聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章 作:セイントドラゴン・レジェンド
[吠える巨獣]
参戦した聖龍HEADと激しい攻防を展開する小田原修司。
かつて同じ理想を抱いた者同士の悲しい大戦は、更に苛烈を極め、戦火は拡大の一途であった。
修司が自身のクローンである新世代型二次元人達の生命エネルギーを利用して生み出そうとしている世界を滅ぼさんとする暗黒獣。その生誕を阻止しようと全勢力は修司に抗った。
そして修司の幼馴染であり、同じ女を愛した者でもある赤塚大作こと大将と彼が率いる赤塚組との戦闘を挟んで、HEADは再び暗黒獣の繭から出現した修司と激戦を繰り広げる。
だが、その激戦の最中、繭から出現した小田原修司が彼の闇の能力から作り出された闇分身である事が発覚。
聖龍HEADは本物の修司が暗黒獣の繭から出ておらず、繭の中に潜んでいる事実に気づく。
同時に、修司は闇分身の自分とHEADを戦わせている間に、暗黒獣生誕までの時間を稼いでいたのだ。
そして、遂に恐れていた事が。
繭と同化していた修司は、そのまま暗黒獣にすら自らを同化させて、繭から暗黒獣が現出。
太くて禍々しい二本の足、大きくてギザギザの歯が並んだ巨大な口が開き、全身の表面には鱗の様な硬い突起物が埋め尽くされた、なんとも巨大で禍々しい怪物が山よりも巨大なその全貌を露にした。
「終わったよ……この世界がな……!」
暗黒獣と一体化した修司は、暗黒獣の巨大な口からぼそりと地上で見上げる面々そして檻の中に幽閉されたままの新世代型達に呟き掛ける。
『………………………………………………………………』
聖龍隊も国連軍も、地上で途方もなく巨大な暗黒獣を見上げる面々は一同にその巨体に愕然となり、口を開けたまま硬直する。
「これが、暗黒獣……」
「俺たちから生み出された……世界を滅ぼす存在……!」
暗黒獣の頭上そこに依然として安置されている檻の中に幽閉されている新世代型の時縞ハルトに真鍋義久は、その圧倒的な巨大さに顔を蒼褪める。
するとその時、暗黒獣の後ろ首元から無数の触手が生えてきては、新世代型達が幽閉されている檻へと向かってきた。
その禍々しくも、山より巨大な暗黒獣は複数の触手を生やし、己の頭上に在る新世代型二次元人達を幽閉している檻にその触手を繋げた。
触手は檻の中の新世代型達の生体エネルギーを吸収し、暗黒獣を動かす闇のエネルギーへと変換していく。
天地轟く雄叫びを上げる暗黒獣を見上げ、いつ如何なる攻撃にも対応できるよう見極める地上の猛者たち。
そして頭上の檻、その中の新世代型達の生体エネルギーを吸収する暗黒獣は地上を見下ろし、その禍々しい瞳で睨み付ける。
「おい、おっぱじめる気だぞ!」
地上を見下ろし、戦意をむき出しにする目を見て大将が叫ぶ。
大将たち地上の猛者たちの頭上で浮かび続ける大聖光 魔鳥を維持し続ける聖龍HEADとスター・コマンドーも、魔鳥よりも遥かに巨大な暗黒獣を前にしても動じる事無く身構える。
「いいか! まずは距離をとって、アイツの出方を見る! その出方に合わせて攻撃を見定め、かわし……できるだけ大きめの攻撃を当てる!」
メタルバードの指示で、陣形を組んでいる面々は大聖光 魔鳥で暗黒獣からの攻撃を避け、そして大打撃を与えられる大きめの攻撃を暗黒獣に当てる機会を探る。
そんなHEADとスター・コマンドーを前に、修司と融合している暗黒獣は再び咆哮を上げて攻めの態勢に入った。
「行くぞ!!」
これより、暗黒獣とHEADそしてスター・コマンドーの、黒き巨大な獣と蒼き幸せの鳥たちの死闘が始まる。
暗黒獣は耳元まで裂けた巨大な口から禍々しい黒い砲弾を発射し、地上の面々に攻撃。
「退避! 退避!」
指揮官であるウェルズが皆に呼びかける中、その砲撃はHEADが陣形している魔鳥が片翼で弾いて地上の仲間達を死守する。
だが、それによって攻撃を死守したHEADの体そのものに激しい苦痛と黒い痣が表れてしまう。
「っ……なに? この禍々しい攻撃は……!?」
「修司くんの闇が異常なほど上昇して、苦痛だけでなく黒い痣としても体に表れてしまうのよ……!」
自分達の身体に表れる苦痛と黒い痣を見て、禍々しい攻撃に動揺するセーラージュピターにセーラーマーキュリーが冷静に分析して伝える。
しかし暗黒獣は躊躇する事なく、第二の砲撃を放とうと口を天へと向ける。
「うわあっ!」「また来るぞ!」
地上に滞在している白井渚に浜崎雅弘が上を見上げて愕然と声を上げる。
地上の仲間達や国連軍の兵士達を守ろうと、魔鳥の陣形で飛行する聖龍HEADが砲撃を撃ち込もうとする暗黒獣に、蒼い聖なる光での砲撃を撃ち込んで暗黒獣の砲撃を阻止する。
「無駄だ……! 破滅への運命は、誰にも止められない……!!」
