聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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※このシリーズは架空戦記の物語であり、実在の人物とは関係ないフィクションであります。

※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。

※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。



現政奉還記 破滅の章3 集う次代の五人衆

[混沌の戦場]

 

 黒武士と激しい戦闘を続行している連合軍の許に、赤塚大作が率いる赤塚組が到着し、新たな戦力を加えての戦闘が勃発していたその頃。

 己の欠けた心と不完全な自信で如何なる決断をすれば良いのか苦悩していた台湾軍が国将軍シバ・カァチェンは独りで迷走していた。

 多くの猛者達が黒武士と命懸けの戦争に出陣している中で、自分はどうすれば良いのかカァチェンは自問自答を繰り返していた。

 そんなカァチェンは偶然にもイン軍の領地に踏み入ってしまった事から、自信の無さを指摘されて領地主のイン・ナオコと仕合する事になってしまう。

 激しい格闘の末、ナオコ自身もカァチェンに黒武士への恐怖心と過去に痛感した許婚との死別を乗り越える勇気が欠けていた事を指摘され、彼女はカァチェンと共に一部の女衆を引き連れて黒武士との大戦に乗り出す決意に踏み切る。

 その後、お互いに己の欠けた心を改めて痛感した二人は、カァチェンの意思でアラブ連邦の護衛部隊の許を訪れる。

 二人が向かった先にいたのは、アラブ十勇士の一人である山中鹿之助であった。

 カァチェンは過去に悲しい体験をした鹿之助も、自分たち同様に心が欠けてしまった武人として見出し、共に黒武士討伐への協力を求めた。

 最初は怖気付いていた鹿之助であったが、カァチェンの嘆願を聞き入れ、ようやくお目付け役の雌鹿おやっさんと共に重い腰を上げた。

 こうして三人は連合軍と黒武士が戦闘する荒野へと向かうのだったが、その道中にあの聖龍隊との戦闘で手痛い敗北と挫折を味わった為に狂気に駆られてしまった流浪人ゴ・マータンと遭遇してしまい、戦闘に突入してしまう。

 しかし殺伐とした戦い方を繰り広げるマータンの痛々しい姿を目の当たりにしたカァチェンは、彼にも過去の挫折から這い上がって欲しいという想いからマータンにも黒武士討伐の機会を誘ってみる。

 初めは聞く耳を余り持たなかったマータンだったが、カァチェンの必死の説得を聞いてやっとそのむき出しの殺意を修めてくれた。

 四人へと増えた一行は、改めて大戦が行われている戦場へと向かっていたが、道中で二次元人に肩入れする四人の行動を知ってか知らずか、あの北の国の忘れ形見マン・サコンが四人の前に立ちはだかった。

 二次元人を目の敵にするサコンの猛攻と憎悪に苦戦する四人だったが、自分と同じく過去に挫折や苦心を味わったサコンの心境を知っているカァチェンだけは何かしらの同調を感じ取る。

 するとカァチェンは激しい戦闘の最中、サコンに自分も同じ苦境を味わいながらも、辛い現実の中で懸命に生きれる道を見出し、今に至ると説いた上でサコンに自分達と共に黒武士討伐に向かわないかと誘う。

 最初は毛嫌いしている二次元人への肩入れに通じるとして拒んだサコンだったが、カァチェンに黒武士との大戦は帝か仕掛けた未来を賭けた大博打である事を伝え、博打に通じているサコンに訴え掛けた。

 そして最終的に、新世代型二次元人でもある帝・足正義輝の大博打に勝負を挑む決意を固めたサコンはカァチェンが差し出した手を掴んで共に黒武士討伐に向かうのだった。

 過去に様々な挫折や苦境を体験した五人が、帝が仕掛けた黒武士との大戦という大博打に打って出たのであった。

 

 過去(かつて)に絶望し、未来(さき)の見えない現実(いま)という時間の中で時を過ごしていた五人が、黒武士との戦場に向かっていた頃。

 大将こと赤塚大作率いる赤塚組が連合軍の戦力に加わった事で戦況が変わるかと思われていたが。

 だが、黒武士が放つ数々の異系の闇の技に連合軍は変わらず苦戦していた。

「わあっ」

 上空への跳躍から、連合軍の頭上から放たれる斬撃による爆撃で多くの猛者達が苦境に立たされる。

 そして上空へと跳び上がり、地上へと着地した黒武士に待機していた聖龍隊士が一斉に攻撃を集中させて浴びせる。

 しかし過去に幾多の戦歴を乗り越えて屈強な猛者へと変わった隊士達の攻撃を浴びても黒武士は全く無傷のままだった。

 黒武士は、そんな意気消沈している隊士達に強力な斬撃である地走りを放ち込んで返り討ちにしてしまう。

 聖龍隊士だけでなく、屈強な国連軍兵士も黒武士に向けて銃撃の雨を浴びせるが、黒武士が着衣している漆黒の鎧が全ての弾丸をはじき返してしまう。

「流星火山!!」

 国連軍元帥である赤犬も、黒武士に向けて巨大な火山弾の雨を降らして攻撃するが、黒武士は難なく火山弾を避けるか跳躍して長刀で真っ二つに切断して攻撃を防いでしまう。

「クソッ、俺たちが加勢しても戦況は劣勢のままなのか……!」

 赤塚組頭領赤塚大作、通称大将は周りに広がる惨状に表情を歪ませながらも悔しい思いを呟く。

 自分たち戦闘のプロである赤塚組が加勢しても、自分達が手塩にかけて造り上げたからくり兵器も、その全てが黒武士には通じない現状に大将は嘆いた。

 そんな混沌とする戦況の中で、連合軍は黒武士が生成した闇の檻に閉じ込められている新世代型二次元人の救出にも乗り出していた。

「ッ……ダメだわ、どんな魔法も効果ないわ」

「コッチもだ! いくら斬り付けても、鉄格子には傷一つ付かない……!」

「おおい! 魔女っ子に漆黒の剣士! どんな手段でも構わないから、さっさと此処から出してくれっ!」

 魔法で闇の鉄格子を切断しようとする暁美ほむら達と、剣戟で檻を切断しようとするキリト達に、檻の中で困惑している千両道化のバギーが訴える。

「アンタ、随分と自分勝手だな……アタイ達や琴浦たち新世代型はガン無視かよ?」

「う、ウッセィウッセィ! そもそも、檻の中に閉じ込められているお前らが金をチラつかせて、おれ様が中に入るよう手引きしたのが原因だろ! おれは被害者だ!!」

「アンタが勝手に姉さんの言葉に乗っただけだろ」

 プロト世代のギュービッドが自分勝手なバギーに文句を言うと、バギーは礼金で中に入るよう手引きした新世代型が悪いと反論。しかしこれに新世代型の纏流子は、姉の皐月の誘いにバギーが勝手に乗ったのだと愚痴を零す。

 

 黒い檻の中が騒然としている一方で、戦場では黒武士の猛攻で激しく消耗していた猛者達が苦痛に喘いでいた。

「援軍は……援軍はまだか!?」

「ダメです! 援軍も増援も関係なく、集められた戦力は全て既にこの地に集結している模様……!」

 既に連合軍の全戦力は、戦場に投下されていたにも関わらず、黒武士の猛攻に苦戦していた。

「天を揺るがし、地を裂かす……修司と同様、いやそれ以上の力か……!」

 この戦況に、国連軍元帥赤犬は黒武士が現状で仕出かした戦いを間近で目撃した上で、かつての小田原修司以上の実力なのではないかと表情を強張らせる。

「な、なんて奴だ……」「次元が、違いすぎる……」

 大地を裂き、上空から小惑星ほどの巨大な大岩を出現させて地上に落下させようとする黒武士を前に、多くの猛者達が絶望する。

 だが、そんな絶望的状況でも聖龍隊士は諦めなかった。

「行くぞ、ガッシュ・ベル!」「おう!」

 聖龍隊に加盟している黒崎一護とガッシュ・ベルが一丸となって上空から落下してくる大岩に向かっていった。

「今だ!」「バオウザケルガ!!」

 一護の合図でガッシュのパートナーである高峰清麿が呪文を唱えて、ガッシュの口から巨大な雷の竜が解き放たれた。

 一護はその雷の竜と息を合わせ、上空の大岩に直進。そして自らも強力な斬撃を放ち、雷と斬撃の二重攻撃で小惑星ほどの大岩を玉砕してみせた。

 地上の戦力を全滅させようと仕掛けた大岩を玉砕された黒武士は、呟く様に言った。

「最後まで抗う気か………………醜いな」

 とことん最後まで抗う姿勢を崩さない聖龍隊の隊士達の活躍を前に、黒武士はそんな彼らの行動を醜いと一喝した。

 そして上空から、玉砕された大岩の破片に紛れて黒武士も地上に着地すると、其処に黒武士を倒そうとする輩が。

「そりゃッ」

 船の錨の様な武器で、黒武士を釣り上げて攻撃しようとするそれを、黒武士は軽く身をかわして回避する。

「いい加減にお縄になりやがれ……黒武士!」

 破槍で黒武士を釣り上げようとした大将は、破槍を突きつけると黒武士に言い放つ。

 だが、黒武士は素早く長刀を抜刀すると大将が持つ破槍を弾いて、そのまま剣戟に突入する。

 

 大将が仲間の赤塚組幹部と共に黒武士の相手をしているその頃。

 黒武士が作り出した闇の檻に密かに接近して、檻を破壊して中の人々を救出しようとしている人物達が。

 それは剣や打撃、そして魔法など様々な手法を用いるスター・コマンドーの面々だった。

「ダメだわ! どんな魔法も、この檻が魔力を吸収して無力化してしまう」

「曲げる事はもちろん、傷一つ付きません……」

「頑張るんだ! 大将さんや他の同士の努力を無駄にしてはいけない」

 如何なる魔法も効力がないと告げるルイズに打撃も効かないと困惑する白浜兼一たち仲間に、総部隊長である村田順一が声援をかける。

 するとその時だった。

 大将たち赤塚組幹部衆と激しい接戦を繰り広げていた黒武士が瞬時に姿を消して、順一達が集う黒い檻の真上に瞬間移動したのだ。

 そして檻の天井の真上に移動した黒武士は、一瞬順一達を見下ろすと自らが乗っている檻から闇の波動を発生させて、檻の近くにいた順一たちスター・コマンドーを全員弾き飛ばしてみせた。

「うわっ!」

 檻から発生した闇の波動に弾かれて、吹き飛ばされてしまう順一たち。

 そんな順一たちの前に降り立った黒武士は、小言を呟く様に声を掛けた。

「折角の狂乱じゃ。この呪われた世代の面々には、特等席で破滅に抗うお前等が苦しむ様を見物させてやろうではないか」

 怪しく、だが同時に何処か悲しげな声質で呟く黒武士の言葉に、順一達は怯む事無く立ち上がり、戦う姿勢を示した。

「じゅ、順一さん……!」

 檻の中からは真鍋義久たち新世代型達が黒武士と対抗する順一達の勇姿を目前に激しく動揺する。

 すると、その時。

「うっ……! まただ……っ!」

 新世代型二次元人の頭に、またしても激しい痛みが襲った。

 そして新世代型達の脳裏に浮かんだのは、砂塗れになりながらも立ち尽くし、臨戦態勢を維持する順一たちスター・コマンドーに包囲された光景だった。

「な……なんなんだ? この視界は……」

 激しい頭痛と共に脳裏に浮かぶ謎の視界を認識して、ジェイク・ミューラーもただただ困惑するばかりだった。

 新世代型達が謎の頭痛と視界に動揺している一方、黒武士は意図も簡単にスター・コマンドーを退けてしまってた。

 

 既に戦力の全てを出し切ったのにも関わらず、黒武士の思う様に戦況を弄られ、そして追い詰められていく連合軍。

 この戦況を突破できる糸口は見付かるのであろうか。

 

 

 

[見えない未来]

 

 スター・コマンドーが黒武士に苦戦し、距離を置いていると其処に新たにニュー・スターズやスター・ルーキーズの面々が駆け付けて黒武士を包囲。有無も言わずに黒武士に挑みかかっていく。

「みんな待つんだ! 焦ってはいけない!」

 順一が後輩達に呼びかけるが、彼らは黒武士と接戦を開始。

 しかし黒武士は、斬りかかって来るアンリエッタやアニエスの剣戟をかわすと同時に彼女達に手首を主軸とした回し蹴りを喰らわして牽制し、ミラールやデス・ザ・キッドの銃撃を瞬時に移動して回避すると長刀から斬撃を放って反撃に転ずる。

 と、此処で金剛番長と剛力番長が一斉に黒武士に飛び掛り、黒武士をその強靭な筋力で押さえ込むと同時に全身の骨を粉砕しようとするが、黒武士は全身から黒い稲光を放出して二人を強引に自分から遠ざける。

 更にアレン・ウォーカーとリナリー・リーのコンビが黒武士に接近戦を挑むが、黒武士はアレンの剣戟を長刀で全て受け止めた上で防ぎ切り、リナリーの蹴りを自らの腕で受け止めて直撃を防いでしまう。

 其処にラビやアレイスター・クロウリー三世に、アラジンや澤田綱吉と奴良リクオ達が襲い掛かるが、黒武士は突如体を回転させて周囲に凄まじい斬撃を繰り出して接近してくるのを阻止した。

「釘パンチ!」「そりゃッ!」

 トリコとワイルドタイガーの二人が、剛腕で黒武士に拳を打ち込むが、黒武士は二人の拳を難なく手で受け止めてトリコとワイルドタイガーを絶句させると同時に軽々と投げ飛ばしてしまった。

 ワイルドタイガーならともかく、巨体のトリコまでも体躯が小さい黒武士が投げ飛ばした光景に周囲の皆々は愕然としてしまう。

 もちろん、黒い檻の中でそれを目撃した新世代型二次元人達も同じだった。

「受けてみろ、俺たちの攻撃!」

 ナツ・ドラニグルが仲間の魔導師達と共に黒武士に一斉攻撃を仕掛けるが、攻撃が直撃する寸前に黒武士が発する闇の能力で魔法は全て打ち消されてしまった。

「チッ、魔法を完膚なきまでに無力化しちまうのも前総長と同じ……いや、クローンだから真似できちまう訳か」

 闇の能力で魔法を完全に無力化して打ち消せる黒武士を見て、ナツは小田原修司を思い起こしていた。

「これじゃ霊能力も同じじゃない。万事尽きたなんて思いたくないよ……」

 自身の霊能力も無力化されてしまうと葉月いずなは戸惑うばかり。

「俺たちの冥界グッズの数々も、おそらく無力化されるだけだな……」

 六道りんね達【境界のRINNE】のキャラクター達も、闇の能力を持つ黒武士に苦戦を覚悟する。

「剣術でも歯が立たない……手の内様がないよ」

 シンク・イズミら【DOG DAYS】の面子も黒武士の能力の前では太刀打ちできず困惑するばかり。

 すると其処に「それなら……科学の力で対抗するだけ!」と【HEROMAN】のジョーイがヒーローマンに指示して黒武士に攻撃命令を下す。

 ヒーローマンは黒武士に上空から無数のレーザーの雨を浴びせると、舞い上がる砂煙に乗じて黒武士に急接近。黒武士に強力な電撃のパンチを連続で打ち込む。

 黒武士は有無も言わずに、全身でヒーローマンの電撃の拳を受け止める一方だった。そしてヒーローマンは最後に最も強烈な拳を黒武士に打ち込んでトドメを刺そうとした。

 が、ヒーローマンが拳を打ち込むと、黒武士はその電撃の拳を左手で受け止めてみせた。そしてそのままヒーローマンを押し返しては、ヒーローマンに鋭利な長刀で上から斬り付けて吹き飛ばしてしまう。

