聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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※このシリーズは架空戦記の物語であり、実在の人物とは関係ないフィクションであります。

※私自身もっと作品の出来を良くしたい一心が抑えきれません。そこで、どなたか心優しい方からのコメントや感想など募集しております。

※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。

※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。

※多くの版権キャラが死亡するという過激な描写が目立つストーリーでしたが、今回ついにその大どんでん返し&ハッピーエンドです!



現政奉還記 破滅の章17 小田原修司の真実

[臨死の境で見えたもの……]

 

 遂にシバ・カァチェンとミラーガールの共闘で小田原修司を追い詰め、それと同時に数多の命を甦らせた一同。

 だが、最終的にシバ・カァチェンとの殴り合いの末の決闘で敗北した小田原修司は、既に全生命力を使い果たし、命の灯が潰えようとしていた。

 そんな修司に見限られ、自由だけは与えまいと闇の能力で作られた檻の中に永久に閉じ込められてしまう新世代型二次元人たち。

 一同は二次元界でもトップクラスのテレパシー使い、現聖龍隊総長のバーンズからの提案で臨死状態の修司の潜在意識に飛び込み、直接修司に呼び掛けて現世に戻そうと画策。

 そしてバーンズ/琴浦春香/斉木楠雄の三名のテレパシーによって、一同の意識は臨死状態の修司の潜在意識へと潜入。

 果たして、小田原修司の命運や如何に。

 

 

 

 臨死状態の修司の潜在意識に潜入した一同。

 臨死状態の修司は、かつての自分の行いの数々、いや体験を思い返していた。

 

 聖龍隊を結成して間もなく起こった次元を崩壊させるほどの大戦、その中で自分達が物語の中の存在だと知って愕然とする二次元人たちに、その事実を突き付けた修司の負の感情が具現化した存在・闇人との決戦。

 大戦後、修司と和解いや何事も無く共に過ごしてくれる二次元人たちに対して、修司は決意を新たに、アニメタウンを第二の故郷と決めて二次元人たちの未来の為に我が身を捧げようと決心した。

 そして修司は聖龍隊という組織を確固たる強固な組織にする為、単身アメリカに。そこで修司は軍に入隊して米軍の組織体制を学び、同時に様々な武術や武器の使用を学んだ。

 だが修司は「エリア・88」にも匹敵する秘密基地「0エリア」にて最強の肉体強化薬「D-ワクチン」の投与実験に志願。昔より力を渇望してた修司は迷う事無くD-ワクチンの投薬実験を進んで接種。そして修司は筋肉強化に成功するが、同時に理性を失った怪物へと変貌する様に。

 困惑した修司と軍は、一時的に0エリアでも特殊な施設に修司を入所させ、そこでDrヴァルツという科学者に一任させる。ヴァルツは修司の精神を改造しようと、催眠暗示で修司を冷酷無慈悲な対二次元人用兵器、通称:メシアへと作り変えてしまう。が、メシアへと変えられた修司は最終的に暴走し、0エリアを壊滅させてしまう。後にこの時の記憶はヴァルツによって潜在意識に深く封印された。

 そうして修司は米軍で様々な体験を得ながら、同時にある組織にも加盟していた。その名もフリーメイソン。一時期、フリーメイソンのメンバーに加盟していた小田原修司は、フリーメイソンが保管していた歴史的物証ともいえる歴史の真実を証明する多くの物証を持ち出し、それをコレクション・シークレットとして蒐集し世界情勢を裏で動かすほど暗躍し続ける事に。だが、これも全て大切な二次元人たちの人権保有の為だった。

 

 コレクションズ・シークレット(収集されし機密事項)

 小田原修司が特定のルートで入手した世界中の国家機関の機密情報。

 ロズウェル事件、ケネディ暗殺、ウォーターゲート事件、ダイアナ元英国王妃事故死の真相など。更に日本では三億円強奪事件、坂本龍馬暗殺事件の真相も含まれていた。

 これによりアメリカ・ロシア・イギリスなどの大国の援助や補助を受けつつ、それぞれの国家の機密を保持すると密約していた。

 ダイアナ元英国王妃死の真相は。英国王室の人間が関与しており、ダイアナが信じていた人物も関与。しかし首謀者は王室の人間ではなく、ダイアナとドディ・アルファイドの結婚を望んでいなかった人物。府の更に上の人間達がダイアナ事故死を含む多くの国家機密に深く関与していた。

 

 そして修司はアメリカから軍の体制と戦闘技術を学び、更にD-ワクチンでの肉体強化に催眠暗示までも取得。そして世界からは、多くの有力者達が己の死よりも恐れる秘密を手に入れ、アニメタウンに帰還。

 修司はアニメタウンに帰国後、聖龍隊の組織を徹底的に造り直し、同時にコレクションズ・シークレットで世界中の有力者たちを半ば脅迫する形で世界中の法案を作り直させると同時に、二次元人の人権を確固たるものに固めた。

 しかし如何にアニメタウンの市長にして聖龍隊総長、そして世界中を従えさせる秘密を所有していても、修司の権限には限界があった。

「……と、言う訳だ。危険極まりない異常者(ヒール)に変貌しかねないアニメタウン在住の危険人物……すなわちDQNだ。そいつ等を全員、処分してもらいたい」

 ある日、三次元政府から他人に危害を加え続けるDQNなどの人物達を異常者(ヒール)に変化する前に殺処分するよう勅令が修司に降った。

「だが……あいつらは凶悪な犯罪者でもなければ危険思想のテロリストでもない。処分するのは些か度が過ぎている様な気もするが……」

 修司が反論すると、政府側の人間は睨みを利かせて修司に言う。

「それでもだ。奴らは自分の都合しか考えず他人に危害を加え続ける低能な輩だ。もはや異常者(ヒール)予備軍と言っても過言ではない。早急に始末する様に……」

「だ、だが……」

 修司が躊躇っていると、政府側は強い口調で告げた。

「解ってないようだね……! 奴らはいつ三次元人にも危害を加えるか分からない連中……! そんな連中を野放しにしておく訳にはいかんのだよ!」

「………………」

 遂に修司が黙り込むと、政府はこう修司に付け足した。

「君が如何にコレクションズ・シークレットを所持し、世界中の有力者や国家組織を手懐ける力を持っていようと、それとこれとは別の問題だ。第一に……発達障害者如きが自由に二次元人を取り締まれるだけでも有難いと思い給え」

「!」

 自身の発達障害の事を持ち出されて、修司は何も言い返す事ができなくなってしまう。

 

 そして修司はアニメタウンの一角にDQN達を無理やり移住させ、それからある晩に行動を開始した。

「うわーーッ!」「きゃーーっ!」

 夜中に響き渡る数多くの断末魔。漆黒の闇の中で行われてたのは、処分という名目の殺戮だった。

「た、助けてくれッ。もう他人に迷惑はかけないから……ギャアッ!」

「お願い……! 助けて……きゃあっ!」

 DQN達の懇願も空しく、次々と殺害されていくDQNたち。

 そしてDQN達を手にかけ、殺めているのは、他でもない小田原修司本人だった。

 修司は二次元人の人権を守る為、そして何よりもアニメタウンが清く正しい国だと証明する為にも、アニメタウンに相応しくない人種であるDQN達を一掃していく。

 そして全てのDQN達を始末し、殺戮した後、修司は血の惨劇を見渡して人しれず一滴の涙を流して、後世に生きる二次元人たちに思いを馳せた。

「生きろ。生き抜け。頼む………………。俺が残してゆく現実を、どうか生き抜いてくれ………………!」

 この時の小田原修司。若干14歳だったという。

 

 異常者(ヒール)を無慈悲に殺傷できる小田原修司は、その後も独断や三次元政府の命令で多くの命を殺める。

 しかし、本当の小田原修司はHSPやエンパスといった感受性の高い、それこそ他人の悲しみや苦痛が人一倍理解できる人間性を持っていた為、修司の苦悩や苦痛は計り知れなかった。

