聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[剣帝からの恩赦]
それはアニメタウンへ帰国してから数日後の事。
学業に励む者たちは皆揃って冬休みに入っていた。
そんな冬休みを満喫している新世代型二次元人達に、聖龍隊はアジア巡行や大戦での疲労を少しでも緩和してほしくてクリスマスに新世代型二次元人と共にパーティーを開く事にした。
クリスマス当日、各々が厚着で聖龍隊基地にお邪魔してバーンズやジュニアたちに出迎えられる。
「メリークリスマス! お前らっ、元気にしてたか!」
「げ、元気にしてたって……アニメタウンに帰国してから、そんなに経ってないじゃないですか……」
やたらとハイテンションなバーンズに、新世代型の真鍋義久は戸惑ってしまう。
「みんなよく来てくれたね! 中には都会から離れた所から遠路遥々来てくれて、嬉しいよ」
「だって、また聖龍隊の皆さんに逢いたかったんだもの」
ジュニアの言葉に新世代型の一条蛍たちが笑顔で答える。
すると新世代型の皆が集まったところで、トナカイに扮した人物に曳かれたソリに乗ってアッコたち聖龍隊の女性陣がやって来た。
「メリークリスマス、みんなーーっ!」
「うひょーーっ! アッコさんのミニスカサンタだ!」
「生足眩しーー!」「眼福眼福♡」
ミニスカサンタのコスプレでやって来たアッコを目の当たりにして、彼女の美脚に見惚れてしまう真鍋義久たち新世代型の男子たち。
『………………………………』
そんな色目で興奮する男子たちを前にして呆れて言葉を失くす女子達。
するとミニスカサンタコスプレのアッコに群がる男子達の一人、真鍋義久がソリを引っ張ってきたトナカイ姿の人物に気付いた。
「何してるんすか…………修司さん」
真鍋の発言にアッコに群がってた男子達は動きを止め、トナカイ姿に扮している修司を凝視する。
「先の大戦とかの責任というか、アッコに言われたのもあって……トナカイに扮してるんだよ」
トナカイ姿の修司の言動に新世代型達は全員唖然としていると、修司が先ほどまでミニスカサンタのアッコに群がってた男子達に告げた。
「いいか、お前達も将来、俺みたいになるぞ」
「それって! 彼女ができたら彼女の言いなりになるって事か!?」
修司のボケに真鍋義久は目玉が飛び出るほどツッコむ。
と、聖龍隊や新世代型達で和気藹々と騒いでいた時だった。
「! ……雪だ」
なんと、ふわりと粉雪が舞い降りてきたのだ。
「この温暖化のご時世に雪とは……」
修司は温暖化で中々雪が降らない現代で、クリスマスに粉雪が降る事態に驚きつつも淡く穏やかな感情に浸った。
それから聖龍隊と新世代型たちのクリスマス会は夜遅くまで続いたという。
そして2014年の新年。
学業に励む新世代型二次元人たちは通常通りに各々の学校へと登校した。
そして学校内で。
「……はぁ~~……」
「どうしたんだ琴浦? 溜息なんかついて」
深く溜息をつく琴浦春香に真鍋義久が訊ねると、琴浦春香は答えた。
「いや、なんかね……この前までの出来事が全部夢みたいだなって思えて来ちゃって……もう色んな事が起きてた日々から、いつもの日常が戻ってきても余り実感が沸かなくて……」
「ああ、確かにな。この前まで俺たち、新世代型二次元人としてタイのバイオハザードに巻き込まれたのを皮切りに、アジア各地の武将達と交流して……挙句の果てに俺ら新世代型が、あの小田原修司のクローンだって知らされて……終いには始祖である小田原修司との激戦に巻き込まれたりして。ホントについ昨日の事の様に思い出しちまうよ」
琴浦春香と真鍋義久は、つい先日まで自分たち新世代型に起きてた出来事が夢の様に感じられる境地に呆然としてしまう。
と、琴浦春香と真鍋義久の二人がお喋りしていた時。
「た、大変よ!」「大変です! 琴浦さん、真鍋くん!」
「な、なんだなんだ!? まさか、また乱世が戻ったなんて事ないよな!?」
突然教室に飛び込んできた御舟百合子と室戸大智の二人を目撃し、真鍋義久は慌てふためく。
すると室戸大智がそんな混乱する真鍋義久を宥めながら語り出す。
「ち、違うよ真鍋くん……実はさっき、僕と御舟さんは突然校長室に呼び出されたんだけど……そこで校長先生から直々に、僕たちが活動してたESP研究会の活動再開の許可が降りたんだよ!」
「え! お、俺たちが活動してた、あの事件で廃部になったESP研究会の活動再開が許されたのか……!?」
室戸大智の説明に驚きを隠せない真鍋義久に、御舟百合子が涙ながらに話を続ける。
「そうなのよ! しかも校長先生のお墨付きだから、安心して活動を続けられるわ」
「よ、良かった……!」
感激する御舟百合子の言葉に、琴浦春香も涙目になる。
と、其処に。なんと教室の窓ガラスをぶち破ってプロト世代のギュービッドとチョコと桃花・ブロッサムが突っ込んできた。
「わッ! ぎ、ギュービッド!? それにチョコと桃花まで!」
教室の窓ガラスをぶち破って突入してきた三人を目の当たりにし、真鍋義久は目を見開いて驚愕する。
「ま、真鍋! それに他のみんなも! 聞いておくれよ……!」
「ぎ、ギュービッド様、嬉しいからって他所の学校の窓ガラスを破らなくても……」
「先輩、はしゃぎ過ぎですって……」
涙目で興奮するギュービッドを、チョコと桃花が呆れながら宥める。
そんな騒がしい状況の中で、ギュービッドは涙ながらに強引に話し出した。
「あ、アタイの師匠で初恋の相手だったエクソノーム様が、エクソノーム様が………………なんだか分かんないけど、恩赦って事で釈放されたんだ! またいつでも会えるんだ!!」
「え、エクソノームって、確かギュービッドの初恋の相手で、罪を犯した事で投獄されたっていう?」
大泣きするギュービッドの話を聞いて、真鍋義久は指をさして指摘する。
「なんだか分かんないけど、良かった良かったよ~~……っ!」
嬉しさの余り号泣するギュービッドに若干引きながらも、彼女の初恋の相手が自由になった事に琴浦春香達も素直に喜んだ。
そのころ、琴浦春香や真鍋義久達が通学している学校の校長室では。
「校長、なんでまた問題を起こしたESP研究会の活動を許したんですか……?」
「仕方ないだろ、教育委員会からのお達しだ。言われた通りにしなきゃ、教師生命が絶たれるかもしれん……」
一方、教育委員会では。
「委員長、なんでまたあの学校にお達しを……?」
「教育省からの勅令だ。従わない訳にはいかないだろ」
教育省では。
