聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[終わらぬ乱世]
カァチェン、ミラーガール。そして昔々から続く聖龍隊を始めとする二次元人達からの繋がりを頼りに、修司は臨死状態から目を覚ます。
「……ただいま……」
そう膝枕で修司を寝かせるミラーガール。彼女に呟く修司は、昔の聖龍隊を結成した頃の活発で穏やかな面差しへと戻っていた。
修司の復活に、聖龍隊を始めとする二次元人達はもちろん、三次元人の武将達も歓喜に沸いた。
「……死んでも生き返っても、人騒がせな奴だな。小田原修司は」
そう独り事を呟くのは、修司や二次元人達に多大な憎しみを抱いている北の国の忘れ形見マン・サコンだった。
そんなサコンのぼやきを聞いて、同じ次世代武将の山中鹿之助が声をかける。
「もうっ、サコンさんそんな事言わないでくださいよ」
すると鹿之助に続いてイン・ナオコもサコンに話し掛ける。
「サコン、お前はまだ小田原修司や二次元人達への憎しみを抱いているのは仕方ない事だ。だけどな、私たちはその憎しみの先にある未来という光を勝ち得たんじゃないのか? それだけでも良かったじゃないか!」
「……まあ、ナオコちゃんが言うなら、今は小田原修司達の事は放っておきますよ。タクッ」
サコンは少々不満げな顔を浮かべる。
そして一方で、ミラーガールが修司生還を前にして歓喜の涙を流している様子を遠目から視認したカァチェンは、人知れず恋い焦がれてたミラーガールが心から修司の帰還に涙して喜んでいる事態に、自身も淡い喜びを感じていた。
「……ふんっ、修司の奴め。生き返りおったか……!」
「まあまあ赤犬、小田原修司への罰はまた後々与えるとして……今あっしらは姿を晦ましている国連総長の行方を探し出すのが先決じゃない?」
「わても黄猿はんに同意見でやす……またいつ、あの国連総長が暴走し出すか考えもんでございやす」
修司が生き返った経緯に少し不満を零す国連軍元帥の赤犬に、大将である黄猿と藤虎が問いかける。
そんな修司復活に対して様々な意見、そして歓喜による大歓声が戦場を包み込む中……。
パチパチパチ……
と、何処からともなく拍手が聞こえてきた。
その拍手に、ミラーガールの膝枕で横たわってた人間に戻った修司も、修司を抱き寄せてたミラーガールも、そして修司とミラーガールに集う聖龍HEADも全員が視線を向けると其処に居たのは……。
「いやあ、実に素晴らしい情景だったぞ、朋らよ! まさか、あの状況で此処まで感動的な結果を生み出すとは……予も予測できなかった」
「義輝、か……」「足正、義輝……」『……!』
拍手を修司たちに送ったのは、この現政奉還を始めた張本人である国連総長・足正義輝だった。義輝の登場に、修司もミラーガールも義輝を見据え、聖龍HEADの男達は乱世を引き起こした義輝を睨み付ける。
「鏡之朋よ、よくぞこの世の全てに対して活気を失っていた闇之朋を引き戻した! 予も闇之朋が全てに絶望し、全てを無に誘う事態に一抹の不安を覚えておった」
「………………………………」
義輝の話をミラーガールは険しい面持ちで聞いていた。
「そして闇之朋よ。予は嬉しいぞ! 其之方が予を始めとする新世代型二次元人という己のクローンの存在に絶望し、己が意思も熱気も失って予の意のままに動くだけの黒武士に墜ちてしまい……最終的には予と同じ新世代型二次元人の力を吸収して純粋なる破滅へと我が身を墜としてしまったのは実に嘆かわしかった」
「………………………………」
「……しかし! 其之方は鏡之朋を始めとする多くの熱気溢れる者達と再び心を合わせる事で、昔の様な熱気盛んな若者に返り咲いた! これほど素晴らしい事はないぞ、朋よ! はははっ」
修司に対しては、義輝の話を仏頂面で黙々と聞き入れている有様。
と、突然の足正義輝の登場と熱弁を前に現聖龍隊総長のバーンズが問い返した。
「足正義輝。テメェは自分を含む全ての新世代型二次元人の存在に絶望した事で、全てに失望した上で意思すらも失った修司を己の配下である黒武士として操っていただけで、修司が「純粋なる破滅」に変化してこの世全てを真っ白な虚無へと誘おうとするのには悲観してたのか?」
「おおっ、流石、心を読む事に関しては二次元人一であるな、風神之朋よ。うむ、そうだ! 逆に予は悲観してた、予を始めとする新世代型二次元人の始祖である闇之朋が全てにおいて失望し、熱気や活気までも失っておった事に。其処で予は、それこそ完全な虚無に成りかけていた闇之朋に「黒武士」という役割を与えて働かせておった。そして其之方らとの戦いの中で、闇之朋は次第に己の意思を取り戻し、最終的にはかつて聖龍隊という伝説を始めた頃の朋へと戻ってくれたという訳だ! ははッ」
義輝の説明を聞いても尚、バーンズたち聖龍隊やこの激動の乱世という混乱に巻き込まれた大勢は義輝を睨み付けてた。
そんな険悪な空気の中、ミラーガールは義輝に問うた。
「それじゃ義輝公。あなたは修司を昔の修司に戻す為にも、この現政奉還という乱世を引き起こしたの?」
「うむ、もちろんそれだけではない。以前にも公言してたと思うが、予は今の平和に入り浸った若者達の活気のない現状に嘆いていた。時代を築き、次の世代を生きる者達が何の夢も希望も持たぬまま平和な時を過ごす事に憂いていた。よって、闇之朋の失われた自我を取り戻すと同時に、現政奉還を発起したのだよ!」
義輝の熱い返答を聞いたミラーガールは、険しい面差しを変える事無く義輝に再度問うた。
「そう……確かに、修司と戦ってみて解ったわ。昔の修司にあった野心も理想も、黒武士の時の修司には無かった。それを修司に取り戻させる為にも、この現政奉還を引き起こしたというのなら、もう……」
そうミラーガールが乱世の終わりを告げようとした矢先、義輝は目を力強く見開いて言い放った。
「……まだだ、まだ終わらぬ。終わらせる訳にはいかぬ……!」
『!!』「……!」
義輝の返答にミラーガールや他の者たちは愕然とし、修司だけは表情を険しく一変させてた。
すると義輝は語り始めた。
「確かに……! 闇之朋はかつての活気を取り戻し、繋がりをも取り戻した。しかしだ! まだこの混沌の世界に生きる多くの若者達は、それこそ「純粋なる破滅」であった闇之朋にも劣らず、次の世代いや未来への活気や熱気が失われたままだ。これのままでは現政奉還を終わらせる訳には行かぬ……!」
と、これには三次元界の武将達が文句を言い始める。
「おいおい、帝のオッサン! 少なくともオレは未来への光を失っちゃいないぜ? ……誰もが希望を掴める、それこそ何度でも夢を諦めない未来を築くdreamは不滅だぜ!」
「ぬおおおおおッ、某も!! この思い、この熱気だけは誰であろうと消す事はできませんぞぉッ!!」
デイ・マァスンとシン・ユキジの熱弁に他の武将達も賛同するが、義輝はそんな文句を言い出す武将達に言う。
「いや! まだまだこの世を導き、そして熱く猛る意志は目覚めてはいない! 闇之朋が再び意志を持ってくれたのは実に喜ばしい事だが、世界に犇めく多くの若者に熱き活気が目覚めていない現状を、予は痛感している……!」
世界中の若者たちが、夢などの目標を持たずにただただ悪戯に日々を過ごし、活気を失いつつある現実を義輝は嘆いてた。
そんな義輝は未だに横になってミラーガールの膝枕に頭を預けている修司に訊ねた。
「闇之朋、小田原修司よ! 予はこの場を借りて其之方に申し開く! 些かこの世に真なる熱気を感じ得ない予と、正しくこの現世を賭けて勝負しないか!!」
突然の義輝からの宣戦布告を聞いて、修司以外の皆々は愕然と驚き、修司だけは冷静に義輝の宣戦布告を聞いていた。
「お、おい、ちょっと待て! つまりなんだ? アンタは修司を黒武士として操ってただけに飽き足らず、今度は修司とこの世界を賭けて戦い合おうとしてるのか!?」
「うむ、その通りだ。……しかし、ただ闇之朋とだけ仕合うというのは些か詰まらぬ。もし良ければ闇之朋と聖龍HEADの諸君も共闘して、予と仕合おうてくれるのであれば勿怪の幸いなのだがな」
赤塚組頭領の赤塚大作こと大将の問い掛けに、義輝は威風堂々と返答する。
そして義輝は再度、修司に問い掛ける。
「どうかね、闇之朋よ。予とこの世界の全てを賭けて仕合ってくれないか? 一度世界の全てに対して失望したという其之方に対し、世界を賭けて仕合うというのは多少複雑であるとは思うのだが……」
この問いかけに対して、修司はようやくミラーガールの膝枕から起き上がり、自力で立ち上がって義輝と向き合い対話した。
「……要するに。一度は俺を裏切った世界の全てを賭けて、アンタと真っ向勝負しようって言いたいのか? この俺に……全てを捨て、全てに失望した俺に対してそんな事抜かすとは。酷だねェ、アンタも」
すると義輝は常備している
「では、闇之朋よ! 其之方の周りにいる存在は、果たして今の其之方にとってはタダの飾りだと申す訳ではあるまいな」
「!」
義輝に言われ、直立して義輝と向き合っている修司が背を翻し、周りを見渡してみると、修司を心配して集ってくれた聖龍HEADの仲間達が修司に熱い視線を送っている事に気付く。
「お前ら……!」
修司は聖龍HEADの仲間達が義輝からの無理難題に対して共に挑もうと決意と覚悟を決めた眼差しを向けている事に気付かされ、一驚する。
そんな覚悟を決めた熱い面魂の聖龍HEADを目視して、修司も覚悟を決めた。
すると、そんな修司の意志を汲み取ってか、ミラーガールは先ほどまでの修司との激戦で扱ってた、元々は修司の武器である聖龍剣を修司に手渡した。
修司はミラーガールから手渡された聖龍剣をしっかりと右手で掴むと、それを己が目の前で静かに鞘から抜刀して煌めく刃をその場で見せ付ける。
「……俺が果たすべき事……俺が成すべき事……俺が、斬るべきものは……!」
そう呟いた修司は、再び刀を鞘に納めると、体の向きを新世代型二次元人たちが押し込まれている黒い檻へと向き直しつつ抜刀の構えに入る。
「え、え? お、小田原修司? 修司さん? なにしようとしてんの……!?」
自分達に向けられた抜刀の構えを前にして、真鍋義久たち檻の中の二次元人は激しく動揺し出す。
そして次の瞬間、修司は自身の闇の能力で造り出した漆黒の檻に向かって聖龍剣を抜刀し、凄まじい斬撃を檻へと放った。
「うわあっ!」「き、斬られるぅ!」
突然の修司から放たれる斬撃に、檻の中の大宮忍や嵐山ブンタ達は戸惑い混乱する。
そして修司が放った斬撃からの白光が檻の中に捕らわれている二次元人達を呑み込んだ次の瞬間。
今まで内部の二次元人達を幽閉し、自由を奪ってた漆黒の檻の鉄格子が切断され、檻は真っ二つに切断された。
「……あ、あれ? 私たち、何ともない……」「こ、これって……」
檻の中に捕らわれていたチョコに琴浦春香たちはというと、確かに斬撃は自分達にも浴びせられたにも関わらず、体には傷一つない現状に驚きを隠せなかった。
「これって、一体……!?」
プロト世代の海道ジンが動揺してると、例の如く道化のバギーが説明し出した。
「こ、これが……小田原修司の「斬らぬものは斬らず、斬るべきものだけを斬る真剣」……!」
「えっ?」新世代型の室戸台地が反応すると、バギーは説明を続ける。
「小田原修司の剣技、いやモノを斬る剣術というのは……斬るべき物体だけを切断し、斬りたくない物体だけは斬らずにそのまま残すという桁外れの剣技だ! 今みたいに檻だけを斬って、おれ達だけは斬らないという妙技もその剣技で斬撃を放ったからだ」
「檻だけを斬って、俺達だけは斬らなかったって訳か……!」
バギーの説明を聞いて、真鍋義久は不思議ながらも納得した。
一方で檻だけを切断して見せた修司は、抜刀した聖龍剣を鞘に戻しつつ義輝に言い放った。
「……仕方がない。現政奉還が起きたのも、元は俺も原因の一つ。賭け事の好きな将軍様の道楽に付き合うのも、また俺の贖罪……いや、将軍もあくまで俺の子、俺のクローン。子供の遊びに付き合ってやるのも親の務めってもんだ」
これを聞いて義輝は高らかに笑い飛ばす。
「ハハハッ、なるほど子か。確かに予を始めとする新世代型二次元人は其之方の子供に近いかもしれん。だが闇之朋よ、予と仕合うのは其之方だけではないぞ」
義輝に言われ、改めて周りを気遣う修司の周囲には、聖龍HEADの面々が並んでた。
そして此処で足正義輝は、
「では今ここに……国連総長である予と聖龍HEADの対決による、この世全てを賭けた仕合いを宣言する!」
次の瞬間、義輝の瞳が一瞬光ったと同時にその場にいた修司や聖龍HEADの面々以外の全員が一瞬で姿を消した。
一瞬にして姿を消したのは、聖龍HEAD以外の面々であり、義輝も同時に姿を消していた。
「義輝よ……この俺に現政奉還の幕引きをも務めさせるつもりなのか」
修司は鞘に納められた聖龍剣を見詰めながら物思いに耽る。
「………………………………」
「……修司」
物思いに耽る修司にミラーガールが声をかける。
「……アッコ」「……行くんでしょ。将軍の許に……!」
ミラーガールの質問に修司は真摯に答える。
「ああ、この俺が失望した原因であり、現政奉還を引き起こした張本人……そして何よりも、俺の血を引き継ぐ新世代型二次元人の頂点に立つ足正義輝の憂いた心を止める。それもまた、俺の贖罪の一つなのかもしれない……」
そう修司が語ると、ミラーガールに続いてバーンズも修司に話し掛ける。
「修司、将軍を止めて本当に現政奉還を終わらせるんだな……」
「ああ、そうだ。現政奉還が起きちまったのは、半分は俺が失望したのも原因の一つだからな」
するとバーンズに続き、キング・エンディミオンも修司に話し掛けた。
「だが修司。それでお前が黒武士の頃から行った大罪が消える訳じゃない。それでも行くのか……」
「ああ、行くよ衛。例え俺一人でも行く……アッコやお前達に何度も何度も救われ、そしてカァチェンからも気付かされた様に……また昔に戻ってみようと思う」
「昔の様に……?」
修司の発言にキューティーハニーが不思議がると、修司は彼女の疑問に答える。
「ああ。今さら何を言ってんだって思われちまうが……黒武士に化けて、純粋なる破滅に進化してた俺が言うのもアレだけど……俺はもう一度、護りたいんだ。俺の周りにいる、総ての尊い存在を……」
「……それが今のお前の意志って奴だな。確かにオレたち聖龍隊も後戻りできない地点まで辿り着いちまった。それ故に、今後も世界を混沌に至らしめちまう元凶に成り果てるのは目に見えている」
「………………」
「……だからこそ、オレ達は立ち止まってじゃいけねェんだ! 誰よりも前に突き進み、誰をも先導して、本当に叶えたいオレ達の理想を叶える! その夢の最果てを叶える為、オレ達は、邁進するのみ!!」
「バーンズ……!」
「修司、アッコ、そしてみんな! オレ達は聖龍隊を結成した時点から、後戻りできない修羅の道を突き進んできた! オレと同じく、修司共々将軍に戦いを挑む覚悟はできているか!!」
修司と話してたバーンズがそう宣言すると、聖龍HEADの面々は揃って賛同してくれた。
「……うん! 私も修司くんと一緒に、この現政奉還を終わらせたい! そして、あの将軍様にも分かってほしい……この世界には、まだまだ夢を追って活気付いている多くの人達が居る事を……!」
「昔の様に……いいえ、最初の頃の様に、みんな一緒になって将軍と戦って全てを本当に終わらせましょう!」
セーラームーンにキューティーハニーの台詞に感化されて、他の聖龍HEADも口々に熱弁する。
「どんな過酷な戦いに成ろうと、私は最後まで……みんなを治療します!」
「戦うのは本心から言って辛いけど……それでも、この乱世を終わらせられる可能性が少しでもあるなら、私も最後まで……!」
「よぉしッ、こうなったら私達であの将軍様に、如何に世界がみんなの夢で活気付いてて輝いているか示しちゃおうよ!」
「この世は確かに勧善懲悪って形で全てが丸く収まる訳じゃないけど……それでも、みんながみんな夢や信念を持ってない訳じゃないってのを将軍様に伝えよう!」
「戦争だけじゃない、この世には色んな形で人々が夢や理想を叶える切っ掛けを得られている現実を……将軍様に教えてあげましょう」
ナースエンジェルに木之本桜、コレクターユイに獅堂光そしてちせ達が唱えると、最後にミュウイチゴに七海るちあそして真紅も修司に訴えかけた。
「こうなったら、修司さんも一緒になって、昔みたいに暴れ回っちゃおうよ!」
「相手は剣帝将軍……! こっちも最高戦力で挑むしかないわ!」
「修司、また一緒に戦ってちょうだい……! 昔みたいに……」
真紅からの問いかけに、修司はハッキリと返答した。
「みんな……! ああ、俺からも頼む。これが現政奉還最後の戦いだ……! 俺たち聖龍HEADで足正義輝に挑み、勝利を勝ち取って見せる! そして全てが終わった暁には、俺は……」
そう最後まで修司が言い終わる寸前で、ミラーガールが修司に言った。
「修司……! 最後の事は、将軍との戦いが終わってから考えましょう。今は現政奉還を本当に終わらせたくないと思ってる足正義輝を一緒に止めるのよ!」
「……! うむ、そうだなアッコ」
そうミラーガールに答えると、修司は聖龍剣を抜刀して聖龍HEADに言い渡した。
「聖龍HEAD!! 俺達は今より……剣帝・足正義輝に戦いを挑む!! 覚悟を決め、そして俺に……この俺に、再びついてきてくれッ!!」
『応ッ!!』
修司の呼び掛けに聖龍HEADは高々と応えた。
そして修司を先頭に、聖龍HEADは動いた。
目指すは足正義輝が居住にしている館……朱黒の館、栄禄の宮に。
[廻り続ける朱黒の館、栄禄の宮]
修司率いる聖龍HEADが辿り着いた館は、朱色の和紙による壁紙や金の装飾が施された何とも煌びやかな宮殿だった。
「こ、此処に足正義輝が居るというのか……!」
戦闘に入るという事で、バーンズは再びメタルバードへと変身していた。
と、宮殿に入るや否や、聖龍HEADが潜り抜けた門が自然と閉まり、何処からともなく足正義輝の声が修司達を出迎えた。
「ようこそ、朋よ! ここが決戦の所、朱黒の館だ! 少し道楽が高じてな……創り直させてしまったよ」
聖龍HEADが唖然とする中、修司だけはまるで導かれる様に宮殿の豪華な廊下を突き進む。
「……ところで、私達以外のみんなは何処に?」
そう進行しながらミラーガールが思わず呟くと、そんな彼女の思いを察したか先ほど義輝の声をアナウンスした屋内スピーカーから声がした。
「アッコさーーん、俺たちも何故か将軍と一緒にいます!」
その声は新世代型二次元人の真鍋義久だった。すると真鍋に続いて聞き慣れた声も聞こえてきた。
「HEADの皆はん! どうもアタイらは将軍の桁外れのテレポート能力で、修司はんとHEAD以外の面子は全員この宮殿の最深部に瞬間移動されたみたいや!」
声の主、スター・コマンドーの一員であるテレポーター、野上葵の説明を受けて聖龍HEADは義輝が超能力をも持ち合わせている事実に驚愕する。
「どうも僕たち全員に、修司さんと聖龍HEADの戦い振りを拝見させようと、宮殿の最深部に強制的に瞬間移動されたみたいです! 将軍様も僕らと同様、最深部で皆さんを待っています。どうかお気を付けて!」
最後に村田順一の声で、修司と聖龍HEADの面々は、自分達以外の面子は全員、足正義輝が待機している最深部で修司たちの到着を待ちながら戦いの様子を観衆してるというのだ。
「……俺達以外のみんなが無事なのは勿怪の幸いだ。こうなりゃ、将軍に俺達の実力見せ付けてやろうぜ!」
修司からの激励に、聖龍HEADの面々は頷くのだった。
それから一行が駆け進むと、朱色と黒色の異なる二色の扉が高速回転する広場に出た。そして其処には大勢の兵士達が配置されていた。
「者ども掛かれッ! 将軍様に仇名す不届き者ぞ!」
兵士達は上官兵に指示されるままに、修司たち聖龍HEADに襲い掛かった。
「行くぞッ! 此処からが腕の見せ所だ!」
修司の言葉に聖龍HEADの面々も同意し、各自周辺の兵士達と交戦する。
「喰らいやがれッ!」『うわあっ!』
メタルバードが起こした竜巻に巻き込まれて、多数の兵士が宙へと舞う。
「受けてみなさい……!」「僕らの合体技だ!」『うひゃっ!』
ウォーターフェアリーとジュピターキッドの水と樹の合体技を浴びて散り散りに吹き飛ばされる兵士たち。
そして……
「背を合わせるぞ……!」「ええ! 昔の様にね」
そうお互いに背を預けて声を掛け合う修司とミラーガールの二人も戦前で活躍。
他の聖龍HEADの面々も足正兵に動じず、奮戦していく。
が、修司や聖龍HEADに倒されたと思われた兵士達は悉く起き上がり、再び戦闘に戻るのだった。
「こ、こいつらのスタミナ……底なしかよ!?」
堂本海斗たちが蒼然としていると、修司が聖龍HEADに強く言い渡した。
「気をつけろ! こいつら全員、新世代型だ! 体力や戦闘力は並じゃねえぞ!!」
この修司の発言に、聖龍HEAD全員が目を丸くして驚いた。
「ふん、反逆者だけあって品が無いわい」
そう言いながら再び襲い掛かろうとする兵士に、セーラームーンたちは戸惑うばかり。
するとその兵士の背後から、キューティーハニーが武器で斬り付けて兵士を倒した。
「戸惑ってばかりじゃダメよ! 修司くんの為にも、そして未来を生きる多くの若き命の為にも此処で立ち止まってちゃいけないわ!」
キューティーハニーに言われて気付かされたセーラー戦士達は、再び兵士達と戦うのだった。
「今以上に奮われよ! でなければ、帝に謁見はならぬぞ」
時おり相手兵から指摘を受けながら、修司たちは攻め続ける。
「あ……安心した……その程度じゃ、義輝様には敵わ、ない……」
倒した兵士が言い残す言葉の重みに、修司達は動揺するのだった。
「狼藉者め! ひかえよ、ここを何処と思っている!」
「狼藉者で結構よッ!」
相手兵からの叱咤に、メタルバードは吐き散らしながら兵士を撃破する。
「民よ、将よ! 義輝様の意のままに燃えよォ!」
「そんなに燃えたきゃ、燃やしてあげるわ!」
セーラーマーズの火炎の技が兵士を焼け焦がす。
「皆の者、足正様はお悦びである!」
修司達と死闘を繰り広げる兵士達に、上官兵が言い渡した。
「あの御方は底なしの器よ……それ故に満たされはせぬ」
「……!」
満たされぬ器を持ってると言われ、ミラーガールは人知れず修司と義輝を重ね合わせた。
「
「ぬしら、帝殺しの大罪人として名を残したいらしいな……」
迎え撃つ兵士達を前に、ちせは容赦なく攻撃を浴びせて一掃する。
「義輝様に倣い……拙者もまた、赤黒く生き抜こうぞ」
果たして、赤黒く生き抜く以外、兵士も足正義輝も道はないのだろうか。
「この口惜しさ、憤り……これが本当の戦なのか……?」
修司達と死闘を展開し、その中で兵士達は今まで感じた事のない境地を感じ入る。
「武士の頭領、その下で死ねるこそ誉よ!」「ここより先、通すわけにはまいりませぬ」
足正義輝の下で死ぬ事こそ本望と申し開く兵士達を、時には聖龍剣で斬り進み、時には怪力で投げ飛ばしていく修司を、最深部から観戦してる聖龍隊士たちは舞い上がるほど歓喜に沸いた。
「おおっ……! これが、これこそ……鬼神・小田原修司の戦い振りだッ!!」
『おおっ……!!』
豪快な戦闘スタイルの修司を観戦して、かつての小田原修司が甦ったと歓喜に沸く隊士達。
そして群がる兵士達を次々に突破していった修司たち。
するとその場の兵士達を全て倒すと、高速回転する赤色の扉と黒色の扉の前に突如として和太鼓が置かれた陣が床下から現れた。
「朋よ!