 それでも修司は、自分を救ってくれた二次元人の為に戦い続け、殺し続け、時には収集したコレクションズ・シークレットを用いたりなどして情勢を安定させてた。

 9・11が起きた後から、世界中の悪人を合法的に処分で消せる異常者(ヒール)排除法を国際法に倒置させ、危険かつ陰湿な悪人や異常者(ヒール)を排除しつつ、彼らが持つ財産を没収して国の財源にして国家の上層部を上手く手懐けるという手腕も見せた。

 しかし、いくら異常者(ヒール)を殺し続けても先の見えない理想の為に奮闘する修司は確実に心が擦り減っていた。

 心が消耗する中、そんな修司を支えてくれたのがアッコたち二次元人の存在だった。

 

 それから小田原修司は幾度の葛藤や戦いを乗り越え、ようやくバーンズやアッコたち二次元人に全てを任せられると踏んだ。

 修司は昔から自分を支えてくれたアッコに対して、やっと自分の思いをサファイアの指輪を彼女に渡して成就できた。

 

 だが、小田原修司はアニメタウンを旅立った後に、ようやく信じられる様になった世界に裏切られる事となる。

「どういう事だ!?」

 修司が怒鳴り散らしていたのは、ある科学者にだった。そんな二人の傍らのデスクには新世代型二次元人の詳細な情報が記された書類が。

「わ、我々は、君の高い身体能力、そして潜在能力を研究したいだけだ。その為に、君の遺伝子をモデルに今までとは全く異なる二次元人を誕生させているだけだ……!」

「だが、解ってるだろ……! 軌道エレベーターの管理官ルミネ一派の反乱を……! またアイツ等みたいに反乱を、争いを起こす二次元人が現れる可能性があるんだぞ!!」

 鬼の形相で怒鳴る修司に対し、科学者は知的好奇心を抑え切れずに喋り出してしまった。

「D-ワクチン、ヴァルツの催眠暗示、そして闇の能力……此処まで素晴らしい要素を持っているのに研究しない訳にはいかないだろう?」

「……!」

「そ、それにだ。仮にまた異常者(ヒール)化してしまう輩が現れたとしても、その時もその時で新世代型全員、処分してしまえば済む話じゃないか」

「!!」

 この科学者の発言に我慢の限界に達した修司は、手刀で科学者を惨殺してしまう。

 そして科学者を殺めた修司は、デスク上の処分されたルミネ一派ら初期の新世代型以降に生み出された新たな新世代型二次元人の書類に目を通す。

 多くの新世代型二次元人を見通しながら、修司は考えた。破壊の遺伝子と破滅を誘う意志を持つ自分のクローンを世界に野放しにすれば、いづれ世界そのものを滅ぼしかねないと。

 そう自分のクローンである新世代型二次元人に多大なる危惧を抱いた修司は、最後の書類に載ってた国連総長を任せられるという新世代型二次元人「足正義輝」を凝視した。

 

 全ての新世代型二次元人の頂に君臨する足正義輝の存在を野放しにしてはならないと踏んだ修司は、信じてた世界に裏切れた失望感に苛まれたまま、足正義輝の許へと訪れた。

「ほう、これはこれは。予を始めとする数多の新世代型二次元人その始祖に当たる鬼神・小田原修司ではないか! どうした? その虚無の如き輝きを失った瞳は」

 頂点に立つ足正義輝の前へ立った小田原修司は、既に生気を失っていた。

 そんな状態で修司は全戦闘力を出し切って足正義輝に勝負を挑み、義輝の首を狙った。

 だが結果は……修司の完全敗北で終わった。

 一方の将軍は、打ち負かされて満身創痍で横たわる修司に話し掛ける。

「……闇の朋よ、そうして寝てばかりで良いのか? 其之方が危惧している通り、吾ら新世代型二次元人の中には危険な思想を持つ者も少なくない」

「………………」

「予は其之方ら聖龍隊が築いた平穏なる世に些か疑問がある。人々は平和という安寧に入り浸り、熱気を持って次代を、いや夢を持つ事をしない。この現状に危機を感じないか? 朋よ」

「………………………………」

「……そこでだ、予に一つ考えがある。予の考えに協力してくれるな、闇の朋よ」

 足正義輝に言われるがままに、敗北した修司は虚無の心持のまま彼の考えに協力した。

 

 足正義輝にされるがまま、修司は自ら全身を黒い甲冑に兜、そして黒地の仮面を顔に被り、「黒武士」と相成った。

 

 そして足正義輝は、訪れた平和と均衡に多大な憤りを感じながら黒武士に物申した。

「…………この訪れし平和、そして齎された均衡に何を感じる? 朋よ」

「……………………………………………………………………………………」

 しかし義輝が黒武士に話しかけるも、黒武士は全てに絶望した状態で無言で聞き入れるのみ。

「永に続く太平なる世、訪れし平和と齎された均衡に喜びつつも無垢に浸り続ける人々……その果てに迫りくる世は、如何なる次代か」

「…………………………………………」

「……もはや悠長な事を言うてる場合ではないか。よし、我々も行動に移すとするか、朋よ!」

「…………………………」

 全てに絶望し、心を閉ざした修司こと黒武士を前に、義輝は「現政奉還」を発起したのだ。

 

 義輝が現政奉還を起こしてから。黒武士に姿を変えた修司も虚無のままに行動した。

 世界中で荒れ狂う異常者(ヒール)を片っ端から血祭りにあげ、また国連総長である足正義輝の命のままに暗躍したり。

 義輝以外のアニメタウンに在住する新世代型二次元人が拉致され、タイの地下研究所に連れて行かれた時も黙って見過ごし。

 バイオハザードが起こったタイから命辛々逃げおおせた新世代型が流れ流れて国連軍本部に連行されていき、そこで地獄の様な戦場を体感しても何も響かず。

 それから聖龍隊と同伴してアジアを中心に世界各地に訪れて名立たる武将達との出逢いを得て成長しても新世代型の存在を許せず。

 そしてジャッジ・ザ・シティで新世党と名乗る新世代型の異常者(ヒール)達が惨劇をただ黙って見過ごし。

 宇宙では全ての黒幕だったドレフ将校の暗躍も黙って見届けるだけ。

 最後には、完全に新世代型二次元人たちの存在を受け入れられず、足正義輝の権威を利用して己が「純粋なる破滅」へと進化して、全ての命を静寂な桃源郷へと誘う為の大戦を引き起こした修司。

 

 

 

[心の穴を埋めるもの①]

 

