聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[鬼神への処罰]
現政奉還
それはこの世の若き芽吹きともいえる者達に次代を築き、未来を歩める活気が失われていた事から国連総長に就任したばかりの新世代型二次元人、足正義輝が発起した政策。
現政奉還とは、足正義輝の地位と権限を無に還し、一部の権力者達を蒸発させる事で自発的に世界中を乱世に巻き込ませ、誰もが思うが儘に次代を創世できる、まさしく戦界創生という乱世の始まりだった。
だが、足正義輝の目論見は、世界の誰しもに思うが儘の次代を創世させる事だけでなく、義輝を始めとする新世代型二次元人という己のクローンの大量生産という現実に打ちのめされ、現世に絶望してた新世代型の始祖・小田原修司の失った活力を取り戻す為でもあった。
小田原修司は誰もが平等に、そして平和に生きていける世界を夢見て、その夢が実現した理想郷を叶える為に聖龍隊を設立。そして最終的には仲間達に夢を託したのだが。
そんな修司の前に現れたのは、自分の呪われた遺伝子を基に生み出された新世代型二次元人というクローンの存在であった。
時には汚らしい諍いを、時には悍ましい争いを繰り返す新世代型二次元人の凶行に修司は絶望視し、深く深く落胆した。
そして修司は足正義輝に闘いを挑むことで、新世代型二次元人の呪われた系譜に終止符を打とうとしたのだが、逆に足正義輝に返り討ちに遭い敗北。
その後、感情そのものまでも失ってしまった修司に義輝は「黒武士」の名を与えて、自らが起こした現政奉還での争乱で暗躍する配下として操った。
しかし新世代型二次元人の変化に伴い、黒武士の心境にも元に戻る形で変化が表れ、遂に黒武士は二次元人の始祖である加賀美あつこを亡き者にし、世界そのものを虚無という真っ白な世界へと塗り潰そうと第三次・二次元三次元戦争の開幕を宣言する。
二次元人やアジアの武将達は懸命に黒武士に抗ったが、その最中で黒武士の正体が小田原修司である事が判明。それと同時に抑えられてた修司の悲しい感情が湧き出し、修司は自分のクローンである新世代型二次元人達の生体エネルギーを吸収して「純粋なる破滅」へと変わり果ててしまう。
純粋なる破滅へと進化した小田原修司は、遂にミラーガールこと加賀美あつこを殺めて全二次元人を弱らせた後に戦場に参戦してる二次元人達を全滅させ、それから三次元界の武将達をも手にかけた。
戦場に参戦してた全ての二次元人と三次元界の武将達を亡き者にした後、小田原修司は自分のクローンである新世代型二次元人達をも斬首して惨殺しようとした。
だが、そんな修司の前に立ちはだかったのは、皮肉にも修司と同じ発達障害者である台湾が新国将軍のシバ・カァチェンだった。カァチェンはこの現政奉還で聖龍隊を始めとした二次元人達から学び得た教えと力を糧に修司へと単身挑む。
すると此処で奇跡が起きた。カァチェンの諦めない心に感化され、死んだミラーガールが生き返ったのだ。それから立て続けに戦死した二次元人や三次元界の武将達も続々と生き返り、形勢はあっという間に逆転。そして遂にカァチェンとミラーガールは小田原修司を倒す事に成功する。
しかし死の淵で、小田原修司の半生や彼がどのような心境で今まで闘い抜いてきたのかを知った多くの者たちは、修司に帰る場所はあると説得し、修司を無事に生還させる事にも成功する。
この様な一連の戦いを傍観してた足正義輝は、まだまだ世の中には熱気が必要不可欠であると告げた上で、世界の命運を賭けて修司と聖龍HEADに仕合を申し込む。
現政奉還という乱世を終わらせるべく、修司と聖龍HEADは義輝側についた武将達を突破して、ようやく足正義輝との決戦に漕ぎ着けた。
だが、文武両道にしてあらゆる武芸に通じている足正義輝は簡単には倒せず、修司も聖龍HEADも満身創痍まで追い詰められてしまう。
しかし再び希望を抱き始めてた修司は諦めず、そんな修司と共闘しようとミラーガールも立ち上がる。
そして修司とミラーガールは共闘の末に、遂に足正義輝を倒す事に成功する。
修司によって倒された義輝は、己の能力で修司の前世を周りの皆に共有させる形で読み解き、前世の記憶を覗いた。すると其処には邪馬台国の戦士として、国を護る為に一人散っていった前世の修司スサノオの記憶があった。
己の前世を知って衝撃を受ける修司に、義輝は現政奉還という乱世の幕引きを自らの首を修司に差し出すという形で終わらせる事を提案。
修司が義輝の首を斬首しようとした、その矢先。新世代型二次元人達が義輝や修司に自分達と同じ時代を生きるチャンスを与えてくれるよう周りに嘆願。これに義輝は感激を覚え、目から涙が溢れ出す。
己が胸の中で熱く滾る感情が何なのかを修司に訊ねると、修司はそれこそ「喜び」だと義輝に説く。
義輝は自分や世界にとって、最も必要だったのは「生きる喜び」だったのだと悟った。
こうして2013年9月8日に始まった戦界創世という乱世の発端「現政奉還」は同年の12月15日に終わりを迎えたのであった。
それから5日後の12月20日。
国際連合の議員達が集う世界最高裁判所の大会議室にて、現政奉還を引き起こした足正義輝とそれに関与した小田原修司の簡易的裁判が行われた。
足正義輝への審議は、結果的に世界中の若者たちに活気を与えて世界を発展させようとした義輝の思想が認められ、義輝は現政奉還前の国連総長の座に落ち着く形で纏まった。
しかし小田原修司はそうはいかなかった。修司は自分のクローンである新世代型二次元人の存在を知った事で、世界そのものを破滅させようとした行動が大きく問題視されてたのだ。
国連議員は小田原修司への罰則として、再び彼を国連の監視下に置くようにすべきではないかと提案。しかしそれは同時に、修司が再び国連管轄の人間兵器に戻る事を意味していた。
アッコやバーンズたち聖龍HEADは、現政奉還の中で猛威を振るっていた時の修司は、自分のクローンを大量生産された事への精神的苦痛が原因での情状不安定であった事を強く主張し、国際法に則って精神疾患のあった修司への罪状は無効だと訴える。
だが……
「本気で言ってるのか? いくら自分のクローンを生み出されたショックで情状不安定になってたとはいえ、世界を滅ぼそうとした上に、挙句の果てには君らも惨殺した小田原修司の罪状を無効にするだと!?」
「現政奉還を引き起こした足正義輝は再び国連総長の座に就いて職務を全うするという事で片が付いたが、世界を破滅させようとした小田原修司の罪状を簡単に許す事はできない……」
「いくら君らと協力して足正義輝の暴走を止めたといっても、また彼も再び新世代型二次元人に釣られて暴走する可能性もあるんだ! 小田原修司は今後の世界情勢の保持の為にも我々国連が責任をもって管理下に置いた方が無難ではないのかね?」
と、国連の議員達はどうしても修司を国連の監視下に置いて、再び修司を私物化しようという魂胆が見え見えの主張ばかり並べる。
そんな国連議員たちに、バーンズたち聖龍HEADは議員達に睨みを利かせた上で、バーンズが言った。
「……オレ達を敵に回してもいいというのか?」『!』
このバーンズの大胆不敵な宣告、そして聖龍HEADの鋭い眼光からくる睨みに国連議員達は一瞬激しく動揺する。
そして、このバーンズの宣告と聖龍HEADの睨みが効いたのか、聖龍HEADは小田原修司の身柄を無事に取り戻した。
だが、小田原修司への罪科が何もなかった訳でもなかった。
修司は聖龍隊が統治する独立国家アニメタウンに強制的に帰還され、その後は国連が発令した【出国禁止令】にてアニメタウンからの出国は許されなくなった。これは小田原修司をアニメタウンという牢獄に閉じ込めておくという国連の決定事項だった。
それと同時に聖龍隊側にも、修司を庇護した責任が追及され、最終的に聖龍隊は国連と決別。聖龍隊が統治するアニメタウンは国連加盟の国家では無くなってしまう。
しかし、この小田原修司のアニメタウンへの幽閉と、アニメタウンが国連加盟国から除名された顛末に至りながらも、聖龍HEADは毅然とした態度で大会議室を後にした。
[しばしの別れ]
所は変わって此処は韓国内の港。
前日に国連議員との話し合いが終わり、聖龍隊は一般の新世代型二次元人そして小田原修司と共にアニメタウンへと帰国する為に赤塚組の木造移動要塞・百鬼命義に乗り込む所だった。
港では、聖龍隊の面々とアジアの武将達が一時の別れを偲んで挨拶を交わしていた。
「では兄者! そして聖龍隊の英雄達よ! また……!」
「ああ、チョウセイ、お前も元気でな」
「己の正義感で周りが見えなくなるほど突っ走るなよ」
韓国将軍サイ・チョウセイから熱い拍手を交わし合う修司にバーンズ。
「エンディミオン殿、黒衣衆の者たちも共にアニメタウンに帰国するのでござるか?」
「ああ、あいつ等も基本的に修司と同じくアニメタウン国外に出国するのは禁じられたからな。アニメタウンでは俺たち聖龍隊に監視された状態で生活する事だろうよ」
「……おい、エンディミオン。あの黒衣衆には十分、気を付けろよ」
キング・エンディミオンと会話をするモンゴル新国将軍に就任したシン・ユキジ達の話を聞いて、漢族筆頭のデイ・マァスンが忠告する。
「分かってるわよ、マァスン」
「それと、貴方は今後も竜王と名乗って、誰もが夢や目標を自由に追っていける理想を貫くつもりなの?」
セーラームーンやセーラーマーキュリー達からの問い掛けに、マァスンは力強く返答した。
「Ha! その通り! オレはこれからも変わらず突き進む! 誰もが夢を追い、羽ばたける……誰もが未来という名の光を追い求められる次代を創世してみせるぜ!」
このマァスンの宣言に、傍らで聞いていたシン・ユキジも熱く唱えた。
「某も! お館様より受け継いだ熱い魂を持って、これからも精進しつつ……己の中の矛盾をも受け入れながら、熱く熱く、邁進する所存ゆえ! ですので、どうか見ていて下され! HEAD! そして聖龍隊の猛者達よ!」
デイ・マァスンに続き、シン・ユキジからの熱い宣言を聞いて、聖龍HEADは心の底から安心した。
「それじゃ創真くん、みんな……色々とありがとう」
「ああ! それじゃあな、キンカ」
中国ウイグル族の名士であるシャ・キンカと新世代型の幸平創真達が別れの挨拶を交わしていたが。
「……う、うぅ……うわーーーーん……っ」
「わッ! な、なんだなんだ急に!?」