義輝の声に、修司たちは戸惑う。
「こ、これって……?」
ナースエンジェルが動揺すると、義輝が説明した。
「朋輩よ、其れは
義輝の説明に納得した修司は、左右の陣の間に移動すると両腕を大きく振り構えた。
「要するに運に任せて先に進めって事だな。それじゃ……」
すると修司は振り翳した両腕を空中に叩き付けて、空中に罅を入れて強大な震動で左右の陣を同時に破壊して見せた。
「ゲゲッ、あれは今は亡き白モジャ……そして黒ひげが使えてた震動の能力! 小田原修司め、闇の能力の複製術で震動の破壊力までコピーしていやがる……!」
義輝と共に最深部で待機している道化のバギーが修司の豪快な技を見て、激しく驚く。
すると回転してた赤色と黒色の扉がゆっくりと停止し、修司たちの目の前には黒色の扉が止まった。
「ははっ、成程。震動の能力で同時に破壊するとは……だが、それは流石に狡くないか闇之朋よ。従って、此度の車輪の停止は外れと見做す!」
陣を二つ同時に破壊した修司の行動に、流石の義輝も反則と見做して外れとした。
「ううむ……俺って、くじ運ない方だからな……」
陣を同時に破壊した行為を反則と捉えられた修司は、自分のくじ運の無さに少し落ち込む。
「それにしても最終決戦の時まで賭け事を持ち込むなんて……」
蒼の騎士が義輝の博打好きに呆れていると、義輝は公言する。
「ふ……! 道楽狂の暗愚な王と、誹らば誹れ」
将軍の言葉を聞きながら、修司達は宮殿の最深部へと向かうのだった。
[愛の道と示現の道]
そうして停止した黒色の扉に進入した修司達。
その通路を道なりに進んでいくと、例の回転する二色の扉の前には足正派に加わっている戦界武将シマ・ギンテルの姿が。
そんなギンテルの横から、二人ほど軽やかなステップで登場してきた。
「今日は♪ 修司教日~より♪」
(嫌だな♪ 早く、お家に帰りたいな♪)
そう口ずさんで現れたのは修司教の最高責任者である少年・大友宗助と、その側近である豪傑・立花宗茂だった。
立花宗茂、大友宗助、シマ・ギンテル 修司教・足正派 集結
「あぁ! 修司様と聖龍HEADの方々に愛の試練を与える出目を……!」
(ああ……此処、緊張と回転で目が回っちゃうな……)
「戦で博打とは面白か趣向じゃ! 大当たりはオイよ!」
そう各々の思いを口に出したり心の中で呟いたりする三人を前に修司達が立ち止まっていると、スピーカーから義輝の声が。
「互いに小手先の姑息は無用、面白う仕合え!」
「なるほど、次はこの三人と仕合えって事か……」
義輝の真意を聞いて、修司は聖龍剣を抜いて構え始めた。
「い、いやいや! 修司様、あなた方に試練を与えるのは宗茂とチェストギンテルです! 僕は皆様方の戦いを見守っています」
「宗助様、どうか手前らの戦ぶり、拝見してくだされ」
「宗助どん、修司はんらと戦うのはワシらに任せて、そこで大人しく見ててくんろ」
そう大友宗助に言う立花宗茂とシマ・ギンテルの二人は、各々が扱う雷切と巨大な斧を組み交わして互いに息を合わせる。
「宗茂どん、準備はヨカぁね?」「ギンテル殿の息に合わせましょう!」
「「決戦の始まりじゃあ!」です!」
勇猛双璧 立花宗茂 シマ・ギンテル
「ッ……義輝側の武将も出てくると予想はしていたが……まさか初っ端から豪傑の二人とぶつかるとはな」
「ふふっ、修司殿、貴方らしくもない……まさか、此処でおめおめと退くあなた方ではないでしょう?」
「当り前よッ!」
宗茂からの挑発に、修司は聖龍剣を振り翳して二人に襲い掛かる。
「ちぇすと!!」
だが、そこにギンテルの巨大斧が修司の聖龍剣を弾いて後ろへと退かせる。
「この盤上に、オイの示現が見えそうじゃ……おまはんら、ちょいと手伝ってくれんね」
そんな戦前に立つ相手側の二人に聖龍HEADも駆け寄り、訴えかける。
「貴方たち二人も、私達の行く手を阻む訳ね……!」
ミラーガールが険しい顔で問いかけると、宗茂は返答した。
「加賀美殿、手前と宗助様は心から、あなた方聖龍隊の活躍を援助してきました。……そして今、あなた方聖龍隊を導き、そして多くを導く皆様方が本当に将軍様と対峙するほどの力量や覚悟があるかどうか、失礼ながら見定めさせてもらいます!」
すると今度は木之本桜が問いかける。
「お二人は将軍の御意志で、私達と立ち向かう訳なんですか……?」
これにギンテルが答えた。
「いんや、これは紛れもなくオイの意志ね……進んで修羅を騙るのも、時には必要ちゅうこっちゃ」
と、仲間達と二人の会話を聞き入れていた修司が皆に言った。
「お喋りの時間は其処までだ! 俺は俺のケジメを付ける為にも、将軍と再戦する……その為に立花、そしてギンテル。お前達に勝つ!」
そう言うと修司は再び二人に斬りかかっていく。
「修司に遅れを取るな! オレ達も共闘するぞ!」
メタルバードの指示で、聖龍HEADも修司に続いて宗茂とギンテル相手に交戦を開始。
「皆まで云うまいが、容易く明け渡してはつまらぬぞ?」
「如何様にも……!(将軍様に見られるなんて、緊張するな)」
その場を明け渡すまでに至らぬ様にと命ずる義輝に対して、宗茂は心中では大層緊張しながら魔法騎士の三人と剣を交える。
「ちぇすと!!」『っ!』
凄まじい鬼気迫る勢いで斧を振り下ろして一刀両断しようと攻めるギンテルに対して、るちあ達マーメイドプリンセス達は尻込みするばかり。
そんな鬼気迫る勢いで攻めてくるギンテルの前に、ミラーガールが立ちはだかる。
「ミラーガール……また会ったのぉ」「ギンテルさん……!」
以前にも、謁見ノ儀による大戦で顔を合わせたミラーガールとギンテル。するとギンテルはミラーガールと交戦しながら彼女に礼を述べた。
「ミラーガール、以前はホンにあんがと。示現の道は鬼の道、茨の道……されど、それを扱うのは人じゃという事を思い出させてくれて。人の心を失った剣士が示現を示して良い訳がない事を知らしめてくれて……オイは感謝しとっばい!」
「ギンテルさん……!」
「そして今……! ワシは一人の老兵として、人として……己の示現の道を示す時なんじゃ! 己を示す道、示現の極意でおまはんら聖龍HEADを……そして修司どんを導きたいんじゃ!」
「ギンテルさん……分かりました! 貴方の覚悟、私達が受け止めます!」
「あんがとね、ミラーガール」
こうしてギンテルはミラーガールを始めとする聖龍HEADの面々と仕合を続行した。
「そおりゃあッ!」
宗茂は二対の雷切を前方に振るってミュウイチゴや真紅達を切り裂こうと善戦してた。
「相変わらず厄介なチェーンソーみたいな武器ね……!」
「でもその分、技を外した時の隙が大きいニャン!」
雷切を空振りした宗茂の腹に、真紅は絆パンチを、ミュウイチゴは強烈な蹴りを打ち込んで後方へと吹き飛ばす。
「ぐほっ……! う、うむ……そちらも相も変わらない武芸。お見事です!」
そう攻撃を当てた二人に伝えた宗茂は、再び雷切を振るって周囲のコレクターズやセーラー戦士達に突撃する。
「足正公! どうか手前の戦働き……ひいては大友の力、何卒ご照覧下さりませ……!」
と、戦いの最中でも主君である大友家の威厳を示して見せる宗茂だったが、本心は……。
(絶対胡散臭いって思われているから、せめてわしが名誉挽回しないと)
と、足正義輝が修司教に対して疑心暗鬼を抱いている前提で戦っていた。
だが、そんな宗茂の心中を察してか、修司達の戦いを観戦してる義輝はスピーカーから公言。
「ははは! 案ずるな、朋よ。予は其之方の主の熱意に感心したまでの事。もしまだ足りぬと云うならば、いくらでも金子を渡そうぞ!」
「い、いや! これ以上は流石にマズイです……!」
この義輝の公言に動揺する宗茂の言動を前にして、修司達は驚愕した。
「お、おい宗茂! まさか国連総長から修司教に金銭が援助されているってのか……!?」
メタルバードが思わず問い質すと、宗茂ではなく近くで戦いを観戦している主君の大友宗助が答えた。
「将軍様は僕らが布教している修司教に大変感銘を受けてくださりましてね……実は多額の援助金を出してくれているんですよ」
これを聞いて修司達は驚いてしまう。
「僕たちの布教とかで、国連総長のお金を使っちゃってる訳!?」
自分たち聖龍隊や二次元人の布教を義輝のお金で行っているのかとジュピターキッドは酷く動揺した。するとこれに対して宗茂は戦闘を一時やめて平謝り。
「平に! 平に! ご容赦ください!!」
そんな頭を下げて平謝りする宗茂を目の当たりにして呆れてしまう修司たち。
そうこうしながら戦いは佳境へと至る。
懸命に二人同時に襲ってくる宗茂とギンテルを相手に、修司は仲間達の支援も相まって対等に渡り合っていた。
「勝を決するは天か己か……貴殿はどう思われますか?」
「そうだな……結局のところ、運も絡んでくるのも事実かな?」
宗茂の問いかけに、堂本海斗は苦笑しながら答える。
「目が覚めるようなヨカ立ち合いよ……」「ふふ、ありがとう……」
戦闘で体力を消耗してるギンテルからの称賛に、ミラーガールも肩で呼吸しながら返事する。
「そうりゃあああッ!!」
電気を全身に纏って突進しながら雷切を前へと振るう宗茂の攻撃を、ちせがレーザーソードの両腕で防ぎ止める。
雷切による激しい火花が散る中、一方でギンテルは電撃を纏った巨大斧でセーラー戦士達にマーメイドプリンセス達へ斬りかかる。
「チェスト!」
物凄い轟音を響かせながら斧を振るうギンテルの猛攻に、聖龍HEADは防戦一方。
すると其処に修司が、床に振り下ろされたギンテルの巨大斧に一発蹴りを入れて、からのギンテルの顔面に拳を叩き込んだ。
「ぶへしッ」
修司に顔を殴られて怯んでしまうギンテルは、真剣勝負ではない修司の戦法に反論する。
「し、修司どん! なにワシの顔に拳入れっとよ? 同じ剣豪同士なら、真剣で勝負するっと」
これに対して修司は腹が立ちそうなほどの真顔で言い返した。
「今の俺は真剣勝負も、ただの喧嘩と変わりねえんだよ……! 剣での斬り合いも殴り合いも、蹴りだってやっちゃうからな」
この修司の台詞を聞いた皆々は揃って心中思った。
(た、だたのヤクザだ!!)
この時の修司の顔は、まさに下種顔といった感じだったという。
しかし、そんな修司に臆する事無く、ギンテルと宗茂は同時に修司へと襲い掛かっていく。
「チェストーー!」「うおおおおッ!」
ギンテルの大斧と宗茂の雷切が修司に襲い掛かろうとした直前。
ギンテルの大斧をキング・エンディミオンと堂本海斗が、宗茂の雷切を蒼の騎士とメタルバードが、それぞれ刃で食い止めた。
「今だ……ッ!」「修司……!」
キング・エンディミオンとメタルバードの声に、修司は動きが止まったギンテルと宗茂に猛攻を仕掛ける。
「うおりゃあ!! 今度はこっちから仕掛けさせてもらう!!」
修司の剣戟からの蹴りと殴打の嵐に、ギンテルも宗茂も圧倒されてしまう。
そして接戦に次ぐ接戦の末、修司達は立花宗茂とシマ・ギンテルを打ち負かした。
「そりゃッ!」
修司の掛け声と共に放った剣戟での攻撃が、宗茂の雷切とギンテルの大斧を同時に弾き返して、遠くへと飛ばしてしまった。
「さ、流石は我が主が認めた武人……! お見事です……」
「ぬしらの博打、完全にオイたちの負けね。がははッ……いやあ、ヨカぁ仕合じゃったばい!」
宗茂とギンテルを打ち負かした修司達に、宗茂が話し出した。
「修司殿……己のクローンを世界が勝手に生み出した事で、せっかく二次元人の方々から貰い受けた心を捨ててしまったのは……手前、同じ武士として悲しかったです!」
「宗茂……」
「ですが……あの感情が欠けていたシバ・カァチェンに加賀美殿の功績で、こうして再び心ある武人同士で立ち会えた事……この宗茂、心より感銘致しました! 貴方が我が主、宗助様が京都で迷子になった際に助けてくださった時から今に至るまで関係を維持してくださり、宗助様の成長にも繋がりました! ありがとうございます、修司殿!」
己が主君である大友宗助を京都で出会った頃から今に至るまで関係を続けてくれた修司達に感謝を述べる宗茂。
そしてギンテルも宗茂に続いて修司達に話し出した。
「修司どん。心っちゅうのは掛け替えのない宝ね。オイも先の大戦でミラーガールに止められ、そしてその瞳を見て気付かされたわい……鬼の心では大事なモンは伝わらん。情のある人の心こそ、後世に何かを遺していける大切な心なんとよ。修司どん、おまはんも新世代型と人の心で向き合うとよ。そうすれば、お互いに前へと進める筈ばい! ワシらはそれを期待してるとよ!」
「ギンテルさん……」
ギンテルの温かい言葉に、ミラーガールは静かに感動した。
すると最後に、その場の皆の戦いを傍観してた大友宗助が修司達に語り始めた。
「修司様、貴方と僕が京の都で出会った頃から、僕らの関係はマリアナ海溝よりも深くなりましたね。僕は修司様の寛大な思想に、そして二次元人たちの素晴らしい存在意義に感銘を受けて、あなた方を崇拝する修司教を設立しました! ……今回の現政奉還で、僕を救ってくれた修司様が我が子ともいうべき新世代型二次元人の存在に嘆いて、二次元人から賜った心を失ってしまった経緯は実に悲劇でした。僕は貴方にまた心を取り戻してほしかった……だからこそ足正派に加わり、貴方と聖龍HEADに愛の試練を与えたのです!」
「そうか……手間をかけたな、宗助」
修司がそう言うと、宗助は微笑んで修司に話し返した。
「ふふ、良いんですよ。貴方はもう心を取り戻し、愛する女性や仲間達と明日を生きる為に懸命に駆け抜けている……それならば、もう僕らが心配する必要はないですからね」
宗助の言葉に、宗茂もギンテルも笑顔を浮かべた。
そして最後に宗助は修司に言った。
「修司様、本当の自分を恐れないでください……新世代型と向き合うという事は、自分と向き合う事……自分自身から逃げず、向き合う事が大切なのではないですか?」
『………………』
「おおっと、僕とした事が! つい修司様達に説教じみたこと言ってしまいました」
思わず自分自身の口を手で塞ぐ宗助に、修司は静かに言った。
「……心配かけて済まねえな、宗助……あんがとよ」
修司の謝罪とお礼に、宗助は満面の笑みを浮かべた。
「さあ! 愛の試練と……」
「示現の道は終わったばい!」
「これから先は、あなた達が自分の意志と力で突き進むのです!」
宗助とギンテルと宗茂からの言葉を背に、修司達は先へと進攻するのだった。
[真の無敵の意味]
大友宗助が見守る中、立花宗茂とシマ・ギンテルの剣豪二人を突破した修司達は、再び回転する赤と黒の外輪の前で止まった。
そして修司教を突破した事で左右の床から赤と黒の太鼓陣が出現した。
「……どうしよう。俺、勝負運ないしな……」
先ほどは二つ同時に破壊した事で外れにされてしまった修司は、自分の運の無さを痛感して太鼓陣を壊すのを躊躇ってしまう。
すると其処にメタルバードが駆け付けて。
「焦れってェな! オレが壊すぜ!」
と、メタルバードは迷う事無く赤色の太鼓陣を破壊して、外輪を停止させる。
すると外輪は見事に赤色で止まり、一行は赤色の扉を進行した。
「へへ、オレはいつもパチンコとかで勝負運を鍛えているんでね」
そう調子よく言うメタルバードに、修司が苦々しい顔で言った。
「お前……相変わらずギャンブルしてるのか? 人間、地道に稼いだ方が得だぞ?」
「お前は少し人生に楽しみというか、ゆとりが無いんだよ」
「いや、ギャンブルって言う楽しみなんて要らないよ」
そう会話しながら修司とメタルバードは、皆と共に奥へと進む。
そんな修司達に義輝は声を掛ける。
「一歩前進といったところだな、朋よ?」
一行が進軍すると、先ほどメタルバードが当たりを引いたからか、進むべき通路の脇に金銀財宝が配置されていた。
「こ、これって……!?」
目の前に堂々と置かれている煌びやかな財宝を前に、ミラーガール達は目を丸くするばかり。
そんな一行に義輝が申した。
「どうかな、朋らよ。予をこれ程までに楽しませてくれているのだから、金銀財宝など好きなだけ褒美として賜ろうか? ははッ!」
いくら物に執着しない足正義輝とはいえ、大量の金銀財宝を堂々と置いているのはどうかなと呆れる修司。
すると結構な頻度で貧乏なメタルバードがこっそり金銀財宝の一部を持って返ろうと手を伸ばしてた。
「バーンズ!」
「ヒッ、い、良いじゃないか、ちょっとぐらい……将軍だって良いって言ってくれているんだし……」
セーラーネプチューンに注意され、メタルバードは渋々伸ばしていた手を引っ込めた。
そんな中で一行が進んでいくと、通路の奥その真ん中に人がポツンと一人背中を向けて突っ立っていた。
「アイツは……?」
此方に背を向けて立っている人物に修司達が歩み寄ると、その人物はひょいと修司達の方に向き直って熱く名乗り始めた。
「誰が呼んだか! 世界はいつでも、俺が主役! 絶対無敵! ナオエフ・カネノフ、参上!!」
絶対無敵 ナオエフ・カネノフ 無敵出撃
『………………………………』
ロシア軍に在籍している無敵と自称するナオエフ・カネノフの登場に、修司達は唖然と口を開けてしまう。
そして修司達を認識したナオエフ・カネノフはここぞとばかりに剣を振り回して攻撃してきた。
「記憶よりも記録に残る主人公! ナオエフ・カネノフの技、見せてやる!」
しかしナオエフ・カネノフの振るう剣は全く修司達には当たらず、ただ我武者羅にナオエフ・カネノフは剣を振り回すばかり。
「なるほど、コイツが此処にいるって事は、やはり……」
そんな一人で当たらない猛攻を続けるナオエフ・カネノフを前にして、修司はロシア軍に在籍してる彼が永禄の宮にいる事から、足正派側にあの軍神達が潜んでいると睨む。
一方でナオエフ・カネノフは東京ミュウミュウズやマーメイドプリンセス達に斬りかかって行くが、やはり攻撃は当たらない。
攻め手一方のナオエフ・カネノフは、当たらぬ剣を振るい続けながら修司達に唱えた。
「無敵の俺が、お前たち聖龍HEADに真の無敵の意味を教えてやろう! 誰一人として敵では無い事、すなわち……平和な世だ」
(ふ、深い!!)
ナオエフ・カネノフが説いた名言に、修司以外の聖龍HEADは言葉に出さなかったが心中でかなり衝撃を受けた。
だが、そんな名言を唱えたナオエフ・カネノフに修司が歩み寄り、聖龍剣でナオエフ・カネノフの剣を振り弾くと唱え返した。
「そいつは違うな……! 誰にでも永遠の敵はいる……そう、心の中の……弱い、自分がな……」
『!!』
心の中の弱い自分自身が永遠の敵であると唱える修司の格言に、聖龍HEADもナオエフ・カネノフも愕然とする。
そう唱えた修司は再び聖龍剣を振るうと、たった一振りでナオエフ・カネノフを吹っ飛ばした。
「うおおおおおッ! 無敵な名言を格言で返されたーーッ!!」
絶叫しながらナオエフ・カネノフは通路奥の壁に叩き付けられてしまう。
「……そう、本当の敵は己自身……弱い己こそが、打ち勝たなければならない敵なんだ……」
悲痛な面持ちでそう呟く修司は、心中で己が生み出してしまった負の感情の塊、闇人を思い起こしていた。
そんな修司の心痛な想いを汲み取り、ミラーガールが修司の腕を取り、優しく修司の目を見詰める。
ミラーガールからの温もりを受けて、修司は進行を再開した。
「物足りぬ……という顔をしているな、朋よ? 隠さずともよい、予には理解る」
そんな修司一行がナオエフ・カネノフに対しては実力が存分に発揮できなかった事実を、義輝は見通していた。
そしてナオエフ・カネノフを突破した事で、再び廻る二色の回転扉を止める赤と黒の太鼓陣が床から出現する。
「次は僕が止めてみるよ……!」
そう言って外輪の停止を試みるのは、聖龍隊参謀総長のジュピターキッド。彼は荊の鞭を振るって黒色の太鼓陣を破壊したが、止まったのは赤色の外輪扉だった。
「あちゃ~~、外れか」
壊した太鼓陣の色と、目の前に止まった外輪扉の色が違ってしまい、頭を掻いて悔しがるジュピターキッド。
すると外れの扉から無数の足正兵が雪崩れ込んで来て、修司達を襲撃する。
「これぞ
自分の配下の兵士達と修司達が交戦するのを楽しむ義輝は、嬉々として喜んでいた。
更に義輝は、修司達と戦い合う自軍の兵士達を激励する。
「皆、あの燃え盛る炎の如き意志を消してみるがいい! なれば、栄誉褒賞は思うがままぞ!」
「足正の御名に掛けて!」
義輝の激励に対して、兵士達も主の名において存分に腕を振るう事を宣言する。
だが修司達は雑兵を意図も容易く返り討ちにして倒していく。
「その燃え輝く瞳、命張りし賭場を謳歌しているな! 朋よ!」
そんな修司達の奮闘する姿を目視し、義輝は修司達に激励を飛ばす。
聖龍HEADの剣が兵士を斬り付け、槍が兵士を貫き、鞭が複数の兵士を宙へと舞い上がらせ、弓矢が多くの兵士を射抜く。
国連総長・足正義輝の目が光る中、修司一行は群がる兵士達を退け、最深部へと進行する。
[妖艶なる鬼神の義姉]
外れの外輪を止めた事で、無数の敵兵が群がる戦況に至ってしまった修司一行。
だが、修司達は群がる兵士達を撃退し、永禄の宮最深部へと進み続ける。
と、回転する外輪の手前、その天井から緑の布をブランコの様にして見上げる修司達の頭上で待ち侘びていた女性の姿が確認された。
「ふふ、どうやら鬼神も元の姿へと戻ったみたいね。でも、あの完璧なる男・義輝に勝てるかどうかは別」
「……! 貴女は……」
天井から吊るされた布に腰を下ろして頭上から見下ろしてくる女性に、ミラーガール達は驚いた。
「ふふふ……さぁってと。あなた達が如何に義輝と仕合うのに釣り合うかどうか……妾が見定めて、ア・ゲ・ル♪」
愛染艶花 マリア 品定
修司一行の前に立ちはだかったのは、韓国将軍サイ・チョウセイの実姉にして修司の義姉にあたる妖艶ながらも悪女として名高いマリアだった。
「マリアさん……!?」
頭上から見下ろしてくるマリアを見上げて、ミラーガール達は目を丸くして驚く。
「ふふ、聖龍HEAD、そして鬼神として名高い小田原修司……二つの勢力が再び一つに合わさった際の力が如何なものか……妾が見定めるから、覚悟してちょうだい」
「ははっ、マリアよ。朋達はまだまだ実力を全て出し切ってはいない……故に、一つその場にて朋らの実力を見定めてほしい!」
妖しく微笑むマリアに、義輝は修司達の実力を見極めてほしいと申し渡す。
これにマリアは上機嫌に答えた。
「分かってるわ義輝。このマリアの洗練された瞳で、彼女達の実力を見極めてあげるわ……ふふっ」
すると布を伸縮させて天井から降りてきたマリアは、修司達の眼前に立つと向かい合って物申した。
「それじゃあ、行くわよ♪ たぁ~っぷり妾を楽しませてちょうだいね♪」
次の瞬間、マリアは身に着けている衣服から同色の布を前方へと飛ばしてきた。
修司は黒武士の時に既にマリアの戦法を目にしているので、瞬時に飛来する布をかわした。
だが修司が避けた布は後ろにいたセーラージュピター/コレクターハルナ/蒼の騎士に巻き付いて、三人をきつく締めあげて拘束。
「うわっ!」
三人は自分達の体に巻き付く布に拘束されて身動きできずにいたが、そこにマリアが追撃で更に布を飛ばし、最初に布を巻き付けた三人を回して独楽の様にしてしまう。
「お、おおい三人とも……う、うわッ!」「ま、まこちゃん、わっ!」
キング・エンディミオンやセーラーマーキュリーたちが戸惑う中、独楽の様に回り出した三人はその場の皆に襲い掛かる。
独楽の様に回り出す三人に弾かれ、てんてこ舞いの皆に対してマリアは攻撃の手を緩める事無く、身体を回してフラフープの様に布を飛ばしては更に人間独楽を増やしていく。
遂には最初の三人に始まり、ミュウプリン/龍咲海/ちせ/ナースエンジェル/ココ/そしてメタルバードまでも人間独楽として扱われ、現場を縦横無尽に暴れ回る。
そんな人間独楽と成り果てた仲間達を前に、修司は息を静めて全身全霊で集中すると、一気に前へと駆け込むと同時に瞬時に抜刀して人間独楽の合間を通過した。
そして停止すると同時に修司は抜刀した聖龍剣を鞘に納めると同時に、人間独楽にされてた皆に巻き付いていた布だけが斬られて無事に解放された。
「ひ、ひえぇ……相変わらず修司くんの抜刀は怖いけど……」
「見事な太刀筋……! 綺麗に体に巻き付いていた布だけを斬って見せたわ」
修司の目にも止まらない速き抜刀術に驚くセーラームーンに、布だけを斬って見せた修司の剣術に目を光らせるキューティーハニー。
そして同じく、その修司の早業を目にしたマリアも微笑みを返した。
「流石は鬼神と呼ばれてただけの事はあるわね? 貴方に……期待してもいいのかしら? 義輝と同等に戦えるという、期待を……ふふ♪」
すると修司も同じくしてマリアに口元を微笑ませて返した。
「今の俺に、あの将軍と互角に戦える実力があるのかどうかなんて分からねえよ」
次の瞬間、修司は目付きを鋭くさせた険しい顔付きで言った。
「……でもな、覚悟だけはできてる。もう一度、この手で……そう、全てを滅ぼそうとした俺が、また総てを護れるかどうか。将軍との戦いで全てを賭けてみるだけよ」
この修司の台詞を聞いて、マリオは微笑みながら納得した。
「なるほど、貴方も義輝同様に賭けているのね。これは見ものだわ」
マリアも修司達と足正義輝の仕合に興味津々だった。
すると此処でマリアが修司に話し掛けてきた。
「そうそう、ところで小田原修司……」
満面の笑みで修司に歩み寄り、距離を詰めていくマリア。
そして修司の目前まで歩み寄ると、修司の顔に自身の顔を近付けて圧をかける様に言った。
「おいテメェ、なにウチの弟を殺してやがるんだ? 純粋なる破滅だが何だか知らねえけど、タダで済むと思うなよ?」
先の大戦で一時的とはいえ修司に弟を殺されたマリアは、修司を睨み付けた上でドスの利いた声で修司を脅し始めた。
『キャラ変わってる!!』
弟思いな姉の一面を見せるマリアの豹変ぶりに、聖龍HEADは驚愕する。
「あ、姉上! 完全に別人格ですぞ! 落ち着くのです……!」
と、最深部で修司達の到着を義輝と共に待っているマリアの実弟サイ・チョウセイは慌てふためく。
一方でマリアに睨まれている修司は、目を泳がせてマリアと目が合わせられず完全に動揺している様子だった。
「あ、姉上……! 兄者が元に戻ってくれただけでも幸いですし、何より我々も姉者であるミラーガールのお陰で甦った訳ですし、もう良いじゃないですか」
修司に言い寄るマリアをチョウセイが必死に宥めると、マリアは冷静になる。
「ふぅ、まあ良いわ。どちらにしろ、あなた達が義輝に勝てない以上、この乱世が終わる事はないでしょうし。精々足掻く事ね」
そう言うとマリアは修司達に背を向けて立ち去ろうとする。
「私はあなた達以外のみんなと一緒に、義輝とあなた達の戦いを最後まで見届けるわ。……この乱世が終わるか続くか、たっぷり踊りなさいね」
そう言い残すマリアの背中を見送り、修司達は再び最深部へと前進する。
そして一行の前にまたしても回転する外輪扉が立ちはだかり、扉の前には赤と黒の太鼓陣が床から出現した。
「次は私がやってみるわ……!」
そう言って今回はミラーガールが赤色の太鼓陣を破壊する。
すると外輪は停止し、一行の前に止まったのは黒色の扉だった。
「あれれ、外れちゃったわね……」
破壊した太鼓陣の色と止めた外輪の色が一致せず、外れてしまうミラーガールは呆然としてしまう。
そして停止した黒の扉からは外れである為に大勢の足正兵が出現し、修司達に襲い掛かる。
「怯まない! 前進あるのみ!」
そう参謀総長のジュピターキッドが鞭を振るいながら周りに呼び掛け、それに応える様に真紅が絆パンチで兵士を攻撃していく。
そんな攻防を展開する修司達の戦いぶりを最深部で観戦してる義輝は、戦っている修司達に告げる。
「どうした朋よ、技が固いぞ! 予と仕合う迄には慣らしておけよ?」
義輝の意向など関係なしに、修司達は思うが儘に戦い、黒色の扉を通過する。
