に後方へと退避した事でショットガンからの直撃を免れる。

 黒蓮坊が退避した直後、すぐに修司自身も態勢を立て直して白蓮坊と黒蓮坊の兄弟と対峙する。

 すると白蓮坊と黒蓮坊の許に、黒衣衆のリーダー格である【エリア88】の神崎悟が扮するガトリンガーに【女帝 由奈】のソンヒ扮する損尼(そんに)、【王狩】の綿貫鞠乃(わたぬきまりの)扮する欲尼(よくに)、そしてあの大闇刑蘭(おおやみぎょうらん)が集結する。

「また、蟲の如く戦場の死臭につられて集り出したか……黒き衣の者どもよ」

 悪役であり、同時に二年前のアジア大戦を裏で画策して引き起こした戦犯でもある黒衣衆の集いに、修司は表情こそ変えなかったが、死体に群がる蠅を見るかのような冷ややかな目で黒衣衆を見据えた。

 そんな修司の汚物を見るかのような視線を浴びて、黒衣衆は喜々と語り始める。

『はは、ハハハハハ……! そうだ、その眼だ! 我々を汚物の様に見詰めるその眼こそ!! ……鬼神、貴方には相応しい……!』

 修司から冷遇された視線を向けられて喜び合う黒衣衆の狂気を前に、多くの武将達が激しく動揺してた。

 そして「キィエエエッ!」と、突如として白蓮坊が狂った様に修司に得物である錫杖鎌(しゃくじょうかま)を振るい出し、何度も何度も修司の首に斬りかかる。

 白蓮坊に続き、黒蓮坊も錫砲丸(しゃくほうがん)で修司を殴り掛かり、損尼と欲尼も修司に得物である双小刀と双棘刀を振るう。両端が刃物になっている同形の小刀・双小刀と、管の形状になっている針状の小刀・双棘刀で修司を刺していく二人。

「ひゃひゃっ、ヒャヒャヒャヒャヒャっ!」

 狂った様に双小刀で修司を切り刻んでいく損尼。

「血を、新世代型の血を抜けば、少しは弱々しくなるかしら」

 狂いながらも冷静に管の形状をしている双棘刀を次々と修司の体に刺していき、大量出血で弱らせようとする欲尼。

 しかし修司は損尼の斬撃で受けた傷を瞬く間に再生し、欲尼が刺した双棘刀からは一滴の血も噴き出す事無く自力で引き抜いてしまう。

「ひゃひゃひゃひゃ……!」

 そんな無傷状態の修司に、刑蘭が遠くから八つの数珠を操って飛ばして攻撃するが、修司はショットガンで撃ち返しつつ接近してきた数珠を片太刀バサミで弾き返してしまう。

 だが、修司が刑蘭の数珠に気を取られている正にその時。

「うおおッ!」

 黒衣衆のリーダー格であるガトリンガーが愛用のガトリング砲の先端に装着させている六つの刃で修司の腹部を突き刺して、突き刺したまま修司を高々と上げるとそのまま内蔵されている小型ミサイルと無数の銃弾を連射。銃弾は修司の体を貫通し、ミサイルは修司の体を貫通するとそのまま引き返して修司の体に着弾して爆発していく。

 無数の銃弾で穴だらけになった挙句、ミサイルで黒焦げになった修司の体を、ガトリング砲を振り下ろして地面に落とすガトリンガー。

「ははははははは……鬼神いや、闇の心を持つ者を打ち倒す歴史上の裏切り者。それが我ら、黒衣衆……!」

 無残に撃ち抜いた黒焦げの修司を見下ろして、不敵に微笑むガトリンガー。

 しかし、黒焦げになった体は瞬く間に元通りに再生し、無数の銃弾で撃ち抜かれた風穴も瞬時に塞がって、修司は起き上がる。

 そんな不死身の修司を目の当たりにしても、黒衣衆は喜々と嘲笑い続ける。

「虚ろでも、幻でも……どちらでも構わない! 我々は今、この戦場を現実(いま)とする……!」

 今の修司が虚ろな状態でも、今の戦況が幻でも、自分たち黒衣衆は現実の今を殺伐と感じ入ると宣言。

 そしてまだ息のある修司に、まるで死肉を貪る小動物の様に群がっていく黒衣衆。

 殺伐とした戦況の中で、過去の様に修司と殺し合いができる現状に酔い痴れながら黒衣衆は囁く。

「徳極めし僧……我々が変われた今の姿よ」

 かつて世界中でテロを起こした元テロリストの黒衣衆は、二年前から今に至るまで徳を極めし高僧に変われた自分達の境遇を嚙み締めた。

 しかも彼らは、修司との殺し合いの中で率直な気持ちを述べた。

「真新しい玩具を得て喜ぶ童……今は、そんな心境です」

 修司との殺し合いは、新品のオモチャを与えられて無邪気に喜ぶ子供の様だと説くのだった。

「我々の中に、武人でもいるかのようだ……クク」

 白蓮坊は、かつて世界中でテロを起こしてた昔の鍛えていた武人の様な自分自身が、高僧になった今でもなお己の中に見え隠れしている様だと述べる。

「貴方を殺したくはありません……心からね」

 かつて韓国の令嬢だった損尼は、初めの頃は憎悪の対象だった修司に対して今では象徴の様に敬う傾向に変化した自分達の心境を零した。

「いくらでも相手して差し上げるよ。何処にでもいる怪僧がねえ」

 黒蓮坊は、いくらでも殺し合いをしてやると修司を唆すが、修司は冷然と立ち振る舞うばかり。

「か弱き尼の身では、とてもとても……」

 欲尼はか弱い尼である自分では到底武人である修司と立ち会えないと言いながら、果敢に修司とやり合っていた。

 戦慄の狂気と虚無の無心が激しくぶつかり合う中、黒衣衆は修司に問いをぶつけた。

「信じてよいのだな、小田原修司……其方が求めた相手は、我々だと!」

 過去の出生記録も戸籍も、全てを削除されて生き場を失った黒衣衆の面々は、修司との殺し合い、修司への憎しみや敵意そして敬意だけが自分達を現世に留めさせてくれる繋がりであり唯一の生きがいであったのだ。

「ククク……本当にこの時が……」

「ククク……ああ、夢のようだ……!」

『逃れ、名を捨て、顔を隠し……! それでも生き続けてよかった……!!』

『どうか、我々に殺されて下さい! そしてどうか、再び我々を憎んでください!』

 憎み合い、殺し合い、それだけしか自分達の生存理由を持てなかった黒衣衆の狂気じみた戦いを目撃し、順一が零した。

「確かに、憎しみもまた絆……でも、余りにも悲し過ぎる」

 憎しみという負の感情での繋がりも、また絆であると説きつつ、その絆には悲しみしか感じられないと順一は説くのだった。

 と、此処で応戦一方だった修司に動きが。

 修司は右手の片太刀バサミを振るい、一瞬で間合いを詰めて白蓮坊の首を斬り付けて頸動脈を斬った。

「うっ……!」「兄貴……!」

 首の切り傷を押さえても尚大量出血していく白蓮坊を見て、弟の黒蓮坊は愕然とする。

 すると修司は次にその黒蓮坊に攻撃を仕掛ける。黒蓮坊は瞬時に反応し、錫砲丸(しゃくほうがん)で修司に反撃。だが修司は黒蓮坊が振り回す錫砲丸(しゃくほうがん)にショットガンの銃弾を浴びせて、その反動で砲丸を黒蓮坊の頭に撥ね返して逆に直撃させる。

「うぅ……」

 頭に錫砲丸(しゃくほうがん)が直撃し、思わず流血する頭を押さえ込む黒蓮坊。そんな黒蓮坊に修司はショットガンの散弾を浴びせて虫の息にする。

「おお……! 同志よ……!」

 白蓮坊と黒蓮坊の兄弟がやられて、ガトリンガーは仇討とばかしとガトリング砲を連射して修司に無数の銃弾を浴びせようと試みる。

 しかし修司は闇の能力で銃弾の運動エネルギーを無力化して、銃弾全てをポトポトと地面に落とした。

 それを目の当たりにしたガトリンガーが再度修司にガトリング砲を連射しようと身構えた矢先、修司は右手の片太刀バサミをガトリンガーの武器に投げ付けて刺し貫き、ガトリング砲を使えなくさせてしまう。

「……!」

 愛用のガトリング砲を使えなくされて激しく戸惑うガトリンガー。そんな彼に修司は無慈悲にショットガンの散弾を浴びせて血塗れにする。

「おおお……っ!」

 上半身を無数の散弾が浴びせられて血まみれの惨状に至るガトリンガーは両膝を着く。

「諦めたくない……もう一度、鬼神の側で殺し合える……」

「殺し合える……! そう、何度でも、殺し、合う……」

「我らが求めたるは……何だったのか……」

 そう訴えながら白蓮坊と黒蓮坊の兄弟そしてガトリンガーは討死した。

 三人を殺し終えた修司は静かに、だがハッキリと呟いた。

「殺し合いという繋がりも、虚無という白紙の中では安らぎへと変わる……」

 そう呟くと修司は損尼と欲尼そして大闇刑蘭の方へと歩み出す。

「はは、ハハハハハ……」

 向かってくる修司を前に、損尼は狂った様に笑い出すと、欲尼と共に武器を手にして修司に飛び掛かる。

 しかし修司は襲い掛かってくる二人の間をするりと抜け出る様に回避すると、二人を背にして立ち止まる。

 すると修司が立ち止まった次の瞬間、損尼と欲尼の二人の首元から一気に大量の血が噴き出して、損尼と欲尼は激しく動揺した。

 修司は二人の間をすり抜ける様に通過したと一瞬の間に、片太刀バサミで損尼と欲尼の首元の頸動脈を斬り付けたのだ。

 大量出血して意識が朦朧とする中、損尼と欲尼は息も絶え絶えの状態で呟いた。

「「ああ……私たちは、どう足掻いても…………人間に戻れない。いえ……人間には、なれないのね」」

 どう足掻いても小田原修司から、そして世界から人間以下の外道としてしか認識されず、人間としての権限を取り戻せない現実を実感しながら、損尼と欲尼は息絶える。

 二人の死を背中越しに感じ入った修司は、目前で御輿に乗って宙に浮いている刑蘭を見据えていた。

「ううむ……はてさて、最早わらわに残された道は……」

 刑蘭は自分が辿るであろう末期を悟っていた。

 次の瞬間、修司は目前の刑蘭に向けてショットガンを放った。刑蘭は前方に数珠を展開して修司からの銃撃を防ぐ。

「朽ち果てよ、裏切りの一族よ……もはや、貴様らが裏切る逸材は後世には残らん。全てが俺の手によって、真っ白に塗り替えられる故に、ナ」

 修司と刑蘭は交戦を開始した。修司からの片太刀バサミでの斬撃やショットガンからの銃撃を、刑蘭は八つの数珠で防御しながら懸命に反撃していく。

 しかし刑蘭の形勢は悪化するばかり。

「満ち足りて死ぬな、それはまやかしよ」

 時おり刑蘭は修司に意味ありげな言葉を吐き出しながら防戦一方の形勢を保つ。

 そして長き闘いの末、大闇刑蘭の体力は底を着いた。

「わらわが……わらわが本当に欲したのは……!」

 瀕死の刑蘭が臨死の中で垣間見た情景、それが檻の中に囚われている新世代型二次元人の脳裏に届いた。

 

 臨死状態の大闇刑蘭が垣間見た情景、それは今は亡き北の国の残党軍総大将ヤン・ミィチェンの姿だった。小田原修司と殺し合いという繋がりを獲るために黒衣衆に利用されたミィチェン、だが刑蘭とミィチェンの関係は偽りの主従だけで終わらなかった。時おり見せるミィチェンの心の弱さと祖国への忠誠心、それは憎き小田原修司にも近い闇の心だった。いつしかミィチェンと刑蘭は主従の関係を超えて、まるで祖母と孫にも近い友好関係を築いていた。現に大闇刑蘭は二年前の大戦の時、聖龍隊との決戦前にヤン・ミィチェンに「ミィチェンよ、共に地獄へ参ろうぞ」と言伝し、戦場に出たという。

 

 そんなヤン・ミィチェンとの思い出を、祖母と孫の様に肩身を寄せ合うミィチェンと大闇刑蘭の情景を認識し、自然と目から涙を滴らせる新世代型たち。

 そして大闇刑蘭は死ぬ寸前、こう零した。

「ここはいずこか……誰も居らぬか……? ……ミィチェン……ミィチェンは……」

 修司と闘い、討死した大闇刑蘭は臨死の最中、今は亡き友人ヤン・ミィチェンとの思い出の中で死んだ。

『………………!!』

 死ぬ寸前まで今は亡きヤン・ミィチェンを思い、そして彼との思い出の中で死んでいった大闇刑蘭の死に際に、新世代型二次元人たちは涙した。

 

 

 

[討死する武将たち]

 

 義弟である韓国将軍サイ・チョウセイ、そして修司と殺戮の中でも繋がりを欲していた裏切りの一族・黒衣衆をも殺めた【純粋なる破滅】小田原修司。

 チョウセイと黒衣衆を殺めた修司は、自分に抗戦してきたアジアの武将達を一掃しようと動き出す。

「う、うわあああっ。は、白蓮さまぁ、黒蓮さまァァァ……!」

 二年前、利用されていたとはいえ親身に世話してくれた白蓮坊と黒蓮坊の兄弟の死を目の当たりにしたシャ・キンカは絶望と恐怖で号泣してしまう。

 そんな大泣きするキンカに、修司は目を付けた。

「! キンカ、逃げるんだ!」

 順一が修司の狙いを瞬時に察して、キンカに告げるものの、修司はテレポーテーションでキンカの目前に瞬間移動して迫る。

「わわわっ!?」

 突然目の前に現れた修司に怯え切るキンカは、咄嗟に背中に常備している鋼鉄製の鍋を修司に向けて盾にした。

 そんなキンカの行動に修司は、地面に足を強く踏み付けた勢いでキンカの足元の地面を盛り上がらせ、キンカを浮かせてしまう。

 キンカが宙を舞ったのを視認し、修司は宙を舞い上がるキンカに向けてショットガンを連射する。

「うわああっ!!」

 修司からの銃撃に本気で怖がるキンカだが、運よく修司が発砲した銃弾は全てキンカが盾にしていた鍋に当たってキンカへの直撃は免れた。

 地面に落下したキンカは怯えながらも修司に涙目で訴えた。

「ひ、独りっきりで戦っても……お腹が空くだけだよ?」

 そんなキンカの言葉など修司には届かず、修司は片太刀バサミを突き出してキンカが盾にしている鍋を貫いて、鍋を片太刀バサミで持ち上げてしまう。

 無防備になるキンカに向かって、修司は容赦なくショットガンを連射し、キンカの命を奪う。

「迷って、迷って……ごべんな、さぁい……」

「キンカ! ……くっ、なんて事だ……!」

 修司のショットガンを浴びて絶命したキンカを目撃して、順一は悔やんでも悔やみきれなかった。

 