 そんな修司の壮絶な過去の一部始終を知った一同は。

 ようやく修司の潜在意識の奥の奥、そう臨死状態の精神まで潜入した。

 そこは見渡す限り真っ白で、足元は水面の様に歩くと波紋が広がる、なんとも神秘的な場所だった。

「! あれは……!」

 そんな修司の精神世界でミラーガール達が見付けたのは、今まさにあの世へと歩き出そうとしている「純粋なる破滅」姿の修司だった。

「修司!」

 ミラーガールはカァチェンと共に誰よりも先頭に立って修司を呼び止める。

 呼び止められた修司もまた、その声に気付いて後ろへと振り返ると、目の前にはミラーガールとカァチェンそして二人の背後には数多の連合軍の猛者たちの姿があった。

「! ………………」

 一瞬驚いた表情を浮かべた修司だったが、すぐに無愛想な顔付へと変えては自分の精神世界に潜入してきた一同を見据えた。

 そして大勢の共に戦った猛者たち、檻の中に終始閉じ込められてた新世代型を始めとする二次元人たちの前を、カァチェンとミラーガールが歩み出て修司の目前まで歩み寄る。

「修司殿」「!」

 目前まで歩み寄ったカァチェンは第一声に修司に問い掛けた。

「貴方は私に、自分と同じで欠けた心を……欠陥品の心を持つ存在だと、申しましたね」

 カァチェンの問いかけに黙然とする修司に、カァチェンは問い掛け続ける。

「覚えている筈です。でも本当は私と同じで……未来(さき)を誰よりも夢見ていたんですよね……」

 そうカァチェンに問われた修司は、表情を曇らせてカァチェンに言い切る様に返答した。

「そんなもの……捨てきった過去と、甘ったるい理想を思い描いてしまった弱い自分だ……!」

「黒武士の面をしてた時からずっと、自分を隠してはダメです」

 修司を睨み付けながらカァチェンは、修司に言い切った。

「どんなに言葉でごまかしても……貴方が、小田原修司である事実は変えられないんです」

「今更その名に何の意味がある……俺はもう人を捨てた、純粋なる破滅……世界の、人々の為に己の血筋を絶やす者……産まれ付き、欠けた心を持つ……欠陥品に過ぎない」

 この期に及んで自らを欠けた心を持つ欠陥品だと唱える修司に、カァチェンは淡々と説き続ける。

「違います。貴方は小田原修司です。私とそっくりな……小田原修司です」

 カァチェンも今では、修司と自分自身が瓜二つな境遇であった事を踏まえて説き続けた。

「産まれ付き他人の愛情を感じにくく、時に人との繋がりを重く苦しく感じてしまう事もありますが……それ故に孤独に囚われ、孤独を知っている事も……」

 誰よりも孤独に囚われ、誰よりも孤独を知っている故の苦しみを説くカァチェン。

「だから、色んな人に認めてもらいたい一心で、貴方は二次元人たちと世界を……いいえ、自分を変えようと奮闘してきた……! それも同じです!」

 認めてもらいたい一心で多くを変えようと奮闘してきた修司の葛藤は、聖龍HEADに出会った時からのカァチェンと同じであった。

「それなのに……! 貴方の今を見てください! 自分を変えたい、世界を変えたいと夢見ていた貴方が、それとは真逆の存在に成り果ててしまった!」

 そして夢や理想を追い求めて叶えようとしていた修司と、今の修司は真逆の存在に成り果ててしまったと嘆くカァチェンに、修司は重苦しい表情で言い切った。

「……いや。俺のやっている事は、聖龍隊にいた頃と何ら変わりない。それ以上だ……この身を犠牲にし、新世代型を封印し、それで平和を実現できるのだからな……」

「修司殿……本気で言っているのですか……?」

「……そうだ。そう思っている……」

 多くの争いの元凶になりかねない自分や新世代型二次元人たちを現世から別離する事で平和を実現できると言い切る修司に問い詰めるカァチェンに、修司は語り始める。

「理想への道のりすら不鮮明であやふやで、わざわざ険しい道だと分かっていて歩くことはない。大勢の罪なき命の亡骸を跨ぐだけだ」

 夢や理想を叶える道行きが不鮮明で不確かなものなら、そんな道を進む事は、大勢の罪なき者の亡骸を跨ぎ踏み越える行為だと説く修司。

「ハッキリした道のりも分からないなら、確かな道を選ぶのが普通だ」

 そんな不鮮明な道行きを進むよりも、道のりのが確実で明確な道を選ぶのが常道だと修司が説くと、カァチェンは強く反論した。

「何言ってるんですか……! 私が知りたいのは確かな道のりではありません……道なき道を進む覚悟です」

「その二つの道の行き付く先が同じだとしても……そう言えるのか?」

 修司が問い返すと、カァチェンは真摯な面差しで修司に強く唱える。

「不確かな険しい道のりを突き進むのが間違いだと、最初に誰が教えてくれたんですか? 結局誰かが、その道を歩かなければ分からない事じゃないですか!」

 更にカァチェンは修司に強く説き返す。

「私は聖龍隊の……二次元人の方々と一緒にいて学びました。本当に大勢を導く者は、痛いのを我慢して……忍耐強く皆の前を歩いている者なんです。だから、誰かの亡骸を跨ぐような事は決してないんです!」

 そう言うとカァチェンは黙り込む修司に言い寄った。

「本当の先導者になる方に近道なんてありませんし、逃げ道だってないんです! そうでしょ!?」

 カァチェンの勢いに押されてか、何も言い返すことができなくなってしまった修司に、カァチェンは正論をぶつけた。

「修司殿、今貴方が歩いている道は逃げているだけの道です」

 カァチェンは今まで以上に真剣な眼差しで修司に訴えかける。

「だから! 皆を巻き込んで、貴方の道をこのまま突き進むのは許される事ではないんです!」

 するとカァチェンは手を差し伸べて修司に言った。

「こっちの道に戻って、小田原修司として、聖龍隊の友として、新世代型の始祖として、しっかりと罪を償ってください!」

「違う。俺は小田原修司を捨てた……。俺は――――」

「もう自分を隠したり、偽ったりするのはやめてください!」

「!」

「貴方は貴方です。逃げないでください! こっちに戻ってきてください!」

「っ……!?」

 カァチェンの熱い一言一言に修司は激しく戸惑い始めた。

(俺が……この俺が……後悔しているというのか……!?)

 修司は此処で自分の胸中で、自らが後悔の念を感じている事に気付かされる。

 

 と、そんな時だった。

「……逃げないで……!」「!」

 突然戸惑い始める修司掛けられた声に、修司はハッとする。

 修司が顔を上げると、修司の視線の先には目に涙を溜めたミラーガールが。

「アッ……コ……!」

 修司が戸惑っていると、ミラーガールは修司に涙ながらに話した。

「覚えてる、修司。昔、修司と私たちで覚悟を決めた、あの日を……」

「あの日……」

「思い出してちょうだい。まだ私が泣き虫で、すぐに落ち込んじゃってた、あの日々を……」

 ミラーガールに言われ、修司の脳裏にその当時の事が鮮明に浮かび上がり出した。その修司の記憶を、他の潜在意識に潜入している一同も垣間見た。

 

「……うっ、ううぅ……っ」

 ある石碑の前で蹲って涙を流すアッコに、その傍らには石碑を見詰めて立ち尽くす修司の姿があった。

「泣くなアッコ。そんなんじゃ、戦士としては務まらん」

「うん……っ。解ってる……!」

「それに、混沌とした二次元と三次元の世界は争いばかりだ。平和な世とは程遠い」

 修司とアッコがいたのは、戦闘で戦死した聖龍隊士の慰霊碑の前だった。アッコも修司も、自分達が守り切れなかった命の死を嘆き、慰霊碑の前で黙祷をした直後だった。

 大切な仲間の死に涙するアッコに対し、修司は力強い面魂で決意を明言した。

「こんな世の中……俺が終わらせてやる。例え強引な手段を使ってもな」

 その時だった。

「おい、お前らだけじゃねぇ」「俺たちもいる事を忘れるなよ」

 そう慰霊碑の前の修司とアッコに掛けられる声が。

 二人が振り向くと、背後にはバーンズや地場護たち聖龍HEADの面々が揃ってた。

「……ええ、そうね」

 そんな頼りがいのある仲間達の姿を前に、アッコも涙を拭って修司共々決意を新たにする。

「まったく、気が滅入るぜ。来る日も来る日も書類書類」

「仕方ないでしょ。あなたは聖龍隊の総長で、アニメタウンの市長なんだから」

「それに……こんな雑務、戦いに追われる日々に比べたら、ずっとマシでしょ」

 如月ハニーや水野亜美に言われながら事務作業に没頭する修司。

 当時の修司は、不安や悲しみを共に背負ってくれる仲間の存在を確かに感じられてた。

「修司、アニメタウンを統べるのは……お前が相応しい」

 そう修司に説くバーンズ。だが当時市長でもあった修司は、真面目な顔でバーンズに言った。

「いや、本来は俺の様に心が欠けた人間ではなく……愛や希望、何よりも夢を持った二次元人(おまえたち)こそ、アニメタウンを統べるのには相応しい」

 愛情を感じにくく、故に欠けた心を持っているが為に現実的な思考をしている修司にとって、夢や希望そして愛を確かに持っている二次元人こそ理想の国だと信じてやまないアニメタウンを統治するのに相応しいと考えていた。

