聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
※私自身もっと作品の出来を良くしたい一心が抑えきれません。そこで、どなたか心優しい方からのコメントや感想など募集しております。
※多くの方々からのコメントや意見を取り入れて、今後はもっと自分らしくながらも誰もが読みやすい作品に仕上げていきたいと志します。今後とも精進していきますので、何卒よろしくお願いします。
※キャラへの勉強が足りない点も多く見られますが、何卒よろしくお願いします。
[殺戮の鬼神]
かつてこの世に愛を、心を知らずに生まれ育った命が一つ。
その命は二次元界で、多くの夢ある強く気高き意志を持つ英雄達と触れ合い、いつしか大きな夢を抱く少年へと育った。
少年はやがて、己の夢を。いや、多くの友と願う夢と理想を実現させる為、己の力を高め、育み、積み重ね、友と共に結成した組織をも強くした。
少年は大人へと成長するにつれ、仲間と共に誓った夢と理想を実現させるべく、裁きの鬼や鬼神など、様々な畏怖なる異名を名乗り、世界を駆け巡った。
時には非情となり、多くの命を摘み取り、または狩りとる恐怖として、心美しき仲間達に代わり、世界を変えようと奮闘した。
少年の、男の夢と理想はやがて、傍にいる仲間達だけでなく、聖龍隊という組織に与する同胞達の夢へと繋がり、託され、今に至る。
そんな男の夢と理想を掲げた聖龍隊は、此度の現政奉還で最も強敵と思われる存在と対峙し、男の夢と理想を未来に繋げる為に戦っていた。
しかし、そんな存在である黒武士の面が外れた時に皆々の前に暴かれた素顔は。
聖龍隊とその友が見知っているであろう、夢と理想を馳せた、己を鬼とまで畏怖させた男の素顔であった。
精神世界で黒武士の行動を妨害していた新世代型二次元人たちの協力も相まって、遂にシバ・カァチェンが黒武士の漆黒の長刀を折り、更に兜と面までも砕いた。
仲間に率いた友から賞賛を浴びるカァチェン。しかし兜と面が砕けた黒武士は、常に常備していた背中に背負ってた鞘袋を開けて中身を取り出す。
鞘袋から取り出された有り触れた大きさの日本刀を見て、かつて鬼神率いる聖龍HEADに手痛い敗北を経験しているゴ・マータンは怯え切り、その鬼神によって祖国を失ったマン・サコンは完全に見覚えのある日本刀に怒りを滾らせていた。
黒武士が取り出した日本刀、それは他でもない小田原修司が愛用していた伝説の刀・聖龍剣そのものだった。
そして砕けた兜と仮面が崩れ落ち、地面に破片が落ちたその時、皆々が目撃した素顔こそ。他でもない小田原修司の顔なのだった。
「本当に……修司なのか……?」
黒武士の素顔を見て、驚愕する赤塚組頭領の赤塚大作こと大将は、激しく戸惑いながら問い掛けた。
そして大将と同じく、黒武士の素顔を視認して激しく動揺する檻の中の新世代型二次元人たち。
そんな新世代型達に、今までなりを潜めていた新世代型の脳裏に巣食う闇人が彼らの視界に現われて語り掛けてきた。
「マイ・チルドレン達よ! ここで戸惑うのはやめようぜ。驚いてたって現実が変わる事は無いんだからよ。……見てみろよ、お前らの始祖であり、この俺闇人を生み出した紛れもない小田原修司の今の姿を! 目に焼き付けろ、これがお前達に突き付けられる現実だ!」
闇人が新世代型達に語り掛ける中、地上では大将が動揺したまま目の前の修司に問い掛けていた。
「生きていたのか……でも、それなら……!」
大将の問い掛けに、今まで黒武士として己を偽っていた修司は、無表情な顔で死んだ様な空虚な瞳で大将を見据えながら言った。
「俺が生きていたかどうかなんて、そんなのはもうどうでも良い事だ」
だが修司は次に、思い詰めた様な口振りで敢えて大将の問いに答えた。
「しかし……そうだな……。何故か、とあえて問うなら…………この腐敗し切った世界に、失望したからだ」
「!」
世界に失望したと答える修司の言葉に衝撃を受ける大将。
聖龍隊も、国連軍も、悪党達も、檻の中の二次元人たちも、そして大将たち赤塚組もカァチェンたち五人衆の誰もが、黒武士の正体に衝撃を受け、ただただ愕然とするしかなかった。
此処より戦いは、単なる敵愾心ではなく、悲しみが充満する大戦へと変わる。
天地揺るがす号砲は、戦場を響かせ、そして数多の猛者達を呑み込む。
号砲響く戦地に佇む、かつて鬼神として名を馳せた男は、生気のない無表情な顔で静かに戦場を見据えるのみ。
すると愕然としている多くの猛者達の中でも、鬼神・小田原修司と昔馴染である赤塚大作こと大将は震える唇で問い掛けた。
「なんでお前が……! アッコやバーンズ、HEADの連中を襲って傷付けたのも、本当にお前なのか? ……だ、誰かに操られたり……利用されたり、してるだけなんだろ? なっ? 修司……!」
大将は激しく動揺しながらも、修司が何者かに操られたり利用されたりしているのだと思い込もうとしていた。
だが、偽りの仮面が砕けた修司は大将に本音を吐いた。
「……昔の俺なら、確かに催眠暗示で殺意や破壊衝動を操られたり……利権を得る為に誰かに利用される駒として生きていたが……今の俺は、誰かに操られたり、利用されるだけの手駒なんかではない。正真正銘の、小田原修司という欠けた存在だ」
「!! ………………」
修司の返答に大将は再び衝撃を受けてしまう。
すると、黒武士の素顔が判明し、その正体が小田原修司だと知った荒くれ者の悪党達に変化が。
「……ウソだろ、マジかよ……!」
「黒武士の正体が、小田原修司、だと……!」
「俺たちを心無い無差別テロリストなんかと一緒にして、世界から爪弾きにした悪鬼、小田原修司……!」
「現政奉還の混乱に乗じて、多くの同胞を……世界中の悪党を惨殺してきた黒武士め……!」
「許せねえ……!!」
黒武士の正体が小田原修司だと知って、怒りが頂点に上り始める悪党達。
そして遂に彼らの怒りの限度が、限界を超えた瞬間。
『うおおぉぉッ!!』
悪党達の怒りが頂点を越えた瞬間、彼らは一気に怒号を叫びながら武器を持って小田原修司へと駆け寄った。
「お、おいやめろバカ共! 小田原修司に抵抗したって勝ち目なんか無ェぞ!!」
暗黒獣が創世されてゆく繭の頂上、その漆黒の檻の中に閉じ込められた道化のバギーが部下でもある悪党達に怒鳴り付ける。
しかしバギーの訴えが悪党達の耳に入ることは無く、彼らは多勢に無勢の勢いで小田原修司に一直線に向かっていった。
するとそんな悪党達の中で、突然立ち止まっては群衆の中から所持していた銃で小田原修司を狙撃してきた悪党が。
一人の悪党が放った銃弾は、一直線に小田原修司へと飛来。しかし銃弾が直撃する寸前、小田原修司は顔を横へと傾けて銃弾を難なくかわす。
次の瞬間、銃弾をかわした修司は瞬時に暴徒と化す悪党達の群衆の中へと移動し、悪党達を驚かせる。
だが悪党達は一瞬驚いたものの、スグに修司へと暴力の矛先を向けた。
しかし悪党達の鈍器や銃撃を修司は物の見事にかわしていき、逆に悪党達に俊敏な動きで反撃に転ずるばかり。
修司の華麗な反撃に悪党達が苦戦している中、修司はその空虚な瞳を怪しく輝かせ、腕の動きにそって大地から岩石で出来た大樹を生み出した。
「ぐはっ」「ぎゃあっ」
岩石の大樹は次々に悪党達の体を貫き、瞬く間に修司の周囲は血で濡れていった。
岩石の大樹によって修司に殺意を向けた数多の悪党達は貫かれ、その亡骸は天へと生えていった大樹に貫かれたまま修司の頭上に至った。
やがて大樹に貫かれた悪党達の亡骸から、大量の血潮が流れ出し、その血は小雨の様に修司の頭上から降り注いだ。
悪党達の惨殺情景を目の当たりにした大将も、檻の中の新世代型達も、降り注ぐ血の小雨を浴びて頭の天辺から真っ赤に染め上がる修司を見て並々ならぬ悪寒を感じた。