「鬼神様……貴方の悲しみ、この鶴姫が止めて差し上げます!」

 シャ・キンカを討った修司に、弓矢での戦法を得意とする鶴姫が出撃する。

「巫殿! 無茶をしてはいけない……!」

 戦前に打って出る鶴姫を前に、順一が無茶を止めようと呼びかけるが、鶴姫は敬う修司を止めようと無謀な戦闘に出てしまう。

「ここまでは勉強してきた通りです……たぶん」

 懸命に修司に矢を射って攻撃する鶴姫、だが修司は瞬時に傷を再生しては鶴姫からの攻撃を無力化してしまう。

「さあ来い! バシッと、バシッとですよ!」

 連続で矢を射る鶴姫の攻撃の嵐に対して、修司は矢を浴びながらも怯む事はなかった。

 すると鶴姫の矢を浴び続けていた修司が、彼女の矢を受けて出血している左腕を前方へと振るうと、振るった勢いで血飛沫が前へと飛沫する。が、飛沫した瞬間に修司の血液は新世代型の栗山未来の能力で結晶化し、無数の鋭利な細かい欠片として鶴姫へと飛来し襲い掛かる。

「きゃあっ!」「つ、鶴ちゃん!!」

 目前まで迫ってくる鋭利な血の結晶に怯んでしまう鶴姫に、自分の能力を使われて愕然とする檻の中の栗山未来。

 と、その時。

「Go! モンジュロ!」「御意!」

「行くのだッ! 佐助ェッ!!」「ほい来た!」

 と、デイ・マァスンとシン・ユキジが、それぞれ自分の従者であるタク・モンジュロと猿飛佐助に命じた。

 各々自分の上役に命じられて、モンジュロと佐助は鶴姫の前に出てはそれぞれ刀と大型手裏剣で修司からの結晶化した血飛沫を弾き返して防ぐ。

「や……ヤクザのお兄さん! それに忍者さん!」

「……ヤクザじゃねえんだけどな」

「ハハッ、大丈夫かい? 海神の巫女さま」

 歓喜する鶴姫の発言に複雑な心境に至るモンジュロと、それを聞いて満面の笑みを浮かべる佐助。

 そこにマァスンとユキジも駆け付け、集った四人は鶴姫を背に彼女を警護する陣形で修司と対峙する。

「さあ! まだまだclimaxまでは程遠いが、オレ達の陣形を崩せるか? 鬼神よォ!!」

「マァスン殿にモンジュロ殿、そして佐助が居れば鬼に金棒! いや!! 竜虎一体の陣形よォッ!!」

 打倒修司に意気込むマァスンとユキジの二人と肩を並べるモンジュロと佐助、計四人は今にも修司と激戦を開始する手前。

「みなさん、悪い風なんて吹き返しましょっ☆」

 四人の頼れる武人に守られて、得意げになってしまう鶴姫。

 すると修司は前方の五人に向けて必殺の地走りを、それも巨大な斬撃を繰り出した。巨大な斬撃が五人の方へと迫る。

『!!』

 突如として前方から迫る斬撃を前に、五人は驚愕するものの、最前線のデイ・マァスンとタク・モンジュロそしてシン・ユキジと猿飛佐助は斬撃を受け切って防ぐ構えに入る。

 が、その地上を駆け抜ける斬撃が突然地中へと埋まっていき完全に消えてしまう。

「「!?」」「な、なんだ……!?」「……!」

 突然地中へと消えた斬撃に、マァスンもモンジュロもユキジも佐助も唖然としてしまう。

 が、一抹の不安が佐助の脳裏をよぎった。

「鶴姫! 今すぐ其処から……!」「!?」

 突然の佐助からの大声に驚いてしまう鶴姫。

 と、次の瞬間。地中に消えていた斬撃が鶴姫の足元から出現し、そのまま鶴姫の体を切り裂いてしまったのだ。

「what's!?」「なに!?」「な、なんと!」「ああ……!」

 突如として地中から現れた斬撃が鶴姫を切り裂いたのを目の当たりにした四人は愕然としてしまう。

「うっ……」「鶴姫!」

 力なく倒れる鶴姫にイン・ナオコが呼びかけるが、鶴姫の命は風前の灯だった。

「おいっ、鶴のお嬢ちゃん! しっかりするんだ……!」

 佐助が倒れた鶴姫を抱き抱えて必死に呼びかけるものの、鶴姫は口元から血を滴らせて呟き返す。

「わたし、は……大丈、夫、です……卑弥呼様の、御神託が……あるんです、もの……」

「ッ……だから! 前々から言ってるだろうがッ! 卑弥呼なんて胡散臭い神託とか占いに頼ってちゃダメなんだ! 自分の未来は自分で勝ち取るものなんだッ」

「それでも、わたしは……人を導き、占いで未来を見通す事しかできない……か弱い巫女。鬼神様も、わたしでは……救えなかっ、た……」

「まだ小田原修司を崇めているのか、あんたは……! 今の鬼神には、人の情も優しさも通じないんだ!」

「それでも、わたしは……信じています。鬼神様が……あの御方の御心は、きっと戻ってくれる、と……」

 そして鶴姫の瞳から光が消失していく中、彼女は言い残した。

「大丈夫……きっと戻ってくれます、もの……」

 鶴姫は最後まで、鬼神として崇めている小田原修司の心が戻ってくれる事を信じ、逝った。

 

 鶴姫を地中に潜らせた地走りで仕留めた修司は、更に右手の片太刀バサミと左手のショットガンで周辺にいる武将達を襲った。

「今まですべて正解だった……それで満足、だとも……!」

 片太刀バサミの斬撃とショットガンでの銃撃の両方で、英国外交官でもある武将モーリス・ナイロンを討った修司。

 ナイロンに続き、修司は宙を浮いた高速移動でイン・ナオコへと迫っていく。

「ナオコ殿!!」「来るなユキジ! 己の敵は己自身で討つ!!」

 イン・ナオコの窮地にシン・ユキジが助太刀に入ろうとするが、ナオコはそれを拒んで一対一で修司と闘い始めた。

 修司の斬撃と銃撃を、ナオコは巨剣で防ぎながら豪快な技の数々で修司を吹き飛ばす勢いで斬り付けていくが、修司は瞬く間に再生してしまう。

 そして修司は反撃とばかりにナオコへショットガンの散弾を浴びせていく。ナオコは巨剣で散弾を防いでいたが、それでも全ての散弾を防ぐ事はできず、次第にナオコは銃弾で傷付き消耗していった。

「ぐッ……!」

 脇腹、太もも、腕など、各所に銃弾を浴びて傷付いては体力が消耗するナオコ。

 そして修司との長期戦の末、イン・ナオコは遂に体力が消耗して片膝を地面に着けてしまう。

「ナオコ殿!」

 ユキジが呼びかけるものの、そんなナオコに修司は容赦なく急接近し、最後の一撃を喰らわせようと迫る。

「くっ……! (まだだ、まだ私の夢は……理想はこんな所では終わらない! 乙女が幸せになれる理想郷を、この手で創るまでは……!!)」

 ナオコは自分が夢見ている理想を実現しようとする意気込みだけで立ち上がり、修司に重い巨剣での一撃をお見舞いした。

 ナオコの一撃は修司の体を頭から一刀両断してみせ、修司の体を真っ二つにした。

 だが、修司の切断面から粘り付く闇の力が切断された肉体を引き寄せ合い、断面同士がピッタリくっ付くと忽ち再生して元通りになってしまう。

「……!」

 驚異の修司の再生力を目の当たりにして絶望するナオコに、修司は片太刀バサミを横へと振り払いナオコを斬り捨てた。

「こ、こんなところで……」

 斬り捨てられたナオコは力なく前のめりに倒れ込む。

「「ナオコ殿!」」

 ユキジと順一が呼びかけるものの、ナオコは最後の言葉を言い残す。

「乙女の幸せを、得るまでは……」

 剛潔撫虎イン・ナオコ。彼女は死ぬ寸前まで、乙女が幸せになれる世界を夢見て息絶えた。

 

 修司の進撃は止まらず、今度は黒劉席とゴ・マータンの二人を狙い出す。

「ちっくしょう! 東西南北、アジアの隅々まで地下道を掘り抜いたって言うのに、それを利用してアジア掌握を狙う前に鬼神に殺されるなんて……小生、認めんぞ!!」

 そう叫ぶと劉席は、二年前のアジア大戦の頃に当時の反乱軍によって嵌められていた鎖付き鉄球を思いっきり両足で蹴り飛ばし、修司へと鉄球を飛ばし出す。

 しかし飛んでくる巨大鉄球を、修司は剛腕で意図も容易く殴り付けては劉席の方へと飛ばし返してしまう。

「うおおおッ!?」

 蹴り飛ばした筈の鉄球が自分の方に撥ね返されて、激突する様に劉席は驚くばかり。

 すると今度は修司が動き、劉席へと反撃に転ずる。

「あ、阿保席!」「あァん?」

 ゴ・マータンの呼び声に反応する劉席。だが、修司は素早く宙を舞って劉席へと急接近。そして黒劉席に片太刀バサミで斬りかかった。

「おおっ!!」

 劉席は激しく動揺しながらも、得物である鉄球で修司の斬撃を防ぎながら悪戦苦闘する。

「キィエエエエエェェッ!」

 と、劉席が苦戦している所にマータンが奇声を上げながら武器である奇刃を修司目掛けて振り回し投げて攻撃。修司は一旦、劉席への攻撃をやめてマータンが投げ付けてきた奇刃を片太刀バサミで受け止めて防ぐ。

「ふぅ、危ないとこだった。サンキューー、マータン」

「べっ、べべ、別にオマエを助けるつもりじゃなかったんだよ。鬼神がアンタに意識が向いている隙に、オレ様が鬼神をバラそうかと思って攻撃しただけだもん」

「はっはっは! まあ、そういう事にしといてやるよ」

 照れ隠しするマータンに、劉席は大笑いしながら内心感激していた。

 一方で奇刃の攻撃を防いだ修司は、標的を黒劉席とゴ・マータンの二人に絞って進撃を開始。宙を舞った高速移動で二人に接近する。

「来たぞ、マータン準備はいいか?」

「あ、当たり前のこと聞いてんじゃねえぞ阿保席!」

 マータンとの連携で修司を迎え撃とうとする劉席に対して、マータンは戸惑いながらも返事する。

 劉席の鉄球とマータンの奇刃が修司を襲うが、修司も負けじと片太刀バサミとショットガンで応戦。

 と、此処で「今だマータン!」「キェエエッ!」劉席の合図で二人同時に修司へと各々の武器を飛ばす。風を纏った劉席の鉄球は修司の左手のショットガンを弾き飛ばし、雷を纏ったマータンの奇刃は修司の右手の片太刀バサミを叩き落して地面に落とす。

 すると片太刀バサミが地面に落下したのを視認した劉席は、鉄球で思いっきり片太刀バサミをへし折って使えなくさせた。

「どうじゃ見たか! 俺とマータンの連携コンボを!!」

「ケケケ……」

 高々と喜びを挙げる劉席に、怪しく微笑むマータン。

「よし! 鬼神は無防備、今の内に攻めて攻めて攻めまくるそ!!」

 劉席とマータンは一斉に修司へと襲い掛かっていく。二人は武器を失い無防備状態の修司へと飛び掛かるのだが。

「ッ………………!」

 劉席が修司に鉄球を振り回して当てようとするが、修司はそれを容易く回避して劉席に近付いた瞬間、劉席の腹部に違和感が。

 なんと劉席の横っ腹に修司が先ほど失ったばかりの片太刀バサミを突き刺していたのだ。

「なぜじゃああああああああああああぁぁあああぁぁ!!」

 劉席は口癖の言葉を大声で挙げてると、修司は横っ腹に突き刺した片太刀バサミを、身体を引き裂く様に引き抜いた。

「あ、阿保席……!」

 刺された横っ腹から大量の出血、そして口元からも血を滴らせる劉席にマータンは慌てて駆け寄る。

 一方の修司は急ごしらえで成形した片太刀バサミを改めて形を整えていた。修司が使用している片太刀バサミは、新世代型の栗山未来の血を結晶化する能力で自身の血を結晶化させて作り上げているものなのだ。

「阿保席……し、死ぬな!」

 マータンが必死に劉席を呼び止めるが、劉席はマータンの顔を見ながら述べた。

「ま、マータン……また、お前さんと一緒に……働きたかった、よ……」

 そして最後に劉席は悔しそうに呟いた。

「あの世でも穴倉掘って……いつか地上に出て、やるよ……!」

 最後までアジア統一の野望を捨てきれない黒劉席は、こうして息を引き取った。

「あ……あぁ……」

 いくら憎まれ口を出そうが、本心では劉席を慕っていたマータンは、その劉席を殺めた修司にすっかり怖気付いてしまってた。

「ああ、ああ……ああぁ……っ!」

 そして功を焦ったマータンは、単身修司へと奇刃を振るって特攻してしまう。

 だがマータンが振るう奇刃を修司は新しく生成した片太刀バサミで受け止めると、そのまま凄まじい斬撃を連続で居抜いて、マータンに無数の斬撃を浴びせた。

「畜生……このマータン様が、こんな所で……ちっくしょうが……」

 二年前のアジア大戦で生まれて初めての失敗を経験し、其処から這い上がる様に根暗な性格になりながらも懸命に生き抜いてきたゴ・マータンは、こうして戦死した。

 