 

 そんな昔の思い出を噛み締めて、修司は不思議な感覚に襲われる。

「故郷があって、仲間がいて、長としての俺がいる。と……今さら、そんな過去を思い返すだけで、心の穴が埋まっていく気がするぜ」

 欠けている心に空いた穴が、欠片が塞がっていく感覚が走る修司。

「もう最後だというに……俺は何を、ぺらぺらと……」

 己の命と引き換えに、クローンである新世代型二次元人を永久に不自由な状態で封じ込めると決意していたにも拘らず、いつの間にか喋り続けてしまってた修司は不思議がる。

「夢という柵に縛られ……夢という道に固持し続けて……その果てに俺が行き付いた道は、結局は何にも抗えないだけの非力な結末だけだ。新世代型という、醜いクローンも滅ぼす事もできない……弱い俺自身が残っちまった」

 そして修司は自分自身が夢や理想に固持してしまい、その果てには何にも抗えない弱い自分と新世代型二次元人という己のクローンが残ってしまったと後悔する。

 しかし、そんな修司にミラーガールが優しく話し掛けてきた。

「少しずつ、探り合いながら分かり合っていこう」

 修司がミラーガールに顔を向けると、彼女は涙目ながらも笑顔で修司に言った。

「なかったことに出来ないなら、もう一度やりなおせばいい」

 ミラーガールの話に、修司は言葉を失くしてしまう。

 

 解りあう事はできなくても、許し合う事はできるんじゃないか。

 世界は愚かなほど馬鹿げた行為しか続けない。しかしそれを変えられる力、思いがあるのではないか。

 愛を忘れた男に、愛を秘めた全戦士が立ち向かった結果、男は元の心が欠けた存在へと戻った。

 考え過ぎたら失敗する、考えすぎない程度がちょうど良い。

「自分が我慢すれば良いなんて、勝手に思わないで」

 そして修司は、過去にアッコに言われたこの台詞を思い出した。

 

 カァチェンに続き、ミラーガールからも説得されて、過去の出来事を思い返していく修司。

 だが此処で修司はハッと気づき、カァチェンとミラーガールに問う。

「か……カァチェン、アッコ。お前達は一体……何故お前達は……俺を迷わせる……!?」

 激しく動揺する修司は、二人に恐る恐る説明する。

「俺はもう、何をしても中途半端に終わらせてしまうだけの欠陥品なんだ……! 俺は……逃げていない……間違っているのは、俺と俺の子である新世代型二次元人の存在なんだ……!」

「もう自分を隠すのはやめましょう!」

 そんな修司にカァチェンは、自分を偽り、自分の本心を隠すのをやめさせるよう言う。

「俺は……隠してなど……!」

 修司の動揺は更に激しさを増す。

「俺は……俺は……俺は……! 俺は……!!」

 カァチェンの言葉に戸惑い迷う修司は、堰を切った様にカァチェン達に言い切った。

「俺は争いばかりする命を終わらせる、純粋なる破滅だ! 夢も願望もない世界を創り、人を真の安寧へと導く、終焉の者!! もはや繋がりだの、心など、今の俺には必要ない!!」

 だがこの修司の台詞にカァチェンは睨み付けて言った。

「それは貴方の本心ではない筈です! 言葉で嘘を塗り固めても、本当の心は変えられないんです! 本当の貴方は、心ある人々に安らぎを与えたい理想を持つ聖龍隊の戦士です!! 誰でもない、心が欠けた欠陥品ではない! 純粋なる破滅でもない! 貴方は小田原修司なんです!!」

「っ……!」

 再びカァチェンの言葉に動揺され、圧をかけられる修司にカァチェンは強く問いかけた。

「怖がらないでください、目をしっかり開いて! 自分の姿を見て下さい!! それが本当に望んだ姿ですか!? 貴方の夢は、理想はもっと輝いていたのではないですか!!」

 カァチェンの力説に、意気消沈する修司。

「貴方の仲間も、その理想を一緒に追ってくれたんではないのですか!!」

 真理ある言葉の数々に黙り込んでしまう修司。

「思い出してください! 仲間を、友を! 貴方の周りにいた二次元人が、今の貴方を望んでたと思うのですか!!」

「……仲間……ッ」

「もういい加減、目を覚ましてください!」

 カァチェンに話し続けられ、戸惑い動揺する修司に此処で不思議な現象が。

 修司の目前にいるカァチェンが過去の自分に見えたのだ。

「なにを恐がってる……?」

「っ……!」

「自分を変えたかったんじゃないのか? 世界を素晴らしい理想郷に変えようと、仲間と頑張っていたんじゃないのか」

 過去の自分にそう言われた様な感覚に襲われてる修司に、カァチェンは強く訴えた。

「もう分かってる筈です! 今の貴方がやるべき事は、新世代型と共に滅びる事ではないのです!」

「俺は……」

「強がらないでください! 自分を偽ってまで、弱さを隠さないで下さい!」

「俺は…………」

「貴方は多くの人々に安らぎを与えたかった、聖龍隊の初代総長の小田原修司です!」

 俯いてしまう修司にカァチェンは言う。

「ミラーガールも! バーンズも! 私も! もう誰も見逃しません! 貴方の事は……」

 

 その時だった。

「ちゃんと見てるんだからねっ」「!」

 修司の視覚で感じられる光景に、まだ少女時代のアッコの姿と声が。

「いっつも無茶して! もう!」

 少女の頃のアッコは、戦闘で負傷した修司の怪我を手当てしながら愚痴を零す。

「強がって傷を隠してもダメ! ちゃんと、見てるんだから」

 少年時代の修司に包帯を巻くアッコ。

「つまらない意地、張らないでよね」

 アッコは修司の世話をしながら優しく話し掛ける。

「修司は、世界のみんなが幸せになれる未来を創るって私に約束してくれた」

 アッコは笑顔で修司の顔と向き合って話し続ける。

「いい? 私だって、理不尽な世の中を少しでも変えたい、多くの人を救いたいって本気で思ってる。だから、修司のこと……側でしっかり見守るって決めたの!」

 当時から今に至るまで変わらないアッコの決意を思い返す修司。

「私たちを救うって事は、世界を救うのと同じなんでしょ? ……それなら、修司を救うのだって、世界を救うのと同じじゃない」

 二次元人を救うのを世界を救うのと同等に考える修司に、アッコは自分ら二次元人を護る修司を救うのも同様に世界を救う事だと説き明かす。

 この加賀美あつこの言葉に、小田原修司は心中ではあったものの歓喜の涙を湧かした。

「私が見張ってるんだから、もう隠し事はできないよ」

 いつでも見守っていると聞き取れるアッコの言葉に、修司は激しく動揺する。

「頑張って修司! 私たちを護って、救って……そして世界を導かせるんでしょ! それも約束よ」

 少女時代のアッコからの約束を思い出し、修司は唖然と下を俯いてしまう。

 

 そんな修司にカァチェンは手を差し伸べる。

「行きましょう」

 手を差し伸べてきたカァチェンに驚く修司。

「今の貴方の……その心の奥に残ってる……本当に大切なモノを、裏切らないでください。そして……それと繋がっているのは。決して今の貴方なんかではありません……」

 修司が唖然としている中、カァチェンとミラーガールが修司に言った。

「もう、分かった筈です」

「「貴方は、小田原修司です」なの」

 二人からの言葉に、修司の動揺は増すばかり。

「良いから、帰ってきてください!」「カァ……チェン……」

 それでも差し伸べられた手を握る勇気がない修司に、カァチェンは語り始めた。

「私は……いいえ、私達は。最後まで貴方に手を伸ばし続けます。最後まで……! そう、届くまで!!」

 諦めず、誰かと繋がりを結べるまで手を差し伸べ続ける。それは修司が二次元人から教え説かれた事だった。

「貴方が独りにならないようにと……ずっと考えてしまう」

 カァチェンの今の思いは、ミラーガールたち心優しい二次元人が自分に向けての思考だと修司は気付く。

「私も昔は、独りぼっちだった。一歩間違えてたら、それこそ今の貴方のようになっていたかもしれません」

 そしてカァチェンも修司と同じく孤独だったからこそ、一歩道を踏み外せば修司の様に過ちを犯していたのかもしれないと告白。

「バーンズ氏や加賀美殿、たくさんの聖龍隊の人達から貴方の昔話を聞かされ……いつの間にか、私は貴方を自分自身と重ね合わせていた。そして勝手に、貴方を目標にしてしまってた」