突然泣き出すキンカを前に戸惑う創真たち。するとキンカは涙声で訴える。
「だっで、だっで……創真ぐんだぢがづくってぐれた料理が忘れられないんだもーーん……! わあーーーーっ、まだまだ食べ足りないよーーっ! まだまだみんなと一緒にいたいよーーーー……っ!」
「キンカくん……」
別れを惜しむキンカを目の当たりにして、田所恵達の心境は複雑になるが。
そこに薙切えりなが啖呵を切るようにキンカに説教する。
「シャ・キンカ!! あなた、それでもウイグル族の名士なの!? もっと堂々としていなさいよ!!」
「ひっ……え、えりなさん?」
「まだまだ中国は、アジアは……いいえ、世界は混乱の最中だって言うのに、アジアの武将である、あなたがしっかりしないてどうするの! また私たちはいつか会えるんだし、その時の為にも今をしっかりと堂々とした振る舞いでいなきゃダメでしょ! 私たち新世代型二次元人も世界の為に頑張るから、あなただって少しは頑張ってちょうだい」
薙切えりなに注意されて、キンカは最初戸惑っていたが。
「う……うん、分かった。ぼくも頑張るよ。ぼくも、このアジアを平和にする……そう、創真くん達が作ってくれた料理の様に、美味しいものでアジアを一つにして見せるよ!」
と、涙を拭って幸平創真たちに宣言する。このキンカの宣言を聞いて、新世代型達は安心するのだった。
「今回の大戦も難戦だったね、聖龍隊。しかも、その原因が小田原修司とそのクローンである足正義輝だったから、余計に複雑ね」
「まあ、でもアッコちゃんやカァチェンのお陰で修司くんも元に戻ったし、国連総長である義輝も心を入れ替えてくれたし、良かったじゃない」
イギリスの外交官であるモーリス・ナイロンと談話する早見ハニー。
「しかし、まさか自分のクローンを世界が大量生産されたショックで黒武士になってたなんて驚きだよ……まあ、その小田原修司も足正義輝も今後は大人しくなるって言うし、少しは様子見しておくよ」
「そうね。私達の方でも、随時修司くんを見守ってるわ。まあ、あの子は一度失敗の経験を積めば、二度の失敗は繰り返さない子だけどね。同じ轍は踏まないってね」
お互いに小田原修司や足正義輝を警戒するよう言い渡し合うナイロンとハニーの二人。会話を終えるとハニーは聖龍隊の一行に戻っていった。
「アッコおねえさま、ミラールちゃん、皆さん! またいつか会いましょう!」
「ええ、元気でね、鶴姫ちゃん」
「今度は戦火の中ではない、平和な時にでも会えればいいわね」
鶴姫からの言葉に、アッコもミラールも笑顔で返事する。
「特にアッコおねえさま……生まれ変わった卑弥呼様として、今後どのように鬼神様と世界を変えていくか、この鶴姫も見守っていますからね!」
「え、ええ、そうね……ありがとう、鶴姫ちゃん(私自身、自分が卑弥呼だって言う記憶は全くないんだけどな)」
鶴姫から前世の卑弥呼について言われるが、アッコ自身自分が卑弥呼である記憶がないと多少困惑してしまってた。
「ほほう、それでは順一殿。お主達は一旦、アニメタウンに帰国してから日本に帰還する次第なんじゃな」
「はい、時乃宮殿! 一度母国であるアニメタウンに帰国し、アニメタウンの情勢を地元の聖龍隊と共に復興してから日本に帰還します! もちろん、日本に帰還次第すぐに日本の情勢回復にも力を注ぎますのでご心配なく!」
「うむ、それを聞いて安心したわい……順一殿、そしてスター・コマンドーの若かりし英雄達よ。此度の戦ではお互い色々と学んだことは多かろうて……今回の学びを次の教訓として生かし、次世代に繋げていこうのぉ!」
「はい! 時乃宮殿!」
村田順一率いるスター・コマンドーは、日本天皇家の親族に当たる時乃宮彦摩呂との談話を終えると、帰路に就く聖龍隊の一行に加わった。
「修司どん! 順一どん! 此度の戦では色々と学ばせてもらったぞ!」
「ああ、色々とすまなかったな竹康」「お互い、大変だったね」
修司と順一は新中国政権を担う徳竹康と対話してた。
「ワシもこれからは聖龍隊に負けねえほど自分を変えていかねえといかん! かつて悪政を誇ってた共産党が滅んだと言っても、まだまだ中国は不安要素が多い国の一つでもあるのには変わりない。ワシはいずれ、修司どんや順一どんを超えた武将に……そう、武蔵丸の支えっ放しの武人ではなく、一人前の武将に成長して、このアジアを護って行く! 見ててくれッ」
「ああ! しっかり見守ってるよ、竹康くん」
「お前なら、きっとこのアジアを太平に導けるだろうよ」
徳竹康の宣言を聞いた順一と修司は、近い将来竹康に安心してアジアを任せられるなとこの時思い至ったのである。
「いやーー、アッコはん! 今回はホンにあんがとのぉ」
「良いのよギンテルさん。私は当たり前のことを言っただけよ」
ウイグル族の豪族であるシマ・ギンテルが、アッコの手を握り締めて激しく握手を交わしながら談笑してた。
「アッコはんのお陰で、ワシは危うく人の道を踏み外し、畜生以下の鬼の道を突き進むところばってん! オイはこれからは、次の世代に示現の道を教え説きながら受け継がせ、新しい時代に次の意志を育てる事に力を注ぐばい!」
「私たちも次の世代に先駆けて、理想や夢を伝授していくわ! お互い頑張りましょう!」
ギンテルとアッコは笑顔で拍手を交わし合って、互いの健闘を祈った。
「修司殿……! 加賀美殿……! うぅ……っ!」
「も、もう立花さん? そんなに泣かないてってば」
「もう泣くなよ立花。いい歳したオッサンがみっともないぞ」
此度の大戦での成長と変化を目の当たりにして、号泣して感涙を流す立花宗茂を前にアッコと修司は呆れてしまう。
「もうっ、宗茂! そんなに泣いてたらミラーガールも修司様も戸惑ってしまうでしょ! 確かに此度の戦では、修司様は傷付いたりミラーガールは一度とはいえ死んでしまったりと大変でしたが……その困難を乗り越えて、聖龍隊はまた幾重にも成長できたんだから良かったじゃないですか!」
「ヒッグ、ヒッグ……そ、そうですね、宗助様……! ッ……修司殿、加賀美殿、本当に此度の戦でお二方は成長しました! この宗茂、同じ武人としてこれほどまでに感激した事はありません! 我々もあなた達に負けず劣らず、この世界を導くお手伝いをしていきます! 共に精進しましょう!」
「ええ、そうね! 宗茂さん、一緒に頑張りましょう」
「宗茂、宗助のこと頼んだぜ。宗助も、また無茶な勧誘はやめろよな」
修司教の最高責任者である大友宗助と、その従者である立花宗茂の激励を受けて、アッコと修司は微笑みながら受け答える。
「きしんよ、そして聖女……此度は、あの孤高であらせられた義輝公に繋がりをあたえてくれて、誠にありがたき事。このケンノフスキー、心より感謝申し伝えます」
「良いんだよ、ケンノフスキー。俺も最初は自分のクローンである新世代型達を受け入れられなかったのも現政奉還の原因だったし、俺も義輝もお互い様よ」
「かすがさん、ケンノフスキーと一緒にロシアの平和を陰ながら守ってくださいね」
「解かり切った事を言うな! ……まあ、ケンノフスキー様を陰ながらお支えするのが私の使命だからな。言うまでもないが」
互いに健闘を祈り合うケンノフスキーと修司に対して、かすがはアッコからの言葉に対して少し照れながら答えてた。
「聖龍隊の戦乙女たちよ! 今度会う時まで、私は己の戦闘での腕を上げるだけでなく、その、なんだ……花嫁修業も頑張るから、その、見ててくれっ」
「ふふ、そうね。女の子は誰でも花嫁さんに憧れるものね。応援してるわよ、ナオコちゃん」
「武芸だけでなく、男だろうと受け入れる寛大な心も成長できるといいな」
恥ずかしそうに聖龍隊に宣言するイン・ナオコに、月野うさぎと早見青児は声援と助言を送る。
「ナオコちゃん、その……修司との戦いで断髪しちゃった髪の毛の事は、修司も悪いと思ってるの。私からも謝るわ、ほんとにごめんなさい」
「す、すまない、ナオコ……俺も反省してるよ」
戦闘の最中、自ら断髪する形とはいえナオコを追い詰めた経緯について、アッコも修司も謝罪するとナオコは力強い表情で修司を指さして言い放つ。
「おい、小田原修司!」「は、はい……!」
思わず背筋を伸ばす修司に、ナオコは強く言い聞かせた。
「私に断髪させるほど追い詰めた事も、義輝と共に現政奉還を起こしたのも今となってはどうでもいい! 少なくとも、今後お前は……!」
「っ……」
「……もう、ミラーガールを、加賀美あつこを悲しませるな。乙女を悲しませる男ほど、私が嫌いなものはないんだからな」
「あ、ああ……分かったよ、ナオコ。心に刻んどくよ」
ナオコからの優しい忠告に、修司は少し緊張しながら返事するのだった。
「新世代型の皆さん! 最初は僕の勘違いから始まってしまいましたが、それでも! 皆さんと出会えた経験も貴重な武将への糧として受け入れます! どうか、僕が一人前の武将になったら、もう一度お手合わせしてくださいっす!」
「ああ! いつでも良いぜ、鹿之助!」
「私たちなんかで良ければ、機会があればいつでも手合わせしてやろうぞ。お互い、精進し合おう!」
山中鹿之助からの挑戦状に、纏流子と鬼龍院皐月の姉妹を始めとした戦闘タイプの新世代型二次元人は快く鹿之助からの挑戦を受け入れる。
「へへ、それじゃあな新世代。今度会う時まで、小生はでっけぇ幸運の星を手に入れてガツンと見せてやるからな! それこそお前さん達、疫病神ともいえる新世代型二次元人にも負けねえ幸運の星をよ!」
「は、はぁ……そうですか」
「まあ、俺たち自身も世界に災いを引き起こさないよう注意するよ。あんたも無謀な事ばかりせず、身の丈に合った生活を送れば不幸にならないと思うぜ」
「でも、それ以上に劉席さんなら、どんな逆境でも乗り越えられる……そんな気がしますよ! お互い頑張りましょう!」
黒劉席との別れ話の中、劉席の話に呆れてしまう直枝理樹に棗恭介の傍らで、瀬名アラタだけは劉席に向かって健闘を称えた。
「そ、それじゃ、その………………またな、新世代」
「ちょっと、何よもう。前の様にハイテンションで罵らないの?」
「すっかり毒気が抜けて、大人しくなっちゃったわね、あなた」
「まっ、以前の様な禍々しい性格よりマシになっただけでも良いんじゃないっすか?」
今ではすっかり狂気染みた言動も成りを潜めて大人しくなったゴ・マータンを前に、森谷ヒヨリや美都玲奈そして一ノ瀬はじめが笑顔でおちょくる。
「……ところで、マータンさんはこれからどうするつもりなんですか? 現政奉還は終わったんだし、もう流浪人でアジアを放浪する必要もなくなったし……」