「ヒーローマン!」

 ジョーイが叫ぶ中、黒武士は地面に減り込むヒーローマンに向けて必殺の地走りを放って大破させようとした。

 ジョーイも他の誰もがヒーローマンの危機に絶句した。次の瞬間。

 地面に減り込んでいるヒーローマンを一瞬で移動させた何者かの存在によって、ヒーローマンは寸前の所で大破を免れた。

「ひ、ヒーローマン……?」

 ジョーイが唖然としていると、彼の頭上から声がした。

「大丈夫だよ。キミのパートナーは無事さ」

 そうジョーイに優しく声を掛けた少年は、両手でヒーローマンを持ち上げたまま地上に舞い降りると、ヒーローマンを優しく地上に降ろした。

「あ、あなたは確か……!」

 その少年を見てジョーイは驚いた。

 それもその筈。その少年は、別名:永遠の少年とも言われている神が生み出した二次元人、いやアンドロイドの鉄腕アトムであった。

 唖然とするジョーイを見て、アトムはジョーイに言った。

「僕たちロボットは、本来人間とは戦ってはいけない様に設計されているんだ。黒武士も、いくら修司君のクローンと言えど今は立派な人間。ヒーローマンでも戦いにくかったかもしれないね」

「………………」

 しかしジョーイはアトムを目前に、目を輝かせて言葉を失っていた。

 

 と、そんなジョーイの後ろから一人の人物が歩み寄ってきて、ジョーイの肩を軽く叩いて彼に言葉を掛けた。

「ご苦労様。後は……僕たちに任せて」

「え? あ、貴方は……」

 ジョーイは再び言葉を呑み込んでしまった。

 ジョーイの肩を叩いて声を掛けたのは、真っ赤な戦闘コスチュームに黄色いスカーフを首に巻いた青年だった。

「後は……戦鬼である、僕たちが……多くの二次元人の為に自ら鬼に成り下がった修司君のクローンである黒武士を倒す! そう、機械と人間の狭間で生きる僕たちが……!」

 そう強く唱えるのは、009こと島村ジョーを筆頭に戦前に出てきたサイボーグ戦士達であった。

「無駄だ……如何なる戦士が目の前に立ちはだかろうとも、世界が真に到達するべき桃源郷の達成を止める事は不可能……そう、例え戦鬼と呼ばれるサイボーグ戦士であろうともな」

「へっ、無粋なお面を着けて喋る台詞がソレかよ!? 笑わせるぜ!」

 黒武士が語る台詞に、002は呆れながら言い返す。

 そして009達サイボーグ戦士は黒武士に攻めていった。

 両足からジェットエンジンを噴き出して大空を飛行する002は、上空から光線銃で黒武士を狙う。が、黒武士は上空からの狙撃を全て長刀で弾いて光線銃を無効化してしまう。

 続いて、ほぼ全身を武器に改造された004が手始めに膝を開いて足に内蔵されているマイクロミサイルで黒武士に攻撃。続けて右手の連射銃で黒武士に射撃の雨を浴びせた。だが舞い上がる硝煙の中から黒武士は相変わらず無傷だった。

「ファイヤぁ!!」

 体内に火炎放射機が内蔵されている006が吹く灼熱の火炎放射を黒武士はマトモに浴びる。しかし黒武士は高熱に対しても全く感じなかった。

「フンぬっ!」

 その黒い巨体で大地を踏み締めて黒武士に接近する005は、怪力で黒武士と真っ向から取っ組み合い、立ち止まる。

 黒武士と005の力と力による根競べは、双方共に互角であり、決着が付かなかった。が、黒武士は一瞬の隙を衝いて、005の足を柔道技の要領で足払いし、005の体勢を崩した所で彼を投げ飛ばしたのだった。

「!!」

 自身の巨体を投げ飛ばす黒武士の怪力に、005本人も驚くばかり。

「加速装置……!」

 ここで誰よりも平和を愛する009が加速装置を発動させて黒武士に襲い掛かる。だが黒武士は気配だけで009の位置を把握した上で彼に向かって強力な斬撃である地走りを放った。

「うわっ!」「ジョー!」

 黒武士の地走りを直撃し、吹き飛ぶ009を見て紅一点の003が慌てて最年少の001と共に駆け寄る。

「ジョー、大丈夫?」「あ、ああ、何とか……」

 003の心配に反して、ジョーはサイボーグ特有の頑丈な体のお陰で助かっていた。

「ふ、フランソワーズ、君の透視能力で責めて黒武士の鎧の構造だけでも確認できないか?」

「ううん、ダメ……あの鎧も顔の面も、全て闇の能力で作られているのか透視できないの。……素顔すら視えない」

 009の問いに、003は透視能力が効かないと残念そうに答える。

 すると001が二人を背中に、宙に舞いながら述べた。

「僕のテレパシーでも黒武士の心意までは解りかねない。だけど……これだけは感じる。黒武士の心の奥底に感じられる、途轍もなく深い悲しみが……」

「悲しみ、だって……?」

 脳を強改造された為に身に着いた超能力を持つ001から述べられた説明を聞いて、009は黒武士の悲しみについて疑問に思った。

 

 その間にも、黒武士は再び戦場に居る全ての猛者達を襲い始めた。

「抗うな。静かにしていれば安らかに、そして何よりも穏便に死を与えてやろう。穏やかに死を与えられ、安眠する事こそお前達の末路に相応しい」

「勝手なこと言うんじゃねェ!! 誰もまだ死にたくないからこそ、最後まで抗っていやがるんだい!!」

 漆黒の長刀を振り翳す黒武士の台詞に、大将が激しく責め立てる様に突っ返す。

 しかし黒武士の猛攻だけでなく、あらゆる攻撃手段が意味を成さない現状に戦場で戦う者達は皆、心身ともに塞ぎ込み始めていた。

 

 果たして未来(さき)の見えない戦いに、終止符は訪れるのだろうか。

 

 

 

[鬩ぎ合う死の外科医]

 

 聖龍隊、そして国連軍にかき集められた名立たる悪党達による連合軍と黒武士の大戦の戦火は一向に鎮まらなかった。

 黒武士は、聖龍隊士だけに留まらず、国連軍元帥の赤犬や大将である黄猿に藤虎までもを退かせ、更には並居る猛者揃いの国連軍兵士までも撃退していった。

 だが聖龍隊士の諦めない精神が、国連軍兵士にも伝わり、連合軍の活気が沈む事は無かった。

 しかし戦況は変わらず、黒武士が圧倒的に戦局を押している一方。

 そんな苦心に喘ぐ戦況の最中、次第に参戦していた悪党達の多くが黒武士の圧倒的な力に怯え始めていた。

「だ、ダメだ……どう足掻いても、黒武士には勝てねえ……!」

「勝ち目なんて無ェよ……!」

「逃げるしかねぇ、もう負け戦はゴメンだ!」

 気弱な意思は他の悪党達にも伝達し、彼らは次第に戦意を失っては武器を捨てて、その場から逃げ出し始める者たちも目立ち始めた。

「こ、コラ! お前たち! このおれ様を置いて逃げるんじゃねえよ!!」

 黒い檻の中で鉄格子の隙間から手を伸ばして捕らわれているバギーは、必死に逃げ出し始める自分の配下の悪党達に呼びかける。

 しかし悪党達は黒武士に有効な戦術や戦法が現状無い事から戦意を喪失し、逃避行する者が続出した。

 

 そんな悪党達が逃げ惑う混乱の中、一人の青年が逃げ惑う悪党の人混みの中を悠然と歩いては真っ直ぐに黒武士に歩を進めていた。

 青年は逃げ惑う悪党達の群集の中からようやく出てくると、戦前に出ては黒武士と対峙する。

「か、彼は……?」

「あの人物は……死の外科医、トラファルガー・ロー……!」

 新世代型の烏丸さくらやプロト世代の海道ジンたち獄中の面々の視線を一身に受ける青年は、かの死の外科医と異名をとるトラファルガー・ロー本人だった。

 ローはただ真っ直ぐ黒武士と向き合っていると、そんなローの登場に黒武士が語り始める。

「ほほう、死の外科医トラファルガー・ロー、か……また三次元人の高い思想から現世に生まれ出たONEPIECEのキャラクターか……国連軍の赤犬達に続き、今生の世に生まれ出てしまった二次元人は何がしたくて我の前に立つ?」

 この黒武士の質問に、ローは鋭い眼光と不敵な面構えで黒武士に言った。

「おれは医者だ。まあ、正確には悪党だから正式な医者じゃないが……でも、そんなおれでも黒武士、お前たちに関心はある」

「関心、とな?」

 ローのこの発言に、黒武士だけでなく獄中の新世代型二次元人達も関心が惹かれる。

「かの鬼神、小田原修司のクローン……政府の後ろ盾や己の戦闘力の増強にしか興味が無かった小田原修司の変異した遺伝子を一部ながらも持つクローンの存在には、医者であるおれ自身とても興味が湧いている」

「………………」『………………』

 ローの言葉に黒武士も新世代型達も黙然と聞き入る。

「あの小田原修司を倒したと言うお前自身にも興味が湧くが……それ以上に、小田原修司の遺伝子や特性を一部ばかりコピーしている其処の檻に閉じ込めている新世代型達におれは興味が湧く。……手っ取り早く言っちまえば、アンタが新世代型を滅ぼすのはちょいと待ってほしいのよ。そいつ等を隅々まで念入りに調べたいからな」

『ッ!』「………………」

 新世代型達を入念に調べ上げたいと告げるローの発言に、新世代型達が驚愕する一方で黒武士は静かに前を直視するだけだった。

「まあ、要するに……おれがそいつら新世代型を調べるまで、そいつ等の身を危険にするのはやめてほしい訳なんだよ。だから取引しないか? アンタがおれに新世代型の身柄を全員引渡してくれるなら、おれはアンタの真っ白な桃源郷とやらに協力してやろうじゃないか。もちろん、おれが新世代型を調べ終わった暁には、新世代型をどう好きにしようがおれは構わない。な? いい条件だろう?」

 なんとローは、新世代型を引き渡してくれるなら、黒武士の計画に協力してやると切り出し、自分が新世代型を調査し終えたら好きなようにしても構わないと言い出した。

 これには新世代型二次元人達は愕然とし、更に大将たち赤塚組や聖龍隊の多くが反発した。

「おい、ロー! 黒武士の計画に協力する暁に、新世代型達を好き勝手に調べ上げるとは、どういう了見だ!」

 大将の反発にローは静かに答える。

「おれは興味があるだけだ……今まで多くの命を奪い、その力を増強する為に自らを人間兵器に下した小田原修司、そのクローンたる新世代型達の体……バラバラにしてじっくり観察したいだけさ」

 実に恐ろしい事を言うローの顔は、今まで見せた事もない様な不敵な笑みへと変貌していた。

 突然のローの提案に、多くの猛者達が反発の意思を向ける最中、ローに提案を持ちかけられた黒武士はローと対話し始める。

「……断ろう」

「ほう……何故だ?」

「我が求めるのは、その様なお主の欲望……人間の底知れない願望を無へと消し去る崇高なる桃源郷。お主の欲望の為に、我ら破滅の血族の肉体は貸せん」

 すると黒武士は、長刀に手を掛けるとローに告げた。

「……何より、己の欲求を満たそうとする邪険な心を消し去る為の我の計画……そんな欲に満たされた薄汚い人間が消滅した真っ白な桃源郷には、主の様な愚者は要らん」

 この黒武士の反対意見を聞いて、ローも常備している長刀に手を掛ける。

「そうかい……残念だな。せっかく、新世代型を好きな様に解剖してやれると思ったんだがな。正直、死ぬ前に一度拝んでみたかった……小田原修司のクローン、その肉体の中に秘められた神秘をな……!」

 そしてそのまま黒武士とローは、各々の長刀を抜刀して戦い出した。

 するとローの少し後ろに、ローの配下の子分であるシャチにペンギンそして白熊のベポが颯爽と現われてはそれぞれ楽器を手にして演奏し出した。

 この演奏に周辺の皆々は唖然とするが、ローは演奏に合わせるように歌い出した。

 曲はトラファルガー・ローの十八番「Dr. Heart Stealer」だ。

「トラファルガーROOMにようこそ♪ 君が君であるかどうか、鏡で確かめたか?」

 ノリノリで歌い出すローは、そのまま歌いながら黒武士と激しい剣戟を始めてしまう。

『自分のキャラソン歌いながら闘い出したよ!!』

『でも、やっぱり流石は美声!!』

 檻の中の新世代型達は、自身の曲を歌うローの行動に愕然としつつも、その美声にも圧倒された。

 そして自分の楽曲を歌いながら優雅に黒武士と闘うローは、そのまま長刀を巧みに扱いながら黒武士と互角の勝負を繰り広げる。

 

 黒武士と激しい剣戟を繰り広げ、両者互いに少なからず消耗した所でローは立ち止まり、決めポーズを取ると言った。

「来いよ、おれのROOMへ。全員、解剖(メス)してやるよ」

『解剖する気だ!』『嫌だーーーー!!』

 歌いながら黒武士と戦ったローは、最後に新世代型に声を掛ける。

 が、新世代型達はローが自分達を解剖する気満々で誘っているのを察知して絶叫してしまう。

 

 そして黒武士と激しい互角の勝負を繰り広げたローは、少々汚れた真顔で呟いた。

「しかし……参ったな。コイツはかつての小田原修司と同じく、おれの手術能力までも無力化しちまうから勝負がつかねェ」

 流石のローですら、自身の能力を封じられては黒武士に勝つのは困難の様子。

 すると、そんなローの呟きを地獄耳で聞き取った黒武士は言い返した。

「ふっ、己の体力を消耗してしまう主の能力は完全に我が封じている。故に、カウンターショックなどの電撃も、メスも使えないであろう」

「ほほう、おれの技を熟知しているとは……ますます厄介だな」

 自分の技を熟知している黒武士に戸惑いながらも表情を崩さないロー。

 

 そんなローに檻の中で自らの失態で入り込んでしまい、新世代型と同じく囚われの身になってしまっているバギーが訴える。

「おい! 死の外科医! 諦めないで最後まで闘いやがれ……おれ様はバケモノ同然の新世代型と一緒なんてゴメンだよ……」

(身体がバラバラになるアンタの方がバケモノだよ)

 自分勝手な発言ばかりのバギーに対して、新世代型達はバギーの方がバケモノ染みていると内心呆れ返ってしまう。

 

 そんな戦況が再び振り出しに戻ってしまった中、聖龍隊や国連軍などの連合軍の猛者達は再び黒武士に向かっていった。

 かつての鬼神・小田原修司の如く、その意志を貫き通す様に。

 

 

 

[駆け付ける次代の者たち]

 

 かつて一人の少年だった武人・小田原修司によって築き上げられた世界。

 それは理想とする二次元界と、現実とする三次元界が融合した一つの理想郷だった。

 しかし……世界は混迷を迎えていた。

 足正義輝が起こした現政奉還、その帝・義輝の従者にして謎の武人・黒武士が世界に対して宣戦を布告。大戦の炎が放たれた。

 一たび放たれし炎は、留まることなく燃え盛る。

 小田原修司が創設した聖龍隊と、混沌とする世界の現状を平定する為に創り直された国連軍との連合軍は、黒武士と激しい合戦を繰り広げていた。

 しかし、黒武士の戦闘力は凄まじく、連合軍の並居る猛者達をも容易く退かせる。

 誰もが黒武士との戦いに混迷を極め、戦意が消え掛けていたその時。

 そんな情勢の中で、ある若者達が迷いながらも己の道を探り、新しく得た絆と共に、未来(さき)だけを見据え、突き進んでいた。

 