その血塗れの姿こそ、かつて鬼神として多くの者から恐れられ、または憎しみの対象にもされた小田原修司が窺えた。
[空虚な鬼]
憎悪の的であった自分に襲い掛かってきた悪党たち全てを血祭りに挙げた小田原修司は、岩石の大樹によって貫かれた悪党達の亡骸から滴り落ちる大量の血の中で、一際怪しく存在が浮き彫りになっていた。
そんな血塗れの修司を目撃して、戦場で先ほどまで激しく戦っていた大将も他の武将も、そしてシバ・カァチェン達ですら息を呑んだ。
すると修司は、そんな息を呑んで動揺している仲間でもあった猛者達を空虚な瞳で捉えると、足元から夥しい数の黒い手が現出する。
「あ、あれは……!」
大将が驚いていると、修司は虚ろ虚ろと黒い異形の手に支えてもらいながら移動。猛者達に迫る。
すると次の瞬間、修司は自身の足元から現出させた黒い手で周辺の猛者達に襲い掛かった。
「うわあっ!」
「な、なんて禍々しい手だ……!」
「差して言うなら、あれは……魔の手、そのもの!」
猛者達が逃げ惑いながら口々に言っている中、虚ろな修司はか細い声で歌の様な戯言を呟きながら、自身の手の動きと合致する魔の手で周辺の猛者達を次々に襲う。
そのまま修司は虚ろな様子で魔の手を巧みに操りながら、かつて同じ志を持っていた聖龍隊にも襲撃する。
「修司君、やめるんだ!」
「おい、小田原修司! 正気に戻れっ」
「修司! 一体どうしちまったんだよ!?」
009にデビルマン、そして黒崎一護の制止も聞かず、修司は三人にも魔の手を差し向けて襲い掛かった。
三人は同時に魔の手によって捕まってしまい、それと同時に急速に体力が消耗し始めた。
「あ、あれは一体……!」
その光景を目撃した大将が戸惑っていると、傍らにいたウェルズが解説した。
「修司の闇の能力は……普段は能力者の能力そのものを引き寄せて無力化させちまうモンだが……それとは別に、もう一つ吸引できるものがある。それが……人の体力、いわばエネルギーだ。修司から発生した魔の手は、完全に修司の負の心が生み出した禍々しい闇から生まれた魔の手……故に捕まったりダメージを与えられれば、その都度相手の体力を強奪できちまうって訳だ」
このウェルズの解説を聞いて、大将は今まさに皆が思い詰めている疑問の数々をウェルズにぶつけた。
「そ、それよりも……! なんで修司は黒武士に成り下がっちまったんだよ!? なんで修司は自分の子供とも言える新世代型達にあそこまで非道になってる……! なんで修司はダチでもある俺達にまで攻撃して来るんだ!?」
「お、俺だって知りたいさ! なんで修司の野郎が此処までデカイ大戦を引き起こしたのか……でも、俺達には修司の真意を知る術はない……! 人の愛情を感じられず、他人を信用できない修司の心を知れる奴等なんて……それこそアッコやバーンズたち聖龍HEADぐらいしかいねえよ!」
ウェルズからの返答に、大将も返す言葉が無かった。
確かに人心が欠けている修司の心境を知る術は、常人には無いのが普通。
と、ここで修司は魔の手で捕まえては体力を吸収していた009達をようやく解放し、三人を地面へ叩き落した。
三人を地面に叩き落した修司は、そのまま魔の手を繰り出しながら戦陣を切って猛者達の大軍へと進攻する。
そんな修司の進攻を何とか止めようと、プリキュアの女子達が修司の前に飛び出していくが、修司の耳には彼女達の言葉は届かず、逆にプリキュア達を容易く薙ぎ払ってしまう。
修司の魔の手による進攻を前にして、シバ・カァチェンたち次世代五人衆は黒武士であった修司の素顔を目の当たりにした直後から固まってしまってた。
「………………………………」
カァチェン達は修司が猛威を振るっている最中も、受けた衝撃が余りにも強大であった為に硬直していた。
と、その時。五人の誰もが固まっている中で、逸早く我に返った武人が声を挙げた。
「……! い、いけねぇ! おい、みんな! 早く、あの野郎を倒さねえと……!」
声を挙げたマン・サコンの声掛けに、他の四人もようやく気付いたが、一人だけ異様に怯える男が。
「おおお、小田原修司……聖龍隊を束ね、世界中の権力者達をもひれ伏せた、生ける鬼神……」
「お、おい、マータンのおっさん! なにビビッてやがるんだ!」
かつての小田原修司をも知り尽くしているゴ・マータンの恐怖する姿を見て、サコンが喝を入れる。
しかしマータンは頭を抱え込み、畏縮してしまう。
すると状況が呑み込めてない二人が言葉を発した。
「ど、どういう事なんだ……? 何ゆえ、黒武士が小田原修司だったのだ?」
「お、小田原修司……なんで、なんでこんな事に……!?」
イン・ナオコは何ゆえ小田原修司がこの様な真似をしたのか疑問視し、山中鹿之助は先ほど目の当たりにした修司が悪党達を大勢血祭りにした情景を見て怯えてしまってた。
だが誰よりも衝撃を受けていたのは、自分に心を許してくれたアッコやバーンズが語ってくれてた数々の伝説や偉業を成し遂げた小田原修司が倒すべき敵であった黒武士だった事実に、未だ信じられない心境で愕然とするカァチェンだった。
「おい、カァチェン! しっかりしろ! 俺たちで小田原修司の野郎を止めないと、ますます被害がでかくなる一方だ!」
「あ……あぁ……」
サコンが呼びかける中、カァチェンは茫然とするばかりだった。
するとサコンは続けて他の三人にも声を掛ける。
「テメェら! 此処で俺たちが戦わなかったら、それこそあの小田原修司に全員、嬲り殺されちまうぞ!」
しかしサコンの呼びかけに三人は。
「だ、だが……あのミラーガールの想い人でもある小田原修司を……」
「そ、そんな……! さっきサコンさんも見たでしょ!? 悪党達が大勢、一瞬で小田原修司に返り討ちにあって殺されたのを……!」
「む、無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ……あの残虐非道で知られる小田原修司に太刀打ちできる訳がねェ……!」
ナオコは友でもあるアッコの想い人である修司を倒す事を躊躇い、鹿之助とマータンはすっかり臆病風に吹かれてしまってた。
「ッ……なら俺だけでも行く! 祖国を、そしてミィチェン様を死に追いやった全ての元凶…………小田原修司、今こそテメェとケリ付けてやる!!」
サコンは他の仲間達の戦意が戻るのを待たず、単身で修司へと突っ込んでいってしまう。
サコンはお得意の両手に双刀を握り締め、それを巧みに使いこなして修司へと斬りかかって行く。
だが修司はサコンの斬撃を全て魔の手で防ぐと、サコンが正面からの攻撃に夢中になっている隙をついて、彼の足元から巨大な魔の手を召喚してサコンを地面に何度も叩き付け始めた。
「ぐはっ……がはっ」
地面に叩き付けられる度に悶絶するサコン。
そんな苦痛に歪むサコンの声に、此処でやっとカァチェンが正気を取り戻す。
「! さ、サコン……!」
カァチェンがサコンの名を呼び、急いで彼を捕らえて地面に叩き付ける巨大な魔の手に急接近するが、魔の手を操る修司はそれに気付いてか、魔の手に捕まるサコンを駆け寄ってくるカァチェンに向けて思いっきり投げ付けた。
「ぐッ!」「うぅ……!」
サコンとカァチェンは激しく衝突し、悶絶してしまう。
「カァチェン!」「オレ達も行くぞ!」
悶絶して苦痛に喘ぐカァチェンとサコンを目撃して、聖龍隊のアラジンにアリババがモルジアナと共に三人で戦場を跋扈する修司に進撃する。
だが、かつての同胞だった三人に対しても、修司は生気のない虚ろな瞳に三人を捉えると、何も無い空間から魔の手を現出させて、まずはモルジアナを魔の手で押さえ込む様に捕える。
「きゃあっ!」「モルジアナ!」