加納真一が訊ねると、ゴ・マータンに黒劉席が肩を組み合わせて答えた。
「おうっ、それなら心配ご無用だぜ新世代! マータンはまた小生の下で穴倉掘りのチームで働く事になったからな! 小生とマータンの才能が有れば、それこそ鬼に金棒だ! ガハハッ」
そう愛想よく高笑いする劉席を隣に、肩を組まされるゴ・マータンは無愛想な表情で言う。
「……阿保席、まーーた調子乗りやがって。これだからいつも失敗ばかりするんだよな。やれやれ」
そんな今では楽しそうに再びタッグを組んだ黒劉席とゴ・マータンの二人を前に、その和気藹々な雰囲気に新世代型二次元人達は和むのだった。
「サコン、お別れだね。まあ、一時の別れで、また会う事もあるかもしれないけど……」
「………………」
村田順一たちスター・コマンドーは今は亡きヤン・ミィチェンの従者であるマン・サコンにお別れの挨拶を述べようとするが、未だに二次元人への憎しみを抱くサコンは顔を背けたまま。
そんなサコンにシバ・カァチェンは声をかける。
「……サコン、貴方が二次元人達を許せないのは理解できます。ですが、彼らを許さない限り、前へと歩めないのではないのですか? 此処は一つ、二次元人達を許してはくれないでしょうか……」
盟友でもあるカァチェンからの言葉に、サコンは渋々顔を順一達に向けると、順一達は笑顔になる。
順一たちスター・コマンドーや新世代型二次元人達はサコンからの言葉に胸を高まらせるが、サコンは笑顔で彼らにきっぱりと言い切った。
「……いや、やっぱ俺さまは許せねえやッ」
そうサコンは満面の笑顔で言い切ると、新世代型達や村田順一らスター・コマンドーを前に更に吐き続ける。
「確かにこの世の中を正してきたのは小田原修司と二次元人だって言うのも今では理解できる。けどよ……それでも俺やミィチェン様の故郷である北の国を滅ぼした挙句、俺やミィチェン様のような一部の人間を絶望のどん底に叩き落した小田原修司や二次元人は許せねえ。だから俺はこれからも小田原修司や二次元人を、憎んで憎んで憎み続けながら……精一杯前へと向かって生きていくぜ!」
例え憎しみ続けるとしても、同時に前を向いて生きていくと宣言した満面の笑みを浮かべるサコンの言い分に、新世代型達も村田順一たちスター・コマンドーも力強い面魂で受け入れた。
「……ああ、そうしてくれサコン! 僕たち二次元人を憎み続けてくれても構わない! そうして、ヤン・ミィチェンの分も前を向いて生き続けてくれ! それこそ、ミィチェンへの最大の弔いになるだろう!」
そう言うと村田順一はサコンに右手を差し伸べ、サコンと握手を求めるが。
「へっ、それはごめん被るぜ。俺は俺でお前らイカサマ野郎のペテン師の二次元人に気を許さねえだけよ! ……お前さんら、いつか後悔するぜ。ミィチェン様を殺し、俺たちを絶望に叩き落したその報いをな」
「……ああ、心に深く留めておくよ。サコン……」
握手を拒んだサコンに、順一は寂し気に言葉を返した。
「まあ、アレだ。今回、お前さん達が……いいや、おれ達が小田原修司や国連総長に勝てたのは、二次元人の始祖様であるミラーガールの存在が大きかったと、おれは思うぜ」
「まっ、それは俺たちも気付いているよ」
元国連軍大将の冷苦の提言にキリトたち聖龍隊の新人部隊は頷くのだった。
「まーー、そういう訳で……おれ様もそろそろおさらばするよ。お前さん達、表の正義とは違う裏の正義を今では担っているんでね」
「ええ、ご武運を。冷苦さん」
「あんがとよ、アスナのお嬢ちゃん」
立ち去ろうとする冷苦にアスナが礼を言うと、冷苦は振り返らずに手だけ振って礼を返した。
「ところでSRMの連中は?」
「ああ、あいつ等なら一足先に基地のある異世界へと帰還してるよ」
スコーピオン同盟が首領ガイアが訊くと、聖龍HEADの堂本海斗は素っ気なく答える。
「ガイア、今回の大戦では世話になった!」
「まあな、でも残念な事だが次に会う時はまた敵同士だけどな」
村田順一からの礼に対して、ガイアはやれやれと言った感じで答え返した。
「あなた達も今回の大戦では非常に活躍したんだし……何なら、マン・ヒールズに入隊する形で里帰りしてみない?」
「へへっ、それならごめん被るぜ!」
「俺たちは昔も今も変わらず、ガイアさん達と自由気ままに悪党家業を続けていくつもりだ。アニメタウンへの帰郷だって、あんたら聖龍隊の許しが無くても勝手気ままに自由に不法入国で帰るから、そのつもりで」
ミスティーハニーからの提案に、スコーピオン同盟の潤と恵一の柊兄弟が願い下げする。
「まあ、ホントならオレ様……ちせちゃんとずっとずぅっと一緒に居たいんだけど、また追われる立ち場に戻るだろうし我慢するよ」
「ふぅ……ガイア、あなた達が改心して大人しくしてくれたなら私も大助かりなんだけど」
ガイアの自由気ままな言動に、ちせは程々呆れ果ててしまう。
「おい、小田原修司! もう惚れた女を泣かすんじゃないぞ! もうテメェは新世代型の親みたいなもんなんだし、親ならしっかり子供を育てて導いてやれよな!」
「ああ、分かったよ、ガイア」
(……子供って表現は、未だに複雑なんだけどな……)
ガイアからの忠告に、修司は複雑そうな顔で頷き、新世代型達も内心では複雑な心境だった。
「それじゃ! オレ様達はこれで! ま~た赤犬たちに追われる前にトンズラしねえと……」
と、ガイアたちスコーピオン同盟がそろりそろりと忍び足で立ち去ろうとした、その矢先。
「……おい、待ちぃな……!」『ッ!!』
なんともドスの効いた声がスコーピオン同盟を止める。
振り向くと其処には強面で立ち尽くす国連軍元帥の赤犬と、その周りには無数の国連軍兵士が群がっていた。
「ガイア、そしてスコーピオン同盟……! もう足正義輝の現政奉還も終わり、大戦も終局したんじゃ……! あとはお尋ね者であり、極悪人である貴様らをとっ捕まえるわしらの本来の職務をまっとうするのが道理じゃよな……!!」
怒声にも近い声色でスコーピオン同盟に問い掛ける赤犬の口調に、すっかり怖気付いてしまうガイア達。
すると、次の瞬間。
「あ! アレはなんだ!!」『!』
突然ガイアが空の方に向かって叫ぶと、それにつられて赤犬たち国連軍も一斉に顔を向けてしまう。
しかしすぐにそれがガイアの嘘だと気付いて赤犬が顔の向きを元に戻すと、既にガイア達は船に乗って逃亡を図っていた。
「ッ! 何をしちょる! はよスコーピオン同盟をとっ捕まえんかッ!!」
赤犬の怒声を聞き、兵士達は雪崩れ込む様に走り出してスコーピオン同盟の追撃に取り掛かる。
一方で無事に全員船に乗り合わせたスコーピオン同盟は、国連軍の大砲やバズーカでの追撃をかわしながら笑顔で聖龍隊や新世代型達に手を振って別れの挨拶を掛ける。
「じゃあな、聖龍隊! そして修司のクローンの新世代型二次元人! また会おうな! ちせちゃん、次逢った時こそデートしてぇ!」
「あばよ新世代! 今度こそ現実から目を背けず、前を向いて生きろよ!」
ガイア達スコーピオン同盟の声援に励まされ、新世代型達は自然と顔から笑みが零れた。
それでも国連軍の執拗な追撃はやむ事が無く、それを遠くから眺めてた冷苦は呆れてしまう。
「やれやれ、また性懲りもなく追いかけっこか……ま、おれ様にはもう関係ないけどな」
そう言うと冷苦は何処かしらへと姿を消してしまう。
その一方でスコーピオン同盟を追撃する軍勢の中には、ステルス戦闘機も確認できた。
「今度こそ当ててやるぞ、
合計三機のステルス機は、補充されているミサイルを全弾発射してスコーピオン同盟が搭乗する船体に向けて放つ。
「いやーーっ!」「み、ミサイルがッ!」
アルケニモンにマミーモンたちが戸惑う中、ミサイルは辛うじて船体をそれて海面へと着弾する。
それと同時に海面から凄まじい水柱が上がるが、そんな状況下でもガイアは楽しんでいた。
「わははははッ、面白れえな! それじゃテメェら! 次の冒険に向けて、全速前進だッ!!」
ガイアはそのまま仲間達に指示を出して、船の速度を上げて逃亡を続けた。
こうしてスコーピオン同盟は大海原の水平線へと消えていったのであった。
「……じゃ、俺もここいらで去るとするよ」「ジェイク……」
タイのバイオハザードで出会い、まさか自分達と同じ新世代型二次元人であったと知って大戦に巻き込まれたジェイク・ウェスカーが荷物を持って立ち去ろうとするのを、新世代型の真鍋義久たちが寂し気に見送る。
「フッ、なにを寂しがってる? そもそも、俺と関わらなくなってラッキーじゃないのか? 聖龍隊の加護があれば、もうお前さん達を人体実験に使おうとする輩共から守ってくれるじゃねえか。俺みたいに、父親からの因果で不運に巻き込まれる必要、お前らにはないよ」
あのアルバート・ウェスカーの実子にして、様々なウイルスの抗体を持つジェイクとの別れに、新世代型達は複雑な心境ながらも別れを惜しんだ。
「それじゃ、もうお前らと会わない事を祈るよ。お互いの為に、な」
そう言い残して立ち去ろうとするジェイクに、琴浦春香が声をかける。
「じゃ、ジェイクさん!」「?」
呼び止められて立ち止まるジェイクに、琴浦春香は続けて言葉を送った。
「どうか……どうか、お元気で!」
そんな琴浦春香の声援に、ジェイクは自然と微笑むとそのままその場から立ち去って何処かへと行っていくのだった。
そして逃亡したスコーピオン同盟を追って赤犬率いる国連軍も追撃していった後。
修司は改めてシバ・カァチェンたち三次元界の武将達と向き合い、別れの挨拶を交わす。
「それじゃあな、カァチェン。ホントにありがとよ」
「鬼神よ、それは私の台詞です。あなた方、聖龍隊の英雄達に……そして聖女や貴方と出会わなければ、私は昔のまま、欠かれカァチェンのままでした」
毅然とした態度でそれぞれ向き合う修司とカァチェン。
すると此処で修司がカァチェンたち若い武将達に向けて言った。
「カァチェン」「はい」
修司は穏やかながらも何処か力強い顔でカァチェンたちに告げた。
「お前達には、まだ多くの苦しみがあるだろう……だが、それでもお前達は変わる事無く、自分の信じた未来を貫き通せ」
修司の台詞にカァチェンは思わず目に涙を浮かべる。
「カァチェン、以前お前は言ってたな。『まっすぐ自分の信じた道は曲げない』と」
「…………はい……ッ」
「カァチェン…………お前は、俺を追わなくていい! お前は、お前の信じた仲間と共に、前を進め」