砲撃を阻害された暗黒獣、いや暗黒獣と融合している修司が阻害してきたHEADに次げる。
修司の意志が直結している暗黒獣に見定められたHEADを指揮するメタルバードは、魔鳥の陣形で飛行するHEADとスター・コマンドーの面々に呼びかける。
「暗黒獣は、いくら修司と一体化しているとはいえ目覚めたばかり……本調子じゃない筈だ! 今、この時が最初で最後のチャンスだと思え!!」
『はい!』「分かってるわ、バーンズ……!」
メタルバードからの指示に、スター・コマンドーの一同は力強く返答し、ミラーガールも力強い眼差しで返事した。
暗黒獣に攻撃を開始しようとする聖龍HEADとスター・コマンドーの面々を見上げる地上の一員である大将が、メタルバードのテレパシーを介して馴染みであるHEADに言い伝える。
「油断するなよ、バーンズ……!」
「へっ、分かってるさ、大将」
大将からの激励にメタルバードは余裕を感じさせる笑みを浮かべてた。
そして聖なる光に身を包み込んで、魔鳥の陣形で飛行する聖龍HEADとスター・コマンドーの二組は、新世代型二次元人達の生体エネルギーを吸収して完全覚醒した暗黒獣と融合している小田原修司との激戦に乗り出した。
[二体の蒼き鳥と黒き巨獣]
荒廃する地上、その地上では無数の勇敢なる猛者が自分達の未来を掴もうと戦いに乗り出していた。
そしてそんな地上の群集を見渡す、巨大で禍々しい黒き巨獣・暗黒獣。
そんな暗黒獣を、暗黒獣と融合した小田原修司を止めようと上空を飛び交い浮遊する二組の、いや二体の蒼き鳥、魔鳥。
魔鳥の陣形を組んで空を飛び交う聖龍HEADとスター・コマンドーの二組は、巨大な口を大きく開く暗黒獣を前に、蒼く輝く羽を矢の様に射出して攻撃していく。
全身に魔鳥の聖なる光で形成された羽が雨の様に降り注ぎ、そして突き刺さる状況に暗黒獣は微動だにせず、その巨大な全貌で二体の魔鳥に襲い掛かる。
「来るぞ!」
暗黒獣が振り上げる、巨大な剛腕を視認してメタルバードが飛び交う仲間達に伝える。
だが、暗黒獣が振り上げた剛腕は、不運にもスター・コマンドーが陣形を組む魔鳥へと拳が直撃して、スター・コマンドーの一団を容易く吹き飛ばしてしまう。
「うわっ!」「ジュン! スター・コマンドー!」
苦痛で声を上げる村田順一にメタルバードが呼びかけるが、彼らはそのまま後方の岩山まで吹き飛ばされて直撃してしまう。
岩山の山肌が陥没するほどの衝撃を受けたスター・コマンドーであったが、順一は誰よりも早く立ち上がり、仲間達に呼びかける。
「み、みんな……! ここで倒れたら、誰が修司さんを……僕らを育んでくれた師を止めるんだ!? さあ……!」
順一の呼びかけに、スター・コマンドーの面々は痛みに打ちひしがれながらも起き上がり、再び順一を筆頭にした大聖光・魔鳥を発動させて上空へと飛び上がる。
「お前達! さっき大将にも言われただろう……油断するなって!」
メタルバードがスター・コマンドーに注意を呼び掛けるが、これに対して大門大が反論。
「逆に聞きてぇもんだぜ、アレを前に油断できる時をよ」
「もっともな意見だな……」
大の反論に同じスター・コマンドーのユウも賛同する。
そんな会話が飛び交う二体の魔鳥を前に、暗黒獣は果敢に魔鳥へと咆哮と言う名の攻撃を続ける。
魔鳥二体は、羽を無限に射出して暗黒獣に反撃する。
しかし暗黒獣の体に突き刺さった羽は、まるで暗黒獣の体に飲み込まれるかのように闇へと消失してしまう一方。
「ダメだ……! 俺たちの攻撃が、まるで意味を成さない……!!」
「諦めちゃダメよ! 少しでもダメージが蓄積していれば、きっと……!」
自分達の攻撃が全く効力を示さない現状に愕然とするキング・エンディミオンに、セーラームーンが諦めないよう呼び掛けていく。
だが全く戦況が有利に発展しない状況に、猛威を振るう暗黒獣その頭上の檻の中で新世代型二次元達と共に幽閉されてしまってる一人の男は激しく動揺していた。
「ギャーーーーッ! どうしてくれんだよっ!! 遂にお前らの生体エネルギーで暗黒獣が生まれてきちまったじゃねえかよっ!!」
涙目でこの状況に本気で怖がる道化のバギーに責められる新世代型二次元人達。
だが、新世代型は新世代型で、この戦況に本気で落ち込んでいた。
自分達の存在が、自分達の生体エネルギーがこの様な巨大で禍々しい巨獣を生み出した経緯に深く暗鬱した。
だが依然と暗黒獣に傷を負わせられない現状の中、大聖光・魔鳥で飛びながら攻撃を続けるHEADとスター・コマンドーは焦り出してた。
「アッコ、ジュン……今のオレ達じゃ、大聖光を持続させる時間は、そう長くはねェ……」
「分かってるわ! 早く決めましょう、みんな!」
「これが修司さんを……暗黒獣を止める最大のチャンスだ!」