魔の手に捕えられるモルジアナを見てアリババが昂るが、魔の手はモルジアナを捕えたまま押し潰し、じわじわと体力を奪う。
この事態に、アラジンが涙目で修司に訴え掛けた。
「修司さん! なんで……なんで、こんな真似をするんだよ!!」
しかしアラジンの涙ながらの訴えも、空虚な状態の修司には全く届かなかった。
戦場で猛威を振るい続ける修司に、周辺の猛者達が悪戦苦闘している最中、遠くから魔の手を使い戦場を跋扈する修司を狙う者がいた。
「いいな、修司とて生身の人間……よぉく頭を狙って撃ちゃあ、簡単に始末できる」
「は、はい!」
国連軍元帥の赤犬から命令を受けて、国連兵が狙撃銃で修司の頭を狙撃しようと狙い澄ましていた。
そして修司が周辺の猛者達を次々に魔の手で返り討ちにしている中、兵士は修司を狙撃した。
銃弾は一直線に修司の頭部目掛けて飛んだ。だが。修司の頭部に直撃する寸前、修司を取り巻く魔の手が銃弾を掴み取り、直撃が防がれてしまった。
「!」
スコープ越しで弾丸が魔の手に受け止められたのを視認した狙撃兵が驚愕する中、その狙撃兵の存在を修司自身も気付いたのか虚ろな眼差しを向けた。
「ッ!」
狙撃兵が驚愕した次の瞬間、狙撃兵の左右の空間から魔の手が現出し、兵士を襲撃した。
「うぎゃああああああっ!」
狙撃兵の断末魔が戦場に響き渡る中、狙撃兵の周辺にいた国連兵の周りからも続々と魔の手が出現して兵士達を襲う。
「こ、こいつは……なんて禍々しい光景なんだ……!」
少し離れた場所から戦況を見守っていたキリト達も、黒い禍々しき魔の手が至る所で出現しては猛威を振るっている現状に悪寒を感じた。
しかし此処で、魔の手を戦場に繰り出して猛威を振るう修司の凶行に変化を及ぼす一撃が。
[魔の鬼]
「そらよっと!」
なんとマン・サコンが少し離れた所から駆け出して、魔の手で猛威を振るう小田原修司に向かって跳び蹴りを喰らわした。
サコンの跳び蹴りを後頭部に受けた修司は、気絶したかのように地面に倒れ込み、動かなくなる。
「おいおい、テメェら! いくら昔、恩義があるとはいえ、相手はあの鬼神だぞ! さっさと倒さないと、こっちが逆に殺されちまうぜ」
サコンは周りの修司と顔馴染みである聖龍隊の隊士達に呼びかけると、続けて仲間と認めているシバ・カァチェン達にも言った。
「カァチェン! ……確かに小田原修司は、お前が微かに憧れている武人には違いないかもしれねえ……けどな。だからと言って、ただボケーッと口を開けて座り込んでいい理由にはならねえぜ」
「………………」
「立てカァチェン! 今ここで小田原修司を倒さなきゃ、俺たちに未来は無ェ!!」
サコンに指摘を受けて、カァチェンはやっと我を取り戻した。
そしてカァチェンが立ち上がると、サコンは続けて他の同士にも言い放った。
「なあ! ナオコちゃんに鹿之助の坊主! それにマータンのおっさん! 小田原修司が気を失っている今がチャンスだ! 徹底的にボコそうぜ!」
カァチェン同様にサコンに指摘された三人は、意を決して戦闘態勢に入った。最初は鞘袋から取り出された聖龍剣を見ただけで怯え切っていたゴ・マータンも、黒武士の正体が小田原修司だと知って恐怖に打ちひしがれた山中鹿之助もサコンに諭されて微かな勇気で立ち上がった。
と、サコンの言葉で各々戦う覚悟を決めた四人が姿勢を向けたその時。
「……? ! さ、サコン!」「?」
突然顔色を変えてイン・ナオコが声を挙げると、サコンは何事かと首を傾げる。
ふとサコンが後ろを振り返ると、なんと先ほどサコンの蹴りを後頭部に受けた修司が、直立不全の体勢のまま起き上がり、閉じていた瞼を見開いて空虚な瞳を晒してサコンの目前に立ちはだかった。
「っ!」
思わず一驚するサコンを前に、修司は死人の様な無表情な顔でサコンを見据えていると、腰に差していた聖龍剣を右手で抜刀し、その直後に地面に発生させた闇の中から一丁のショットガンを現出させて左手で持った。
そして右手に聖龍剣、左手にショットガンという武装で修司はサコンに向けて銃口を向けた。
「やっべ!」
サコンは慌てて退避しようと駆け出すが、それよりも早くショットガンの銃口が火を吹いた。
無数の散弾がサコンに向かって飛ぶ。
サコンすらも思わず被弾すると諦めかけていたのだが、そんなサコンの危機に飛来する散弾の前に大海恵とティオの二人が立ちはだかり、防御呪文で防壁を作り、サコンを守った。
「て、テメェら……」
嫌いな二次元人から守られて、茫然とするサコンに恵とティオが言った。
「君が私たち二次元人を嫌っているのは解ってる。だけど今はそんな事言っている場合じゃない。……悲しい事だけど友達を……修司君をとめないと!」
「修司がなんで、こんな馬鹿げた大戦を始めたのかは全然分からないけど……友達の暴走を止めるのも、同じ友達である私たちの役目なんだから!」
恵とティオの言葉に、憎い筈の二次元人からの言葉として釈然と受け止め切れないサコンは多少苛立ちながらも立ち上がり、戦う姿勢を示した。
一方の修司は、そんなサコンを守った恵とティオの二人に、かつてとても仲の良かった二人に対しても再度銃撃を仕掛ける。
「来るわよ、ティオ!」「うん!」
恵とティオは身構えて、修司の銃撃に備える。
すると修司はショットガンの銃口に闇のエネルギーを充填させて、最大火力の防御不能な威力の銃撃を二人に浴びせようとしていた。
今度は恵とティオが危機に瀕してしまった。
と、其処に。ショットガンにエネルギーを充填しようとしていた修司の真横から旋風の鎌鼬が飛んできて、修司を襲う。
修司は一瞬で判断し、エネルギー充填をやめて鎌鼬から回避する。
誰が攻撃を放ったのか修司が視界を向けると、その先には
「か、カァチェン!」
戦前に復帰したカァチェンの姿を見て、サコンは自分の事の様に喜んだ。
「鬼神よ……これ以上、貴方の思い通りにはさせません……!」
カァチェンは少し修司に恐れていながらも、強く自分の意志を伝えた。
だが修司は聖龍剣とショットガンを巧みに使い分け、近距離からの斬撃と中距離からの銃撃で応戦する。
カァチェンは
そんなカァチェンの奮闘に応え様と、サコンも果敢に過去の因縁を吐き散らす様に修司へと挑む。
「テメェの好きにはさせねェ!! ここでケリつけてやる!!」
「その威勢……本物か見せてもらおう」
空虚な瞳でサコンと対峙する修司も、果敢に聖龍剣を振るってサコンの双刀と火花を散らす。
カァチェンとサコン、二人の熱き修司への合戦を間近で目撃し、黒武士が修司であった事実に激しく動揺し、動けなくなっていた多くの聖龍隊士が動き出した。
「髪の毛針!」
この大戦で先攻隊として活躍していた鬼太郎が、聖龍剣とショットガンを振るう修司に髪の毛針を放つ。
しかし修司は聖龍剣を一振りして、その風圧で鬼太郎の髪の毛針を全て吹き飛ばしてしまう。
「修司君……! なんで君はこんな真似を……!!」
鬼太郎は問い詰めるが、修司は何も答えず、近距離の鬼太郎に向けてショットガンを連射した。
これに鬼太郎は素早く反応し、チャンチャンコで銃弾を全て防弾して我が身を守った。
と、そこに今度は黒崎一護と浦飯幽助が駆け付け、修司に問うた。
「おい、修司! おふざけにしちゃ、性質が悪すぎるぞ……!」
「修司……一体なんの考えで、こんな真似を仕出かした……!」
一護と幽助の問いにすら、修司は返答する事はなく、闇の覇気を纏った聖龍剣を地面に突き刺し、地面から針地獄を連想させる針の山を二人に向けて放つ。
一護と幽助の二人は、跳びはねて攻撃を回避するが、何ゆえ修司がこの様な真似を仕出かしたのか疑問に思うばかり。
すると修司は此処で聖龍剣を腰に差した鞘に納めると、右手を自分側に招き入れる様に引き寄せる動作をした瞬間、修司の前方にいた少女達を引き寄せてしまう。