「はい!」
修司からの助言を聞いて、カァチェンは滝の様に涙を流して感激する。
そして修司はカァチェンに向けて右手を差し出し、握手を求める。するとそれにカァチェンも応え、彼も右手を差し出してお互い握手を交わす。
今まで多くの人と繋がりを、縁を得てきたシバ・カァチェン。今回の現政奉還で彼が最後に得た縁である繋がりは、小田原修司だった。
そうして多くの二次元人たち聖龍隊一行は、赤塚組の百鬼命義に搭乗し、韓国の港を発つのであった。
「あばよーー、聖龍隊! 今度会う時までオレ様も腕を磨いておくぜ!」
「さらばでござる、聖龍隊の武士たちよ! このシン・ユキジも腕を磨いておきます故!!」
デイ・マァスンやシン・ユキジからの声援に続き、イン・ナオコや山中鹿之助も帰路に着く聖龍隊一行に声をかける。
「聖龍隊の戦乙女たち、色々とありがとう! 小田原修司! ミラーガールを……加賀美あつこを幸せにしろよ!!」
「さようなら聖龍隊! また会いましょうーーっ!」
そして最後にシバ・カァチェンが大きく手を振って聖龍隊との別れを惜しむ。
「ありがとうございます、ありがとうございます! 聖女、そして鬼神よ……多くの友になってくれた二次元人たち。本当にありがとうございました……ッ!」
そんな三次元界の武将達の声援を受けて、修司たち一行も手を振って帰路へと就くのであった。
するとその時だった。
そんな韓国の港での二次元人一行の発向を遠くの山から静かに眺めていた一人の武人が笑みを零して言った。
「はっはっは! 朋輩よ! これはホンの詫びの一つだ、存分に目に焼き付けてくれたまえ!」
その人物は他の誰でもない足正義輝であった。義輝は笏を弓矢に変えるとそれから無数の矢を青空に向けて放った。
すると無数の矢はそれぞれ色鮮やかな虹を青空に描き、青空というキャンパスに鮮やかな虹が架かったのだ。
「ふふ♪ まあ、妾には負けるけどね」
その虹を見て、義輝の傍らにいたサイ・チョウセイの実姉マリアは微笑んでいた。
義輝が放った矢が青空に描いた煌めく虹を見上げて、三次元界の武将達も二次元人たちも自然と笑顔になったのは言うまでもない。
[未来と命]
「ふぅ、これでやっとアニメタウンに帰れるんだな」
「そうだね。長かったけど、みんな揃って帰れるのが一番だよ」
海上を渡航する百鬼命義の船上で、バーンズとジュニアはやっと長きに渡る大戦を乗り越えて無事に故郷アニメタウンに帰れる事態に安堵してた。
するとバーンズやジュニアたち聖龍HEADの面々が一息入れている所に、新世代型二次元人達がやって来て話し掛けてきた。
「ば、バーンズ……」「バーンズさん……」
「ん? ああ、真鍋に琴浦か。どうしたお前ら」
バーンズが二人に聞き返すと、二人は憂鬱な面持ちで答える。
「さっき聖龍隊の隊士から小耳に挟んだんだが……小田原修司や足正義輝の罪を軽くさせる為だけでなく、俺たち新世代型二次元人の総処分を取り下げる為にも色々と働いてくれたみたいで……」
「ッ……ああ、そうか。隊士達め、余計なお喋りしてくれやがって……」
「修司さんや義輝さんの処罰を軽減する為だけでも大変だったのに、私たち新世代型二次元人全員の命を守ってくれて、その……ありがとうございます」
真鍋と琴浦のお礼に対して、バーンズは頭を掻きながら言った。
「別に。オレたち聖龍隊はお前らの為に働きかけた訳じゃない。新しい次の世代、次代の為にお前らを庇護しただけだ。お前ら新世代型が、次の時代を築いてくれると信じているからな」
バーンズ達HEADいや聖龍隊の心遣いに新世代型達は心の奥で衝撃を受け、感動する。
すると此処で新世代型達が不安そうな面持ちで言い始めた。
「でも、私たちって本当に……世界を変えて、未来を築ける力があるのかな?」
鹿島ユノがぽつりと呟くと、それに続いてアリス・カータレットも呟いた。
「ワタシ達は小田原修司のクローン、それは間違いないデーース。だからといって、未来を創造できるのか自信がないのも事実……」
未来を創造できる力が自分達にあるのか不安に駆られる新世代型達に、水野亜美が言った。
「大丈夫よ! 何より、未来を創る力ってのは、なにも修司くんのクローンだからある訳じゃないわ。誰にだってある素晴らしい力なのよ!」
水野亜美の説明を聞いても、未だに胸中の不安が拭い切れない新世代型達。
そんな新世代型達に木之本桜が言った。
「大丈夫だって! 不安なのは私達も同じだから! 確かに未来を創るなんて突拍子もない考えかもしれないけど……」
さくらの台詞に付け足す様に、森谷りりかも新世代型達に言う。
「大事なのは恐がって立ち止まってしまう事じゃなく、微かな勇気を出して前へと一歩ずつ進んでいく事よ! 私達もそうだけど、立ち止まってばかりじゃいけないわ」
立ち止まってはいけないという森谷りりかの言葉に、新世代型達は胸を射られる。
すると再びバーンズが語り出した。
「確かに……現政奉還を起こした足正義輝も最後はオレ達と一緒に次代を築く意思に変わってくれた。修司も再び希望をもって前へと向いてくれた。でも、それだけじゃ、まだまだ不安なのも解るけどよ……」
続いてジュニアも語り出す。
「でも、今はゆっくり休んで、新しい時代を……そう、次世代の未来を築いていく意思を持って今を生きればいいと僕らは思うよ」
バーンズとジュニアの話を聞いて、新世代型達も少しばかり安堵する。
「確かに……今は平和に至った世界を、どう変えるか。皆で協力し合わなければいけないのかもしれませんね」
そう猿田学が言うと、イオリ・リン子も重い口を開いた。
「これで世界が、未来がどう変わるか見当も付かないけど……」
続けて薙切えりなも言う。
「分からないけど……少なくとも、みんなで一緒に明日を迎えられる結末にはなった筈」
自然と笑顔がこぼれる皆に釣られて、自分も笑顔になるレドとエイミーの二人も言った。
「何が起こるか分からねぇ。当たり前の話だ。本来、未来ってのはそうゆうもんだろうよ」
「例え、どんな未来が待ち受けていようと……皆さんがいるなら、何があっても大丈夫。そんな気がします」
皆が聖龍HEADの説明で安堵してると、大門ジョセフィーヌが新聞を一部バーンズに投げ渡して言った。
「それでも、どうするのバーンズ? 世間じゃワタシたち二次元人の印象が悪くなっちゃってるけど……」
そう言って大門ジョセフィーヌが投げ渡した新聞の見出しには、大きく次の文字が印刷されていた。
【二次元人、三次元人を見限る!!】
聖龍隊が小田原修司と足正義輝そして新世代型二次元人を庇護したばかりに国連から除名された経緯について、世論は二次元人が三次元人を見限る、つまり裏切ったと大々的に報道したのであった。
だが、これに対してバーンズは真顔で言い切った。
「平気平気。オレ達は何も間違った事はしてないんだ。これからも堂々と、未来に向けて前進すればいいだけさ。そう、お前ら修司のクローンと一緒に、な!」
バーンズが言った皮肉に、新世代型達は思わず苦笑いをしてしまう。
と、その時。一人、不安そうな顔を浮かべてた燃堂力がバーンズに声をかける。
「あ、あの……! バーンズさん」「なんだ? 燃堂……」
燃堂力が不安そうな顔でバーンズに質問をぶつけた。
「あの、これも小耳に挟んだんですけど………………修司さん、今回の大戦の前から心臓を悪くしてて、それが純粋なる破滅に変化したのも相まって余計に悪化したっていうけど……」
この燃堂の質問に新世代型一同は一斉にバーンズへと顔を向けて答えを待つ。バーンズたちHEADは重い表情を浮かべながら、バーンズが答えた。
「………………それか。そうだな……確かに修司は兼ねてより心臓などの臓器を悪くしてた。D-ワクチンの副作用でな、筋肉強化で肉体を酷使した為に心臓を中心とした臓器が悪くなる一方でな……」
「そ、それで? まさか余命幾ばくも無いなんて事は……!?」
顔から血の気を引かせて、燃堂が問い詰めるとバーンズは重い口調で答えた。
「そうだな、あと………………10年生きていられれば儲けもんだって言うぜ」
「そ、それだけ……!」
バーンズから聞いた事実に、新世代型達は愕然とした。
「ど、どうにか延命できないんですか!?」
困惑する瀬名アラタがバーンズに問い詰めると、バーンズは重い口調のまま呟いた。
「……方法は一つ。酷使されて使いもんにならなくなった心臓などの臓器を交換すれば延命できるみたいだ」
バーンズが言った方法とは臓器移植が唯一の手段だという。これを聞いた新世代型達は戸惑った。
「……! そ、それじゃ! それなら俺たちのを……」
と、燃堂力が言い掛けた瞬間、それを止める様にバーンズが鋭く言った。
「おい、それ以上迂闊な事を言うんじゃねえ……! オレや他のHEADが黙っちゃいないぞ」
バーンズの鋭い言動に背筋が震えた新世代型達が目を向けると、バーンズだけでなくその隣のジュニアそして後ろで各々に休んでた聖龍HEADの全員が鋭い視線で新世代型達を睨み付けてた。
「……確かに。修司のクローンであるお前らの血液や臓器は、問答無用で修司に適合して移植可能だがな」
バーンズの重たい台詞にその場の空気そのものも重くなった。修司のクローンとして生み出された新世代型二次元人は、各々の血液型など関係なく修司の体に適合する血液や臓器を持っているのだ。
「……しかしだ、修司はもちろんオレ達もお前らの命を犠牲にして、修司を延命させようという気はこれっぽっちもない。それにお前らは改心した修司から折角命を拾い上げた身の上だって言うのに、その命を無駄にするな。それこそ修司以前にオレたちHEADがブチ切れるぞ」
バーンズの重く険しい台詞と、聖龍HEADの鋭い視線に新世代型達は何も言えなくなる。
「いや、それ以前に……修司は臓器の使い捨てを極端に嫌ってる。臓器とはすなわち命そのもの、その命を消耗品の様に使い捨てるかのようにポイポイと使えなくなったら交換するなんて真似、修司は拒むだろうよ。まあ、それ以上に修司は産まれてこの方、自分が使ってきた臓器を交換して捨てるなんて真似は嫌がってる。アイツは自分のものはそれこそ、道具だろうと臓器だろうと捨てずに大事にする輩だからな」
臓器を命そのものと捉える修司は、その命を消耗品の様に扱う真似は極端に嫌うというバーンズの説明に、新世代型達は完全に口を閉ざす。
そんな口が重くなってしまった新世代型達に、バーンズは険しかった表情を明るく一変させると話し掛けた。