「でも、なんでまた……国連から指示があったんだ?」
そして国連本部では。
「国連総長、各方面への我々国連からの勅令、無事に完遂されたとの事です」
「うむ! そうか! 大義であった」
そう元気よく返事する国連総長・足正義輝は溌溂とした顔で各方面への国連いや国連総長からの恩赦が果たされている現状に満足してた。
「同胞達よ! 新たな時代を築く為にも、その翼を羽ばたかせるがよい!!」
足正義輝は、此度の現政奉還で被害を被った面々へ恩赦を与え、自由に次代を創世できるよう取り計らったのである。
[裁きの鬼、再始動]
現政奉還が幕を閉じ、それから幾日かが経った頃。
アニメタウンに押し込められ、出国が認められない小田原修司は一人テレビのニュースを険しい神妙な面持ちで睨み付ける様に視聴していた。
「今回、新たにアニメタウンと同盟を結んだ異世界。そこで暗躍してた七人の大罪者達について聖龍隊は本格的に調査に踏み込むとの事であり……」
「三次元政府からも凶悪な
「DJ・ピーコックでーーす! なんと、あの怪盗ジョーカーとその相棒のハチが、またまた大胆不敵な予告状を……」
世界が新たなる新世代型二次元人を生産し続けた結果、新しく発見された異世界も増え、聖龍隊や国連が異世界に向けて進出。
そして生み出されていく新世代型二次元人の中には、当然ながら善人ばかりとは言えず、悪人も存在。
新世代型二次元人が生み出される一方、増加の一途を辿り続ける世界。
この現状を認識し、修司は多くの善人が苦しむ事が明白な未来が待ち受けている現実に直面する。
自分の負の遺伝子を受け継いだ新世代型二次元人による犯罪増加に、修司は心を痛めてた。
そして修司は……鬼は再び目覚め、行動に移す。
「……ウッズか。俺だ、修司だ。お前にアニメタウン市長を委ねたが、またお前の力が必要になった」
「やはり来ましたか。薄々勘付いておりました。全て承知の上です、既に修司様が住居にしている邸宅のエレベーターにも、地下へと……そう、新しいデーモン・ハビタットへと直通できるように設計されています。私はもう既にデーモン・ハビタットに居りますので、修司様もご用意ができてましたら此方へと来てください」
「……お前には敵わないな。今すぐ行くよ」
修司がアニメタウン市長に着任させた現市長のウッズからの呼び掛けに答えると、修司はすぐに縦長の長方形の形をした三階建ての邸宅のエレベーターに乗り込む。
エレベーターに乗り込み、普通は使用しない指紋認識装置を作動させて右手の指紋を認証させると、エレベーターは地下深くへと降りて行った。
そしてエレベーターが停止し、修司は降り立つと、駆け足で薄暗い廊下を直進し、デーモン・ハビタットすなわち鬼の住処と呼ばれる秘密基地へと向かう。
そして照明が照らされ、明るくなった広い場所へと修司が辿り着くと、修司はそこで想定していなかった光景を目の当たりにする。
「! ……お前、たち……!」
デーモン・ハビタットに居たのは、現市長に就任しても尚修司の補佐として彼を支える意志があるウッズだけでなく、聖龍隊の頭目である聖龍HEADの姿も在ったのだが、彼らならともかく他にも居るべきではない人々も居たのだった。
「お久しぶりです、修司さん」
「な、直枝理樹……? なんでお前達が……」
聖龍隊の軍服を着こなす直枝理樹や井ノ原真人ら【リトルバスターズ!】の面々を前に愕然とする修司。
「修司殿! 我々、新世代型二次元人も決意しました! これから私達は聖龍隊の一員として務めながら、次代を築き上げ、そして貴方の理想を実現するお手伝いをさせてもらいます!」
「さ、皐月……!」
威風堂々と語り明かす鬼龍院皐月たち【キルラキル】の面々を前に、修司は目を丸くする。
「私、実は学園から出るよう親に言われてるんだけど、少しでも修司さんの理想を叶える手伝いがしたくて、バーンズ達に無理言って聖龍隊のサポーターでもあるオペレーターにしてもらったの!」
「きゃ、キャサリン、お前まで……」
笑顔で話すキャサリン・ユースの言葉に、修司は唖然とするばかり。
そんな修司にアッコが微笑みながら話し掛けてきた。
「修司、この子たちはみんな、貴方の理想を一緒になって叶えたいって言ってくれてる素晴らしい子たちなの。確かに最初は危険な任務も多い聖龍隊の役職に就かせるのは抵抗があったんだけど……それでも、この子達の意志を尊重してあげたかったの」
「………………」アッコの台詞に修司は完全に言葉を失くす。
「お……俺も! バカなところがあるけど、斉木やみんなと一緒に聖龍隊のお手伝いしたいんだよ! 修司さん、どうか俺たちも一緒に頑張らせてくれよ」
「燃堂の言う通りです。修司さん、今の時代さらに僕ら以外の新世代型二次元人が生み出され、そしてその新世代型が犯罪を犯していく社会をどうにかして解決しないと! だから貴方の……ジャッジ・ザ・デーモンとしての活動の手伝いを僕らにもさせてください!」
燃堂力や斉木楠雄からの嘆願に呆気に取られていると、そんな修司に人混みをかき分けて一人の女性が名乗り出た。
「私も協力させてもらうわよ! 修司……!」「! モコ……!?」
その場に居合わせたアッコの幼馴染である浪花モコの登場に内心動揺する修司。
「あんたがジャッジ・ザ・デーモンだってのを知った時はかなり驚いたけど……それでも、私の一番の親友であるアッコが信じてるあんたがやっている事を全面的に否定するのも気が引けてね。なあに、私実は既にデザイナー業に就いててね。これから聖龍隊で活躍するヒーロー達の衣装とかは私も考案していくから! 無論、ジャッジ・ザ・デーモンもね!」
「僕も生命戦維で培った知識を生かして、新しい衣装やデーモンスーツの開発に全力を注ぎます!」
デザイナーであるモコに続いて、生命戦維の研究をしてた伊織糸郎も修司への協力は惜しまないと断言。
この新世代型二次元人を中心にした新メンバーを前に、修司は彼らの温情に痛感すると同時に新たな決意が固まった。
「……そうだな。それに、お前達が聖龍隊のメンバーとして俺の側にいてくれるなら……お前達を見張るのには都合がいい」
この修司の新世代型二次元人を危険視してるかのような言動に、新世代型達が驚いているとバーンズが代弁した。
「安心しろ、修司が素直じゃないだけだ。見張るんじゃなく、正確には見守っていられるが正解だ」
バーンズの訂正に、修司は寡黙な面立ちで目前の人混みをかき分けて前進する。
そして前進した先には漆黒の異形の鬼の姿が基になっているジャッジ・ザ・デーモンのデーモンスーツが置かれてた。