「うわっ!」
佐倉杏子に美樹さやか、そして巴マミ達が修司の闇の引力に強引に引き寄せられてしまい、そんな少女達を修司は闇の覇気を纏った聖龍剣で斬り付けた。
「きゃあっ」
少女達の悲痛な叫び声が響く中、斬り付けられた少女達は地面へと転げ回る。
「ううぅ……」「な、なんだ、この激痛は……!」
さやかや杏子たちは絶命してはいなかったが、人の精神に直接激痛を与えられる闇の覇気での斬撃を受けて、激しすぎる痛感で悶え苦しんだ。
一方の修司はその後も次々に闇の覇気を纏った聖龍剣と、闇の覇気を撃つショットガンで並居る猛者達を苦しめる。
そんな修司に対して防戦一方の戦況を見た赤塚組頭領の赤塚大作こと大将は、かつての旧友でもある修司の変貌振りに未だ驚きを抑え切れなかった。
「………………………………」
茫然とする大将。そんな彼に同じ赤塚組の幹部衆であるミズキが声を掛ける。
「大将……大将!」「!」
ミズキの声掛けに気付かされる大将に、ミズキは更に言った。
「大将! 黒武士の正体に驚き、動揺しているのはあなただけじゃないわ」
「………………」
「こんな時に指示を伝えて、私たちを動かすのが組の頭領……大将であるあなたの務めなんじゃないの! しっかりして!」
このミズキの台詞に、大将は背中を押されて我に帰った。
「そ、そうだな、みんな…………よし、俺たちも……俺たちも修司を止めるぞ!」
『おうッ!』
大将の掛け声に、赤塚組幹部衆は威勢よく応えた。
そして赤塚組は、大将とミズキという戦力を戦前に、後の幹部達は後方で銃撃にて支援するという戦法で修司と交戦する陣形を組んだ。
大将は早速サイボーグであるミズキと共に修司へと踏み込んだ。
そして大将は破槍を振り回し付け、修司の真上から激しい打撃を与えようとする。
が、修司は頭上からの破槍での打撃を聖龍剣で難なく受け止めてしまう。
其処に今度はミズキが強力なレーザー光線を発射して、修司に攻撃するものの、修司は闇の能力で光線を捻じ曲げて、軌道を逸らして光線を上空へと反らしてしまう。
二人の攻撃が効かなかったのを目の当たりにして、後方で身構えていた他の幹部衆が修司に向けて銃撃を開始。
しかし修司への銃撃は全て、修司が纏っている闇の甲冑に弾かれて、修司本体への銃撃は叶わなかった。
「ッ! あの鎧甲冑も、闇の能力で作られているからか銃弾の運動エネルギーも無力化されて効果が出ない……!」
赤塚組幹部のテツは激しく歯軋りして悔しがる。
すると此処で修司の様子がまた変化し出した。
ふと戦場の中央で立ち止まる修司。すると修司の周辺に再び巨大な魔の手が出現し、手当たり次第に近くの猛者達を襲い始めた。
「み、みんな気をつけろ!」
「修司さんの闇から生まれた魔の手に捕まれば、たちどころに生命エネルギーが奪われてしまう!」
手当たり次第に襲い掛かってくる魔の手を回避しながら、明石薫と村田順一は周りの仲間達に呼びかける。
気付くと修司は右手に聖龍剣、左手にショットガン、そして周囲からは魔の手を繰り出すなど、更に禍々しい戦闘態勢で武装していた。
これを見たウェルズは非常に怯えながら解説し始めた。
「あ、アレは間違いなく……修司の躁鬱に対して、闇の能力が影響している片鱗だ」
このウェルズの台詞を聞いて、大将が思わずウェルズに問い詰めた。
「お、おい! 修司は過去に鬱を発症しているって聞いた事はあるが、躁にもなっているって、どういう事だ!?」
ウェルズは震えた口調で答えた。
「修司の精神状態が、今の状態だと実に不安定って事だ……鬱の様に気が弱々しくなっていると、魔の手を繰り出して周辺の敵から体力を吸収しながら攻撃し……逆に躁の様にテンションが昂っていると、聖龍剣とショットガンで無差別に攻撃していくスタイルに変わっちまうんだと思う」
「そ、それが今の不安定な修司の状態って事か」
「そして今……度重なる戦闘で躁と鬱の症状が合致した事で、聖龍剣とショットガンに加えて魔の手も繰り出してくる禍々しい戦闘スタイルに変貌しちまっているんだよ」
「ウソだろ、おい……!」
ウェルズからの解説を聞いて、大将は愕然とする。
そんな最中、聖龍剣とショットガンに加えて魔の手も繰り出して攻めてくる修司の猛攻に多くの猛者達が苦しめられていた。
暗く鬱な修司、闇の様な修司、そしてその二つの躁鬱という状態から攻めてくる修司に誰もが苦戦した。
剣と銃と魔の手という、三種の攻撃法を持つ修司の顔は、未だに空虚な瞳と死んだ様な表情のままであった。
[否定する鬼]
遂にその漆黒の仮面と兜が砕け散り、露になった黒武士の素顔。
だが、その正体は非情にも、かつて二次元人達に心を与えられた男・小田原修司だった。
修司はかつての仲間でもある聖龍隊などの猛者達を、一切の慈悲も無く攻撃しては痛め付ける。
おどろおどろしい心の闇から出没する魔の手、そして闇の覇気を纏わせた聖龍剣に、闇から出現させた覇気を射出できるショットガンを巧みに使い分け、戦線を掻き分ける様に進攻する修司。
彼の生気の無い表情から放たれる空虚な瞳は、戦場でただただ困惑する者たちが苦痛に喘ぐ姿しか捉えていなかった。
周辺の敵を魔の手で狩り取り、中距離の敵はショットガンでの銃撃で、そして近距離での敵は聖龍剣での斬撃で倒していく修司の猛攻に誰もが苦戦していた。
そんな苦戦の戦況の中で、赤塚組はカァチェンたち次世代五人衆と共に修司へと挑みかかる。
「おりゃッ!」「く、喰らえッ」
破槍を上方から振り回す大将の打撃と、修司に怯えながらも奇刃を投げ付けて攻撃を仕掛けるゴ・マータンの二人。
だが修司は頭上から振り下ろされる大将の破槍を右手一本で受け止めると、その直後にマータンが投げ付けてきた奇刃を左手のショットガンで撃ち返し、弾き返してしまう。
「ッ!」
自分の重量級の得物である破槍を片手で受け止められて唖然とする大将に、修司は静かに呟いた。
「大将……お前の思いも、今の俺には届かない……」
次の瞬間、修司は大将が振り下ろした破槍を押し返したと思いきや、素早く右手で聖龍剣を抜刀し、逆手に握り締めると刃を押し出す要領で大将の首を狙ってきた。
一瞬の出来事に何も出来ない大将。だがその時。背後で大将の背中を庇い合いながら共闘していたミズキがレーザーで修司の顔を狙撃。修司は顔を横へ逸らした隙に刃の軌道が曲がり、大将はその僅かな軌道の変化に合わせて身を反らして回避した。
大将の首を斬首できずに直立する修司に、今度はイン・ナオコが巨剣を前方へ突き出して、修司に巨大な刃での突きを喰らわそうと突進する。
しかし修司は難なくナオコの巨剣での突きをかわし、再び逆手で聖龍剣を握り締め、押し出す形でナオコの首を狙う。
そんなナオコの首を狙う修司に、死角から山中鹿之助とおやっさんのコンビが連携攻撃で、おやっさんを上空に跳ばすとそのまま修司へと突撃した。
おやっさんの蹄での打撃を顔面に受けて、思わず怯んでしまう修司はそのままよろめいた。
修司がよろめき怯んだ隙を狙って、マン・サコンとシバ・カァチェンの二人が修司に斬りかかって行く。
「おらおらおらおらおらッ」
威勢よく修司に双刀で斬り込んで行くサコンに続き、カァチェンも
全身に無数の刀傷を受けた修司。だが修司はD-ワクチンでの超回復力で瞬く間に傷口が塞がり、回復してしまう。
「チッ、やっぱ昔ながらの人並み外れた回復力は健在って訳か」
舌打ちをして悔しがる焦燥のサコン。
「カァチェンや赤塚組だけに戦わせる訳にはいかないわ! 前総長の修司を、一刻も早く止めるのよ!」
と、此処で聖龍隊スター・ルーキーズの総部隊長ミラールが仲間達に命令を告げると、多くのルーキーズ隊士が修司制止に飛来してきた。
「小田原修司! なんでアンタがこの様な真似を……!」