 黒劉席とゴ・マータンの二人を返り討ちにした修司に、存命している武将達は勝機を見出そうと躍起になった。

「わ、わわわ……っ!」

 目の前で次々と知人でもある武将達が死んでいくのを目の当たりにして、最年少の武将である山中鹿之助は恐怖心から過呼吸気味になっていた。

 そんな鹿之助の肩を叩いて彼を落ち着かせたのは、先に戦死した赤塚大作の実弟にして、修司やアッコとも昔馴染みである赤塚将吉こと少将だった。

「し、少将さん……?」

 不安そうな眼差しを少将に向ける鹿之助に、少将は耳元で囁いた。

「大丈夫、このオレっちも怖くて小便漏らしそうなんだぜ。でも此処は一つ気張らねえと、死んでいった兄ちゃんやアッコねえちゃんに顔向けできねえしな」

 少将は先に戦死していった兄の大将やアッコの事を思い浮かべながら鹿之助に語り続ける。

「でもな、安心しろよ。お前の様に未来ある若者を生かしてやるのも、オレら赤塚組の……うんや、二次元人の意義ってもんだ」

「………………!?」

「お前はオレっちが命を賭けて生かしてやる。だから安心して、深呼吸しろ」

 そう鹿之助を安心させようとする少将。少将からの励ましに、鹿之助は次第に落ち着きを取り戻し、深く深く深呼吸しては自身を落ち着かせる。

「………………大丈夫です! 僕も半人前とはいえアジアの武将の一人! 死んでいった先輩達の弔いの為にも、僕とおやっさんで鬼神を倒すっス!!」

「おうッ! その心意気買った! オレっちも大虎と一緒に修司のあんちゃんを止めてみせる! 鹿之助の坊主、こうなりゃ二人八脚で共闘しようじゃねえか!」

「はいっ!!」

 こうしてお互い動物の相棒を持つ者同士、意気投合した少将と鹿之助は修司相手に共闘する構えとなった。

「行くぜ大虎!」「行きましょう、おやっさん!」

 少将と鹿之助の合図で、二人は相方の大虎と雌鹿のおやっさんと共に修司へと進撃する。

 先手とばかりに少将が大虎に跨って修司に突進し、大虎が修司に前脚で引っ搔こうすると同時に口の中に含ませていた釘を吐き出して修司の目元に当てる。

「おやっさん、、お願いしまっす!」

 修司の視力を一時的に奪った少将の攻撃を確認し、鹿之助はおやっさんの後ろ脚に捕まって、おやっさんの回転で勢いを付けて修司へと突撃していく。

 修司へと突撃する鹿之助は、連結棍棒を武器に修司へと強烈な打撃を浴びせようとするが、修司は気配だけで鹿之助の突進を感じ取り、向かってくる鹿之助にショットガンを放った。

「鹿之助!!」「!!」

 呼びかける少将に、反応するも空中を飛んでいる為に回避し様がない鹿之助。

 すると鹿之助にショットガンの銃弾が当たる直前、鹿之助の足を咥えて引っ張り、代わりに銃弾の雨に直撃するおやっさんが。

「おやっさん!?」突然のおやっさんの行動に激しく戸惑う鹿之助。

 全身に銃弾を浴びて血塗れになるおやっさんを前に涙目で動揺する鹿之助。

「おやっ、さん……!」

 幼い頃、動物と話せるという能力から友も出来ず親からも見放されて、一人宛てもなく放浪していた時に、産んで間もない小鹿を亡くしてしまったばかりのおやっさんと出会った鹿之助にとっては、おやっさんは最早ただの相方やお目付け役を通り越して親代わりの様な存在だった。

 そんなおやっさんが虫の息状態で弱ってるのを目の当たりにして、鹿之助はボロボロと泣き始めてしまう。

「おやっさん、そんな、うそだ……死なないで……!」

 しかし鹿之助の呼びかけに、おやっさんは弱々しく反応するばかり。

「修司のあんちゃん……ッ!!」

 まだ子供である鹿之助だけでなく、動物であるおやっさんにも無慈悲に攻撃する修司の行動に怒りに駆られる少将。

 そして少将は大虎の背に飛び乗って、大虎が修司の肩に噛み付いたと同時に、大工が木の杭を打ち付ける際に使う大きな木槌で修司の脳天を叩き付けた。

「やったぜ!」

 修司の脳天をかち割ったと意気込んだ少将が勝ち誇る。が、少将に頭を木槌で叩き付けられた修司は平然と木槌を頭で受け止めては、即座に片太刀バサミで肩に噛み付いていた大虎を斬り付て大虎を押し退ける。

「大虎!」

 子分同然の大虎が斬られて唖然とする少将。そんな少将を修司は彼が振り下ろした木槌を片手で持ち上げて、少将を地面に叩き付ける。

「ぐはッ!」

 悶絶する少将に、修司はトドメとばかりに片太刀バサミを振り上げて、少将を仕留めようとする。

 そんな少将の危機に、大虎が察してか修司に襲い掛かるが、修司は無慈悲にも大虎にもショットガンの銃弾を浴びせて殺めてしまう。

「大、虎……!!」

 幼少期の頃、跨っては色んな所に足を運んでいたペットの猫のドラの面影を感じさせる大虎の死を目の当たりにして愕然とする少将。

 そして修司は振り上げていた片太刀バサミを振り下ろして、少将の息の根も絶たせた。

「修司の、あんちゃん……元に、戻っ……」

 死にゆく少将の言葉も、修司には届かなかった。

 おやっさん、そして少将をも目の前で失った鹿之助の戦意は完全に消失していた。

 が、修司は容赦なく鹿之助にも急接近して彼の命を奪う。

「おやっさん、なんだか僕……すごく眠いっス……」

 修司に倒された鹿之助は、自然と温もりを求める様に先に逝ったおやっさんに寝そべる形で横たわった。

 

「武蔵! こうなりゃワシらで修司どんを止めるぞい!」

「!!!!!」

 徳竹康に命じられて、サイボーグ武士である武蔵丸が竹康を肩に乗せて修司に突撃する。

 武蔵丸の回転槍を修司は片太刀バサミ一本で受け止めて、力と力が激しく押し合う。

「武蔵丸! 爆雷じゃ!!」

 竹康の命令で、武蔵丸は体内から落雷装置を突出させて辺り一帯に雷の爆撃を降り注がせる。

 武蔵丸の爆雷を浴び続け、黒焦げになる修司。だが修司は瞬く間に再生して完治してしまう。

 すると修司は左手のショットガンに闇のエネルギーを充填させて、それを一気に撃ち放って武蔵丸の大打撃を与える。

「武蔵!!」

 修司の攻撃を受けて一時的とはいえ機能停止する武蔵丸の肩に乗る竹康は、武蔵丸に呼びかける。

「ッ! こうなりゃ……!」

 武蔵丸が機能停止したのを目の当たりにした竹康は、肩から飛び降りて地上に着地すると持ち前の棒術で修司に単身挑んでいった。

「喰らえッ! 小田原修司!」

 竹康が繰り出す棒術を、修司は右に左にと容易に避けてしまう。

「竹康よ……常に武蔵丸に付き添ってもらえなければ、満足に戦う事も出来なければ、武蔵丸が側近でなければ共産党崩壊後の中国を統治する事も侭成らない……そんな弱卒者であるお前が単身、俺へ挑むなんて無謀とは思わないか?」

「ウルサイッ! 修司どん、ワシは日本を守護する順一殿や聖龍HEADを超える。そして行く行くは修司どん! お主をも超えてみせる!!」

「……なるほど。昔の、武蔵丸に依存してた頃とは違う様だな……だが、今の弱きお前だけでは俺に勝つ事は元より不可能だがな」

「それでも……それでも! ワシは夢見て未来へ突き進む……!!」

 激しい言い合いをする最中、修司は片太刀バサミで竹康が操る武器を弾いて遠くへ飛ばしてしまい、竹康を無防備に晒してしまう。

 そして片太刀バサミを振り上げて、竹康にトドメを刺そうとした瞬間、竹康が唖然と目を見開いた時。

「!!!!!!!!!!」

 修司と竹康の間に再起動した武蔵丸が割り込んで、修司のトドメを阻害した。

「武蔵!」

 竹康が驚いていると、武蔵丸は竹康を護る様に背後に押し隠し、自身は修司と再び激闘を始める。

「武蔵……! ダメなんじゃ! ワシは、お前に……武蔵に頼りっきりではいかんのじゃ! ワシは確かにまだまだ弱い。だからこそ武蔵丸がいなくても出来ると知らしめなければならんのじゃ!!」

 自分の身を按じてくれたとはいえ、守られっぱなしの存在で居るのは息苦しい心情の竹康の叫びを聞きながらも武蔵丸は修司と激闘を続ける。

「その忠義、見事……! だが、お前が護りっきりでは逆に竹康の成長の妨げになるのではないか」

「!!!!!???」

 修司の発言に激しく内心戸惑う武蔵丸。

 そして遂に激しい闘いの末、武蔵丸は修司に討ち負けた。

「武蔵……武蔵ィーーーーッ!」

 機能停止してしまった武蔵丸を前に、竹康は嘆く。

「竹康、もう武蔵丸に依存する事はない。もう武蔵丸に依存して政治をする必要もなくなった……もう未来を道行く必要もない、全ては此処で終わるのみ」

 そして修司は無情に竹康にもショットガンの引き金を引いて、彼に無数の銃弾を浴びせて命を奪った。

「ワシの夢が……理想、が……」

「竹康くん! ……ッ、君までも……!」

 最後まで中国のみならずアジア全土を幸福に導く夢と理想を志してた徳竹康の死を前に、順一は落胆する。

 

 

 

[双竜と若虎と猿]

 

 遂に戦場に生き残ったのは……。

 漢族筆頭のデイ・マァスンとその側近タク・モンジュロ。

 モンゴル軍新国将軍の若虎シン・ユキジと従者にしてモンゴル軍忍頭の猿飛佐助。

 そして聖龍隊によって導かれた心照権現村田順一とその婚約者であるグールとのハーフ深澤マイ、台湾が国将軍のシバ・カァチェン。

 最後に、荒ぶる戦況を恐れの余り見届けるしか出来ずにいる聖龍隊の新参者ら【SAO】組と【AW】組、そして【マギカ】組の面々のみ。

 

 実際に戦場の戦前に立っているのは七名の武将たちだけ。

 その内、最前線にいるデイ・マァスンとシン・ユキジは互いに得物を握り締め、眼前と対峙している修司と向き合ってた。

「この戦い、多くの犠牲が出過ぎてしまわれた。その犠牲を無駄にしない為にも……マァスン殿! 一世一代の大勝負! 今こそ終わらせましょうぞ!!」

「いい覚悟だユキジ、それでこそオレのrivalだ!」

 互いに息を合わせて修司打倒を目指すユキジとマァスン。

「モンジュロ、行くぞ!」「御意! マァスン様!」

「共に行こうぞ、佐助ェ!!」「了解っと!」

 デイ・マァスンは従者のタク・モンジュロを、シン・ユキジは猿飛佐助を相方にし、四人は共闘して戦前に飛び出る。

「僕たちも行こう! カァチェン、マイちゃん!」「うん!」「は、はい……!」

 村田順一も深澤マイにシバ・カァチェンと共に戦前に飛び出ていく。

「DRAGON soulは伊達じゃねえぜ!!」

「漲る焔、見せ付けてしんぜようぞぉぉぉッ!!」

 マァスンの蒼き雷の六爪と、ユキジの烈火の如き炎を纏った二槍が修司に襲い掛かる。

 が、修司は左手のショットガンを消して左手も片太刀バサミの二刀流に変化させると、迫ってくるマァスンとユキジの攻撃を二対の片太刀バサミで受け切ってみせた。

「Ha! やっぱり一筋縄じゃいかねえか……!」

「なんと……! 数多の武将と連戦を重ねても、未だに力は衰えぬのか!?」

 自分達の技を受け切った修司を目前にマァスンとユキジが制止していると、そんな三すくみの左右からモンジュロと佐助が修司に飛び掛かり、攻撃する。

 すると修司は一瞬で姿を消して、左右からの攻撃を回避してしまう。

 突如として姿を消した修司に、対峙していたマァスンもユキジも、そして左右から挟み撃ちにしようと襲い掛かったモンジュロと佐助は呆気にとられる。

 と、その時「! 上だ!!」と、辺りを見回していた佐助が真上を向いて皆に呼びかける。

 四人が見上げてみると、四人の頭上にテレポーテーションで瞬間移動していた修司が滞空していた。

 そして頭上の修司は、再び左手の武器をショットガンに変えると真下の四人へと銃撃の雨を降り注ぐ。

「散れッ」

 モンジュロの冷静な判断で、四人は散り散りになって頭上からの銃撃を回避する。

 一方、地上への銃撃を数発撃った修司は、自分より高い位置に滞空しているカァチェンと彼に掴まって浮上している順一の存在に気付く。

「ありがとうカァチェン。この位置からなら大丈夫だ!」

「どうかご武運を……順一殿」

 逆刃薙(さかばなぎ)を頭上に高速回転させる事で浮上できるカァチェンの足元に掴まり、上空に昇っていた順一が掴んでいた手を離して単身修司へと真っ向から落下していく。

「僕のこの一撃、受け切れますか! 修司さん!!」

 順一は落下すると同時に拳に力を込めて構えて、修司目掛けて力のこもった拳を思いっきり叩き込んだ。

 修司は片太刀バサミで上空からの順一の一撃を受け止めるが、順一の一撃は凄まじく、修司と順一はそのままの勢いで地上へと落下し、不時着した。

 修司に殴り込んだ順一が、砂煙の中を立ち上がり修司の方へと目を向けると、修司は順一の一撃が凄まじかったのか起き上がってはいなかった。

「はぁ、はぁ……」

 順一は自分の一撃がようやく師でもある修司に効いたのかと、息を切らしながら横たわる修司を見据えていた。

 と、順一が安心し切ろうとしてた矢先。

「ジュンくん、危ない!」

 修司の意識がハッキリとしている事を察したマイが、順一に危険を呼び掛ける。

 修司は左手に握り締めるショットガンの銃口を順一に向け、順一に銃撃をお見舞いしようと引き金を引いた。

 順一は咄嗟に両腕を前に構えて防御するが、修司が放った散弾は順一の両腕と両足など、防ぎ切れなかった箇所に直撃した。

 銃弾を浴びて顔を歪ませる順一の傍らに、マイが背中の翼で滑空しながら近づく。

「ジュン、大丈夫?」

「僕の事はいい、それよりも戦局を見極めるんだ、マイちゃん……!」

「何を言ってるの!? ジュンはこの現政奉還が始まってから、ずっと重荷を背負って来てるじゃない! 自分一人だけ全部の苦しみや業を背負った気でいるのはやめて!!」

「マイちゃん……」

「自分一人で全部を背負って、何もかもを自分だけで抱えようとするのは修司さんと変わりないわ! ジュンが辛い分、その辛さも悲しみも、一緒になって背負ってあげるのも、あたしや周りの仲間達の役割だってこと忘れないで!!」