そして兵士達を薙ぎ倒しながら、修司たち全員が扉を通過すると、扉は閉まってしまい後戻りもできない様に至る。
そんな現状を視認して、修司はまだマリアが居るかもしれない先ほどの間と通じている扉に向かって一人叫んだ。
「年増ビッチ!」
修司が叫んだ次の瞬間、閉じた外輪扉の向こうから物凄い轟音が鳴り響き、館全体に響き渡った。
『ヒッ!』
聖龍HEAD全員が蒼褪める中、閉じた扉向こうに居るであろうマリアに言い切った修司は、改めて真顔で言った。
「一片、言ってやりたかった」「お前、あとが怖いぞ……!」
前々からマリア本人に言ってやりたかった台詞を言えた真顔の修司に、メタルバードが蒼褪めた顔で言葉を掛ける。
この時、修司はおそらく次に戦う相手の事を予測していた。
あのロシア軍の武将ナオエフ・カネノフが待機していた事から、例の二人もこの先で自分達を待ち受けていると。
[軍神と剣]
修司達がマリアが待ち受けていた間から移動して進んでいくと。
案の定、修司が予測してた通りに例の二人が修司一行を待ち受けていた。
「毘沙門天の御加護は……わたくしにあり」
「ケンノフスキー様は、私が守る……!」
「きなさい! そなた達は既にわたくしの手の内にある」
軍神美神 ケンノフスキー かすが
修司達の前に立ちはだかるのは、ロシア将軍のケンノフスキーとその側近であるくノ一かすが。
二人を前に修司は冷静だった。
「……やはりな。カネノフがいたから、もしやと思ってたが……いや、それ以上にアンタも足正派の武将だったからな」
「口を慎め、小田原修司! 自分のクローン共々、世界を滅ぼそうとした奴がケンノフスキー様に無礼な口を叩くな……!」
「ふふ、いいのですよつるぎ。きしんよ、そなたも元の人間に……いいえ、元以上に自分らしさを取り戻しましたね」
二人を前に発言する修司に、かすがが睨みを利かせるが、それに対してケンノフスキーは修司が人間らしさを取り戻してくれた事に笑みを浮かべる。
そして修司は右腰に帯刀している聖龍剣の柄を、右手で逆手に握っていつでも抜刀できる体制を構える。
「ふふ、いつでもわたくしと対等に斬り合える覚悟がそなたの瞳に宿っているのがわかります。では……」
するとケンノフスキーも静かに左手に握り締める長刀に右手を添えて、瞬時にいつでも抜刀できる姿勢を取る。
周辺の聖龍HEADやかすがが見守る中、修司の顎から一滴の汗が滴り落ちて床へと零れ落ちた。その瞬間。
「はァッ!!」「せやっ!!」
修司とケンノフスキーがほぼ同時に抜刀し、互いの剣を激しくぶつけて火花を散らし始めた。
『!』「ケンノフスキー様……!」
聖龍HEADにかすがが驚く中、ケンノフスキーはかすがに命じた。
「つるぎよ……! あなたはあなたのやるべき戦を執行するのです……!」
「っ! そうでしたね……では、行くぞ! 聖龍HEAD!」
ケンノフスキーからの命令で、かすがは自分を取り囲む聖龍HEADと乱闘を開始する。
「「ッ!!」」
修司とケンノフスキー、両者の目を見張るほどの速き抜刀術での凌ぎ合いは互角に渡り、中々決着がつかない。
一方でかすがは切れ味抜群のワイヤーと直結しているくないを用いて聖龍HEADと戦うが、此方も此方で決着は中々つかなかった。
「ッ! これじゃ埒が明かない……! お互い一対一で戦うのは止めて、チーム戦で連携しながら戦った方がよくねえか?」
「それはそれで面白きこと……きしん、あなたの提案にのりましょう」
互いに目にも止まらない抜刀術で斬り合ってた為に決着がつかなかった修司からの提案に、ケンノフスキーも賛同した。
「くるのです、つるぎ! わたくし達の息の合った連携、きしん達に見せ付けましょう……!」
「は、はいっ! ……ケンノフスキー様と共闘なんて……考えただけでも……はぁ」
ケンノフスキーからの指示を聞いたかすがは、思いを馳せるケンノフスキーと共闘と考えるだけで体が火照ってしまう。
「では、いきますよ……聖龍HEAD!」「鬼神よ、覚悟しろよ」
ケンノフスキーとかすがは修司達に共闘で攻撃してきた。
「わたくしの凍て付く太刀筋……みきれますか!」
俊足の凍て付く太刀筋に斬られ、ウォーターフェアリーや鳳凰寺風が一瞬で氷漬けとなりケンノフスキーに幾度なく斬られてしまう。
「私の煌めく技……お前如きに破られるものか!」
かすがの方も、修司に光の分身体を放つ忍術を仕掛けて、修司の動きを止める。
「軍神の速き技と、忍の魅了されるほどの煌びやかな技の数々……! どちらも侮れない」
ケンノフスキーとかすが両名の技の数々に驚かされながらも、ジュピターキッドは双方ともに圧倒される。
聖龍HEADがケンノフスキーと激しい剣戟を仕合っている最中、修司もかすがの戦術に対して聖龍剣で応戦してた。
「ッ……! 目が覚める程の技の数々……だが、これじゃ埒が明かねえぜ」
しかし、かすがの技の数々に苦戦する修司。だが此処でかすがはやはり思いを馳せているケンノフスキーと聖龍HEADの戦いに気が散ってしまう。
「ケンノフスキー様……!」
かすがは思わずメタルバードと激突しているケンノフスキーへと駆け寄った。
「っ……! こうなったら……!」
数では修司達に圧倒されている戦況に、かすがは秘策を用いた。
その秘策とは、己の分身体を生み出して戦うという戦法だった。
「行け! 我が分身たちよ!」
分身も合わせて四体となったかすがは、ケンノフスキーと共闘して修司達を追い詰める。
「ど、どうしましょう……ケンノフスキーさんの剣術だけでも厄介なのに、かすがさんの分身とまで戦うなんて……!」
ケンノフスキーの剣術だけでも苦戦してるのに、かすがの分身とまでも戦う戦況にミュウレタスは動揺してしまう。
と、ここでかすがは現聖龍HEADのキング・エンディミオンと堂本海斗そして蒼の騎士の三人に、美脚から繰り出される回転蹴りをお見舞いする。
するとかすがの美脚からなる攻撃に見惚れながら、三人は弾かれる様に蹴り飛ばされてしまう。
「私は軍神のつるぎ! そんな目で見るな……!」
よこしまな目でかすがを見呆けてた三人に、かすがは文句を言いつつも攻撃の手を緩めず、真紅や雛苺達にもくないを投げ付けて攻める。
と、かすがが五体のローゼンメイデン達に光の分身体を連続で放つ忍術を撃ち出して攻撃して真紅達を苦しめるが、そこにミラーガールが間に入ってかすがの分身たちをミラーシールドで撥ね返す。
「ッ!!」
自身が放った技を鏡の盾で撥ね返されて一驚するかすが。そんな彼女にミラーガールは言った。
「鏡は光を撥ね返せるわ……! かすがさん、貴女の光の忍術も同様にね!」
「ッ! なるほどな……聖女め、相変わらずできるな……!」
かすががミラーガールの光を反射する鏡の特性で忍術を撥ね返した戦術に納得していると、彼女の背後から修司が斬りかかってきた。
「おりゃッ!」「!」
背後から斬りかかられて一瞬動揺するかすが。だが彼女は瞬時に修司の剣戟をかわし、素早くワイヤー付きのくないを無数に投げ付けて、修司をワイヤーで雁字搦めにして拘束してしまう。
「しまっ……!」
修司が身動きできない隙をついて、今度はケンノフスキーが修司に凍て付く俊敏な太刀筋で斬りかかる。
「はぁっ!!」「くッ……!」
斬りかかってくるケンノフスキーに修司は太刀打ちしようとするが、かすがのワイヤーで動きを封じられて身動きできずにいた。
すると修司に斬りかかるケンノフスキーの長刀での攻撃を、魔法騎士の光/海/風が協力して自分達の剣で防いだ。
「っ……!」
三人に自分の剣戟を防がれて唖然とするケンノフスキー。
一方で、修司もかすがに巻き付けられてたワイヤーを自力で解いて動ける様になった。
が、其処に今度はかすがが三体の分身体と共に修司に攻撃を仕掛けるが、その三体の分身体をコレクターズのユイ/ハルナ/アイが全身を駆使して、分身体の動きを止める。
コレクターズの三人の助けで、修司はかすが本体に斬りかかろうと聖龍剣を振り上げる。
「力無き者は去れ! 前に出るな!」
しかし、かすがの分身たちがコレクターズの前から瞬時に移動し、修司が振り上げた聖龍剣にくないを投げ付けて、ワイヤーで聖龍剣を捕えて修司の動きを止めてしまう。
修司の動きを止めたかすがは、修司に直接くないで斬りかかるが、修司は咄嗟の判断でワイヤーを巻かれた聖龍剣を床に突き刺して一時的に捨てると、かすがが振るうくないを潜り抜けて彼女の顔面に掌底を喰らわして、かすがを吹き飛ばした。
「ケンノフスキー様ーーッ!!」
修司の剛力から繰り出された掌底を受けて吹っ飛んだかすがは、壁へと激突して戦闘不能に陥る。
「おお……! 自らの得物をあえて捨て、わたくしのつるぎの攻撃を掻い潜ると同時に反撃するとは……! きしんよ、そなたの判断力は素晴らしい」
側近のかすがを倒されて追い込まれたケンノフスキーは、無防備に陥っている修司に俊足で斬り込んだ。
だが、俊足で斬り込むケンノフスキーよりも速く、メタルバードがケンノフスキーの前に出て彼の剣を鋼の体で受け止める。
「へへ……! 聖龍隊一の速さを誇るオレの前では、アンタの俊足もまだまだ遅いぜ……!」
「流石は風神……おみごとです」
メタルバードがケンノフスキーと対峙している間に、修司は先ほど一時的に打ち捨てた聖龍剣を床から抜いて手元に戻した。
床から聖龍剣を引き抜いた修司は、聖龍剣を鞘に戻していつ何時ケンノフスキーが斬り込んできても対処できる様に瞬時に抜刀できる態勢を維持する。
すると長刀からの剣戟をメタルバードの鋼の体で受け止められてたケンノフスキーは、そのメタルバードを剣で押し退けた一瞬の隙に長刀が放つ凍て付く冷気で空間そのものを凍らせたのだ。
「う、動けねぇ……!」
この時メタルバードはもちろん、彼の近くにいた聖龍HEADのジュピターキッドにセーラーヴィーナス/セーラープルート/木之本桜/ミュウミント/ノエル達も凍て付く冷気に巻き込まれ、凍て付いた時間という空間の中でケンノフスキーに滅多切りにされてしまう。
「わたくしの神速のたち……うけて学びなさい!」
ケンノフスキーの速き太刀筋がメタルバード達を襲い、六人は一気に斬り捨てられてしまった。
「次はあなたです……きしん!」「!」
六人を一度に倒したケンノフスキーは、向きを変えて修司と対峙すると一対一の一騎打ちに持ち込む。
ケンノフスキーと真剣勝負で一騎打ちの場に持ち込まれる修司は、聖龍剣に右手を逆手に添えて抜刀の態勢を維持する。
一方のケンノフスキーも左手に持つ長刀にそっと右手を添えて抜刀の態勢に入る。
修司とケンノフスキー、両者が睨み合う、修司は全神経を研ぎ澄まして集中してた。
(集中……集中するんだ、俺……)心の中で自分に言い聞かせる修司。
そして修司とケンノフスキー、両者が同時に鞘から剣を抜刀し、一気に前へと駆け込み距離を詰める。
次の瞬間、一筋の閃光が煌めいたと同時に二つの刃が互いに激突して、修司とケンノフスキーの両者は双方ともに背を向き合わせてた。
すると修司が力なくその場で両膝をついて崩れ落ちる。
「修司!」
ミラーガールが崩れ落ちる修司を見て心配するが、その直後。
「うっ……!」
なんとケンノフスキーも片膝をついて崩れ落ちてしまった。
「ケンノフスキー様……!」
先ほど修司に掌底で吹き飛ばされて負傷してるかすがは急ぎケンノフスキーの許へと駆け寄る。
かすがが駆け寄って看てみると、ケンノフスキーの肩から腹部にかけて身に着けていた防具が破損していた。明らかに修司の聖龍剣でみね討ちされた形跡だった。
「はぁ、はぁ……! さ、流石にケンノフスキーと抜刀術でやり合うのは精神が削れるぜ……」
修司の方は、ケンノフスキーとの真剣勝負で精神を削がれた事による、緊張の糸が解れた為に崩れ落ちただけだった。
「きるべきものはきり、きらざるものはきらぬ……きしんよ、そなたの信条みにしみて理解できました」
かすがに抱き起されて、ケンノフスキーは微笑みを浮かべた。
真剣勝負での一騎打ちに発展した修司とケンノフスキーの闘いは、研ぎ澄まされた修司の勝利に終わった。
[軍神が生まれた話]
軍神と美神、ケンノフスキーとその側近であるくノ一かすがに辛うじて勝利した修司たち。
修司との一騎打ちで最終的に惜しくも負けたケンノフスキーは、微笑みを浮かべながら修司に言った。
「きしんよ、そなたも変われたのですね……人との出会い、人との縁に……」
「………………」
「それでいいのです。人との出会い、えにしこそ……己の心を滾らせる事ができる数少ない。どうか、あなたはその出会いと繋がりを大事に、これからも精進するのです」
ケンノフスキーから指摘を受け、修司は黙然と話を聞き入る。
すると此処でケンノフスキーの側近であるくノ一かすがが思わず口に出した。
「……人を捨てても、人の縁を得られる存在なのか。鬼神、私はお前が羨ましい」
『?』
このかすがの発言に修司達は真顔できょとんとするが、そんなかすがにケンノフスキーが問い掛ける。
「つるぎよ、どうしたのですか。なにをそんなに不安になっているのです……?」
ケンノフスキーに問われたかすがは、不安に満ちた表情で己の想いを告白した。
「かすがは不安なのです……かすがはモンゴルの虎の様にケンノフスキー様のお心を滾らせる事はできません。そんな私の存在に意味はあるのでしょうか?」
自分でも馬鹿げていると思った……人の命を奪う事も躊躇わない自分が、小娘の様に涙を流し、ましてや主に想いを晒すなどと。
主従として、そして忍として、人の感情を捨て、ましてや主に恋心を抱く事はあってはならない事実。そんな事実に心を揺さぶられるかすが。
だが心優しいケンノフスキーは包む様にかすがの手を取り話し始めた。それは……
「すこし、昔話をしましょうか。軍神が生まれた話を……」
ケンノフスキーは不安がるかすがに自分の過去を騙り始めた。修司たちもケンノフスキーの昔話に耳を傾ける。
ケンノフスキーが語り始めた己の過去、それは壮絶で衝撃的な内容だった。
「ケンノフスキー、お前は神になりなさい」
「神さま……?」
「そうです。あなたはその星の元に生まれたのです」
産まれながらに堅実な軍人家系で育まれた幼いケンノフスキーにそう告げたのは、彼の実姉だった。
「戦の神はお前に微笑みました。あなたが母国ロシアの軍を導くのですよ。良いですね? ケンノフスキー」
「はいっ!」
こうしてケンノフスキーは軍神として育てられる様に至った。だが幼い彼は、その意味を何一つ理解していなかった……。
「「僕」ではありません、「私」と仰い!」
「はい……姉上」
軍門の家柄での厳格な教育方針に投げ込まれた幼いケンノフスキー。言葉遣いから始まり、そして教養に知略など、様々な手解きを受ける。
そんなある日、若きケンノフスキーの元に一羽の小鳥が迷い込む。
「あ……」
そんな小鳥は若きケンノフスキーの手に止まり、安らぎを得た。
「ふふっ……」
しかし若きケンノフスキーに厳格な軍神としての教養は手を緩めなかった。
「さぁケンノフスキー、殺して見せなさい」
ケンノフスキーの教育係であった彼の姉は、ケンノフスキーに懐いたその小鳥を殺めさせる。
「で……でも、この小鳥は……」
「命を奪えず何が神です! 何が軍神です! 戦いとは、人の命を奪うのですよ!!」
こうして若きケンノフスキーは武勇を持てる様に小さき命をも殺せる冷徹な軍人、いや軍神として教育された。
若きケンノフスキーはこの時知った。神とは……人ならざる者であると。
「どうしたのですか? ケンノフスキー」
ある日、遠くを虚無の瞳で見詰める若きケンノフスキーに姉が問うた。
「むかしは……この庭も美しいと思っていたはずなのです。でも……今はそれがわかりません」
この若きケンノフスキーの返答に姉は笑顔を保ったまま言った。
「それで良いのです。軍神は刃に……武力以上に美しいものを知りません」
そう、既にケンノフスキーは人ではなくなっていた。
美しいものを愛でる心は冷たく凍り……彼は神となった。
「ケンノフスキー……さま……っ」
幼少期からの厳格な教育方針の中で軍神として育てられたケンノフスキーの昔話を聞いて、かすがは涙し、聖龍HEADは愕然とし、そんな凍り付いた空気の中で修司だけは無言の無表情でケンノフスキーの話に聞き入ってた。
その場の空気が重い中、ケンノフスキーは笑顔を浮かべて話を続けた。
「ですが……お前にであえた」
ケンノフスキーは自分を暗殺しに来たかすがとの出会いの時を語り始めた。
「研ぎ澄まされた肉体。迷いなく人を殺す意思。突き刺す様な鋭い瞳。だが、隠せない水面の様な穏やかさ……そう、まるで剣の様だった」
と、ケンノフスキーは語った。
「つるぎ…………?」
「わたくしはお前に感謝しています。もちろん、モンゴルのとらにも」
美しく煌めく涙を流し続けるかすがに、ケンノフスキーは話し続けた。
「モンゴルのとらには軍神としての存在意義を。お前はわたくしに再び人の心を与えてくれています」
このケンノフスキーの話を聞いて、かすがは感激する。
「かすがは……かすがはお役に立てているのですね」
ケンノフスキーの手を取るかすがに、ケンノフスキーは優しく話した。
「もちろんです。わたくしの美しきつるぎ」
二人は聖龍HEADや修司達の目の前にも関わらず、互いに目を見詰め合った状態でケンノフスキーはかすがに話す。
「このみを炎に身をとかしかねません。だから、わたくしにはお前さまの光が心地よい……」
そうかすがに打ち明けたケンノフスキーは、更にかすがに告白する。
「かすが、お前さまがいれば私は最後まで人でいられる……どうか、
自分に偽りなく接してくれるかすがが側にいてくれるだけで、自分は心を保持できる人間でいられる。そう語るケンノフスキーの告白に、かすがは感涙するのだった。
そんなケンノフスキーの昔話を聞いて感涙するかすがの二人を目前に、修司はケンノフスキーの昔話を聞いた上で言った。
「……神に心は必要ねえ、か……鬼神の異名を持っている俺にしちゃ、耳がいてえよ」
と、耳の穴を指で穿りながら言う修司は、それを聞いて修司に注目する二人と聖龍HEADの前で語り出した。
「経験済みの俺から言わせりゃ、心を得るのも捨てるのも酷な話だと思うぜ」
『………………』
「まあ、でも……心がなきゃ、何にも感じられないツマラナイ人生を送るハメになるのかもしれねえけどな」
そう皆の前で言い切った修司は、どこか薄っすらと笑みを浮かべている様に見えた。
修司の話を聞いて、ケンノフスキーは再び修司に言葉をかける。
「……きしんよ、そして聖龍HEADよ。どうか、あなた方の力で帝を……よしてる公を導いてください」
ケンノフスキーの話に聖龍HEADたちは不思議そうな顔を浮かべ、それに対して修司は黙ってケンノフスキーに耳を傾ける。
「みかどは……よしてる公は、あわれな御方……生まれながらに、あらゆる才能を持ち合わせた文武両道の王と云うべき存在」
「王、だと……!?」
メタルバードたち聖龍HEADが反応する中、ケンノフスキーは話し続けた。
「その通りです……! しかし、あらゆる面で誰よりも秀でている為に本当にともと呼べる者がおらず、孤独……いえ、孤高なる存在。そんなよしてる公をわたくしは救ってあげたかった……かつて、つるぎと出会え、己がかわれた様に……」
『………………』
「ですが、わたくしの力量ではそれも及ばず……最終的にみかどは鬼神をくろぶしとして操り、平和に至った現世を再び乱世に戻してしまわれた。きしん、そして聖龍HEADよ。どうか帝を、よしてる公を変えてください!」
ケンノフスキーの嘆願を聞いた修司達。
すると修司は、かすがに抱き起されて自力で立ち上がったケンノフスキーに告げた。
「なるほどな。俺とは違う孤独、いや孤高たる存在だって言うのか、剣帝は……良いだろう、俺が二次元人から教わり、そして変えられた様に、今度は俺達が帝を……足正義輝を変えてやるぜ!」
修司は一層険しい目つきを鋭くさせて続けた。
「人との出会い、縁が人を変える……! そんな世界を一見する価値観すらも変えちまう瞬間を、俺達が与えてやるよ!」
修司の鋭い決意と覚悟の意思を目の当たりにして、聖龍HEADは同調し、ケンノフスキーとかすがは顔を見合わせて嬉々とした。
そんな修司と聖龍HEADが足正義輝を変えるべくして進行するのを見送るケンノフスキーは、修司達に送る様に言い放った。
「みさだめ! みちびく! それがわたくしの宿業。ふふ、どうにも切なきものです……」
そして一回舞うと、ケンノフスキーは更に述べた。
「ですが……どこか心地よい」
己の宿業すらも、人との出会い、巡り会わせによって何処か心地よく感じられるケンノフスキーに、修司達も心の中で同意するのだった。
[最深部:賽の間]
ケンノフスキーとかすがとの二人に勝利し、ケンノフスキーからの言葉に背を押されて前進する修司たち一行。
修司たちが邁進する中、ケンノフスキーとかすがと戦った間を後にする際は、回転する外輪を止める事無く、次の間へと通せられた一行。
「どうやら、運頼りのルーレットも此処で終わりみたいだな」
運任せの外輪止めによる広間選びも、ケンノフスキー達との戦いで終わってた事に察する修司たち。
そのまま絢爛豪華な通路を進んでいくと、奥の通路その両端には武装した足正兵が軒並み揃えて並列しては修司たちを出迎えてた。
「足正様はこの先でそなた達を待ち望んでいる! くれぐれも無礼のないように……!」
そう一人の兵士に宣告された修司たちは、物々しい空気の中、並列する兵士達の間を通って奥の間へと進行する。
兵士が並列する通路の角を曲がり、さらに奥へと進んでいくと、其処の間から煌びやかな黄金の光が差し込んで、修司たちの視界を一時ばかし遮る。
そして修司たちが奥の間に辿り着いた時、修司たちの周りから多くの歓声が響き渡った。
煌びやかな黄金色の光で目を瞑ってた一行が目を開いて辺りを見渡してみると、そこは床が赤と黒の旋盤の模様が施された大広間であり、その大広間を囲う壁の上には数多の観客達が犇めいていた。
大広間に辿り着いた修司たちの目の前には、現政奉還を起こした張本人である足正義輝が威風堂々と立ち、修司たちを出迎えてくれた。
「能くぞ辿り着いたな、朋輩達よ! その決断力と幸運で、予を……そしてこの世の全ての者たちに衝撃を与え給え!!」
義輝が両手を広げて観客席の方を見渡すと、観客席に座る人々が、なんと先の大戦直後に足正義輝と共に一瞬で消えた二次元・三次元同盟軍の面々に加え、義輝と同じ修司のクローンである新世代型二次元人たち、そして更に足正義輝が発起した【現政奉還】の際に蒸発してた一部の権力者たちが勢揃いしていた。
「お、お前ら!?」
たくさん世話してきた新世代型二次元人達も観客席にいる現状にメタルバードが驚いていると、メタルバードと仲の良い真鍋義久が答えた。
「さっきも伝えた様に、俺たち将軍のテレポート能力で一瞬の内にこの宮殿の最深部であるこの賽の間に移動されたんですよ。それからは将軍と一緒に皆さんの戦い振りを観戦させられてたって訳で……」
メタルバードたちに説明する真鍋の発言に、剣帝である義輝が強く放った。
「国連総長足正義輝の御所ぞ、わきまえよッ!」
「ッ!」
「……ははははは! 赦せ、戯言だ!」
一瞬義輝の注意に身を縮ませる真鍋だが、そんな彼に義輝は笑い飛ばした。
「えーー、パンに弁当、ジュースにお茶……スナック菓子もありますよーー」
「あっ、こっちにお茶」「スナック菓子ちょうだい」
と、観客席では【ゲゲゲの鬼太郎】のねずみ男が場所も考えずに駅弁売りの様に商売しており、そんなねずみ男に国連軍中将のモモンガにドーベルマンが注文する。
「って! ねずみ男! お前は何処でも商売すんな!! そして国連軍の中将たちも買ってんじゃねえ!!」
メタルバードに大声で指摘されながらも、中将たちも、そして事もあろうか元帥の赤犬や大将の黄猿に藤虎までもねずみ男から商品を購入して満喫していた。
「ふんっ、義輝の道楽に付き合わされるのも、これで最後じゃ……修司たちと義輝の戦いが終わり次第、双方ともに厳しい処罰をせにゃ……!!」
「まあまあ赤犬、ここは一旦落ち着いて。国連総長の我儘も今回で終わりみたいだから」
「剣帝と呼ばれし国連総長と聖龍HEAD……どちらが勝つかで今生の世の行く末が決まる次第で候……!」
それぞれお茶を飲みながら会話する赤犬に黄猿そして藤虎の三人。
更に観客席には、国連総長足正義輝が発起した現政奉還に伴い蒸発してた一部の権力者達の姿も視認された。
「って!? あなた達、今まで何処に行ってたの!?」
驚愕して問いかけるセーラープルートに、蒸発してた権力者の一人で、あの山中鹿之助の上官にもあたる石油王ハルノフが答えた。
「ふっ、時と光の狭間の中、移動すること幾千里……気付けば我々は国連総長の元に集っていた訳だ」
この詩混じりの台詞に、家臣である鹿之助が解説した。
「要約すると、気付いたら国連総長の目につく、この栄禄の宮に瞬間移動されてたみたいです」
「それならそれで、ちゃんと言えよ! 相変わらずの詩人なんだからっ」
鹿之助の説明を聞いて、堂本海斗は二年前と変わらず詩人気取りのハルノフの口ぶりに呆れ果ててしまう。
「いやあ、驚いたぜ。気付いたらこんな豪華な宮殿にお呼ばれされてたんだからな。まっ、お菓子食べ放題だったし、聖龍隊が迎えに来るまでのんびり待つ事にしたんだけどな」
「み、ミルモ……! オレたちゃ、本気でテメェのこと心配してたんだぞ……!!」
現政奉還と共に蒸発してた【ミルモでポン!】の妖精ミルモの台詞とお調子者振りに、本気で姿を晦ましていた彼の事を心配してたメタルバードたちは本気で怒りが爆発寸前だった。
しかも観客席の一角には、先ほど修司たちと激戦を繰り広げた修司教一派の大友宗助にその側近である立花宗茂そしてシマ・ギンテル、修司の義姉マリアにロシア軍武将ナオエフ・カネノフ、そしてロシア将軍のケンノフスキーにくノ一かすが達までも座っていた。
「ブラボーーッ! 聖龍HEAD、そして修司様! よくぞ帝の試練を乗り越え、ここまで辿り着いてくれました……! 僕、感激のあまり涙が後から後から出っ放しで……」
「ううっ、我が主宗助様……手前も同じであります。同じ武人として修司殿たちの戦い振り、恐悦至極でございます……!」
「がっはっはっ! 修司どん、そして聖龍HEAD! 帝の出した博打に勝ち、よぉく此処まで来られたのォ。後は帝との決戦を勝ち抜くだけばい!」
「はっはっは! 聖龍HEADよ! お前達の無敵も、俺の無敵によーーく伝わった! 俺もお前らも無敵!!」
「ふふ、聖龍HEAD、そしてきしんよ。みな、よくぞここまで辿り着きましたね。あなた方と激戦を仕合ったわたくしも満足です……」
「ケンノフスキー様にお褒めのお言葉を賜れるなんて……鬼神、そして聖龍HEAD……羨ましいぞ」
すると六人の最後に、マリアがそれはそれは末恐ろしい笑顔を浮かべて大広間で対峙している修司たちと義輝に向かって言葉を投げかける。
「ふふ、義輝♪ ……いくらクローンと言えど、鬼神相手に手を抜いちゃダメよ? 本気で鬼神を【ピー―】して【ピー―】しながら【ピーーピー―】するまで痛め付けなきゃダメよ」
「あ、姉上ーーッ!? そんな放送禁止用語まで持ち出すほど、物騒な物言いはマズいですって! 姉上の品格が損なわれます……!」
物騒な物言いのマリアに、マリアの実弟である韓国将軍サイ・チョウセイが慌てて制止する。が、マリアは笑顔の般若顔で続けた。
「絶世の美女でもある妾に「年増ビッチ」なんて言葉を吐き捨てた鬼神なんて、義輝の手でバラバラ死体にでもされれば良いのよ♪」
「恐いです! 姉上、顔が恐いです!」
笑顔でも恐怖が滲み出ているマリアの顔を見て、チョウセイは恐怖で蒼褪める。
「皆、能く戦った……後は、予に任せておけ」