修司は無言で、そのデーモンスーツに着替え始め、両足から始まり胴体そして両腕を装着すると最後に顔全体を覆うデーモンのマスクを装着する。
「何だかよく見てみると、案外カッコいいわよね」
「もうっ、キャサリンったら」
前までは怖いなどと言ってたキャサリン・ルースの発言に、隣で立ってた鹿島ユノが無邪気に笑ってしまう。
そして完全にデーモンスーツへと着替え終わった修司は、両腕を前に交差させて手の甲から鋭利な殺傷用の鉤爪が出るのを確認した瞬間あの台詞を口にする。
「ジャッジメント」
完全にジャッジ・ザ・デーモンへと身を変えた修司は、さらに前進して高性能車両ジャッジモービルへと搭乗しようとする。
「修司様、お気を付けて」「うむ」
ウッズからの丁寧なお辞儀に、ジャッジ・ザ・デーモンは返答した。
するとジャッジ・ザ・デーモンは車に搭乗する直前、自分を見送ってくれる新世代型二次元人の一人である新人オペレーターになったばかりのキャサリン・ルースに顔を向けて会話した。
「これから頼むぞ……キャサリン」
「ええ! 任せて、修司……」
「今の俺は修司じゃない……ジャッジ・ザ・デーモンだ。それともう一つ、どうもキャサリンという名は長い気がする」
「へ? そ、そう……?」
「ああ、だから任務中は……キャシーと呼ばせてもらうぞ」
「わ、解ったわ。気を付けてね、ジャッジ・ザ・デーモン」
キャサリンとの会話を終えて、ジャッジ・ザ・デーモンはジャッジモービルへと搭乗して発進させる。
ジャッジ・ザ・デーモンを乗せたジャッジモービルは漆黒の闇で覆われた夜のアニメタウンへと進行する。
そんな夜の犯罪が横行する現状へと進行するジャッジ・ザ・デーモンを見送った皆の一番背後には、一人の初老の女性が立っていた。
「今夜も行ってしまいました。ですが……まさか貴女に気付かないとは」
「それだけあの子が仕事に追われてるって事ですよ」
女性に話し掛けるウッズ。話をする二人に周りの皆々の視線が突き刺さる。
「あの子は本来、優しい子なんです。だから他人が傷付くのを黙って見てられない……だからこそ、ジャッジ・ザ・デーモンへと変わってしまったんでしょう」
「申し訳ありません、私達で止めるどころか逆に後押ししてしまって……」
「良いんです、全てはあの子自身が決めた事……親である私は、静かに黙って見守る事しかできないんです」
「………………」
「では……あの子を、修司を宜しくお願いします」
「はい、出来得る限りの援助はしていきます。なのでどうか少しでも安心してください……和江さん」
ウッズとの会話を終えると、修司の実母である小田原和江はその場から立ち去って行った。
「……いくら愛情が感じにくいからって……」
「ああ、仲違いする必要はないと思うんだけどな……」
「仕方ない。こればかりは当事者の……親子の問題だ。俺たちがしゃしゃり出る事はできないよ」
立ち去っていく小田原和江を見届け、新世代型達は各々思い悩むのであった。
「さてと、これから忙しくなるぞ流子! 私はこれから、新世代型二次元人の権利を護る為の組合を創り、それと同時に聖龍隊と共に人々の平和をも護らなければ!」
「ああ! 一緒に頑張ろうぜ! 姉さん!」
鬼龍院皐月と纏流子の姉妹は互いに腕を組み合って決意を示すのだった。
すると沈黙の中でジャッジ・ザ・デーモンを見送った新世代型二次元人や聖龍HEADに、新しくアニメタウン警察の本部長に就任したウェルズ・J・プラントが言った。
「奴はヒーローじゃない。ヒーローと言う曖昧な正義を振り翳すチンケな存在じゃない。何より正義でもない。沈黙の守護者、俺たちを見張り続ける監視者、闇の制裁、眼を光らせる番人……闇であり制裁である異形の存在…………ジャッジ・ザ・デーモン」
今宵もジャッジ・ザ・デーモンが暗躍する悪を制裁する。
ジャッジ・ザ・デーモンが新世代型二次元人の加盟と協力も認識したその晩の事。
その晩の犯罪を制裁してたジャッジ・ザ・デーモンが基地であるデーモン・ハビタットへと帰還するや否や、ジャッジ・ザ・デーモンが出迎えてくれたウッズに提案を出した。
「お帰りなさいませ、修司様」
「ウッズ、お前に頼みたい事がある」
「はい、なんでしょうか?」
「実は……お前には大変な手間になってしまうんだが、今着ているのも含めて、今までのデーモンスーツとは全く異なるスーツを開発してほしい」
「ほう、それは如何なお考えで?」
「うむ、実は………………俺なりに考えたんだが、俺は自分の子供である新世代型二次元人達には真っ直ぐ、そして正しい道を歩んでほしいと願ってる。だが、その前に俺自身が新世代型の手本にならなければいけない。新世代型に、少しでも間違った道を進んでもらいたくないんだ。だからこそ……今更遅いかもしれないが、今からでもジャッジ・ザ・デーモンでの私刑を緩和させる必要があると見てな」
「そ、それって、つまり……!」
驚愕するウッズに、ジャッジ・ザ・デーモンは言った。
「うむ………………ジャッジ・ザ・デーモンで罪人の命まで刈り取るのは、もうやめだ」
そう言うと、ジャッジ・ザ・デーモンは自ら手の甲から突出させた鉤爪をへし折った。
「ウッズ! これからの装備は全て、不殺様の装備に直してくれ! 新世代型二次元人にも目を見開いて直視できるよう、もう命を奪うのは無しだ!」
「了解しました……!」
ジャッジ・ザ・デーモンからの提案に、ウッズは笑顔で了承するのだった。
この日から、時には犯罪者の命をも奪ってたジャッジ・ザ・デーモンが命を奪う事は無くなったのである。
そして聖龍隊に加盟し、ジャッジ・ザ・デーモンの協力も惜しまないと決意した新世代型二次元人達が正式に聖龍隊に配属されてからしばらく経ったある夜中。
「………………!」「………………!」
完全に目が充血して真っ赤になりながらも不眠不休する伊織糸郎と浪花モコの二人が、真っ赤な目でパソコンと向き合っていた。
「二人とも、いい加減寝たら? もう三日は寝てないでしょ」
同じく新しく聖龍隊に加盟した棗恭介から指摘されても、二人は頑なに首を横へ振る。
「あともうちょっと……あと、もうちょっとなのよ……!」
「チタン化合の三層構造で、どんな繊維よりも柔軟で、重力をも操作できる新型デーモンスーツ……! 完成させるぞ!」
モコと伊織糸郎の新型デーモンスーツの開発への執念は底なしで、棗恭介は思わず呆れてしまうのだった。
新生ジャッジ・ザ・デーモンの活躍に期待せよ!