「ゼェ……ゼェ…………アイツの力の源は何処からなんだ。聖龍隊の戦士や能力者が相手でも、息一つ上がってねえぞ……」

 黒武士と激しい消耗戦を繰り広げた赤塚組頭領の赤塚大作こと大将は、激しい戦闘を続けても尚、息一つ上がっていない黒武士の根底に参っていた。

 一方で、そんな大将や多くの猛者達を相手にしてきた黒武士は落ち着いた様子で参っている相手方の面々に言付けた。

「不毛よ、フモウ。我に逆らうなど、到底意味のない行為なのだ。万物生きとし生けるものは、全て安らかにその生を終わらせる事に意味があるのだ。無益に抗うなど、愚の骨頂に過ぎん」

「へっ、言ってくれるじゃねえか! だがな……俺たちは生憎、諦めの悪い連中ばかりでよ。俺たち赤塚組だけじゃねえ、聖龍隊や多くの連中が今までどれくらい厳しい荒波に……運命に抗ってきたのか知らねえのか? どんな運命だろうと抗い続ける、それが俺たち今生の二次元人の生き様よ!」

 黒武士の発言に大将は強気な姿勢で反論するが、大将の台詞を聞いて黒武士も反論した。

「そう、二次元人は今まで己の運命に抗い続けてしまった……本来のあるべき運命に抗い、本来の物語の筋書きを強引に捻じ曲げてしまった。我は、その歪んだ筋書きごと世界を真っ白に塗り替えるのみ……!」

 この黒武士の発言に、大将だけでなく多くの者たちが益々混乱するばかりであったが、黒武士はそれにお構い無しと疲労困憊している猛者達に攻め入ろうと長刀を抜刀する構えを示した。

「ッ!」

 既に黒武士の強襲で聖龍HEADは現場にいない、国連軍元帥の赤犬や黄猿といった戦力も疲労し切っており、黒武士に抗うほどの戦力が残されていない現状に大将は舌打ちした。

「地走り」

 そして黒武士は小田原修司も使える必殺技地走りを放ち、地を駆ける斬撃で攻撃してきた。

 大将や赤塚組の幹部達、戦前に立っていた面々は自分たちに向かっている斬撃を前にして愕然とした。

 が、その時だった。大地を駆ける地走りに、玉虫色の輝かしい緑色の三本連の斬撃が直撃。強力な地走りを打ち消してみせた。

 皆が、その地走りを打ち消した緑色の斬撃が来た方角へ目を向けてみると、其処には驚くべき人物達が戦前に向かって走ってきていた。

「赤塚殿……大丈夫ですか?」「お、お前は……カァチェン!?」

 得物である逆刃薙(さかばなぎ)を回転させて疾風の如く駆け付けてきたシバ・カァチェンを見て大将は驚きを隠せなかった。

 するとカァチェンに続いて、更に四人と一頭が戦前にやって来た。

「聖龍隊の戦乙女達よ! ここより我ら、イン軍が誇るなでしこ隊も参戦する! 共に黒武士を倒そうではないか!!」

「な、ナオコ殿……!? なんで貴女が此処に……?」

 なでしこ隊を後方に控えて勇ましく吠えるイン・ナオコの咆哮に、村田順一は動揺する。

「お待たせしました、聖龍隊の皆さん! アラブ十勇士の見習い、山中鹿之助の登場っす!」

「あれれ? なんで半人前の鹿之助まで、いるの?」

「おおっ! 鹿之助よ、遂にそなたも正義の戦に出撃する気になったか! 同じ正義を司る私は嬉しいぞ! ははッ」

 お目付け役の雌鹿おやっさんと共に戦前に出てきた山中鹿之助を見て、聖龍隊のミラールは首を傾げる一方で、韓国国将軍のサイ・チョウセイは鹿之助の出撃に感激していた。

「ケケ、ケケケッ……あれが黒武士か。俺様の獲物だぁ……キキキ!」

「おいおい、あの狂人野郎も一緒とは、どうなってるんだ?」

「ふふふ、あのカァチェンとやら。私たち二次元人との接触で、心変わりしてしまったのでしょう……ある意味、悲劇ですね」

「こいつは、どうなっていやがるんだい。あのマータンを手懐けるなんて、誰の仕業だ?」

 未だに微かながらに狂気が滲み出ているゴ・マータンも同行している様子を見て、ガイア・スコーピオンは不思議がり、黒衣衆たちはマータンを引き連れたカァチェンが何かしらの変化があったのを感じ取り、かつてのマータンの上司であった黒劉席は誰がマータンを手懐けたのが疑問に思った。

「へっへ、二次元人どもご覧あれ! 北の国の左腕に最も近い男……マン・サコンのご登場を! さあさあ、張った張った!」

「あ、あやつは確か反政府思想のテロリスト名簿に名前が上がっちょる、北の国の残党マン・サコンじゃないか! なぜにカァチェンと一緒におるんじゃ!?」

 二次元人を軽視しながら戦前に颯爽と飛び出したマン・サコンの姿を目撃し、赤犬が何ゆえカァチェンと行動しているのが疑問に感じた。

 

 そして戦前に出てきた五人は、ただ真っ直ぐ戦場を見据えている黒武士と対峙して構えた。

「カァチェン! お前さん、なんで此処に……!」

「赤塚殿、私は私なりに選んだのです。私自身が歩むべき、未来(さき)への道筋を」

 大将の問いに、カァチェンはしっかりとした言葉遣いで答えた。

「こりゃ! カァチェン! 貴様、聖龍隊に鞍替えしたと思いきや、今まで何処で油を売っとったんかい……!!」

 鬼気迫る国連軍元帥の赤犬は、かつて国連軍に台湾軍と共に在籍していたカァチェンに今の今まで何処に行ってたのか問い詰めようとした。

 するとカァチェンは真っ直ぐな瞳で赤犬を直視すると返答した。

「申し訳ありません、元帥殿。今まで国将軍である私が不在の台湾軍を代わりに率いてくれて誠に感謝致します。ですが……ホンの少しだけでよいのです。私たちに、機会をお与えください……黒武士と戦う機会を!」

「!? ………………」

 今まで赤犬が見た事のない力強い目付きに変貌しているカァチェンのしっかりとした対応に、流石の赤犬も動揺してしまう。

 すると、そんな国連軍元帥と言う絶対的な権威に対してカァチェンと同伴してきた青年が無礼な事を。

「おいおい、うっせぇよ二次元人。あんた達は一旦引っ込んだ引っ込んだ。後は俺たち三次元人様が黒武士の相手して綺麗に勝っちゃうからよ!」

「何を……!! 北朝鮮の残党如き、テロリストが何を抜かしよる……!!」

 青年マン・サコンからの発言に、思わず喧嘩に勃発しそうになる赤犬たち。

 と、そこにカァチェンが声を掛ける。

「お二人とも! 今は仲間内で争っている場合ではありません。黒武士を倒し、捕らわれている方々を御救いせねば……」

 カァチェンから指摘されて、サコンと赤犬は衝突寸前のところでやめて、サコンは再びカァチェンと肩を並べる。

「そんで? どうするんだいカァチェン。あの陰気臭いサムライ野郎をどう止める?」

 問い掛けるサコンに対して隣のカァチェンは答えた。

「答は見えません、そんな我々がやれるべき事は…………ただ一つ。全力で止めるのみ!」

「ふっ、悪くないな。全力勝負こそ、武人の本望!」

「は、半人前だけど、僕も全力出して行きまっす!」

「キ、キキ、こうなったら俺様も本気出しますよぉ」

 カァチェンの返答を聞いて、ナオコ/鹿之助/マータンは意気込んだ。

 

 そんな黒武士と真っ向から対峙する五人の若者たちを前にして、獄中の新世代型達は驚かされるばかり。

「あ、あんた達……」

 真鍋義久が唖然とする中、そんな彼にナオコが言った。

「カァチェンから諭されてな。本当に乙女にとって幸せな時代を築くには、まずは黒武士打倒が先決だと!」

 続いて鹿之助も新世代型達に身震いしながら言った。

「ぼ、僕も本心では非常に怖いですし、戦いたくもないんですが……けど、いつか一人前になる為にも、この大戦(おおいくさ)負けられません!」

 鹿之助に続いてマータンも新世代型達に言った。

「ケケケ、このマータン様が本気で戦ってあげちゃうんですからねぇ。お前等の様な、クローンっていう木偶でも助けてやろうっていう、俺様の寛大さに後で土下座して感謝しろよな」

 未だに僅かながらに狂気染みているマータンの言葉に、新世代型達は複雑な心持だった。

 

 そしてただ一人、新世代型達を直視せず下を俯いているサコンに琴浦春香が声を掛けてみる。

「あ、あの……サコン、さん……」

「黙ってろ!!」「っ!」

 憎んでいる二次元人から声を掛けられ怒鳴るサコンの声に、琴浦春香は一驚する。

 そしてサコンは体を震わせながら戦場に居る全ての二次元人たちに訴え掛けるように語り始めた。

「勘違いしてんじゃねぇぞ……! 俺はあくまで、お前たち二次元人の為に戦っている訳じゃねェ……!!」

 怒りに満ちた声で背中越に返事するサコンの並々ならぬ激情に新世代型たちが唖然としていると、サコンは檻の中の彼らに言った。

「俺は……俺は…………ミィチェン様の意志を知る唯一の生き残りとして、未来を生き抜く為に今をこうして戦う覚悟でいやがるんだ……! テメェら二次元人(バケモノ)共と同類の黒武士をぶっ潰した後は、全ての混沌の始まり小田原修司のクローンのお前らを片付けてやる!!」

 サコンから発せられる怒りの激情を感じ、新世代型達は彼が未だに二次元人を、それ以上に小田原修司のクローンである自分たち新世代型を恨んでいる事実を痛感する。

 しかしそんな怒りや憎悪といった激情のサコンは、しばし落ち着きを取り戻すと顔を上げて悠然と語った。

「……だけど、今の俺はお前たち二次元人(バケモノ)を一掃するよりも、全てを……そう、ミィチェン様がいた過去の歴史っていう記録までも消滅させようとする黒武士を倒すのが先だからな。テメェらは後回しにしてやるんだ、少しは感謝しろよな」

『………………………………』

 獄中や戦場の二次元人たちが言葉を失い、話に耳を傾けているとサコンは更に言った。

「何より……俺の友達(ダチ)がテメェらの様なクローンでも助けたいって頭を下げて頼んできやがったんだ。だから今だけは助けてやるよ」

 そう言ったサコンは、隣のカァチェンの顔を見詰めると、カァチェンもサコンの顔を見返す。

 

 そして五人は遂に強敵・黒武士と戦う時に進んだ。

「この世の全ての乙女と! ……そして、乙女が愛する男が幸せに暮らせる世界を創世する為! このイン・ナオコ、負けはしない!」

剛潔撫虎(ごうけつなでしこ) イン・ナオコ 凛然

「半人前だろうと何だろうと……みんなで戦えば怖くない! 山中鹿之助、いざ参る!」

明察麒麟(めいさつきりん) 山中鹿之助 出撃

「ケケ、ケケケ……俺は、俺はまた、世の中に認めてもらうんだ……ゴ・マータン様の実力、見せてやるぜッ!」

執心流浪(しゅうしんるろう) ゴ・マータン 執行

「北朝鮮の忠義者、ヤン・ミィチェンが片腕マン・サコン! いざ帝の大博打、勝ってやろうじゃねえか! さあさあ、張った張った!」

双天来舞(そうてんらいぶ) マン・サコン 勝負

「そして最後に……及ばすながら、此処にいる数多の友と共に未来を勝ち取る博打に参加させて貰い受ける……劣将シバ・カァチェン。いざ、お見知りおきを」

破願一望(はがんいちぼう) シバ・カァチェン 絶念

 

 こうして集結した五人の若者は、まさしく次代を背負うべき逸材。未来へと駆け抜ける意志そのものであった。

 

次世代五人衆 シバ・カァチェン マン・サコン イン・ナオコ 山中鹿之助 ゴ・マータン

 

 かくして次世代を担う五人の若者は、共闘して黒武士との戦いに踏み込んだのだった。

 

 

 

[仮面の奥]

 

 現政奉還を発起した足正義輝に仕えながら、義輝に激しい憎悪を滾らせる黒武士。

 その黒武士との未来を賭けた大一番である大戦に挑みし数多の猛者達。

 過酷な戦乱の中で、シバ・カァチェンは迷いながらも己の道を探り、新しき絆と共に、未来(さき)だけを見据え、突き進む。

 カァチェンたち五人は、果敢に黒武士に挑み、討ち取ろうと躍起になっていた。

 だが、カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)から放たれる疾風の斬撃は黒武士の長刀に弾かれ、マン・サコンの蹴りと斬りの二重攻撃は悉くかわされ、イン・ナオコの巨剣での重い一撃も容易く回避されてしまい、山仲鹿之助とおやっさんの連携攻撃は多少の打撃を与えられながらも倒すまでには行かず、ゴ・マータンの奇刃でのブーメラン攻撃は着衣している漆黒の鎧に傷を付ける事が叶わなかった。

 そんな五人を嘲笑うかの様に、黒武士は五人との戦いの中でも未だに衰える事無く、熱戦を繰り広げる。

 自分達の攻撃を全て見切られている現状に、五人は愕然とする中、カァチェンだけは諦めようとはしなかった。

 決して諦めないカァチェンの思いに後押しされ、何度でも立ち上がる五人の武人。

 カァチェンの思いは拡がり、まるで呼応するように数多の猛者たちも、再び黒武士に抗おうと大地を蹴った。

 絶対的な強さを誇る黒武士に、今なお抗い続けるカァチェンたち五人の武人が為に。

 すると諦めをしない猛者達の戦意を感じ取った黒武士は、仮面の奥から放たれる鋭い眼光を滾らせて徐に呟いた。

「この世界に……もはや意味はない」

 そう呟いた黒武士は、両手を組んで印の字を結ぶと更に戦前の猛者達に呟き掛ける。

「ここからは……狂乱の時間だ」

 その時だった。新世代型二次元人たちを捕えている檻が、突如として地面からせり上がり、その真下からは巨大な大岩が出現した。

「な、なんだなんだ!?」

 突然の事態に困惑する新世代型達。

 檻の真下、地中から現われた巨大な大岩は何処かしら繭の様な形を成していた。

 天地裂ける咆哮は、終わりを告げる号砲となり。

 数多の世界を賭けた戦いは、まさに最終局面を迎えんとしていた。

 ここより、極限を越えた死闘が。始まる。

 

 檻の下、地中から巨大な繭状の大岩を出現させた黒武士は、容易く跳躍して大岩の上にポツンと乗っかっている檻の上に飛び乗ると、地上の猛者達に言い放った。

「世界にはもはや希望も、未来も、名のある英雄もいらないのだ!」

 地上の面々が愕然としている中、黒武士は更に言い放つ。

「醜い現実も、幻の如き夢も終わり……あるのはただ無限に……真っ白に染め上がる終わりなき桃源郷!」

 個性(いろ)の無い、希望も理想も現実も絶望も無い真っ白な桃源郷に世界は変わると豪語する黒武士の発言に、地上のカァチェンが唱えた。

「私には、何もなかった。ですが……バーンズや加賀美殿、聖龍HEADと出会い、新世代型二次元人の皆さんと出会い……そして、多くの武人と出会った」

 数多の二次元人や三次元人の武人と出会い、それによって己を変える事ができたカァチェンは黒武士に

「様々な人との出会いで、人は……己は変われるのです! そんな多種多様な個性(いろ)で埋め尽くされた、この世界を貴方が滅ぼすと言うなら……私だけでも最後まで抵抗します!」