そんな修司たちと激戦を繰り広げた武将達に、足正義輝は言葉を賜った。
と、賽の間の観客達が修司達と義輝の仕合を見守ろうとする中。
「でも、修司さん達と帝の戦いって、なんだか複雑そうだな」
「確かに。修司さんの能力や、義輝公の戦い振りをみんなよく知らないし……」
と、聖龍隊士の白井渚と浜崎雅宏が顔を合わせていると、その会話を聞いてすかさず解説席を瞬時に作り出したのが。
「そういう事なら俺に任せろ! 実況&解説は、聖龍隊の事なら何でもご存知! このウェルズ・J・プラントが引き受ける!」
「お、叔父さん……」
叔父であるウェルズの出しゃばりに、甥のジュピターキッドは呆れ果てる。
「ははっ、どうだこの熱気! この場だけに留まらず、この世全ての民草が吾等の仕合を心から待ち望んでいる……! その熱気、予にもしかと伝わっておるぞ!」
観客席からの歓声を修司たち同様に浴びる足正義輝は、自分達の仕合を世界中が待ち望んでいると昂っていた。
よく目を凝らしてみると、修司たちがいる賽の間の各所にはカメラが点在しており、世界中に生中継されているのが容易に把握できた。
「オレ達の戦いは世界生中継って訳か……!」
メタルバードたちは自分達と足正義輝の仕合が世界中に生中継される事態に目付きを鋭くさせる。
そんな観客席からの歓声に世界中が注目しているという空気の中、修司達と今まさに仕合おうとする足正義輝が物申した。
「朋らよ……! 流れを攫み、追い風に乗ったな! その最高の姿こそ、予の全てを賭けるに値する!」
威風堂々と修司達の前に立ち尽くし、修司達を待ち望んでいた足正義輝の言葉に、修司達は全員険しい顔付きで義輝と対峙する。
「義輝、これがアンタの正真正銘最後の大博打って訳だな」
「有無! その通りだ、闇之朋よ! 予は実を言うと思い焦がれていたのだ……国連軍と肩を並べる聖龍隊、その頭目である其之方らと仕合ってみたかったのだ!」
義輝は修司達に、数多の伝説を築き上げてきた聖龍HEADと仕合をしたかったのだと告げる。
「こうなりゃ、オレたち負けねえからな!」
「負ける訳にはいかない……! 乱世を終わらせる為にも……国連総長、貴方に勝つ!」
義輝と対峙するメタルバードにジュピターキッド達は、臨戦態勢に入る。
そして聖龍HEADと同じく、義輝に対して聖龍剣を抜刀して戦闘に突入する構えを取る修司が、聖龍剣の切っ先を義輝に向けて宣言する。
「そうだ……俺はもう負ける訳にはいかない。こんな俺を見捨てず、救ってくれた仲間の為にも……今度こそ一打でも一撃でも浴びせるほど、剣帝に勝たなきゃならないんだ……!!」
この修司の台詞を聞いて、彼と共に義輝と対峙していた聖龍HEADも、観客席の新世代型二次元人達も呆然とした。
「お、おい……修司? 今なんと……? 今度こそ一撃でもって……まさか、お前……前に剣帝と闘った時は……」
メタルバードが呆然とした顔つきで問いかけると、修司は険し顔付きで答える。
「ああ、恥ずかしい話だが……最初、剣帝と仕合ったとき俺は一撃も与える事もできないまま敗けちまった。だからこそ今度は! 勝たなきゃならねえのよ……!!」
そう聖龍剣を構えて言う修司の台詞を聞いて、メタルバードたち聖龍HEADは信じられないと言った顔付きで皆顔を合わせた。
先の大戦でも、その実力が鬼神の異名以上に振るわれていた修司の攻撃を一度も浴びる事無く、修司を完敗させた足正義輝のまだ見ぬ実力に誰もが畏怖した。
そんな宣言をする修司に、義輝も返す。
「なお一層燃え滾れ、朋よッ! その熱風が、予を更なる高みへと吹き上げるッ!」
義輝の公言に、賽の間の観客席から歓声が吹き荒ぶ。
「皆の熱、この義輝しかと感じているぞ……!」
こうして賽の間の観客席だけに留まらず、世界中に仕合が生中継されている現状で、修司達と聖龍HEADの戦いは始まるのだった。
[剣帝の実力]
如何に自分のクローンの存在を知って失意の底にいた修司とは言え、その修司の攻撃を一度も浴びる事なく完膚なきまでに完敗させた足正義輝との仕合に、聖龍HEADは緊張が高まり、修司は再戦するからか聖龍剣を構えて硬直していた。
「世が望むのは……人々が滾ろう熱き時代。全ての人々が燦々と輝く、活きた次代……! さあ、朋よ! 今こそ、創世の時!」
現政奉還 足正義輝 出御
修司達と対峙する足正義輝は、高らかに自分と修司たちの仕合開始を宣言すると、静かにゆったりと修司達の方へと歩み寄る。
「さあ、朱黒の檻を突破せし朋よ! 予と共に、どこまでも! 猛く灼おうではないか!」
しかし修司も聖龍HEADも義輝から感じられる只ならぬ威圧感に押し潰されそうで息が詰まりそうな感覚に襲われてた。
「明と暗、表と裏、光と影……朋らよ、如何なる道を歩んできたか、予に訊かせてくれ」
だが義輝はそれでも仕合を通じて修司や聖龍HEADが歩んできた道のりを教えてくれと願い出ては、修司達との距離を縮めていく。
「これ程の強者が一堂に会するなど、まるで白昼夢だ……! そう想えば熱るが必定! 違うかな、闇之朋よ!」
そして義輝が修司たちの間合いに入った矢先、修司が共闘してくれてる聖龍HEADに言い渡した。
「……俺から行く。だが、お前達も気を付けろよ……!」
そう修司が聖龍HEADに言った次の瞬間、修司は目にも止まらぬ俊敏な動作で聖龍剣を抜刀し、目の前の義輝に斬り込んだ。
聖龍HEADも今まさに始まった戦いを見守っている観客に世界中の人間が息を呑んだ、その瞬間だった。
しかし皆の耳に届いたのは、刃と刃が激しくぶつかり合った金属音だった。
皆が修司と義輝に注目すると、修司が振るった聖龍剣を、義輝は自身の得物である
「か、刀だと!?」
義輝が常備している
「ッ、ッッ……!」
一方で修司は義輝と激しく押し合い、鍔迫り合いしていたが、力む修司に対して義輝は余裕ある貫禄と冷静な面持ちで修司に言った。
「これが抵抗か……? 否、そんな筈は無かろうよ!」
次の瞬間、剛力で有名な修司を義輝は押し退け、修司の態勢を一瞬崩した。その瞬間、義輝は
『!!』
修司が押し合いの力負けした上で斬り返された現状に慄く一同。
「修司!」
メタルバードが自分の方まで吹っ飛んだ修司に気を取られていると、そんな聖龍HEADに義輝が申す。
「行くぞ、朋よ!」
義輝は手にしている
その瞬間、ミラーガールが誰よりも早く前に出て、盾で義輝の突撃を防御しようとするが、義輝の槍での突撃はミラーガールたちヒロインを容易く吹き飛ばしてしまうほどの威力。
「ッ、こうなったら……!」
セーラーヴィーナスが自身の力で作り出した弓矢で義輝に反撃しようとすると、そんな彼女に続けとキューティーハニーに魔法騎士の三人組も弓矢で義輝に攻撃しようと構えた。
が「ははッ、成程。其之方らも弓矢で応えてくれるのであれば、予も其れに応えねばなるまい!」と、義輝は再び槍を引っ込めて
「えっ!?」
ヴィーナス達は目の前で
『うわあっ!』
義輝が放った光の矢はヴィーナスたち五人に直撃し、五人とも容易に後方へと吹き飛ばされてしまう。
「ど、どうなってるんだ!?」「しゃ、笏から色んな武器が……!」
義輝が扱う
すると先ほど義輝に吹っ飛ばされた修司が体を起き上がらせた。
「し、修司!」
メタルバードが起き上がる修司に目をやると、修司は唐突に語り始めた。
「あ、足正義輝……! この世全ての武芸に精通し、数多の武器を自在に操れる武人の中の武人……! あいつが扱う
「刀、弓、槍って……ちょっとズルくない!?」
修司からの説明を聞いて驚愕するメタルバードに、修司は更に続けた。
「そ、それにおそらく……あいつはこの戦界創生で多くの武人やキャラクター達が使う武器に戦術にも精通し、適応してしまってる筈だ……! 以前、俺が戦った時の様に刀や弓に槍だけを扱える武人じゃ無くなってるだろう……!!」
「そ、そんな……!!」
修司の説明を全て聞いて、メタルバードは恐怖で背筋が凍て付き、一気に顔から血の気が引いた。
足正義輝が扱う特殊な武具
義輝は
あらゆる武具、あらゆる武芸を極めた剣帝だからこそ使いこなす事ができる強力な武器と技、その脅威は幾多の戦いを乗り越えてきた聖龍HEADそして修司でさえも最早計り知れない域に達していた。
「さあ、朋よ! 予を打ち負かし、次代を導け!!」
義輝は再び
それを迎え撃つコレクターズだったが、三人とも義輝の凄まじい剣戟に斬り付けられてハルナとアイは床に倒れ、ユイは壁へと叩き付けられてしまう。
だが義輝は攻撃の手を緩めず、頭上から義輝を狙撃しようと狙い澄ましていた、ちせに狙いをつけて彼女を弓矢で撃墜して見せた。
「っ!!」「ちせ!」「ちせ……!」
撃墜されるちせを見て、観客席のシュウジにミズキは冷や汗を流す。
「クソッ!」
ここでメタルバードとウォーターフェアリーが、それぞれ真空の刃と水手裏剣を発生させ、義輝に向かって放った。
だが義輝は
「「!!」」
一驚する二人に義輝は、そのまま槍で突撃して間合いを詰めるとメタルバードの鋼鉄の体を槍で貫いて軽々と持ち上げてしまった。
「ぐあッ!」「バーンズ!」
不意に腹部を貫かれるメタルバードを前に驚くウォーターフェアリー。そして義輝は槍でメタルバードを貫いたまま、槍を振り回して側にいたウォーターフェアリーをも薙ぎ倒してしまう。
と、そこに今度はミュウミュウズが蒼の騎士共々駆け付け、義輝に反撃しようと試みるが、義輝は素早く刀に変化させてミュウミュウズを一瞬の内に詰め寄っては斬り捨ててしまう。
其処に真紅率いるローゼンメイデン達が上空から義輝に攻撃しようと身構えるが、彼女達の攻撃を見透かした義輝は、あろう事か弓で三本の剣を射ってローゼンメイデン達を射ち落とそうとした。が、三本の剣は蒼星石と彗星石そして金糸雀に雛苺に直撃したが、辛うじて真紅のみが義輝が射た剣をかわして、義輝に急接近。そして義輝の腹部に必殺の「絆パンチ」を喰らわした。
しかし……「う、うむ……今の拳、中々効いたぞ、
「きゃっ!」「真紅!」
そんな真紅を
「さ、さくら!」「ダメだわ……! レベルが違い過ぎる……!」「「……!」」
剣戟で義輝に負けたさくらを観客席から見守っていた小狼に苺鈴、そして赤塚組の山崎夫妻も動揺が表情に出る。
そして義輝はマーメイドプリンセス達の方へと歩み出し、るちあ達は激しく動揺していると其処に。
「マーメイドプリンセス! 僕の技を強化してサポートだ!」
と、ジュピターキッドがプリンセス達と義輝の間に入り、彼女達に支援を要請。
そしてジュピターキッドは荊の鞭を地面に叩き付けて、床下から無数の荊の草木を出現させる。そこにマーメイドプリンセス達の歌声と潤いの水が注がれて、ジュピターキッドが生成した草木は巨大化し、荊の草木が義輝に絡み付き、拘束する。
「ほう、此れは……! 中々、面白い技だな! 地神之朋よ!」
そうジュピターキッドに言った次の瞬間、義輝は辛うじて自由が利いた右手に持っている
『うわあっ!!』
頭上から降り注ぐ数多の武器を浴びて、全身を痛め付けられるジュピターキッド達。一方で義輝を拘束していた草木をも降り注いだ武器が切り裂き、義輝は草木から解放された。
「な、なんで……義輝は傷が付かないんだ?」
ナースエンジェルに治療されてるメタルバードに、傍らの修司が説く。
「自分の技や武器じゃ傷付くことは無いんだよ……剣帝・足正義輝は」
修司の説明に驚くメタルバード。
するとメタルバードを始め、聖龍HEADの治療を行っていたナースエンジェルがある事に気付く。
「……? どうなってるのかしら? みんな国連総長と戦って傷付いた筈なのに、体には傷口がないわ……」
ナースエンジェルが不思議がっていると、その疑問に義輝本人が答えた。
「うむ、其れはだな白衣之朋よ! 予の技の根源である力は、闇之朋が使う闇の能力と通じている節があってだな……先の大戦でも実感した様に、闇之朋の能力同様に予の技は相手の体を傷付けずに痛手のみを与える事が可能だからなのだ!」
義輝の説明によれば、彼の技や力は修司の闇の能力に近いものであり、修司の闇の能力同様に相手の体を傷付けずにダメージのみを相手に肉体に蓄積できる芸当なのだと云う。
足正義輝の優勢に対して、セーラームーン率いるセーラー戦士達は一気に義輝へと襲い掛かる。
「其之方らからの熱気……予にも伝わっておるぞ!」
が、義輝は一直線に特攻してきたセーラームーンを槍で貫くと、槍で貫いたままセーラームーンを振り回し、他のセーラー戦士達を薙ぎ倒しては直後にセーラームーンを頭上に降り上げると同時に彼女へ弓矢を射る。
「うわっ!」「ね、姉ちゃん!」「うさぎちゃん!」「うさぎ!」
上空に放り投げられたと同時に弓矢で射抜かれるセーラームーンを観て、観客席の聖龍隊士の月野慎吾と赤塚組の海野なるとぐりお夫妻が悲観する。
「射る、薙ぐ、貫く……さて、どうしたものかな」
一方で義輝の方は、次のどの様な戦い方で相手しようか思案していた。
しかし修司や聖龍HEADたちは痛手を負いながらも立ち上がる。
「ほう……? 予の剣を受けても未だ折れぬか……これは恐惶」
義輝は自分の剣や技を受けても立ち上がる修司達を前に、かしこまる。
そして義輝に対して身構え、対峙する修司達に取り囲まれた義輝は嬉々と内心舞い上がる。
「顔つきが変わったな? ……ふ、いい気合いだ」
次の瞬間、修司を皮切りに聖龍HEADも一気に義輝へと攻撃を仕掛けた。
だが義輝は最初の修司の剣戟を刀で防ぎ押し返し、そこに群がるセーラー戦士達に無数の矢を浴びせ立ち止まらせ、キューティーハニーの剣戟を剣で弾いて切り払い、メタルバードの突撃を槍での特攻で串刺しにするとそのままジュピターキッドとウォーターフェアリーに振り回して薙ぎ払い、さくらのカードでの攻撃を全て
「ど、どうなってるの? さっきの鏡の盾みたいなの、まさか……」
自分のレーザーを撥ね返されたちせが動揺してると、義輝が説いてくれた。
「兵器之朋よ、これは予がこの場にて初めて使う武具の一つだ。そう……鏡之朋よ、其之方が使う鏡の盾を真似て予の力で創り上げた武具だ!」
「………………!」
義輝の説明を受けて、ナースエンジェルと共に戦闘に参戦してないミラーガールは険しい表情で衝撃を受けてた。
「やはりな……! 先の大戦であいつが使える武器に戦術は増えちまったみたいだな……」
「冗談じゃねえぞ、おい……! 刀・弓・槍だけでなく、アッコのミラー・シールドを始めとする武器に戦術までも真似ちまうなんて……キリトやシルバー・クロウ以上のチートじゃねえか……!!」
この修司とメタルバードの会話を目の当たりにした義輝は、険しい顔付きで激しく物申した。
「勝つ術など路傍にいくらでも転がっていよう。勝負を捨てるな、朋よ」
「い、いや……勝つ術って……運が味方しても勝てる気がしないよ……」
義輝の台詞にジュピターキッドが呆れていると、義輝は再び険しい顔付きで物申した。
「勝負は時の運だと云う……ならば、運そのものを打ち負かしてしまえばよい! 容易い事だ」
「う、運をも打ち負かせって……無茶苦茶いうな……」
「あ、明らかに僕らとレベルの差がありすぎる……」
「勝てる気が、起きねえ……」
義輝の勝負運すらも超える域に、キング・エンディミオンも蒼の騎士も堂本海斗も戦意を削がれてしまうが。
「まだ……俺は戦える……!」と、修司が満身創痍で立ち上がる。
そんな修司に駆け寄り、ミラーガールも修司と共闘する形で義輝と戦闘する覚悟を決める。
修司とミラーガールの勇姿に背を押され、メタルバードもジュピターキッドも、そしてウォーターフェアリーも立ち上がり、義輝に挑む意志を示し合わせる。
そう聖龍隊創設にも深く関わった五人の勇姿を目の当たりにし、義輝は更に嬉々とする。
「そうだ! もっと、もっと予を……この世を愉しませるのだ!!」
こうして五人は再び足正義輝へと襲い掛かり、五人の勇姿に感化されて他の聖龍HEADも足正義輝へと攻め入るのだった。
[聖龍HEADと剣帝]
現政奉還に伴う『戦界創生』その全ての始まりであり、時代に熱を求める現世の、新世代型二次元人の帝王:足正義輝。
「予が求むのは、人々が滾らう熱き時代……全ての者が燦々と輝く、活きた次代……! さあ、朋よ! 今こそ、創世の時!」
絶対的な強さを誇る帝王・足正義輝。
その技は、多彩で速く、激しく、何より非常に強力なものばかりだった。
「行くぞ、朋よ!」
義輝の槍での突撃を受けて、吹っ飛ばされる聖龍HEAD。
すると此処で超能力を使えるキング・エンディミオンが蒼の騎士と堂本海斗と協力して、強力な一撃を義輝にお見舞いしようと行動を起こす。
「行くぜ、二人とも!」「ああ!」「任せます!」
キング・エンディミオンは両手を前に出して前方の二人が一気に前に駆け込むと同時に強力な念力を発動し、蒼の騎士と海斗の二人を念力で押し出す様に飛ばすと、蒼の騎士と海斗はその勢いのまま義輝へと一直線に飛んでいき、義輝に剣で突撃しようと試みる。
だが義輝は高速で向かってくる蒼の騎士と堂本海斗二人の剣を、刀にて容易に受け止めた末に簡単に弾き返してしまう。
「うわっ!」「!」
義輝に弾かれて、床に転げ回る蒼の騎士と堂本海斗の二人。
「はっはっはっ、いや素晴らしい!」
キング・エンディミオンとの三位一体の突撃を仕掛けてきた三人に、義輝は高らかと笑っては称賛の拍手を送った。
「予が齎せし鉄火の世、楽しんでくれているようだな!」
「勝負も博打って奴か……! 俺は余り賭け事は好きじゃないんだけどな……」
義輝の言葉に、疲労困憊の修司は苦々しく表情を浮かべる。
足正義輝最大の特徴は、武器「
「どうした朋よ? 技が硬いぞ!」
近距離では笏を回転させ、刀での強力な斬撃。遠距離では、炎をまとった長射程の弓攻撃。そして、瞬時に間合いを詰める電光石火の槍攻撃など、変幻自在で隙が無い。
そんな義輝の戦術・戦法の数々に修司達はあっという間に追い詰められてしまう。
「そ、そんな……! バーンズやアッコさん、それに小田原修司ですら太刀打ちできないというのかよ……!!」
観客席から戦闘を見守っていた新世代型の真鍋義久たちは蒼然としてた。
そんな消耗してばかりの修司達を前にした義輝は、ふと考え込むと直後に言い渡した。
「吾のみが炎い続けるは本意ではない……少し抑えるか?」
なんと義輝自ら加減して戦おうかと修司達に提案。だが修司がこれに返事した。
「それはやめてもらおうか……! 俺自身、手加減なんて苦手なんだしよ……俺のクローンである剣帝様が手加減なんて難しいんじゃねえのか?」
「………………」
「そ、それに……あんたも武人なら解ってる筈だ。下手な手加減なんて、相手に失礼なだけだって事はよ……!」
「うむ、これは予が無礼であった。詫びよう」
修司からの返事に、義輝は素直に謝罪した。
そして聖龍HEADの多くが意気消沈する中、未だに戦意を失わない修司と、そんな修司を支援する為に共闘するミラーガールの二人が義輝へと突っ込む。
「いくら世の中が平和で退屈してたからって、乱世に戻す必要はなかったんじゃないの!」
修司と共に激しい剣戟を義輝と仕合っていると、義輝がミラーガールの問いに返した。
「現世の政を全て天に返し奉ったも、足正の理に従ったまでぞ……!」
次の瞬間、義輝は刀での激しい剣戟で修司とミラーガールを同時に後ろへと押し返し、斬り付けた。
義輝に斬られた修司とミラーガールは、傷は付いてないものの痛感だけは与えられ、精神を削られてしまう。
「し、修司……アッコ……!」
懸命に義輝と戦う修司とミラーガールの勇姿を見て、メタルバードたち広間の壁際で寄りかかっていた聖龍HEADが再び立ち上がり、義輝に挑む意志を示す。
「敢えて急ぐ事もあるまい……全て目に焼き付けようぞ」
義輝は自分に最後まで戦い合う聖龍HEADの意志を前に、まるで戦いを楽しむ様に言った。
「予の眼を眩ませてみよ、灼なる者達よッ!」
そう義輝が言った次の瞬間、修司が行動を起こした。
(! この技は、最初俺が意気消沈で義輝に挑んだ時には使ってない技、もしかすれば……!)
修司は義輝との初戦で使ってない技なら、義輝に大打撃を与えられるのではと、淡い望みを託して技を使った。
「闇眼・爆裂閃光!!」
修司は自分の瞳から煌めく閃光を放ち、義輝へと向けた。すると閃光は連鎖爆発を起こして、義輝はその爆発に巻き込まれて全身が炎上したのだ。
「やったか!?」
メタルバードたちが義輝に大打撃を与えたかと淡い希望を抱くが、当の炎上する義輝は涼し気な顔で修司達に告げた。
「朋輩よ! 予を高める為の熱気、いや焔は……この程度では届かぬぞ!」
すると義輝は笏を回転させて、自分の体に纏わる炎を笏に吸収させて消火してみせた。
『!!』
得物である笏を回転させて自身の炎を消化してしまう義輝の技に、修司たちは目を丸くする。
「どうした朋よ! よもや忘れた訳ではあるまいな……世界の命運が、全て予の手中にあるという現実に」
と、此処で義輝は修司達の戦意を湧き上がらせようと、義輝自身が乱世を終わらせるも続けさせるのも自在だという事を突き付け、告げる。
「はぁ、はぁ……!」
そんな義輝の宣告に修司は息も絶え絶えに立ち上がり、再び義輝に挑もうとすると。
「修司! お前とアッコは一時休んでろ。どうにかオレ達で剣帝を消耗させて見せる」
と、メタルバードたち修司とミラーガール以外の聖龍HEADが戦前に立ち、修司とミラーガールには休んでもらう様に言うのだった。
そして義輝と対峙するメタルバードたちは、消耗していながらも足正義輝と戦闘に突入する。
「感じるぞ……天下を吹き荒ぶ欲望の熱気! だが、未だだ……これでは、未だ届かぬ……!」
メタルバードたちの熱気を感じる義輝は、未だにその熱気では己を満たせぬと言わんばかりにメタルバードたちと激しく仕合った。
「風神之朋、其之方の速さは予でも中々真似する事は出来ぬ……! やはり二次元人で最も速き生物と言われるだけの事はあるな!」
「へっ、おだてたって何も出ないぜ!」
両手を刃に変形させたメタルバードと激しく剣戟する義輝。其処にジュピターキッドが荊の鞭で義輝が振るう笏を捕えて動きを止めた。
「ほう、地神之朋よ……! 予の扱う笏を狙うとは、良き目をしておる!」
「相手の武力を奪って無力化する……兵法の一つですよ」
だが義輝は逆にジュピターキッドを剛力で引き寄せて笏で彼を殴打してしまう。
笏で殴られたジュピターキッドは、床に転げ回るのだが、すぐに起き上がり義輝と再戦する。
「水之朋……其之方が過去に経験した異世界ボスコワールドの話は、闇之朋が執筆した自伝小説を読んで知っておる。無論、闇人との熾烈な戦いもな!」
「一般の新世代型二次元人も同じだったけど、新世代型ってみんな修司さんの小説を読んじゃってる訳!?」
「ははっ……まあ、吾らはあくまで闇之朋のクローン。故に、吾らが始祖たる闇之朋の昔話に自然と惹かれてしまうのかもしれんな」
ウォーターフェアリーと激戦する中、義輝は彼女の間合いを槍で詰めて槍で突き上げると同時に豪快に振り回し、ウォーターフェアリーを遠くへ放り投げてみせた。
「月皇之朋よ、もはや予には其之方達が築き上げた温い平和な現世で暮らすには少し心地悪い……もし本当にこの現世を平和で暗愚な世の中に戻したいのであれば、予を打ち負かすのだ!」
「そんな事ない! 将軍様、あなたにだって平和な今の世界、平和な時代でも暮らせる筈よ!」
セーラームーンの説得も空しく、義輝は彼女を刀で振り払った。
そんなセーラームーンの姿を間近で見て、他のセーラー戦士達も義輝に攻撃を仕掛けていく。
「地之朋よ、月皇之朋を本気で愛しているのだな。其之方が振るう剣から、彼女を無慈悲に振り払った予への怒りの感情が伝わってくるぞ」
「剣帝、足正義輝……! 修司を散々、好きな様に操っていただけにあらず、うさぎたち平和を望む女たちの願いをも打ち砕きやがって……!」
「予を仇と見るか! 能い、それもまた焔よ!」
キング・エンディミオンと激しい剣戟を仕合う中、そんな義輝の台詞を聞いてセーラーマーズが仕掛ける。
「そんなに熱いのが好きなら……好きなだけ燃やしてあげるわ!」
するとセーラーマーズの技が義輝に直撃し、義輝は燃え上がった。
だが、先ほどと同じく義輝は今度は頭上に笏を上げて回転させては、笏に自分を燃やす炎を吸引させて消火してしまう。
「うむ! 火星之朋よ、其之方の焔もかなり熱いが……予が知りたい熱気は、焔の熱気ではないのだ」
すると義輝はセーラーマーズの炎を吸引して炎を纏った笏を弓矢に変形させると、セーラーマーズに攻撃を仕掛けた。
「火星之朋よ! 此れは其之方の焔の熱気のお礼だ! 朱雀の如き焔にて、その一撃を受けてみよ!」
次の瞬間、弓矢を引いた義輝。すると矢は燃え盛る朱雀の形となって、セーラーマーズに襲い掛かる。
と、大火の朱雀がセーラーマーズに襲い掛かる寸前、その手前にセーラーマーキュリーが飛び込んで自身の水の力で朱雀の形の炎を打ち消した。
「ほほう、水星之朋……其之方の水の技も中々面白いな! ははっ」
炎の朱雀を打ち消したセーラーマーキュリーの技に義輝は嬉々として褒め称えた。
「ヴィーナス行くよ!」「ええ! お願い、ジュピター!」
そこにセーラージュピターが放電する電撃を自身の武器であるラブリーチェーンに纏わせたセーラーヴィーナスが、電撃を纏ったラブリーチェーンを振り回して攻撃。
しかし義輝はその攻撃に怯むことなく、笏を槍にしてセーラーヴィーナスの電撃を纏ったラブリーチェーンを槍で受け止め、絡み取ってしまった。
「「!」」
この義輝の行動に驚くセーラージュピターとセーラーヴィーナス。しかも義輝は電撃に耐性があるのか痺れる事無く絡み取ったラブリーチェーンを引き寄せてセーラーヴィーナスを強引に引きずり寄せた。
「うわっ!」
引っ張られたセーラーヴィーナスを、義輝は自身の間近まで迫った瞬間に素早く槍を納めて元の形状の笏でセーラーヴィーナスの腹部を殴打して悶絶させる。
「っ……!」「美奈子ちゃん!」
悶絶してその場に崩れ落ちるセーラーヴィーナスに、セーラージュピターが駆け寄るが其処に義輝が先ほど自分が受けた電撃を笏に纏わせて、槍の電撃にて二人を追撃した。
「ははっ、木星之朋、そして金星之朋よ。其之方たちの連携、実に見事であったぞ!」
二人を槍で追撃した義輝は連携攻撃に対しても拍手をして称賛した。
すると其処に今度はセーラーウラヌスとセーラーネプチューンが二人同時に義輝に接近し、激しい接近戦を展開。
「ほほう、そういえば天王星之朋と海王星之朋らは格闘技などの接近戦が得意であったな! よし、予もそれに応じるとするか」
接近戦を仕掛けてきた二人に、義輝は武器を出さずに笏の形状のままでセーラーウラヌスが振るう短剣を受け止め、セーラーネプチューンが振り上げる蹴りを片腕で防ぎ切る。そして一瞬の隙をついてウラヌスの首後ろに笏を当て、ネプチューンの脇腹に左拳を打ち込んで、二人諸共悶絶させてしまう。
と、その時。瞬時にして賽の間全域の空気が変わり、一同は内心騒然とした。
それはセーラープルートが賽の間全域の時間を停止し、義輝に攻撃を仕掛けようとしていたからだ。
セーラープルートは時間を止めてスグに義輝へと攻撃を仕掛けようと接近するが、セーラープルートが攻撃を当てる直前、なんと義輝は止まってる時間の中で自力で動いてセーラープルートの攻撃をかわしたのだ。
「え……!!」
セーラープルートは我が目を疑った。停止している時間の中で自在に動けるとは夢にも思ってなかったからだ。
「はははっ、冥王星之朋、時間を操り、時を止めるのは素晴らしい技だ! だが、時を操り、時の中で動けるのが其之方だけと思ったら大間違いぞ」
止まってる時間の中で義輝がそう言うと、彼はなんと時間が止まった空間の中で通常の三倍の速さで動き、素早くセーラープルートの背後に回ったのだ。