「修司さん! もうやめて……!」
六道りんねと真宮桜の呼び掛けにも修司は答えず、二人に向かって強力な斬撃を放つ始末。
「み、みんな! 焦ればそれこそ思う壺だよ……! 修司さん相手に能力は一切効かなくなるのを忘れた訳じゃないだろ!」
修司に飛び掛っていくルーキーズ隊士の無茶振りに、ニュー・スターズ隊士のアレン・ウォーカーが必死に呼びかけるが、時既に遅かった。
「うわっ!」「ぐはっ!」
日ノ原革に門脇将人の二人も、修司の斬撃の前では子供同然だった。
「やめるんだ、修司……!!」
トリコもその剛腕で修司を殴り付けてまでも制止しようとするが、修司はトリコの拳を魔の手で受け止めるとそのままトリコに向かってショットガンを連射して彼の巨体を沈めた。
焦って勝ち急ごうとしているルーキーズの面々を前にして、ミラールがお得意の二丁拳銃ミラージュ・ガンで修司を狙撃する。
だが修司はミラールの放つ銃弾を全てショットガンからの散弾で受け止め、防ぎ切り、全ての弾丸を地面に落下させる。
「修司……」「………………」
しばし修司と対峙するミラール。しかしミラールと向き合っても修司の表情は変わらなかった。
こうして聖龍隊士と修司との戦いは完膚なきまでに、修司の圧倒的戦利だった。
そんな戦況でも、二次元人達に生きる喜びを与えられたカァチェンは修司に向かって言い放った。
「私は負けない……絶対に皆さんを守ってみせる! そして……ゆくゆくは自分を変えてみせる……!」
掛け替えのない仲間達を守り、そしていつか何も無かった自分を変えて生きたいと己の夢を修司に明かすカァチェン。
しかし修司はそんなカァチェンに静かに言い返した。
「いいやカァチェン、お前は決して変われない……そして何も守れない。それが現実だ」
「何を言うんだ、修司!」
修司の言葉に、カァチェン達と共闘している大将が反論すると修司は更に語った。
「分かるんだよ、シバ・カァチェンお前のことが……心を持たずして生まれ、愛情を感じられずに生を受けてきたお前の事が、手に取る様に分かるだけだ」
「何を言って……修司」
更に大将が言い返そうとするが、修司はそれを遮る様に三度語り出す。
「俺も同じだからだよ、大将、そしてみんな……俺もカァチェンも、欠けた心を持って生まれ、そして愛情を感じずに生き永らえてしまった異形の存在、バケモノだ。そんなバケモノ風情が夢を語るなど、おこがましい限りだ」
「………………」
修司の語りにカァチェンも大将も他の一同も聞き入れる最中、修司は語り続ける。
「カァチェン、お前は昔の俺同様、バーンズやアッコ……多くの二次元人たちから生きる希望を、そして自分を変えれるという浅はかな夢を見せられた。だが、先ほども言ったが、そんな夢や理想を託されたとしても、それを叶えられる保障は何処にある?」
そう語る修司は、ハッキリとした口調でカァチェンたち目の前の皆々に言い切った。
「これが現実だ。託した側も託された側も……この世界で生き永らえる命は、全てクズになる。俺と、俺のクローンである新世代型がいい例だ、大将……」
自分たち新世代型達を語る修司の発言に、衝撃が走る新世代型達。
「この世界を歪ませるクズを生む輪廻からは、皆逃れる事は出来ない」
そう言って修司は聖龍剣を構えて、前方真正面に向けて地走りを放った。
「だからこそ俺は、この世界を創り変える……!」
修司が放った地走りを、カァチェンは咄嗟に
「この腐り切った世界に蔓延る、俺という異形のバケモノ……そして、その血を受け継いだ同じく異形のバケモノ達を、俺は絶対に許さない……!」
世界と己のクローンである新世代型達を、自らと同等に許せないと豪語する修司の発言に、戦場の皆々もそして檻の中の新世代型達も衝撃を受ける。
一方、修司の地走りを受け止めたカァチェンは息を切らして困惑するばかり。
話に聞いていた修司と、今目の前にいる修司とでは明らかに天地の違いがある。その違いにカァチェンは困惑していた。
だが、そんなカァチェンに今や彼の相棒とも言うべきマン・サコンが言った。
「カァチェン!」
「………………」
「諦めんじゃねェよ! 夢ってのは、諦めたら其処で終いだ!」
サコンからの激励を受けて、カァチェンは再び
そんなサコンの言動に、修司が言った。
「夢は諦めたら終わり、か……だがサコン。お前やお前の主君であったヤン・ミィチェンが掲げていた北朝鮮の繁栄はどうなった? 俺がアジア各国に圧力を掛けて、北朝鮮を完全に孤立化させた所で、俺が指揮していた当時の聖龍隊によって壊滅させられた独裁国家の成れの果てを目撃したお前が「夢は諦めたら叶う」というのは、ちと可笑しいんじゃないか?」
この発言にサコンはすかさず言い返した。
「黙りやがれ! そりゃ、俺やミィチェン様が掲げていた野心はお前ら聖龍隊によって潰えた! だけど、カァチェンの……カァチェンの弱い自分を変えたいって純粋な想いまで、否定するんじゃねえェよ!」
サコンの二度目の激励を聞いて、カァチェンは心の奥底から勇気が湧いてきた。
「私の仲間は絶対、殺させない!」
そんなカァチェンの意気込みに対して、修司は空虚な眼差しで言い返す。
「そう上手くいくかな? いや、俺が望んでいるのも殺戮などではない。むしろ全ての命が安寧に、そして永久に眠れる真っ白な桃源郷なのだからな……お前達が抗いなどと無意味に戦わなければ、誰もが安らかに眠りに就くというのに」
「結局は俺たち全員を殺して、永眠させようってのは同じだろ!」
修司の言葉にサコンは強く反論した。
そしてサコンやカァチェン、そして修司の問答を聞いていた大将は、破槍を握り締めてかつての友である修司に言い放った。
「修司、かつてのお前の意志は……今でも俺の隣に……そして多くの聖龍隊士の心の中にある!」
かつて自分の友である修司が培った意志は、自らの隣そして数多の聖龍隊士の心中にあると説く大将。
「今の俺にできる事は、今のカァチェン達を守る事だ!」
そして今の自分達にできるのは、次代を築ける若い意志であるカァチェン達や新世代型達を守り抜く事だと主張する大将。
「
「修司……お前が俺たち全員の未来を奪う害になるのなら、俺たちはそれを全力で排除するだけだ」
「……やってみろ」
そう大将に呟き返した次の瞬間、修司と大将はそれぞれ得物を携えて真っ向からぶつかった。
聖龍剣と破槍が激しく火花を散らしてぶつかり合う情景に、誰もが絶句した。
未来を守る意志と、未来を根絶する意志のぶつかり合い。
その激しい戦いの情景に、何処か胸が痛くなる聖龍隊士が続出したという。
[鬼が否定するもの]
破槍を握り締め、振り回す赤塚大作。
聖龍剣を振るう小田原修司。
二人の激突は凄まじく、二人は闘っていた。
そして二人は互いに得物同士の衝撃で後方に弾き合うと、再び大将と修司は対峙した。
「修司、今一度問う……! なんで、こんな真似を……!!」
激しく得物同士をぶつけ合って、体力を消耗した大将が問い詰めると、全く息を切らしていない修司が冷然と返答する。
「大将、俺は世界の汚れを一身に浴び、一身に受け止めた穢れそのものだ……俺は世界を綺麗に掃除する為に使い捨てられるだけの雑巾の様な汚れたゴミだった」
修司の話を、大将だけでなく戦場に居る皆々が聞き入れてた。
「だが、世界はそんな俺の……俺の様に穢れた存在を、未だに必要として生み出し、作り続けている……殺戮と破滅、二つの才しかない俺のクローンを生み出し続ける。そんな世界を、俺はまっさらな桃源郷に変えたいだけなんだ」
「つまりなんだ……! お前が此処まで落ちたのは、世界が新世代型二次元人を……お前のクローンを生み出したのが元凶って訳か!?」