[与えられた役割と鬼神の一言]
小田原修司が日々増え続ける新世代型二次元人の犯罪増加を抑制する為に、そしてこれからの時代を生き抜く新世代型二次元人達にも堂々と胸を張れるようにと、新たな決意でジャッジ・ザ・デーモンとしての活動を続けようと決意した後日。
「……アニメタウン市長はもちろん、聖龍隊の総長の座も捨てた俺に役職を与えるなんて、どうかしてるぞ」
「文句言うな。お前の現政奉還での罪状を軽くしてやったんだから、少しはオレたち聖龍隊やアニメタウンに貢献してくれよ」
「それで、俺の役職は……聖龍隊の顧問、って訳か。表向きは……」
「ああ、国連から正式にお前はアニメタウン出国禁止を言い渡され、行動範囲も狭まれている。オマケに兼ねてより国連との条例によって、最強戦力であるお前を組織の戦力に表立って組み入れる事ができなくなった。いわば、表向きは完全な隠居状態って訳だ」
「その俺に形だけの顧問を務めさせながら、後任の教育や指導そして訓練までやらせる気かよ」
「表向きはお前を隠居状態にしているのを装い、厳しい戦況下では一般兵として協力させるぞ。いや、それより以前に今は後任である新人達の教育が最優先だ」
「要するに、俺は新人の教育や訓練を任される教官でもある訳か。まあ、いいぞ。俺もずっと自宅で籠りっきりで体を鈍らせるのは嫌だからな」
そう長い廊下を前進しながら、修司と現聖龍隊総長のバーンズ・ウィングダムズ・キングズは話した。
そして長い廊下を進み終えると、そこは広い地下空間に繋がっており、修司とバーンズの目前には聖龍隊の新人である新世代型二次元人達が、特別教官である修司を待っていた。
教官である修司を待機して待っていたのは、聖龍隊の新人たち。【SAO】のキリトにアスナ、そして新たな仲間のシノンにユージオとユウキ。新世代型二次元人では、緑谷出久に爆豪勝己それに轟焦凍と麗日お茶子、サイタマとジェノスそして戦慄のタツマキと地獄のフブキの姉妹。
新たに聖龍隊に加わった新世代型二次元人を含んだ新人達を揃って指導してやろうと、修司は合点やる気が上がった
「よし………………いっちょ、やってやるか」
修司は目の前で特訓されるのを待機する次世代の英雄達を見渡して、意気込みする様に自身の両拳をぶつけ合った。
小田原修司の聖龍隊での新人隊士の特別教官としての激務は始まったばかりである。
修司が表向きは聖龍隊顧問として隠居生活を送ってる傍ら、聖龍隊の新人達を教育する特別教官にも就いてから後日の事。
今日、この日は聖龍隊が中心となって多くの異世界の重鎮達が集う祝賀会が開かれた。
小田原修司や新世代型二次元人達が無事にアニメタウンへと帰国できたことを祝っての祝賀会だ。
「まさか、あれほどの大事を起こした俺もお呼ばれするとは……バニラやミルモ達もどうかしてるぜ」
青く晴れ上がった空を見上げて、修司は清々しい程の顔で言う。
そんな修司の後ろを追う様に、バーンズたち聖龍HEADが歩む。
一行が赤絨毯が一面に敷かれた広場に出ると、そこには大勢の二次元人たちが修司や聖龍HEADを出迎えてくれた。
「お帰りなさい、小田原修司!」「聖龍隊! ご苦労様!」
大勢の人々の活気に思わず微笑む修司たち。
すると其処に、この祝賀会にお呼ばれされた大将こと赤塚大作が、自分が指揮する赤塚組の幹部達を引き連れて修司たちを出迎えた。
「よっ、テメェら!」「大将……!」
大将の呼び声に、アッコが笑顔で答える。
他のHEADの面々も、大将やアッコの様に昔馴染みである親友でもある赤塚組の幹部衆と顔を合わせていると、修司が前方で自分達を直視する一人の男に気が付いた。
「ッ! ほほう……」
修司は男の瞳を直視して、男が修司と仕合ってみたいのだと勘付く。
そして修司が腰に帯刀している聖龍剣に手を添えて、いつでも抜刀できる様にしながら前へと歩み出ようとすると、そんな修司にバーンズが言った。
「お前も変わらないな、修司」
「漢ってのは、いつ何時も強い相手との真剣勝負に燃えるもんだろ」
そんな修司の言動に呆れながらも、バーンズは話を続けた。
「修司。お前はオレ達と出会って、オレ達に救われたと……そう以前に言ったな。だがな、このオレ達もまた……あの日、お前に救われた事を忘れないでくれ」
バーンズは修司が二次元界に来てからの出逢いの数々で自分たち多くの二次元人が救われたと告げる。
そんな愚かな自分に感謝してくれる聖龍HEADに、修司は背を向けたまま言った。
「バーンズ、ジュニア、アッコ……そして聖龍HEAD! 一度しか言わないから、よぉく聞いとけよ」
『!?』突然の修司からの言葉に一驚される聖龍HEAD。
そして修司は、そんな聖龍HEADに一言告げた。
「ありがとう」『!!』
唐突な修司からのお礼の言葉に、聖龍HEADは全員言葉を失くし愕然とした。
そして聖龍HEADに礼を伝えた修司は、前へと前進して闘いへと挑む。
「……へっ、あいつもようやく言えたか」
修司が聖龍HEADに礼を伝えられた状況に、大将は思わず涙ぐむ。
と、そんな大将と赤塚組の幹部衆が後ろを振り返り、後方の聖龍HEADに顔を向けてみると、聖龍HEADは皆揃って顔を俯かせていた。
「………………お前ら、泣いてんの『泣いてない『わよ!!』
思わずHEADに問い掛ける大将の言葉を、俯いたまま遮る聖龍HEADたち。
大将は涙を流しながらも一歩ずつ確実に前へと歩む、修司や聖龍HEADに思わず顔が緩んで微笑んでしまうのだった。
一方で修司は全身を煌びやかな蒼い装甲で戦う男と向き合って、今まさに闘う直前だった。
「まったく……変に進化して、挙句の果てにはアッコ達を殺すとは」
「その話はやめてくれよ、キーオ」
「いや、やめねえぞ。お前が自分のクローンを生み出されて自暴自棄になってたのは些か同情はするが、それとこれとは別だ」
「まあ、その話は後々語り合うとして……今はこの時を楽しもうぜ」
「まったく。戦闘狂というか、お前は相変わらず戦うのが好きな奴だぜ」
「お前の実力を認めているからこそ、闘いを望むんだ。お前も男なら分かるだろ?」
「それにしたって……いや、もうやめよう。さっさと決着着けて終わりにしようぜ。まあ、俺はお前に負ける気なんてないけどな」
「上等! かかってこいやッ!」
かくして、小田原修司と魔鏡騎士キーオとの決闘は始まった。
修司の聖龍剣と鏡の国の王子であるキーオが振るう蛇腹剣が激しくぶつかり合い、火花を散らし合う。
「「うおおおぉぉぉーーーー……ッ!!」」
鬼神と云われる小田原修司と、魔鏡騎士キーオは、それからしばらくの間、激闘を繰り広げたという。
[ED:T.M.Revolution.The party must go on]
The party must go on
作詞:Akio Inoue
作曲:Daisuke Asakura
妖艷な朧(おぼろ)月夜に COOLと野生はよく似合う
風流 を喰らうに掛けちゃ 負けず劣らず
きっかけは指を弾いて
狼煙を上げなきゃ始まらない
追い詰めて 切り迂み過ぎて もはやこれまで
抜き身曝す生き様が
暗闇で背後にある 影さえ映して
前のめり 素で誘った
「ケチらずに 明日を見せろ」
Party On! Burning Soul!!値千金
祭りの炎上 は 終わらない
Let's Dance! Warriors!!