「……マイちゃん……」

 突然のマイの告白に驚きを隠せない順一。

 そんな所にデイ・マァスンが呼びかける。

「オイオイ、お二人さん。Lovelovetimeのところ悪いけど、今は戦闘中だってこと忘れないでくれよな」

「「!!」」

 マァスンに指摘されて、思わず顔を赤面させる順一とマイ。そんな二人を遠目で見詰めるカァチェンは少しばかり恨めしそうにしていた。

 

 一方で修司の相手をデイ・マァスンと従者であるタク・モンジュロが引き受けていた。

「おい鬼神、あんたの目には何が映ってんだ? 何も見えない……いや、悲しみしか見えないってんなら、竜王たるオレ様が導いてやるよ!」

 修司の悲しみを知って、デイ・マァスンが刀を振るうとそれに続いてモンジュロも抜刀する。

「テメェの最後を飾る真剣勝負だ……余さず来い」

 厳つい顔付きで睨みを利かせながら修司と激しい剣戟をし合うモンジュロ。

 左利きの剣術から放たれる太刀筋は、まさに達人の域。

「このモンジュロの胸から獣は消えた……残ったのは、ただひたすらな誓いのみ!」

 達人級の剣技を繰り出し、修司を圧倒していくモンジュロ。それに対して修司は片太刀バサミでの剣戟を繰り出しつつ、時おりショットガンでの銃撃を交える。

「食わせてもらうぜ、残り僅かな勝負の時を」

 凄まじい覇気と威圧も重ねて修司を剣技で圧していくモンジュロに、共闘しているマァスンが思わず零す。

「Hum……相も変らぬ太刀筋だぜ」「それも、荒ぶる竜王には敵いますまい」

 互いに完全に息の合った連携で修司を圧倒していくマァスンとモンジュロ。

 雷を纏う二人の剣技に応戦する修司に、モンジュロが問いかける。

「進む覚悟はあるのか? たとえ何を斬ろうとも」

「否、時に人は立ち止まる必要もある……そう、この世の全てを斬り捨ててもな」

 修司は二人に銃撃を浴びせようと、いったん退いて距離を取ってからショットガンを撃とうとするが。

「モンジュロ! 鬼神に距離を取らせるな!」

「御意! 間合いは出来る限り詰めていきましょう!」

 マァスンとモンジュロは修司に銃撃させまいと、間合いを可能な限り詰めてからの接近戦を持続させる。

「笑わせる……! 全てを従え、全てを導く為に竜王と名乗り出したマァスンの若さゆえの横暴を止められずにいたモンジュロ、そのお前が俺を止めれるのか? 己を許せるのか……!」

 修司からの不意の質問に対して、モンジュロは剣を振るいながら答えた。

「許さなくていい、俺に出来るのはこれだけだ」

 するとモンジュロに続き、マァスンも修司に言った。

「せめてもの手向けだ、派手に散らせてやるさ」

 次の瞬間、二人は一歩後ろへと下がると奥義を繰り出した。

「唸れ、鳴雷!」「HELL DRAGON!!」

 二つの雷球が修司を襲う。が、修司は闇の覇気でこの二つの雷球を意図も簡単に弾き返して防いでしまう。

「Hugh まだまだ色んな隠し玉を持っているようだな、鬼神のおっさんは」

「マァスン様、ご無理をなさらず……」

「Ha! オレがもう限界だって言いたいのかモンジュロ? あいにくオレ様のSeoulは更にHeatupしてるぜ!」

「それなら最早何も言いますまい。このモンジュロ、最後まで貴方の側近として戦い続けるまで」

「OK! 上等だぜモンジュロ! このbattle、最後まで熱くそしてcoolに行こうじゃないか!」

 互いに健闘を称えつつ、最後まで共闘して戦い続ける覚悟と意志を示し合わせるマァスンとモンジュロ。

 そしてマァスンとモンジュロは二人同時に修司へと進撃。

「これはたいしたlast battleだぜ!」

 派手に暴れ回るデイ・マァスンの竜の六爪と、冷静沈着に左利きからの剣技で応戦するタク・モンジュロの戦ぶり。二つの雷鳴が修司に幾度となく襲い掛かる。

「ぬぅおおおおおッ! このシン・ユキジも、まだまだ戦えまするぞ!!」

 と、マァスンとモンジュロが修司に挑んでいる最中、二人の激戦振りを拝見したシン・ユキジも戦闘に参戦してきた。

「って、バカ大将! むやみやたらに突っ込んだって勝てる戦でもないんだよ!?」

 そんな猪突猛進の勢いで突撃するユキジを見て、側近である猿飛佐助は唖然としつつも突撃するユキジを援護する。

「OK! 蒼龍と紅い猛虎の共闘合戦と洒落込むか!」

 勢いのまま参戦するユキジを視認したマァスンは、ユキジの参戦に反論は示さず寧ろ歓迎する素振りで共闘の意志を示す。

 蒼き雷の龍と紅き焔の若虎の猛攻が交互に修司へと襲い掛かる。そこに犬猿の仲のモンジュロと佐助の援護攻撃も重なり、修司に大打撃を与えていけてたが、修司の再生力の前では焼け石に水だった。

 

 遂に蒼龍と紅蓮の若虎、そして龍の右目とモンゴルの影の共闘戦前は長期戦へと持ち込まれてしまう。

 デイ・マァスンもシン・ユキジも、そしてタク・モンジュロに猿飛佐助も体力が消耗し、自然と息が上がっていた。

「ハァ、ハァ……」「ぜぇ、ぜぇ……」

「ふぅ……」「……やれやれだよ、まったく」

 マァスンとユキジは息を切らし、モンジュロは軽く溜息混じりの呼吸をし、佐助は連戦しているのに未だに平然としている修司に呆れ返っていた。

「まだだ……! オレ達のSeoulはまだまだ尽きちゃいねえ!」

 竜の六爪を一気に抜刀して修司に再度挑もうとするマァスンの隣で、ユキジも二槍を両手に携え修司に抗い続ける意志を示す。

「そ、その通り……! 御屋形様から受け継いだ虎の意志、ここで終わらせる訳にはいかぬ……!!」

 お互いに体力が尽きかけ、震える腕で得物を握り締める。

 そんな戦前の二人にトドメを刺そうと、今度は修司の方から二人へと進撃してきた。

 修司は瞬時に二対の片太刀バサミに装備し直して二人へと特攻し、凄まじい斬撃を連続で叩き込む。

「グッ……! アレだけ戦っても、まだfullでbattleできる体力が残ってるのかよ……!!」

「もはや、人間では在りませぬ……!」

 未だ衰える気配すらもない修司の戦闘力に、マァスンもユキジも圧倒されるばかり。

 すると修司は左腕を展開させ「無限刀 鬼嵐」の態勢を取る。

「! マァスン様!」「大将!」

 修司が広範囲かつ高威力の鬼嵐を抜刀する構えを見て、堪らずモンジュロと佐助が間に割り込む。

 そして修司が放った「無限刀 鬼嵐」を代わりに浴びたのだった。

「モンジュロ! 大丈夫か!?」「これぐらい、造作もない事……!」

 マァスンの方は普通に部下を労わる程度で済んだのだが、ユキジの方は。

「さ、佐助! 無理だけは……」

「バカやろッ! 俺様は忍、影だって事を忘れるな! 替えの効く使い捨ての道具、それが忍だって事を頭に入れとけ!!」

 自分を庇って修司の攻撃を受け止める佐助を心配するユキジに、佐助はいい加減忍である自分を使い捨ての道具だと自覚する様にと強くユキジに怒鳴り返す。

 そしてそのままモンジュロと佐助が修司相手に善戦する流れとなった。

 モンジュロの雷の剣技と佐助の影の忍術、だが二人の猛攻を受けても尚、修司は瞬く間に再生してしまう。

「くっ、いくら傷を負わせてもすぐに再生しちまうんじゃキリがねえぜ」

「まったく。以前から化物染みてたが、今はそれ以上の化物だぜ」

 モンジュロと佐助は得物を構えながら修司と対峙。

 そんな二人に加勢しようとデイ・マァスンとシン・ユキジも戦前に加わる。

 

 デイ・マァスンとタク・モンジュロ、シン・ユキジと猿飛佐助の二組のコンビが修司に善戦を仕掛ける。

 だが修司の驚異の再生力を前に、苦戦を強いられる事には変わりなかった。

 と、修司が佐助を斬ろうとした瞬間、なんとユキジが佐助を押し出して修司の斬撃の身代わりになったのだった。

「ッ……旦那ーーーー……ッ!!」

 目の前でユキジが自分を庇って斬られた情景に衝撃を受け、激しく動揺してしまう佐助。

 佐助は修司に斬られて切り傷から大量に出血してるユキジを抱き寄せて、彼の意識を呼び止めようと必死に声をかける。

「ユキジさん!」「シン・ユキジ!」

 修司に斬られたユキジを心配し、アスナやキリトたち【SAO】組と【AW】組に【マギカ】組も集結する。

「ユキジ……!! ッ、この野郎!!」「マァスン様! 冷静になって下され!」

 同じく目の前でユキジが斬られたのを目撃したマァスンは、ライバルであるユキジが斬られたショックで頭に血が上り、モンジュロに指摘されながらも興奮した状態で修司に斬りかかる。

 一方でキリトやアスナ達に見守られながら、佐助は自分を庇って身代わりになった血まみれのユキジを抱き寄せながら必死に声をかけ続ける。

「大将……旦那、なんで……なんで俺なんかを庇ったんだよ……!」

 激しく動揺しながらも虫の息状態のユキジに問い掛ける佐助。するとユキジはか細い声で返答する。

「佐助……俺は、某は……其方を、死なせたくはなかった……自然と、勝手に……体が、動いてしまった……」

「なんで……なんで……!!」

「と、友である……其方を、見殺しには、出来なかった……!」

 このユキジの返答に、佐助は啖呵を切った様に怒鳴り散らした。

「何言ってやがる!! 何度も言わせるな、馬鹿野郎!! いい加減に理解してくれよ……!! 俺たち忍は道具、使い捨ての道具だってよ!! なのに……なのに、その道具を庇って無駄死にしちまうあんたは国を護る将軍でもなきゃ大将でもない!! 単なる大馬鹿野郎だよ!!」

 この普段は飄々としている佐助の怒声を目の当たりにして、キリトやアスナ達は唖然としてしまう。

 そして当のユキジ本人は、途切れかける意識の中で浴びせられた佐助の怒声に対してか細く答える。

「そう、であったな……だが、俺はそれでも……お主を、生涯の友としてしか見る事が出来なかった。お主を、使い捨ての道具と見る事は出来なかった……こんな簡単な事も受け入れられぬ俺は、やはり将軍として失格なのであろうな、佐助。はは、笑ってくれ……友を友としてしか見られない俺を、笑ってくれ、佐助……」

「ッ………………!」

 使い捨ての道具である忍の自分を友として見てくれてたユキジの言葉に、佐助は激しい感情の奥から何とも言えない微かな幸福感が沸き上がるのを感じた。

「このシン・ユキジ……熱く、熱く、生きた……! さらばでござる……」

「ユキジさん!」「シン・ユキジ!!」

 最後まで猿飛佐助を友として見続けた紅蓮の若虎シン・ユキジを看取り、アスナもキリトも誰もが涙した。

「馬鹿やろ、が……」

 一方の佐助は何かが吹っ切れたかのように呆然と突っ立っていた。

「ユキジ……!! クソがァッ!!」「待て、独眼竜! 待つんだ……ッ!」

 ライバルであるユキジの戦死を受けて、マァスンは完全に堪忍袋の緒が切れて修司に猛進、それを見た順一がマァスンを呼び止めるものの彼の耳には誰の声も届かなかった。

 

 そして何かが吹っ切れた猿飛佐助は、静かにユキジの亡骸に集うキリト達に声をかける。

「……お前達……」『!』

 佐助の一言にハッと顔を向ける一同に、佐助は語り続ける。

「旦那の事、頼んだぞ」

 キリト達にユキジの亡骸を一任させると、佐助は二つの大型手裏剣を構えて静かに歩み出す。

 その佐助の(まなこ)は漆黒の闇の如く、不気味に静寂に開眼していた。

 

「さぁ、猿色(ましらいろ)の時間だ。一匹の(ましら)に、寄られ集られ殺されろ」

 

 亡きユキジはもちろん、聖龍隊ですらも知らない猿飛佐助の血塗れの(ましら)の素顔が明らかになる。

 

 

 

[鬼神と猿(ましら)]

 

 遂に蒼龍デイ・マァスンと好敵手の関係にあるモンゴルの若虎シン・ユキジを亡き者にした小田原修司。

 ライバルであるユキジを殺められて激高するマァスンは、側近のタク・モンジュロと共に修司へと斬りかかっていく。

 そんな最中、シン・ユキジの側近にして昔馴染みの間柄でもある猿飛佐助は、ユキジが死んだことで完全に様子が一変してた。

 佐助の瞳、それは漆黒の深淵を表す様などす黒い闇の瞳であった。

 