「……まあ、だからお前らが気にする事はねえよ。修司は修司で、これからも自分の寿命と向き合いながら付き合っていくだろうよ。それこそ自分の子供とも捉えられるお前ら新世代型二次元人と向き合う様にな」
このバーンズの言葉に、新世代型達は悲愴に満ちた表情から少しばかり微笑む事ができた。
すると此処で新世代型の一人である神原秋人が何かを思い出してバーンズに訊ねる。
「そういえば……今回の大戦で修司さんへの処罰を軽くさせ、どうにかアニメタウンに帰らせられましたが、それと同時に国連から離脱して三次元界との交流は控えられるんでしたよね? 例の組織……アメリカのライフル協会とかバチカン市国との関係は、どうなるんですか?」
秋人の質問に、バーンズは重たい表情で答えた。
「……正直、今回の大戦での修司の処遇を決めた為に二次元人への偏見というか危険視は一層強まった傾向もある。そんな中でライフル協会やバチカン市国と関係を断つ訳にはいかない。皮肉だが、大国アメリカ支えるライフル協会や宗教大国のバチカン市国を冷遇にはできないのが本音だ」
小田原修司や二次元人への処遇を良いものにし続ける為にも、アメリカを支えるライフル協会や宗教大国のバチカン市国との関係は断てないと述べるバーンズの話に、新世代型達は肩を下ろす。
しかし、平和とは正反対の武力である銃火器売買を生業にしているライフル協会などの黒い関係についてバーンズは明るい笑顔で明かした。
「……まあ、今は確かに難しいかもしれない。けれど、いつか……そう、オレの代で必ずライフル協会の様な物騒な連中と縁を切っても二次元人の権限が保有される様な状況を作って見せるさ」
そう話すバーンズの言葉に、新世代型達は少しばかり安堵した。
[受け継がれる夢と理想]
と、バーンズたち聖龍HEADと新世代型二次元人達が談話していると。
話していたバーンズの視界に、力なくトボトボと歩く小田原修司の姿が入ってきた。
力なく歩く修司は、そのまま船体の物陰へと消えていく。
そんな修司を見て、バーンズは気にしたのか修司の方へと歩き出した。
近付いてみると、物陰に消えていった修司は物陰に設置されてたベンチの上に腰掛けては独り座り込んで考え込む様子だった。
力なく座り込む修司を見て、バーンズは修司に歩み寄り自然と彼の隣へと腰を下ろす。
「どうした、相棒?」
「……色々とヘマした俺を、まだ相棒と呼んでくれるのか」
「まあ、聖龍隊結成前からの腐れ縁には違いないからな」
そう他愛もない会話をしながら、バーンズは修司を気にかける。
「なにをまた考え込んでる? 確かに問題はまだまだ山積みだが、もうお前はゆっくり休んでも良いんだ。あとの夢、理想はオレたち後期の者たちに任せてくれよ」
すると修司は暗鬱な表情で前を向いたままバーンズと話し始めた。
「……俺って、やっぱり昔から欠陥人間のままだよな」
「なにを急に言いやがる?」バーンズは思わず微笑する。
「……俺は、お前達に……特にアッコのお陰で変わる事ができた。そんな俺は、自分でも何かを変えられると思い始めた。二次元人が俺と言う三次元人を変えてくれた様に……だからこそ、俺は世界をよりよく変える為に色んな事に手を染めた。アメリカで現地ヒーローの教えを習得したり、軍に入隊して様々な知識や武術を知った……挙句の果てには人体実験の被験者に志望してD-ワクチンを投与されて強大なパワーを手に入れた。だが、俺はそれだけでは物足りず……いや、この腐り切った世界を変える為に国家や組織、権力者たちの秘密を握って【コレクション・シークレット】なるものを創り出し、それをネタに世界中を脅して自分や聖龍隊の権力を強め、保持してきた。全ては世界を変える為に……」
「……だが、それはあくまで私利私欲の為じゃなかっただろ。お前がオレたち二次元人の権限を、未来を守る為に……そして何より、世界中の人々の為に明るい未来を、いや社会を創る為に手を染めて来た事だろ。オレやアッコ、今や聖龍隊の誰もが知ってるんだ。気に病むなとは言えないが、もう必要以上に苦しむ必要はないんだよ」
「……だが、俺は自分や聖龍隊の権限を強化した上に保持する為にしてきた事は、決して正しい事ばかりではなかった、それは事実だ。そんな状況なのに、俺はそんな環境下の聖龍隊をお前やアッコ達に押し付けて聖龍隊を去ってしまった……」
「……修司……」
「しかも、俺は自分自身を世界を浄化する為に汚れ仕事をして穢れていく雑巾の様な存在だと認識してた。俺の様な危険で汚い人間はいつか世界から消えるべきだと……」
「………………」
「……そんな心境の中で、聖龍隊を去った俺は世界を陰ながら見てきた。やはり世界は美しくも醜いままだった、俺がいくら戦ってきたとしても……」
「………………」
「そんな時だった、俺の穢れ切った遺伝子を基に美しい存在である筈の二次元人が生み出された事を知ったのは。俺は焦った、破壊と混沌しか生み出さない俺の遺伝子から、美しい二次元人たちが生み出される現実に深く絶望した……! そしていくら現実に抗って、黒武士に成り下がって、現実を真っ白に塗り潰そうとしても……俺が残せたのは、結局中途半端に変わっちまった二次元人の現状と新世代型二次元人達の存在だけだった」
「………………」
「俺は結局、何もかも中途半端で終わらせるしか出来ない欠陥品なんだ……」
現実に絶望し、その現実を変えようとしても最終的に残ったのは中途半端で変わり終わってしまった現実だけ。そんな無常な事実を暗く語る修司の重たい言葉に、バーンズは息を呑む。
「……確かに、お前が今までやって来た事は全部中途半端に終わったままだ。二次元人などの立場の弱い者の権限も、全ての心ある者の未来も、それを取り巻く社会も……結局、コレクション・シークレットなどの秘密や強大な軍事力を持っていても中途半端に変わっただけで、お前のやって来た事は終わっちまった」
「………………」
「……でもな、前にも言った筈だ。何もお前の代で、お前だけで夢や理想を叶える必要はないんだ。確かにその夢が個人個人の、一人の夢だったらそれはそいつの、個人が叶えるべき夢だ。だが、お前が抱いた夢や理想は、決してお前だけで叶えられる代物じゃない。それこそ、何世代いや何年もかけてこそ実現できる理想そのものなんだ。修司、お前は自分だけで夢や理想を叶える必要はないんだ。オレ達も、聖龍隊の仲間も……お前が夢見た理想を実現できるまで頑張る。それだけは忘れないでくれ」
「バーンズ……」
腹心の友であるバーンズの言葉に、俯いてた修司は顔を上げ始めた。
すると其処にバーンズ以外の聖龍HEADや新世代型二次元人達もやって来た。
「なにも、その夢や理想を叶えるのは聖龍隊だけじゃありませんよ!」
「「っ!」」
修司とバーンズが顔を向けると、其処には毅然とした面魂の新世代型二次元人達の姿が。
「お前ら……」
修司が呟くと、最初の第一声を放った真鍋義久が修司に言った。
「俺たち新世代型二次元人だって、あんたの理想とやらを実現できるって事、証明してやるからよ!」
「………………」
唖然とする修司に、今度は鬼龍院皐月が告げた。
「我々は誇り高き、小田原修司のクローン、新世代型二次元人! この体の中に脈々と流れる鬼の血筋にも引けを取らない意志の強さで、誰もが平等に生きていける未来を実現してみせましょう!!」
すると今度は斉木楠雄が親友である燃堂力と共に発言した。
「確かに僕ら一人一人の力は弱いです、そんな僕らにできる事は少ないでしょう……それでも、僕らは聖龍隊が信じてきた小田原修司の理想をいつの日か実現できる様に協力したいんです!」
「お、俺もバカだけど……それでも、みんなと協力し合って、未来を明るくしていきたいっす!」
「お、お前ら……!」
新世代型二次元人達の告白に、修司は涙目となる。
「こんな俺が抱いた、荒唐無稽な理想を、共に叶えてくれるというのか……? 誰もが平等に、そして平穏に生きていける世界を、俺に代わって築いてくれるというのか?」
すると涙目の修司に向かって、琴浦春香が笑顔で明言した。
「当たり前ですよ! なんせ、私達は貴方のクローン……新世代型二次元人なんですから!」
クローンという自分達の出生をも受け入れ、今では仲間と共に未来を創造するという決意を示し合わせた新世代型二次元人達を前に、修司は自然と心が熱せられ、感動するのであった。
大きな夢や理想ほど、一人だけの力だけでは叶えられる筈は無い。
だからこそ、それこそ何世代にも渡って、いや時代を超えて夢や理想を受け継がせて、未来を築いていくのが大事なのではないだろうか。
[未来と命]
自分のクローンである新世代型二次元人達から、修司の夢と理想を叶える協力をするという決意を聞いて、修司本人が感動していると。
「これで、少しはみんなマシにアニメタウンに帰れるかな」
「いいえ、まだこれで終わりじゃないわ。アニメタウンは国連から離脱し、修司くんの処遇についても帰ってから検討しなきゃいけないし……正直、アニメタウンに帰国してからが一番やるべき仕事が多いわよ」
聖龍HEADの堂本海斗が修司と新世代型達の和解を前にして安堵する中、同じHEADの冥王せつなが帰国後に自分達がやるべき職務が多々ある事を告げる。
「みんなで未来を築いて、創っていくなんて大きな夢……確かに最初は突拍子も無かったけど、今じゃ此処にいるみんなが協力すれば必ずいつか叶えられるって思えるよ!」
「そうですね。二次元人も三次元人も、みんな平等に……そして平和に過ごせる時代が訪れると、私も信じたいです!」
「これから先、どんな事が起こるか全然わからないけど……それでも、みんなで手に手を取り合って生きていける未来が来るって信じたい!」
HEADの月野うさぎに続き、同じくHEADの森谷りりかに木之本桜も未来を信じたい心情を明かす。
「だけど世論はこれから厳しく言及して来そうで怖いよ……クローン技術で生み出された新世代型二次元人を世間は受け入れてくれるかどうか……」
天を仰ぐように顔を空に向けるジュニアの言葉に、その場の誰もが息を呑んだ。クローン技術を用いて生み出された新世代型二次元人を今後世界は受け入れてくれるのか。
そんな疑問に皆が何とも言えない面差しを浮かべていると、バーンズが言った。
「大丈夫さ。なんかあったら、そん時こそオレたち聖龍隊が力になる。それ以前に、前にも言ったかもしれないが、生まれてきた命に罪はない。みんな揃って堂々と生きていけばいいだけさ」