ぶっちゃければ世も末
ど派手がガチだろ? アゲ盛り
天下分け目を 極めるが勝ち
宴 を続けよ
覚悟なら決めちゃいるけど
どいつもこいつも必死過ぎ
運命もほだされそうで 別腹くくる
灼けて堕ちる夕暮れの 短さと色の濃さに 我が身を重ねる
暴れ馬の背から見て
尾は東 明日はどっち?
Party On! Burning Blood!!
深き夢見し
目醒めに 酔い痴れて 止まれない
Let's Dance! Warriors!!
やらかしとけ この際
高見の見物 下手を打ち
天下分け目の 火傷しそうな
流星 を掴む
此処は罪を犯した亡者が集う冥界・地獄。
「ほら! そこ! もっと身体を揺さぶる様に激しく、そして脳みそも揺さぶれるほど激しく踊るのです!!」
そこでは一人の鬼によって何人もの罪人達が強制的に踊らされてた。
「ヒィ、ヒィ……ほ、鬼灯様……もうご勘弁を……ぐはっ」
亡者である小野崎功が苦悶の表情で訴えるものの、鬼灯様はそんな小野崎功を金棒で殴り付ける。
「黙るのです! あなた達は生前、ジャッジ・ザ・シティで罪なき命を大勢惨殺して奪い取った畜生以下の罪人! 精々その腐った性根が少しでもマシになるよう、この場で踊り狂うのです!」
「くっ……クソッタレ……うぎゃっ!」「お、鬼め……ぎゃっ!」
同じく亡者の法月仁や鬼龍院羅暁が鬼灯様に文句を言おうとするが、その前に鬼灯様に金棒で殴られる始末。
「黙りなさい! 私の本編での登場は此処しかないんですから! あなたたち罪人には血反吐を吐くほど踊り狂ってもらいますからね!」
「ヒィっ、鬼灯様マジパネェっ!」
それからも地獄に落ちた新世党の面々は、鬼灯様に金棒でシバかれながら延々と踊らされるのであった。
抜き見晒す生き様で
過ぎてゆく 時を魅せろ!
Party On! Burning Soul!! 値千金
祭りの炎上 は 終わらない
Let's Dance! Warriors!!
ぶっちゃければ世も末
ど派手がガチだろ? アゲ盛り
Party On! Burning Blood!! 深き夢見し
目醒めに 酔い痴れて 止まれない
LAST 一番!! 出し惜しむな この際
時代を抱くほど 艶やかに
天下分け目を 極めるが勝ち
宴 を続けよ
[友からの手紙]
ある日の事。
この日は現政奉還に巻き込まれた新世代型二次元人達が、幸平創真たち遠月茶寮料理學園の人々から呼ばれて、學園内にて親睦会の意味合いもある食事会が開かれた。
「いやあ、まさか料理學園の人達からお呼ばれされるとは……美味い料理もたらふく食えて、俺もう幸せ」
「真鍋くん、食べ過ぎだよ」
美味の料理に舌鼓しつつ感激する真鍋義久に、琴浦春香が注意する。
「でも良いのかな? 新世代型二次元人の親睦会なのに、私たちプロト世代もお呼ばれされて」
「良いんだよ、チョコちゃん! この親睦会は、現政奉還に巻き込まれた聖龍隊以外の二次元人の労いも兼ねているんだ。だから、あんた達も遠慮せずジャンジャン食べてくれよ!」
「ありがとう、幸平くん」
プロト世代のチョコが問い掛けると、それに答えた幸平創真に同じプロト世代の海道ジンが礼を言う。
「そうそうっ。幸平たちが良いって言うんだから、遠慮なく食べなくっちゃ。ほらほら、エクソノーム様も食べて食べて」
「あ、ああ、ありがとうギュービッド」
一方此方は釈放された初恋の相手であるエクソノーム相手にメロメロになっている乙女なギュービッドに、エクソノーム本人は戸惑いながらも一緒に食事してた。
「みんなで食べる食事は久しぶりよね……今思えば、こうして仲のいい人と一緒に食事する事こそ、最高の美食なのかもしれないわ……」
「えりな様……」
「うん? 何を当たり前のこと言ってんの?」
現政奉還の時から共に同じ時間を過ごしてきた馴染みある友との食事こそ美食なのではないかと説く薙切えりなの発言に、秘書である新戸緋沙子が呟くと、何の事情も知らない瀬名アラタが不思議そうな面持ちで食事を頬張る。
するとその時、琴浦春香が何かを思い出したのか周りで一緒に食事する皆に向かって言い放った。
「あ、そうだ! ねえ、みんな! 実はね……」
皆が琴浦春香に注目する中、彼女は一通の手紙を取り出して皆に見せる。
「カァチェンから手紙が届いたの! 今朝、聖龍隊の基地に届いていたのをバーンズが届けてくれたの!」
この琴浦春香からの報告に、その場の二次元人たちは揃って騒ぎ始めた。
「えっ! カァチェンから!」「元気にしてるのか、カァチェン!」
「ま、待ってみんな! 今読むから……」
興奮する小野田坂道や鳴子章吉達から声を浴びた琴浦春香は、皆を落ち着かせてから手紙を読み上げ始めた。
『拝啓 聖龍隊の皆様方、そして新世代型二次元人の皆様、その後如何お過ごしですか。
私は、あの現政奉還にて皆様方から大変様々な事をご教授され、自分を変える事が少しは出来た様な気がします。
あの戦いを経て、私は多くを学び、そして成長できました。
これも、全ては聖龍隊や新世代型二次元人の皆様方の御力添えがあったからでしょう』
この手紙の冒頭に、真鍋義久達は少々照れてしまう。
「い、いやぁ……俺たち、特に何もしてないのにお礼言われるなんて、むず痒いったらありゃしないぜ」
台湾国将軍シバ・カァチェンからの感謝の言葉に、真鍋義久達は照れながらも素直に受け止めた。
『今、思えば現政奉還は何も悪い結果ばかり残してきた訳ではなかったのかもしれません。
事実、アジアの武将達は各々が自分の野望を……夢を実現する為に今も尚奮闘しております。
漢族筆頭のデイ・マァスン氏は、過去の自分の様に希望を絶たれた者たちへ救済の手を差し伸べ、誰もが光という希望を求められる次代を創世すべく従者のタク・モンジュロ氏と共に励んでおります。
モンゴルの国将軍に新たに就任したシン・ユキジ氏は、毎日の鍛錬を欠かさず続け、日々精進しながら国将軍として成長していると、この前忍頭である猿飛佐助氏から聞き及んでおります。
修司殿の義弟である韓国将軍サイ・チョウセイ氏は、韓国内の矛盾や問題を解決すべく、国連軍元帥の赤犬殿との協定を結ぼうと努めています。