 そんなカァチェンはいつの間にか、修司と自分を重ね合わせて、いつの間にか修司を目標にしていたという。

 

 だが、まだカァチェンからの手を握り取る事に躊躇う修司に、ミラーガールが話し掛ける。

「修司ほど、人の痛みや苦しみを理解できる人を……私は知らない。修司ほど繊細な人間を、私は大切にしたい」

 HSPやエンパスといった感受性高い修司の人間性を、ミラーガールは理解した上で修司を受け入れていた。

 すると此処まで黙ってカァチェンやミラーガールの説得を見守っていた後方のHEADの面々が口を開き始めた。

「修司、お前はオレたち二次元人の為に多くの汚れを身に纏い、そして血に塗れながら重責を一人背負い続けてきた」

「でも、もう義兄さんだけに重荷は背負わせない!」

「苦しみも悲しみも……そして罪も! 今後は私たちも一緒に背負って生きていきます!」

 バーンズにジュピターキッドそしてウォーターフェアリーからの熱い言葉に再び唖然としてしまう修司。

「私……呑気でお調子者だから、修司くんがいつも孤独に囚われている事に気付かなくて。それでも修司くんは強い子だなって勝手に思い込んじゃって……それでいつも追い込んじゃってたのにも気付いてあげられなかった……ゴメン」

 涙ながらに修司に謝罪するセーラームーンの思いに、修司自身も胸を締め付けられる。

「三次元人から人間と認可されてない私たち二次元人の未来を守る為に、いつも一人で全部を背負い切って……独りで、戦い続けて……辛かったでしょう?」

「でも、もう独りで背負う事は無いんです!」

「今度は、私たちも一緒に修司さんの重荷も罪も背負うから……!」

 キューティーハニー、ナースエンジェル、木之本桜の涙目の顔を目の当たりにし、修司は困惑する。

「もう殺戮の日々の中で自分を追い詰める必要はないの!」

「もう苦しむ必要もないのよ、修司くん!」「帰ってきて……!」

 胸が張り裂ける程の悲痛な思いで必死に修司を説得するコレクターユイにハルナにアイの三人。

「もう修司くんが私たち二次元人の犠牲になる事はないの……!」

「今度は私たちも一緒に贖罪の重荷を背負うわ!」「もう自分を苦しませる事はないんです」

 魔法騎士の獅堂光に龍咲海そして鳳凰寺風も修司に訴えかける。

「修司は確かに全ての二次元人を救い切れなかった……けれど、私たちみたいに救えた命もある事を忘れないでほしい。私は修司にまだまだ恩返しがしたい、だから……お願い、生きて」

 ちせからの嘆願を聞いて、修司は胸の内が熱くなるのを感じた。

 

 愛も憎しみも受け止め、それでも信じる。何故なら、友だから。

 挫折や失敗が時には苦痛にもなるが、それと同時に力となる。

 愛は時として痛みを伴う、けれど愛は偉大な贈り物。

 

 カァチェン、ミラーガールに続いて聖龍HEADの皆からの嘆願を前に、修司は生きる希望を取り戻せるのだろうか。

 

 

 

[出現する闇]

 

 と、カァチェンやミラーガール達が逝く寸前の修司を呼び戻している、その時だった。

「……ははは……はははははッ……!」

 真っ白な空間に突如として響き渡る不敵な笑い声。その声に修司以外の皆は戸惑ってしまう。

 一方で修司はと言うと、その笑い声を聞いた途端、先ほどまで泣きそうな顔だったというのに今では一際険しい顔付きに変わってた。

 そんな修司が自分の後ろを振り返ると、そこには不敵な笑みを怪しく浮かべる、もう一人の修司が立っていた。

「お、お前は……!!」

 突如として現れたもう一人のやや褐色の修司を目の当たりにして、ジュピターキッドたち一同は驚愕した。

「や……闇人……!!」

 一同が驚愕する中、バーンズも戦慄しながら名を呟いた。

 修司は突如姿を現した自分の闇の部分、闇人を睨み付ける一方、修司以外の皆々は突如現れた闇人の存在に激しく動揺した。

 特に一時期から修司のクローンであった為に己の潜在意識の中に闇人が現れる様になった新世代型二次元人たちは、なぜ今この時に闇人が現れたのか激しく疑問視した。

「はははッ……いやあ、お久しぶりですな皆様方。特に俺の存在なしで闇落ちした修司に、愛すべき我が子の新世代型二次元人たちよ。そして……潜在意識の中とは言え、こうして面と向かって対面するのは例の大戦以降じゃないか。聖龍HEADよ」

 不敵な面構えで修司やその他の一同に話し掛けてくる闇人に、修司は更に表情を険しくさせてた。

「まったく、茶番もここまで来ると抱腹絶倒を通り越して一種のアカデミー賞受賞並みの劇場じゃないか。いやはや、なぁにが「あなたは小田原修司です」だ? なぁにが「お前の重荷は俺達が一緒に背負ってやる」だ?」

 闇人は先ほどまでカァチェンやミラーガールそして聖龍HEADが修司に投げ掛けてきた言葉の数々を否定しながら暴言を吐き出す。

「分かってねえな。修司が昔の本来の修司に戻るって事は、要するにこの俺さま闇人が修司の心に存在し続けるって因果なんだよ」

「「………………」」

 闇人の発言に、カァチェンとミラーガールは表情を険しくさせる。

「そもそも修司がなんで重荷を一人で背負ってたか忘れたか? テメェら二次元人なんかの為に、修司は人知れず国家や政府の命で汚い任務を請け負って、血塗れの業を背負ってたんだろうが」

『………………』

「何より修司は、お前ら二次元人にそんな業を背負ってほしくないから一人で無茶してたんだぜ? それなのに、その業を一緒に背負ったら、それこそ今までの修司の努力や行いを無駄にしちまうって解らないか?」

 小馬鹿にしながら暴言を投げかけてくる闇人の言葉に、聖龍HEADや他の面々は鋭い眼差しで闇人を見詰める。

 そんなカァチェンや多くの二次元人の決意や温情を否定し、小馬鹿にした闇人は、自分を生み出した修司に投げ掛ける。

「修司、お前が二次元人達を守ってきたのは、くだらない良心や正義感なんかじゃない。周りと違う自分……周りと違う異端で異種なる存在だからこそ、同じ様な存在である二次元人を護ってきただけに過ぎん。自分と同等、いや、それ以上に異端な輩と少しでもいいから色んなものを共有したかったからに過ぎないんだ」

 今の今まで二次元人を護ってきた修司の行為は、全て独りになりたくない修司の心からの抵抗だったのだと説く闇人。

 

 そんな突如として現れた闇人の暴言を聞き入れながら、修司は己の分身である闇人に返した。

「……解ってる。俺が生まれながらの孤独に抗う為に、自分と同等の存在でもある二次元人を死守してきた事を……そして、その為に二次元人達に業や重責を背負わせないよう、俺自身が一人で血に塗れる任務や秘密を背負ってきた事実を」