そんなバーンズの明言に、その場の誰もが表情を明るくさせた。
「そうだな。命そのものの罪なんてない。だからこそ、無限の可能性があるんだ」
「その個々の命と共に、新しい時代に向けて前進しないといけませんね」
地場護と青山雅也は新世代型二次元人という新しい命と共生できる未来を創る意気込みを語り合う。
皆がそれぞれ、新しい命に対しての想いを明かしていくと、意を決したかのように早見ハニーが皆の前で言った。
「……私も、新しい命を受け止め、背負っていくわ! 未来に向けて、この子の為にも明るい未来を築いていかなきゃ!」
「あ、新しい子って……?」
早見ハニーの台詞にバーンズや修司そしてジュニアたちがポカンとしていると、ハニーはやや照れ気味で自分のお腹に触れた。
「は、ハニー……まさか……」
そのハニーの言動に、修司が気が付き始めると、ハニーは頬を赤くしてみんなの前で公言した。
「うん、大戦の後の治療を兼ねて精密検査してもらった時に判った事なんだけど……私、妊娠したみたいなの」
このハニーの台詞に、気が付き始めてた修司はもちろん、その場の一同全員が驚愕した。
『え……ええぇっ!?』
全員がハニーが妊娠していた事実に驚き、愕然とした。
「はっ、ハニーさん、妊娠してたの!?」
「ウソでしょ!? 驚いたわ……!」
「お、おめでとうございます……!」
月野うさぎに火野レイそして水野亜美が驚きながらもハニーを祝福する。
するとこの祝うべき報告を、物陰から聞き耳立てて皆の様子を窺ってた村田順一たちスター・コマンドーの面々が駆け付けてきた。
「おめでとうございます! ハニーさん!」「おめでとう!」
「わっ! なんだよお前ら、急に出て来やがって……」
突然姿を現してハニーを祝福する順一と深澤マイたちスター・コマンドーにバーンズが驚いていると、一人修司だけが顔を真っ青にしているのに気付いた。
「ん? 修司さん、顔が真っ青ですけど、どうしたんですか?」
スター・コマンドーの墨村良守が血の気が引いて真っ青になっている修司に訊ねる。
その場の皆が誰も和気藹々とする中、修司だけは大量の冷や汗をかきながら戦慄してた。
「ちょ、ちょっと待てよ……? つまり、ハニーは既に俺と激戦している時には、もう子供を身籠っていたって訳……!?」
「? あ、ああ、そういう事になるな」
バーンズが修司の質問に返答すると、修司は戦慄しながら慌てふためいた。
「それじゃなに!? 俺は大事な大事な母体を……そして胎児を殺そうとしちゃってた訳!?」
完全に常軌を逸して慌てふためく修司は、すぐさま落ち着きを取り戻すと、その場に正座して一瞬で白装束の和服に至ると、脇差を両手で構えて言い切った。
「これはもう……切腹しかない。ジュン、介錯を頼む」「はい!」
すると順一も即座に白装束に変わると、刀を構えて修司の切腹の介錯を務めようとする。
「やめんか! このバカ師弟!!」
即行でバーンズが切腹しようとする修司と、その介錯を務めようとする順一を制止する。
「だ、だってだって……母と子、二つの命が詰まった神秘的な妊婦を殺めようとしちゃったんだもの……これは切腹もんだよ」
「その考え、オレたち全員を殺したお前が言えた義理じゃねえぞ……!」
おどおどする修司の言動と台詞に、バーンズは静かに怒り狂う。
すると此処で修司が堰を切ったかの様に言い放った。
「なにを言う!! 母体とは母と子、二つの命を秘めている神秘的な存在だろうが!! 母体いや妊婦は精密機械よりも丁重に扱わなければならない!!」
「あーー、お前のその考え、政治家にも見習ってほしいもんだぜ」
「あーー、懐かしいね。「女は子供を産む機械」発言した政治家」
修司の台詞に対して呟いたバーンズとジュニアの台詞に皆は唖然としてしまう。
すると仲間であるハニーの妊娠報告を聞いて切腹しようとする修司、そんな混乱する現場でスター・コマンドーの音無小夜が笑顔で言った。
「でも……ハニーさんのお腹の子の為にも、私達で明るく素晴らしい未来を創らないといけませんね」
この小夜の言葉に誰もが賛同するのは当然だった。
「確かにそうだな。ハニーだけでなく、この先も生み出され続ける新世代型二次元人の為にも、誰もが生きやすい社会を築かないといけないな」
このバーンズの台詞に、その場の新世代型二次元人達は驚かされた。
「ちょ、ちょっと待ってください! ……俺たち以外にも……いや、これから先も小田原修司のクローンである新世代型二次元人が生産されるんですか……!?」
瀬名アラタが焦燥の顔で問い掛けると、バーンズは重く険しい表情で答えた。
「……ああ、修司が国連軍から離脱し、更に今回の大戦の処罰でアニメタウンからの出国禁止令が施行された以上、修司に代わる兵力や人材の補給も兼ねて新世代型二次元人は今後も生み出されていくだろう」
『………………』
バーンズが語った事実に、新世代型二次元人達は悲愴にくれ、修司たちも途方に暮れるのだった。
そんな重苦しい空気を切り裂く様に、聖龍HEADのローゼンメイデン真紅が言った。
「例え代用品として生み出されたとしても、それは他の変わり様のない命そのものじゃない! 同じ命ある存在として、共に生きていけばいいだけじゃないの?」
この真紅の言葉に、誰もが驚かされる。
「……フッ、そうだな。焦る必要もない。これから生まれてくる新世代型達とも上手く付き合っていけばいいだけの事。命を拒絶する意味なんてない」
地場護がそう言うと、他の皆々も頷いた。
「その通りだな! これから先、どんな新世代型達が生み出されるか分からないが……そいつ等だって真鍋たちと同じく未来を創造してくれる大切な仲間には違いないんだ! 今から不安がってどうするって話だな!」
バーンズの台詞に周りの皆々は力強く頷き、これから生み出される自分のクローンに対して心配する修司は少しいばかりの安堵を覚えるのだった。
本当の創世、それは皆で手に手を取って創り上げる世界。なのかもしれない。
[託された意志]
聖龍HEADのキューティーハニーこと早見ハニーの出産報告と、これから生み出されるであろう新たな新世代型二次元人達への想いを語り合う皆々。
すると其処に、皆が搭乗する百鬼命儀のヘリポートに一機のヘリコプターが着地し、そこから一人の男性が降りてきた。
「誰だろう……?」
琴浦春香たち新世代型二次元人が不思議がる中、新世代型達は修司たち聖龍隊の面々と共にヘリから降りてきた男性の方へと歩み寄る。
歩み寄ってみると、男性は屈強な体格の軍人の様な身なりで、その胸には「BSAA」と施されていた。
「また会っちまったな………………クリス」
「ああ、お互いに会わない方が平和的だというのにな、バーンズ」
バーンズはその男性と向かい合うと、再会を喜び合う様に互いに握手を交わした。
するとバーンズはそのまま自分の後ろを着いてきた新世代型達に男を紹介した。
「お前らは初見だったな。彼はクリス・レッドフィールド、BSAAの隊長を務めている伝説の兵士だ」
「クリス・レッドフィールド……!」
初めて顔を合わせるクリスを間近で見て、新世代型の真鍋義久は思わずクリスの顔を見上げる。
と、その時。クリスの思想をテレパシーで感じ取った琴浦春香と斉木楠雄の二人が声を挙げる。
「あ! 貴方は……!」「そんな、貴方は……!」
クリスの思想を感じ取り、琴浦春香と斉木楠雄は言葉を失った。
「?」二人の様子に不思議がるクリス。
そんなクリスにバーンズが説明した。
「ああ、この二人は例の新世代型であるが、同時に俺と同じテレパシー使いでもあるんだ」
「ああ、なるほど……それで俺の思考を読み取ったって訳か」
「い、いや、これはその……」
バーンズの説明に納得するクリスに釈明を述べようとする新世代型達。だがクリスは皆に笑顔で話した。
「なに、気にしちゃいなさ。ただ……君たちが例の現政奉還の切っ掛けにもなった新世代型二次元人か」
「そ、それは……」
笑顔のクリスの問い掛けに、新世代型の大宮忍たちは複雑そうな面持ちを浮かべるが、そんな表情を目の当たりにしてクリスは慌てて訂正する。
「い、いや、気にしているんだったな。悪い悪い。確かに君らは世間から余りよく見られてないみたいだが、俺はそんなこと気にしない。むしろ俺は新世代型二次元人に命を救われたんだからな」
「救われたって……!?」
クリスの言葉に新世代型の黒川冷が驚いていると、クリスは持参してきた弔い用の花束を持って船尾に向かいながら語ってくれた。
それは同年である2013年、中国で起きた世界規模のバイオテロでの出来事。
小田原修司から生成・強化されたウイルス事件を追って聖龍HEADの面々もこのバイオテロに参戦。
その道中、ミラーガールはこのバイオテロ鎮圧に取り掛かってたクリスとある一人の青年と合流を果たす。
三人は協力して敵を倒し、事件の鎮圧に専念しながら進攻していたのだが。
しかし敵の海底研究所にて。青年は隊長であるクリスやミラーガールの危機を救う為に自らの体にウィルスを投与、変異してしまう。
辛うじて人間としての自我を残しつつも、次第に人間としての意識が消耗しているのを察していた青年。
そして海底基地から三人は脱出を図ろうと、共に脱出ポッドに乗り込もうとする。
が、もう自分は長く人間としての意思を保てないと悟った青年は、自分を担いで運んでくれたクリスをミラーガールが先に乗り込んだ脱出ポッドに押し込んでから、自力で強引に脱出ポッドを閉じたのだ。
「ピア―ズッ!!」「ピアーズくん!」
クリスとミラーガールは自らを残して、二人だけ脱出ポッドに押し込んだ青年に呼び掛けるが、青年は半分異形の変異した容姿で穏やかな表情を浮かべた。
そして青年は脱出ポッド内で騒ぎ立てるクリスとミラーガールの声を受け入れながらも、脱出ポッドを射出してクリスとミラーガールの二人を脱出させるのだった。
こうして青年は崩壊する研究所と運命を共にして命を落とした。
その青年の名は「ピアーズ・ニヴァンス」若きBSAA隊員であり、奇しくも新世代型二次元人の一人であった。
クリスの口から語られた悲しき過去に、新世代型達は胸が締め付けられ、当事者であるミラーガールこと加賀美あつこは哀しい面持ちに至る。
「……まあ、ピアーズが新世代型二次元人だって知ったのは、あいつが死んだ後だったけどな」
そうどこか悲しく、そして重い口調でクリスは話を締めくくった。
クリスがミラーガールと新世代型二次元人であったピアーズとの昔話を語り終えると、一行は百鬼命義の船尾まで赴いた。