メタルバードからの提唱に、ミラーガールも順一も小田原修司が同化している暗黒獣を止める機会を探ってた。
そして一瞬の隙をついて、二体の魔鳥は全身全霊のエネルギーを溜めて、そのエネルギーを放出して巨大な暗黒獣の腹部に突進。
二体の大聖光・魔鳥は、暗黒獣の腹部を貫き、暗黒獣の腹部に大きな風穴を空けてみせた。
地上で応戦している聖龍隊士にアジアの武将、そして悪党に国連軍の面々はその光景に愕然とする中、大聖光・魔鳥で飛び続けるHEADとスター・コマンドーは空中で転回して再び暗黒獣に突進。今度は新世代型達が幽閉されている檻の手前その箇所に突撃して暗黒獣の頭部にも風穴を二つ空けた。
合計四つの風穴を空けられて、暗黒獣は一時的に動きを止めた。
動きを止める暗黒獣を、顔を上げて目視する地上の面々の前線に、大聖光・魔鳥のエネルギーを消費した為に地上に舞い降りて同時に大聖光を解除して聖なる光を消して着地するHEADとスター・コマンドーの面々が降り立った。
「はぁ、はぁ………………こ、これでどうだ?」
「いくらなんでも、風穴を4つも空けられたんじゃ簡単には……」
息を切らしながら暗黒獣を睨み付けるメタルバードに大門大たち。
一方でピタリと動きを止めて静止する暗黒獣に戦場の一同全員が注目していた、その時。
なんと暗黒獣に空けられた大きな四つの風穴は瞬く間に塞がり、完全に穴が消失しては傷が消えてしまったのだ。
「なッ!?」
自分達の苦労も水の泡、メタルバードは愕然としてしまう。
暗黒獣と一体化している修司は、頭上の檻に幽閉している自分のクローン新世代型達から吸収している生体エネルギーを糧として、体につけられた大きな傷でさえ瞬く間に消滅させてしまってた。
「お、俺たちの生体エネルギーで回復しやがったのか……!?」
風穴が消失した光景を目の当たりにして、新世代型の真鍋義久ら一同は蒼然とする。
すると此処で、その風穴を消してみせた暗黒獣と同化している修司が、地上のHEADやスター・コマンドー、そして名立たる猛者たちに告げた。
「此処で俺を止めようが無意味、この醜くなった世界で、もがいても勝ち目はない」
『………………………………』
「この世界に希望など……何処にもないと、もう知るんだ……!」
全てを無に誘う暗黒獣の体内で、修司は自分を止める行為は全て無意味であり、既にこの世に希望など何処にもないと宣告する。
すると修司は、暗黒獣に空けた風穴が瞬く間に塞がる情景を目撃して愕然とする地上の猛者達へ更に告げた。
「どんな力も、思いも……今の俺には、暗黒獣には無意味……! 正義も愛も、そして自由も信念も……虚無の前では意味を失くす」
禍々しく、そして巨大な暗黒獣の体で、声を響かせて冷淡に告げる修司は、地上に舞い降りて大聖光を解除したミラーガールの許に急ぎ駆け寄った台湾国将軍のシバ・カァチェンを見据えて彼に言う。
「カァチェン……何故、お前は俺に抗う……? 何故、叶わぬ夢や理想を追い求め続けるのだ」
「え……?」
突然の修司からの問い掛けにカァチェンは戸惑ってしまうが、修司はそんなカァチェンに質問攻めする。
「お前を見ていると、昔の俺を思い出す……叶わぬ夢や理想を無駄に追い掛け、求め続け……自分の多くを犠牲にしても、所詮は心が欠けた異端なる存在……そんな異端な、心を持つロボットにも劣る俺たちが夢を追い求めるなんて、それこそ無粋だ」
修司からの問い掛けに、カァチェンは下を向いて俯き、何も言い返せずにいた。
「カァチェン、俺もお前達も所詮は無力な存在だ。お前達も……いや、誰でもいずれ……俺の様に道を踏み外す」
この戦場にいる全て、いや世界の誰もが無力な存在であり、誰もが理想を追い求めるあまり、いつしか自分の様に道を踏み外すのだと説く修司。
一時ばかし、下を俯いていたカァチェンは、隣にいるミラーガールからの力強い眼差しを感じ取っては、強く修司に返答した。
「私は、確かに最初は貴方の様になりたいと……強く憧れていました。ですが……今の私には仲間がいます! 道を踏み外しても、手を引いて正しい道に引き戻してくれる仲間がいます!!」
暗黒獣と一体化している修司に強く反論するカァチェンに同調され、ミラーガールもかつての想い人である修司に向かって強く言い放った。
「修司……! 確かに人は、夢や理想を追い求めていく内に道を踏み外してしまう……とても脆い生き物よ! だけど……人々が夢や理想を追い求め、それを実現しようとする強い意志があるからこそ……人も、世界も、輝けるのよ!」
これに対して修司は、ミラーガールに問い詰めた。
「そうして人間は……古より多くの過ちを、悲劇を繰り返してきた。夢や理想を追い求めた結果が、今の世界……腐敗し切った混沌の世界にして……俺と言う穢れた存在を許してしまう……そう、俺と言う穢れた生命のクローンである新世代型を生み出し続けてしまう罪科を重ねていくのが、不条理な現実だ……!」