「!」
セーラープルートが激しく動揺したその瞬間、義輝は笏から刀を出してセーラープルートを斬り付けた。
「っ!」
突然、義輝の位置が変わった事や、突然セーラープルートが義輝に斬られたのを目の当たりにした観客席の面々が戸惑っていると、それに解説役を買って出ているウェルズが説明し出した。
「な、なんて事だ! セーラープルートの時間操作をも超越して、義輝がプルートを斬っちまった!」
ウェルズも俄かには信じられないといった顔で解説する。
「はぁっ!」
と、義輝がセーラープルートを倒した所にセーラーサターンが武器である鎌を振り翳して義輝に斬りかかる。
が、義輝は先ほどセーラープルートを倒した際に使用した三倍速の移動術で瞬時にセーラーサターンの攻撃を回避し、そして素早く彼女に反撃してセーラーサターンを剣戟で吹き飛ばす。
「うむ! 土星之朋も接近戦が得意の様だったが、予を打ち負かすにはまだまだの様だな」
セーラーサターンを倒して、義輝は余裕を感じさせる面構えで笏を回してた。
群がるセーラー戦士達を撃退してみせた義輝に、今度はキューティーハニーが斬りかかる。
「美麗之朋、其之方の剣術は実に華やかで美しい……! しかし、それに予を打ち負かせる実力が伴わなければ意味がない」
「確かに、今の私達には貴方を負かすほどの実力は備わってないかもしれない……! それでも、私達は諦めない!」
「素晴らしい! その熱気もまた、次代を彩る美しい感情そのものよ!」
激しい剣戟の末、義輝はキューティーハニーを押し退けて最後は弓矢で射抜いて倒してしまう。
「ハニー!」「ハニー……!」
赤塚組でキューティーハニーの旧友である秋夏子も、夫である盲目の早見青児もキューティーハニーが敗れてしまう現状に衝撃を受ける。
と、義輝がキューティーハニーを倒した直後、義輝に突風が吹き荒んだ。
義輝が何事かと風が吹く方へ顔を向けると、そこにはファイト「闘」とソード「剣」そしてショット「撃」の三枚のカードを同時に使用して迫る木之本桜の姿が飛び込んできた。
「おおッ……! 魔術之朋よ。一度にそんなに己の魔法を酷使しては、後が大変なのではないか?」
「あなたを真剣勝負で倒して、またみんなで笑い合って過ごせる平和な世界を取り戻せるなら……私も諦めず戦うだけです!」
さくらの強い意志を垣間見た義輝に、さくらはファイト「闘」とソード「剣」の二枚のカードで接近戦を展開しつつ、ショット「撃」で義輝を狙撃していく。
だが義輝はさくらの格闘技を受け止めつつ、彼女の剣戟をも刀で防ぎながらショット「撃」の狙撃を回避してしまう。そしてさくらを掌底で押し返し、彼女に隙が生まれた瞬間、笏を弓矢にして三枚のカードを矢で射抜いて効力を封じてしまう。
「っ!」動揺するさくらに義輝は言った。
「未だ微風に過ぎぬであろう……? まあ待て、間もなく嵐を呼んでみせようぞ!」
そう言うと義輝は笏を頭上で回転させて、自身を中心に巨大な竜巻を起こして見せた。
「え、そんな……!?」
自力で竜巻を発生させて見せる義輝の技に一驚するさくらだが、その竜巻がさくらが今まさに使おうとしていたカードを全て吹き飛ばして彼女の手元をがら空きにしてしまう。
「さくらちゃん!」「!」
赤塚組でさくらの旧友の山崎千春の声に反応するが、そのさくらを義輝は間合いを詰めて槍で突撃しては貫き、円を描く様に振り上げられては地面へと叩き付けられる。
「さくら!」
さくらの実兄である木之元桃矢は妹が痛め付けられる惨状を痛感する。
「さくらちゃん!」
義輝に痛め付けられたさくらを治療しようとナースエンジェルが駆け寄るのだが。
「白衣之朋! そう簡単に仲間を治療できると思わない事だな……!」
義輝はさくらを治療しようと駆け寄ったナースエンジェルに向けて弓矢を構える。
ナースエンジェルはこれに気付くものの、義輝はお構いなしに弓矢を放ち、さくら共々ナースエンジェルを強烈な矢の一撃で吹き飛ばしてしまう。
「りりかちゃん……!」
赤塚組でナースエンジェルの旧友である水原花林は思わず口を塞いでしまう。
すると此処でコレクターユイを筆頭としたコレクターズ三人が、ハイパーエレメンタルスーツで三位一体の攻撃を義輝に直射。
だが義輝は三倍速の俊敏さでこれを避け、コレクターズの三人に向けて義輝は、弓矢を天へと射構えて無数の矢を放つ。
「矢は飛び付くだけに非ず、天より降り注ぎもするぞ?」
そう義輝が言うと、その通りにコレクターズの頭上から無数の矢が雨の如く降り注ぎ、彼女達に襲い掛かる。
コレクターズの三人は無数の矢を頭から浴びて苦痛に喘いだ。
「ははっ、電脳之朋らよ。現実の空間でも、予を更に昂らせてくれ」
義輝が無数の矢の雨をコレクターズの三人に降り注いだ直後、その義輝に魔法騎士の獅堂光が攻撃を仕掛けた。
「紅い稲妻!」
真っ赤な炎から生み出された強力な電撃を義輝に撃ち放つ光。だが彼女の紅い電撃を浴びても、義輝は動じずに直立したまま。
「ほほう、情炎之朋よ! 炎から稲妻を作り出すとは実に見事! では、予もそれに倣って一つ技を披露してみせよう」
そう言うと義輝は弓矢を前へと構えた。すると義輝が構える弓矢の前に空中に浮かう旋盤が現れたのだ。
「え!?」「あ、あれは一体……!?」
光との一騎打ちを見守っていた龍咲海と鳳凰寺風の二人は、義輝の眼前に現れた旋盤に目を奪われる。
すると義輝は廻る旋盤を狙い撃ち、あるマスに矢を通過させる様に射た。すると放たれた矢は雷を纏った白虎へと姿を変えて、前方の光へと直撃した。
「わあっ!!」「光!」「光さん!」
しかも直撃すると同時に、攻撃が当たった光の周辺に落雷が降り注ぎ、光に追撃。この惨状を前に海と風は愕然とする。
「くっ……よくも光を!」
光を雷鳴轟く無数の落雷で深手を負わせた義輝に、怒りの矛先を向けた海が氷の刃で義輝に斬りかかる。
が、義輝は海の氷の刃を己の刀で受け止め、防いでしまう。
「うむ! 確か、その技は再生能力の高い魔物を倒す為に編み出した技だったな! 蒼海之朋よ」
自身の攻撃を受け止められ、悔しそうな表情を浮かべる海。そんな彼女を義輝は剣戟で押し返し、その直後に再び旋盤を射抜く技を使った。
「今度は何が出るか……ははっ、博打は何が起こるか分からないから面白いぞ!」
博打を趣にしているのが分かる義輝の言動。そして義輝が旋盤を射抜くと、今度は凍て付く玄武が放たれて、義輝と海の二人がいる周囲を凍て付く冷気が覆い囲んで海の時間だけを凍結させてしまった。
「お、おい! あの技は……!?」
「間違いない……! ケンノフスキー様の空間を凍結させる技だ……!!」
義輝が放った凍て付く玄武を観客席から目撃し、それがロシア将軍ケンノフスキーの空間を凍結させる技と同じ効果であると猿飛佐助やかすが達以外の皆も一瞬で理解した。
そして義輝は凍結した空間の中で海を刀で滅多切りにして吹き飛ばす。
「きゃあっ!」
滅多切りにされた海は、凍結されてた空間を突破して、壁際まで吹っ飛んでしまった。
しかし此処で。
「風の怒り!」
鳳凰寺風が義輝を激しい風の障壁の中に包み込ませて逃げられなくさせる。
だが義輝は風の障壁の中から、またしても旋盤を弓矢で射抜いて今度は闇の青龍を撃ち放ち、風が発生させた風の障壁を破壊すると同時に風にも攻撃。
「きゃあっ」
蠢く闇の青龍の突進攻撃に巻き込まれ、風は軽々と宙へと舞ってしまう。
「癒しや回復の魔法だけに非ず、この様な強烈な風による攻撃をも仕掛けるとは……見事ぞ! 優風之朋」
魔法騎士三人をも、義輝は旋盤を射抜くという賭け事と同等の奥義で仕留めてしまった。
と、仲間達を次々に打ち倒していく義輝の猛攻を、何とか阻止しようとちせが義輝の頭上から野太く強力な光線を放射し、義輝へと一直線に放たれる。
が、義輝は先ほども披露した、ミラーガールの盾から会得した鏡面の盾を笏から展開させて、辛うじてちせが放った光線を受け止めた。
「う、うむ……! この光線は、予でも受け止めるのが精いっぱいだ……!」
義輝でさえも、ちせが放つ強力な光線を受け止めるので精一杯の様子だったが、義輝は次第に押し返す力を増してちせが放射する光線を撥ね返した。
「うわっ!」
そして放たれた光線を鏡の盾で撥ね返した義輝。ちせは、その撥ね返された光線に直撃して再び撃墜されてしまう。
「ちせちゃん!! くッ……いくらなんでも強すぎない? あの国連総長はよッ!?」
ちせが撃墜されるのを目の当たりにして、観客席のガイア・スコーピオンは騒ぎ出す。
「やはりな……聖龍HEADでも一目置かれるだけの武力はあるようだな、兵器之朋!」
義輝は、そんな撃墜されて旋盤状の広間に転がるちせに投げ掛ける。
すると其処に素早い動作で動き回りながら義輝を翻弄する様に接近してくるミュウミュウズの五人の乙女が。
彼女達の動作を見逃さない様に、義輝はその凛々しくも鋭い眼光で一つ一つの動作を視認し、接近して攻めてくるミュウイチゴ達と立ち回る。
「うむ! 獣之朋らよ、其之方たちの動きは実に俊敏かつ素早い……予でなければ其之方らの攻撃、全て受け切れはしないだろう」
そう説きながらミュウイチゴやミュウミント達の攻撃を受け流し、そして回避していく義輝。
すると義輝が俊敏な動作のミュウイチゴ達に気を取られていると、そんな義輝に蒼の騎士が斬り込んでいった。
が、義輝はミュウイチゴ達の攻撃を全て受け流した上で彼女達全員に反撃を喰らわした直後、蒼の騎士へと槍で突撃して容易く反撃してしまう。
「蒼之朋、其之方の剣術は闇之朋などに比べると、やや気迫が足りない……予を悲しませないでくれ」
「ッ……! 僕たちの戦いも、全て貴方にとってはただの道楽なんですね……!」
蒼の騎士は自分たち聖龍HEADと義輝の戦いが、全て義輝にとっては道楽の一環だと知らされて微かな怒りすら覚える。
と、己の道楽狂を語る義輝の周囲を、突如として発生した大水が取り囲み、義輝は渦潮に囲まれた。
義輝が聴覚を研ぎ澄ましてみると、彼の耳には七海るちあたち七人のマーメイドプリンセスの歌声が聞こえてきた。
「……成程な、海神之朋。其之方たちの歌声が、予を取り囲む渦潮……いや、水を操っている訳か」
義輝は完全に渦潮に呑み込まれるが、彼は全く動じずに渦潮の内部で再び弓矢を構えて凍て付く玄武を放った。
義輝が放った凍て付く玄武は、渦潮を瞬時に凍らせて粉々に打ち砕き、そのままの勢いで合唱していたるちあ達マーメイドプリンセスに玄武が直撃する。
「っ……!」
凍て付く玄武が直撃した瞬間、るちあたち全員が凍り付き、身動きすらもできなくなった。
そんなるちあ達に、渦潮を凍らせて粉々にした義輝が歩み寄ろうとしたその瞬間、背後から堂本海斗が義輝に斬りかかった。
「はあッ!」
だが義輝は瞬時に笏から刀を出して、振り向く事なくそのままの態勢で海斗の背後からの攻撃を受け止めて防いで見せた。
「はははっ! 勇ましいな、朋よ!」
そう高らかに笑い飛ばした義輝は、そのまま海斗を真上へと押し返して、その直後に弓矢を何発も頭上へと放って海斗を射抜いてしまう。
無数の矢を浴びて床に転げ回る海斗を見て、義輝は満足そうに笑みを浮かべる。
そんな義輝へ、真紅たち五体のローゼンメイデンが迫った。
初手に真紅がステッキを剣の様に振るって義輝へと進撃。だが義輝は真紅からのステッキ攻撃を、何とか笏で防ぎながら受け流してた。
「うむ、宙に浮いているからか、何処からステッキが振るわれるか読め難い! 流石だ、紅之朋!」
すると真紅と義輝が激しく剣戟し合っている所に、義輝の背後から蒼星石が庭師の鋏で義輝に襲い掛かってきた。
背後からの蒼星石の奇襲に逸早く気付いた義輝は、素早く真紅を笏で弾き飛ばすと、その直後に後ろへと振り返り蒼星石が振るう庭師の鋏を刀で受け止め彼女の動きを止める。
そして剣戟で蒼星石を軽く押し返すした直後、義輝は刀を仕舞い込んだ笏で蒼星石を真紅と同様に弾き飛ばして吹き飛ばした。
「うわっ!」「蒼星石! ……くっ」
蒼星石が吹き飛ばされ、双子の姉である翠星石は怒りで義輝へと一直線に飛来する。
が、義輝は迫ってくる翠星石へと弓矢を射抜いて遠距離攻撃。結果、翠星石は三本の矢に射貫かれて壁際まで吹っ飛んでしまう。
残された金糸雀と雛苺は結託して、二人掛かりで義輝へと進撃。
まずは雛苺が苺わだちを操る能力で、義輝の足元を縛り上げて拘束し、動きを封じる。そこへ金糸雀がヴァイオリンでの音波攻撃を義輝に直撃させるが、義輝は微々たる痛手を負っただけで即座に自分の足に絡み付く苺わだちを刀で斬り払い、俊敏な動作で金糸雀と雛苺に接近して二人を笏で殴打して真紅たち同様に壁へと吹き飛ばしてしまう。
「みんな!!」「つ、強すぎる……!」
観客席から同じローゼンメイデンの姉妹達が意図も容易く義輝に痛め付けられた惨状を目撃して愕然とするスコーピオン同盟の水銀燈と雪華綺晶は、義輝の底なしの強さを痛感する。
「ははっ! 人形之朋らよ、其之方達の強さも面白いぞ!」
五体のローゼンメイデン達を軽くあしらった義輝は嬉々とした様子だった。
歴戦の猛者である聖龍HEADを意図も容易く打ち負かしてしまう剣帝・足正義輝。
果たして、この義輝に勝てる勝算はあるのだろうか。
[赤と黒の博打]
「ううぅ……」「か、体がムチャクチャ痛ェ……」
一切の攻撃が効かずに一方的に攻撃を浴びせられるジュピターキッドやメタルバードたち聖龍HEADは完全に満身創痍の状態だった。
しかし、そんな聖龍HEADの惨状を目の当たりにした足正義輝は満悦の面差しで周辺で壁に寄りかかったり床に倒れてる聖龍HEADに言い渡した。
「楽しんでくれているかな、朋よ……そうだな。此処でも少し、趣向を凝らしてみようか」
そう言うと義輝は武器である笏を真上へと放り投げ、笏から刀が飛び出ると、そのまま笏は義輝の背後の旋盤その赤い枠へと突き刺さる。
すると次の瞬間、義輝の体が赤く染め上がり、朱色の光に包まれた。
「朋よ! これが天からの申し送りだ……! 一撃のもと、朱に染めよ!」
すると義輝の動作が例の三倍速のまま維持され、朱色の残影しか皆の目に止まらなくなってた。
「「は、速い……!!」」
聖龍HEADの参謀総長ジュピターキッドと観客席から戦いを見守っている聖龍隊の高嶺清麿は、余りの義輝の速度に目を疑った。
そして義輝の方は、その速度を維持したまま旋盤の間を縦横無尽に駆け巡り、時には刀で斬り付け、時には槍で間合いを詰めたりして聖龍HEADを追撃する。
「うわあっ!」「っ!」
セーラームーンらセーラー戦士達に、キューティーハニーが斬り付けられて軽く吹き飛ぶ。
「わあ!」「ぐっ!」
そしてコレクターユイは槍で間合いを詰められてからの突撃を受け、鳳凰寺風は槍で貫かれた後に持ち上げられて激しく床に叩き付けられた。
「なんだ? 急に国連総長のスピード上昇が保ったままに……!?」
先ほどまでホンの一瞬の間にしか速度を上げられなかった義輝が、朱色の光に身を包んだ途端に速度上昇が保持された状態に至った経緯に驚くメタルバード。
そんな驚いているメタルバードに修司が説明する。
「義輝は運任せではあるが、自分の戦闘スタイルを変化させる事ができる……赤で速度を上げ、黒で攻撃力を上昇させたりなど……俺たち以上に変幻自在の戦い方ができる……!」
「! おいおい……! 今は赤でスピードアップが保持されたままだって言うのか……!? どこまでチートなんだよ!!」
修司の説明を聞いてメタルバードが愕然としている間も、義輝は上昇した速度で赤い残影を視覚に残しながらジュピターキッドや木之本桜たちを悉く薙ぎ倒していった。
「はははっ! ほれほれ、どうした! 今の予にとっては其之方達の動きは赤子同然だぞ、朋よ!」
一方で義輝は聖龍HEADを相手に立ち回りし、刀や槍で縦横無尽に動き回りながら過激な攻撃を続ける。
すると目にも止まらない俊敏な動きで接近しては攻撃してた義輝が、不意に同じ戦場に立つウォーターフェアリーの背後に立ち回り、彼女へ刀を振り上げた。
「散り去れッ、運命の旋盤よ! これもさだめだ」
義輝は一刀の振るった斬撃でウォーターフェアリーを背後から無慈悲に斬り捨てた。
「アプリーーーーッ!!」
婚約者であるウォーターフェアリーが真っ二つに斬り捨てられて倒れ込む惨状を目撃し、ジュピターキッドは愕然とした。
だが、ジュピターキッドや周辺の修司や聖龍HEADが目視する中、義輝に真っ二つに斬り捨てられたウォーターフェアリーは床に倒れ込むと同時にその全身が大量の水へと変化した。
床上を水浸しにしたウォーターフェアリーの水の変化した亡骸に、ジュピターキッドはもちろん他の戦いを見守っている皆々も唖然としていると。
「! ふぅ……」
なんと真っ二つに斬り捨てられ水へと変化したウォーターフェアリーが元の人体へと戻っては何事も無かったかのように起き上がった。
「あ、アプリ……!」「じゅ、ジュニア……!」
何が起きたか理解できないジュピターキッドがウォーターフェアリーに駆け寄り、話し掛ける。
「アプリ、今のは一体……!?」「わ、分からない。私にも何が起きたか……?」
ジュピターキッドに問い掛けられても、ウォーターフェアリー自身自分の身に何が起きたか理解できていない様子。
周りも一体ウォーターフェアリーの身に何が起きたのか理解できずに困惑していると、そんな状況を察して義輝が困惑するジュピターキッドとウォーターフェアリーに話し掛けてきた。
「うむ、一体全体なにが起きたか理解できない、といったところの様だな。地神之朋よ、そして水之朋よ」
「わ、私、一体……?」
困惑するウォーターフェアリーたちを前に、義輝は真顔で説き明かした。
「うむ、水之朋よ! おそらく其之方に起きたのは……いや、おそらくではなく完璧に、そう……其之方がより強い能力者に変化、いや進化したからだ!」
「進化!?」
ジュピターキッドが困惑すると、義輝は説き続けた。
「うむ。水之朋よ、其之方は水の化身である妖精族の姫であったな。その姫であった其之方が二次元人特有の「何かを変え、何かに変化する力」が働いて、其之方は流動体質系の能力者へと進化したのだ! まあ、要するに如何なる物理攻撃も簡単には効かないという事だ! ははっ」
『え………………えええぇッ!?』
義輝の説明を聞いて、その場の皆々は全員驚愕してしまう。
要約すると、ウォーターフェアリーことアプリコットは水を操るだけでなく、自分自身も水に変化させてあらゆる物理攻撃をも受け流して無力化できる流動体質系の強き能力者へと進化したというのだ。
「ぼ………………僕の婚約者がこんなに強い訳が無い!!」
余りの事態に、ジュピターキッドは叫んでしまう。
「ははっ、そう驚く事はないだろう皆よ。吾ら二次元人は変わる命、ゆえに容易く進化できてしまう種族である事は周知していなかったか?」
笑い飛ばしながら皆に語る義輝の話を聞いて、修司が重い口を開いた。
「……そうだ、二次元人は変わる命。良くも悪くも、変わっちまう事で世情を様々な混乱に導いてしまう進化する種族……! そして何より! 俺が最も恐れてた二次元人の特性……!!」
「修司……」
二次元人は良くも悪くも様々に変化を与えてしまう種族。時には正しい姿だけでなく、異形の怪物や怪人などの
「ははっ、吾ら二次元人は変わる生き物、変わる命、そして何より進化する生命体! しかし、予との戦いの中でも二次元人が進化するとは実に素晴らしいぞ! ははははっ」
しかし一方の義輝はウォーターフェアリーが戦いの中で進化した状況に嬉々として大喜びするだけだった。
全員がウォーターフェアリーの進化に驚かされた中、義輝は攻撃の手を緩めなかった。
「どうした朋よ! まさか水之朋が進化を成した偉業に驚いて手が止まってしまう訳ではないだろうに!」
槍を振るって周辺の聖龍HEADを散り散りに弾き飛ばす義輝の猛攻に、観客席の面々は完全に背筋が凍て付く感覚に襲われた。
「な……なんて強さだ……!」
「姉さんや他の聖龍HEADが手も足も出ないなんて……!」
「しかも足正義輝は戦いを完全に掌握してるだけでなく、戦いそのものを楽しんでいやがる……!」
観客席から聖龍HEADの戦いを見守っているマン・ヒールズの月詠イクトにミスティーハニー、そしてゼブラは義輝の余りの戦い振りに蒼然とした。
「さあ、次なる出目でも予を楽しませい!」
そして義輝は笏から刀を出しては、自身の周囲に旋盤を出現させて再び博打で自身の強化を図ろうとする。
「お、おい、今度はどんな風に自分を強化しちまうんだ……!?」
義輝の強化にメタルバードは完全に恐れていた。
そして義輝が出した出目の色は黒だった。
「朋よ! 次なる天からの申し送りはこうだ……闇の如き漆黒の攻撃から逃れてみせい!!」
すると義輝は自身を黒い光に包ませると、弓矢を頭上へと連続で射抜いて発射。その天へと放たれた矢は、流れる様に地上の聖龍HEADを追尾してきた。
「う、ウソだろ……!?」「追尾攻撃……!」
キング・エンディミオンにミュウザクロが蒼褪めるが、矢は無慈悲に地上の聖龍HEADを追尾して彼女達を射抜いてしまう。
「ぐはッ!」「きゃっ」
無数の矢を浴びて悶絶する蒼の騎士に龍咲海たち聖龍HEAD。
「わっはっは、その程度……其之方達であれば凌げるぞ!」
しかしそんな苦悶の表情で苦しむ聖龍HEADを目の当たりにしてる義輝は、聖龍HEADならばこの程度の攻撃は耐え凌げると笑い飛ばす。
「こうなったら……HEAD! 総力を挙げて、国連総長へ一斉攻撃だ!!」
遂に痺れを切らしたメタルバードが聖龍HEADの面々に総攻撃の指令を下す。
そして次の瞬間、メタルバードのレーザーでの弾幕に続いて他の聖龍HEADも続々と義輝に連続で猛攻を仕掛けた。
聖龍HEADの猛攻を浴びた義輝を、白煙が包み込んで姿が朧気に映る。HEADも観客席の皆々も義輝の現状に目を見張る。
すると義輝は自身を覆う白煙を笏で振り払いながら笑顔で現れる。
「はははっ、今の攻撃は中々痛手だったぞ朋輩たちよ!」
聖龍HEADの総攻撃をまともに浴びても平然としている義輝に、メタルバードたち聖龍HEADは蒼然とした。
「ははっ、では次は予の番だな」
そう義輝は言うと、手にしていた笏を真上へと放り投げると、頭上で笏は無数の黄金に輝く武具に変化して義輝の周辺に突き刺さる。
「こ、これは……!!」
黄金色に輝く無数の武具にメタルバードが驚愕してると、義輝はまず両手にそれぞれ三又の槍を手に取って縦横無尽に振るった。
「滾ろう風に昇れ! 天よ!」
二刀流の槍捌きで周辺の聖龍HEADを薙ぎ倒していく義輝は、次に弓矢に持ち替えると弓から三本の剣を射抜いて前方の聖龍HEADを攻撃。
そしてお次は一本槍を片手に三本、計六本の槍をデイ・マァスンの六爪流の様に振るって猛攻。
しかもその一本鎗を数珠繋ぎの様に連結させては、その連結した槍を鞭の様に振り回して辺り一帯を縦横無尽に蹴散らした。
そして最後にその連結した槍を元の形状に戻すと、その槍を操って前方へと撃ち出して聖龍HEADを仕留めた。
「さあ、雲の上まで高まろうぞ……!」
全ての攻撃が終わると、数多の黄金に煌めく武具は閃光へと変わり、そして義輝の手元に笏として戻るのだった。
そして数多の猛攻を浴びて悶絶する聖龍HEADに、義輝は熱く申し渡すのだった。
「朋輩よ、望みはあるか……ならば欲せよ! 滾れ! 焦せ! 最後の時まで、熱く滾ろえ!!」
数多の武具を変幻自在に扱える剣帝・足正義輝の戦術に聖龍HEADは圧倒されるばかりだった。
[共闘する闇]
変幻自在の戦術を巧みに使いこなす足正義輝。
雷鳴の白虎、凍て付く玄武、焔の朱雀、闇の青龍。変わり移ろう属性に聖龍HEADは手玉にされるばかり。
しかし、そんな戦況の中でウォーターフェアリーが如何なる物理攻撃をも受け流して無力化してしまう流動体質系の能力者へと進化を果たす。
二次元人の進化の導きに只ならぬ畏怖を感じてる修司は、殺伐とする戦況下でも進化する二次元人の脅威を覚えつつも足正義輝と対峙する。
「………………………………」
「闇之朋よ、そろそろ良いのではないか? 其之方の仲間である聖龍HEADが時間を稼いでくれたお陰で、其之方の体力も気力も回復したであろうに」
互いに真正面から相手と対峙する修司と義輝は、余裕を感じさせる義輝に対して修司の方は完全に威圧されてる様子が窺えた。
「……そうだな、そろそろ俺も現役のHEADに一任させてばかりじゃ悪いと思ってたところだ」
そう唸る様に呟くと、修司は聖龍剣を前に振るって一気に義輝へと斬り込んだ。
「うおおッ!」
修司の一撃を義輝は瞬時に笏から刀を出して受け止める。
そして互いに激しく鍔迫り合いを展開させては、最後に押し合って互いに距離を置く。
「いいぞ、闇之朋。HEADでは予を満足させられるかどうか不安だったが、此処で其之方が参戦してくれるのであれば勝負はまだまだ面白くなる!」
修司と激しく鍔迫り合いをした義輝は、まだまだ修司と激しい接戦が繰り広げられると非常に喜んでいた。
この義輝と勝負を着ける為、修司は自身の闇の能力を解放して全身全霊で義輝に挑んだ。
「ふんっ!」
荒い鼻息と共に修司は全身を闇の能力で黒く変色させると、義輝に迫った。
「修司に続けッ!」
そんな修司の意気込みを前にし、先ほど義輝の猛攻で意気消沈してたメタルバードが聖龍HEADに強く呼びかけて、修司と共に義輝へと強襲する。
「いいぞ、朋輩よ! もっと己を昂らせ、予を高みへと誘え!」
能力全開で斬りかかってくる修司と、そんな修司に共鳴して一緒に挑んでくるメタルバードたち聖龍HEADに、義輝は笏を数多の武具に変化させて意図も容易く抗戦しては打ち払ってしまう。
「さあ、朋よ! 腕が鳴るな。これほどまでの熱気、予は初めて感じるぞ!」
義輝は修司達と激しく刀・弓・槍で応戦しながら初めて感じる熱気に己の感情が昂るのを覚えてた。
「ぐはッ!」「きゃあっ!」
メタルバードやセーラー戦士達が義輝の攻撃で吹き飛ばされるのを観客席で観ている友人たちが騒ぎ出す。
「おいおい修司! お前らがやられたんじゃ全部お終いだろうがッ! 気張っていけ!!」
修司やミラーガールの旧友である赤塚大作こと大将が観客席から大広間で戦う皆に声援を送る。
「言われなくても……勝ってやらあ!!」
大将からの声援を受けて、修司は再び聖龍剣で義輝へと斬りかかっていく。
義輝はそんな修司からの斬撃を全て笏から出した刀で受け流しつつ激しく剣戟し合う。
そして激しい剣戟の末に修司を激突の衝撃で後方へと押し出して距離が離れた隙に、刀から弓矢へと持ち替えて修司に黒色の攻撃力が上がった矢での一撃をお見舞いしようと射構えた。
「修司!」
ミラーガールが叫び、メタルバードたち聖龍HEADに観客席の皆々が見詰める中、義輝は強力な一撃を修司へと射た。
義輝が射た矢は物の見事に修司を射抜いてみせた。
誰もが強力な矢での一撃が修司を射抜いたのだと思い込んだ、その時。
強力な矢での一撃が直撃した修司が一瞬で消えたのだ。これには聖龍HEADや観客席の皆々だけでなく義輝本人も驚愕した。
すると消滅した修司から少し離れた地点に、ちゃんと修司は居た。
「闇虚実……! いわゆる分身って奴だ」
「うむ、成程……かつての智将モウ・チェイファンの技から派生させた技か」
修司は前もって闇の能力で分身を作り出し、義輝の攻撃を分身が受けていたのだ。これは今は亡き前台湾将軍のモウ・チェイファンの技「虚実」を応用した修司の分身術だった。
誰もが驚く中、修司は再び闇虚実を無数に繰り出して、義輝に一斉に総攻撃を仕掛ける。
だが「ははは! だが、どれが本物か分からないのなら、その全てに攻撃を仕掛ければよいだけの事!」
そう言うと義輝は真上に向かって弓に変形させた笏を放ち、無数の矢を射出した。
放たれた矢は、そのまま放射線に沿って複数の闇虚実で分身を作っている修司へと襲い掛かる。