ウェンリンの水軍に守られている海神の巫女、鶴姫殿は、また加賀美殿や修司殿に会いたいと述べているようです。
ロシア国将軍のケンノフスキー殿は、御供であるくノ一かすが殿と共にロシア平定に力を注いでいるようです。以前にも増して、軍神が人らしくなったと人伝に聞いております。
会いたいと言えば、ウイグル族の名士であるシャ・キンカ殿は、また幸平創真氏たちの料理を食べたいと駄々をこねている様子です。
同じウイグル族の豪族である剣豪シマ・ギンテル殿は、今ではすっかり落ち着いており、若者に示現流を教えているとの事。
そして中国全土を治める新たな統制を布く新政権の中心である徳竹康殿は、側近である武蔵丸殿と一緒に中国全土をよりよく改革していくと意気込んでおります』
アジア武将の多くが、今でもその野望溢れる未来へ突き進んでいると記すカァチェンからの手紙に、皆はまたしても笑顔になる。
「みんな……それぞれ元気に、そして自分の野心を絶えず、持ち続けているんだな」
思わず感慨深くなる真鍋義久を間近に、琴浦春香は続けて手紙を読む。
『そういえば……私と同期の武将達ですが。
山中鹿之助は、アラブ首長国連邦の武人として、毎日おやっさんにしごかれながら楽しく過ごしているとの事です。
イン・ナオコ殿は、あの長かったポニーテールを鬼神との戦いで断髪してから何かが変われた様で、今では体型を生かしてウェディングドレスのモデルをしているとの事。恋愛に関しましては、何故か異性からではなく同性の女性から恋文が送られてくるみたいで困惑しております。
殺伐とした狂人であらせられたゴ・マータン殿は、昔の上官であった黒劉席殿と再び組んで、アジア各地のトンネル整備の職務に就いているとの事。ですが、今尚不幸体質の黒劉席殿の行動で、かえって工事が進まない事も多く、ゴ・マータン殿は大変困っているみたいです』
この現状を聞いて、皆は揃って呆れ顔を浮かべてしまう。
「は、ははは……劉席さん、相変わらずなんだな」
「ホント。何だか、ゴ・マータンが可哀そうに思えてきた」
思わず苦笑いで黒劉席とゴ・マータンの現状を想像してしまう瀬名アラタと星原ヒカル。
「ナオコさん、ウェディングドレスのモデルか。素敵なスタイルだったし、きっと似合うだろうな」
「でも、ラブレターが女性ばかりってのは笑えるね」
棗鈴や神北小毬は、イン・ナオコの現在の仕事に思わず微笑んだ。
そんな和む皆を視認して、琴浦春香は再び手紙を拝読する。
『……そして、皆様方も気になっているとは思いますが。
あの北の国の残党軍総大将のヤン・ミィチェンの側近マン・サコンについて近況を述べます。
正直に申し上げますと、サコンは今尚あなた方二次元人を心の底から憎んでおります。
確かに、自分の人生を救ってくれたヤン・ミィチェンを死に追いやった二次元人を、サコンが簡単に許せる訳もないでしょう。
未だにサコンは私達と一緒の時は普通に過ごしておりますが、心の内では二次元人への激しい敵意と殺意を秘めて生きております』
このカァチェンからのサコンの近況報告を聞いて、先ほどまで明るかった皆の表情は暗くなった。
「……サコン、まだ二次元人を許せないんだな」
「仕方ないのかもしれない。二次元人の権限確立の為だけんに聖龍隊が北の国に進攻して壊滅させた上に、あの順一さん達も認めるほど純粋だったと云われるヤン・ミィチェンを死に追いやったのも二次元人……そう簡単に許せないのも今では頷けるよ」
顔を俯かせる瀬名アラタに続いて、星原ヒカルも険しい面持ちで説いた。
「サコンさんにとって、ヤン・ミィチェンって人は掛け替えのない人だったんでしょう。だからこそ、未だに二次元人そのものを許せず……苦しんでいるんでしょう」
福原あんの言葉に、その場の誰もが心苦しくなる。
皆がマン・サコンが未だに二次元人を許せない現状なのだと知って尚、琴浦春香は手紙を読み続けた。
『そんなサコンも、今ではすっかり私が統治する台湾軍に馴染んでおります。
元々の性格からか、誰とでも打ち解けられ、同じ軍の仲間を大切にする節も見られます。
私をやっと認めてくれた台湾軍の兵士達と打ち解けられたサコンを見て、私も安堵しております。
……ですが、未だに彼の博打好きは変わらず、今は自腹で賭け事に勤しんでいる様ですが、いつか軍の費用をも私用しないか心配でなりません』
そして手紙の最後の綴りには、こう記されていた。
『最後に、これだけは伝えておきます。
例えこの先、あなた方新世代型二次元人が我々三次元人の脅威と認定されたとしても、私はあなた方との思い出、いや記憶を大事にしたいと胸に刻んでおきます。
どうか、皆様方の末永い幸せを心から祈っております。
台湾国将軍 シバ・カァチェンより』
変わる想いがある。変わらない想いもある。
友であるシバ・カァチェンからの手紙の内容に、二次元人たちはそう思うのであった。
[物語の名]
友となった三次元人、台湾国将軍シバ・カァチェンからの手紙を読み終えて、琴浦春香は静かに自分の席に着席した。
「カァチェン……変われたんだね」
「ああ、あいつは立派に成長してくれたよ」
琴浦春香と真鍋義久はカァチェンを思いながら思慮に耽る。
「カァチェンが変わってくれたのは何よりだけど……けど、世界は変わるのかな?」
森園わかなの発言に、その場の皆が唖然とする。
「確かに……一人一人の武将が変わってくれたのは何よりだが、世界そのものが変わるとまでは簡単にはいかないだろう」
「僕たち新世代型二次元人……いや、二次元人そのものが世界を正しく変えつつ、導かなきゃ、世界はまたきっと混沌の戦乱にも至ってしまうだろうしね」
考え込む出雲ハルキに星原ヒカルの言葉に、その場の誰もが心の中で同意する。
「そして……僕は最も恐れている事があるんだ」
「へっ? なにを恐れてるんだ、斉木?」
突然口を開く斉木楠雄に、親友の燃堂力が問い掛けると斉木は険しい顔色で語り始めた。