「さあ、楽しい楽しい猿のお遊戯、ご披露するぜ」

 虚ろな眼差しでそう呟く佐助は、マァスンとモンジュロと激戦する修司へと静かに駆け出して行った。

「し、忍!?」「猿飛……!」

 そして戦闘に割り込んできた佐助を眼前に、マァスンとモンジュロは驚き戸惑ってしまう。

 一方で佐助は二つの大型手裏剣を自在に操り、嵐の様に修司に追撃を仕掛ける。

「猿飛、テメェ……」

 一人で単身突っ込んでいく猿飛佐助のらしくない動きを前に、佐助と長らく対立関係にあるモンジュロは驚きを隠せないでいた。

 そして佐助に遅れてはいけないと踏んだモンジュロは、追撃を繰り返す佐助に続く様に自らも剣を振るって修司を追い詰めていく。

「モンジュロ……らしくねえ動きだ、何があった」

 そんな微かに挙動不審な素振りのモンジュロを見て、マァスンはモンジュロの心理を気に掛ける。

 だがマァスンとモンジュロの双竜組を間近で認識しながらも、主君でもあれば同時に友でもあるシン・ユキジを殺められた佐助は修司に猛攻を続けてた。

 修司に猛攻を続ける佐助の深淵の様な瞳を視認して、新世代型二次元人達が蒼然と佐助の戦いぶりを傍観していると、不意に琴浦春香が呟いた。

「佐助さん……多分、人生で一番、今が辛いんだろうな……」

 琴浦春香の言葉に新世代型の誰もが同意した。

 昔馴染みである戦友であれば、今はモンゴル将軍を引き継いだシン・ユキジの死を切っ掛けに、佐助は遠い遠い昔の頃の血塗れの猿へと戻ってしまったのである。

 唯一、血まみれの猿の頃と違う点といえば……。

「寄り添う虎の親子を見て、猿は言いました……。……ま、こんなのも悪くないか」

 時おり零す、昔懐かしい思い出を振り返る時の悲しい表情を、佐助は浮かべてた。そんな佐助を遠目で観て、新世代型達は胸が締め付けられた。

「ッ……!」

 一方戦況は相変わらず修司に攻撃が効いているものの、修司は新世代型達から会得した再生能力で傷を完治させて一向に有利に立てない状況が拮抗していた。

「チッ、あの再生能力どうにかなんねえのか……!」

「ご無理をなさいませぬな、マァスン様。此方の体力が先に消耗してしまわれる……」

「そんな事言われなくても分かってる!!」

 次第にマァスンとモンジュロは体力が消耗して思う様に体が動かなくなる。

 その一方で佐助は、一人淡々と修司に攻め続け、修司の体を大型手裏剣で細切れにしていく。無論、その度に修司は再生して元の木阿弥に至ってしまう。

「うおおおッ!!」「今度こそ……!」「幻影……!!」

 マァスンとモンジュロの二つの雷に、佐助の闇の影が修司に襲い掛かった。

 凄まじい攻撃に、辺り一帯は砂煙が舞い、視界が遮られた。

 そんな中、次第に砂煙が落ち着きつつあり、視界が良好に戻っていった。

 が、修司はやはり驚異的な再生能力で回復したのか、全くの無傷だった。

「ウソだろ、オイ……!」

「信じられん。長期戦にも関わらず再生能力は一向に衰えないとは……!」

 マァスンとモンジュロは相も変らぬ修司の驚異的な再生能力に我が目を疑った。

 だがそんな戦況下でも佐助はただ我武者羅に単身修司へと進撃し、攻撃を続けてた。

「あの忍、完全に狂気の沙汰じゃねえか」

「忍が主君を護れなかったのは何よりの痛手……猿飛も辛いのでしょう」

 単身暴走ともいえる今の佐助の状況を目の当たりにし、マァスンもモンジュロも佐助が正気の沙汰ではなくなった実情を目撃する。

 すると此処で佐助の技が大暴走し、大型手裏剣の一対がマァスン目掛けて飛んできた。

「!!」「マァスン様!」

 驚くマァスンの危機を、側近のモンジュロが刀で弾いて防ぐ。

「ッ! おい猿飛! マァスン様を傷付けたらタダじゃおかないぞ!!」

 しかし、そんなモンジュロの怒声も今の悲しみに暮れる佐助には届かなかった。

 もはや誰の声も聞こえない状態で、佐助はただただシン・ユキジを殺めた修司へと攻撃を続ける。

 そんな今までの飄々とした佐助とは打って変わり、敵の返り血を浴びる事に全くの躊躇も無くなった豹変した佐助に修司がぼそりと呟きかける。

「心があるからこそ……人は傷付き、脆く壊れやすい」

「俺様に心……? あったとしても、それは与えられただけの仮初の心……俺様の心じゃない」

 修司の呟きに返事する佐助に、修司は更に語り掛ける。

「仮初であったとしても、与えられただけの心であっても……お前が苦しいと感じている以上、それはお前の心以外の何物でもない、正真正銘猿飛佐助の心なのだよ」

「………………」

 今の苦しんでいる心は紛れもなく自分自身のものだと説く修司の言葉に、佐助は表情を微塵も変えずに攻め続けた。

「猿飛! オレ達もPartyに参加している事を忘れるな!!」

 と、そこにマァスンとモンジュロも修司に再戦しようと参戦。

 三人と独りの戦闘は更に苛烈するが、歴戦の三人を前にしても修司は相変わらず剛腕の太刀筋と驚異の再生能力で優位に立つ。

 そして激しい剣戟の最中、遂に剣技では修司を圧倒していたタク・モンジュロが、修司の底なしの体力と再生能力そして剛腕から繰り出される剣技で敗北してしまった。

「俺の歩んできた道……まあまあの、長さ、だった……」

「モンジュロ!! 先は一人で進めと……そう言うのか……?」

 刹那の戦況の末、遂に戦死してしまったモンジュロを前に、マァスンは昔味わった孤独感を思い出していた。

「竜の右目が死んだとしても、あんたにも同じ道が残ってるぜ!」

 モンジュロの死を受けて、佐助は修司に最大火力の奥義を繰り出して命を奪おうと画策。

 しかし修司は佐助の奥義を受けてもなお死なず、戦前で生き残ってる佐助とマァスンに向かってきた。

「Dragon soulは伊達じゃねえぜェェェ!!」

 デイ・マァスンは自力で武器の属性を最大まで解放し、特大の電撃の球を竜の爪から解き放ち、修司に向かって投げ飛ばす。

 だが修司はその特大の電撃の球から臆する事無く逃げず、片太刀バサミを両手でしっかりと構えて、そして精神を集中させてから一気に片太刀バサミを振り払い電撃の球を弾き返した。

「ッ!!」

 そして弾き返された電撃の球はマァスンへと向かって撥ね返された。

「ぐおおおッ!!」「マァスン!!」

 自分が放った電撃の球が自分自身に直撃して絶叫するマァスンを目撃し、順一は阿鼻叫喚。

 そして電撃で深手を負ったマァスンに、修司がテレポーテーションで瞬間移動して急接近して片太刀バサミで斬り捨てた。

「死んだとしても……オレは諦めねえ……! オレの理想、望みのままに……誰もが必ず立ち上がる……!」

「独眼竜……!」

「竜王マァスン氏……貴方様もHEADと同等の理想を……未来(さき)を、夢見ていたのですね」

 中国漢族の郷士武将デイ・マァスン。彼の誰もが平等に夢見られる理想を、志の半ばに散っていった様に、順一もカァチェンも胸を痛めた。

 

 遂にアジア武将でも名高いデイ・マァスンとその側近タク・モンジュロも討死した戦況に、檻の中の新世代型二次元人達も驚嘆する中、猿飛佐助は独りになろうとも諦めず修司に挑み続けてた。

「デイ・マァスン、シン・ユキジ……アジア武将の中でも秀でた名武将の二人も死んだ今……佐助、お前が戦う理由も何れ無くなる」

「目的の為に生きる奴はな、嫌でも我慢強くなるもんだ」

 修司に促されても、佐助は修司に抗う事をやめなかった。

 だが最後まで諦めず修司に抗戦し続ける猿飛佐助に変化が。

 極度の修司の再生能力での回復による長期戦で、佐助の体力が消耗し始めてしまったのだ。

「……はぁ……はぁ……」

 普通なら忍ゆえに体力などのスタミナは常人以上である筈なのだが、修司の再生能力の前では如何に優れた忍である佐助であろうと体力が持たなかった。

「佐助さん!」「忍よ……」

 そして遂に片膝を地面に着けて疲労困憊する佐助に、順一とカァチェンが駆け寄って声をかける。

 そんな佐助に修司は冷然と対話し始めた。

「猿飛、もう忍として戦う理由は無くなった筈だ。現当主でありモンゴル将軍でもあるお前の旧友シン・ユキジは死に、やがてモンゴルを始めとする国という概念すらも無くなる。ユキジの敵討ちなど忘れて、一人の人間として終われ」

「お生憎様。俺様は俺様の意志で戦っているんだ。鬼神、あんただけは殺す……!!」

「哀れに。最後まで先に死んだ友の、ユキジの弔いの為に戦い続けるのだな。自分を友として受け入れてくれたユキジを忍として側近として護れなかった自分を、咎める様に俺に対して死にに来るのだな」

「……俺は確かに大将を、ユキジの旦那を護れなかった! だがな!! ……俺は最後の最後まで、モンゴル軍の忍頭として! そしてシン・ユキジの従者にして友として!! あんたを殺すんだ……そう、かつての血に塗れた猿に戻り果てようとな」

 すると言い合っていた修司が、佐助の表情を視認して言った。

「忍として、血に塗れた猿として、か……あくまで人ではない、人外の畜生になり果ててまでも俺と刺し違えるつもりか。なら佐助、お前の頬を伝うその雫は何を意味している」

『!』

 修司の問いかけに佐助も順一もカァチェンも、そして檻の中の新世代型達や戦闘を傍観しているキリトやアスナ達が驚愕する中、皆は佐助の顔を凝視した。

 佐助自身も驚いた。自分の頬を伝う一筋の雫、佐助はいつの間にか自分が人の証でもある涙を流している事実に驚愕する。

「どんなに自分を偽ろうと、その人でもあれば弱さの証でもある涙を流しているのが確固たる証拠……! ユキジを失い、己の不甲斐なさに落胆するお前自身は、既に血に塗れた猿などではない……れっきとした人間そのものよ」

 かつて失っていたであろうと自負していた人間である事実に、人間を捨てて生きてきた佐助は修司に指摘されて言葉を失う。

 そんな佐助に追い打ちとばかしに修司は語り明かす。

「人である……いや、人に戻った猿が畜生に戻れず、居場所である友や国をも失い、残された道は死あるのみ。そこは俺のクローンである新世代型と同じ……人にもなれず、畜生にも成り切れず……居場所を失った者共に残されたのは絶望あるのみよ」

 修司に、かつての非道な血塗れの猿にも戻れず、友を失った以上人間としての道も閉ざされた自分は、新世代型二次元人と同じく生き場所も失うのみと説かれた佐助は黙然と俯いていた。

 修司の非情な言動に哀しみに暮れる新世代型達。

 だが、そんな中で佐助は何かが吹っ切れた様に修司に反論し始めた。

「……確かに、あいつらはあんたから生み出されちまった呪われた存在、新世代型二次元人だ。それは否定しねえよ」

「………………」

「でもな……あんたの遺伝子から生み出された、あんたのクローンだから何だって言うんだ。あいつらの、あの子たちの価値を決めるのは、そもそも小田原修司あんたでもなけりゃ世界でもない! 自分の価値は、自分で見出さなきゃならねえんだ!!」

『!!』佐助の格言に修司以外の一同が驚嘆した。

 更に佐助は訴え続けた。

「俺は……ユキジの旦那たちと出会って変われた。血に塗れた、それこそ畜生以下の外道だった俺様に温もりを……本当の意味で生きる喜びを与えてくれた。そして何より、俺自身の価値を正しく評価してくれた……!」

「……」

「だが小田原修司、あんたはどうだ! 自分のクローンってだけで新世代型の価値を見下して、生きる喜びを……生まれた喜びすらも取り上げて! いや、それ以前に……あんたは自分自身の評価も下げまくって。とんだお笑い野郎だね!」

 そして最後に佐助は修司に強く言い放った。

「俺が血まみれの猿なら、あんたは自分の価値も自分で見出せなかった……落ちこぼれの中の落ちこぼれだわ!!」

 新世代型二次元人の存在を評価せず、己自身と同等に見下していた小田原修司に、佐助は自分よりも堕落した落ちこぼれだと修司に吐き捨てる。

 誰もが佐助の言動に感銘を受けてた、その時。

 ぐさりという鈍い肉を突き刺す音が聞こえたかと思った瞬間、修司は瞬間移動で素早く佐助に詰め寄り、彼の腹部を片太刀バサミで突き刺した。

「感情的になって俺の攻撃をかわせなかった……やはりお前は忍でもなければ血塗れの猿でも無くなった。単なる人に戻った、ただの人……」

 そう言うと修司は平然と突き刺した片太刀バサミを引き抜いて佐助を殺めた。

「ああ、そうか……俺様も、いつの間にか……猿から人に、変わっちまってたんだ、な……」

 大粒の涙を零しながら、佐助はユキジと出会った頃のことを思い返しながら死に絶えた。

「佐助さん!」「忍!」

 息絶えた佐助を目撃して、アスナもキリトも他の一同も嘆き悲しんだ。

 

 

 

[墜ちた流星]

 

 シン・ユキジ、タク・モンジュロ、デイ・マァスン、そして猿飛佐助。

 聖龍隊以外では歴戦のアジア武将が戦死してしまい、残された村田順一にシバ・カァチェンは途方に暮れてしまう。

 そんな順一達を支援する形で戦う姿勢を崩さない愛澤マイ、そして戦いを傍観するしか出来ずにいる【SAO】組に【AW】そして【マギカ】組の面々に檻の中の新世代型二次元人たち。

「どうするのです、順一殿……修司殿を倒そうとした歴戦の武将達が、こうも続々と敗れ去った今、我々が成し得る事など在るのでしょうか……」

「………………」

「ジュンくん、どうするの」

「……」

 不穏そうな表情のシバ・カァチェンに険しい面持ちの深澤マイから問われても、順一は黙然と険しい顔付きで修司を見据え続けてた。

 そんな不安な胸中の最中、ふと修司は右手の片太刀バサミと左手のショットガンを携えて、一気に間合いを詰めようと迫ってきた。

「来たぞ!!」

 眼前に迫ってくる修司を前に、順一が声を荒げて両脇のカァチェンとマイに呼びかける。

 そして一瞬で迫る修司に、三人は散り散りに回避すると、順一が拳を構えて言い放つ。

「このまま敗れ去りはしない……絆が力に劣るものと、人の心に刻ませはしないッ!」

 そう叫ぶと順一は単身修司へと突っ込んでいった。

「ジュン!」「順一殿!」

 マイとカァチェンが呼ぶ中、修司と順一は激突。両者は互いに片太刀バサミと拳を激しくぶつけ合いながら闘い始める。

 順一と激しく闘う中、修司は片太刀バサミで応戦しながら順一に言った。

「ジュンよ……人とは平穏を求めてしまう余り、その平穏に溺れ、次第に弱体化していってしまう。俺達が掲げていた平和も理想も、そして絆も……所詮は人間の弱さそのものよ」