もはや今の修司には、自分達の言葉はもちろん思いすら届かないのだと解ったミラーガールは、ミラー・シールドに変化しているセイント・コンパクトに手を当てて力強く言い放った。
「ミラージュ・トリック……鏡分身!」
するとミラーガールの周囲には、無数の鏡の輝きから生み出された分身が現れた。
そして分身したミラーガールは、全身から蒼い聖なる光を発したと思いきや、突然前線から後方へと分身達が走り出し、仲間である聖龍隊士や共闘してくれているスコーピオン同盟に国連軍の兵士達の身体に素早く触れていく。
するとミラーガールに触れられた者たちは、彼女が発する聖なる蒼い光が移り、自身の全身も同様に蒼く光り出した事態に驚く者もいた。
「アッコの奴……セイント・コンパクトの聖なる力を、他人に渡せるのか……?」
本来、聖龍隊の一部の隊士しか使えない蒼き聖なる光は、元来二次元人の始祖であるミラーガールが根源である。その聖なる光を他者に渡せられるミラーガールの行為に修司は驚いた。
その蒼き光は、次々と戦場で抗っている隊士や兵士たちに分け与えられ、荒野の戦場は瞬く間に蒼い光で埋め尽くされていった。
「こ、これが……ミラーガールの、加賀美あつこの……聖龍隊の礎となった聖なる光……!」
地上の猛者たちの後方、後方支援に回っているSRM(聖龍ロボットメンバーズ)を総指揮しているマリネは、目の前の戦場を覆い尽くしていく蒼い光を目の当たりにして戦艦の艦内で目を丸くしてしまってた。
「こ、これは……」
国連軍のドーベルマンたち兵士達も、ミラーガールから受け取った蒼い光を身に纏って騒然とする。
「これが……ミラーガールの、聖なる光……!」
「す、凄いっす!」
既に周りの大勢がミラーガールから聖なる光を受け取って輝いている現状を見渡して驚愕するイン・ナオコと山中鹿之助。
「………………」
周囲の誰もがミラーガールから蒼い光を受け取っているのを目の当たりにして戸惑うマン・サコン。
すると其処にミラーガールの分身体が駆け付けてきて、サコンやナオコたち次代の武人達に迫った。
「み、ミラーガール……?」
「みんな! 今は何も言わず、私の手に触れて……!」
戸惑うナオコにミラーガールは間髪入れず、切羽詰まった様子で訴えかける。
その様子に促されたナオコたちは手を前に差し出すと、ミラーガールは即座に彼らの手に一瞬とはいえ触れて、自身の蒼い光を手渡した。
「な、なんと不思議な感覚なんだ……!」
「これが聖なる力って奴か……確かに何とも言えない感覚だぜ……」
ナオコやゴ・マータンは、自分達の体に伝わる聖なる力に淡い気持ちよさを覚えてしまう。
そしてミラーガールの分身体は、カァチェンにも聖なる力を受け取らせた直後、最後にサコンにも聖なる光を手渡そうと手を伸ばす。
「サコン! お願い、一緒に……」
「……! い、嫌だ! ミィチェン様を……北の国を滅ぼした奴の力なんて、死んでもゴメンだぜ!!」
「サコン……! お願い……」
ミラーガールの、二次元人の力を借りるのを拒むサコンにミラーガールは悲嘆する。
そんな拒絶するサコンに、カァチェンが言い寄った。
「サコン……!」「!」
真剣な眼差しでサコンを見詰めるカァチェンは、サコンに説き掛けた。
「サコン、貴方が自分の祖国である北の国を滅ぼし……それ以上に主君であるヤン・ミィチェンを死に追いやった二次元人を未だ恨んでいるのは仕方のない事……ですが、いま力を合わせなければ、我々の勝率が……修司殿に勝てる要因が無くなってしまうのですよ」
「! ……」
「主君を思い、二次元人の力を借りたくない貴方の思想は理解できます……でも、前にも申した筈。主君の思いを、その愛国心を未来に伝える為にも……今は堪えて、ミラーガール達と共に困難に立ち向かわなければ……!」
「………………」
カァチェンからの説得を受けて、サコンはしばし考え込んだ後に声を荒げて言い放った。
「……チッ、仕方ねえか。ここはあのド畜生の小田原修司を負かす為に、胸糞悪いが二次元人の聖なる力って奴を借りてやるよ!」
と、サコンはやや不貞腐れた様子でミラーガールの手を弾く様に強く触れて、彼女から聖なる力を受け取った。
こうして聖龍隊、国連軍、スコーピオン同盟、そして三次元人の武将達全員に聖なる力を分け与えたミラーガールの分身体は本体に戻っていった。
そして分身を全て本体に戻したミラーガールが、力強く心の内で念じた瞬間。眩いばかりの強い光が、ミラーガールだけでなく戦場の猛者たち一同から放たれた。
「こいつは……!」
ミラーガールから受け取った聖なる光が更に強まるのを前にして、ガイア・スコーピオンたちスコーピオン同盟も激しく驚く。