「フフフ、それならこれも分かってるよな……! お前が生き続ければ、いづれお前の狂気や闇の部分である俺様が復活しちまうってことを……!!」

 この闇人の発言にミラーガールたち聖龍HEAD以外の者たちは全員驚愕した。

「な、なんだって!?」

「世界を壊そうとした修司の闇の部分、闇人がいづれ甦るっちゅう訳か……!」

 新世代型の猿田学や国連軍元帥の赤犬は愕然とした。

 そんな動揺する面々を前に、闇人は更に語り続ける。

「そして何よりも………………例えお前が死んだとしても、お前のクローン……いや、俺たちの分身である新世代型二次元人が一人でも生きている限り、その新世代型を媒体にこの俺闇人はそう遠くない未来で新世代型の肉体を乗っ取って復活するのだからな!!」

 怪しい目をぎょろりとさせて言い放つ闇人の言葉に、多くの者たちが驚愕し愕然とする。

「ウソ! ……でしょ?」

「新世代型が一人でも生きていれば、その新世代型が闇人に変わっちゃうって事……!?」

「真鍋や琴浦たちが、かつて二次元界と三次元界を同時に滅ぼそうとした闇人に変身しちまうって事なのか……!?」

「アラタくんや他の新世代型二次元人が、みんな闇人に変わってしまうというのか……?」

 プロト世代のチョコに桃花・ブロッサム、ギュービッドに海道ジン達は話を聞いて激しく動揺してしまう。

 しかし一方で、この闇人の話を聞いても新世代型二次元人たちは動揺せず冷静に耳を傾けていた。

 そんな一同を前に、闇人は不敵に笑いながら語り続けた。

「ククク、そうよ、その通りよ……! 新世代、前にも話さなかったか? 俺は修司が死んだ後も、お前らの潜在意識の中で生き続け、やがてはお前らの肉体を乗っ取って新しくこの世に生誕する……いや、転生すると言った方がいいかな? ギャハハッ」

 不敵に笑みながら語る闇人の話に、修司や聖龍HEADそして新世代型二次元人たち以外の皆々は動揺を隠し切れなかった。

「おやおやぁ、やっぱり新世代型二次元人たちは生かしちゃいけないのかなぁ?」

「ううむ……! この世の正義を守る為にも、やはり新世代型二次元人は全員始末した方が世の為人の為だと言うんかい……!!」

 話を聞いて、国連軍大将の黄猿に元帥赤犬は激情を滾らせる。

 そして闇人は話の矛先を修司に向き直して語り続ける。

「修司、お前は昔からそうだ。やる事なす事なにもかも中途半端。……世界を守るため二次元人の人権を守る為に世界中の秘密をかき集めて強引に法律を変えて平和を実現しようとしたが、結局は世界を混乱に陥れただけ。新世代型二次元人を巻き込んで「純粋なる破滅」に変わって、世界から俺さま闇人の脅威を葬ろうとしたが、結局は新世代型二次元人を殺せず、挙句の果てには自分すらも殺せない……ホンっと中途半端な人間だよ! ギャハハハ……ッ!」

 修司の努力を嘲笑う闇人に、修司本人は闇人を睨み付けて言い返す。

「……解ってる、俺自身、自分が如何に中途半端で全てを終わらせてしまうか……だからこそ、俺の死を持って、新世代型二次元人を全員牢獄の中に永遠に閉じ込め、同時に俺の中にいる闇人お前自身を封印する……!」

 と、修司が闇人に言い返したその瞬間。

「そうはさせない!」

 と、場の空気を断ち切る様に強く言い放った声が。

 修司も闇人も、他の皆々も視線を向けると其処には声を出した真鍋義久たち新世代型二次元人達が一か所に集うカァチェンやミラーガール達とは離れた場所で闇人と修司を見据えてた。

「おやおや? カワイイカワイイ我が子、新世代型二次元人達よ、どうした? 修司が自らの死と引き換えにお前らの自由を奪う事に恐れているのか? それなら安心しろ。この半端者の修司が死んだとしても、この俺様の力でお前らは確実に檻の中から解き放たれ、自由になる! ……俺さまに意識を奪われ、乗っ取られるけどな。ヒヒッ」

 嘲笑しながら新世代型二次元人達に投げ掛ける闇人の言葉に、新世代型二次元人たちの先頭に立つ真鍋義久が闇人を睨み付けながら対話する。

「……誰がお前なんかに体を与えてやるもんか」

「ああん?」

「俺達は別に小田原修司の死を望んではいない。あんた闇人の代用品として自由になりたい訳でもない。俺達はただ……みんなと笑っていける未来を勝ち取りたいだけだ!」

「………………!」真鍋の発言に修司が愕然とする。

 すると闇人がまるで駄々っ子の様に真鍋に言い返した。

「だから! 言ってる意味が分からない!? 修司は遅かれ早かれ死んじまうし、お前ら新世代型二次元人はどう足掻こうと俺さま闇人の代用品として生き続けるしか未来は無いんだよッ!」

 そう闇人が反論すると、更に闇人は語る。

「お前達は恐怖と誘惑、二つの感情に魅入られている。そう! この俺、闇人の恐怖と力という名の誘惑にな!!」

 新世代型二次元人達に、闇から発せられる恐怖と誘惑に魅入られていると真理を説く闇人。

 すると此処で真鍋以外の新世代型二次元人たちが闇人に思いを投げ掛ける。

「いいえ! 自分の未来は、自分で決める!」

「確かに、俺たち新世代型二次元人はどう足掻こうと小田原修司のクローン、代用品だ。その事実は受け入れる!」

「でも、僕たちの進むべき未来は闇人にも小田原修司にも与えてもらう訳じゃない……自分で選択するものだ!」

「どんなに障害があろうと、僕たちは僕たちの未来を突き進むだけだ!」

 琴浦春香/瀬名アラタ/直枝理樹/斉木楠雄たちの主張を前に、戸惑い出す闇人。

 しかし闇人は新世代型二次元人を己がモノにしようと諦めなかった。

「ッ……! 忘れた訳じゃあるまいな! 血は水よりも濃い……お前らは小田原修司という水よりも濃い血を受け継いだ呪われた血族! ゆえに俺さま闇人の代用品にも成りえるタダの道具なんだよ!!」