 これに対して順一は真っ向から反論する。

「絆も情けも弱さではないんです! 修司さん……!」

 すると其処に「ジュンくん!」と、マイも妖形態で背中の翼で滑空しながら激しく闘い合う二人の許へと駆け付け、順一に加勢する。

「ジュンくん! 一人で闘おうとしないで!」

「ご、ごめんよ、マイちゃん……それじゃ、共に戦ってくれるかい?」

「もちろんよ!」

 順一とマイは共闘する形で修司と戦う姿勢を組む。

 順一の輝かしい光の思いと、マイの妖しい闇の術が互いに共鳴しながら修司へと襲い掛かる。

 だが修司は順一の振るう拳を真正面から受け止め、マイの妖術を容易く回避して戦いを続ける。

 それでも順一は諦めず拳を振るい続け、マイもそれに応えようと最後まで戦い抜く所存。

 激しい戦闘の中、順一は修司に問い掛ける。

「全てを真っ白な虚無に誘う事が、本当に人々の幸せだと思ってるんですか!? 修司さん!!」

「幸せ……いや、違うな。幸も不幸も、希望も絶望も……全てを超越した先にこそ、心を持つ者たちが辿り着くべき終着点が在るのだよ。ジュン」

 修司の返答に順一もマイも心痛を隠し切れない。

 すると今度は修司が順一に問うた。

「ジュンよ、この世には死ななければ……消えねばならない命も多数存在する。秩序を乱す不届き者、死刑囚などなど……! そんな命が蔓延る現世を全て消す事に何の躊躇いがある……!?」

 これに対して順一は真っ直ぐな瞳で答える。

「この世の為に、消えねばならない命もある。そんな理から抜け出せた世に、僕がするッ!」

「これは飛んだお笑い草だな、ジュンよ……!」

 順一の理想を修司は頑なに否定する。

 全ての心を照らす光・村田順一。そして、そんな順一という光に最初に救われた事から恋心を抱いた半グールの深澤マイ。二人の合体技が強烈に修司に直撃するものの、修司は微動だにしなかった。

 修司の悲しみに沈んだ瞳を直視し、順一は修司に優しく言葉をかける。

「僕と共に行きましょう……憎しみと悲しみの向こうに!」

「笑わせるな。全ての憎しみと悲しみの先こそ、俺が創ろうとしている白き桃源郷……! 何より、悲しみと憎しみ、そして数多の絶望をも生み出してきた聖龍隊である俺らが言えた台詞ではないだろう」

 激しい戦闘の最中でも、互いに各々の思いを赤裸々に口から出していく修司と順一。

 

 戦いは佳境へと突入し、修司の猛攻に順一もマイも消耗し始めていた。

 そんな中、真っ向から突撃してくる修司に対して順一もそれに応えようと同じく修司に真っ直ぐ突進。そいて二人は互いに激しく各々の石頭を頭突きし合い、その衝撃によって周辺の地形を変形させてしまう。

「な……ッ!?」「え……ッ!?」

 その衝撃で地形が変形する様を目撃し、檻の中の新世代型二次元人たちは目を丸くして驚愕してしまう。

 そんな光景を目の当たりにして、同じく檻の中に囚われの身になってしまってる千両道下のバギーは目を丸くしながらも淡々と解説した。

「小田原修司と村田順一……順一は昔から修司に熱心に鍛錬を指導され、遂には修司に続く聖龍隊でも石頭のキャラへと成長しやがった……! 修司とジュン、二人の石頭は最早比べ物にならないほど硬く、そして強固な鈍器そのもの……そんな重量級の鈍器同士のぶつかり合いは辺りの地形を一変させちまうのは仕方がねえ……!!」

 バギーの説明を聞いて、修司と順一二人の石頭がどれほど強く、そして凄まじい火力なのかを納得する新世代型達。

 一方で、修司と激しく頭突きし合った順一は、いったん後ろへと引き下がり、額を真っ赤にしながら修司と対峙する。

「ジュンくん!」

 そこにマイが再び駆け付ける。

「マイちゃん、大丈夫かい? まだ戦えるかな」

「平気よ、これぐらい! ……悩み続けるジュンの苦労に比べたら、あたしなんかの疲れなんて動作もないわ!」

「そっか、それは心強い……正直、もう一人で修司さんと戦い続けるのは精神的にもかなり参っててね」

「ふふ、ジュンが弱音を吐くなんて珍しいわね。この戦いが終わったら、ゆっくりしよう」

「うん!」

 そう朗らかに会話する順一とマイに、修司が言う。

「戦いのオワリ、それはこの醜き世界の終焉……! 最早、この世に安息の時など訪れはしない……!!」

 この修司の言葉に、順一は強く反論した。

「この世界は確かに醜いかもしれない……! だけど! 皆が揃って前を向けられる未来を奪う権利は、どんな権力者も持ってはいないんだ!」

「ハ、揃って、だと……? 所詮は私利私欲に塗れた愚か者で溢れた現世に、万民が足並みを揃えて歩むという未来は存在しない……!」

「確かに人は欲の塊です……けれど、そんな欲望も、見方を変えれば夢や希望などの願望にだってなれるんです!」

 修司と対話し終えた順一は、再びマイと共に修司へと挑む。

「誰よりも見続けてきたんだ……英雄達の背中を」

 順一は聖龍隊に入る前から、テレビやアニメタウン国内で見続けてきた聖龍隊の英雄達の勇姿を思い出していた。

「修司さん、バーンズさん、ジュニアさん、そしてアッコさん……あなた方のその先へ!」

 そして行く行くは強く憧れる英雄達よりも気高く立派な存在を夢見て、ほぼ無名のモブキャラだった少年は今、一人の武人としてかつての師である修司を乗り越えようと奮闘する。

「強くても結局は死ぬ……だからこそ、人は弱くても良いんです!」

 マイとの共闘、そして修司との激しい戦闘の最中でも順一は問い掛け続けた。

「情けなくていいです……情けが無いよりずっといい」

 しかし愛弟子である順一の言葉すらも、純粋なる破滅へと変わり果てた修司には届かなかった。

 と、ここでマイが両手の装甲を変形させて鋭利で長い爪へと変えると、上空から一気に修司に襲い掛かり、長い爪で修司を刺し貫いた。

「村田順一、第一の絆の力だ!」

 そんなマイの活躍を見て、順一は高らかに喜々とした。

 しかしマイが刺した傷口も、修司は瞬時に再生させて回復してしまう。

 

「はぁ、はぁ……」

 だが体力が衰えない修司に対して、マイや順一の体力は明らかに衰えてきてた。

 そして一瞬の隙に、修司は間合いを詰めてマイにショットガンの銃弾を浴びせた。

「っ……!」「マイちゃん!」

 全身に銃弾を浴びて悶絶するマイを見て、順一は叫んだ。

 そして修司は銃弾を浴びて動きを止めたマイへ最後の一撃として片太刀バサミを振るい付け、彼女を斬り捨てた。

「ジュン、くん……」

 力なく倒れるマイは、絶命したのを皮切りに人間の姿へと戻っていく。

「共に夢を叶えてくれるって……誓ったのに!」

 マイの死に順一は心の底から嘆き悲しんだ。

 そしてマイを斬り捨てた修司は、次に順一へと迫り、片太刀バサミを振るって襲い掛かる。

 順一は辛うじて両手にはめた手甲で修司からの斬撃を防いでいくが、修司の攻撃はやむ事はなかった。

 そして次第に斬られていく順一の体には無数の切り傷が生々しくつけられていった。

 やがて順一の体の力が抜け、順一は力尽きてしまう。

「力には誰も抗えない、のか……いいや、違う……絆は、不滅だ……!」

 己が掲げた、そして信じ抜いた絆は決して弱くはないと言い切る順一は、そう言い残して倒れてしまう。

「ジュン!」「順一さん! ……うぅ、そんな……」

 檻の中で順一達が戦死したのを見届けた新世代型二次元人の真鍋義久や琴浦春香たちはこの結果に心から絶望し、悲しみに暮れた。

 

 そして修司は最後に、戦前に立っている者であるシバ・カァチェンへと襲撃する。

「あっ、あ……!」

 突如として修司が自分に襲い掛かってくる現状に、カァチェンは激しく戸惑いながらも修司の斬撃を逆刃薙(さかばなぎ)で受け止め続ける。

 修司の鬼気に、カァチェンはすっかり縮み込んでしまってた。

 そんなカァチェンに修司は

「カァチェン、かつての俺と同じ孤独に囚われた哀れな存在。お前の孤独も、そして虚無の希望も……俺が全てを消し去ってやる。もう無意味に夢や希望を追い求める必要はないんだ。もう、孤独に苦しむ事はないんだ」

「!!」

 修司からの唐突な優しい言葉に、カァチェンは一驚してしまう。

 だが次の瞬間、修司の振るった片太刀バサミでの強烈な一撃がカァチェンの腹部に直撃。カァチェンは背後の岩へと叩き付けられて、悶絶してしまう。

 そしてカァチェンは次第に意識が遠退いていった。

現実(いま)よ、未来(さき)よ……行かないでくれ……私は……お前たちが欲しかったんだ……!」

「カァチェンさん!」「カァチェン!!」

 意識を失うカァチェンを目撃し、琴浦春香や真鍋義久ら新世代型二次元人たちは酷く悲嘆してしまう。

 

 遂に全ての思いと絆を照らす明星、いや流星とも呼べる村田順一が戦死。

 その順一の第一の絆と称された深澤マイも死亡。

 そして遂に台湾将軍のシバ・カァチェンも……。

 

 純粋なる破滅である小田原修司によって墜とされた流星亡き後、戦況はどうなるのだろうか。

 

 

 

[剣士と銀の鴉と女神と悪魔]

 

 戦況は完全に小田原修司に有利な状況だった。

 最後の頼りだったスター・コマンドー総部隊長の村田順一も、そのパートナーである深澤マイも戦死し、シバ・カァチェンすらも修司に叩きのめされた。

 この最悪の戦況のみが無情にも存在する戦場に残されているのは、今に至るまでの戦いの多くを傍観に徹するしか出来なかった聖龍隊の新人たち、【SAO】組と【AW】組と【マギカ】組の面々だけ。

 一方、自分に挑んできた数多の武将達をも倒した修司は、最後に戦場に取り残された三組を見据えていた。

 修司に見据えられて、キリトやシルバー・クロウそして鹿目まどか達は修司の眼光に怯え切ってしまってた。

 

 遂に取り残されてしまった聖龍隊の新人たちを見据えて、修司は彼女達の命も奪おうと静かに歩み始めた。

『………………!』

 静かに歩み寄ってくる修司を前に、アスナやブラック・ロータス達はすっかり蒼褪めていた。

 そんな状況の中、キリトが何かを決意したかのような顔付きで一歩二歩と前へと歩み出る。

 戦前に出てきたキリトに気付き、修司は歩みを止める。

「キリト、くん……?」

 アスナが呆然としていると、キリトに続きシルバー・クロウも前へと出てキリトと肩を並べる。

「春雪くん!?」

 ブラック・ロータスが驚いていると、キリトとシルバー・クロウは肩を並べて今まさに向かってくる最大の脅威、小田原修司と対峙する。

「……此処からは、聖龍隊の新参者、このキリトと……」

「シルバー・クロウこと、有田春雪が行きます!」

 何かを強く決意した二人を前に、傍らにいたアスナとブラック・ロータスも同じく意を決めた。

「……私達も行くわ、キリト君!」

「春雪君、あなた達だけに前を行かせる訳にはいかないわ」

 すると二人も立ち上がり、それぞれキリトとシルバー・クロウの隣に並んだ。

「キリト、アスナ……!」「春雪、黒雪……」

 それぞれ強い決意の元、修司に立ち向かおうとする四人を前にしてクラインやシアン・パイル達は目を丸くする。

 だが、そんな四人を前にした修司は平然と四人に言う。

「威勢のよさは認めてやろう。……それだけだがな」

 修司は右手に片太刀バサミ、左手にショットガンを備えて四人に進撃に備える。

 と、四人が意を決して修司に挑もうとしているその時。

「待って!」と声が。

 その声の主は、【魔法少女まどかマギカ】の主人公鹿目まどかだった。

 まどかはいざ修司に挑もうとする四人に言い寄った。

「……私も……私も一緒に戦わせて!」

「!」「まどかちゃん……!」

 突然のまどか意思にキリトもアスナもその場の皆全員が驚かされた。

「私の力が加わっただけじゃ心許ないかもしれないけど……それでも、もう友達が死んでいくのを黙って見ているだけなんて嫌なの!!」

 もう仲間が、友が死んでいくのを傍観しているのは堪えられないと己の思いを吐き出すまどかの心情に、戦前に立つキリトやシルバー・クロウ達は表情を変えない。

 そして戦前にまどか自身も立とうと歩もうとした時、もう一人に魔法少女も声を上げた。

「待って、まどか!」「! ほむらちゃん……!?」

 声を上げた暁美ほむらにまどかが振り返ると、ほむらはまどかに冷静な素振りで言った。

「あなた一人だけ加わっただけで何とかなると思ってるの? 私とあなたは一心同体。一緒に戦うわよ」

「ほむらちゃん……!」

 ほむらの名乗りにまどかは心の底から歓喜した。

 

 そして戦前に立った六人は、後方で自分達を見守ってくれている仲間達の為にも修司に対して全身全霊で戦いを挑む。

 キリトは両手剣を二本携えた二刀流の構えで。

 シルバー・クロウは装着している鎧を完全体に変形させて。

 アスナはそんなキリトを、そしてブラック・ロータスはシルバー・クロウをサポートする体制に。

 そして鹿目まどかはドレスアップし【アルティメットまどか】へと変身。

 まどかに続き、暁美ほむらも変身。黒いドレスに身を包んだ【悪魔ほむら】へと。

 全身全霊で挑んでくる六人を目前にした修司は、まず

「なるほど、二刀流か。なら、俺も同じ土俵の上に立つとするか」

 と、左手のショットガンを消して右手と同じ片太刀バサミに持ち替えて、キリトと同じ二刀流の構えで戦闘態勢に入る。

 そしてそれぞれ究極と悪魔の姿に身を変えたまどかとほむらに対しては

「……懐かしいな。コレクターユイとコレクターハルナを思い出す」

 と、かつての同志を思い起こしていた。

 そんな修司に、完全な状態で戦闘態勢に突入した六人は一気に修司へと襲い掛かった。

 