すると次の瞬間。それまで以上に光り輝いていた蒼き光は、形を成して一瞬の内に蒼き衣へと変化。地上の猛者たちは、一瞬の内に蒼き衣を纏った。
「こ、この衣は……!!」
蒼き光が突如として羽織の様な衣へと変化したのを目の当たりにして、大将は一驚してしまう。
そして蒼き衣を纏った猛者たちに、その聖なる光を分け与えたミラーガールは力強い面魂で再び念じると、地上の蒼き衣を纏っている猛者達を統一するかの如く、彼女を先頭に大群衆の猛者達が巨大な塊へと一つに変化していく。
「?! ……」
その光景を目の当たりにした暗黒獣、いや暗黒獣と一体化している修司に、暗黒獣の頭上の檻に幽閉されている二次元人達は何が始まるのかと視線を釘刺しにしていた。
そしてミラーガールを先頭に、蒼き衣を纏った猛者たちは一つの塊となり、その塊が巨大な二足歩行の二本腕の獣へと変形。
二次元・三次元連合軍は、ミラーガールの蒼き聖なる光を纏い、巨大な蒼き獣へと変化したのだ。
「これが、みんなの全力を合わせた……大聖獣よ!!」
ミラーガールは地上の猛者たち、仲間達の力を結集して、己の蒼き光を纏わせて暗黒獣と同等の大きさを誇る大聖獣を形成したのだ。
「大聖獣……強大な戦力を持つ、二次元人と三次元人の生体エネルギーを聖なる力と同調させて増幅……俺が新世代型二次元人の生体エネルギーで暗黒獣を生成している様に、地上の多くの戦力の命を一纏めにしてその生体エネルギーで創り上げた対抗策……大聖獣か」
暗黒獣と同等の大きさを誇る大聖獣を前にして、暗黒獣と同化している修司は冷静さを失わない。
「す、スゲェ……!」
「これが全ての二次元人……いや、変身系魔法少女などの始祖に当たるミラーガールが持つ、聖なる力だからこそ成せる大技か……!」
暗黒獣の頭上の檻の中に幽閉されている新世代型の真鍋義久や猿田学たちは、二次元人の始祖の一人であるミラーガールの聖なる力が成した大技を前にして唖然としてしまう。
そして皆を一致団結させて、巨大な大聖獣として暗黒獣と同化している修司と対峙するミラーガールは、力強い形相で目前の暗黒獣を睨み付けて叫んだ。
「さあ……反撃開始よ!」
小田原修司のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーで生み出された暗黒獣。
自分と自分が信じた仲間達の力と意志を結集し、皆の生体エネルギーでミラーガールが生み出した大聖獣。
歪んでしまったかつての鬼神と、そんな鬼神の理想を今なお信じ続ける聖女。
二つの意志が、今まさしく巨大な火花を散らして激突しようとしていた。
[激突! 大聖獣VS暗黒獣]
己のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーで暗黒獣を生み出し、その暗黒獣と同化して全てを無に誘おうとする小田原修司。
その修司を止めるべく、自分と自分が信じている皆々の力を結集して暗黒獣と同等の大聖獣を生み出したミラーガール。
双方はしばしの間、面と向き合うばかりだったが。
「しぶとい連中だ……暗黒獣の力は温存したかったが……やむを得まい……少し攻勢に出るか……」
そう怪しく呟く修司の声。
すると暗黒獣は動き出し、右側から巨大な触腕を形成してその先端で大聖獣に殴り掛かってきた。
「チッ……キレやがったか……来るぞ!」
大聖獣を形成する命の一つであるメタルバードが、皆に呼びかけるものの、暗黒獣は大聖獣の側面を殴り付ける。
その反動で激しく上半身を揺さぶり、揺らめく様に身体をしならせる大聖獣。
すると、暗黒獣が大聖獣を殴り付けたと同時に、大聖獣を形成している猛者たちが反応した。
「ッ! い、イテェ……顔が殴られたみたいに痛いぜ……!」
スコーピオン同盟の一員で、ホワイト・ヘアーズのリーダー格に出世している蛭川光彦は自分の顔の痛感に戸惑うばかり。
皆の動揺を気付いて、同じ痛みを感じているミラーガールは大聖獣を形成している皆々に言い渡した。
「みんな! 大聖獣に与えられたダメージ……つまり痛みは、この大聖獣を形成している全員に共有されてしまうの! だから此処からは、修司と私達との我慢比べよ!」
これを聞いた一部の猛者たちが騒ぎ出した。
「ゲゲッ!? う、ウソだろ? 二次元人と一緒に戦わなくちゃならない上に、こいつ等の痛みまでも我慢しなくちゃいけない訳?」
そんな文句を言うマン・サコンたち一部の猛者に反して、国連軍元帥赤犬は毅然とした態度で物申した。
「フンッ、こげな痛み……今までの悪党共との戦いで受けた痛みに比べりゃあ、大した事なかァね!!」
激しい感情で物申す赤犬の過激な発言に周りは軽く引く。
そんな状況の中で、ミラーガールは皆を先導して修司と闘い始めた。
「行くわよ……修司!!」
「来い……! かつて俺が最も愛した女よ……!!」