『………………』

 闇人の暴言に新世代型二次元人たちは黙り込むと、闇人は更に畳みかける。

「俺が力になってやろう! 俺に体を寄こした暁には、修司以上の闇の力を……絶対の力を授けよう! どうだ? 俺と組まないか。我が子らよ」

 闇人は事もあろうに新世代型二次元人を強大な力で誘惑し、思うがままにしようと画策する。

 だが、それに新世代型二次元人の代表の様に先頭に立っている真鍋義久が闇人の胸ぐらを掴んで睨み付けた。

「俺達が欲しいのは力じゃない……! みんなと一緒に生きていける、険しい道の歩き方だけだ」

 先ほど述べたカァチェンの台詞を借りて言い放った真鍋の言葉に、闇人は激しく動揺する。

「ど、どんなに綺麗事をほざこうが、お前らが修司や俺のクローン、コピー商品なのは変わらないんだぞ。そんな現実の中で真っ当に生きていける訳ないだろ……」

 と、闇人が真鍋たち新世代型二次元人に訴えていた矢先、真鍋は闇人の胸倉を離して突き放した。

 闇人が千鳥足になりながら後方へと退いた瞬間、なんと真鍋たち新世代型二次元人が全員漆黒の闇に全身を包み、異形の鬼の様な姿へと変貌した。

「なッ!!」『!!』

 漆黒の異形の鬼に新世代型二次元人たちが変貌したのを目の当たりにして、闇人もその他大勢も驚愕した。

 そして異形の鬼に変貌した新世代型二次元人達は、その異形の姿で一斉に闇人に群がり、闇人に襲い掛かった。

 殴り、蹴飛ばし、投げ飛ばし、幾度となく闇人に暴力の嵐を浴びせ続ける新世代型二次元人たち。

「アルバード・ウェスカー仕込みの体術はどうだ?」

 中にはジェイク・ミューラーの様に元の姿に一瞬戻ると得意技の体術を打ち込んでいく新世代型二次元人も確認できた。

 そして新世代型二次元人たちは闇人を完膚なきまでに叩きのめし、闇人の方は完全に満身創痍の様子に。

 そうして痛め付けた闇人を視認した新世代型二次元人たちは、ここで元の姿へと戻ると真鍋義久が満身創痍の闇人の胸倉を再び掴んだ。

 すると胸ぐらを掴まれた闇人の背後に、筒状の金属製の焼却炉が出現し、その扉が闇人を呑み込む様に開いた。

「ま、待て新世代! 早まるな……!」

 闇人は、真鍋たち新世代型二次元人が自分を焼却炉に押し込んで修司の闇の精神である闇人本人を焼失させようとしている事に逸早く気付いて訴える。

「お、俺を……親である俺を殺す気か!? それこそ正気じゃない!!」

 新世代型二次元人の始祖である自分を焼き殺す事を正気ではないと訴える闇人に、胸倉を掴んでる真鍋が睨みながら言った。

「あばよ闇人。これが俺たちの決意だ」

 真鍋の反応に闇人は激しく動揺してると、そんな闇人を背後から捕まえて放さない存在が。

「み、美鳥……!?」

 闇人の背中を両手で挟み込む様に捕えて放さないのは、新世代型二次元人の西園美魚が幼少時代に孤独感から幻想で生み出した分身体であり、美魚のもう一人の人格でもある妹的な存在、美鳥だった。

 美魚以外の人には見えない存在である美鳥が、闇人の存在を一時的に抹消する為に、闇人を焼却炉の中に引き込み、闇人共々焼却炉で焼失する覚悟で登場したのだ。

「美魚、みんな! 私が闇人を焼却炉の中に引きずり込むから、早く闇人を……!」

 懸命に闇人を焼却炉の中に引きずり込む美鳥の嘆願を聞いて、真鍋も他の新世代型二次元人達も頷いた。

 そして美鳥に引きずり込まれ、闇人は美鳥共々焼却炉の中に入った。

 それでも外に何とか出ようとする闇人を、真鍋が闇人の腹に何度も拳で殴打して最終的には足で蹴り付けて強引に押し込むと同時に焼却炉の扉を閉めた。

「やめろ! 頼む、やめてくれ……ッ!!」

 焼却炉の中から必死に懇願する闇人の言葉に耳を貸さず、真鍋は自分の手元に現れたレバーに手をかける。

「これが俺たち新世代型二次元人の覚悟と決意の表れだ、闇人……!!」

 次の瞬間、真鍋はレバーを引いて着火。焼却炉の中は業火が広がり、闇人は業火に呑み込まれて苦しむ。

「ぎゃああああああ……っ!!」

 業火に包まれて苦しみ藻掻く闇人の叫び声を前にしながら、真鍋は闇人を燃やす焼却炉に背を向けた。

「お前達は俺が必要な筈だ、絶対だァ……!!」

 最後に意味深な断末魔を挙げながら、闇人は焼却炉の中で業火に包まれながら焼き尽くされた。

 

 闇人の末路を見届けた真鍋たち新世代型二次元人は、向き直って修司と対面する。

「……お前達……」

 対峙する真鍋たち新世代型二次元人を前に修司が動揺してると、真鍋は真剣な面差しで修司と話した。

「これが俺たち新世代型二次元人の決意だ。あんたの闇に打ち勝ち、自分自身の未来は自分で選択して勝ち取る……!」

「……分かってないな、お前達は」

『………………………………』

「……闇人は俺の負の感情、闇の心から生まれた俺の分身。俺やお前たち新世代型二次元人が生き続ける限り、何度でも甦り、そして心の隙を狙って再び現世で猛威を振るおうと目を光らせている。だからこそ俺は、お前たち新世代型二次元人を幽閉した上で自分自身を殺そうとしてるんだ」

 新世代型二次元人たちに、闇人は修司や新世代型二次元人が生存している限り何度で甦る危険性があると提唱する修司。

 だが、そんな修司に真鍋が言った。

「……分かってる。こんな事をしても、闇人を一時的に遠ざけるだけで、闇人の脅威から解放された訳じゃない事は……」

「だったら、なぜ……」「だけど!」「!」

 次の瞬間、真鍋は驚いている修司にこう話した。

「……確かに俺たち新世代型二次元人にあんたの、小田原修司の呪われた血が受け継がれている。だからこそ闇人の脅威にも死ぬまで怯え続けなきゃならない。けれど……」

「………………」

「……俺たち新世代型二次元人は、それでも生きたいんだよ。小田原修司、あんたが全ての人々に安らぎを与えたいと願ったこの世界で……あんたやアッコさん、そしてカァチェンたち三次元人と生きてみたいんだよ……!」

「!!」真鍋の言葉に全身に衝撃が走る修司。

 そんな修司に真鍋は更に話し続ける。

「小田原修司、俺たち新世代型の為に生きろとは言わない。ただ世界と、アッコさんの為にも生き抜いてほしい」

「………………」

「もし、俺たち新世代型が道を踏み外した時、俺達が世界を滅ぼしそうになったら、その前に………………その時こそ、俺たち新世代型をアンタの手で殺してでも止めてほしい!」

「……覚悟はできているんだな。俺の血を受け継いだが故に、世界を破滅に至らしめてしまうかもしれない己の存在意義に……そして、それ故に俺に殺されてでも自分達を止めてほしいと」

 真鍋から聞かされた新世代型二次元人の覚悟を目前にし、修司は新世代型二次元人の未来永劫続く修羅の道に息を呑んだ。

 

 と、真鍋から新世代型二次元人の覚悟を聞かされて唖然としている修司に、バーンズが話し掛けてきた。

「修司、オレはさっきお前とカァチェン達が戦闘している最中テレパシーで知った……特殊能力を封じるお前の闇の能力の為に一部しか見れなかったが、お前は…………やり方や結末はどうあれ、心の底からこの世の人々全員が安らげる世を創りたいと願っていたのは本心なんだろ?」

 修司に問い掛けるバーンズは、更に続けて修司に問うた。

「お前は長い間、戦争などの人間の業や醜さの中で生き地獄を体験してきた。そんなお前は生とは反対の死もまた安らぎの一つだと考え……そしてオレたち二次元人の願望の元凶であるアッコを亡き者にした後、全ての命を終わらせて輪廻転生もない安らぎを与えて、全てを真っ白にしようとしたんだろ?」

「………………」

 バーンズの話に下を俯く修司に、バーンズは話し続ける。

「確かに、アッコから始まる願望は人間の醜い欲望や野望にも変化する。だけど、人が未来を創り、形成する夢や理想にだって繋がる。分かるか? 確かに願望は争いの元凶に違いないが……それと同時に美しい夢や理想にだって変化する! 修司、お前は誰よりもアッコを間近で見てきて、それを知ってるだろ!」

 バーンズから人間の願望について説かれた修司は、顔を見上げて語り始めた。

「何もかも捨て去って、失う怖さに怯え続け……空っぽのまま全てを終わらせようとした。意味も名前も捨てて、空っぽのまま全てを終わらせようとした。だが、その空っぽの器の中にもう一度意味をくれたのは……結局、最初に俺に心という代物を与えてくれたお前達だった」

 修司がそう語り終えると、ミラーガールが優しく修司に投げ掛ける。

「あなたが孤独に囚われないよう……私達はずっと、あなたの傍に居続ける」

 ミラーガールがそう、修司に投げ掛けた瞬間、その場の一同が堰を切った様に修司に呼び掛けた。

 

(かえ)ってこい! 修司!!』

「………………………………!!」

 

 皆の声を背に、カァチェンは再び修司に手を差し伸べた。

 出会いという繋がりで成長した青年が、大人になり切れない少年に手を差し伸べた瞬間だった。

 

 この世は全て矛盾、矛盾で成り立っている。これは未来永劫変わらない。

 必要性、自己嫌悪、集団心理。それらに縛られた男に青年が手を差し伸べる。

 真実は現実より残酷。だけど、そんな中でも変わらない美しい心理もまた存在するのも事実。

 

 

 

[昔々の御伽噺]