「しかし……たった六人程度で死地に踏み込むとは……勇敢、いやお前達の場合は無謀だな」

 六人だけで戦おうとする彼女らに無謀だと突っぱねる修司に、キリトとシルバー・クロウが言い返した。

「死地であろうと、そこに道がある限り、どこまでも突き進む!!」

「それが聖龍隊で学び得た、戦士の道!!」

 激しく戦い合う六人に対して、修司の心の底から彼が過去に置いてきた「戦いへの関心」が朧気に浮き上がる。

「面白い……お前達が聖龍隊で何を学び得たのか、見てみるのもまた一興」

 この時、修司の心中には彼が忘れかけていた戦いへの執着心が思い起こされ、修司は心から六人との戦いを愉しみ始めた。

 地上戦でのキリトとの二刀流同士での激しい剣戟、シルバー・クロウの上空からの襲撃、そんな二人をバックアップするアスナとブラック・ロータスの立ち回り、そして周囲に無数のピンクの矢を展開して射出するアルティメットまどかの攻撃に修司は湧き上がった。

「素晴らしいな、お前らの戦い振りは。俺の中に眠ってた戦闘狂の自分が思い起こされる……!」

 自分の中に眠ってた戦闘狂な自分自身が覚醒するのを感じ取る修司。

 だが一時は修司と渡り合っていたキリト達だったが、全ての剣戟を受け止める修司の剣捌きに回避能力、そして数多の特殊能力を前に次第に息が上がっていく始末。

「お前達の様にデジタルのデータを用いて戦う輩は、コレクターズやデジモンの連中で既に戦法は会得済み。所詮、お前達はぬるい時代のぬるい世界で生きる、ただのぬるい戦士。剣も意志も、全てぬるい」

 自分に致命的な攻撃を与えられない六人に修司は、六人を生ぬるい戦いや意志を持つだけの生易しい戦士だと嘲る。

 一方のキリト達も、修司の剣捌きに驚異的な身体回復能力を前に愕然としていた。

(コイツ……俺達の攻撃を受けても平然と……)

(しかも即座に傷口やダメージが再生して、回復できてる……)

 キリトとシルバー・クロウは修司の再生能力を前に途方に暮れる。それは男子ばかりではなく、アスナやブラック・ロータス達も同感だった。

「お前達もバカではない。既に気付いているんだろう……?」

「くっ……」

「そんな生半可な攻撃では、俺に致命傷すら与えられないぞ。さあ……もっと踊って見せろ」

 修司は立ち止まっていた六人の許へ瞬間移動で距離を詰めて、そして一瞬の隙にアスナとブラック・ロータスを蹴り飛ばした。

「アスナ!」「ッ!」

 二人が蹴り飛ばされてキリトとシルバー・クロウはハッとするが、そんな二人にも修司は片太刀バサミを振るって、二人を斬撃で吹き飛ばす。

 そして最後に、上空で滞空していたアルティメットまどかに修司は跳び上がって斬りかかるが「まどか!」と悪魔ほむらがアルティメットまどかを庇った為に、二人そろって修司の斬撃で吹き飛ばされてしまう。

 修司の攻撃を浴びて満身創痍の六人に、修司は言った。

「さあ、もっと踊れ……もっともっと踊り狂え……!」

 戦いを乱舞の様に感じ取る修司の言動に、その圧倒的強者の貫禄に威圧感を覚えずにはいられない六人。

 

 だが諦める訳にはいかなかった。

 皆が望む未来を、明日を勝ち取るために。

 六人は立ち上がった。

 そしてキリトとシルバー・クロウは全エネルギーをシステムが破損する覚悟で解放した。

「全データ及びエネルギー解放! ……エラーだろうが壊れようが、もう関係ねえ!!」

 それを見たアスナとブラック・ロータスも同じく全エネルギーを解放。アルティメットまどかと悪魔ほむらも態勢を立て直す。

「なるほど……少しは意地を見せたか……」

 力を解放して再び挑んでくる六人に、修司は目付きを鋭くする。

 修司は二対の片太刀バサミを強く握ると、一気に六人に襲い掛かる。

 そして二刀流の片太刀バサミでの斬撃と蹴りでの打撃の二種類の攻撃を徹底的に六人に浴びせ続ける。

「この世界は腐敗し切ってる……! 夢も理想も、そして希望も抱くこと次第間違っているのだ!」

 修司が再びこの世界の真理を説いていると、それにアルティメットまどかが強く反論した。

「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私そんなのは違うって何度でもそう言い返せます! きっといつまでも言い張れます!!」

「笑止……! この混沌とした世界の実情を知った今だからこそ言えるのだよ……この世界はあまねく過ちだらけとな!!」

 アルティメットまどかの反論を制止した修司は、そのまま彼女を回し蹴りで蹴り飛ばして悶絶させてしまう。

「因果を越えて絶望を断つ希望、か……だが、俺の中にひしめく底なしの絶望までは断てないぞ」

 アルティメットまどかを蹴り飛ばした修司は、彼女にそう吐き捨てると背後から二人同時に襲い掛かってきたアスナとブラック・ロータスに鋭い眼光を送った直後、二人を片太刀バサミの一振りだけで吹き飛ばしてしまう。

「もう終わりか……」

 全く歯が立たずに意気消沈しかける六人が周囲に点在する中、修司は目を細める。

 そして修司は遠距離からキリトとシルバー・クロウに大地を駆ける斬撃「地走り」を打ち込んで攻撃した。

 修司が放った地走りは二人に直撃。かと思われたが……

「「大丈夫よ!」」

 なんと直撃する寸前、二人の許にアスナとブラック・ロータスが合流し、共に修司の斬撃を四人の攻撃で相殺したのだった。

 それでも修司に致命的な痛手を与えられない現状は変わらない。

「多少は踊れたようだが、俺には通じなかったな。さて……これからどうする? 流石にもう手も足も出ないか?」

『くっ……!』

 修司からの言葉に口元を歪ませる六人。

 そんな状況でも修司に対抗するキリトとシルバー・クロウに、アスナとブラック・ロータスが言った、。

「今の二人で手も足も出ないなら……」「次は、私達も加勢すればいいだけ」

 こうしてキリトはアスナと、シルバー・クロウはブラック・ロータスと共に二人二組の編成で修司に立ち向かう。

 修司はキリトとアスナからの剣戟を二対の片太刀バサミで受け止めつつ、シルバー・クロウとブラック・ロータスの攻撃を回避しながら瞬間移動で接近して反撃していく。

 決して有利とはいえない戦況の中、修司に応戦する六人は過去に現聖龍隊総長であるバーンズから伝え聞いた言葉を思い返していた。

 

(お前達も自分の道を信じて突き進めばいい! オレたち聖龍HEADが笑って見てられるくらいの強い戦士になれ!!)

 

 今は亡きバーンズから託された思いを未来へと繋げる為にも。六人は死に物狂いで修司と戦い抜く。

「俺達の背中を、最後まで見届けてくれ! それが俺たち聖龍隊の………………聖龍隊の意志を受け継いだ、次世代の英雄たる俺達の」

『遺すべき勇姿なのだから!!』

 キリト達は戦いを見守ってくれている参戦してない仲間、そして檻の中の新世代型二次元人たちに呼びかけながら修司へ進撃する。

「性懲りもなく……」

 そんな決して諦めずに戦い続ける六人を前に、修司は眉を吊り上げていた。

 すると修司と戦っていた六人の覇気が変わったのを修司は見逃さなかった。

「面白い!!」

 修司は六人の覚醒した力を感じ取り、威勢よく六人と熱い攻防を展開する。

(未来を守る! その為だけに!!)

 キリトとアスナ、そしてシルバー・クロウとブラック・ロータスの四人は修司に急接近して激しい接近戦を展開する。

「スターバースト・ストリーム!!」

 ここでキリトが必殺技を修司に炸裂。修司は直感でこの攻撃はマズイと察したのか、自身の闇の能力で自分の周りを黒い球体状の壁で覆って防御。

 しかし修司が防御技である「闇壁」で自分を覆い尽くしたのも束の間、キリトの連撃に加えてシルバー・クロウやアスナにブラック・ロータスの攻撃も修司に直撃していく。

(! 無力化できない!? そうか、俺の闇の能力は特殊能力を無力化できるが……身体能力や科学兵器までは無力化できない。コイツらの主な力はデジタルデータによる強化、俺の闇の能力の範囲外)

 次々に強烈な攻撃を当てて闇壁を破壊していくキリト達の猛攻を目前に、修司はキリト達の戦力が自身の特殊能力を無力化できる闇の能力の範囲外である事に気付く。

 そしてキリト達の攻撃が全て直撃し、闇壁が完全破壊されて修司が無防備に晒された時、キリトが最後の力を振り絞って二刀流の剣を修司に振るった。

「クッ!」

 修司はすかさず闇壁を再展開し、自身を防御しようとするが。

「ループ」

 なんと今まで直接的な戦いに参戦してなかった悪魔ほむらが呪文を唱えた拍子に、キリトたち四人の時間が巻き戻された。

「スターバースト・ストリーム!!」「ッ!!」

 時間が逆行した事で、再び必殺技を放つキリトの猛攻に修司は驚愕。そして案の定、闇壁は瞬く間に突破されて破壊された。

(時間を、巻き戻して繰り返させているのか。あの悪魔は……! 時空間を操る術が卓越してる……!!)

 闇壁を破壊されて猛攻を浴び続ける修司は、ここで悪魔ほむらの時空間を操作する術に驚かされる。

「貴方の闇の能力は、確かに魔力も無力化してしまうけど……でも、それは対象者が貴方であればの話! 魔術の対象者が貴方でなければ私の時空間操作もまだ使えるのよ!!」

 キリト達の空間をも捻じ曲げるほどの猛攻を浴び続ける修司に、悪魔ほむらが告げる。

 そして数多のキリトやシルバー・クロウ、そしてアスナにブラック・ロータスの攻撃を浴び続けた修司。だがやはり再生能力で回復してしまう。

「ククク……いいぞ、お前達。久々だよ、俺に戦いの楽しみを思い出させてくれたのは!」

 驚異的なキリト達の攻撃力に感化されて、修司は忘れていた戦闘の醍醐味を完全に思い出していた。

 そんな微動だにしない修司を前に、キリト達は次第に消耗しており肩で呼吸していた。

 疲れ切る六人を前に、修司は完全に戦いを愉しむ素振りで告げた。

「俺を追い詰めるのが先か、それともお前達の命が尽き果てるのが先か。どちらにしても、お前達にとってこれが最後の戦いになろうぞ!」

 これに対して悪魔ほむらが反論した。

「最後にはしない……! みんなで勝って帰るのよ……私たちの……いいえ、あなたの故郷でもあるアニメタウンに!!」

「いいだろう。その拳が、いや身体が振るえなくなるまで、存分に今の戦いを楽しもうではないか!!」

 悪魔ほむらからの反論を受けて、修司はキリトたち六人と激戦を繰り広げ続ける。

 

 その後もキリトとアスナ、シルバー・クロウにブラック・ロータス、そしてアルティメットまどかに悪魔ほむらからの怒涛の攻撃の嵐を受け続ける修司であったが、そんな修司に逆に圧倒されていく六人。

 しかし修司の方も、デジタルデータと思いの力だけで己の闇の能力をも凌駕するキリトやシルバー・クロウ達の実力に興奮していた。

「認めてやろう! データと思いの力だけで戦える輩の中で……お前達はコレクターズにも引けを取らない強さ。いや、並び立つ逸材だ!!」

 キリト組とシルバー・クロウ組の実力を認めた修司は、次にアルティメットまどかと悪魔ほむらにも称賛の言葉を賜る。

「決して諦めない思いに誰かを思う心、その力を此処まで引き出して戦えるとは……今の時代の魔法少女は此処まで進化していたというのか!!」

 アルティメットまどかと悪魔ほむらの実力をも評価しつつ、女神と悪魔の相反する二重の力を目の当たりにして胸の高まりが収まらない修司。

 キリトとアスナの凄まじい剣戟、シルバー・クロウとブラック・ロータスの嵐の如き連撃、アルティメットまどかと悪魔ほむらの怒涛の攻撃を浴び続けて修司は六人に言った。

「いいぞ……もっと踊れ……俺に戦いの楽しみを、興奮を思い出させてくれ」

 純粋なる破滅へと進化し、心という感情を捨て切っていた修司は、六人の攻撃の数々に魅了されていた。

「大した奴らだよ、お前らは。俺を此処まで追い詰めるとは……!」

 呼吸が乱れ、息が上がり始めた修司に、六人は一気に攻撃を決めて決着をつけようと修司に襲い掛かった。

 そんな一斉に攻撃してきた六人を前に、修司は半ば興奮しながら言い放った。

 

「この小田原修司、お前達を最強の二次元人と認めてやろう……!!」

 

 純粋なる破滅へと進化した自分を此処まで追い詰めた六人を、修司は最強だと認めた上で六人の攻撃を真正面から受け止めた。

 修司と六人の激突は凄まじい衝撃を放ち、眩い光を放って七人を包み込む。

 その眩いほどの光に、戦いを見守っていた生存メンバーと檻の中の二次元人達の視界は一時的に見えなくなった。

 

 果たして、勝敗は………………

 

 

 

[完全なる絶望]

 

 新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して「純粋なる破滅」へと進化した小田原修司。

 その修司を止めるべく、生存していた聖龍隊でも新規の隊士であるキリトやシルバー・クロウたち六人は壮絶な戦いを繰り広げる。

 怒涛の攻防が続いた末、遂に修司と六人は互いに激しくぶつかり合い、その衝撃で凄まじい光が発生して修司と六人を包み込む。

 キリトにアスナ、シルバー・クロウにブラック・ロータス、アルティメットまどかと悪魔ほむらの六人は修司相手に勝てたのであろうか。

 

 

 

 

 