「ぐッ!」「修司!」
真上からの避け様のない矢の雨に体を射抜かれ、悶絶する修司を見てミラーガールが叫ぶ。
しかし無数の矢を浴びて悶絶した修司は諦めない。
「
修司が御得意の技を発動させ、それを見た聖龍隊の高嶺清麿が叫んだあ。
皆が修司の闇の能力が義輝を引き寄せると思った。が、次の瞬間。
「ふんっ」
なんと義輝は左手で闇の引力を容易く弾いてみせたのだ。
「!?」『!!』
自分の闇の引力を弾かれた修司も、それを見ていた多くの者たちも愕然とした。
「闇之朋よ、其之方が操る闇の引力程度で予をどうこう出来ると、本気で思ったか?」
「………………!」
義輝からの問いかけに、修司は完全に言葉を失くしていた。
「う、ウソだろ……!? 闇の引力を、片手だけで弾いただと……! いや、それ以前に引力という物質のない見えない力を弾けるもんか……?」
義輝が闇の引力を弾いたのを目の当たりにしたメタルバードは余りの現状に我が目を疑ってしまう。
そんな場が蒼然となっている時。
「はは、闇之朋よ。其之方が使える闇の能力とは……こんな感じで出すものなのか?」
と、義輝が左手を修司の方に突き出すと、手の平から何と修司と全く同じ闇の引力が出現した。
「!!!」
その闇の引力に引っ張られ、修司は義輝の方へと強制的に引き寄せられる。
そして義輝は修司が間近まで迫った瞬間に、修司の腹部に強烈な拳を撃ち込んだ。
「ぐほッ」思わず悶えてしまう修司。
修司が繰り出す闇の能力をも克服し、更には会得してしまう足正義輝の武芸に修司はもちろんその場の誰もが蒼然とした。
すると此処で修司が突如、床に右手を押し当てて、遠距離から義輝の周囲に漆黒の囲いを作り出して義輝を包囲した。
「今だ、みんな!!」
修司がそう叫ぶと、メタルバードに魔法騎士の三人、木之本桜に蒼の騎士と堂本海斗そしてコレクターズの三人組が一斉に義輝を囲う黒い壁へと突撃。
メタルバードは両手を槍に変形させて、コレクターズの三人は西洋の槍であるスピアを武器にして、他の面々は剣での突撃で義輝を囲う闇で作られた壁へ武器を突き刺した。
修司が自身の闇の能力で作り上げた壁に武器を突き刺して、内側の義輝を突き刺して決着をつけようとしたメタルバード達。
これを観てた実況兼解説役を担ってるウェルズが、観客席の面々や世界中の観戦者たちに解説した。
「おおっ、これは……! 修司の闇が作った壁で国連総長を囲み、その壁ごと国連総長を武器で貫こうとする修司と聖龍HEADの連係プレー!! これは史実の足利義昭が敵に追い詰められ、無数の武器で応戦したものの最後は敵によって畳で四方を塞がれ囲まれた際にその畳ごと槍で貫かれて死んだという説から編み出された戦法!」
足正義輝の基となった三次元人の剣豪将軍・足利義昭の死亡説の一つに沿って仕掛けられた戦法だと説くウェルズの言う通り、修司の闇が作り上げた四方の囲いをメタルバード達が刺し貫いた事で、ようやく義輝を仕留められたと皆が思った。その瞬間。
「はははっ、皆の者! 予が史実通りに戦死すると本気で思ってしまうのか?」
『!』刺殺されたと思われた義輝の声に、修司達も観客席の皆々も一驚した。
そして声のする方へと顔を見上げてみると、なんと修司が作った闇の囲いの上方その真上に、跳躍して突撃による突き刺しを回避した足正義輝の姿があった。
「ッ!」「ッ……! ジャンプしてオレらの突撃をかわしたのか……!」
常人以上に高く跳び上がって突撃を回避した義輝を見上げて、修司もメタルバード達も慄いてしまう。
そして義輝は跳躍してメタルバード達の真上に跳び上がると、メタルバード達の頭上から弓をひいて無数の矢を真下へと放った。
「うわッ!」
無数の矢が雨の如く降り注ぎ、それを浴びたメタルバード達は思わず怯んでしまう。
すると今度は義輝から最も離れた地点に居たちせが、レーザー武器に変形している自身の腕を構えて、よく狙い澄まして義輝へとレーザーを放って狙撃を試みた。
が、義輝はちせが放ったレーザーをも、他の攻撃同様、己の武器である笏で容易く弾いて弾道を逸らして回避してしまう。
「っ……!」
物理ではないレーザーをも笏で弾道を逸らす事で回避してしまう義輝の技に、ちせは愕然としてしまう。
「ははっ! 兵器之朋よ、これもまた予の基となった足利義輝の死亡説に沿った戦法だな」
義輝の言う通り、史実の足利義昭の死亡説の一つには遠距離からの銃での狙撃があるのだ。
しかし、四方を囲んだ上で囲いごと武器で貫くのも、遠距離からの狙撃も全て難なく回避しては反撃してしまう義輝の技量に修司達は圧倒される。
修司と聖龍HEADを相手に全く動じず平然としている足正義輝の優勢振りに驚かされていたのは、何もその場の観客席にいる面々ばかりではなかった。
賽の間その大広間からカメラを通して全ての世界に生中継されている修司達と義輝の勝負を見守っている多くの者たちが、足正義輝の武芸に目を丸くして注目していた。
それは聖龍隊の本拠地であるアニメタウンでも同じだった。
「……! バーンズ、みんな、何やってるのよ! 修司も加わっているのに全く歯が立たないなんて……! いや、でも正直言うと将軍様にも勝ってほしいって気持ちもあるんだよな……」
そうテレビに顔を近付けて釘付けになっているのは、アニメタウンでTAKOCAFEを経営している藤田アカネ。彼女はこの乱世を終わらせる為にも聖龍HEADに勝ってほしい半面、自分が大ファンである足正義輝に勝ってほしい気持ちも正直あったのだ。
世界中が修司達と足正義輝の決戦に注目してる中、修司の中にある微かな決意が炎々と燃え上がり出してた。
[新たなる決意]
現政奉還の発端となり、修司が黒武士へと変わり果てた原点、足正義輝との大一番。
しかし修司と聖龍HEADは、剣帝・足正義輝の変幻自在の戦術に対して圧倒的に不利な戦況に追い詰められ、歯が立たない現状だった。
既に義輝の数多の攻撃で満身創痍となってしまった修司に聖龍HEADの面々を前にし、観客達から修司達の戦闘を見守っていた観戦者の皆々も顔を蒼褪めさせてた。
そして修司達に対してほぼ一方的に攻める足正義輝との戦いを目撃した兵士達が騒ぎ出した。
「き、鬼神にHEADが歯が立たない……! 化物だ……賽の帝は化物だぁ!!」
「や、やっぱり新世代型二次元人はバケモノ……!」
「おい、テメエ! 今なんと言いやがった……!!」
足正義輝に対して全く歯が立たない修司に聖龍HEADを目の当たりにして畏怖を感じる兵士達の騒めきに、赤塚大作こと大将が兵士の発言に釘を刺す。そして観客席にいる新世代型二次元人達は蒼然と顔を俯かせる。
しかし、この兵士の化物発言に対して義輝は嬉々とした笑顔で笑い飛ばした。
「ははは、朋よ! 何を今さら吾ら新世代型を人として捉える? 予を始めとする新世代型二次元人は、既に生まれた時から異質なる存在……いや、二次元人そのものが変幻自在の異形……そう、二次元人という化けるモノで間違いないであろう!」
自分を含む二次元人を全て一括りに化物と捉える義輝の発言に、大将は睨みを利かせるのだが。
「其之方もそう思うであろう? ……闇之朋よ」
義輝は嬉々と笑いながら自身の目の前で這いつくばる様に弱々しくなってる修司に問い掛ける。
そして問われた修司は、床を這いつくばりながら聖龍剣を支えに起き上がりながら返答する。
「……! そうだ……俺は異形の存在である二次元人の変化する力に、変幻自在のバケモノ並の力を知っているし……そして何より、そんなバケモノ染みた二次元人に……魅了されてた」
「修、司……!」
修司の弱々しい返答を聞いて、彼と同じく満身創痍のミラーガール達も耳を傾け身体を起き上がらせる。
それはミラーガールだけでなく、彼女以外の聖龍HEADの面々も満身創痍の体を起き上がらせて、自分たちと同じく満身創痍の修司と未だに戦意に満ち溢れている足正義輝の会話に耳を傾ける。
「闇之朋よ。其之方がその様子では、予から全ての世界の
義輝の言葉に、同じ戦場で打ちひしがれる聖龍HEADも、観客席にいる大勢の猛者達も口が重くなっては黙り込み、空気までも重く感じられた。
だが、そんな重く険しい空気の中、その空気を切り裂くようなか細い声が。
「………………た…………戦え………………」
そのか細い声は、満身創痍で打ちのめされてる修司の耳にしっかりと届いた。
修司は自然とその声の主の方に視線を向けて、空虚な瞳にその人物を捉える。
修司の目に飛び込んできた声の主、それは修司のクローンでもある新世代型二次元人の真鍋義久だった。
「戦え………………戦って、勝て! 小田原修司!!」「!!」
突然空気を切り裂くような大声で修司を呼び起こす真鍋の声に、修司自身も敏感に反応する。
修司だけでなく、足正義輝も、その義輝と激戦を繰り広げてる聖龍HEADも、そして真鍋と同じく観客席で戦いを観戦してる皆々も、一驚した眼差しで真鍋を凝視する。
「ま、真鍋君……!?」突然の真鍋の大声に、琴浦春香も唖然としてしまう。
だが皆が注目する中、真鍋の声は滞りなく修司に投げ掛けられる。
「こんな……こんなところで終わる男じゃないだろ! アンタは……!!」
所々動揺と不安が混じりながらも、真鍋は修司に声援を送り続ける。
「俺たちを……俺たち新世代型二次元人を現政奉還に巻き込んだアンタを応援するつもりは毛頭ないけど……! けどな!! 間違いを犯してきたアンタをアッコさんもバーンズも、そして聖龍隊の大勢が今でも信じてくれているんだぞ! その信頼まで裏切るんじゃねえよ!!」
「………………!」
「戦って……戦って、勝って……アンタと国連総長が始めた現政奉還に区切りを、終わりを告げやがれ! それ以前に俺たち新世代型の始祖であるアンタが……アッコさんが昔からずっと想い焦がれた意中の男が……何より、バーンズたち聖龍隊に理想を与えたアンタが自分のクローンでもある足正義輝に負けてんじゃねえぞ!!」
「……!」
「勝って……勝って、それこそ現政奉還って物語に……伝説に、ハッピーエンドを迎えさせろよ! 小田原修司!!」
真鍋が思いの丈を切って精一杯吐き出した数々の言葉に、修司の心身は身震いさせられた。
すると真鍋に続き、他の新世代型二次元人も堰を切った様に修司へと声を投げかける。
「そうだ! アンタはこんなところで終わる男じゃない!」
「アッコさんが、聖龍隊の皆さんが信じた伝説を築いた戦士が負けっ放しなんて癪に障るぜ!」
「俺たち新世代型二次元人を巻き込んだんだ! この騒動の終止符も、アンタ自身が打たなきゃ意味がない!」
「現政奉還という伝説を、ここでアンタが終わらせるんだーーっ!!」
そう続々と修司に声援にも近い言葉を投げかける新世代型二次元人たち。
すると新世代型二次元人に続いて聖龍隊の隊士や関係者も挙って修司に呼び掛ける。
「修司殿! そなたなら、まだまだ戦える筈ぞ! 私には分かる……修司殿は決して諦めない不屈の闘争心を持つ、紛れもない英雄なのだから!」
「修司くん! 君はもう独りじゃない。こんなにも君を応援してくれる掛け替えのない友達がいるんだから!」
「おーーい、修司! テメェが此処で終わったら、それこそ誰が剣豪将軍を止められるんだよ!? 自分で蒔いた種ぐらい、自分で最後まで刈り取りやがれ!」
「修司さん、頑張って!」「修司さーーん、諦めちゃダメ!」
「バニラ達が此処まで言ってんだ! 最後まで諦めんじゃないぞ!」
ガッシュ・ベル、鬼太郎、ミルモ、バニラ=ミュー、エリル、ショコラ=メイユール達の声援も浴びせられ、修司の疲労困憊の肉体の奥底から燃え滾る闘志が湧き上がってきた。
皆の声援を受け、修司は聖龍剣を杖代わりに突き立てて強引に立ち上がりながら言い切った。
「何も守れやしねぇ? いや、こんな薄汚れちまった剣でも……守れるもんなら、まだあるさ!!」
立ち上がった修司は、床に突き刺してた聖龍剣を引き抜いて切っ先を義輝に向けて更に言い放つ。
「アンタの言う通りだ……こいつは俺の業だ。この俺が二次元界に来てから多くの命や人生が壊れちまったのも……そして新世代型二次元人という俺のクローンが大量生産されて世の中が更に混乱しちまったのも、全てな!」
己の犯した罪と業を赤裸々に述べる修司。
「俺の背負うべき業ならば……いくらだって俺が背負ってやる。ただ……当然ながら、それは俺のクローンである新世代型二次元人も同様だがな」
己が犯した業は全て己が背負うと言い切る修司は、己のクローンである新世代型二次元人についても心中を明かした。
「新世代型共が責め受ける業ならば、忌まわしき血筋なら……何度だって、この身で受け止めてやる」
そして最後に修司は、自分のクローンである新世代型二次元人の責められる業も罪も、そして存在すらも受け入れると言い切った。今まで自分のクローンである新世代型二次元人の存在を受け入れられなかった修司の決断に、修司の台詞を聞いた全員が驚かされた。
そんな修司の決断を聞き入れ、修司の成長を感じ取ったミラーガールも辛うじて立ち上がり、ゆっくりと修司の隣まで歩み寄ると話し始めた。
「修司、前にも言ったでしょ? もう修司だけが全ての罪を、業を背負い込む必要はないって。これからは私も……ううん、私たち聖龍HEADも修司が今まで積み重ねてきた罪を一緒に背負って生きていくわ。もう修司だけに重荷を背負わせない……一緒に背負って生きていくわ!」
ミラーガールの力強い言動に、修司は心中で密かに感銘を受けた。
そして修司は自分やミラーガールの周りにいる聖龍HEADの英雄達を見渡してから、真っ直ぐ義輝を見据えながら告白した。
「俺は最初……英雄ってのは、もっとスゴイもんなのだと勝手に思い上がってた……いつの間にか勝手に英雄達を、いや二次元人を神格化していたのは俺の身勝手さだった」
「………………………………」
修司の告白を無言で聞き入れる義輝に、修司は話し続ける。
「でも、今は気付いた……英雄は神でもなければ王でも無い……ただの人。普通の人間と差して変わり無いって、ようやく理解した」
そう修司はようやく、やっと気付いたのだ。英雄とは神でもなければ王という存在だからこその名誉なのではないと。普通の人間と同格だからこそ、人に優しく、そして人を護れる英雄だという事を。
英雄とは立場ではなく、名もなき名称、いや名誉なのだと修司は長き戦いを得て気付かされたのだ。
すると修司は次に、観客席にいる多くの新世代型二次元人に視線を移し、そして彼らの顔を一つ一つ視認すると再び義輝に顔を向けて話し出した。
「俺は確かに政府や軍の上層部に、自分の遺伝子を使って実験などを自由に行ってもいいと言い切っていた……だが、自分のクローンに二次元人が使われるのだけは酷だった! 俺の愛する二次元人が、俺の穢れた遺伝子から勝手に生み出される事だけは許せなかった……!!」
二次元人を愛するばかり、血で穢れた自分の遺伝子から二次元人であるクローンを生み出す行為だけは黙認できなかったと告白する修司。だが。
「だが! 新世代型二次元人には無限の、それこそ他人との結び付きを得られる事で広がる可能性があるという事も気付かされた! 二次元人が俺たち三次元人と共存していくには、俺の穢れてる遺伝子を利用しなきゃいけないって事も、やっと受け入れられた!」
今の今まで自分の遺伝子から生み出された二次元人の存在を受け入れられなかった修司の成長振りに、隣のミラーガールも周辺で満身創痍の聖龍HEADも、そして観客席の大勢も内心歓喜に沸いた。
更に修司は今まさに義輝との決着をつける寸前の処まで漕ぎ着けた場面の最中、己の思いを全面に吐き出していく。
「俺は……最初は英雄にも、戦士にも穏やかな時を与えたいと願い……独りで戦い続けてた……」
「ふむ、その孤独なる戦いでの強さもまた、其之方の強さの一つと云えよう……」
「だが!!」「!」
修司は義輝に向かって言い放った。
「だが! その俺の考えは間違ってた! 英雄とは、戦士とは……最初っから己の穏やかな時を捨て、ただ只管に弱き者たちの為に戦い続ける茨の道を邁進する気高い存在であるのだと! 大切な友の為、そして何より護るべき尊い存在の為に己の安らぎを捨てて、戦い続ける覚悟を持つのが聖龍隊の隊士……いや、戦士なのだ!!」
この修司の告白に、周辺で満身創痍で倒れてた聖龍HEADの仲間達が続々と声を挙げる。
「その通りだ、修司……!」
「義兄さんだけじゃない! 僕たち聖龍隊の戦士全員が、自分の平穏を捨てても弱者を護り切る屈強な戦士である事を忘れないで!」
メタルバードにジュピターキッドが声を挙げると、続けてウォーターフェアリーも声を挙げる。
「確かに修司さんが二次元界に来た事で運命が変わってしまった二次元人は、私も含めて大勢います! だけど私はそれを恨んでないわ。大勢の友に、仲間達に出会えた変化を今では何よりも喜びに! そして誇りに思っています!」
異世界ボスコワールドから今に至るまで変わり果てた運命の中を生き続けるウォーターフェアリーことアプリコットの告白を聞いて、修司は感銘の余り胸を強く打ち付けられる衝撃が走る。
修司は一度は捨ててしまった仲間達からの嬉々たる声援に感動しながらも、義輝や周りの皆々に打ち明ける。
「無罪になっても、俺が犯した罪が消える事は無い。世界が許したとしても、俺は俺自身を許す事は永遠にできない。この罪を背負って、俺は俺のクローンである新世代型二次元人と共に生きていく……!」
修司は自分が積み重ねてきた罪科を全て背負いながら、自分のクローンである新世代型二次元人と共生していくと宣言するのだった。
そして修司は今一度聖龍剣を持ち上げて、刃の背を左手の甲に乗せて切っ先を相手である義輝に向けるという独特の構えで義輝と対峙した。
その修司と共に決着に助太刀しようとミラーガールもミラー・シールドを構えて義輝と対峙する。
その剣を手に取ってから、男は孤独で無くなった。だが代わりに護るべき者を全て護るべく、その剣を揮う生涯へと歩んでいく。
己の戦いの始まりである聖龍剣を再び手に取り。男は、小田原修司は懐かしきあの頃に戻るべく、剣帝へと力強く歩を進める。
そんな二人を目前に、義輝は嬉々と顔を緩ませて笑顔で唱えた。
「はははっ、そうだ……! それでこそだ、朋よ!」
義輝は笏を回転させて臨戦態勢に構えると、修司とミラーガールの戦意を呼び起こそうと唱えた。
「闇之朋、そして鏡之朋よ! 運命を、
次の瞬間、修司とミラーガールは一斉に義輝へと攻め込んだ。
一斉に義輝へと攻めた修司とミラーガールは、同時に真正面から義輝に斬りかかり激突。
義輝は二人の刃を笏で受け止め押し返すと、二人に向かって言い放つ。
「一度の滾りに全てを乗せよ! それが、生きるという事だ!」
この義輝の言葉に修司は激情に満ちた顔で言い返す。
「何度だって立ち上がり、前を向ければいい! ……それが生きる力だと、俺は仲間達から教わった!」
「………………………………」
修司からの強い反論を受けて、義輝は毅然とした面差しで修司とミラーガールに対して激しい剣戟を仕合う。
修司の特攻の突きを、義輝は笏で受け止めて防ぐが、其処に今度はミラーガールが鏡分身で生み出した三体の分身と共に義輝の周囲に展開しては同時に襲い掛かる。
が、義輝は向かってくる三人のミラーガールを全て刀と槍と弓矢を用いて反撃し、全ての分身体を消し飛ばしてしまう。
すると其処にミラーガールがミラー・シールドを義輝へと投げ付けて攻撃するが、義輝はその盾を素手で掴むと逆にミラーガールへと盾を投げ返して反撃。ミラーガールは義輝が投げ返した盾を受け止めると、即座に左腕に装着して再び修司と共に義輝へと接近して斬りかかる。
修司の剛腕からの凄まじい太刀筋と、ミラーガールの煌びやかな太刀筋が義輝に襲い掛かるが、義輝は全て笏から出した刀で受け流して無力化。
と、ここで修司の聖龍剣と義輝の笏が激しく激突した為に双方の武器が宙を舞い、遠くに突き刺さってしまう。
がら空きの素手状態になった修司と義輝。すると修司はがら空きになった素手で義輝の腹に思いっきり拳を打ち込む。
「ッ……! こ、これは効くな……!」
修司の剛腕から繰り出された拳を打ち込まれて額から汗を流す義輝は、反撃とばかりに今度は修司の腹部に拳を打ち込む。
「ッ! ま、まだまだ……!」
義輝に拳を打ち込まれた瞬間、一瞬ばかり宙に浮いた修司も義輝同様に額から汗を流してた。
そして互いに相手の腹に拳を打ち込んだ修司と義輝は、お互いに一歩退くと修司が腕を伸ばして遠くの床に突き刺さった聖龍剣を引き寄せて手に持った。
修司の聖龍剣は、修司の意思一つで簡単に修司の手に戻るのを目の当たりにした義輝はこれを真似た。義輝も腕を伸ばすと、遠くに突き刺さってた笏が義輝の手に戻ってきたのだ。
二対一ながらも、修司とミラーガールの猛攻を全て受け流して防ぎ切る足正義輝。
お互いに全ての未来を賭けて戦い合う大一番の仕合に、三人の周辺で傍観に徹するしかできない聖龍HEADも、観客席の皆々も三人の激戦を見守るしかできなかった。
修司の、自分のクローンである新世代型二次元人と共生するという決意を目の当たりにして、修司の為に全身全霊で支援する事を決めたミラーガール。
互いに相手を、そして周りを思いやる鬼神と聖女の二人を相手に、剣豪総長足正義輝は如何なる戦いを披露するのだろうか。
[剣帝と鬼神と聖女]
新たなる決意を胸に秘め、修司はミラーガールと共に剣帝・足正義輝に挑む。
修司とミラーガールの剣戟を、義輝は笏から出した刀で受け流しながら容易く回避していく。
そんな必死に義輝に挑んでいく修司とミラーガールに、観客席からは歓声と声援が飛び交っていた。
「スゲーー! 鬼神と聖女、最強のコンビが最強の剣豪と戦ってるぞ!!」
「そこだ、いけーーッ! 足正義輝なんかブッ倒せ!」
「小田原修司! ミラーガール! その調子だ!!」
飛び交う聖龍隊士の声援に続き、戦界創生で活躍した武将達も声を挙げる。
「Yes! Fantastic! 思うがままに駆け上がれ! 鬼神、そしてmirror girl……!」
「うおおおおお……! 某も熱く、熱く……滾って参りましたぞォ! 修司殿! 加賀美殿! 両者共に燃え滾れェェェッ!!」
中国漢族筆頭のデイ・マァスンにモンゴルが新将軍シン・ユキジの熱気に観客席は更に過熱。
「修司さん! そしてアッコさん! お二方、昔から続く絆を辿り、今まさに剣豪総長と雌雄を決する戦いを繰り広げているのですね……! この熱く、そして何よりも強い絆が齎す戦いの結末を……僕は最後まで見届けます!」
聖龍隊総部隊長で修司の一番弟子である村田順一も、修司とミラーガールの屈強な絆の結び付きに心動かされ、この激戦の行く末を見届ける決意を固めてた。
「鬼神さまーー、アッコおねえさまーー! 鶴姫もここでお二人を見守ってまーーす! どっちも頑張ってくださーーい!」
「す、凄い……これが、二人の……鬼神・小田原修司と聖女ミラーガールの共闘……! 凄すぎるっス、おやっさん!」
修司とミラーガールを精一杯応援する鶴姫に、二人の共闘による激戦を目の当たりにして驚きと衝撃の余り感銘を受けて目を輝かせる山中鹿之助。
「す、スゲェ……! コイツが鬼神と聖女の、本気なのか……!?」
「なんと勇ましく、そして息の合った連携だ……! まさか聖女と小田原修司がここまで息を合わせられるとは……!」
修司とミラーガールの激戦を目撃して、ゴ・マータンとイン・ナオコの二人は驚きの余り口を開けてしまう。
「な、なんと凄まじい……! これが、聖女と鬼神……二人の全力だというのか……!!」
「………………」
修司とミラーガールの連携戦に目を丸くするシバ・カァチェンに対して、その隣では二人のこの戦力が自分の祖国を滅ぼしのかとマン・サコンが険しい表情で複雑な心境の中、戦いを傍観してた。
「小田原修司! ミラーガール! そこだ、攻めろーーッ!」
「アッコさん! あなたと修司さんなら勝てる……私たちは信じていますから!」
見事なまでの修司とミラーガールの共闘に、キリトとアスナの二人も自分たちを一度とはいえ殺めた修司を含む二人に声援を送る。
「予は現世の帝・足正義輝なり! 人よ炎え! そして予を今の座から引きずりおろしてみせよ……!」
皆の声援が飛び交う中、義輝は修司とミラーガールの二人を相手に激闘を続ける。
一方で修司とミラーガールの共闘は、確実に足正義輝を捉えていた。
ミラーガールが盾を投げ付け、それを義輝が笏で打ち返した所に修司が聖龍剣で斬りかかり、義輝に傷を負わせる。
更に二人同時での剣での突撃が義輝に直撃し、義輝は思わず後ろへと押し出されてしまう。
「ム……ッ!」修司とミラーガールの迫力に圧倒される義輝。
そこに修司が絶えず聖龍剣を振るって斬りかかり、追撃。そして修司に続きミラーガールも短刀であるミラー・ソードで追撃していく。
修司とミラーガールの剣戟による追撃の嵐に押されていく義輝だったが、彼はこの状況に笑みを零して喜々としていた。
「はは……はははっ! これぞ……これぞ、予が求めし熱気そのものよ! 朋よ!」
義輝は修司とミラーガールの剣戟に応えながら喜びを言葉に表す。
そんな喜々と修司とミラーガールの剣戟と鬩ぎ合う義輝に、激しい火花を散らして剣戟し合う修司とミラーガールは広間に響き渡るほどの大声で己が決意を叫ぶ。
「俺達は……!」「私達は……!」
「三次元人が……」「二次元人が……」
「「全ての命が幸せに生きていける「社会「世界の為に戦い続ける!!」」
「はっはっは! 朋よ! 実に素晴らしい意気込みであるが、最後の台詞が惜しくも合わさってないぞ」
最後の台詞だけ噛み合ってないと指摘する義輝に、ミラーガールと修司は余裕を感じさせる微笑みで義輝に返した。
「それでいいのよ……! 人は、それぞれが違っているからこそ世界は輝きを持てるの!」
「例え争いの元凶になろうとも、個々の性格が彩る社会を……そう、全ての思いが溢れる未来の為に……俺は、いいや俺達は戦い続ける!!」
このミラーガールと修司の新たな決意を目の当たりにした義輝は、心の底から歓喜に沸いた。
「おお……ッ! それだ、それこそ予はもちろん、誰もが求める次代そのものだ! いいぞ、朋よ……その熱気を糧に、更なる高みを予に知らしめてくれい!!」
と、ここで義輝は一旦後ろへと退いて二人と距離を置くと、距離を離してから修司とミラーガールに向けて弓を構えて矢を射た。
修司は聖龍剣で矢を弾き、ミラーガールはミラー・シールドで向かってくる矢を防ぐと、二人は義輝と距離を詰めて再び一斉に義輝を畳み掛ける。
二人の攻撃を、義輝は刀と槍を上手く使い分けて徹底的に受け流し、修司とミラーガールの猛攻を凌ぐ。
いつの間にか、修司は己が胸の内に犇めく闇の色に染まり、ミラーガールは慈愛に満ちた蒼の光に包まれて、義輝相手に幾度も抗い続ける。
修司の黒き闇の覇気とミラーガールの慈愛の蒼が複雑に絡み合い、それが一体と化すと二人は同時に一斉に足正義輝へと攻撃。
義輝も己の覇気で自身を赤く染めて二人の絡み合った覇気に挑み、修司とミラーガールと対決。
すると修司とミラーガール、そして足正義輝が激突した瞬間、取っ組み合った三人から眩い光が生じて周りの皆々の視界を一瞬閉ざした。
そして三人の戦いを再び見守ろうと、皆がゆっくり瞼を開いてみると。
なんと現か幻か。大広間が眩い光を発する宇宙空間の様な景観に変わっていたのだ。既に義輝との戦いで消耗してる聖龍HEADは宙を浮かぶ旋盤の一枠の上で座り込み、修司とミラーガールは対峙する足正義輝と共に光に包まれた空間に浮く丸い旋盤の上で立ち、向き合っていた。
険しい面差しで義輝を見据える修司とミラーガールに対して、二人と共に旋盤の上で対面する義輝もまた眼光鋭くさせて修司とミラーガールを見据えてた。