 すると「へっ、お前だけじゃないぜ、カァチェン!」と、黒武士に熱弁を振るうカァチェンに声を掛けるサコンも続けて語り出した。

「この世の中、確かに二次元人っていう胸クソ悪い連中ものさばっている……けれどな。だからといって、俺たちの進むべき未来を滅ぼす権利はテメェにも誰にも無ェんだよ!」

 サコンに引き続き、鹿之助とナオコも黒武士に向かって唱える。

「子供は英雄に憧れるものです!」

「だからこそ、私達は迷わない! 迷わず、走り続けられる!」

 ここで再びサコンが黒武士に向かって叫ぶ。

「ぜってーーその面ひっぺがしてやるぜ!」

 そしてカァチェンが力強い眼差しで、黒武士に告げる。

「それで、新世代型の皆々様を助け出し、帝を倒す……! それで終わりです!」

 次世代五人衆の戦意を知った黒武士は、彼らと数多の猛者達の攻撃を避けつつ反撃しながら会話した。

「そう上手くいくと思うか?」

 次の瞬間、黒武士は瞬時に姿を消したと思いきや、一瞬で地上のカァチェン達の近くに移動して地を駆ける斬撃「地走り」を繰り出してきた。

「で、でかい!」

 しかも、その地走りは今までのよりも遥かに大きく、カァチェン達の背丈を越えていた。

 カァチェン達は瞬時に横へと回避。すると回避すると同時にゴ・マータンが奇刃を投げつけて黒武士に応戦。

 しかし黒武士はマータンが投げつけた奇刃を長刀で弾き返すと、即座にマータンに急接近して彼の胴体に刃を斬り付けた。

「わっ!」「マータン!」

 斬られると同時に後ろへと吹き飛ばされるマータンを見て、ナオコが声をあげる。

 マータンの方は、辛うじて胴巻が刃を防いでくれたお陰で大事なかったが、胴巻には鋭い跡が残っていた。

 一方で、黒武士が出現させた巨大な繭の様な大岩の頂上に取り残された檻の中で、新世代型二次元人達は頂上から閲覧できる絶景の如き戦場を見下ろしつつも怯え切っていた。

「ど、どうなってるんだよ! この状況……ッ!!」

 檻の鉄格子を掴みながら、泣き言を喚く真鍋義久の絶叫に地上の猛者達は首を痛めるほどに大岩の頂上を見上げる。

「クソッ! あの繭の様な大岩は何なんだ!?」

 聖龍隊の一員である黒崎一護が発した疑問を、カァチェンたち五人の若者達と対峙していた黒武士がその疑問に答えた。

「生み出すのだよ……! この世全てを……この醜く腐敗した世界を無一色に変える大いなる破滅を……! 我ら破滅の血族の力を凝縮した禍々しき神を!」

「神だって……!? 何をホラ抜かしてやがるんだ……!」

 黒武士の発言に理解できない大将が反論するが、それに黒武士は即座に応答する。

「法螺ではないぞ、赤塚大作……! 我ら破滅の血族の血筋と言う因果から、この世全てを簡単に塗り替える怪物を……いいや、神を創り出し、生み出すのだ! そう、全ては醜い個性(いろ)を無に……真っ白に塗り替える、穏やかで真に美しい理想郷が為に……!」

「ケッ、何が理想郷だ! 簡単に纏めると、オレ達の個性とか感情とかを消し去って、自分好みの世界に変えちまおうって狙いじゃねえか!」

 002が黒武士の熱弁に反論をぶつけるが、黒武士は絶えず己の考えを説き続ける。

「我ら破滅の血族の呪われし血筋を一つに集結させたその怪物は……そうだな、仮にも『暗黒獣』と命名しようか。その暗黒獣は今、檻の中の連中の生体エネルギーを檻が吸収して、繭の如き大岩の中に集束させている。身体・特殊・その他の技や術などの力を一堂に吸収した暗黒獣が生まれれば、おそらく誰にも止める事は不可能だろう」

「ちょ、ちょっと待てよ!! それって、檻の中に捕らわれたおれ様のバラバラの能力も吸収されちまうって事か!?」

 黒武士の説明を聞いたバギーが慌てふためくが、そんな彼に黒武士が言う。

「勘違いするな。お前の様な旧世代の二次元人などではなく、我ら破滅の血族……それに属する新世代型二次元人の力のみを吸収して、禍々しき暗黒獣を生み出すのだ」

「そ、それじゃ……俺たちの遺伝子に組み込まれた小田原修司の力もって事か!?」

「察しが良いな、真鍋義久。そう、呪われし血族の始祖、小田原修司の血筋こそ……暗黒獣を生み出すのには必要なのじゃ」

 黒武士と真鍋義久の会話を聞いて、檻の中の新世代型達は絶句した。

「世界には最早、希望も絶望も、未来も過去も……名のある英雄すらもいらないのだ! あるのは虚しい現実も、ただの幻の如き理想も終わった……ただ一つの無限に続く真っ白な桃源郷のみ!!」

「世界から個性を……色を失くすだと? 何を言ってるんだ……!」

 黒武士の熱弁に大将が問い返すが、黒武士はそんな大将と対話を始めて説き伏せ出した。

「赤塚大作、いや大将……世界の悲劇を、歴史の残酷さを、捻じ曲げられた物語の醜さも……何より、多種多様な個性(いろ)で塗り潰されて醜く変わってしまった世界の真実を知らないでいるお前に、人の未来を語る資格はない」

「………………」

 大将が口を開こうとした、その時。

「やめろ。大将……お前はそうやって簡単に口を開こうとする。後悔だらけの生涯を送るのにふさわしい男だよ」

「な、なんだと……!」

 黒武士からの言葉に大将は動揺しながらも苛立った。

 すると此処で黒武士と対峙する五人衆の一人シバ・カァチェンが強い眼で言った。

「……私には、当初は個性などと言う己を表す感情はありませんでした。……ですが、皮肉ながらもこの現政奉還で多くの人と出会い、そして学びました。色があるからこそ、世界は輝きを失わず、前へと向いて歩めるのです!」

 そしてカァチェンは黒武士に対してハッキリと言い表した。

「こんな私が何処まで歩めるのかは、まだ分かりません! ですが、かつて私と同じ欠けた心を持った少年、小田原修司の様に……あの方の様に大きな夢は持てずとも、自分だけの夢を見つける! それが今の私の意志です!!」

 このカァチェンの意志を聞いて、彼と共に黒武士と対峙している五人衆は力が沸き、戦場で満身創痍に至っている猛者達もこの言葉に激励を感じ取った。

 

 すると、そんな力強い意志を示すカァチェンを前にした黒武士の様子が変わった。

「……シバ・カァチェン。お前を見ていると、激しく虫唾が走る。欠けた心を持ちながら……希望を諦めず、未来(さき)へと進もうとしているお前の意志は、どうやら暗黒獣創生の前に摘み取らねばならんようだ……!」

「へっ、カァチェンの意志を摘み取る前に俺たちがテメェのくだらねェ野望を止めてやるぜ!」

 様子が変わった黒武士の眼光に怯まず、マン・サコンが強気な姿勢を崩さず示していると黒武士が返答する。

「野望ではない、そう……一望という言葉すらも無へと誘う我ら破滅の血族の力の集合体である暗黒獣は、全ての望みも夢も消滅させるのだからな」

 そして黒武士は、力強い意志を示すカァチェンに狙いを定めると、一気に真っ向から突撃。黒武士の長刀とカァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)が火花を散らす。

 

 かくして此処に、黒武士が仕掛ける死闘が展開されるのであった。

 

 

 

[共有される意思]

 

 皮肉にも、この現政奉還という乱世の中で己の中の微かな一望を追い求め、己を変えるまでに至った武将シバ・カァチェン。

 そんなカァチェンに敵対心を燃やし出した、全ての希望や未来などを滅ぼそうと企む黒武士。

 二人は激しく闘いながらも、同時にカァチェンによって一つに纏められた次世代五人衆が補助に入り、彼を手助けする。

 しかし黒武士は攻撃の手を緩めず、果敢に五人の攻撃を回避しながら反撃に転じて彼らを苦しめる。

 そんな五人の切磋琢磨な姿勢と勇姿に心を揺れ動かされた多くの猛者達は、それぞれ近い方から黒武士に接近してカァチェン達の援助に回る。

 味方である聖龍隊や国連軍が懸命に、カァチェン達に加勢する中、ほぼ常人の集まりである赤塚組幹部衆が集まって会話する。

「やはり強いわね……大将、どうする!?」

 黒武士の圧倒的な戦力に動揺しつつも、自分達が信じる大将である赤塚大作に幹部のミズキが問い掛ける。

 これに大将は一時、熟考しては決断した。

「このまま追い詰める……! そうすれば、アイツの正体も判明する筈……!」

 大将の決断に促され、赤塚組幹部衆もカァチェンたちに加勢。黒武士を追い詰めて、その素顔を明らかにしようと画策する。

 

 戦場で黒武士と戦うのは、様々な能力や身体能力、そして技術を持った屈強の猛者達。

 そんな猛者の一部であるワイルドタイガー率いるNEXTヒーロー達が、各々の能力で黒武士に攻撃を仕掛ける。

 だが、彼らの特殊能力は悉く黒武士の闇の能力の前では無力化されて、効力を示さなかった。

 ワイルドタイガーとバーナビーの二人が、特殊能力を駆使して強力な拳を打ち込もうと突撃するが、黒武士は長刀を鞘に納めると素早く二人の拳を両手で受け止めて、攻撃を防いで見せた。

「くっ……!」

「っ……やはり、ハンドレッドパワーも防がれてしまうみたいです……!」

 タイガーとバーナビーの二人が悔しそうに表情を歪ませると、黒武士は二人を軽々と投げ飛ばしてしまう。

 父とその相棒が投げ飛ばされたのを視認した鏑木楓は、敢えて父からコピーした特殊能力とかつて小田原修司から習得した体術を駆使して黒武士と闘おうと決意する。

 しかし楓の繰り出す正拳や回し蹴りを、黒武士は全て見切った上でかわし、逆に楓を吹き飛ばすほどの掌ていを彼女の額に直撃させた。

「ぐっ!」「楓!」

 吹き飛ばされる娘を目の当たりにして、ワイルドタイガーは即行で楓を両腕で受け止めた。

 一方、楓を吹き飛ばした黒武士は目の敵にしているカァチェンを視界に捉えて彼に突撃していた。

「ッ!」

 カァチェンは黒武士が繰り出す鋭い突きの刃に逆刃薙(さかばなぎ)で応戦する。

 しかしカァチェンは全ての突きを受け切れずに、何発か胴体に直撃してしまう。

 次第に追い詰められていくカァチェンの危機に、イン・ナオコや山中鹿之助そしてゴ・マータンが助太刀に入る。

 だが黒武士は助太刀に加勢しに来る三人や、遠距離攻撃でカァチェンを支援している聖龍隊士の攻撃を簡単に回避しては悉く返り討ちにしてしまう。

 大勢の武人が黒武士と一騎打ちに乗じてしまったカァチェンを応援する為に、続々と彼に続いて黒武士に攻めていく。

 そんな中で、先ほど黒武士と戦ったサイボーグ戦士達に動きが見られた。

「フランソワーズ」

「え? なに、001」

「僕を……黒武士の近くまで誘導してくれないかい?」

「え! そんな、危険よ……なんでまた?」

「気になる事があってね……黒武士の思想を、もう一度確認したいんだ。僕の考えが間違ってなければ、彼と彼らは……」

 乱戦に巻き込まれないように少し離れた所で003に抱き抱えられる001の思考に、少しでも黒武士の正体を把握できればとサイボーグ戦士たちは動いた。

「よっしゃ! 001に賭けてみますか!」

「そんじゃ、いくアルよ!」

 007と006の仲良しコンビは、001を少しでも黒武士に接近させようと行動に移す。

 そしてサイボーグ戦士達が黒武士に接近して、一斉射撃を仕掛ける。が、黒武士は全ての光線を長刀を横に構えてはじき返してしまう。

 黒武士が全ての光線銃を撥ね返している最中、その黒武士にテレポーテーションで急接近した001が再度黒武士の意識をテレパシーで読み解こうとしていた。

 すると黒武士の潜在意識の奥底が001には見えた。

「え? そんな……!」

 黒武士の潜在意識の奥底を透視した001が驚愕していると、そんな001に黒武士が気付いた。

 黒武士が光線銃を撥ね返している所で一瞬の内に移動しては、001に長刀を振り翳して彼をバッサリ切断しようと襲い掛かってきた。

「い、イワン!」「001!」

 003と009が大声を上げる最中でも黒武士は001に飛び掛る。

 が、そんな001の危機を意外な人物が助け出した。

「ぐっ……!」

 それは他でもない二次元人を憎んでいるマン・サコンだった。サコンは両手の双刀で黒武士が振り翳した長刀を受け止めつつ、身を盾にして001を庇ったサコン。

 だがサコンの防衛は意図も容易く突破され、サコンは派手に吹き飛ばされてしまった。

「だ、大丈夫かい?」「大丈夫? あなた……」

 吹き飛ばされたサコンに009と003が駆け寄り、003が手を差し伸べようとするが。

「さ、障んじゃねえ! 二次元人め……!」

 このサコンの睨みを利かせた突っ返しに、009と003は彼サコンが心底自分たち二次元人を嫌っているのだと再認識した。

 サコンはすぐに起き上がり、再び戦いに参戦しようとすると、其処に先ほど助けて貰えた001がお礼を言いに来た。

「ありがとう。まさか、キミに助けられるとは思わなかったよ」

 するとサコンは照れ臭そうに001に言った。

「う、うっせぇ! 俺はな、その…………いくら憎い敵とはいえ、赤ん坊を殺したり、死なせたりするのは癪なんだよ……」 

 サコンの照れ隠しが垣間見える言動を目の当たりにして、001は一時茫然としながらサコンに言った。

「……キミって…………本当は優しいんだね」

「! うっせえ、うっせえ!! 二次元人に言われたって嬉しくも何ともねぇよ! バーーカ」

 敵とはいえ、赤子の様な幼い童は手にかけないというサコンの実情を知って、001や009たちサイボーグ戦士達は穏やかな笑みを零した。

 

 そして此処で、先ほど黒武士の潜在意識を読み取った001が戦場に居る全ての隊士や兵士達にテレパシーで伝えた。

「みんな! 聞いて欲しい……黒武士を倒せるかもしれない情報かもしれない」

 この001からのテレパシーに、戦場の誰もが立ち止まり、黒武士と彼と激しく戦っていたカァチェンたちも動きを止めて話に耳を傾ける。

 そして戦場は一時ながら戦いの轟音が鳴り止んで、静寂が包まれた。

 そんな中、001がテレパシーで戦場の皆々に伝達した。

「さっき黒武士の潜在意識を読み取って、解ったんだ。彼の潜在意識には、大きな特徴がある」

「な、なんだ? その特徴って……」

 大将が疑問に顔をポカンとさせる中、001は語り続ける。

「黒武士の潜在意識、その中を透視してみた結果……彼の頭の中には複数の人格がいた!」

 この発言に戦場は騒然と化す。

「な、なんじゃ!? それじゃあ、黒武士は一種の多重人格障害じゃと言うんかえ?」

 赤犬が問い返すと、001はそれに返答しつつも更に語る。

「いや、多重人格とは違う……簡単に言えば、彼の思考の中には他の人間の意思が流れ込んできていると言っても過言ではない……」

 そして語っていた001は、徐に巨大な繭状の大岩の頂上に取り残されている檻の中に閉じ込められた新世代型達に唐突ながら問い掛けた。

「キミたち、さっきから可笑しな頭痛がキミ等を襲ってはいなかったかい?」

「そ、そういえば……さっきから激しい頭痛がちらほらと……」

 001からの質問に真鍋義久が答えると、001は新世代型達に返事した。

「それは極限の状態で情報処理を速攻で処理して戦っている黒武士の思想がキミたち新世代型の思想に流れ込んできたから、キミたち常人の頭脳では急激な戦いの情報処理が追い付かないから、激しい頭痛に襲われた訳なんだよ」