修司の方も、かつて婚約まで愛し合っていたミラーガールとの決闘に踏み込んだ。
巨大な暗黒獣に対抗する、同じく巨大な大聖獣。
二体の拳と拳を交えた殴り合いは苛烈を極めていく。
壮絶な暗黒獣からの打撃に、防御の構えで受け身の態勢でいた大聖獣は反撃を始めた。
「全員! 暗黒獣……いや、修司に属性攻撃を仕掛けろ! アッコの力で能力が増強されてる筈だ!」
メタルバードの指示で、大聖獣として戦う聖龍隊士は暗黒獣に攻撃を開始。
「みんな! 私たちに続いて……!」
セーラーマーキュリーと龍咲海を筆頭に、水属性に攻撃ができる聖龍隊士たちは暗黒獣に強力な水の砲撃を放った。
水属性の能力で放たれた攻撃は、強力な水圧を帯びて暗黒獣を押し返す。
「ッ……!」
巨大な全身を水浸しにされた暗黒獣の修司は、内心苛立ちながらも戦闘態勢を維持する。
そして水を浴びながらも反撃の拳を大聖獣に向けて殴り掛かろうとすると、大聖獣が先手を打った。
「次は氷系で行くわよ!」「みんな行くぞ!」
龍咲海の掛け声に反応し、日番谷冬獅郎たち氷系の者たちが合わせていく。
すると水浸しになっていた暗黒獣の巨腕は瞬く間に凍り付き、その壮大な動きを止めた。
暗黒獣の剛腕が止まったのを見逃さず、大聖獣として戦う一団の一員である国連軍元帥赤犬が、少し離れた所で遠距離攻撃に徹していた為に大聖獣に組み込まれなかった国連軍兵士に命令した。
「地上の国連軍兵士! 凍り付いた暗黒獣の腕目掛けて、砲撃せィ!!」
怒号にも近い赤犬の命令に、地上の兵士達は続け様に凍て付いた暗黒獣の剛腕目掛けて武器で攻撃した。
轟音と共に砲撃が暗黒獣の凍て付いた剛腕に直撃。すると剛腕は砲撃を受けてひび割れ、次の瞬間には粉々に砕け散った。
だが『あ……あああああぁぁぁあああっ!!』突如として暗黒獣の頭上の檻に幽閉されている新世代型二次元人達が絶叫した。
「!? ど、どうした?」
メタルバードが新世代型達の絶叫に驚いていると、真鍋義久が苦悶の表情で呟いた。
「う、腕が……腕が、痛い……!」
よく観ると、檻の中の新世代型達は全員、額から脂汗を流し、片腕の激痛に悶え苦しんでいた。
この現状に、暗黒獣と同化している修司は目前の大聖獣に変化している面々に告げた。
「お前らが俺の攻撃を受けて痛みを共有している様に……俺が受けた痛みも、新世代型二次元人達に共有され、感じているだけだ」
「な、なんだと!?」
「おい、修司! それは卑怯じゃねェか!」
修司の説明を受けて、メタルバードは驚愕し、大将は修司を非難する。
が「お前らが一致団結して俺に戦う以前から……こいつら新世代型共は俺の穢れた遺伝子で数々の暴挙や大罪を犯してきた。そんな連中が俺の苦しみや痛みを理解した上で、存在を無にされる事こそ至高の贖罪ではないか?」と修司は冷淡に語る。
「くっ……どうするか……!」
メタルバードは暗黒獣に攻撃すれば、その痛感が檻の中の新世代型二次元人達にも伝わってしまう状況に苦悩する。
だがこの戦況に赤犬は怒号をぶちまける。
「何を躊躇っとるんじゃバーンズっ! 幽閉されている新世代型の事など、今は考えるな……! 今はただ、目の前の巨大な暗黒獣……修司を倒すこと以外余計な事は考えるな……!!」
囚われの身である新世代型の有事は全て後回しにして、小田原修司の暴走を止める事だけを考える様に告げる赤犬の発言に、メタルバードも大将も表情を歪ませる。
すると修司は此処で、先ほど自分の凍り付いた腕を重火器で吹き飛ばした兵士達に目を向けた。
「迂闊だった……まさか、まだ国連軍の兵士が残っていたとは……」
修司は大聖獣に組み込まれていない兵士がまだ現存している事に気付き、地上の兵士達にのしりと歩み寄った。
「うわあっ!」
巨大な全貌でのそりと歩み寄る暗黒獣に怯える兵士達。
「国連軍! 攻撃を見極め、各自的確に攻撃から回避せィ!!」
大聖獣に組まれている赤犬元帥からの指示が伝わるが、暗黒獣は先ほど粉々に吹き飛ばされた片腕を再生させ、その剛腕で大地を殴り付けた。
すると殴り付けた大地から轟音と共に凄まじい衝撃波が発生し、衝撃波は地上の兵士達に襲い掛かる。
『わあぁッ!』
暗黒獣の衝撃波は、兵士達を襲い、兵士達は容易く吹き飛ばされてしまった。
「今度は……此方の番だ」
そう呟く修司は、暗黒獣の体表面から無数の突起物を出現させた。その突起物は、文房具や片太刀バサミの形状だった。
「こ、これって……!」「ぼくと、流子の……!?」
片太刀バサミや文房具の形状をしている突起物を見て、檻の中の纏流子と一ノ瀬はじめは愕然とした。文房具に武器にするのは一ノ瀬はじめの能力であり、片太刀バサミは以前まで纏流子が使っていた武器であった為だ。
体の表面から、鋭利な文房具や片太刀バサミを無数に出現させた暗黒獣は、そのまま鋭利な武器を射出。地上の国連軍兵士に向けて放った。