大将は修司の話を聞いて愕然とした。修司がこの様な凶行に走ったのは、自らのクローンである新世代型二次元人を世界が生み出したのが発端だというのだ。
「ふざけるな! 俺たちはテメェの様な……人間兵器だったテメェの代わりなんか、いらねえんだよ!」
「そうだそうだ! おれ達はテメェみたいな殺人鬼なんかと共存したくないんだよ!!」
そんな修司の話を聞いて、戦場で抗うマン・サコンと新世代型達と共に檻の中に捕らわれているバギーが強く反論。
だが修司は二人の反論を聞いた上で、静かに語り出す。
「お前達の意思など、世界は全く聞き入れない、望んではいない……既にお前ら少数派の意見よりも、多数派の意見を世界は優先する……俺の様に残忍かつ陰湿な、それこそおぞましい化物たる新世代型という異種を世界は望んでしまっているのだ」
この修司の一連の言動を檻の中で見届けていた新世代型二次元人達は、深く失望していた。
「そんな……!」
「小田原修司が足正義輝と共に大戦を引き起こした理由が、まさか新世代型っていう自分のクローンが事の発端だったって言うのか?」
「こんなのって……」
「自分のクローンを生み出し続ける世界への反抗、と言うのか……!?」
新世代型達と共に檻の中に捕らわれているプロト世代のチョコにギュービッド、桃花に海道ジンは蒼然とする。
自分達が小田原修司が凶行を起こした原因だと知って、矛先も定まらない怒りと絶望に打ちひしがれる新世代型達。
「俺達が……俺達が生まれた理由って……何だったんだよ」
新世代型の真鍋義久が打ちひしがれる中、零した台詞に対して地上の修司は気強い声色で冷淡に告げる。
「考える余地は与えぬ。何故なら……我ら破滅の血族の生に、
自分達の生に対して、最初から意味など持っていないと告げる修司の発言に新世代型達は悲痛な衝撃を受ける。
だが、そんな冷たい修司の言葉に衝撃を受ける新世代型達に、修司は更に衝撃を告げる。
「世の中、思い通りにはいかないようにできている……宇宙ステーションでドレフがお前達を吸収して異常化した時も、お前らは運よく助かったのだからな」
「! あれは…………あれは! 潰し合いの為にさせていたのかよッ!」
巨大宇宙ステーション、バイオロジック宇宙生物研究所、通称B.S.Lで国連軍所属の将校ドレフが黒幕だった事件を、黒武士だった修司は全て周知していた発言に新世代型の真鍋義久が思わず問い返す。
それに対して修司は表情を変える事無く、空虚な表情で声色に若干の強みを増して語り返した。
「そうだ……! 同じ新世代型同士で潰し合ってくれれば手間が省ける……俺は、二次元人は人々を共存させられる可能性を感じて、今まで守り通してきた。だが、今の貴様らは何だ?醜く罵り合い、争い合い、奪い合い、傷つけ合い……そんなの、こんなの! 俺が守ってきた二次元人ではない!」
修司が言うには、新世代型達は今まで同族であるにも関わらず、醜く罵り合い、争い、奪い合い、傷付け合ってきた故に、修司が過去に感じてきた無限の可能性を持つ二次元人の理想とは遠くかけ離れた新世代型に失望したと言うのだ。
新世代型達に失望した修司は、更に新世代型を非難し続ける。
「……俺の血をひき、己の忌まわしき血縁へと成り果てた鬼の血族たるお前達は……既に、生まれた時から失敗している存在なんだよ!」
存在そのものが失敗している欠陥品と罵られた新世代型達。だが修司の棘のある言葉は尚も続く。
「俺の血を引いているから争い合うのか……俺のクローンだから傷つけ合うのか……俺のクローン故に、破滅しか呼ばないのか……!」
完全に新世代型達を、完全なる失敗作と見下す修司の一言一句に、新世代型達はただただ衝撃を受け、暗鬱と言葉を失っていた。
新世代型達が皆、自分達の始祖である小田原修司から存在を完全否定された事実に沈痛な面持ちを浮かべていた時の事だった。
「……Hey! 新世代、お前達のSoulはその程度だったのか!?」
粋な口調で新世代型達に問い掛けるその声に、下を俯いて気落ちしていた新世代型達は顔を上げて、地上を見下ろしてみると其処には。
「Ha! テメェらのspirit、それでお終いじゃねえよな?」
「新世代の
そんな熱くそして冷静に問い掛ける蒼き鎧を着た武士と、熱く滾らう紅蓮の武士を見て、イン・ナオコが口を開いた。
「お、お前ら……」
そしてナオコや山中鹿之助そしてゴ・マータン達が唖然としている中、最前線に並列して登場してきたのは、蒼き独眼竜デイ・マァスンと紅蓮の若虎シン・ユキジを筆頭としたアジア各国の武将達であった。
「マァスン様! ご無理はなさらず……相手はあの鬼神、冷静に戦況を見極めるのです……!」
「や~れやれ、せっかく仮面を壊して正体が明らかになったと思ったら、まさかの鬼神様とは。悪い冗談も此処まで来ると、流石に笑えないぜ」
そのマァスンとユキジの側にいるのは、従者である剣術遣いであり軍師でもあるタク・モンジュロと忍の猿飛佐助。
「おい、マータン。お前さん、一体どんな心境の変化でカァチェンと一緒に行動してるんだ? まあ、今はそんなのどうでもいい……取り敢えず鬼神をぶっ倒さないとな!」
「う、ウッセェ……阿呆席」
笑顔で語り掛けてくるかつての上司である黒劉席からの励ましに、マータンは少しばかり素直になれなかった。
「義兄の暴走を止めるのも……弟である私の務め!」
今や修司の義兄でもある韓国将軍のサイ・チョウセイは、剣を抜刀して戦いを指揮する姿勢を示す。
「ぶるぶるぶるっ、こ、怖いけど……けど、また幸平くん達から美味しいレシピを貰う為にも……ぼくも頑張るぞ!」
幸平創真たち【食戟のソーマ】組から、以前美味しい食事を振舞ってもらったアジア一の食通と豪語するシャ・キンカも戦う覚悟を決めてた。
「いやはや、まさか鬼神と畏れられし小田原修司が黒武士だったとは驚きだね……だが、私にもイギリスと言う護るべき母国がある。此処は聖龍隊には悪いが、小田原修司を討伐しなければね……」
そうウィンクしながら修司討伐に乗り出す姿勢を示すイギリス外交官兼指揮官モーリス・ナイロン。
「鬼神様……なんで貴方は、そんな悲しい空虚な瞳をしているんですか? 以前の貴方は、もっと気高く力強い瞳をしていたと言うのに……」
世界に仇名す修司の現状を前にして、悲観する海神の巫女、鶴姫。
怒涛の登場で前線に出てきた武将達を見て、唖然とするカァチェン。
そんなカァチェンにデイ・マァスンが言った。
「おい、カァチェン!」「!?」
突然自分の名を呼ばれて挙動不審に陥ってしまうカァチェンに、マァスンは言う。
「Battleはこれからだ……塞ぎ込んでいる暇はねェぜ!」
このマァスンの一言に、カァチェンは再び戦意を上昇させ、立ち上がった。
そして多くの名立たる武将達と共に並び、小田原修司と対峙する。
己から生み出された新世代型二次元人を否定する小田原修司。だがそれは同時に己を否定するのと同等だった。
果たして修司と同じ三次元人の武人である武将達は、小田原修司を止める事ができるのであろうか。
[世界が変わり、強くなった武人達]
天地は轟き、暗雲が立ち込める激化する戦場にて。
正体を明かした黒武士、いや小田原修司と対決を始める三次元人の武将達。
だが、彼らの猛攻をも修司は禍々しい闇の能力を駆使して阻止してしまう。
「ヘッ、久しぶりだな鬼神のオッサン! 二年前同様、派手なpartyにしようぜ!」
「何ゆえ、其方がこの様な所業を……! いや、今は刃と刃を交えなければ解り合えぬと見た……いざ、尋常に!」
今や中国漢族を束ねる郷士でもあるデイ・マァスンと、モンゴルを新たに纏め上げる若かりし武将シン・ユキジは、互いに共鳴し合うかのように修司へと刃をぶつけようとする。
しかし修司は二人の熱き攻撃を闇の覇気で防いでしまい、二人を弾き返してしまう。