そして最後尾の船尾で、クリスは持参した弔い用の花束を海へと放り投げた。
「ありがとう………………ピアーズ」
全ては自分とミラーガールを、自分の命を投げ打ってまで護ってくれたピアーズ・ニヴァンスへの弔いだった。
ピアーズへの手向けへと、花束を海へと投げ込んだクリスは振り返ると同時にこれからの世の中を生きようとしている新世代型達に真剣な顔付きで述べた。
「ピアーズもそうだったが……君たち新世代型二次元人には未来を創造し、そして受け継ぐ素晴らしい素質が備わっている! どうか未来の為、そして新しい社会の為にも過酷な現実と向き合って懸命に生きてくれッ」
そう熱く述べるクリスの言葉に、新世代型二次元人達の胸は射貫かれた。
するとバーンズも力強くクリスに主張した。
「オレたち聖龍隊だって負けちゃいないぞ! 新世代型を含む、全ての種族が共存できる未来をみんなと共に築き上げていくつもりだ! クリス、オレ達の役割は各々違うが……これからも協力し合っていこうぜ」
そう主張するとバーンズはクリスに手を差し伸べる。クリスは差し伸べられた手を掴み、固く握手すると彼も熱く主張する。
「俺もピアーズから託された思いを、意志を持って前へと突き進む! そう、君らや死んだピアーズの様な新世代型二次元人に負けないよう……!」
クリスとバーンズの結束を前に、クリスの熱い主張を聞いた新世代型二次元人達は改めて自分たち新世代型二次元人が負った役目を深く胸に刻み込んだ。
そんなクリスとバーンズに修司が歩み寄り、言葉を掛けようとすると先にクリスの方が修司に言葉をかける。
「小田原修司……政権から色々と兵器として利用され、それでも世界を変えようとした男。だが新世代型二次元人という自分のクローンの存在を受け入れられず大戦を引き起こした、か……俺でも同情するよ」
クリスの台詞に、修司は真顔で返事した。
「同情は要らないさ、クリス・レッドフィールド。俺は結局、世界を変えようとしたが何も変えられなかった中途半端な男さ。……まあ、今となっては、俺の負の遺伝子を受け継いだ新世代型二次元人たちもそんな半端者に成り下がらない事を祈ってるがな」
『………………』
修司の台詞に、その場の誰もが沈黙する。
と、修司は神妙な顔付きに変わるや否や、クリスの顔を直視しながら彼に告げた。
「……クリス、お前やお前の仲間達が戦う相手は異形のB.O.W.だけじゃない。今は既にアンブレラも壊滅しているとはいえ、ウイルス兵器を用いた紛争やそれを利用・研究する企業や組織は今後も更に増加の一途を辿る事だろう。言っちゃなんだが、お前たちBSAAの骨肉の戦いが終わるのはまだまだ先の話になるだろうよ」
神妙な顔つきで語る修司の話に、クリスや周りの皆々は静まり返るが、これに対してクリスは決意の固い表情で答えた。
「……ああ、覚悟はしてる。だが、俺の……俺たちBSAAのやるべき任務そして戦いは必ずいつか終わらせて見せる! そう、ピアーズが俺を生かしてくれた様に……俺も、これから先多くの命を救う為に戦い続ける……!!」
「……うん、武運を祈る」修司はそう言って、クリスと固い握手を交わし合った。
クリスが修司と互いの健闘を称え合って握手している時だった。
突如クリスの無線から連絡が入ってきた。
「隊長……任務です……」「うむ、今から向かう」
無線からの連絡にクリスは返答すると、足早に百鬼命義のヘリポートに向かい、着陸しているヘリへと飛び乗る。
そしてヘリが離陸し浮上すると、クリスは百鬼命義の船上で自分を見送ってくれている新世代型や修司たちを見下ろしながら心の中で改めて決意する。
(あの子たち新世代型二次元人に負けないよう、俺も戦い続けるからな! ピアーズ……)
今は亡きピアーズ・ニヴァンスから託された意志を胸中に、クリス・レッドフィールドはB.O.W.が蔓延る戦場へと向かうのだった。
だが後にBSAAがB.O.W.を派兵として運用してしまう事態を、この時はクリス本人も知る由も無かった。
[懐かしき故郷]
船上で伝説のBSAA隊長クリス・レッドフィールドと対面を果たした新世代型二次元人たち。
一同はクリスの口から、彼とミラーガールを救ってくれた自分達と同じ新世代型二次元人ピアーズ・ニヴァンスの存在を知る。
ピアーズから託された意志を胸中に、今日もまた悍ましいB.O.W.が蔓延る戦場へと向かうクリスを見送くり、新世代型達は何を思うのか。
そして皆が搭乗している百鬼命義が海上を突き進んでいくと、前方に懐かしい情景が飛び込んできた。
「か……帰ってきた!」「やっと……やっと、帰ってこられたんだ!」
プロト世代のギュービッドとチョコは目を輝かせて歓喜する。
『アニメタウンに……帰って来たぞーーーーっ!!』
新世代型二次元人たちはここぞとばかりに歓喜し、叫んだ。自分たち二次元人の故郷であるアニメタウンにやっと帰国できたのだから。
そんな大騒ぎで喜び合う新世代型達を前に、一人複雑な心境でアニメタウンへと視線を向けて様々な想いに駆り立てられる小田原修司。
様々な問題を起こし、どんな顔でアニメタウンに足を着ければいいか思い悩んでいると、そんな修司にアッコが歩み寄り優しく声をかける。
「大丈夫っ」
気兼ねなく声をかけたアッコの優しさに修司は少しばかり微笑んだ。
そして船はアニメタウンに寄港すると、最初に聖龍HEADの面々が船から降りる。
「みんなっ、お帰りなさい!」
「無事に帰ってこられたようね! 何より何より」
帰国した聖龍HEADの面々を、桜田ジュンや七海にこらたち親族が温かく出迎える。
「お帰りなさいませ、皆さん。長きに渡る戦いの日々、ご苦労様でした」
すると聖龍HEADに続いて、その他の聖龍隊の隊士達も港に降り立ち、各々が親族や親友達と再会を果たして和み合う。
と、そんな親族達の中には、現アニメタウン市長に就任しているジュニアの実父で修司の従者であるウッズ・J・プラントも居た。
そんな和気藹々と帰国した聖龍HEADの面々に群がる親族達を目の当たりにし、まだ降り立ってない新世代型達は戸惑ってた。自分たち異質な新世代型二次元人をアニメタウンの、聖龍隊の親族達は受け入れてくれるのか不安だった。
すると、そんな感じで戸惑ってる新世代型達に気付いてバーンズが呼びかける。
「お前らも降りてこいよ! いつまでも船内に居たんじゃ、他の連中も降りてこられないだろう」
そうバーンズに呼び掛けられて、恐る恐る船を降りて港に降り立った新世代型達。すると、そんな皆を一人の女性が出迎える。
「………………」「あ、あの……」
神妙な面持ちで新世代型達を見詰める女性に、新世代型の一条蛍が返事しようとすると。
女性は目の前に立っていた琴浦春香を力いっぱい抱き締めた。
「っ!?」
突然の女性の行動に、琴浦春香はもちろん他の新世代型達も驚かされる。
すると女性は涙を流しながら琴浦春香に言葉をかける。
「かわいそうに……辛かったでしょう」「……!」
女性からの嘘偽りのない優しさを感じ取り、琴浦春香は驚かされた。
そしてこの時、テレパシー使いである琴浦春香と斉木楠雄は女性の心理を瞬時に理解して彼女が何者なのかを察した。
「あ、貴女は……!」
琴浦春香は自分を抱き締める女性の心を知り、彼女が体験した悲痛な過去に涙した。
「あの人が……第一子である女児が未熟児で死亡した事で、第二子のアッコさんを手厚く可愛がったと言われる、アッコさんのお母さん……加賀美恭子さん」
斉木のこの説明を聞いて、新世代型達は愕然とした。以前より小田原修司が執筆した小説で知り得ていたが、アッコの母は第一子を初産で亡くし、その後無事に産んだアッコを夫共々手厚く大事に育んだという。
そんな子煩悩ゆえに、誰よりも子供の心情を察してあげられる加賀美恭子の抱擁を琴浦春香が感じていると、そこに娘であるアッコ本人が歩み寄って来て母に挨拶を述べる。
「ふふ、ただいま、ママ」「アッコ! もうっ、今回も心配したんだからね」
娘アッコの元気な姿に、母である恭子は琴浦春香から離れて即行で娘アッコにしがみ付く様に抱き着く。
アッコの方も母親との再会に喜び、それを体現するかのように母を思いっきり抱き締める。
「アッコ……!」「パパ……!」
母に続いて父である健一郎もアッコと熱い抱擁を交わし合う。
両親からの絶え間ない愛情を注がれたアッコは、その愛情を注いでくれた両親との再会に、双方ともに喜び合った。
「門脇さん、確か修司様と戦った際、右腕が吸収されたと聞いていますが……」
「ああ、それなら……ミラーガールの聖なる甦りの力で、修司さんに吸収されて消滅した右腕も元通りに再生されたから大丈夫ですよ」
ウッズと門脇将人の何気ない会話、そして無事に帰国した皆々を出迎える親族達の和やかなお喋りが飛び交う中、船内から現れた一人の人物に気付いて皆は一斉に沈黙した。
その人物、小田原修司は船内から静かに、そして一歩ずつ歩み出て沈黙する皆の前に降り立った。
すると、そんな修司の前に現アニメタウン市長のウッズが歩み寄り、言葉をかける。
「お帰りなさいませ……修司様」
そう言うとウッズは深々と修司に対してお辞儀した。
次の瞬間、帰国した皆を出迎える親族達の顔も穏やかになり、誰もが修司も皆と同等に出迎えてくれたのだ。
「修司くん……よく頑張ったわね。辛かったでしょう」
「………………」
加賀美恭子からの労いの言葉に、修司は何と返せばいいか分からず黙り込んでしまう。
そんな修司の心境を察してか、加賀美恭子は優しく修司に話し掛け続ける。
「もう大丈夫よ。これからはゆっくり休んでちょうだいね」
「………………!」
加賀美恭子からの優しい思いに、修司は一驚した。
しかし、其処に般若の形相で修司に言い寄るアッコの父・健一郎が迫る。
「お、お前……! 生き返ったから良かったものの、よくもアッコを殺したな……!」
「ッ!」
般若の形相で言い寄る健一郎に、修司は思わず背筋を伸ばした。
だが、そんな夫である健一郎の後頭部を妻である恭子が叩いてツッコむ。
「もうっ、パパったら! みんな生き返れたんだし、結果OKじゃないの! それ以上言うのは野暮ってもんよ」
「で、でもでも……! いくら苦しかったとはいえアッコを殺したんだぞ……いや、それ以前にアッコと婚約交わした時点で、もう許せない……」
「パパ!!」
妻の恭子にツッコまれて泣きじゃくる健一郎は、どうやら修司の横暴よりも彼が愛娘であるアッコと婚約を交わした事そのものが許せないらしい。そんな父にアッコは呆れてしまう。