「未だに僕たち新世代型二次元人を……いいや、二次元人そのものを快く思ってない三次元政府が、今後どの様な動きをしてくるか見当もつかない事だ。今回の現政奉還での乱世に乗じて、凶悪だったとはいえ新世党の様な輩も問答無用で拷問並みの処罰を与えていた訳だし、これから先、僕ら二次元人をどうするのか気になるよ……」
『………………』斉木の話を聞いて、皆は蒼然とした。
「僕たち二次元人の事だけじゃない。修司さんだって、またいつ、どんな理由で国連軍などの心無い組織によって人間兵器に戻されるか分かったもんじゃない。修司さんは心優しい人だ、僕ら二次元人の事を護る為なら、また人間兵器に戻ってしまう可能性だって十分考えられる」
「そ、そんな! せっかく修司さん、人間兵器から人間に戻れたって言うのに!」
斉木の話に、燃堂は非常に焦り出す。
すると斉木の話を聞いて、星原ヒカルが語り出した。
「小田原修司。僕たち二次元人の為に色んな意味で汚れ仕事を一身に受け切ってくれた、二次元人にとっては大恩ある三次元人……でも、世界は、いいや歴史は彼をどう見るのだろうか?」
これに出雲ハルキも続けて語る。
「おそらく世界は、小田原修司を自分達にとっては都合のいい様に解釈した上で歴史に遺すのかもしれない。自分達にとって不都合な事実は伏せて、小田原修司の名声を悪名だろうが何だろうが、あたかも恐ろしい鬼神として記録するかもしれない」
「そんな! 私、聖龍隊で一緒に仕事もしてるから分かるけど、修司さんはそんなに恐ろしい人じゃないわよ!」
「私もそれは解ります……それなのに……」
出雲ハルキの説明を聞いて、キャサリン・ユースや琴浦春香は悲痛な思いに駆られる。
「どちらにしても、世界は今後も自分達にとっては不都合な真実は伏せて、小田原修司の歴史を正しく後世に遺そうとは思っていないのかもしれないね」
「そ、そんな……」
星原ヒカルの言葉に、瀬名アラタは心苦しくなる。
すると、そんな重い空気を引き裂く様に、一人の少年が挙手した。
「あ、あのさ……」それは燃堂力だった。
「どうした? 燃堂」親友の斉木楠雄が問い返すと、燃堂は語り始めた。
「あ、あのさ……俺自身も突拍子もない事を言ってるのは理解してるんだけど、その……世界が正しい歴史を、修司さんの事を正しく記録に遺さないって言うなら、俺たちでありのままの修司さんを記録に遺さない?」
『……え……!?』
突然の燃堂力の提案に、周りの皆は唖然とした。
「俺さ、現政奉還を通してやっと本当の小田原修司を知れたんだよ。無愛想だけど、人一倍感受性の高い人で、誰かが傷付いているのを黙って見過ごせない優しい心を持つ武人、それが小田原修司なんだって。でもさ、そんな修司さんを世界が悪い様に歴史に遺すっていうなら、俺たちで……そう、現政奉還で小田原修司の人柄を十分に知った俺たちで正しい歴史を遺さないかな!?」
燃堂力の提案を聞いて、斉木楠雄は余りの突然の事態に思わず笑い出してしまう。
「……ぷっ、ははははっ」
「な、なんだ斉木? 俺、おかしいこと言ったか?」
「い、いや……君が余りにもマトモな事を言い出したから、思わず……」
涙を流して笑い出す斉木楠雄。
すると、この燃堂力の提案を聞いた他の面々も声を挙げて賛同してくれた。
「そうよ、それがいいわ! 私達の始祖、小田原修司の素顔を全面的に記録に遺して、悪い印象を少しでも無くさないと……!」
薙切えりなに続き、レドも言い放った。
「小田原修司だけじゃない! この現政奉還で活躍した多くの二次元人、いや三次元界の武将達の記録も一緒に遺そう! そう、誰もが正しい武将の姿を認識できる様に……!」
そして言い出しっぺの燃堂力も言った。
「俺みたいなバカでも解かる様に、事細かく記録に遺そう! ……そうだ! せっかくなら、現政奉還そのものを記録に遺して、俺たちで歴史を創っちゃおうよ!」
「それは良い考えだよ、燃堂! みんなで協力し合って創ろう……現政奉還の記録を、武将達の素顔を記した歴史を!」
こうして主に新世代型二次元人を中心とした現政奉還での記録を纏める活動は始まった。
二次元人達は、小田原修司はもちろん聖龍隊を始めとした、現政奉還で活躍した武将達に聞き込みをして、正しい記録を纏め上げていった。
時には海を渡り、遠い国の武将にも話を聞いて、逐一記録に遺していった。
そして完成した記録の書は、大きく分けても三部にも繋がる大長編の記録書として名を轟かせた。
後に、二次元人たちによって纏め上げられた記録書を拝読した小田原修司は、難癖をつけながらこう述べた。
「なんだか信ぴょう性のない歴史書になったもんだな……なんせ、俺が余りにも美談化されているんだもんな」
と、小田原修司は自分の記録が余りにも美談にされている書物に難癖をつけたのだ。
それでも小田原修司のクローンである新世代型二次元人達は、正しい記録を、歴史を後世に遺すべく活動を続けた。
創生に始まり、願望の根源を経てもなお、止む無く続く連鎖がある。
戦士となり、軍となり、国となった現在ですら――――
戦乱は耐える事無く、なおも昂り、そして……憎しみは広がる。
かくて、かの繋がりを得たHEADも――――対に立ち、戦い続けた。
されど――――わずか一人の孤独なる者。
連鎖を断ち切り、未来を拓く。
親友を創り、親友を追い、親友と挑み、親友と結ぶ。
その意志は――――やがて戦う者を包み、世界を包み、憎しみを包み。
新たなる未来という道を示すものとなる。
ここに、己が意志を極めし物語は一時とはいえ終わりに至る。
……さあ、今こそ、鬼の申し子たる新世代型二次元人が記した記録の書に名を記そう……
その名は――――――
【聖龍伝説 現政奉還記】
[新時代]
そして時は近未来。
アニメタウン、聖龍隊が管理する書庫で一人の少年が黙々とある本を読み耽ってた。
その本のタイトルは【聖龍伝説 現政奉還記】
すると黙読している少年の背後から、一人の男性が歩み寄って少年の肩を軽く叩く。
「やっ、今日も読書かい?」「あ! アラタさん」
少年は読んでいた本を閉じて、男性と話し始めた。
「どうだった? 昔、俺たちが残した自伝にも近い現政奉還記は?」