 

 

 昔々 本当に昔のこと

 

 三次元人の男と二次元人の女がいた

 二人はとてもとても、深い絆で結ばれていた

 

 

 

 二つの次元では頻繁に戦争が、起きた

 

 男も、女も、戦争にて己が力を奮い、戦った

 

 

 

 何年経とうと、争いが無くならない現実だけが非情に突きつけられる

 

 救いたかった命、共に生きたかった命。そんな命が納められた棺ばかりが男の眼前に無数に並ぶ

 

 男は争いを終わらせたかった。心を、想いを生み出す根源である女の悲しみを見たくはなかった

 

 

 

 男は法律を創った。悪しき者が、争いを、悲劇を生み出し続ける者のみを排除し平和な世が築けるような決まりを生み出した

 

 愛した女は、笑顔を取り戻した

 

 

 だが争いは続いた 人々の嘆きは消えなかった 女は、そんな世界と人々の心を生み出し続ける自分自身を呪い嘆いた

 

 男は女のそんな悲しみを見た。あまりにも悲しんだため、怒りが治まらなかった

 

 愛する女を、友を、キズつけた世界が許せなかった

 

 男は己を、最強の最終兵器として世界に身を捧げた

 

 

 

 男は破滅の神となった

 神により、戦争は閉じられた。人々の悪しき心も、憎悪も次第に薄れていった

 

 

 

 平和な世を与えられた女は、知っていたのだろう

 

 彼の作った決まり、彼自身の存在が、多くの命を犠牲としていたことを

 

 笑顔を取り戻した女は、再び笑顔を失った

 

 今も男は永遠に彷徨い続けている。彼と、彼の愛した女が夢見ていた理想を追い求めて……

 

 

 

 

 

[救い]

 

 人々の憎悪や悲しみを拭う為、自らを汚い雑巾の様に扱いながら戦い続けてきた小田原修司。

 そんな破滅の神となった修司に、世界の、修司の真実を知って笑顔を失いかけてたミラーガールは優しく微笑みかける。

 そして、そんな魔鏡聖女や多くの人々との出会いで自分を変え、成長できた修司と同じ発達障害のシバ・カァチェンは、修司に変わらず手を差し伸べる。

 差し伸べられたカァチェンの手に、修司は一瞬彼の手を掴もうと右手を伸ばした。

 だが、その瞬間修司の脳裏に今まで犯してきた多くの大罪や重責が思い起こされる。

 こんな自分が、こんな世界の汚れを一身に浴びてきた自分が生きていていいのか。

 修司は迷った。カァチェンの手を取り、現世に戻れば再び己が争いの元凶になってしまうのは目に見えていた。

 迷った修司はカァチェンの手を取るのを躊躇い、一瞬差し出した手を引っ込めてしまう。

 そんな手を取る事を躊躇う修司を目の当たりにし、カァチェンとミラーガールは互いに顔を見合わせると一斉に修司に手を差し伸べて、半ば強引に修司の手を掴んだ。

 半ば強引にカァチェンとミラーガールに手を掴まれて引っ張られた修司は唖然とする中、二人は修司に言った。

「さあ、帰りましょう」「修司の……みんなの居場所に」

 カァチェンとミラーガールに手を引っ張られた修司の目に飛び込んできたのは、修司の帰還を心待ちしている多くの二次元人や三次元人の姿だった。

 皆は修司の帰りを出迎え、共に混沌の世界を生きようと決意した穏やかな面差しを浮かべていた。

 

 多くの過ち、何もかもを中途半端に終わらせてしまった修司を温かく迎えてくれる友や仲間たちを前にした修司は膝から崩れ落ちた。

「ああ、そうか……変わってしまったのは………………俺の方だったのか」

 今の今まで、世界は醜く変わり果ててしまったと思い込んでいた修司。だが昔から繋がりある者たちの想いを目の当たりにして、修司は本当に醜く変わり果ててしまったのは自分自身だったんだと気付かされた。

 そんな膝から崩れ落ち、昂る感情によって泣き崩れる修司を、カァチェンとミラーガールは掴んでいる手を離さず、二人一緒に感涙の修司を立ち上がらせた。

「「さあ! 一緒に……」」

 カァチェンとミラーガール、二人の声に導かれる様に修司は眩い光の方へと引き上げられる。

 

 

 小さかった頃、大人になれば何でもできる。……そう思っていた

 だが憧れと現実は違った。

 大人になっても叶えられない事は沢山あり、変えようがない理不尽な世界を前に挫折する。

 そんな現実にいつも悲観していた修司を引き上げた聖女は、修司への想いを浮かべた。

 

 

 

 ずっと、ずっと待っていた。

 

 あなたが私たちを本当に思いやれる、優しい人に戻ってくれるのを。

 

 私達の為に自分を見失ったあなたを思うと心が痛んだ。

 

 とても辛かった。

 

 あなたは自分を思いやってくれる人たちの元に戻るまで、とてもとても遅刻しました。

 

 けど、その時間は一瞬の様でも、あなたには気が遠くなりそうなほど長い時の渦中でした。

 

 けれど、私達は責めません。

 

 だって私たちは……ずっとあなたを信じていたのだから。

 

 

 

 

 

 カァチェンとミラーガールが修司の手を引き寄せ、修司が眩い光へと導かれると。

 現世ではミラーガールの膝枕で横たわる修司が、ミラーガールと初期の頃から一緒に戦ってきた聖龍HEAD古参と「しんせん組」の三人に囲まれて目を覚ましてた。

「修司……!」

 涙で瞳を輝かせるミラーガールの言葉に反応する修司は、この時新世代型二次元人の力を吸収して進化した「純粋なる破滅」の姿ではなくなり、元の小田原修司の姿へと戻っていた。

「……ただいま」

 目から大粒の涙を零すミラーガールの顔を見詰めながら、修司は穏やかな顔で一言返した。

「修司!」「修司くん……!」

 死の淵から帰還した修司を前にして、バーンズやセーラームーンたち聖龍HEADが修司に群がる様に集まり、歓喜の涙を流す。

「修司さん、修司さん……!」

 花丘イサミ達しんせん組の三人も、ようやく帰って来てくれた修司に感極まり涙する。

 他にも、村田順一やミラールなど、聖龍隊に関係する多くの二次元人が号泣する。

 そんな二次元人につられて、三次元人の武将達も感極まり目を涙で濡らす。

「これが……これが……聖龍隊の、繋がりって奴なのか……」

 感極まり涙する二次元人たちを前に、聖龍隊はもちろん二次元人にも多大な憎しみを抱いているマン・サコンは戦場を包み込む歓喜の空気に唖然と立ち尽くす。

「良かったな、ミラーガール……!」「うっ、ううぅ……」

 涙を流して喜ぶミラーガール達を視認して、イン・ナオコや山中鹿之助も思わず涙ぐむ。

「戻って、きたんだな……」

 そう修司の周りに集う聖龍隊の古参メンバーを目視して、周りの皆と同じく涙を目に浮かべる順一に恋人の深澤マイが話し掛ける。

「そうね……! 修司さんは、ようやく戻って来てくれたのよ。私たち聖龍隊という止まり木という居場所に……」

「いや、それだけじゃない」『?』

 マイの言葉に返事する順一の発言に、マイも周りのスター・コマンドーの仲間達も呆気に取られると、順一は遂に堪えきれなくなった涙を流して言った。

「戻ってきてくれたんだ……! あの頃の、聖龍隊に……!!」

 順一は感動のあまり誰よりも涙しながら昔を思い返してた。

 

 小田原修司/加賀美あつこ/バーンズ/ジュニア/アプリコット/セーラー戦士/キューティーハニー/ナースエンジェル/木之本桜/春日結/如月春菜/篠崎愛/獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風/ちせ、そしてしんせん組の花丘イサミに月影トシ、雪見ソウシ。

 聖龍隊結成時から今でも一緒に居る古参の戦士達の、懐かしき姿を。

 

 

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