そんな健一郎を尻目に、加賀美恭子は笑顔で修司に提案する。
「もう、パパったら。修司くん、気にしなくていいからね。パパはアッコをあなたに取られたからって駄々こねてるだけだから。それよりも! アッコと婚約したんだし、結婚は何時にするの? 子供は、そうね………………10人は欲しいわね」
「ごめんなさい、俺そこまで精力ありませんッ」
「「生々しいよッ!!」」
恭子から欲しいアッコと修司の子つまり自分達の孫の数を望まれ、それに対して土下座で謝り倒す修司の二人を前に、バーンズとジュニアが目玉が飛び出るほどの勢いでツッコむ。
「お前なあ! 精力あるとかないとか、話題が生々しいんだよ!」
「だってだって、俺年々体力とか衰えてるし、何よりプレッシャーに弱いし……」
修司の首根っこを掴んで言い寄るバーンズに、修司は涙ながらに告白する。
[故郷への帰還]
ようやく故郷であるアニメタウンに帰国したHEADたち聖龍隊だけでなく、今回の大戦に一役買った小田原修司をも温かく出迎えてくれたウッズ市長たち聖龍隊の親族達。
そんな親族に皆と同等に暖かく出迎えられた新世代型二次元人達は、まるで子供の様にはしゃぐ修司やHEAD達を前に穏やかな気分に浸っていた。
するとその時、なんと新世代型達以外の時間が止まり、新世代型達だけが停止した時間の中に取り残されるといいう現象が起きた。
「こ、これって……!?」
新世代型の真鍋義久たちが激しく動揺する中、停止した時空間の中に瞬間移動して新世代型達の前にあの人物が出現したのだ。
「え……Sパル……!?」
新世代型達の目の前に現れたのは、自分達と同じ新世代型二次元人にして完璧な小田原修司のクローンとして生み出され、そして何よりも全ての世界を監視する「総監視者」の役職に就いている、金髪青眼の新世代型二次元人Sパルだった。
現れたSパルは時が止まった現状を説明しながら新世代型達と対話を始める。
「驚かせてしまって済まない。君たちと直接、そして新世代型以外の種族に干渉されないように、私の力で時間を止めた次第だ。なに、話が終わり、私が消えれば時間は元通りに流れるから安心してくれ」
「そ、そうか……それにしてもSパル、なんでお前が……俺達に話って……」
突如現れたSパルに真鍋義久たち新世代型が動揺してると、Sパルは語り始めた。
「話というのはだ……君たちに頼みがあるからだ」
「頼み……?」新世代型の月影ちありが反応する。
「そうだ……君たちには私に代わって世界を……異世界を含む多くの世界を導いてほしい」
「え!」新世代型の神原秋人たちは驚いた。
「驚くのも無理はない。だが、本来の新世代型二次元人は未来を創造し、人々を先導するのが役目。私の様に全ての世界を監視する為ではない。だが、私の様な監視者が居なくなれば、世界はそれこそ多くのテロや犯罪が蔓延る無秩序な世界へと変貌してしまうだろう。総監視者である私に出来ない使命を、君たち自由な新世代型達に委ねたいのだ」
「そ、そうは言っても……」瀬名アラタたち新世代型が戸惑う中、Sパルは語り続ける。
「私は私で、この世界を監視空間から見張っている。だから君たちも、それぞれでこの世界がどの様に動き、そして変わっていくか自分なりに見てくれれば良い。そして世界をよりより方向へと導いてほしいんだ。私の様に、孤独の中で世界を見張る必要はないんだ……」
『………………』
特別な監視空間という異空間の中で、誰からの接触もされずに永久的に孤独の中で全ての世界を監視し続ける役職を負わされたSパルからの嘆願に、新世代型達は悲愴感に苛まれる。
「なに、私は大丈夫だ。君らという、次代を築く同胞の新世代型二次元人達がいてくれる以上、私は私の役職に責任をもって果たす所存だ。君たちは我々新世代型二次元人を受け入れてくれた世界がどの様に変わり、そしてどうすれば正しい未来へと導けるのか自分なりに答えを出してくれればいい」
そう言うとSパルは新世代型達に背中を向けて、立ち去る間際に皆に言い残した。
「時代を追うな、夢を追ってほしい」
そう新世代型達に言い残すと、Sパルは姿を消して自分が居るべき監視空間へと帰っていった。それと同時に止まってた時間も流れ出し、新世代型達とSパルだけの会話は終わったのだった。
「Sパル……」
真鍋義久たち新世代型二次元人は、穏やかな気持ちで現実世界から立ち去って自分が居るべき監視世界へと戻っていくのを目の当たりにして、自分達も気持ちが穏やかになるのを感じる。
「そもそもお前という奴は……!」「もうごめんとしか言いようがないぃ……」
Sパルが監視世界に帰還した途端に正常に戻った時間の流れの中で、バーンズが涙ながらに自分の行いに後悔する修司の首根っこを掴み上げている真っ最中だった。
そんなバーンズと修司を囲む様に、周りの人々が平和で穏やかな時の中を過ごしているのを目の当たりにし、新世代型達は心の中で決意する。
(Sパル、見ててくれ。俺たちは俺たちで、この世界を正しい世界に……修司さんが掲げた理想が実現できる世界へと導き、創ってみせる……!)
そう真鍋義久たち新世代型二次元人は心の奥で決意するのであった。
そんな新世代型達を横目で視認したバーンズは、新世代型達を呼びつける。
「おっ、そうだ……お前ら、ちょいとこっち来いよ」
バーンズに呼ばれて彼と修司の許へと歩み寄る新世代型達。
するとバーンズは今まで掴み上げていた修司の首根っこを放し、歩み寄ってきた新世代型達と修司を対面させて言った。
「それじゃ、みんなが観ている前で! 修司、我が子と言うべき新世代型二次元人と仲直りだ!」
バーンズから改めて和解をするよう求められた修司と新世代型達はかなり戸惑ってしまう。
「そ、その……なんと言うか、その………………ごめんなさい」
「い、いえ……その……」
平謝りする修司に対して、新世代型達はどう対応すべきか困惑してた。
と、その時。酷く戸惑う新世代型達の中から鬼龍院皐月が声を挙げる。
「我々はもう大丈夫です! 今後は共に全ての種族の共存共栄の理想が実現できる未来を創りましょう! 兄上!」
「兄上!?」皐月が言い放った「兄上」という言葉に過敏に反応する修司。
するとそんな修司を前にして、皐月は平然と真顔で問い掛ける。
「兄上で抵抗があるのでしたら……父上と呼んだ方がいいでしょうか?」
「父上ーーッ!?」皐月の発言に修司は更に困惑する。
すると修司は思わず両手で目を押さえながら泣き出した。
「こ……こんなイイ子の兄やら父親なんて申し訳ない……ッ!」
この修司の言動に呆れて、またもバーンズが修司の首根っこを掴み上げる。
「テメェはそんなイイ子たちを絶望のどん底に叩き落した挙句、皆殺しにしようとしてたんだぞ……!」
最早完全にバーンズに言い負かされる修司。
そんな二人を宥めながら、アッコが皆の前で語り出す。
「まあまあ、二人とも。もう良いじゃないの。私達はこれから、新世代型だろうと誰であろうと平等に生きていける未来を創っていけばいいじゃないのよ」
これにバーンズも修司の首根っこを放して真顔で言った。
「まあ、そうだな。本当の創世、それは皆で手に手を取って創り上げる世界の事だと、オレもこの現政奉還で学んだしな」
このバーンズとアッコの話を聞いて、修司も真顔で俯きながら呟き出す。
「……それもそうかもな。俺も悪い意味で妄信してた。大人になれば何でもできる、なんでも叶えられる……そう思ってた子供時代があった。でも大人になっても叶えられない事、そして簡単に理想や夢が実現できない現実を目の当たりにした。大人になるってなんだろうか……それを常に思ってたよ」
修司の悲愴溢れる言動に、アッコは敢えて笑顔で話し掛けた。
「でも修司、大人になるって事は、それだけ色んな事を学べて、色んな経験ができたって事でもあるじゃないの。その経験を生かして、大人は子供に沢山の事を教えてあげればいいのよ」
そして最後にアッコは修司に言った。
「大人は、親ってのは……子供を信じて、温かく見守ってあげなきゃね」
このアッコの言葉に、修司は感銘を受けて唖然とした。
「そうか……親はただ、子供を…………我が子を信じてやれば良かったんだな」
そう思う修司は、自然と自分のクローンであり我が子ともいうべき新世代型二次元人へと顔を向けて彼らを見詰めるのだった。
と、その時。アッコが何かを思い出したかのように言った。
「あっ、そうだ! 忘れてたわ」「ん? 何を忘れてたんだ、アッコ?」
バーンズが訊ねると、アッコは笑顔で修司へと顔を向けた。
「修司!」「?」
アッコからの呼び掛けに、修司が不思議そうな顔を浮かべるとアッコは満面の笑顔で言った。
「お帰りなさい」「……!」
アッコの「お帰りなさい」の一言に、修司は衝撃を受ける。
それと同時に修司はアッコだけでなく、聖龍隊や新世代型二次元人そして聖龍隊の親族達からも温かく迎え入れられてる現状を目の当たりにして、自然と目頭が熱くなる。
「ああ……! ただいま……」
思わず熱くなった目頭から涙を流す修司の顔は、自然と笑みが零れたのだった。
それは古の王国・邪馬台国に英雄神スサノオが帰還したかのように、温かい情景だったという。
[ED:SCANDAL Runners High ]
ため息ばかりついて 過ぎていく 毎日に
「答え」のない問いかけを繰り返して
立ち止まって うつむく日もあるけど
瞼を閉じて光るシグナルはいつも
「マエニ ススメ キミハ」
そんなもんかよ
「ニゲチャ ダメダ」
走り続けよう
限界だって 決めつけちゃったら
終わりを告げるブザーがなるんだ
僕を笑うかのように
この坂をのぼって見える景色が
ゴールテープでスタートラインさ
未来が待ってる
不安は予感もなく心を弱らせてく
飛べてたはずの跳び箱も怖くなって
いつのまにか こんなに 列の後ろ
誰かの飛ぶ姿眺めているよ
「キミハ ソレデ イイノ」
ちょっと待ってよ
「マダ マニアウ」
動き出す気持ち
憧れたって 望んでたって
辿り着けないこともあるんだ
そう 誰もが知ってる
でも だからと言ってもがいていなきゃ
きっと何も変わりゃしないんだ
自分を信じて
誰かのせいにしないように
後悔したりしないように
最後に笑えるように 行こう
限界だって 決めつけちゃったら
終わりを告げるブザーがなるんだ
僕を笑うかのように
この坂をのぼって見える景色が
ゴールテープでスタートラインさ
自分を信じて
未来が待ってる