そして意を決したかのように、修司とミラーガールは前へと駆け込み、二人と同時に義輝も前へと駆け込んで、双方は再び不思議な空間の中で激突した。
「これぞ……! これぞ、予が求めていた熱気ぞ!!」
義輝の声だけが響く中、三人が激突した瞬間、今までにない強烈な光が生じてその場にいた全員の視界が光で遮られた。
それと同時に凄まじい衝撃が栄禄の宮全体を包み込み、国連総長が待機していた御所・栄禄の宮は崩壊した。
栄禄の宮は完全に崩壊して、その場に残ったのは無数の残骸のみであった。
[黄金に染まりし帝]
己の心と同色の光で我が身を包ませ、足正義輝と激戦を繰り広げる小田原修司とミラーガール。
眩い光に包まれた空間で激突した三人から生じた衝撃は栄禄の宮そのものを呑み込み、宮殿は瓦礫の山へと変わり果てた。
「ぷはっ……な、何が起きたんだ!?」
瓦礫の中から赤塚組の大将が周りを見渡しながら顔を出す。
すると大将は「ッ!」と何かを思い出して気付き、慌てて自分の周りの瓦礫を自力で退かし始めた。
そして大将は瓦礫の山の中から、自分と同じ赤塚組の幹部衆である仲間の体を見付けて引きずり出す。
「だ、大丈夫か!? テメェら……!」
大将からの呼び掛けに、大将やミラーガールとは昔馴染みであるギョロとゴマとチカ子の三人は目を覚ます。
それから続々と大将が引きずり出した赤塚組の幹部で、なるとぐりおの海野夫妻、水原花林、貴史と千春の山崎夫妻、一太郎とレイコの市川夫妻も続けて大将の声で目を覚ます。
だが、大将はテツとふゆみ夫妻、アツシとアケミ夫妻、秋夏子、ミズキの六人が中々目を覚まさない現状に慌てふためいてしまう。
「お前ら大丈夫か!? テツ、ふゆみ! アツシ、アケミ! 夏子! ミズキ! 目を覚ましやがれ、目を!!」
と、大将は立て続けに目を覚まさない六人の後頭部を引っ叩いたり、頬を何度も叩いたりして気付けさせようと試みる。原作では六人とも死んでしまう事情を知っている為に、大将は非常に不安がっているのだ。
すると、ここでミズキが目を覚ました。
「み、ミズキ!!」
「た、大将……?」
「大丈夫か!! 大丈夫なのか、ミズキ……!」
「な、何とか……」
「ホントにホントに大丈夫なんだよな、お前ら! 死なねえだろうな、オイ!? マジのマジで大丈夫……」
「だーーーーッ!! 大丈夫だって言ってんでしょうがッ! いっくら私たちが原作じゃ死んじゃうからって心配しすぎよ、アンタは!!」
何度も何度も顔を引っ叩かれて頬を赤くされたミズキが大将の頭を叩き返して怒鳴り散らす。
そんな大将とミズキの口論で、他の五人も叩き起こされた。
大将が赤塚組の幹部衆である仲間達を叩き起こした直後、聖龍HEADと足正義輝の戦いを観戦してた他の観客席の皆々も次々に瓦礫の山を自力で退かして姿を見せ始める。
「な、何がどうなってるの……?」
「た、確か……小田原修司とミラーガールが国連総長と激突して、眩しい光と凄い衝撃で……」
瓦礫の中から姿を現す琴浦春香と真鍋義久ら新世代型二次元人達も、何がどうなったのか理解できてなかった。
すると瓦礫の中から観客席で激戦を見守っていた面々が姿を現していると、同じく瓦礫の中からメタルバードたち聖龍HEADも自力で起き上がっては姿を見せた。
「ば、バーンズ……!」「おう、真鍋……お前らも無事みたいだな」
真鍋に声を掛けられ、朦朧とするメタルバードが答える。
「い、一体なにが……?」
「何って……修司とアッコが国連総長と激突した際の衝撃で栄禄の宮が、この宮殿が崩壊したんだよ。それで一瞬にしてオレたち瓦礫の中って訳さ」
「げ、激突しただけで……!?」
「それだけ凄い激戦って訳だったのよ……まっ、みんな無事なのが勿怪の幸いって奴だな」
『………………』
メタルバードの説明を聞いて、真鍋だけでなく話を聞いてた他の新世代型二次元人達も唖然としてしまう。
そして瓦礫の中から起き上がった皆々が目を向けた先は、崩壊した栄禄の宮その瓦礫が一切落ちてない開けた場所だった。
その場所は修司とミラーガールそして足正義輝が激突した正にその現場であり、三人が激突した衝撃で瓦礫が一片も落ちてない場だった。
そんな場には、激戦の末に満身創痍で地べたに座り込んでいるミラーガールと辛うじて立っている修司が立っていたが。
修司とミラーガール、二人が見詰める先には凄まじい激突の衝撃を浴びて背面から倒れ込んでいる国連総長である剣帝・足正義輝の姿が見受けられた。
「ッ!」
メタルバードたちも倒れ込んでいる義輝の姿を目撃し、遂に勝負が着いたのかと安堵しそうになった。
が、その時。
修司とミラーガールの猛攻によって、一度は背を大地に着けて倒れた帝・足正義輝。
だが、義輝は高笑いしながら起き上がり、立ち上がった。
「ははっ、はははっ……! いいな……! これは良い……!!」
なんと義輝は修司とミラーガールの猛攻を浴び続けても尚、未だに戦意を失ってはいなかった。
すると此処で。足正義輝に変化が。熱き息吹を感じ取り、足正義輝に力が漲ったのだ。
立ち上がった義輝は、なんと一瞬にして自身の体に更なる力を漲らせ、黄金の光で包み込んだ。
「ッ!!」「!!」『!!』
黄金に輝き出す義輝を前にして、修司は息を呑み、ミラーガールと周りの者達は驚愕した。
「さあ、朋よ! これが予が出せる最大の褒美だ! 黄金色の完璧なる予を打ち負かし、時代を築け!」
高らかに目前の修司に宣誓する義輝に対して、修司は完全に言葉を失くしていた。
「やはりあなた様は……天に選ばれし帝……!」
「魂消たぜ……いい根性してんじゃねぇか、国連総長様よォ……!」
黄金色に染まる足正義輝を目の当たりにし、義輝側に居たロシア将軍のケンノフスキーも、赤塚組の大将も目を見張らせた。
大勢の武人が、足正義輝の未だ衰えるどころか漲る戦力に衝撃を受けている中、修司も義輝から感じられる黄金の覇気を目の当たりにして覚悟を決める。
「凄まじい覇気だ……! 国連総長、あんたの熱気……この俺が全て受け止めてやらあ!!」
修司は自分に残っている戦意を絞り出し、足正義輝と正真正銘最後の戦いに乗り出した。
すると足正義輝は、その身体が神々しく「黄金」に輝いた時、対峙する者は逃げる事すら許されなかった。
「最後の時まで、熱く炎え! 己が命、焼き尽くせ!」
義輝は自身と同じく黄金に輝く笏から弓矢を出して、その弓から無数の黄金に輝く矢を天へと射出。すると義輝が放った無数の矢は、義輝と修司の周りを囲う様に床上へと突き刺さり、義輝と修司は円形状に輝く矢に囲まれてしまう。
「な、なんだ、この矢は!?」
大将が恐る恐る黄金に輝く矢に触れようとすると、その矢は大将の指を拒絶するかのように弾いてしまい、触れる事ができなかった。
「こ、こいつは……ッ!」
大将が驚いていると、続いてメタルバードが今度は真上からの侵入を試みる。
円形状に修司と義輝を囲んでいる黄金に輝く矢の真上から、領域に侵入しようとするが、地上と同じく上空からも黄金の光の壁に弾かれて修司と義輝がいる内側に侵入ができなかった。
「コイツは……! 入る事はもちろん、逃げる事も叶わない、絶対領域の光の壁だ!」
メタルバードの説明を聞いた皆は愕然とし、先ほどまで修司と共闘してたミラーガールは修司だけで足正義輝と戦わなければならない現状に焦燥する。
「そんな……! 修司!」
ミラーガールの叫びが無情にもその場に響く中、修司と義輝は両者とも対峙していた。
もはや満身創痍の修司に対して、未だに衰えない黄金に輝く足正義輝。二人は一時ばかりお互いに向き合い、相手を見据えていた。
「熱い……! これが、命を賭すという感覚……! さあ! 勝負はこれからだぞ! 仕合いを続けようぞ、朋よ!」
黄金に輝く義輝は、修司との勝負を心から喜び、歓喜に沸いていた。そんな義輝に修司も畏敬と感動の念を申し渡す。
「俺もだ……! 感激のあまり疲れなんて吹っ飛びそうだ! 最後の最後まで俺を楽しませるとは……嬉しいぜ!」
修司は此処で改めて真剣勝負の礼儀として、義輝へと聖龍剣の切っ先を左手の甲に乗せて差し向ける。それに義輝も笏を右手で廻して応える。
そのまま修司と義輝は黄金の光の壁に囲まれ、互いに逃げ場なしの状況で激しい剣戟を仕合った。
修司と義輝、お互いの刃と刃が激しくぶつかり、火花を散らしながら鬩ぎ合う。
「楽しいぞ、朋よ……! 其之方に逢えて良かった!」
「俺もだ……! アンタほどの強者と闘えるとは、一人の武人として誇りに思う!」
互いに相手に敬意を払う言葉を掛け合い、鬩ぎ合う。
が、激しい鬩ぎ合いの剣戟の末、修司が力負けして義輝の刃に弾かれて後ろへと押し出されてしまう。
後方へ後退した修司は、そのまま黄金の光の壁に背中から激突し、苦痛で顔を歪ませる。
「修司……!」
ミラーガールが修司に近寄って声をかけるが、光の壁に阻まれて修司に触れる事すら叶わない。
完全に逃げ場がない状況でお互いの命そのものを賭け合って激闘する中、修司は聖龍剣を握り締めて立ち上がる。
「廻せ、運命の旋盤を!」
立ち上がった修司に、義輝は笏から槍を出して修司へと全力で突撃。
槍は修司の腹部に突き刺さるが、修司は自分の腹に突き刺さった槍を両手で捕えて放そうとはしない。
そして修司はそのまま槍を持ち上げて、義輝を宙へと浮かせる。
すると次の瞬間、修司は持ち上げた槍を振り回して、義輝を光の壁へと叩き付ける。
「おおっと!」
激しく壁に叩き付けられた義輝ごと、修司は槍を自力で引き抜いて振り回し投げる。
修司に回り投げられて辛うじて着地した義輝に、修司は激痛を堪えて聖龍剣で斬りかかる。
修司からの連続の太刀筋を幾度か浴びた義輝は、修司が振るう聖龍剣を笏から出した刀で受け止めて追撃を止めてみせる。
「朋よ、強いな……予は、嬉しいぞ……! これならば、予も死力を尽くせる……ッ!」
「まったく……! 最初っから全力を出さないでいやがるとは……意地悪な国連総長様だな」
互いに鍔迫り合いで押し合いながら言葉を交わす義輝と修司。
双方は再び距離を置いて激しい決闘を再開する。
修司と義輝は一対一の激闘の中、相も変わらず互いの刃を激しくぶつけ合い火花を散らす。
「今尚、予が導く時代を望む朋がいる……新しき次代が予を選ぶならば、さもあろう」
「俺は……俺は、俺の穢れた血を受け継いだ新世代型二次元人なんて無粋な輩が蔓延る次代を拒んだが……結局は俺らのこの勝負に全て賭けられてる訳だな!」
互いに一歩も退かずに激しく己の刃を交わして激突する修司と義輝の激闘に、ミラーガールも誰もが息を呑む。
「片や天を掴み、片や天に至る……! 命が有るか無いかの差だ……そうだろう、朋よ?」
「前まで俺は、クローンである新世代型二次元人を消し去った後、大人しくこの世からおさらばしようと思ってたが……これじゃ、まだまだ死ねねえな」
悠々と言葉を投げる義輝に対し、修司は勇猛に未だ死ねぬと、お互い激突しながら言葉を交わし合う。
「剣は人に勝つ事よりも、人に負けぬよう工夫する事也……と言うが、それはつまらぬ……さもあろう?」
「さあな! 俺は俺で、今目の前の闘いを感じられればそれでいい!!」
修司の戦闘狂を感じられる台詞に、義輝は口元を緩ませ微笑む。
すると辛うじて義輝と互角に渡り合う修司を相手に、義輝が動いた。
「ふむ、よくぞ此処まで予を追い詰めたな、闇之朋! こうなれば、予の最大の秘術をもって其之方を倒そう!」
と、義輝が発した次の瞬間、義輝は己に秘められた秘術を発動させた。それは一定時間、自分以外の時間の流れを完全に止めるという秘術だった。
修司はもちろん、修司達の激闘を見守る皆々の時間をも止めた義輝は、修司に接近して刀や槍で思うが儘に修司に総攻撃。
そして再び時が動き出すと、修司は止まってた時間の中で浴びた攻撃の衝撃を感じて派手に吹っ飛んでしまう。
「うわッ!!」「修司!」
全身に無数の傷を負って吹っ飛ぶ修司を目の当たりにし、ミラーガールが思わず叫ぶ。
一方の修司は光の壁に激突し、力なく床に横たわる。
「ど、どうしたんだ!?」「時を……時間を止めたのよ! 足正義輝は!」
修司が吹っ飛んだ状況を呑み込めない大将たちに、テレパシーと共有感知を持つ琴浦春香たち新世代型二次元人が説明する。
修司と一対一の激闘の中、己の秘術である時間停止を用いて修司に大打撃を浴びせた足正義輝。
あらゆる武器、あらゆる武芸を極めた剣帝・足正義輝の優勢を前に、小田原修司は果たして勝つ事ができるのだろうか。
[黄金の頂と虹の斬撃]
小田原修司とミラーガールの共闘の末に、一度は地べたに背を着けた足正義輝。
だが義輝は己を更なる高みへと昇らせ、自身を黄金の光に輝かせる。
そして義輝は己が射た黄金の矢で修司と自分を完全に包囲し、お互いに逃げ場がない背水の陣に追い込んで修司と一対一の激闘を仕合う。
互いに己の命を賭けて激しく闘い合う修司と義輝。
だが此処まで互角に渡り合う修司に、義輝は最後の策として時間を止める秘術を発動。時間が止まってる間に修司へと刀や槍での猛攻を浴びせる。
時間停止の間に猛攻を浴びた修司は光の壁まで吹き飛び、壁に激突すると力なく床へと横たわってしまう。
「修司……!」「修司……!」
ミラーガールもメタルバードも、そしてこれまでの戦いを見守ってきた皆々も力なく横たわる修司を目の当たりにして不安そうな顔を浮かべる。
「修司……ッ! クソ、クソッ! ただ見てるしかできないのかよ!!」
赤塚組の大将は、ただ修司と義輝の闘いを見届けるしかできない現状に苛立ち、光の壁を何度も拳で殴り付ける。
「修司さん……!」
修司の一番弟子であり、スター・コマンドーの総部隊長である村田順一は仲間達と共に闘いを傍観するしかできない現実に悲痛な思いを募らせる。
力なく横たわる修司、そんな修司を黙然と直視する義輝。
この絶望的な状況の中、誰もが息を呑んで黙り込んでしまってた。
だが、こんな状況でも諦めず、淡くとも微かな希望を信じて、修司に声援を送る者がいた。
「ッ……立て。立ってくれ、小田原修司!」
それは瀬名アラタたち修司のクローンでもある新世代型二次元人達だった。
「ここで負けるアンタじゃないだろ!」「立って剣帝に勝つんだ!」
井ノ原真人や宮沢謙吾からの声援に反応し、横たわってた修司は少しずつ体を起き上がらせる。
「た、立て修司さん!」「頑張って!」
燃堂力や鹿島ユノも絶えず修司に声援を送り続ける。
「小田原修司、まだ剣帝との喧嘩は終わってねえぞ!」
「我らが始祖として……それ以前に聖龍隊という伝説を始めた戦士として、此処で諦めてはいけません!」
纏流子と鬼龍院皐月の姉妹も揃って修司を励ます。
「足正義輝を倒して……この戦界創生の乱世を終わらせて!」
「それが貴方の……私たちを、この戦乱に巻き込んだ貴方の贖罪よ!」
薙切えりなとその秘書である新戸緋沙子も嘆願にも近い激励を飛ばす。
「勝って、小田原修司!」「まだまだ闘えるでしょ!」
野々原ゆずこも櫟井唯も精一杯応援した。
「頑張れ、小田原修司!」「あなたなら、まだ頑張れるわ!」「立ってくれ、小田原修司……!」
イオリ・セイとイオリ・リン子の親子に続き、イオリ・セイの親友であるレイジ・アスナも必死に応援する。
「頑張ってください、修司さん……!」
「あんたが勝たなきゃ、義輝はこの乱世を終わらす気はないんだぞ!」
「立ち上がれ、小田原修司!」
彩瀬なるに神浜コウジ、そして黒川冷は徐々に起き上がる修司を激励する。
「頑張って、修司さん……!」「貴方なら勝てる筈だ、きっと……!」
切実に修司が立ち上がる事を願う栗山未来に神原秋人。
「頑張れーー、小田原修司ーー!」
「私たちの応援、聞こえてるなら立ち上がれーー!」
一条蛍に宮内れんげの幼い声援も、修司の耳にはしっかりと届いていた。
「頑張れ! 頑張れ……!」「立つんや、小田原修司……!」
起き上がり、自らの足で立ち上がろうとする修司を、小野田坂道と鳴子章吉は熱く見守る。
「もう少し! もう少しだよ……!」「勝ってくだサーーイ! 小田原修司っ!」
大宮忍にアリス・カータレットの声援を浴びて修司は少しずつ確実に立ち上がる。
「もう少し……あともう少しだけ……!」
「あともう少しだ……それまで踏ん張ってくれ、小田原修司……!」
エイミーとレドの二人は不安で押し潰されそうな心境で修司を見守る。
「俺たちの悲運の運命も、それら全てをアンタの責任とは負わせない。だが、この闘いだけは……頑張ってくれ、小田原修司!」
「これだけの声援に応えず、負けたらタダじゃ済まさないぞ。小田原修司……!」
皆の声援を浴びても立ち上がれないのならと、厳しい心境で修司を見届ける時縞ハルトとエルエルフ。
「この世界だけじゃない、多くの異世界をも陰ながら守ってきた小田原修司。アンタならきっと……!」
「ええ、きっと国連総長にも勝ってくれると信じています」
加納真一とミュセル・フォアランは心の底で、修司が勝ってくれる事を切に信じてた。
「あともう少し……もう少しだけ頑張ってくれっス」
一ノ瀬はじめは不安そうな面持ちで胸中が締め付けられそうな心痛で修司を見守る。
そんな修司から生み出され、修司と足正義輝によって戦界創生という乱世に巻き込まれた、修司のクローンでもある新世代型二次元人たちの声援や応援を浴びた小田原修司。
新世代型二次元人達からの声や想いを受け取り、遂に修司は立ち上がった。
「うおおおおおお……ッ!」
雄叫びにも近い唸り声を発して、立ち上がった修司は再び義輝と対峙する。
「うむ! それでこそだ、朋よ! まだ勝負は終わってはいない様だな!」
新世代型二次元人達の声援を浴びて立ち上がった修司を前にして、義輝は満足そうに言葉を発する。
と、此処で修司に誰もが予想だにしていなかった事態が。
なんと修司と義輝の闘いを見守っている多くの二次元人や三次元人の足元から煌めく光が、黄金に輝く義輝と対峙する修司の足元へと流れ出る。
周りの皆々から受け取った光が集結し、修司の全身は光へと包まれた。
「な、なんだ、この光は……!」
赤塚組の大将が自分たちの足元から流出し、修司へと纏わり付く光の道筋を見詰めて驚いていると、同じ状況のメタルバードが説き明かした。
「修司が……自分は心の無いバケモノだと自負していた修司が、今まで感じ取れてきた人間の明るい面……そう、人との繋がり、絆の温もりを……そして個々の命と個性の彩を、ようやく受け入れた事で……みんなから繋がりを力として活用できるようになったんだ……!」
メタルバードの説明を聞いて、誰もが人との繋がりを時には苦痛に感じていた修司が改めて絆を受け入れられた事実に感銘を覚えた。
「そう、個々の一人一人違う繋がりを……絆を浴びた修司はまさしく……! 個々の彩に染まり上がった、まさしく……虹色の、戦士……!」
一人一人が違う個々の繋がりである絆を受け入れた修司は、まさしく皆の目の前で虹色に染まり、輝いていた。
「おおッ……! なんと……神々しい……!!」
虹色に輝き出す修司を目の当たりにし、義輝はその眩い程の神々しさに感激してしまう。
完全に虹色の光に包まれて輝く修司と、そんな修司と対峙する黄金に輝く足正義輝。
そして虹色に輝く修司は、聖龍剣を引き抜いて構えると、逆手に持って切っ先を床へと突き刺して降り構える。すると足正義輝もそんな修司と決着を着けるべく、自らも刀を構えて修司と同じ態勢に入る。
「二人とも……地走りの構えを取ってやがる……!」
メタルバード達は修司と義輝がお互いに、修司の必殺技である地を駆ける斬撃「地走り」の構えをしている現状を前に慄く。
皆々が注目する中、虹色に輝く修司と黄金に輝く足正義輝は、同時に技を打ち出した。
「虹の斬撃!!」「黄金の頂!」
修司が放った虹色の斬撃と、義輝が放った黄金色の斬撃。二つの斬撃が激突し合った。
二つの斬撃が激突した瞬間、凄まじい衝撃波と共に眩いばかりの強烈な光が発せられて周辺は光に包まれる。
そして虹色の斬撃と黄金色の斬撃は、激しく押し合った末に一方の斬撃を打ち消した。
消されたのは……修司が放った虹色の斬撃に打ち負けた義輝の黄金色の斬撃だった。
黄金色の斬撃を打ち消した修司の虹色の斬撃は、そのまま一直線に義輝へと放たれ、そして義輝の身体を袈裟斬りにした。
修司の虹色の斬撃によって袈裟斬りされた義輝は、まるで自身が敗北したのを待ち望んだ様に口元を緩ませ、微笑んだ。
「ふ……予は此処まで、だ…………朋よ、願わくば、予にかわり……次代を、創れ……面白き……時代を……」
そう言い残すと、義輝は背中から床へと倒れ込む。
義輝が虹色の斬撃で斬られて倒れた直後、義輝が敗北したからか、修司と義輝を取り囲んでいた黄金に輝く矢も、その矢から発生する光の壁も消失。
すると立て続けに今度は、フッと力が抜けて床に倒れ込む修司にミラーガールたちが駆け付ける。
「修司!」
ミラーガールたちが修司に駆け寄って彼の顔を覗くと、修司は顔に疲れが窺えるだけで命には別状はなかった。
かくして、小田原修司と足正義輝。二人の決闘は終わった。
修司の個々の想いが詰まった虹色の斬撃、義輝の完全無欠の黄金の頂。
二つの斬撃で打ち勝ったのは、数多の想いが詰まった斬撃だった。
[前世の修司]
ようやく辛うじて足正義輝との闘いに決着を着けた修司。
そんな修司の周りには、ミラーガールや聖龍HEADの友の姿が在った。
そして、そんな修司達を赤塚組や同じ聖龍隊のスター・コマンドーや大勢の隊士、そして三次元界の武将に国連軍の軍人達が見守る。
「………………」「……修司」
満身創痍の中で意識を取り戻した修司に、ミラーガールが優しく声をかける。
修司もミラーガールだけでなく、メタルバードやジュピターキッドなどの昔馴染みの仲間や、最後まで戦いを見守ってくれた三次元界の武将たち、そして心配してくれた自身のクローンである新世代型二次元人の視線に気付いて、自然と表情が解れる。
そしてミラーガールによって身体を起こされて、修司が立ち上がろうとした時だった。
「見事だ、朋よ! よくぞ予を打ち負かした……!」『わっ!』
なんと先ほどまで修司の虹色の斬撃を浴びて負かされた足正義輝が、まるで何事も無かったかのように直立し、自分を打ち負かした修司を見据えていた。
何事も無かったかのように振舞う義輝を前に、誰もが一驚する中、修司は立ち上がり義輝と向き合う。
「義輝……!」
「闇之朋よ、よくぞ予を負かした……これでもう、予は満たされた」
「満たされた、か……あんたは結局、俺と同じだ。孤独に、いや、孤独以上に孤独な……孤高の存在だったからこそ、そんな自分を打ち負かし、孤高の座から引きずり降ろしてくれる強さを求めてたんだろ」
「……うむ、その通りだ。予は生まれながらに、其之方と同じく孤独に囚われていた。予は完全完璧な人材として生み出された事で……常に孤高であった」
皆が修司と対話する義輝の話を聞いて悲痛な思いを滾らせる中、義輝は真剣な面持ちで修司に言った。
「だが……まさか本当に予を打ち負かすとは。しかも、予と同じく孤独に囚われてた予を始めとする新世代型二次元人の始祖たる其之方が……驚きが隠せぬ」
「はっ、たまたまだよ」
「いや。繋がりを強さに変え、予を打ち負かすとは……予でも想定してなかったぞ」
修司と対話し続ける義輝は、修司の強さについても修司と語り合う。
「愛憎全てを含む、全ての繋がりを強さに変えられた其之方の予でも計り知れない力の源は……一体何だろうな、朋よ」
「……ふう、さあな。俺にも見当が付かんよ」
すると此処で義輝が誰もが予見できない意見を述べ始めた。
「其之方の強さ、もしかすると……前世からの繋がりが強いからかもしれん」
「おいおい、何を言ってるんだ。俺が産まれたのは三次元で、みんなが産まれたのは二次元……産まれた次元が違うのに、前世で一緒とかないだろ?」
なんと義輝は、修司が皆々の繋がりを強さに変えられた根源は前世からの繋がりも関係しているのではと説く。だが修司はそれに自分と皆の産まれた次元が違うと真っ向から否定。
「いいや、もしやすると………………」
すると義輝は不意に修司の頭を掴む様に手を差し伸べ置いた。
「済まぬな、朋よ。少し其之方の潜在意識に眠ってる前世の記憶を覗かせてもらうぞ……そして予を始めとする新世代型二次元人の共有感知を介して、この場にいる全ての者にも其之方の前世の記憶を垣間見させる」
義輝はそのまま修司の同意を得る事無く、修司の潜在意識を共有感知を通してその場の全員で覗き始めた。
義輝と皆々が覗き込んだ修司の前世とは………………。
修司の前世、その記憶の断片から視えた光景とは。
「うぎゃっ!」「きゃあっ!」
燃え盛る竪穴住居の家屋、その騒乱の中を逃げ惑う人々。
前世の修司はそんな逃げ惑う人々を庇いながら、破壊と略奪を繰り返す敵兵を斬り倒していた。
「ここは危ない! 早く逃げるのです!」
前世の修司はそう周囲の人々に呼び掛けながら騒乱の中を駆け抜け、同時に襲い掛かってくる敵兵を斬り捨てながら巨大な建物の中へと駆け込む。
屋内に駆け込むと、そこには複数の白い絹の
冠をしている女性は、駆け込んできた前世の修司に背を向けて正面の青銅の鏡と向き合ったまま。そんな女性に前世の修司は憔悴し切った声色で投げ掛けた。
「ひ……卑弥呼様! 既に邪馬台国は
前世の修司がそう訴えると、青銅の鏡と向き合ってた女性が前世の修司へと振り返り顔を見せる。前世の修司はその女性の鏡の様に美しい瞳に映った自分の姿を凝視するかのように女性と真摯に向き合った。この時の前世の修司は、絹製の白衣を纏い、首には勾玉の首飾り、そして髪型は
「……そうですか。もう邪馬台国も此処までの様ですね……」
「まだです! まだ何か手立てがある筈です! 卑弥呼様、諦めては駄目です!」
「ですがスサノオ、もう私は……いいえ、私達は程々疲れてしまいました。
「………………」
目の前の女性の言い分に黙り込んでしまう前世の修司。
すると前世の修司は此処で堰を切るように女性に訴えた。
「……ですが、卑弥呼様! 貴女様とこの邪馬台国が滅亡するのだけは在ってはならない事態なのも、また事実……! こうなればいっそ、貴女様やエンディミオン様達の神通力で、この邪馬台国を何処か別の場所へと移すのです!」
「しかし……! 既に
と、女性と話している前世の修司が立ち上がる。
「私が時間と猶予を稼ぎます! その間に貴女様はこの国の人々ごと、邪馬台国を別の場所へと移動させてください! 無論、国の出入り口からは敵兵など入れさせません!」
「! スサノオ! それではあなた……!」
女性が驚きに満ちた表情に一変すると、前世の修司は彼女に言った。
「貴女様からの、そしてこの国の人々から受けた恩義を此処で返します! まだ私が赤子の頃、戦乱で荒れた集落から私を拾い上げ、この国の一員として育ててくれた女王様や皆の優しさに、今こそ応える時……!」
「スサノオ……!」
前世の修司の発言に女性は目に涙を浮かべる。
「さらばです、卑弥呼様。どうかエンディミオン様や八百万の神々に宜しく伝えてください……!」
そして前世の修司は女性の目の前から立ち去る直前、こう言い残した。
「貴女に拾われ、貴女に育てられたこの命……戦火で散らしてしまい、申し訳ありません」
「スサノオ!!」
そう女性に言い残して、前世の修司はその場から走り去っていく。この時、卑弥呼と呼ばれた女性の泣き顔は何処か加賀美あつこに酷似していた。
「うわーーっ」「きゃーーっ」
「大丈夫ですか!?」「あなたは、スサノオ……!」
女子達はまるで腫物を見るかのような眼差しで、前世の修司を直視する。
しかし前世の修司はそんな眼差しを浴びても毅然とした態度で受け答えする。
「此処は危ないです、早く王宮に! 卑弥呼様が転移の儀式の準備をしている筈です、行って手助けしてください!」
「わ、分かったわ。それよりスサノオ、あなたはどうするの!?」