「そ、それって……」

 001からの説明を受けて、琴浦春香たち新世代型達は一抹の不安が脳裏に過ぎった。

 だが、001はそれを敢えて包み隠さず真実を述べた。

「キミたち新世代型二次元人と黒武士の意思は…………繋がっている。まるで同族の如くね」

『!!』

 001が明かした衝撃の真実に、新世代型達は衝撃が全身を走った。

「ちょ……ちょっと待て! どういう事だ? なぜアイツの潜在意識と新世代型二次元人たちの意識が繋がっている!?」

 説明を聞いても尚、何ゆえ新世代型達の意識と黒武士の意識が繋がっているのか納得が出来ず、001に問い詰める大将。

 一方で001からの説明を聞いた次世代五人衆の五人は、話を聞いて各々で話し出していた。

「へっ、確か新世代型には、共有感知、っていう自分達だけの意思疎通があるって聞いたぜ。その共有感知で同じバケモノ同士、潜在意識が繋がっているんじゃねえか?」

「こらっ、サコン! そんな口は開くな! 新世代型達の気に障るだろ……」

「黒武士にも共有感知……? そ、それじゃ、やっぱり黒武士は新世代型二次元人の一人?」

「ケッ、なぁにが黒武士を倒せるかもしれない情報だよ。黒武士の意思と新世代型共の意思が繋がっているだけで、何が倒せるんだい」

「………………………………」

 サコン/ナオコ/鹿之助/マータン、そして黙然を貫くカァチェンが静かにそして険しい顔付きで黒武士と対峙する中、更に001が説く。

「待って! 確かにこれだけで黒武士を倒すのは難しいかもしれない……けれど、みんなは……特に聖龍隊のみんなは忘れてはいない筈だ。前聖龍隊総長小田原修司のずば抜けた特性を……!」

『!?』

「ハァ? 小田原修司の特性?」

 001の説明に聖龍隊士全員が激しく動揺する中、修司をも忌み嫌っているサコンは表情を強張らせる。

「修司君は確かに発達障害者だった。だけど、その障害ゆえに常人と比べると、ずば抜けた能力があるのを知っている筈だ。その一つが特化した集中力、戦場では並居る数多の敵ではなく、個々の敵に集中して確固撃破をやり遂げては次の敵を倒し、そしてまた次の敵を倒す。一人の敵を倒すために費やされるその集中力は非常に高く、統括能力にしても常軌を超えた集中力で瞬時に判断を下す彼の指揮を忘れた訳じゃないでしょ。その小田原修司の戦術や能力を丸々コピーしている黒武士にも、修司君の集中力が備わっているかもしれない」

「そ、それで……備わっているとしたら、俺たちはどうすりゃ良いんだ?」

 大将が訊き返すと、001は衝撃的な説明を述べた。

「黒武士の研ぎ澄まされた集中力を削ぐには……新世代型二次元人達に黒武士の潜在意識の中に潜り込んで、あらゆる手段で黒武士を止めてくれればいい」

『え…………ええ!?』

 001の説明を聞いた新世代型達は驚愕した。

「止めるって……どうすんだよ!? それに黒武士の頭ん中に入り込むったって、そんな芸当ができるかどうか……」

 真鍋義久が困惑していると、001が彼ら新世代型達に優しく話し掛ける。

「確かに、潜在意識の中とはいえ危険な行為だ。意識の中で黒武士と、どうなるか解らない事だらけだけど……けど、キミ達が黒武士を潜在意識の中で止めていてさえすれば、現実世界で僕たちが黒武士に直接強力な攻撃を与える事ができるかもしれない。修司君の研ぎ澄まされた集中力も備えた黒武士の集中力を削ぐ事ができれば……黒武士にダメージを与えられる隙が生まれる可能性だってある!」

 しかし多くの常人である新世代型二次元人達は困惑する一方。

「む、無理や無理ィ! ワテら普通の、何の能力もない二次元人が聖龍隊や国連軍の猛者達を簡単に退ける黒武士と戦うなんて無理やぁ!」

「無理に戦わなくてもいい! ただ、黒武士の気を引くとか、動きを止めたりする事さえしてくれれば……」

 鳴子章吉(なるこしょうきち)の泣き言に、001が必死に説得するばかり。

 

 そんな混迷に至る新世代型達が頂上に残された大岩を背に、黒武士が猛者達に告げた。

「何を言っても無駄よ、ムダ。所詮は破滅の血筋しか受け継いでおらん、弱輩者ばかりの新世代型。我の動きを止める以前に、我の潜在意識に潜入する決意など、在りはしないのだよ」

 黒武士は長刀を握り締め、構えると鋭い眼光で言った。

「待っていろ……すぐに無限の桃源郷へ連れて行ってやる」

 

 新世代型二次元人と黒武士の意識が繋がっていると言う驚愕の事実が発覚した戦場。

 しかし黒武士の研ぎ澄まされた集中力を削いで、隙を作り出す策は新世代型達が勇気を出してくれなければ実行できない。

 そんな戦況の中で、猛者達は黒武士の隙を見出して攻撃に転じられるのであろうか。

 

 

 

[託された想い]

 

 戦場に駆け付けた次代を担う若者達。

 シバ・カァチェンたち五人の若者達の総力を重ね合わせても、全ての意思と時を奪おうとする黒武士の凶行を止める事は侭成らなかった。

 そんな中、黒武士は先に捕らえている新世代型二次元人たちの力を吸収させた大いなる破滅を誘う『暗黒獣』の創生を開始する。

 暗黒獣創生まで、時が一刻また一刻と進む中、サイボーグ戦士が一人001が黒武士の潜在意識の居中を探る。

 すると001が視たのは、黒武士の潜在意識と檻の中に捕らわれている新世代型二次元人の思想が繋がっていると言う衝撃の事実。

 新世代型二次元人の頭を襲った痛みも、彼らの脳裏に突如として浮かんだ戦場の景色も、全て黒武士の思想と自分達の思想が繋がっているからだった。

 この事実を知って、001は新世代型達に潜在意識の中で黒武士を止めている間に、現実世界で集中力が途切れた黒武士を打倒する作戦を思い付く。

 しかし新世代型達は、驚異的な実力を誇る黒武士と潜在意識の中とはいえ戦うのを躊躇ってしまう。

 破滅の時は、一刻一刻と無情にも進み続けていた。

 果たして、黒武士の研ぎ澄まされた集中力を削いで、黒武士に負傷を与える事は可能なのだろうか。

 

「死にさらせ!」

 かつての北の国の特攻隊長マン・サコンが黒武士に向けて双刀を振り翳して斬りかかる。

 しかしサコンの斬撃を黒武士は容易くかわすと、長刀を握り締めてサコン反撃とばかりに斬り付ける。

 このサコンの危機に、今から二年前のアジア大戦で共に今は亡きヤン・ミィチェンの側近として働いていた黒衣衆の大闇刑蘭(おおやみぎょうらん)が巧みに操る数珠で黒武士の長刀を弾き飛ばす。

「サコンよ、無事か? まあ、昔から無鉄砲な主がそう簡単にくたばるとは思えんが」

「ぎょ、刑蘭さん……」

 かつて同じ将の側近として共闘した事もあった間柄に、サコンは唖然としながら刑蘭を見据えた。

 そんな二人を見て、黒武士が冷淡に告げる。

「かつての北朝鮮の残党軍の武将二人、か……だがサコン、お前も既に知っている筈。刑蘭たち黒衣衆は小田原修司を討ち取る目的で、アジア各地の武人に接触した上で各地で同時テロを仕掛け、国を崩壊させた後に利用する目的で台湾や北の国の軍事力に深く潜り込んだ事を……解りやすく言えば、お前もヤン・ミィチェンも黒衣衆に利用されただけなのだよ」

 黒武士の問い掛けに黙り込むサコン。そんな彼の横でジッとサコンの様子を窺う刑蘭。

 するとサコンは強い面魂で黒武士に向かって言った。

「……テメェの言うとおり俺は既に、あのアジア大戦は黒衣衆が裏で糸を引いていたからこそ起きた戦だってのは知っている。そして刑蘭さんが俺やミィチェン様を利用する為に、参謀として残党軍に潜り込んでいた事も知っている」

「………………………………」

 サコンの一言一句に口を噤んでしまう刑蘭。

 だがサコンは黒武士を真っ直ぐ見据えながら隣の刑蘭の事を語り始めた。

「……でも、最初は俺たちを利用しようと考えていた刑蘭さんも、次第にミィチェン様に本気で仕えようと考えを改めていったのは、傍で見ていた俺には分かる! 結局、あの戦は聖龍隊側の勝利に終わっちまったが、刑蘭さんが最後までミィチェン様を見捨てなかった心意気だけは俺にも伝わっている」

「……サコン……」

 サコンの語りを聞いて、刑蘭は茫然としてしまう。

 すると同じくサコンの話を聞いた黒武士は、サコンに問い返した。

「ほほう、その刑蘭が小田原修司の政策で居場所を失った悪役……そう、二次元人である事も知っての言葉か? お前たち北朝鮮の軍人を追い詰め、滅ぼした二次元人であるその老婆をか……」

 この問い掛けに、サコンは一時無口に至る。

 だが次の瞬間、サコンは勝気な笑みで黒武士に突っ返した。

「ヘッ、確かに刑蘭さんは俺が大っ嫌いな二次元人なのは違いねぇ。でもな……ミィチェン様を最後は共に果てようとまで決意していた刑蘭さんの覚悟は信頼できる! 少なくとも聖龍隊よりはな」

 このサコンの返答を聞いて、刑蘭は唖然とし、黒武士は仮面の奥の目を細めた。

「刑蘭さんは聖龍隊との戦に出陣する前にミィチェン様に言っていた……『ミィチェンよ、共に地獄に参ろうぞ』ってな。覚悟を決めてミィチェン様と最後まで一緒に戦っていた刑蘭さんのマジな心意気を見逃すほど、俺の目は節穴じゃねェ!」

 サコンの返答に全く動じない黒武士相手に、サコンは更に言い放った。

「テメェは俺たちに桃源郷とか言って、結局はこの世の人間すべてを殺して真っ白でつまらねえ夢を見せなきゃ気が済まない性質なんだろ? だが、俺たちは違う……!」

「………………」

 黒武士が黙り込む中、、サコンは言い放った。

「俺たちは眠くなったら眠る! そんで好きなだけ夢を見る! テメェの手ェ借りて夢見るなんて、まっぴらゴメンだぜ!」

 そう黒武士に言い、己の戦意を突き向けるサコン。

 するとサコンに続いて彼と刑蘭の戦い振りを近くで達観していたカァチェンも黒武士に言い放った。

「貴方を倒し、帝を倒し……この戦争を終わらせる!!」

 黒武士を倒し、この現政奉還という戦乱を始めた足正義輝を倒して、失った平和を取り戻すと豪語するカァチェンに黒武士は静かに語り出した。

「……おかしな事を。所詮、我ら破滅の血族に縋ろうとするこの世界に、もはや平和は訪れん」

「誰もテメェら小田原修司のクローンなんか求めてねえよ」

 黒武士の語りにサコンが睨みを利かして新世代型二次元人の存在そのものを拒絶すると、黒武士は言った。

「たとえ、お主の様に破滅の血族を……小田原修司を否定する一部の者が存在していたとしても。世界の多くが、異常者(ヒール)や犯罪者を問答無用で狩り、それによって多くの富を発生させる社会を保持する為に小田原修司のクローンを望み続けるのだ。新世代型二次元人の存在は、小田原修司の畏怖を継続させる為の世界の……意思なのだよ」

 この黒武士の発言にサコンだけでなく多くの猛者達が愕然とする中、黒武士は更に語る。

「誰でもない無の世界。戦いもわだかまりもない完璧に美しい桃源郷。全てが無へと誘われた究極の世界」

 世界中の個性と言う色、個という意思を無くした世界こそが、完璧に美しい究極の世界と豪語する黒武士。

「後悔しても遅いのだ。現実は……ただ残酷に突き進むだけ」

 後悔が残るであろう醜い現実は、無情にそして残酷に進むだけと提言する黒武士。

 そんな己の論理を語る黒武士の一言一句に皆が蒼然としていると、黒武士は視線をシバ・カァチェンに向けて彼に問い掛けた。

「シバ・カァチェンよ……お主こそ、この現政奉還で最も変わった人間ではないか? 二年前の乱世で、モウ・チェイファンの策謀でも死ぬ事ができず、台湾と言う戦犯である小国の生贄同然に形だけの国将軍を任せられる事になった無気力な若者であるお前が……今の様に己の意思をはっきりと表せるのは、やはり聖龍隊と出逢いが切っ掛けであろう?」

 この問い掛けにカァチェンは真っ直ぐな瞳で答えた。

「ええ、そうかもしれません。私は聖龍隊の方々と出会い、そしてそれから多くの出会いと別れ、さらに幾多の戦いや数多の運命に関わってきました。それで自分が本当に変われたのか未だに疑問ですが……それでも、聖龍HEADがかつての友である小田原修司の様に、私にも変わって欲しいと願ってくれているのであれば……私は、ホンの少しでも言い。弱輩者である自分を変えたい……! 聖龍隊から、二次元人から託された夢に近付きたい!」

 カァチェンは聖龍HEADから託された夢という想いに未だ完全な自信が湧いていなかったが、それでも自分を変えたいと言い切った。

 すると黒武士はカァチェンに言った。

「託されている、か……だが、カァチェンよ。もしバーンズやミラーガールがお前に託した『己を変える』という夢を、お前が叶えられなかったら……あいつらはどう思うか。そしてお前自身が、その夢を蔑ろにしたら……」

「………………!」

「他の次世代五人衆も同じだ。自分達が思い描く、未来の自分の姿……叶えたい野望。それらを叶えられなかったら、どう生きるのか」

『………………』

「託されたものを失敗したら……お前達は自分自身をどう思うのだろうな?」

 黒武士は更に鋭い眼光でカァチェンたちを責める。

「問題を先送りにし、希望と言う言葉で誤魔化しても……虚しい現実が待つだけ。託した側も託された側も……虚しいだけだ」

 五人も、その他の猛者達も、黒武士に言い返す言葉を失っていた、その時。

 マン・サコンが黒武士に強く反論し出した。

「悪いけど、俺たちは……少なくともカァチェンは、テメェの言葉に当てはまらねェ」

『!』「………………」

 サコンの言い出しに、黒武士もその他の皆々も耳を傾けた。

「なんせカァチェンは……祖国を失い、ミィチェン様を失って、自暴自棄になっている俺を誘い入れただけでなく……ダチにもしちまう程の男なんだ」

「!」

 サコンの発言にカァチェンは驚くが、そんなカァチェンたち四人の友にサコンが言う。

「行こうぜ……カァチェン、みんな!」

 サコンのこの言葉に後押しされて、カァチェンたちは一斉に黒武士へと駆け出した。

「テメェは、俺たちは失敗しねェ!!」

「ああ!」

 サコンの言葉で勇気を貰ったカァチェンたちは、再び黒武士に一矢報いようと大地を蹴った。

 