「やめて!」
ミラーガールが必死に呼びかけるのも空しく、文房具や片太刀バサミの形状をしている無数の武器は地上に降り注ぎ、地上で応戦していた兵士たち全員の命を無残に奪った。
『!!』
遂に修司が一度に大量の命を奪った現状に、多くの聖龍隊士が愕然とした。
「修司……! あなた……」
ミラーガールは遂に大量虐殺をした修司を悲観し、愕然とした表情で見詰めると、暗黒獣の修司はミラーガール達に言い返す。
「そう、争いの起源は全て命を奪う、等しく虚しいだけの行い……そんな行いを、悲劇を終わらす為にも……俺と言う破滅の根源を、そして二次元人の起源であるアッコ……俺たちは完全に消えなきゃならないんだ……!」
進化と言う争いの発端である破滅を誘う小田原修司の遺伝子と、二次元人の始祖の一人であるミラーガールこと加賀美あつこは消滅しなければならないと、静かに語る修司。
そんな修司の現在に至る元凶を招いた二つの要因を知らしめられた大聖獣の面々に、暗黒獣の修司は咆哮を上げて襲撃する。
「うおお!? やべェ!!」「一旦、退きましょう!!」
殺伐とした雰囲気で全身から凶器を突出させた暗黒獣の突進に驚く大将に反し、冷静に一時的に退いて対策を講じようと模索する村田順一。
そして大聖獣は、暗黒獣の突撃から退く為に颯爽と四つ足で駆け出した。
「真正面からぶつかるとヤバイ!」
疾走する暗黒獣から退避する大聖獣の中で、ワイルドタイガーは必至な形相で叫んだ。
すると暗黒獣は顔面の部分から無数の鋭利な先端の触手を出現させ、その触手を前方の逃げ惑う大聖獣目掛けて射出した。
大聖獣は鋭利な職種を必死に避けながら、追走する暗黒獣から逃げ続ける。
「くそ! しつこい!!」
「いつまで追ってきやがるんだ!!」
執拗なまでの暗黒獣の追走に、キング・エンディミオンも大将も動揺を隠せない。
と、ここで退避する大聖獣が反転し、走るのをやめて暗黒獣に面と向かって停止した。
「いつまでも逃げ惑っておっちゃ、反撃の機会すら見えんわ……! 今こそ修司に……暗黒獣に総攻撃じゃ!」
そう唱える赤犬の発言に、セーラームーンが悲しげに問う。
「ま、待ってよ赤犬! 今ここで修司くんに……暗黒獣に攻撃したら、その痛みが全て新世代型の人たちにも伝わっちゃうのよ!」
「それがどないした……! 修司を倒さん限りは、この大戦は終わらんとよ……わしと同じ炎系の能力者どもよ! わしに続けッ!」
セーラームーンの制止も聞かず、赤犬は大聖獣の中から流星火山を放射し、それに続いて修司を一刻も早く止めようとHEAD以外の炎系能力者の隊士達が暗黒獣に攻撃した。
灼熱の業火の如き大火が暗黒獣を襲い、暗黒獣は全身を溶岩の弾丸が直撃しただけでなく火炎で表面が焦げてしまう。
しかし案の定、その熱さと激痛は修司と共有感知で痛覚が繋がっている新世代型達にも伝わってしまい、檻の中で新世代型達はのた打ち回るほど苦しんでいた。
「うああああああああああっ!!」
悲痛な叫び声が轟き、新世代型達は激痛と熱さで転げ回る。
その一方で、同じ痛みを感じている筈の修司は何も言わずに、瞬く間に驚異的な再生能力で受けた火傷などを完治させてしまった。
しかし檻の中の新世代型達は、未だに激しい痛みと高熱での苦しみで悶えてた。
そんな新世代型達の悲鳴を聞いた修司は、怒りがこみ上げて暗黒獣から無数の細い触手を生やして、その触手で新世代型達を幽閉している檻を激しく叩き出す。
「きゃあああっ!」
檻を激しく叩かれて、恐怖で頭を押さえて怯えてしまう女子たち。
そんな悲鳴を上げる女子達を尻目に、修司は激しい憎悪を滾らせながら語り始めた。
「こいつらが……こいつらが生まれなければ、俺だって此処までの戦を仕掛ける必要は無かった。俺の呪われた遺伝子を受け継ぎ、その遺伝子と歪んた思想から多々の残忍な行為を繰り返してきた新世代型二次元人を、俺は存在そのものを受け入れられない……許せないんだ……!」
悲痛な修司の訴えを聞いて心が痛くなるミラーガール達。すると此処でミラーガールが修司に問い掛ける。
「修司……さっきから言っているけど、貴方は自分を見下し過ぎるの……! 貴方には貴方の素晴らしい所がたくさんある。そんな貴方の遺伝子を受け継いだ新世代型二次元人だって、きっと未来と言う歴史を紡いでくれるわ……」
だが、そんなミラーガールの問い掛けに対して、修司は激怒した。
「ふざけるな!!」
暗黒獣の姿で、その巨大な口から飛んで来る修司の怒号に驚くミラーガール達。
すると修司は、暗黒獣の姿のままで再び語り出した。
「ふざけるな……! こんな、こんな……吐き気が、反吐が出るほどの下劣で醜悪な争いやいざこさをしてきた新世代型達に素晴らしい未来が創造できるとでも思っているのか?」
「で、でも……」
ミラーガールが反論しようとするが、修司はそれすらも許さなかった。