「私はこれから国の出入り口に向かい、もう外界から敵兵が侵入してこられない様に国の外で戦うつもりです!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ、あなたは……!」
「これも卑弥呼様に……そして幼い私を世話してくれた皆様方への恩義です。さあ、どうか王宮に逃げて下され!」
そう前世の修司は言うと、最後に女子達に背中を向けたまま語った。
「この国の人々と違い、時が経てば成長してしまう自分を……忌み嫌われる
「スサノオ!」「スサノオ……!」
女子達に言い残した前世の修司は、再び国の出入り口へと走り去る。この時、前世の修司が護った女子達の面影は、どこか【リトルバスターズ!!】の女子達にそっくりだった。
更に前世の修司は数多の兵士を薙ぎ倒しながら、同じく侵入した敵兵の相手をしていた二人の男性を助太刀する。
「大丈夫ですか!?」
「す、スサノオ!?」
「余計な真似はするな! お前なんかが居なくても我らだけで事足りる!」
二人の男性も危うくなった自分達を助太刀してくれた前世の修司を蔑ろにするが、前世の修司は平然と受け答えた。
「これは、失礼しました。それよりもお二方! 卑弥呼様が転移の儀を実行します! どうか民を引き連れて王宮で卑弥呼様を守護してください!」
「なに……! 卑弥呼様が、この邪馬台国を別所に移すというのか!?」
「それがいい……もういい加減、
「では、私はこれで。今から、国の出入り口で敵兵の侵入を防ぐ為に闘ってきます!」
すると立ち去る寸前、前世の修司は二人の男性に言葉を遺す。
「どうかご武運を……ナギ殿、そしてマサ殿」
「スサノオ……!」「………………」
そうして前世の修司はその場から立ち去った。この時、前世の修司が言い残していったナギと呼ばれる男性は白井渚に、マサと呼ばれた男性は浜崎雅弘にそれぞれ酷似していた。
「きゃあっ」「ち、チコ……早く逃げろっ!」
と、此処では逃げ惑う中で転倒する女子を、彼女より年上の女子が抱き抱える荷物を振るって迫りくる敵兵相手に我が身を盾に奮戦してた。
すると其処にも前世の修司が駆け付け、年上の女性が阻んでた敵兵を一刀の下に斬り捨ててみせる。
「大丈夫ですか! チコ様、ギヨ様!」
「す、スサノオ……」「スサノオか……!」
「早く宮殿に! 卑弥呼様が転移の儀にて、この邪馬台国を別所に移すとの事! ギヨ様、術に詳しい貴女様も卑弥呼様を御支援してくだされ!」
「あ、ああ、分かった……それでアンタは? 卑弥呼様の従者であるアンタが、卑弥呼様から離れて良いのかい!?」
「私は国の出入り口にて敵兵の侵入を防ぐ為、国の外で応戦する覚悟です!」
「そ、それじゃスサノオ、あなたは……!」
「チヨ様、私は卑弥呼様はもちろん貴女たち二人にも幼い頃から育ててもらった恩義があります! その恩義を返す為にも、今ここで命を使わなければ……!」
「す、スサノオ!」「スサノオ!」
「さらばです、チヨ様、ギヨ様……チヨ様、どうかギヨ様からの教えを大切に。ギヨ様も、チヨ様に教えをご教授して、師弟共々どうか仲良く……」
そう二人に言い残して前世の修司は走り去った。この時の二人、チヨは黒鳥千代子に、ギヨはギュービッドに酷似していた。
そして騒乱の国内を駆け抜けて、前世の修司は国の出入り口にようやく辿り着いた。
其処には、
「コテン殿! ナビ殿! 大丈夫ですか!」
「ッ、スサノオか……!」「スサノオ!」
駆け付けた前世の修司に、コテンと呼ばれた男は何処か前世の修司に対して軽蔑にも近い眼差しを向けてた。
「コテン殿、ナビ殿! 私が外側で侵入して来ようとする敵兵の相手を務めます! お二方は国の出入り口を完全に封鎖して、敵兵が国内に入ってこられない様にしてください!」
「ちょ、ちょっと待ってください! それじゃスサノオ、君は……!」
「………………」
前世の修司の台詞に、ナビは激しく戸惑い、コテンは険しい面差しで黙然とする。
「私が敵兵を引き受けている間、卑弥呼様がこの邪馬台国を別所に移動させます! その時間稼ぎの役目、どうか私に任せてもらえないでしょうか……!」
「だ、だけど……」
前世の修司の提案にナビが困惑してると、前世の修司はコテンに訴える。
「コテン殿! どうか私に役目を……! この邪馬台国の人々とは違い、時が経てば歳を重ねて老いていく私を今まで育んでくれた卑弥呼様に恩を返したいのです!」
「………………」
「コテン殿、貴方も他の国の人々も、歳を重ねる私を気味悪がっていましたね。その邪魔者を犠牲にして、この邪馬台国を守護するのが防衛隊長である貴方のお役目ではないのですか!!」
「!!」前世の修司の力強い主張に、コテンは愕然とする。
そして「……分かった。
「ま、待ってください、コテン殿! それではスサノオを犠牲にする御積もりですか!」
前世の修司を犠牲に国を守護するコテンの考えにナビが反対しようとすると、そんなナビに前世の修司が言った。
「良いのです、ナビ殿。私は元々、この邪馬台国の人間ではありません。そんな私を此処まで育ててくれた卑弥呼様や皆様方には感謝してもしきれません! ナビ殿、どうか養父であるコテン殿やエデン様と末永くお幸せに……!」
そうナビに伝えると、前世の修司は国の出入り口から飛び出して、国の外へと出て行った。
「スサノオ!!」「……門を閉じろ! もう誰一人、邪馬台国の中に入れてはならない!!」
ナビが悲痛に叫ぶ中、コテンは冷徹にも国の門扉を固く閉ざすよう命令を出す。この時のナビはバーナビー・ブルックス・Jrに、コテンは鏑木・T・虎徹に酷似していた。
一方で国の門から外へと飛び出した前世の修司の前には、大勢の敵兵が武器を手に臨戦態勢で構えていた。
「そこを退け! スサノオ!」
「お前ら邪馬台国の連中に故郷を滅ぼされたオレ達の恨みを、邪馬台国の連中に返してやるんだ!」
「スサノオ、お前も怒りに任せてオレ達の集落……村々を滅ぼし、時には山一つを消し去りやがって!」
「ひゃひゃひゃ、邪馬台国の歳をとらない不老不死の女共を好きに嬲ってやりてぇ……!」
「邪馬台国のお宝を奪い尽くして、金持ちになってやるんだ!」
そんな自分勝手な言動ばかりの敵兵を前に、スサノオは怯む事無く果敢に剣を振るって戦い続ける。
一騎当千の戦いで敵兵を薙ぎ倒していく前世の修司。だが、そんな前世の修司に遠距離から敵兵達が弓を構えて無数の矢を射り、前世の修司目掛けて射出した。
「ウっ!」
無数の矢を一身に浴びて、悶絶する前世の修司はそのまま硬直してしまう。
「い、今だ! スサノオは死んだ! 今の内に再び邪馬台国に攻め込むぞ!」
そう敵兵が叫ぶと、一気に彼らは動かなくなった前世の修司の横を通過しようとした。
が「ぎゃッ!」敵兵の一人が前世の修司の横を通り過ぎようとすると、前世の修司が武器を振るって横を通ろうとした敵兵を斬り付けたのだ。
「ま、まだ生きてるぞ!」「馬鹿な! もう何十本と矢が刺さっているのに……!」
「ば、バケモノめ……!」「いや、これが破壊神スサノオなのか……!」
敵兵達が恐れ戦いている中、無数の矢を浴びた前世の修司は敵兵達を睨み付けて叫んだ。
「私は、破壊神などでは……卑弥呼様達の様な高貴な神族ではない。卑弥呼様達を、そして神聖なる邪馬台国を守護する戦士……邪馬台国の戦士、スサノオ成りーーーーッ!!」
そう叫んだ瞬間、前世の修司は瀕死の状態で群がる敵兵へと単身突っ込んだ。
前世の修司が一人で群がる敵兵と死闘を繰り広げていると。
なんと前世の修司が守護する邪馬台国が忽然と、まるで霧の様に消え去った。
「や、邪馬台国が消えた!?」
「馬鹿な! あのような巨大国家が一瞬にして煙の様に消えるとは……!」
「そ、そんな! どんな願望も叶うという、邪馬台国が消えたなんて……!」
「これが神の使い、
忽然と国が消えた現状に目を丸くして驚くしかない敵兵達。
しかし、そんな驚いて国が在った所を見ていた敵兵達の背後で、首が引き千切られる音がした。
全員が振り向くと、そこには無数の矢を浴びた事で全身血塗れになった前世の修司が、数多の惨殺死体が散らばる中で敵兵である一人の首を引き千切っているという惨状が広がっていた。
『うわあっ!!』
「に、逃げろ! これ以上、あいつと戦ったら命が無ぇ!」
「鬼だ、鬼神だ……破壊神スサノオだぁ!!」
血塗れで瀕死寸前でありながら、人一人の首を意図も簡単に引き千切った前世の修司を前に、敵兵達は恐れをなして逃げてしまう。
そして
そして薄れゆく意識の中、前世の修司は一人思った。
(……良かった、卑弥呼様達は無事に邪馬台国を別所に……別の世界へと転移されたようだ。これで良かった……でも、一つ心残りがあるとすれば…………また卑弥呼様に、邪馬台国の皆に会いたい、なぁ………………)
そのまま前世の修司は目から涙を滴らせて息を引き取った。
[スサノオと卑弥呼]
足正義輝によって前世の記憶を呼び起こされた小田原修司。
そして義輝たち新世代型二次元人の共有感知を通して、修司が思い起こした前世の記憶を共に視た多くの二次元人と三次元人たち。
前世の記憶を呼び起こされた修司は、自然といつの間にか目から涙をポロポロと零していた。
「……これが、俺の前世だと言うのか……?」
余りにも信じられない心境の中、唖然とする修司を前に足正義輝からの共有感知を通して前世の記憶を覗き見たメタルバード達も唖然としてた。
「邪馬台国……? スサノオ? こ、これが修司の前世だというのか……!?」
「伝説の国、邪馬台国……そして日本神話では最も名高い英雄神スサノオ……まさか、義兄さんがスサノオの生まれ変わりだというのか……!?」
メタルバードもジュピターキッドも動揺を抑えきれず義輝に問い掛けると、義輝は神妙な面持ちで語る。
「うむ、予も初見である故に詳しくは解かり兼ねないが……闇之朋がスサノオの生まれ変わりであり、かつては邪馬台国を護っていた戦士である事が前世の記憶から窺える」
すると義輝に続いて、義輝と同じ新世代型二次元人の真鍋義久が目を丸くしながら言った。
「それに、リトルバスターズの女の子たちやチョコやギュービッドにそっくりな女たちも記憶にはあった。これって……」
真鍋に続いて、聖龍隊のスター・ルーキーズの一員であるバーナビー・ブルックス・Jrが驚きながら語り出す。
「僕や虎徹さんだけでない、白井君と浜崎君にそっくりな邪馬台国の戦士の姿もはっきりと確認できたけど……」
皆々が驚いていると、スター・ルーキーズの総部隊長であるミラールが皆に明言した。
「何より、邪馬台国を治めていた女王・卑弥呼がアッコおねえちゃんに面影が余りにも似てたわ! これってつまり……」
前世の修司の記憶にあったアッコを始めとする二次元人達に酷似していた邪馬台国の人々の存在に皆々が不思議がる。
更に話は、卑弥呼なる女性が邪馬台国を別の世界へと転移させた事象に移った。
「卑弥呼が不思議な力で邪馬台国を別の世界へと移したって回想があったが……まさか、修司やアッコ以外にも今この場にいる二次元人の前世たる存在が居住してたって事は、もしや……!」
「バーンズ、君も思ってるんだね。異世界に転移した邪馬台国がもしかすると………………今のアニメタウンじゃないかって」
このメタルバードとジュピターキッドの会話に、周りの皆は驚愕する。
『ええぇっ!?』
「に、日本でも謎に満ちた古代の国家・邪馬台国がまさかのアニメタウンの起源だっていうのかよ!?」
「い、言われてみれば……もし小田原修司が三次元界で転生している理由が、邪馬台国を護る為に国から出たままだとしたら、異世界に移った邪馬台国がそのままアニメタウンとして発展したっていうのも頷ける……!」
「確かに……旧世代も新世代型もふくめ、二次元人が転生したげんせのアニメタウンが邪馬台国だったという説は可能性があります」
赤塚組の大将にイン・ナオコが驚く中、ロシア将軍のケンノフスキーが冷静に思慮に耽る。
すると此処で足正義輝が皆の話を纏めて仮説を立てた。
「これはつまり……前世の修司はスサノオであり、そのスサノオが仕えていたのが邪馬台国の女王にして鏡之朋であるミラーガールこと加賀美あつこは前世では卑弥呼……そして前世の二次元人達が住み慣れていた邪馬台国は実は現アニメタウンの起源……だと云う事なのか」
『ええぇっ!?』
義輝の仮説に皆は再び驚愕する。
「お、おいウソだろ!? 日本にかつて存在してた邪馬台国がアニメタウンの起源で、鬼神はその邪馬台国に仕えていたスサノオの生まれ変わりってか!?」
「な、なんという因果……!!」
アジア武将のデイ・マァスンとシン・ユキジは義輝が立てた仮説に驚いてしまう。
「ええっ! わ、わたしに頻繁に連絡して下さってた卑弥呼様の生まれ変わりは、アッコおねえさまだって言うんですか!?」
鶴姫は衝撃の余り跳び上がってしまった。
「私が、卑弥呼……? そして修司が、スサノオ……? わ、私達と修司が、前世でも繋がりがあったっていうの……!?」
自分が卑弥呼の生まれ変わりの可能性があり、そして修司が前世でも二次元人と関わりを持っていた事実にミラーガールは唖然としていた。
「うむ、闇之朋が前世ではスサノオであり、今生のアニメタウンが邪馬台国を起源としていた国であり……そして鏡之朋は、そのスサノオを従え邪馬台国を治めていた女王・卑弥呼であったとは。ははっ、これは……予でも余りの説に驚きしか感じられんわ! はははっ」
修司の前世から紐解かれたアニメタウンの起源とミラーガールの前世を知って、義輝は笑うしかないと高笑いするのみ。
小田原修司と加賀美あつこ、二人を始め多くの二次元人が三次元人である修司と前世から繋がりを得ていた。
修司は日本神話でも最も名高く人間臭いとして知られる英雄神スサノオの生まれ変わりであり。
ミラーガールこと加賀美あつこは邪馬台国を治めていた女王・卑弥呼の生まれ変わりの可能性が。
そして二人を始め、多くの二次元人達が前世で居住していた王国・邪馬台国は別世界へと転移して、それが今のアニメタウンへと発展したのではないか。
修司はスサノオ、アッコは卑弥呼、そしてアニメタウンは邪馬台国を起源としていたという可能性があると、皆が周知した修司の前世の記憶から読み取れた情報。
そんな衝撃の仮説が立てられ、皆々が驚きに唖然としている最中、足正義輝は修司に言った。
「さて、闇之朋よ。其之方は己の前世を知って驚き慄いているだろうが……まだ其之方にはやるべき事があるだろう?」
「?」
義輝の問いかけに修司は唖然としてしまうが、そんな修司を前に義輝は彼の目前で正座しては言った。
「此度の現政奉還、その過ちと混乱の根源である予の首を、予に打ち勝った其之方が刎ねてこそ、この現政奉還は終幕を迎える」
「!」『!!』
なんと修司に自らの首を差し出す義輝の言動に、修司も周りの皆々も愕然とする。
「さあ、朋よ! 潔く予の首を刎ねるがよい! そして、この旧き時代を終わらせ、新しき次代へと次世代の者たちを導くのだ! そう、面白き次代を、な」
そう修司に訴えかける様に、義輝はただ修司の目前で正座しては己の首を刎ねるように傾げてた。
「修司……」
ミラーガール達が心もとない不安そうな面持ちで修司を見詰める中、修司は正座する義輝の背後に回ると聖龍剣を鞘から抜く。
『!!』誰もが、修司が義輝の首を刎ねるのかと驚愕の表情を浮かべる。
すると修司が断頭の構えで聖龍剣を身構えると、義輝が安堵した表情で修司に語り掛けてきた。
「フッ、まさか予と其之方が真逆の立場になるとはな……並行世界、すなわち別の時間軸の世界では、予が其之方の首を刎ねるのだがな」
この義輝の台詞を聞いて、義輝と同じ新世代型二次元人の面々に衝撃が走った。
それは義輝の目に映った並行世界すなわちパラレルワールドの映像が、新世代型二次元人達の脳内にも流れ込んできたからだ。
しかも、その映像に映っていたのは、並行世界の小田原修司と足正義輝そしてこの現政奉還の大戦に参戦した多くの武将達の末端だったのだから。
[鬼神が望んだ理想郷]
新世代型二次元人達の脳内に流れ込んできた、足正義輝が見た並行世界の記憶。
それは並行世界の現政奉還での大戦直後から記憶は続いてた。
ミラーガールはもちろんメタルバードやジュピターキッドを始めとした聖龍HEADに数多の聖龍隊に加盟している二次元人達。そして三次元界の武将達に多くの悪役達ですらも、黒武士こと小田原修司によって惨殺され、誰一人生き残ってはおらず。
そんな修司によって閉じ込められてた修司のクローンである新世代型二次元人達も、修司の凶刃によって一人残らず惨殺されており、大戦は修司の勝利に終わってた。
一方の修司は、最初の宣言通り、全ての二次元人の始祖であるミラーガールに引き続き、自分のクローンである新世代型二次元人達をも殺め、そして襲い掛かってきた数多の武将達を返り討ちにした後、自分のクローンでは最後に残ってる国連総長・足正義輝に闘いを挑み、義輝の命をも奪おうと格闘する。
しかし決闘の結果は、修司の圧倒的敗北に終わった。
一度ならず二度までも義輝との闘いに敗北した修司は項垂れ、崩れ落ちていた。そんな修司を義輝は険しい目付きで見据えるばかり。
義輝は修司の働きに、なにかを期待していたのだが、それが見込めないと感じ取ってか、修司を虚無へと誘った自分の手で修司の虚無へと堕ちた人生に終止符を打とうと聖龍剣を右手に所持していた。
「……これで、ようやく……」
自分が愛用していた聖龍剣を右手に持つ義輝を前に、修司はこれで虚無に墜ちた自分の人生が終われるのかと半ば安堵していた。
「頽れる以外の何かを、其之方には期待していたのだがな」
そんな落胆する修司を見据えて、義輝は厳しい言葉を吐き捨てる。
そして修司を鋭い眼光で見据えたまま義輝は右手の聖龍剣を振り上げた。
「新たな世、異なる道にて生きるがよい」
そう修司に言うと、修司はこれで全てが終われると安堵し切った表情で義輝の顔を見上げる。
「さらばだ! 混沌と悲愴に満ちた、闇之朋よ!」
次の瞬間、義輝は聖龍剣を振り下ろして一太刀にて修司の首を刎ねた。
凄まじい火花の如く、自分の血飛沫が飛び散る中、修司は息絶える直前でとある別次元の情景を目の当たりにする。
それはアニメタウンで、昔と変わらず仲間であるアッコやバーンズ達と仲睦まじく共生している平和な日々。
しかも、そのアニメタウンでは現実では叶わなかった自分のクローンである新世代型二次元人達も共生しており、彼らもまた平和な時を過ごしていた。
琴浦春香は小野崎功や琴浦久美子ら両親を始め、周りからの冷遇もなく、皆同じ平和の中で共に過ごしてた。
【リトルバスターズ!】の面々も、三枝葉留佳や二木佳奈多も家族と何不自由なく暮らせており、他の面々も幸せに生きてた。
木漏れ日が射す木陰では、瀬名アラタとセレディ・クライスラーがLBXを一緒に弄って楽しそうに会話する情景も見られた。
街中を歩く幸せそうな一家、鬼龍院羅暁と一身そして流子と皐月姉妹四人の姿も確認できた。
蟠りも諍いもない平和な時を共に過ごす【プリティーリズム・レインボーライフ】の面々も見られた。
戦いもなく、四人とも平和なひと時を過ごせてる栗山未来や神原秋人に名瀬兄妹が仲良く歩いている姿も在った。
差別も偏見もなく、全員が同じ時の中で笑顔で生きている【革命機ヴァルヴレイヴ】の面々も確認できた。
平和を愛し、平和を守る正義のヒーローではなくとも、共に平和で穏やかな時の中で笑ってる【ガッチャマンクラウズ】の七人も見受けられた。
そんなパラレルワールドの情景を死の寸前で視認した小田原修司は、感動の余り目から涙を流すと、そのまま息絶えた。
そして修司に首を刎ね終えた義輝は、そのままその場に正座して自らの武器である笏から刀を出すと、その刃で己の腹を切り裂いて切腹して果てるのだった。
鬼神と畏れられた小田原修司が心の底から望んでた理想郷。
それは敵味方問わず、誰もが平和に穏やかに共生できる世界だった。
パラレルワールドでの現政奉還の顛末、小田原修司と足正義輝の最後、そして小田原修司が死の寸前で垣間見た自らが夢見た理想郷の姿を、共有感知で見通した新世代型二次元人達は自然と目から涙を零していた。
修司が思い描いていた理想郷の情景を認識して、真鍋義久たち新世代型二次元人は自然と目から涙が溢れ出る。
新世代型二次元人達が涙を流す中、新世代型を始めとするその場の皆々の目の前では、修司が聖龍剣を振り上げて今まさに足正義輝を打ち首にしようとしていた。
そして修司が聖龍剣を振り下ろして義輝の首を刎ねようとした、その時。
「ま、待ってくれ!」
真鍋義久が義輝の首を刎ねようとする修司を制止する。
真鍋の声に修司は固まる様に止まり、義輝も周りの皆々も新世代型達に視線を向ける。
皆々の注目を浴びる中、真鍋義久は義輝の首を刎ねようとしてた修司に言った。
「ま……待ってくれ。義輝の首を刎ねるのは、待ってくれないか?」
この真鍋の嘆願に彼と同じ新世代型の面々は賛同の表情を浮かべ、その他の皆々は動揺し出す。
「何を急に訳の分からん事を抜かしよるんじゃ……! 足正義輝は、この現政奉還を起こした全ての元凶! その報いを、罪を……! この場で粛清しないで、いつするんじゃァ!!」
真鍋たちの嘆願に、国連軍元帥の赤犬は現政奉還を起こした足正義輝への粛清と制裁を邪魔されて怒りに猛る。
すると、そんな赤犬の怒号にも怖気付かず、一歩も退かずに他の新世代型二次元人が声を挙げる。
「確かに……義輝さんは、この現政奉還を起こして多くの人々の運命を狂わせた上に壊してしまった人です。それは否定できません」
「でも……現政奉還を起こしたのは、何も自分の道楽の為だけじゃない! この世の中で生きる多くの若者たちが未来に向かって懸命に生き抜こうとする熱気……いえ、活気が無かった事を憂いで、現政奉還を起こしたんです」
琴浦春香に彩瀬なるの切実な訴えに続いて、薙切えりなとイオリ・リン子も訴える。
「それだけじゃないわ。足正義輝が現政奉還を起こした元々の発端は、自らのクローンである私たち新世代型二次元人を大量に生み出されてしまった事で現実に失望して生気を失ってしまった小田原修司を嘆いて起こしたものよ!」
「それ故に、この現政奉還の元々の発端は、それを起こした足正義輝でもなければ、その切っ掛けになった小田原修司でもない……私たち、小田原修司のクローンである新世代型二次元人の存在こそ、現政奉還の元凶そのもの……」
切実に訴えかける薙切えりなと涙目で訴えるイオリ・リン子の真情を聞いた赤犬は、更に興奮する。
「するってぇとなにか? おまはんたち新世代型二次元人が現政奉還の元々の元凶だと抜かすんか……!? じゃったら!! おまはんら全員と足正義輝、そして小田原修司の命で罪を償うっちゅう覚悟ができとるっちゅうんか……!!」
この赤犬の激昂に怯む事無く、新世代型二次元人達は己の心中を口から吐き出していく。
「確かにそうだよ! 修司さんのクローンとして生み出された、俺たち新世代型二次元人が元々の原因だっていうのは俺でも解かる! ……だから、だからこそ! 修司さんや義輝さんにチャンスをくれよ! 赤犬元帥!!」
「赤犬元帥、あなたは世界を戦乱に招いた僕らを含む新世代型二次元人を……そして小田原修司という存在を赦せないのは重々理解しています。でも、だからこそ……僕たち新世代型二次元人に、そして僕ら新世代型の始祖である小田原修司に生きるチャンスを与えてほしいんです!」
燃堂力と斉木楠雄の嘆願を前に黙り込む赤犬を前に、プロト世代であるギュービッド達が赤犬に意見する。
「おい、赤犬! 確かに足正義輝が現政奉還を起こしたのは、小田原修司の失望感と義輝の道楽が発端だ……でもな! 悲しいけど、その元凶というか根源は小田原修司のクローンである新世代型二次元人の存在ってのも事実なのが現実だ。だからこそ、そんな小田原修司や新世代型達に未来を生き抜くチャンスを……誰かを導くチャンスを与えてやってもいいんじゃないか!」
「赤犬元帥、あなたが罪人を決して赦さない二次元人である事は周知しています。ですが、現実に失望してた小田原修司も、その小田原修司を誘導して現政奉還を起こした足正義輝も戦いを通して、まだこの世界に希望が……人々に熱気がある事を理解してもらえた。そんな小田原修司や足正義輝そして新世代型二次元人達に、昔からいる二次元人同様、三次元人や周りを導く機会を、チャンスを与えてもいいんじゃないですか」
ギュービッドに続いて赤犬に意見する海道ジンの話を聞いて、赤犬は考え込んでしまう。
すると、現政奉還を発起した足正義輝は自分と同じ新世代型二次元人達の許しともいえる意見を聞いて衝撃を受ける。
「よ、予も……予もまだ、生きて良いというのか……!? 現政奉還という戦乱を招いた予と、共に生きてくれるというのか……!!」
義輝の問いかけに、琴浦春香が答えた。
「義輝さん。皮肉だけど、私達はこの現政奉還という戦乱の中で自分達が何者なのか……そして二次元人とは何なのかを学びました。その切っ掛けを作ってくれた貴方をただ死なすのは惜しいだけです」
琴浦春香に続いて真鍋義久も義輝に言った。
「国連総長様よ。散々、俺たち同じ新世代型二次元人の人生を引っ掻き回してくれたんだ。小田原修司に討ち首にされるだけが罪滅ぼしだと思わない事だな!」
そして次の瞬間、新世代型二次元人達は足正義輝に告げた。
『もう、独りにはさせない……!』
この新世代型二次元人達の言葉を聞いて、足正義輝の心が急激に温められる。
「灼い……胸が、胸が焼ける様にあつい……っ」
生まれながらに完璧な文武両道の存在として生み出された足正義輝には、隣にいてくれる存在すなわち友と呼べる者はいなかった。
そんな足正義輝に歩み寄り、彼の孤高を取り除く発言をした多くの新世代型二次元人達の言葉に義輝は感激のあまり涙を流した。
感激のあまり涙を流し始める足正義輝に、彼の首を刎ねようとしてた修司も歩み寄り、正座する義輝を見下ろした。
「と、朋よ……! この胸中で犇めく感情は何なのだ……? この、胸の内を焼け焦がすほどの熱情は……!?」
涙を流し続ける義輝が修司に質問すると、修司はその感情を一言で表した。
「それが……喜びという奴だ」
「! これが、喜び……! なんと熱く、そして刺激的なのだ……!」
義輝が自分の胸中で熱く燃え滾る感情を知ると、更に義輝の目から涙が零れ出る。
「義輝さん」
そんな義輝に琴浦春香が歩み寄り、そして優しく正座する義輝を抱擁した。
彼女から与えられた温もりが、生まれてから今に至るまで孤高であった義輝の心を更に熱く熱く温めた。
「ああ、灼い……灼いぞ……! 有難う、朋よ……忘れ得ぬ記憶よ……」
感激のあまり涙を流す義輝を目の当たりにして、修司はかつてアッコや聖龍隊の仲間達から与えられた温情を思い出して涙目になる。
そして涙を流す義輝は、自分を抱擁して温情を与えてくれた琴浦春香に感謝しつつ、修司とミラーガールに言った。
「ありがとう、修司、アッコ……! 予に人としての温もりを、そして何よりも生きる喜びを与えてくれて……!」
義輝の言葉に、修司もミラーガールも思わず微笑んだ。
「ああ、そうか……! 本当にこの世に必要なのは、生きる喜び……だが、予にはその喜びが無かったのだな」
義輝はこの時初めて気付いた。この世界に必要な感情を。そしてその感情が自分には持ち合わせていなかった事を。
初めて生きる喜びを痛感した足正義輝が涙を流す中、修司は義輝の首を刎ねようとした聖龍剣を右腕だけで天へと突き出すと、高らかに宣言した。
「これにて現政奉還、その乱世……幕引きで候!!」
こうして小田原修司のクローンである新世代型二次元人の生誕から始まった【現政奉還】の乱世は、新世代型二次元人の始祖である小田原修司自らが幕引きを下ろした。
小田原修司が望んだ、誰もが平等に平和に過ごせる理想郷の如く。