 一方、地上での戦いを、ただ檻の中で傍観するしかない捕らわれた新世代型の面々は。

 先ほど001に指摘された「黒武士の意識の中に潜り込んで、黒武士の並外れた集中力を削いでほしい」という要望について未だ迷っていた。

 黒武士と自分達の潜在意識が繋がっていると言われたが、その事実に頭がまだ追い付いていない状況だった。

 だが、あの弱気で自信が無かったカァチェンがいま戦場で中間達と共に黒武士に挑んでいる戦況を目の当たりにして、新世代型達の揺らめく心を突き動かし始めていた。

 新世代型達の取った行動とは。

 

 

 

[決断する新世代型二次元人]

 

 暗黒獣が生成されていく巨大な繭状の大岩の頂、その漆黒の闇の檻に捕らわれている多くの二次元人たち。

 その大部分である小田原修司のクローンである新世代型二次元人たちは、地上で黒武士と激しく抗戦を続けているシバ・カァチェンたち次代を担う若者達の奮闘振りを目撃して心が揺れ動いていた。

「……アイツら、俺たちの為に命懸けで……」

 新世代型であるレドは、地上で奮戦しているカァチェン達の勇姿を見て唖然としていた。

 かつて自身に誇りを持てなかったカァチェン、大切な人と死別してしまったイン・ナオコ、親と離れてしまった半人前の山中鹿之助、過去の失敗の数々で誇りを欠けてしまったゴ・マータン、そして祖国と主君を喪い自暴自棄に陥り二次元人を憎み続けるマン・サコン。

 五人の勇姿を見下ろして新世代型達の心中で何かが揺れ動いていた。

「だけどあのままじゃ、黒武士には到底勝てない……!」

「あのかわし様……身のこなしから、カァチェン達を凌駕しているのは目に見えている」

 星原ヒカルと出雲ハルキらも、カァチェン達の攻撃を容易くかわし、反撃に転ずる黒武士の動きを見て、その腕前が五人を遥かに凌駕しているのを察した。

 五人の勇姿を同じく目撃した聖龍隊士や国連軍兵士も、続々と五人に助太刀するが、黒武士に決定的な負傷を与える事には繋がらなかった。

「このままじゃ、みんなやれてちゃう……!」

「何とかしないと……」

 琴浦春香も御舟百合子にも焦燥の顔色が滲んできた。

 そして新世代型二次元人達は、この戦況を変える為にある決断を下した。

「…………よし、一か八か。001が言っていた様に、黒武士の潜在意識に潜り込もう!」

 この真鍋義久の発言に、他の新世代型達が一斉に頷く中、プロト世代のチョコや悪党であるバギーは一驚した。

『ええ!?』

「そ、そんな! 危なくないの? 黒武士の意識の中に潜り込むなんて」

「危険すぎる! いくら潜在意識の中とはいえ、黒武士に何かされてもしたらタダじゃ済まないかもしれない……!」

「お、おいおい! 潜り込んだのはいいが、テメェらまで黒武士みたいに狂っちまう可能性もあるんだぞ!?」

 桃花・ブロッサムに海道ジン、そしてバギーから忠告されるものの、新世代型達は意を決していた。

「確かに危ないのは百も承知です……だけど、このまま黙って観ていても地上のみんなが……自分を変えてまで私たちの為に戦っているカァチェン達が苦戦しているのは変わりない。それなら本当にできるかどうか解らないけど、黒武士の頭の中に潜り込んで、黒武士に訴えてやる! これ以上、みんなを傷付けないでって。それでも戦うのをやめないなら、何が何でも黒武士の戦いを妨害して、カァチェン達を手助けしてみせる!」

 琴浦春香の力強い熱弁を聞いて唖然とするプロト世代とバギー。すると琴浦春香の熱弁を聞いて、先ほど自分自身も新世代型だと知らされたジェイク・ミューラーも語り始めた。

「それもそうだ! このまま檻の中で黙って閉じ込められているよりも、何か行動した方が為になる! ジッとしてるより、自分の運命は自分で切り拓いた方がマシってもんだ!」

 ジェイクの熱弁にも、プロト世代たちとバギーは唖然とするばかりであったが、そんな新世代型達の決意を前にして、プロト世代のチョコが優しく琴浦春香たちに言った。

「琴浦さん、みんな」

「………………」

「……気をつけて。どんな結果になるか予測が付かないけど、みんなが無事であれば私は文句言わないよ」

「……うん!」

 チョコからの気遣いに、琴浦春香は力強く頷いて返答する。

「み、みんな、気を付けるんだよ」

 ギュービッドも、これから黒武士の潜在意識の中に突入する決意をした新世代型達に言葉を掛ける。

 そして新世代型達は、静かに瞼を閉じて意識を集中させては、黒武士の潜在意識の中に突入していった。

 

 新世代型達が意識を集中させて瞼を閉じていると、暗闇だった視界に突然真っ白な光が飛び込むと同時に広がっていく。

 その白い光に導かれる様に、新世代型達が目を開けてみると其処は真っ白な何も無い空間が広がっていた。

「此処は、何処だ? 此処が黒武士の意識の中か……?」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)は辺りを見渡して、その不思議な景観の中で佇むばかり。

 すると、そんな何も無い誰もいないと思われた真っ白な空間に、ポツンと一人の人物が立ち尽くしていた。

 新世代型達が駆け寄って注目してみると、それは他でもない黒武士であった。

「黒武士……!」

 黒武士の姿を目視して、纏流子が焦燥と怒りが混ざった表情で言葉を発すると、黒武士は彼女達の方を向いて静かに語り出した。

「……なるほど。001に言われたとおり、潜在意識が繋がっているワシの意識の中に入ってきたのか。……まあ、仕方が無い。ワシとお前等の意識が繋がっているのは、しょうがない事じゃからな」

「な、なんで……なんで、俺たちの意識とテメェの意識が繋がっているんだ」

 戸惑いながらも真鍋義久が問い詰めてみると、黒武士は真鍋たちを静観しながら返した。

「それは呪われた血筋ゆえ……我らの呪われた血が、水よりも濃い呪われし血で我々が繋がっているが故に、お前達と我の意識が望まずとも繋がっておる故に……」

「呪われた血……小田原修司の遺伝子の事を言っているのか」

 星原ヒカルが問い返すと、黒武士は答える。

「そうじゃ……! 呪われし鬼神の血……鬼神の血を受け継いだお前たち新世代型は、世界を滅ぼす因子そのもの……そんな禍々しい存在を生み続ける世界の個性(いろ)を、ワシが真っ白に塗り潰さなくてはならないのだ……!!」

「何が呪われた因子だ! そういうアンタだって、俺たちと同じ新世代型だろうがッ!」

 黒武士の供述に真鍋が堪ってた鬱憤を吐き出す様に怒りの言葉をぶつけると、黒武士は更に述べる。

「何も分かっていない愚かな子供達よ……お前達の呪われた血は、世界を滅ぼすだけの可能性……その血で我は世界を白き桃源郷に塗り替える……!」

 この黒武士の言葉に、新世代型達の怒りは爆発した。

「貴様の思い通りにはさせんぞ! この鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)が居る限り、我らの血で世界を滅ぼそうという下らぬ野望は阻止してみせる!」

「姉さんの言うとおりだ! テメェがふってきたこの喧嘩、この纏流子が買ってやらァ!」

 鋏姉妹が戦意を振るい出していると、それに続けとばかりに他の新世代型達も挙って言い放った。

「あなたは確かに強い……だけど! 私たちが力を合わせれば、現実世界であなたと戦っているカァチェン達がきっと勝ってくれる筈!」

 栗山未来たち【境界の彼方】の四人も、黒武士に挑む姿勢を示す。

「俺たちは本来、巨大ロボットに搭乗して戦うのが筋だけど……けど、不死身の肉体を駆使すればあんたの様なふざけた輩ぐらい訳ないぜ!」

 時縞ハルトたちマギウスも、その不死性の肉体を駆使して黒武士と戦う覚悟を決める。

「こ、こうなったら俺たちも最後まで抗ってやる!」

 加納真一たちも黒武士に徹底抗戦の構え。

「ボク達だって、伊達にヒーローやってないっす! 現実世界で戦っている先輩達の為にも、この精神世界でお前が戦うのを邪魔してやるっす!」

 一ノ瀬はじめ達、現実世界で戦うガッチャマン達の後輩である、クラウズの七人も勇気を出して戦う所存。

 そんな運命に抗う新世代型達の姿勢を目の当たりにして、黒武士が言った。

「……哀れに。とことん自分達が何なのか……世界にどの様な恐慌を与える負の存在なのか解らず、抗い続けるのか」

「ウッセェ! ここが精神世界だからって、テメェの好きな様に物事が動くと思うなよ!」

 ジェイク・ミューラーが険しい強面で言い放つと、黒武士は新世代型達に述べた。

「ここは現実世界ではない精神世界……故に、ここでは精神が……心が強い者で無ければ戦う事さえ侭成らない。理不尽な世界に生まれたばかりの、己の負の価値を見出せぬお前たち不完全な新世代型では到底勝ち目の無い世界……それでも我に歯向かうつもりなら、とことん解らせてやろう。人には、抗えぬ運命が待ち受けている事を」

 そう長々と述べた黒武士に更なる対抗心を燃やした新世代型達は、黒武士へと運命に抗う様に挑んでいった。

 

「我を倒してどうする? 今や、世界中から危険視されているお前達に安住の地が在ると思っておるのか」

「同じ新世代型として、望まない血の宿命を受けた貴様を倒すのは少し癪だが……! それでも我々は未来を生き抜く為に貴様を倒す!」

 向かってくる新世代型に対して挑発的な言動を示す黒武士に対し、新世代型の皐月はその美しい脚で黒武士に蹴りを入れようとする。

 しかし黒武士は容易く皐月の蹴りをかわし、皐月は反動で地面に転んでしまう。

「くっ」「姉さん!」

 転倒する皐月を気にかけ、纏流子が声を挙げる。

 すると黒武士は精神世界での戦いを熟知していない新世代型達に告げた。

「ふぅ、何もかも解ってないな……精神世界では、己の精神力が全ての極限状態。己の意思、そして想像力と経験がモノをいう空間なのだ。例えば……」

 次の瞬間、精神世界での黒武士は両手を前に構えると、その手から黒い粘り気のある物質が出現したと思いきや、その物質が形を成して最終的に弓矢の形状に変化した。

「な、なに……!?」

 それを目の当たりにした皐月は動揺し、そんな彼女に黒武士は手から出現させた黒い弓矢を向けて射た。

 皐月は瞬時にその矢を回避して立ち上がるが、突然なにもない所から弓矢を出現させた芸当について黒武士は述べ始めた。

「精神世界では己の経験した過去の出来事や体験から、想像力を経由して使った事のある武器などを出現させる事ができる。無論、過去に戦闘経験がある我は自在に武器を出現させると共に、お前達に地獄の苦しみを与えてやる事も造作もない事よ」

 経験した過去の体験から、想像力で使用した事のある武器を出現させられると豪語する黒武士の言葉に肝を抜かれる新世代型達。

 しかし、これを聞いた皐月は同時に精神世界での戦い方を学んだ。

「それなら……私も過去に数多の戦いを経験した身! その経験から、貴様を葬り去る戦術を考案してやろうぞ!」

 次の瞬間、皐月は念じる様に瞼を閉じると意識を集中させた。そして皆が注目する中、皐月の全身が輝き出し、彼女は今では失っている神衣を纏って威風堂々と直立していた。

「ね、姉さん……!」

 姉の皐月が再び純白の神衣を身に付けている姿に、妹の流子も他の皆も唖然とする。

「黒武士よ! 過去の経験と想像力が、この精神世界で戦うのに必要不可欠だと説くならば……私は再び、この神衣を着て貴様と対峙する! 今までは……今までは母の悪行を止める為に奮闘してきたが、今は違う! この姿で貴様を討ち取り、現実世界で戦っているカァチェン達の勝利へと繋げる!」

 この威風堂々とした皐月の熱弁を聞いて、纏流子たち他の新世代型達も戦前に出た。

「それならアタイ達も戦えるってもんだ! 神衣や極制服を着て戦えたのは姉さんだけじゃねえ!」

 流子がそう叫ぶと、次の瞬間には流子たちの体も輝き出して、続々と戦闘が行える神衣や極制服の姿で黒武士と対峙した。

「……またこの姿で戦うとはな……鮮血」

 流子は、今はもう消滅してしまってる意思ある神衣の鮮血の事を思い返していた。

 しかし流子はすぐに前を向いて、仲間達と共に黒武士と対峙。

「私たちも戦います!」

 流子に続いて栗山未来たち【境界の彼方】の四人も戦前に出て、未来は右手から血の刃を出現させる。

「なにが私たちは破滅を呼ぶしか能のない元凶ですって……不愉快にも程があります! もう本気で怒りましたよ」

 未来の本気に黒武士は何も返さず、反応もしなかった。

「ボク達もやりまっすよ! 変身!」

 一ノ瀬はじめたち【ガッチャマンクラウズ】の七人も戦前に出て変身すると、黒武士と真っ向から戦う決意を表す。

 そんな戦闘経験豊富な新世代型達の戦前に黒武士は静かに言葉を語った。

「……そうか、やはりお前達は小田原修司のクローンが故に最後まで諦めず、無意味に……そして醜く抗うと言うのか。生命戦維での不幸な戦いも経験してると言うのに……異端な存在として周りから疎まれていたというのに……世界の誰もがヒーローになれるという幻想を抱いていたと言うのに、まだ醜く抗うとは……腸が煮えくり返るのを通り越して呆れてしまうわ」

「ウルセェ! みんなの覚悟を無意味だと言うな!」

 黒武士に真鍋義久が反論すると、ジェイクも精神世界での戦い方を知って唱える。

「なるほど、想像力で容易に武器が出てくると言う訳か……と、なると」

 ジェイクは何も無い手から拳銃を出現させては黒武士に銃口を向けた。

「俺も他の新世代型同様、とことん戦ってやれるぜ!」

 するとジェイクが武器を出現させた事で、同じく銃火器の扱いには長けている朱鷺戸沙耶も武器を持って黒武士の前に出る。

 周りの皆が、黒武士の横行を阻止しようと次々に前に出て行くのを目撃した斉木楠雄は、遂に決心を固めた。

「さ、斉木……?」

 親友の燃堂力が前に出る斉木に戸惑うものの、斉木は真っ直ぐ黒武士を見据えては彼に言った。

「僕は今まで……自分が超能力者だという事を周りに隠して生きてきた。それは多分、これからもそうだろう。だけど………………大切な親友達のいない未来を独りで生きたって、何の面白みも無い! 黒武士、あなたの横暴も此処までです!」

 いつもは冷静沈着な斉木が、多少ながら興奮している状態に回りは驚かされた。

 

 そして黒武士は戦前に名乗り出てきた数多の歴戦の新世代型達を流す様に睨み付けると口を開いた。

「……やむを得ん。この精神世界で戦う事の恐ろしさを思い知らせて、お前達を我の精神から叩き出してやる」

 そうして黒武士と新世代型達の、精神世界での戦いは始まった。

 

 

 

[意識と現実の狭間で]

 

 現実世界ではシバ・カァチェンや赤塚大作たちが共闘して黒武士と激しく戦っている中、精神世界でも黒武士は己の意識の中に入り込んできた新世代型二次元人たちと戦い始めた。

 新世代型二次元人達は、持てる力の全てを出して黒武士と徹底抗戦を開始しようとしていたのだが。

「がはっ」「ッ!」「うわっ」

 威勢よく黒武士に斬りかかろうと襲撃した鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)と纏流子そして栗山未来の三人を、黒武士は容易に長刀で薙ぎ払い、返り討ちにしてしまう。