「は、はあ……正直に感想を述べますと……その、なんだか多くが荒唐無稽な話にも思えてきて。しかも父があんな事を仕出かしたのに、その父の行いを美談にされているのも、ちょっと複雑で……」
「ははっ、まあそうかもしれないね。でも俺たちは間違った事は記してないよ。修司さんは本当に心の底から、誰もが平等に生きていける世界を築きたかったからこそ、時には暴挙にも出てしまったんだ。そこは息子の君にも理解してほしいな」
「は、はあ……そうですか……」
「それにしても……君は戦う事よりも読書とかの方が好きなのかい?」
「は、はい。正直、僕は誰かが傷付く戦闘というのは抵抗があって……」
「ふ……その優しさ、親に似たんだね」
「……どっちの親ですか」
「両方だよ。父親にも、母親にも似てる。君は本当に凄い両親の、素敵な面を受け継いでくれたよ」
「あ、アラタさん……」
苦笑いする少年に、男性は笑顔で頭をなでる。
と、その時だった。
「
少年が手首に着けているコンパクトから警報が鳴り、少年は慌てて立ち上がる。
「そ、それじゃ! 僕はそろそろ……」
「ああ、行っておいで。今の時代も相変わらず
「ありがとうございます。瀬名アラタさんも、また旅路に戻るまでアニメタウンでゆっくりしてください」
「ああ、そうするよ。LBXプレイヤーとして、そして誇り高き新世代型二次元人として、世界を巡る旅はまだまだ終わらせたくないからね!」
そうして少年と男性は書庫で別れると、少年は慌てた様子で駆け出した。
少年が書庫から飛び出して、廊下を走っていると曲がり角である人物とぶつかってしまう。
「あ! ご、ごめんなさい……」「おっと。大丈夫かい?」
少年は謝罪するが、自分を気にかけてくれるその人物の顔を見た途端、少年は驚いた。
「こ、これは……琴浦議員!?」
「なんだ、君か。なんだか慌ててたみたいだけど、廊下は走っちゃダメだよ」
「は、はい、ごめんなさい。それにしても国連議員がなんで此処に……?」
「いやね、職務がてら聖龍HEADの人達と話があって一時帰国したんだ。まだまだ世界情勢が混乱しているから、聖龍隊とそこんところを調整しないとね」
「な、なるほど……」
「おっと、それよりも……急いでたんじゃないのかね?」
「あ、はい! また
「そうか……まだまだ二次元人の突然変異は解明されないからな。聖龍隊も大変だろう」
「それじゃ、僕はこれで……健闘を祈ってますよ、琴浦義久議員」
「ああ、俺も君たち新時代の聖龍隊の武運を祈るよ……修太くん」
少年は再び、今度は周りに気を付けながら速足で外へと出る。
外へと出た少年を待ち侘びていたのは、少年と同じ聖龍隊のチームだった。
「遅いわよ、修太君!」
「ご、ごめんなさい、楓さん」
「任務中は隊長と呼んでちょうだい。またはヒーロー名、ナデシコメイプルとね!」
「は、はい……それじゃ、そろそろ行きましょうか」
「ええ、そうね」
少年は女性隊長の後方に移動すると、自分専用の浮遊型バイクをその場にワープさせて跨った。
「今日も頑張ろうね、修太!」「いつもみたいに気弱じゃダメだからね」
「わ、分かってるよ。ちびうさ、るきあ」
仲間であり親友である二人の少女たちから注意された少年は複雑な面持ちを浮かべる。
「それじゃ行くわよ! 聖龍隊、進撃!」『はい!』
隊長である女性の掛け声に、少年達が勇ましく返答するとチームは発進した。
そんな聖龍隊の新たな勇姿を、最寄りの高層ビルの最上階から眺める聖龍HEADの姿が在った。
人々の絶えない願望あるところに、思想芽生える。
聖龍隊の頭目達は国を照らし続ける。
そして時を経ても尚、新しい意志は芽吹くのだった。
[未来への布石]
「………………………………」
「? 高嶺くん、何をそんなに真剣にノートに書き込んでいるの?」
ある日、一人黙々とノートに書き込む高嶺清麿に、恋人の水野鈴芽が質問する。
「ああ、水野か。いやな、この前の現政奉還での出来事を体験した新世代型二次元人が、未来を創造する為には正しい歴史を後世に遺さなきゃいけないって言って、現政奉還での記録を正確に遺そうって活動しててな」
「うんうん」
「それを聞いて、俺も正しい記録を……そう、正しい歴史を後世に遺せないかって思ったんだよ。それで今、その正しい歴史をデータとして永久的に記録できる装置というか人工衛星を設計している訳なんだ」
「え! じ、人工衛星!? 正しい記録を遺そうってのは解るけど、なんでまた衛星なんかに……?」
「うん、歴史ってのは時には権力者の手によって捻じ曲げられて後世に伝えられちまうだろ? それを防ぐ為にも、地球の周りを回転し続ける人工衛星に人類の歴史を保存できるか考えてたんだ」
「ふーーん、そっか……難しいけど、高嶺くんならきっと上手くできるよ!」
「ああ、ありがとう水野!」
「ところで……その歴史を記録する人工衛星って……」
「ああ、もう名前は決めてる。題して………………ヒストリア、歴史って意味さ」
こうして聖龍隊の一員である高嶺清麿によって、歴史の記録を保存する人工衛星ヒストリアの開発は始まった。
しかし、この時いかにアンサートーカーの能力を持った高嶺清麿でも未来を予知する事はできなかった。
まさか、この人工衛星ヒストリアが数十年後、とある悪名高いマッドサイエンティストによって地球壊滅の道具にされる事とは、清麿は夢にも思わなかった。
この一件は、まだまだ先の未来の物語で綴る。
「………………彼女の容態は安定してるか?」
「ああ、問題ない」
「そうか。彼女にはSパルを支える役目をしっかり担ってもらわなければ。監視世界という閉鎖空間の中で孤独に過ごしているSパルの心の支えになれる新世代型二次元人でなければならないからな」
「心配ないさ。彼女はなんたって………………あの聖女のクローンなんだからな」
そう言い残して、二人の学者はその場から立ち去った。
そして二人が立ち去った後のカプセルには、赤く長い髪の毛を培養液の中で靡かせる女性が眠りに就いていた。
その女性が入ったカプセルには、こう記されていた。
【Aミーラ】と……。