修司の覇気で弾かれてしまう二人に代わって、二人の従者であるタク・モンジュロと猿飛佐助が修司に急接近する。
「マァスン様! 貴方様はこの場にてお待ちを……!」
「お、おい! モンジュロ……」
「大将! あんたも此処で大人しくお留守番! いいね!」
「さ、佐助……!」
モンジュロと佐助は、互いに己の主に言い付けると、真っ直ぐ修司に向かって急接近した。
そしてモンジュロと佐助は同時に修司に飛びかかろうと得物を携えて襲い掛かったのだが、修司は強烈な斬撃で二人を押し退け、これまた弾き飛ばしてしまう。
「くッ……こっちの攻撃はマトモに受け付けねえのか」
「ふぅ、やれやれ。相も変わらず尋常じゃない覇気を纏っている事」
睨みを利かせるモンジュロに対して佐助は相変わらずの修司の強さに呆れてしまう。
すると其処に巨大な鉄球を武器に迫る黒劉席が、昔の従者であったゴ・マータンと共に修司に挑んできた。
「おい、マータン。手筈通りにしろよ?」
「チッ、今だけは従ってやりますよ、阿呆席」
何やらマータンに耳打ちする劉席に反して、マータンは舌打ちして渋々付き合っているという感じ。
そして劉席は巨大な鉄球を修司に豪快にぶつけるが、修司は自慢の剛腕で鉄球を片手で受け止めてしまう。
「今だ、マータン!」
修司が鉄球に気を取られている隙に、劉席がマータンに合図を。
マータンは電撃を纏った奇刃を投げ付けて、修司に直撃させようとする。
しかし修司は左手に備えるショットガンでマータンが投げ付けて来た奇刃を撃ち、三発目の散弾で奇刃は勢いを失くして失速してしまう。
そして修司は右手で押さえてた鉄球を劉席に投げ返すと、劉席とマータンは修司と距離を置いた。
「お前さんがいつ地下にもやってくるかと思うと、穴蔵でのんびり昼寝もできないんだよっ!」
「奈落に関心はない……いづれ、この世の全てが暗闇ぞ」
修司がいつ攻めてくるか分からない状況ではのんびりできないと文句を言う劉席に、修司は物静かに言い返す。
劉席とマータンのコンビが襲撃に失敗したのを見届けて、今度は修司の義弟である韓国将軍のサイ・チョウセイが修司に迫る。
「兄者! 何があったのですか!? 何ゆえ、この様な暴挙を……!」
「お前には関係ない……! 全て、俺を望むこの世界が招いた悲劇ぞ……!!」
修司と刃を交えるチョウセイが問い詰めるが、修司は明確な返答を返さない。
「兄者は世界に……世の中に認められ、必要とされたかったのでは!? それなら何故、兄者を必要としている世界を恨む!?」
「世界は……余りにも俺という醜い種を……力の象徴を欲してしまった。故に……俺の代役として新世代型という異形を多く生み出してしまった。その罪を……! 俺自身が浄化せねばならん……!!」
激しく刃と刃をぶつけ合う修司とチョウセイ。二人の義兄弟は問答を繰り返しながら闘い続けた。
互いに激しく刃をぶつけ合う修司とチョウセイ。だが、修司は自慢の強力でチョウセイを後ろへと弾いて押し出してしまう。
するとチョウセイの危機に、彼を慕う山中鹿之助が割り込んで、修司が振るう刃を連結棍棒で弾き返す。が、修司の剣術に鹿之助は押し負けてしまい、チョウセイと同じく後ろへと弾かれてしまう。
「し、鹿之助……!」
「あわわ……や、やっぱりあの小田原修司とやり合うのはまだ早かったかな……」
助けに来てくれた鹿之助の行動に驚きを隠せないチョウセイに対して、鹿之助は未だに修司に弾かれた棍棒から伝わる痺れに困惑していた。
そんな二人に修司は、近距離から地を走る斬撃「地走り」を繰り出して、二人に攻撃。
チョウセイと鹿之助が愕然としたその時。一人の青年が駆け込んで背中に背負う巨大鍋で修司が繰り出した地走りを辛うじて防いだ。
「やっ、やめてください! そ、その……修司さん。ぼくに色んな二次元人を紹介して、色んな美味しいものをご馳走してくれた貴方と戦いたくないんです……っ!」
過去に多くの食通や料理人である二次元人を紹介して、ご馳走を振舞ってくれた修司と戦いたくないと怯えながら伝えるシャ・キンカ。
すると修司はキンカが盾に使う鍋に向けて聖龍剣を突き出して構えると次の瞬間キンカに向かって聖龍剣を突き出したまま突っ込んで、キンカの鍋に強力な突きを放つ。
「うわあああっ!」
修司が繰り出した強力な突きを喰らって、思わず仰向けに転倒してしまうキンカ。
キンカが防御に使っていた鍋は突きの衝撃で高温になり真っ赤になっていた。
修司がキンカを圧倒していると、修司の背後から地面に体を擦り付ける様に這いずりながら接近する人物が。
「おお、世界の均衡を保ち、その身を削って情勢を維持し続けた小田原修司よ。よくぞご無事で……」
そう修司に低い姿勢で語り掛けながら接近していくイギリス外交官のモーリス・ナイロンは、欠かさず修司の隙を窺う。
そして一瞬の隙を衝いて、修司に向かって得物である剣を連続高速で突いた。
「あらあらあらあらあらあらあらあら……ッ!」
連続で修司に凍て付く突きを喰らわすナイロン。しかし彼の凍て付く剣戟を受けた修司は、体の表面が凍っただけでスグに解凍してしまう。
「う~む……やはり鬼神と畏れられ、D-ワクチンで肉体を強化された小田原修司には我輩の超絶怒涛な剣戟は効かないか……」
ナイロンは自分の攻撃では、肉体を軍事実験で強化されている修司には効果がないと的確な判断力で理解する。
そんなナイロンに修司は飛び掛かり、高い位置からナイロンに襲撃をかける。
だが、そんな修司に同じ高い位置からピンクの煌めく矢が飛来して、修司の襲撃を阻害する。
煌めく矢に襲撃を阻害されて地上に着地した修司が目を向けると、矢を修司に放った少女が悲しげに語り掛けてきた。
「……鬼神様。あの気高い意志を持っていた鬼神様が、何ゆえ国連総長様と結託して、この様な大戦を始めてしまったのですか? いえ、きっと……私でも見通せない理由が御有りなんでしょう」
「………………」
「……それなら! このわたしが……ズババババ~ンと、鬼神様の目をシャキッと覚まさせてあげますね☆」
そう修司に宣言した海神の巫女である鶴姫は、再び修司に向けて浄化の効果もある煌めく矢を放とうとする。
しかし弓を引いて矢を射ようとする鶴姫に、遠距離の修司は彼女の両側から魔の手を出現させて鶴姫を左右から掴みかかる。
「うわっ!」
魔の手に捕らえられた鶴姫は驚き、何もできずに困惑するばかり。
と、魔の手に捕まった鶴姫に向かって紅蓮の炎を得物に纏わせて駆け付ける猛者が。
「鶴の字!」
鶴姫を捕らえる魔の手に炎を纏った破槍で大打撃を与えて救助したのは赤塚大作こと大将だった。
「か、海賊さん……」
「鶴の字、無茶はするな……! 今の修司は、女子供でも容赦はしねぇぞ」
呆気に取られる鶴姫に対して、彼女を救出した大将は現状で誰よりも小田原修司を知っている人間として、今の修司が女子供でも容赦しない状態なのだと説く。
と、大将が鶴姫を救出した直後。
「退いてろ、お前ら!」
怒声と共に人混みをかき分けて戦線に突っ込んでいくのは、北朝鮮の残党でもあるマン・サコン。
サコンは激しい感情を抱いたまま修司に向かって双刀を携えて突撃する。
「北朝鮮の忘れ形見、マン・サコン! さあさあ、張った張った!」
威勢のいい掛け声で修司との戦いを賭け事の様に挑むサコン。修司はそんなサコンが振るう双刀を右に左に容易く避けていく。
「おい、北朝鮮の残党! 一人で突っ込んでも鬼神相手に勝ち目はないぞ!」
単身で修司に挑んでいくサコンに、冷静沈着な参謀でもあるタク・モンジュロが声をかけるが。
「黙りやがれ! ……二年前、二次元人共と徒党を組んでミィチェン様を死に追いやったヤクザ紛いが! 俺に指図すんじゃねェ!!」