 皐月以外の本能字学園生徒会四天王の四人も、黒武士に攻撃を試みるが、精神世界での戦いにまだ慣れていないのか上手く攻撃を当てる事が侭成らなかった。

 同じくガッチャマンクラウズの七人も、各々の戦術や能力を果敢に使用し、黒武士を負傷させようと攻めていくが、黒武士は全ての攻撃をかわしつつ反撃に転ずる。

 ジェイク・ミューラーと朱鷺戸沙耶の二人も、精神世界では頭に思い浮かべた武器が使用できると知って懸命に銃撃を続けるが、黒武士の鎧装甲に全弾弾かれてしまう。

 そんな黒武士の猛攻を少しでも止めようと、斉木楠雄が超能力で黒武士の動きを制止しようと画策していた。

 だが、黒武士は斉木の超能力を強引に打ち負かして剥がした事で、再び動けるようになってしまう。

「み、みんな!」

 戦闘可能な仲間達が黒武士と激しく戦っているのを、ただ傍観するしかないでいる琴浦春香たちは胸を痛めた。

 すると黒武士が戦前で戦っている流子や皐月達に向けて放った地を駆ける斬撃「地走り」が、二人がかわした事で観戦者でしかない琴浦たちの元へと向かってしまう。

「きゃああっ!」

「お、お前ら!」「みんな!」

 地走りが突っ込んできて舞い上がる硝煙の中から発せられる悲鳴に、銃撃を続けていたジェイクと沙耶の二人が焦り出す。

 そして硝煙が収まり、非戦闘員の皆々が起き上がると自分達の体の異常性に気付く。

「こ、これって……!」

 それは頭から若干の血が滴り落ちている事だった。

 負傷した新世代型達を見て、黒武士が自分の潜在意識の中に潜り込んだ彼らに告げた。

「精神世界での戦いは、その衝撃の度合いにも影響が出るが……その実質、現実世界同様に体に傷を負えば、実体である肉体にも影響が出るのじゃ……」

「そ、それじゃ……! 精神世界で戦って傷付けば、現実世界の肉体にも影響が出てくるって事か!?」

 黒武士の告白に纏流子は姉と共に仰天してしまう。

 すると軽くもながら軽傷を負ってしまった新世代型達の耳に、聞き慣れた声が届いてきた。

 

「……琴浦さん、琴浦さん……!」

 それは現実世界で新世代型達の無事を願うプロト世代のチョコの声だった。

「お、お前ら一体どうしたんだよ!? 突然、頭から血を流して……」

「おそらく精神世界で何かが遭ったんだろう……その影響が現実世界の本体にも現れているんだ」

「そ、それじゃ! 精神世界で傷付いたり死んだりしちゃったら、本当に危ないって事!?」

 微量の流血を見て混乱するギュービッドに、冷静に状況を分析する海道ジン、そしてジンの説明を聞いて激しく戸惑う桃花・ブロッサム。

 精神世界での戦いの影響が現実世界の肉体に現われた事実に皆が戸惑う中、チョコだけは祈る様にして手を組んだ。

(お願い、琴浦さん、みんな……どうか無事でいて)

 

 チョコの願いをテレパスで感じ取った琴浦春香は、軽傷を負いながらも立ち上がり、直立不動で黒武士に言い放った。

「チョコちゃん達の為にも、この戦い……絶対に負けられない!」

 共有感知で意思が繋がっている新世代型達は、琴浦の強い意志も周知しては立ち上がり、黒武士に最後まで抗う姿勢を示す。

 そんな自分を睨み付ける傍観者の新世代型達、そして自分を包囲する戦闘型の新世代型達を見据えて、黒武士は一旦戦いをやめて新世代型達に問う。

「……お前達は何を生む?」

『………………?』

 新世代型全員は一瞬きょとんとするが、黒武士は語り始めた。

「二次元人が生み出したもの、それはまやかしの希望しか生み出さない。まやかしの希望は人々に在りもしない幻想を抱かせ、ただ悪戯に迷走させるだけの虚妄……心を惑わすだけの荒唐無稽な理想は、意味もなく世界を壊すのみ!」

 黒武士の語りに新世代型達は唖然と取られるが、それでも懸命に黒武士に挑み続ける。

 文具を模した多数の特殊武器で黒武士と交戦するG-101こと一ノ瀬はじめ。黒武士はそんな彼女の武器を全て弾き返して無力化する。

 そんな長刀で戦う黒武士相手に、忍者の様な動きと剣戟で交戦するG-96こと橘清音だが、彼の俊敏な動きを黒武士は全て見切った上で一撃一撃を長刀で防御していく。

 爆炎の重技を扱うG-89こと枇々木丈の技は、黒武士は自身の剛腕と闇の能力での無力化の二つの要素で全て受け止め、防ぎ切ってしまう。

 激しく戦う纏流子やG-101たちに黒武士は両手から手裏剣を投げ付けるのだが、黒武士の精神力で手裏剣は巨大化し、二つの巨大な手裏剣が戦前で戦う面々に襲い掛かる。

 だが、それをG-12ことO・Dが、全てを砂状に変える能力を用いて、黒武士が放った巨大手裏剣を一瞬で崩壊させて仲間達を守る。

 それを見据える黒武士の背後に、素早くG-99こと宮うつつが接近し、生命力を奪える右手で黒武士に触れようとした。

 しかし黒武士はG-99の右腕を捕らえ、脇に挟み込む要領で掴むとそのまま彼女を押さえ込み、左手から斧を現出させるとG-99の首を断頭しようと振り上げた。

 其処に上空から蛇崩乃音(じゃくずれののん)が黒武士に向けて爆撃を仕掛け、G-99の危機を間一髪で救った。

 だが黒武士は爆撃を受けてもスグに立ち上がり、長刀を握り締めて襲い掛かってくる。

 黒武士の剣戟をG-3ことパイマンは必死にかわしていくが、黒武士の凶刃は止まる事がない。

 そんな長刀を振るう黒武士に恐れる事無く、勇敢に接近して拳で殴りかかろうとするG-100の爾乃美家累。しかし黒武士は彼の打撃を回避すると、彼らに向けて地走りを放ってきた。

 地を駆ける斬撃「地走り」が皆に襲い掛かってきた所を、栗山未来が己の血を結晶化させて形成した刃で受け止め、何とか防ぐ事ができた。

 この様に多種多様な戦術に能力を用いて抗ってくる新世代型達を前に、黒武士が再び呟く。

「力が争いを起こし、力無き者は全てを失う。平和も争いも、全てを無にする事が今の世を生きる者の務めなのだ」

 これを聞いた真鍋義久が強く黒武士を批難する。

「ふざけるな! 力ってのは、弱者を守る為に使うもんだ! それに、争いはともかく平和までも無にしてどうするんだよ!?」

 これに対して黒武士は静かに答える。

「解らぬのか? お主らの力は所詮、自然界の常識を遥かに凌駕した人外の力。人外の力で人が、そして人の成す世界が守れると思っているのか? いや、思えんだろう……こんな混沌の時代に蔓延る偽りの平和も、醜い争いも……全てを無に誘った方が美しいと思えないか?」

 己の審美を明かす黒武士の言動に、新世代型達は怒りを覚える。

「あんたの今までの凶行で、私たちがの日常がどれだけ壊されたのか分かってるの!?」

 キャサリン・ルースの怒声に、黒武士は再び静かに返答した。

「日常というのは……ホンの一瞬で全てが消え去り、そして崩れる。平凡な人生が、時が終わるのは……いつの世も一瞬なのだよ」

 世の理を語る様に返答してきた黒武士の言葉に、誰もが絶句した。

 

 そんな言葉を失う新世代型達の心に、あの幼子が直接訴え掛けてきた。

(……新世代……新世代……新世代型のみんな! 聞こえているかい?)

「そ、その声……001!?」

「………………」

 新世代型達にテレパシーで話し掛けてきたのは、現実世界で多くの仲間達と共に黒武士と戦っているサイボーグ戦士の001だった。彼の声に琴浦春香が返事すると、そんな新世代型達の様子に黒武士は無言で静観していた。

「ぜ、001。私たち、どうにか精神世界に潜り込んで、黒武士と戦える人たちが戦いを始めた所なの……!」

(そうか、やっぱり……こっちの現実世界での黒武士の挙動に変化が見られたから、もしやと思ったんだ)

「え、それって……?」

(君達が精神世界で黒武士と激しく交戦しているからか、現実世界の黒武士の集中力が途切れ途切れで欠けていたんだ。その隙をついて、カァチェン達が黒武士を次第に追い詰めていってる状況なんだ)

 琴浦春香との通話で、001は黒武士が狙い通り集中力を削がれて、それでカァチェン達の攻撃が次第に実を結んできたと朗報を知らせた。

「そ、そうなのか! 流子や皐月たちの戦いはムダじゃ無かったんだな!」

 話を聞いて真鍋義久たちが歓喜する中、黒武士は異様な目付きをしていた。

(ああ! このまま現実世界と精神世界の両方から、黒武士と戦っていこう! そうすれば黒武士の集中力が削がれて、現実世界の彼を倒す事は難しくても、せめて仮面を剥がす事はできるかもしれない!)

「よし、相分かった! 流子、皆! 戦闘続行だ! 現実世界で戦っているカァチェン達の為にも我々も最後まで抗おうではないか!」

「おうっ、了解だぜ姉さん! こうなったら何が何でも黒武士の動きをジャマしてやるぜ」

「………………………………」

 001の話を聞いて俄然やる気が湧いてきた皐月と流子姉妹に呼応する戦闘タイプの新世代型達の活力に、黒武士の方が言葉を失くしていた。

 

 こうして潜在意識と現実世界の狭間での戦いは熾烈を極める事となった。

 果たして新世代型達は如何に黒武士の動きを止めつつ集中力を削いで、現実世界のカァチェン達の助けになるつもりなのであろうか。

 

 

 

[砕ける面]

 

 かくして現実世界と精神世界の戦いは熾烈を極める事となった。

 現実世界ではシバ・カァチェンを筆頭とした次世代五人衆を戦前に、多くの猛者達が彼らの手助けをしつつ黒武士を倒そうとしていた。

 一方、精神世界に潜った新世代型達は其処で黒武士と乱戦する事で、彼の並外れた集中力を削ぐ事で現実世界での戦闘を有利にしようと戦い続けた。

 現実と精神、二つの狭間で戦う黒武士はこの戦況をどう動くのか。

 

「……抗うな。お前達この世界で生きる者の顛末は、既に決まっているのだぞ」

「ウルセェ! テメェの指図なんか受けるか!」

 精神世界で黒武士に銃撃を放つジェイク・ミューラー。だが黒武士の鎧に銃弾は効果がなかった。

「行くぞ流子……!」「おうっ、姉さん!」

 鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)と纏流子の二人も連携して、果敢に黒武士へ斬りかかる。

 黒武士は二人の斬撃を回避するのに集中していた為か、現実世界ではほぼ同時に斬りかかって来たマン・サコンとイン・ナオコの攻撃をまともに喰らってしまった。

 しかしナオコの巨剣が直撃したにも関わらず、鎧にはヒビ一つ入ってなかった。

「くっ、私の巨剣でも歯が立たないと言うのか……!」

「そう焦るこたぁ無ェよ、ナオコちゃん。此処はジワジワと攻めていって、あいつの仮面を引っぺがす事を優先しましょうや」

 己の得物でも簡単にヒビを入れられない現状に苦々しい表情を浮かべるナオコに、軽々しい調子で話し掛けるサコン。

 そんな二人の会話の最中、今度はゴ・マータンが奇刃を投げ付けて黒武士に直撃させようとする。

 しかし黒武士はマータンの奇刃を長刀で受け止めつつ流すと、そこへマータン本人が急接近して黒武士に直接鋼鉄の指爪で引っかき攻撃を仕掛けてきた。

 鋼鉄の手具で引っかいてくるマータンに、黒武士は長刀を振り回して牽制すると流石にマータンも少し退いた。

 黒武士がマータンに意識を向けていると、今度は精神世界で猿投山渦(さなげやまうず)が攻撃を開始。

 猿投山の攻撃を受けて、黒武士は精神世界で猛威を振るう新世代型達を大人しくさせようと大術を発動させる。

「天変地異!」

 すると精神世界に雷鳴と共に雷と強風が轟音を発しながら降り注ぎ、戦闘に参戦していない新世代型達を巻き込んで大術が発動する。

「うわっ! 私達の方にも雷が落ちてくる~~っ」

「ひぃっ」

 満艦飾マコや大宮忍たちは逃げ惑うばかり。

「おい! マコ達は戦ってないだろ! 危なっかしい技使うのはやめろ!」

 戦前に出ていない親友達まで巻き込むなと怒鳴る流子の言葉に、黒武士は静かに語り出す。

「笑止。既に貴様等は我の精神に潜入して自ら戦いの場に乱入してきた不埒者。最早、貴様ら全員が戦いに参戦しているのが道理なのだ。恨むなら、我の精神に侵入した己の軽率な行いを恨め」

 そう言うと精神世界の黒武士は浮上して、少し高い位置から巨大な地走りを発射。新世代型達に向けて撃ってきた。

「あ、危ねえ!」

 真鍋義久の一声で、全員がその場から走り去って巨大な斬撃を回避する事が叶った。

 しかし黒武士の猛攻は留まらず、戦前で戦う者も、そうでない者たちも含めて、全ての新世代型達に斬撃を放つ。

 すると精神世界で新世代型達の相手をしてか、そちらに意識が向いていた黒武士が現実世界で動きを止めている隙をついて山中鹿之助がおやっさんと共に攻撃を仕掛けた。

「おやっさん、お願いしまっす!」

 鹿之助はおやっさんの後ろ足に自らの足を絡ませて、そのままおやっさんに振り回された遠心力で投げ飛ばされ、一直線に黒武士へと連結棍棒を打ち込んだ。

「ッ……!」

 鹿之助の棍棒が腹に直撃した事で酷く姿勢を崩して動揺してしまう黒武士。

 鹿之助はそのまま調子付いて、更なる打撃を与えようと黒武士に殴り掛かるが、黒武士は此処で集中力を鹿之助に替えて刀を振るった。

「うわ、うわっ!」

 黒武士が振るう長刀に鹿之助は慌てながらも退きながら回避する。

 そんな鹿之助の窮地を救おうと、鹿之助と親しい間柄である韓国将軍のサイ・チョウセイが間に入る。

「鹿之助よ、調子に乗るな! 戦では、少しの気の緩みから敗北に繋がる! 正義とは、悪に気を許してはいけないのだ!」

「は、はい!」

 チョウセイの言葉に鹿之助も戸惑いながら返事する。

 現実世界で鹿之助の窮地を救ったチョウセイと、精神世界でお互いに助け合いながら共闘する新世代型達を見て、黒武士は二つの世界で同時に語り出した。

「誰かを救う事、それは同時に誰かを犠牲にする事。この世の正義は等しく、自分の行為を正当化するためのエゴなのだよ」

 この黒武士の発言に、精神世界で戦う新世代型達が騒ぎ出す。

「確かに正義というのは一種の価値観、つまり人間のエゴなのかもしれない……けれど、助けたい人、そして弱い人々を助けたい、力になってあげたいという想いまで踏み躙らせない!」