 修司と六人の激突で生じた光が収まり、戦いを見守っていた他のメンバーと檻の中の二次元人達がそっと瞼を開いてみる。

 すると修司と六人が激突してた辺りは白煙が舞い上がり、七人の姿はすっかり見えなくなっていた。

「ど、どうしたんだ。決着は……」「みんなは、どうしたんだ……?」

 クラインにシアン・パイルは見えなくなった七人の現状を気にした。

「み、みんなは……まどかやほむら達は勝ったのか!?」

「お兄ちゃん、アスナさん……」

 佐倉杏子もリーファも六人の安否を非常に心配した。

 すると次第に白煙が消え出し、少しずつ戦況が視認できるようになった。

 そして白煙の中から薄らと人影が見え始めたのだった。

「あ……!」「誰? 春雪? それとも……」

 白煙の中から見えてきた人影に、仲間なのかと信じたい心中のシリカに百江なぎさ達は必死に目を凝らす。

 

 

 

 

 

 だが、白煙の中から現れたのは希望………………ではなかった。

「!! そ、そんな……!」「ウソでしょ、こんなのって……!」

 現れた人影が誰なのかを視認した瞬間、ライム・ベルに美樹さやか達は衝撃を受けた。

 白煙の中から現れたのは、すっかり自己回復能力で完全に身体を完治させていた小田原修司であった。

 地面に突っ立っている修司を見て衝撃を受ける皆々だったが、それ以上に皆を絶望させたのは修司の足元に転がっていた者たちの姿だった。

 突っ立っている修司の足元に転がっていたのは、動かなくなったキリトにアスナ、シルバー・クロウにブラック・ロータス、そして元の魔法少女の衣装に戻っている鹿目まどかと暁美ほむらだった。

「ウソだろ……! キリト……!!」

「まどかちゃん、ほむらちゃん……!」

「まさか……! あの六人がやられちまったって言うのかよ……!!」

 修司の足元に転がる六人を直視し、クラインに巴まみ、そしてエギル達は蒼褪めた。

 すると修司は自身の前に転がるキリトの亡骸を足で軽く蹴飛ばし、転がすと茫然自失の面々に言うのだった。

「いやはや、参ったよ。まさか今の世代の連中が此処まで戦えるとはな……これがいわゆるチートって奴か。だが、最終的には俺が最も積み重ねてきた経験という実績がモノを言った」

 キリトの亡骸を蹴飛ばして転がした修司は更に告げる。

「実力は五分五分でも、経験という僅かな差が……俺とこいつ等の間を埋められない絶望的な差へと変わった訳だ」

 修司は自身の周りにキリトやアスナ、シルバー・クロウにブラック・ロータス、まどかやほむらの亡骸が在っても淡々としていた。

「ッ……ッ…………!」

 仲間であるキリト達の戦死に恐怖と絶望で目の前が真っ暗になるクライン達。

 絶望に叩き落された面々だったが、そんな一同に修司は容赦しなかった。

「いよいよ最後だ……滅せよ! 哀しき業を背負いし二次元人よ!」

 修司はその空虚な瞳を見開くと、一気に最後の生き残りであるクラインやシアン・パイル達に襲い掛かる。

「地走り!!」

 絶望に打ちひしがれる面々に、修司は無慈悲な斬撃を連続で三回放った。

「きゃあっ!」「うわっ!」

 修司が放った地走りを受けて各々が吹き飛ばされてしまう女子に男子たち。

 すると各々が吹き飛んだのを目視した修司は瞬間移動で距離を詰めて迫る。

「!?」

 目の前に修司が忽然と居る事に激しく戸惑う巴マミ/美樹さやか/佐倉杏子たち。

 すると修司は何の前触れもなく右手の片太刀バサミを一振り真横に振り払い、目の前の巴マミの首を断頭したのだった。

 修司に首を切断され、地面に頭部が転がるマミの切断面から大量の出血が噴水の様に噴き出す様を目撃して、さやかと杏子は蒼然とした。

「「!!」」

 最早二人とも恐怖で言葉も出せずに涙目だった。

 そんな二人にも修司は情け容赦なく今度は左手のショットガンを連射して、さやかと杏子の体中を銃弾で穴だらけにして惨殺する。

 すると修司が二人を射殺した直後、背後から修司に迫る巨大な影が。

 修司が振り返ると、そこにはシャルロッテに変身した百江なぎさが修司を見下ろしていた。

 シャルロッテは修司を喰らおうと大きな口を開いて、修司を捕食しようとした。

 が、修司は怯える事もなくシャルロッテの開口に闇のエネルギーをチャージした銃撃を撃ち込む。するとシャルロッテの体内で大爆発が起きてしまう。

 体内で大爆発を起こされたシャルロッテは元の百江なぎさの姿に戻り、そのまま地面へと落下して動かなくなってしまう。

「も、もうお終いなのかよ、俺たち……」

 魔法少女たちが悉く返り討ちに遭い、戦死していく様を目の当たりにしてクラインは涙目で怯え切っていた。

 すると「まだだ! 春雪が……みんなの頑張りを無駄にしない為にも抗い続けないと!!」と、シアン・パイルこと黛拓夢が武器を構えて最後まで修司に抗う姿勢を示す。

 シアン・パイルに続き、エギルことアンドリュー・ギルバード・ミルズも武器を構えて諦めない意志を示した。

「そうだ。キリトやアスナ……そして多くの仲間達の死が、それこそ意味が無くなっちまう!!」

 と、このエギルの発言に修司が反論した。

「それは違うな。そもそも……死に元から意味などない」

 そう言った瞬間、修司は高速移動で一瞬の内に間合いを詰めて抗いを続けるシアン・パイルとエギルの許へと接近。

 次の瞬間、修司は右手の片太刀バサミを巨大化させて、それを両手で扱うと回転斬りを繰り出し、シアン・パイルとエギルの二人を回転斬りで一刀両断してしまう。

「エギル!!」「シアン……!」

 二人が同時に片付けられてしまい、クラインもライム・ベルも愕然とする。

「まだ行くぞ……!!」

 次に修司は大きさを元に戻した片太刀バサミに電撃を纏わせて、攻撃力と切断力を増大させて攻撃してきた。

「「ッ!!」」

 そして修司はシリカとリズベットを同時に斬り捨ててしまう。

「嫌だ……もういやっ!」

 次々と仲間達が死んでいく惨状に、リーファが大粒の涙を流しながら困惑する中、修司は電撃を纏った片太刀バサミを彼女の方へと振り翳すと、片太刀バサミから強大な電撃が放たれてリーファに直撃。彼女は黒焦げになって死んでしまう。

「やめてくれ……やめてくれッ!!」

 クラインが恐怖で引き攣った真っ青な顔で嘆願するものの、修司は無表情でそんなクラインをも斬り捨てた。

「さあ……最後は、お前達だけだな」「「……!!」」

 修司は遂に戦闘員では最後の生き残りとなってしまったライム・ベルとスカーレット・レインの二人を見据える。それに対して二人は今の状況に絶望しか抱けなかった。

「長かった、本当に長かったぞ。此処まで来るとはな……色々と長くなってしまったが、これで本当に全ての物語が、悲劇が終わる……これで、真っ白な桃源郷が創れる」

 修司は今までの戦闘全てを思い起こして、余韻に浸っていた。

 そして余韻に浸った修司は、高速移動で二人の真横を素早く通り過ぎると同時に、目にも止まらぬ太刀筋で片太刀バサミを振るって二人を仕留めた。

 

「……あ…………あぁ………………」

 遂に最終的に生き残ってたSAOにAWそしてマギカ組の面々までも戦死したのを目撃し、檻の中の二次元人たちは絶望のドン底に叩き落された。

 

 

 

 この戦いが、多くの命が消え果てた戦いの発端は、すべて小田原修司のクローンである自分たち新世代型二次元人の存在。

 全ての元凶である新世代型二次元人の希望は、そして生きる意思は、完全に消え果ようとしていた。

 

 

 

[死別しても尚……]

 

 小田原修司が遂に全ての聖龍隊・国連軍・悪党たちを一掃して戦場を不気味なまでの静寂に至らしめた。

 この結果を今まで檻の中で見続けてきて、新世代型二次元人たちは完全に意気消沈していた。

 

 するとその時だった。

 自分たち新世代型二次元人に巻き込まれた形で同じ檻の中に捕らわれていた別種の二次元人たちの様子に変化が。

「うっ……うぅ……」「ちょ、チョコちゃん!?」

「ああ……ち、力が抜けていく……」「ジンさん、しっかり!」

「ど、どうなってやがる……ッ!」「バギー、あんたもか……!」

「なにがどうなっている!?」

 突然様子が一変していくプロト世代の黒鳥千代子/ギュービッド/桃花・ブロッサム達を前に戸惑う琴浦春香。力が抜けていく感覚に襲われる海道ジンを瀬名アラタが看ると、続け様に旧世代の二次元人であるバギーまでも苦しみ出して真鍋義久は驚く。

 猿田学が突然の事態に困惑していると、修司が落ち着いた様子で説明し出した。

「驚くことはないぞ、我が子たちよ。俺たち忌まわしき血を引いてない他の二次元人が遂に完全に、その身にもアッコが死んだ影響が出てきただけだ。ぞいつ等はやがて完全に眠りに就く、永遠にな……!」

「そ、そんな……!!」

 自分たち小田原修司の血を引いていない二次元人が完全に死滅するのだと説かれて、琴浦春香は涙目で激情。

 

 すると次第に弱々しくなり、琴浦春香の膝に頭を置かせてもらっている黒鳥千代子ことチョコが弱々しい声で話し掛けてきた。

「こ、琴浦さん……」

「チョコちゃん、しっかり……!」

「私、嬉しかったよ……琴浦さん達と友達になれて……」

「死なないで! チョコちゃん……!」

「……あの日、人間に化けた悪魔に連れて行かれそうになって……そこに琴浦さん達が助けに来てくれて……そこから、私達の物語は始まったんだよね……」

「チョコ、ちゃん……!!」

「もう私、プロトとか新世代型とか関係なく……琴浦さん達と、仲良くなれて……本当に良かった。現政奉還っていう混乱の中でも、みんなと歩んできた道は、思い出は……決して、忘れたくない記憶そのもの……」

「チョコちゃん……っ」

 延々と昔の思い出を、現政奉還が起きてから皆と一緒に過ごしてきた思い出を語るチョコの言葉に琴浦春香は涙で視界がぼやけていた。

 そして最後にチョコは琴浦春香たち今まで一緒に過ごしてきた新世代型二次元人たちに述べた。

「また、行きたかったね……琴浦さん達と、あのアニメタウンのTAKOCAFEで……みんな笑顔で、楽しく過ごしたかっ……た………………」

「……チョコちゃん? チョコちゃん!!」

 現政奉還が始まる直前、アニメタウンでの日々を思い返して事切れるチョコに、琴浦春香は強く呼びかけた。

 死別しても尚、自分たち新世代型二次元人との出逢いと友情を心から真摯に受け止めていたチョコの死に、琴浦春香だけでなく多くの新世代型二次元人たちが涙した。

 

 チョコに続いて、他の新世代型ではない二次元人たちの命も消えようとしていた。

「これが、死ぬって、感覚……なん、だ…………」

「桃花ちゃん!」

 安らかに死んでいく感覚に、淡い安らぎを覚えつつ死んでいく桃花・ブロッサムを目視して棗鈴は呼びかけるものの返事はなかった。

 

「ま、真鍋……あんた達は……生き、ろ………………」

「ギュービッド……ッ!!」

 常に喧嘩ばかりしていながらも、確かな友情があったギュービッドの死を直面して真鍋義久は大粒の涙を流す。

 

「アラタ、みんな……こんな所でお別れしてしまう僕を……許して、おくれ……」

「ジンさーーん……!!」

 静かに息を引き取る海道ジンを看取って、瀬名アラタたちは泣きじゃくった。

 

「お、お前たち新世代型が生まれたばかりに……お、おれまで巻き添え、に……」

「バギー……」

 バギーは最後の最後まで現政奉還の元凶になった新世代型二次元人への恨みつらみを吐きながら死んでいった。

 

 

 

 

 

 

 遂にこの真っ白になった世界に取り残されたのは、小田原修司以外に自分たち新世代型二次元人だけとなってしまった。

 言い知れぬ悲しみと絶望に苛まれ、襲われ、数多の命が死別した現状に涙するしかない新世代型二次元人たちに、修司はテレポーテーションで檻の目前まで近寄ると、檻の中の新世代型二次元人たちに冷たい言葉を浴びせた。

「血塗られた業……まさしく鬼、全てを喰い尽し破壊し、滅ぼさねば気が済まぬ醜き鬼の血筋」

 新世代型二次元人を鬼である自分と同じ血筋を受け継いだ子供として捉える修司の言葉は、新世代型二次元人の心に深く突き刺さる。

「お前達の禍々しき血筋は、いづれその手に触れた尊きもの全てを粉々に握り潰す罪深い血筋」

『……………………………………………………………………………………』

「……それが、鬼の背負いし業よ」

『……………………………………………………………………………………』

「愛する者も憎む者も、全てを喰らい尽くす鬼の業……俺達は、世界でただ一つしか持ちえない忌々しき血を体の中で脈々と受け継いだ種族なのだ」

 修司の一言一言に胸が抉られる思いの新世代型二次元人たちは、ただただ絶望の涙を目から零すばかり。

 そんな絶望の涙を流し続ける新世代型達を前に、修司は絶えること無く延々と語り続ける。

「喚け、嘆け……それがお前達の、そして俺の罪だ」

『……………………………………………………………………………………』

「お前達の嘆きの涙が……絶望が、俺の中にも伝わってくるのが分かる。その嘆きの涙を流すのが、俺たち破滅の血族が流す最後の涙……」

『……………………………………………………………………………………』

「俺も、お前達も………………結局は、破壊と殺戮を繰り返すだけの可能性しか、持ち合わせていない」

『……………………………………………………………………………………』

「大丈夫。お前達に生きるという贖罪を与えるほど、俺も愚かじゃない……この場でお前達の首を刎ね、そして帝を倒した後は……俺もお前達の方へ向かう。そう……地獄にな」

 修司はそう新世代型二次元人たちに語り終えると、静かに右手の片太刀バサミを構えて檻ごと中の新世代型二次元人たちの首を切断しようと身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 修司が今まさに新世代型二次元人たちの命を絶とうとしていた矢先、戦場に倒れている一人の青年が生死の境を彷徨っていた。

 

(此処は何処だ? 一体いつだ? 未来(さき)か? 現実(いま)か? ……過去(かつて)なのか……)

 

 

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