サコンは二年前、自身の主君であるヤン・ミィチェンを死に追いやった聖龍隊の連合軍側であったモンジュロ達を恨んでか、聞く耳を持たない。
鬼神・小田原修司が介入した事で大きく変革した三次元界に齎された技術や資源。
それらは気高い意志を持つ武人達に、様々な属性を備えた武器を齎した事によって、世界は大きく変わり、そしてアジア大戦が勃発してしまった。
そんなアジア大戦で戦果を挙げて武勲を示した武将もいれば、同時に大敗して世界から爪弾きにされた者も多かった。
アジアが、いや世界が大きく変わった事で己の武術をも大きく変革した武人達は、まさしく修司によって世界と共に変えられ、そして強くなった逸材と言えよう。
と、そんな世界の変化と同時に祖国を失い、そして主君を喪ったサコンに修司は非情の刃を振り下ろす。
「サコン!」「!」
サコンがモンジュロの警告に気を取られているその隙に、修司は聖龍剣を振り上げてサコンの頭部を狙う。
シバ・カァチェンがサコンを呼びかけるものの、時既に修司が振り下ろす刃はサコンの頭部に直撃する寸前だった。
誰もがサコンの絶体絶命の危機に目を見張った、その時であった。
[悲しい決意]
小田原修司が振り下ろした聖龍剣がマン・サコンの頭部に直撃する寸前。
何処からともなく蒼い閃光が飛来しては修司が振り下ろす聖龍剣に直撃。修司の手から聖龍剣が弾かれてしまった。
「ッ!?」
赤塚大作こと大将達は蒼い閃光が飛んできた方へ一斉に顔を向けてみた。
一方のサコンは、修司の聖龍剣が弾かれたのを視認して、ここぞとばかりに修司に御得意の蹴りを腹に打ち込んで、そのまま後退。
サコンに蹴りを打ち込まれた修司は一時だけ動揺しただけで、すぐに他の皆々と同様に蒼い閃光が飛んできた方へと顔を向ける。
全員が顔を向けた先には、既に太陽も沈み切っている漆黒の夜空。
と、その夜空の向こう側から凄まじい蒼い光を放つ未確認飛行物体が高速で飛来してきたのだ。
「あ、あれは……!」
村田順一はその飛行物体を遠視して、それが何なのか直感的に解った。
そして青い光を放つ飛行物体が接近してくると、他の皆にもそれが何なのかスグに判別できた。
それは童話「幸せの青い鳥」に登場した事で今では有名になっている聖龍隊の紋章にもなっている魔鳥そのものだった。
皆々はその巨大な魔鳥を見上げて騒然とするが、聖龍隊の面々だけはその魔鳥が何なのか気付いていた。
よく目を凝らして見ると、その魔鳥は数十人の人影が一体化した群集が陣形を組んで編み出した集団だった。
その陣形を組んで魔鳥の形で空を滑空する集団を見上げて、村田順一が声を発する。
「せ……聖龍HEAD……!」
そう、魔鳥の正体は陣形を組んで「大聖光 魔鳥」を発動させて飛来してきた聖龍HEADだった。
大いなる聖なる光を放ち、硬く絆を結んでいる者同士で陣形を組んで発動させる大聖光・魔鳥で戦場に飛来してきた聖龍HEADは、遠目から修司がサコンに斬りかかる瞬間を目撃して閃光を放ち、サコンを助けたのだ。
そして戦場の皆々が騒然とする中、HEADは全員最前線に舞い降りて光を放つのをやめると、各々が空虚な顔を浮かべ続ける修司と対面する。
「HEAD……!」
負傷して戦前に立てずにいたと聞いていたHEADの帰還に目を輝かせるシバ・カァチェン。
「聖龍HEAD……! 小田原修司と同じく、俺ら北の国の兵士の運命を狂わせた元凶……!」
それに反して聖龍隊を束ねるHEADに、強い反感と憎しみを抱くマン・サコンはHEADを睨み付けてた。
最前線に降り立ったHEADに、大将が心身ともに傷付いて満身創痍の様子で歩み寄り声をかける。
「バーンズ……アッコ……」
修司と言う友の行為に傷付き、満身創痍となった大将は同じ友であるメタルバードやミラーガールに歩み寄る。
そんな満身創痍の大将は危うく疲労で倒れそうになるが、そんな彼をミラーガールが駆け寄り、支えてあげた。
「大将……!」「あ、アッコ……済まねえ」
自分が倒れない様に支えてくれるミラーガールに、大将は申し訳なさそうに返した。
そしてミラーガールは大将の態勢を安定させた後、他の聖龍HEADと共に修司と向き合う。
静かなる沈黙と重たい空気が戦場を包み込むが、HEADと修司は無言で向き合ったまま。
そんな静寂の中、修司と向き合い沈黙するHEADの先頭に立つメタルバードが第一声を挙げる。
「……やっぱりな。まさかと何度も思ったが……」
メタルバードの第一声に戦場の皆々が一驚した。
「ば、バーンズ……お前、まさかって……!」
驚愕する大将に問われ、メタルバードは重たい口調で返す。
「予感はしていた……だが、信じたくは無かった。オレ達の予想は……外れていてほしかった……」
既にメタルバードたち聖龍HEADは、黒武士が小田原修司だと気付きかけていたのだ。そしてその予想は外れてほしかったと切実な思いを呟く。
「何故ならお前は、既に…………英雄になった筈だろ……」
聖龍隊と言う組織を創設し、多くの英雄を同士に加えた小田原修司を英雄視するメタルバード。
メタルバードたちHEADが悲しげな面持ちで修司を見詰めるが、修司はHEADに何も言わず寡黙なまま。
そしてHEADが修司を見詰める中、修司は無表情でHEADと向き合う。
すると次の瞬間、修司は自らの戦意をHEADに指し示す様に、聖龍剣を構えて切っ先をHEADに突き向けた。
それを見たHEADは、修司に向かって言った。
「そうか……それがお前の意思というのか。ならば……」
次の瞬間、メタルバードたちはそれぞれ武器を手に取り、臨戦態勢に身構えた。
「お前を倒し、お前を止め……全てを終わらせる!!」
メタルバードたち聖龍HEADの力強い闘志が滲み出る中、HEADは修司と戦う決意を固める。
「バーンズ……! アッコ……! みんな……!」
大将たちHEADの旧友でもある赤塚組幹部衆が唖然とする中、HEADは修司と対峙していた。
聖龍HEADと小田原修司が対立する中、現場の誰もがその情景に息を呑む。
そしてしばしHEADと寡黙に向き合っていた修司は、聖龍剣を両手に持つと直立に地面に突き刺す。
するとその瞬間、聖龍剣から縦一直線に迫る斬撃が大地を裂け、同時に地中から爆炎が吹き出してHEADへと迫る。
「うわあッ!」
大将たち赤塚組や、戦前に出ていた猛者たちが驚き慌てふためく中、HEADは自分達に迫りくる大地を裂く巨大な斬撃攻撃に対して冷静に対処する。
大地を裂く巨大な斬撃を一瞬で回避するHEADは、その一瞬で姿を消した。
「……!」
大地からの凄まじい攻撃を一瞬で姿を消して回避したHEAD達を目の当たりにして、大将は愕然とする。
一方で攻撃を回避したHEADは、大地が裂けると同時に空中に飛び上がった岩の欠片へ次々に飛び移り、華麗に移動していく。
そのままHEADは岩の欠片を飛び移り移動しながら修司に駆け寄っていく。
そして修司の目前まで接近したHEADは、一斉に修司に飛び掛かった。
「修司ーーーーーー……!!」
メタルバードが大声を挙げてHEADと共に修司相手に飛び掛かる。
そんな聖龍HEADを間近で視認しながらも、修司は変わらず空虚な表情を浮かべるばかり。
と、そんな聖龍HEADと小田原修司の対決が、今まさに始まろうとしているのを、暗黒獣が創生される巨大繭の頂上から見下ろしていた修司のクローン新世代型二次元人達の脳裏に、共有感知から伝達されてくる修司の人知れない思想が流れ込んできた。
「始まりは終わり……終わりは始まり。ならば、聖龍隊を始めた俺が………………聖龍隊を終わらせる」
聖龍隊と言う一つの物語を、伝説を始めた一人の少年。
そして今、その聖龍隊と言う物語という伝説を、その伝説を始めた少年だった男が終わらせようとするのであった。