「誰かを救う事で同時に別の人を犠牲にしてしまうのが正義かもしれない……だが、きっと全ての人が安心できる正義だってある筈だ!」

 直枝理樹と井ノ原真人(いのはらまさと)の力強い発言に感化された黒武士は、胸中の思いを吐き出す様に彼らに向けて巨大な地走りを放った。

 何の自衛力もない新世代型達に、再び巨大な地走りが向けられたその時、蟇郡苛(がまごおりいら)が我が身を盾にして非力な新世代型の仲間達を死守した。

「うわあ、ガマ先輩ありがとうです!」

 マコが礼を言う中、蟇郡苛(がまごおりいら)は少し照れながら黒武士に向かって走り出した。

 一方、現実世界では。次世代五人衆の勇姿に感化されて、正義感を奮い立たせたサイ・チョウセイがシバ・カァチェンたちと共に黒武士と戦っていた。

「悪・即・斬! この世の全ての罪無き命を奪う黒武士に……正義の鉄槌を!」

「まったく、この南朝鮮人め……正義正義って、さっきからうるさいぜ」

 チョウセイの熱血漢の正義に、マン・サコンは少しうんざりしていた。

 そんな二人の様子を見て、黒武士が真理を説いた。

「命を奪う行為が等しく悪ならば……この世界の全てが悪という事になる」

 これを聞いたチョウセイは、意志の強い面魂で熱く返答した。

「確かに私の正義には矛盾が……いいや、全ての正義には矛盾が生じ、完璧なものではないのかもしれん! だが……己が信念に付き従い、未来へと突き進むのも人の道! そんな人の道を真っ向から否定し、全てを消し去るという貴様の暴挙は必ず我々が止めて見せよう!!」

 このチョウセイの熱弁を聞いて、黒武士は眼光を鋭くさせて反論した。

「弱さが何になる? 弱くて誰が救える? 強さが、力が全てなのが世の理だ!」

「力だけではないぞ! 己の心、そして周りにいる頼もしき仲間達との繋がりもまた、正義の道理に通じる素晴らしきモノなのだ!」

 チョウセイの反論を聞いても尚、黒武士はその猛攻を止めなかった。

 そんな黒武士の猛攻を止めようと、精神世界では思いも寄らない行動が続出していた。

「お、お前ら……!」

 なんと精神世界の黒武士の動きを、非能力者であり戦いに長けてもいない筈の燃堂力や神浜コウジ達が黒武士に直接押さえ込みに入って止めていたのだ。

「い、今の内に黒武士を……頼む、斉木!」

「ね、燃堂……!」

 黒武士の身体を押さえ込んで動きを抑制する燃堂たちの必死さを前に、斉木楠雄は驚きを隠せなかった。

 親友の働きを無駄にはできない。そう思った斉木は超能力で黒武士の全身の動きを封じ込めようとした。

 斉木の超能力で一時的に動きを封じられた黒武士であったが、黒武士はスグに闇の能力で斉木の超能力を無力化した上で彼らに攻撃を仕掛けようとした。

 だが現実世界で今度はナオコと鹿之助そしておやっさん達が攻めの一手を仕掛けようとしていた。

「行くぞ鹿之助……!」「お願いしまっす、ナオコさん!」

 ナオコは自身の巨剣に乗った鹿之助とおやっさん共々、遠心力を利用して黒武士の方へと回し投げ、更におやっさんが鹿之助を脚で飛ばして、威力を上乗せした状態で鹿之助を黒武士へと飛ばした。

 巨剣による遠心力とおやっさんの脚力が掛け合わさり、物凄い速度で黒武士へと飛んでいく鹿之助は、そのまま黒武士の頭部に連結棍棒を叩き付けて、黒武士を昏迷に至らしめる。

「あなたを倒し、僕はいつか……一人前の武人になるっす!」

「人はそれぞれ夢を持っている……そんな夢すらも無へと誘おうとする貴方の企て、私たちが必ず止めて見せます……!」

 鹿之助とカァチェンの力強い提唱に、黒武士は現実と精神で戦い合う者たち全てに冷たく告げる。

「現実を見てきた我には分かる、醜いこの世界では願いなど何一つ叶いやしない。だからこそ全てを無にした真っ白な桃源郷という境地へ導くのだ」

 皆が黒武士の一言一句に耳を傾けていると、黒武士は更に告げた。

「墓の前で英雄共が哀れに言い訳する必要が無い世界を創ると言っているのだよ」

 この黒武士の発言を聞いて、聖龍隊の隊士達はHEADや自分達が戦死した仲間達の墓標の前で悔いる姿を思い返していた。

 長き歴史の中で、聖龍隊は決して犠牲者を出さない無欠の存在ではなく、大切な仲間や戦友を喪った悲しい過去も存在していたのだ。

 そんな悲しい過去を思い浮かべる中、一人の戦士が黒武士に向けて言い放つ。

「それでも僕らは戦い続ける……現実を変えられる可能性を持つ、二次元人として……!」

 サイボーグ戦士009の信念を前に、周りの猛者達も勇気を貰うのだが、そんな009たち二次元人たちに黒武士は言った。

「本当にお前たち二次元人は、醜い現実を変えられると本気で思っているのか?」

『!』

 黒武士の問い掛けに二次元人達は激しく戸惑うが、黒武士の言葉での攻撃はやまない。

「お前達は小田原修司の元とはいえ、己の正義を振り翳し、かの北の国を解放という名目で進攻し、多くの命を奪ってきた戦歴がある。正義という曖昧な価値観で、この醜い現実を本当に変えられる力が自分たち二次元人にあるのだと、本気で思っているのか?」

『………………………………』

 黒武士の問い掛けに何も反論できない二次元人たちに、黒武士は言い放った。

「お前たち二次元人ほど……偽善者の言葉が似合う者はいない!」

 黒武士の発言に多大な悲愴感が心中に広がる二次元人たち。だが黒武士の言動は止まらない。

「そのまま偽善の理想を掲げたまま滅びるがいい!」

 黒武士は、悲愴感で動きを止めてしまう現実世界の猛者達に向かって斬りかかって行く。

 と、その時。現実世界の黒武士の動きがピタリと止まった。

 何事かと黒武士が意識を精神世界に移すと、そこでは真鍋義久やイオリ・セイ、時縞ハルトに加納真一たち直接戦闘に参戦していない新世代型達が黒武士の体にしがみ付いて完全に動きを止めていた。

「お、お前ら……!」

 突然の事態に戸惑う黒武士に、真鍋義久とイオリ・セイの二人が言った。

「俺たち二次元人は確かに……知らない間に多くの人命の犠牲の上に生きていた……! 北朝鮮も、そして多くの異常者(ヒール)達の屍の上でのうのうと生きていた……!!」

「それでも僕らは信じてみるんだ……! 聖龍HEADが僕らの始祖、小田原修司を導いたように……カァチェンが憧れる小田原修司の様に……多くの人を変えて、未来へ進める様に促す理想たる二次元人になってみせると……!」

 未だに抗う事をやめない新世代型達の無謀とも言える行いに、黒武士は戸惑うばかり。

 しかし精神世界で黒武士は、自分の体にしがみ付く新世代型達を薙ぎ払い、どうにか体の自由を取り戻す。

 だが現実世界に黒武士が意識を戻すと、現実世界で新世代型達と同様に未だ抗う事をやめないでいるシバ・カァチェンが逆刃薙(さかばなぎ)を振り上げて黒武士に上方から斬りかかろうとするのが目に飛び込んできた。

 黒武士は慌てて長刀でカァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)を防ごうと構えた。

 そして黒武士の長刀とカァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)が激突し、激しい火花が散る。

 次の瞬間、黒武士の長刀にヒビが入り、長刀は真っ二つに折れてしまい、更にそのままカァチェンが振り下ろした逆刃薙(さかばなぎ)が黒武士の兜を叩き割り、その衝撃で漆黒の仮面にも大きくヒビが入った。

 逆刃薙(さかばなぎ)に長刀を折られ、兜と仮面にもヒビを入れられた黒武士は思わず後ずさりしてしまう。

「や、やったなカァチェン!」「………………」

 渾身の一振りが黒武士の武器である長刀だけでなく、素顔を隠している兜と仮面にもヒビを入れた事で大いに喜ぶサコンの歓喜に対して、カァチェン本人は驚きを隠せなかった。

「いえ、みんなの協力があってこその結果……ありがとうございます、皆さん」

 しかしカァチェンは黒武士の面と兜を叩き割った実績は、あくまで協力してくれた皆のお陰と静かに礼を返す。

 

 すると此処で、長刀が折られた衝撃からか、黒武士の潜在意識の中に潜り込んでいた新世代型達が、精神世界から弾かれた為か全員が現実世界の自分の肉体へと帰還していた。

「こ、琴浦さん!?」「ううん……」

 黒武士の潜在意識から弾かれた琴浦春香が意識を取り戻したのを見て、親友のチョコが心配して名前を呼ぶ。

 すると続々と新世代型達が目覚め、全員が疲労困憊する中で意識を取り戻した。

「あ、あんた達! 精神世界で黒武士をジャマしてたんだね……やるじゃないか!」

「本当に凄い! お陰でカァチェンが黒武士の兜と仮面を壊せたわ!」

「お疲れ様、みんな」

 笑顔で新世代型達の帰還に安堵するギュービッドに桃花そして海道ジン達。

 意識が戻った新世代型達は、再び巨大な繭状の大岩の頂上から地上の戦地を見下ろして、武器である長刀を折られた黒武士を観察する。

 

 地上では、カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)によって長刀を真っ二つに折られただけでなく、その勢いで兜と面までもヒビが入った顛末に呆気に取られる黒武士。

 すると黒武士は真っ二つに折られた長刀を地面に捨てて、対峙するカァチェンたちに向かって呟いた。

「……まさかな……此処までやるとは思っても見なかった……」

「へっ、カァチェンや俺たちを見くびるなよ!」

 カァチェン達の実力に驚きを隠せない黒武士に、サコンが自分達を見くびるなと強く反論する。

 すると黒武士は真っ直ぐカァチェンたち戦前で戦っている五人衆らを見据えたまま、背中に常備していた鞘袋を手にとって正面に移す。

 多くの皆々が注目する中、黒武士は鞘袋の紐を解きながら静かに語り出した。

「シバ・カァチェン、そして次代を担おうとする五人衆の面々……挙句の果てに精神世界に突入してきた新世代型二次元人。どうやら、世界を真っ白に塗り替える前にやらなければなならぬ事が俺にはあったらしい」

(! 一人称が変わった)

 黒武士の語りを聞いて、大将や一部の者達は、黒武士の一人称が変わった事に気付く。

 そして黒武士は目の前で横手に持つ鞘袋を締めている紐を解いて、袋に納められていたモノを取り出した。

 イン・ナオコに山中鹿之助たちが、何が出てくるのかと一抹の不安に掻き立てられる中、黒武士は遂に袋の中のモノを完全に取り出し、鞘袋を地面へと捨てる。

 黒武士が取り出したのは、七色の彩色が鮮やかな並の大きさの日本刀であった。

「ホッ、なんだタダの日本刀ではないか。しかも標準サイズの」

「怯えて損したっす。いつも背中に常備しているから、トンでもない切り札的な武器を持っているものだと思いました」

 ナオコに鹿之助が安堵していると、それに反して傍にいたゴ・マータンは黒武士が取り出した日本刀を見て常軌を逸するほど激しく動揺していた。

「あ、あれ? どうしたんすか、マータンさん? たかが普通の日本刀じゃないですか」

 鹿之助がマータンを落ち着かせようと話し掛けるが、マータンは尋常でない汗を額から流して激しく焦燥して遂には混乱してしまう。

「うわーーーーッ! あああ、あの刀は……あの刀は……! うわあッ」

 突然怯え出してしまうマータンの普通ではない様子に戸惑う鹿之助とナオコ。

 マータンが怯え切っている中、マン・サコンも日本刀を目の当たりにして今までと明らかに違う態度を取っていた。

「あの刀……まさか……まさか……!」

 サコンの中で次第に煮え滾る憎悪が膨れ上がっていく。

 

 マータンやサコンの様子が一変していく中、カァチェンや他の武人達が注目していると、黒武士の亀裂が入った兜と面が次第にその亀裂を拡げて今まさに割れる寸前まで来ていた。

「さて……これから熾烈を極めつつある戦の中で明らかにされた現実を前に、朋たちは一体如何にしてこの難局を乗り切るのであろうな……そうであろう、闇の朋」

 最初から戦場の情景を眺め続けている剣帝・足正義輝は、黒武士を見据えながら、これから始まるであろう絶望的な状況に皆が如何に乗り切れるか眼光を鋭くさせた。

 

 そして黒武士の兜と面が砕け散り、その破片が地面に落ちて素顔が明らかになった瞬間。

 聖龍隊も赤塚組も、国連軍でさえ、その素顔を目撃して愕然とする。

 そして地上を見下ろしている檻の中の新世代型二次元人達も、黒武士の素顔を視認して言葉を失った。

 

 同時に聖龍隊も赤塚組も新世代型も、あの人物の事が鮮明に脳裏に浮かび上がり、思い返された。

 

 

 

[小田原修司]

 

 かつて、三次元界に生まれながらも、親はもちろん周囲の愛情や優しさを感じられない少年がいた。

 その少年の名は、小田原修司。

 誰からの愛情も感じられない彼は、簡単に人を信じることが出来ず、人を疑いながら生きていた。

 そんな少年は、運命の巡り会わせか数多のキャラクター達がいる二次元界アニメタウンへと移り住んだ。

 少年は二次元界で、初めて信じられる友とも言える存在たちに出逢い、彼らと共に聖龍隊を創設した。

 しかし少年は大人になるにつれて、光の正義では到底裁けない罪人に対して、闇の制裁を実行に移す為に、これは聖龍HEADと赤塚組幹部衆そして新世代型二次元人達にしか知らない事だが、少年は制裁の鬼へと己を変貌させる。

 それだけでなく少年は、仲間とその故郷を守る為に自ら軍人として鍛え上げると共に極秘の実験に協力した。

 これによって少年は最強最悪の人間兵器として成長し、国連に人間兵器として自身を献上した。

 それから少年は大人になっていくに連れて国連軍の権限を強化、世界中のあらゆる政治及び内戦に軍事介入できるまでに至らしめた。

 そして少年は世界共通の敵として、テロリストを中心とした異常者(ヒール)を敵視させる様に世論を操作して、世界中の治安を改善させる働きを示した。

 同時に少年だった男は、聖龍隊をより強固な軍事組織として基盤を固め、聖龍HEADがアニメタウンを統率する制度を可決させる。

 聖龍隊と共にアニメタウンの、ゆくゆくは世界の安寧と平和を願った男は、自らも懸命に働いてその理想を追求していた。

 国連からは人間兵器として、聖龍隊からは総隊長として、アニメタウンでは弱者を救済する市長として並々ならない努力を重ねてきた男は。

 だが人間兵器としての務めを終えた男は、兵器としての権限と罪状を国連に返却し、同時に国連からは人権を返還された事で、ようやく肩の荷が降りたのか聖龍隊の総長の役職を腹心の友であるバーンズに託した。

 こうして多くの戦歴と実績を残して、遂に男はアニメタウンを旅立った。

 慈愛に満ちた聖女と呼ばれる乙女に、婚約指輪を贈与して。

 だが同時に世界は、男が抜けた穴埋めを埋めようと、その代理品として、そして新たな時代を築く為に男の遺伝子をモデルに新世代型二次元人を生み出していった。

 望まずとも新世代型二次元人の始祖となった男、小田原修司。

 先ほどまで戦場で激しく戦っていた猛者たち、そして繭状の大岩の頂上で見下ろす新世代型達は、小田原修司を鮮明に思い起こしていた。

 

 何故なら…………。

 

「………………………………」

 兜と仮面が粉砕した事で素顔が現われた黒武士の顔を見て、硬直する一同。

 そんな非情な静寂が流れる中、赤塚組頭領の大将は周りの皆々と同じく激しく動揺しながら目の前の現実を発した。

 

 

「お前は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………修司…………?」

 

 この世には、死よりも残酷な現実がある。

 

 

 

 

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