「自分の思い通りにできないからと暴行依頼をし、殺人まで犯そうとしていた森谷ヒヨリ……自分の娘すら信じられず、拒絶し続けた琴浦久美子……私利私欲に溺れていた三枝一族……世界のパワーバランスを保持する為とはいえ疑似戦争を繰り返してきたLBXを使う争いの申し子たち……全てを手中に収めようとした鬼龍院羅暁……他にも、他にも大勢の薄汚い新世代型達が存在していていた。そして今なお、その薄汚い新世代型共が蔓延っている……!」
修司は怒り狂ったように、無数の細い触手で新世代型達を幽閉している檻を激しく叩いて、内部の二次元人達を恐怖に陥れながら言い放った。
「こんな出来損ないの、醜いだけのバケモノを俺は望んではいない! こんな、こんな……こんな二次元人が存在する世界、望んでいなかった!!」
暗黒獣と一体化している修司は、暗黒獣の巨体から伸ばした巨大な触腕で新世代型二次元人達を捕らえている檻を、何度も何度も強く叩いて中の新世代型達を怯えさせた。
愛を感じられない欠けた心を持つ自分と同様に、新世代型二次元人達を激しく憎悪し嫌う小田原修司。
自分をバケモノと見下し、そんな自分の遺伝子から生み出された新世代型二次元人達を拒み否定し続ける修司。
そんな新世代型達を憎悪と怒りで苦しめ、怯えさせる修司の暴挙を前にミラーガールは強く悲しみを抱く。
果たして小田原修司の言う通り、彼の遺伝子から生み出され、更に今まで罪を重ねてきた新世代型二次元人が存在する世界は認められないとでも言うのだろうか。
[蒼き聖なる力の継承者]
新世代型二次元人の生体エネルギーを利用して戦う暗黒獣に対抗すべく、ミラーガールは自身の聖なる力を戦場の皆々に分け与え、全員が一つの蒼き光で形成された大聖獣へと変貌。
全てを無に誘う暗黒獣と、全ての未来を取り戻そうとする大聖獣。二体の巨獣は大地を震わせ、激しく組み合うのだった。
だが、暗黒獣は自身に受けた損傷や痛みを全て、自らの頭上の檻に幽閉している新世代型達と共有しているが為に、ミラーガール達は暗黒獣への攻撃を躊躇う様子も窺えた。
しかし暗黒獣の方は、大聖獣に容赦なく殴り続け、大聖獣に組まれている人々は激しい痛感に苛まれる。
「お前達は……お前達は……何故、こんな出来損ないの……争いや確執ばかり起こす穢れた二次元人を……新世代型を庇護する……!」
暗黒獣と同化している小田原修司は、暗黒獣の巨大な全貌で自身のクローンである新世代型を非難し続ける。
「醜い確執や争い……衝突ばかりを繰り返したコイツら新世代型に、生きる未来など与えてはならないんだ……! 俺と言う、災いを招く破滅の遺伝子を持つコイツらを生かしておいてはいけないんだ……!!」
暗黒獣で激しく大聖獣を殴り付けていく修司は、新世代型への悪態を吐き散らしていく。
「ぐっ……!」
暗黒獣に強く殴られて、よろめく大聖獣の内部でメタルバードが受けた打撃の衝撃で悶絶する。
そんなよろめく大聖獣に、暗黒獣は真正面の全身から片太刀バサミや文房具の形状をした凶器を大聖獣へ突き刺そうと射出した。
「っ!」
暗黒獣の鋭利な武器の射出を防ごうと、ミラーガールが大聖獣全体を護れるミラー・バリアを展開し、片太刀バサミや文房具状の武器を全て弾いた。
「ッ……おい! このままやられっ放しじゃあ、わしら全員この場で修司に……暗黒獣に敗北してしまうぞ!! ミラーガール、バーンズ! 早く反撃に移らんか!!」
国連軍元帥赤犬の怒声が響く中、ミラーガールとメタルバードは難しい顔をして呟いた。
「で、でも……迂闊に大ダメージの攻撃を与えれば、檻の中の新世代型のみんなにも痛みが伝わってしまうし……」
「修司には甘いと言われちまうが……だが、檻の中の新世代型達の激痛を考えれば、攻撃は慎重になんねえと……!」
ミラーガールもメタルバードも、檻の中に幽閉されており、暗黒獣に自らの生体エネルギーが利用されている新世代型達が共有する激痛を考えると迂闊な反撃ができずにいた。
そんな現状に困惑する大聖獣の面々を前に、暗黒獣である修司は吠えるが如く言い放つ。
「やはり甘いな、お前らは……! 囚われの身である者たちを気遣い、思い通りに戦えないもどかしさは相も変わらず、愚の骨頂だ」
修司は更に言い放った。
「よく考えろ……! コイツら新世代型は、穢れ切った世界を滅ぼしかねない俺のクローン! そんな連中を気遣い、同情している以上……所詮この世界の未来は決まっている。そう……所詮、世界は破滅への道行きを直行しているに過ぎん……!!」
己のクローンであるが故に、新世代型は自分と同等、世界を破滅に誘う存在だと豪語する小田原修司。
そんな修司の悲痛な想いが詰まった言動を前にして、ミラーガールは悲しみに暮れた。
その苦しい戦況を、暗黒獣の頭上その檻の内側から観戦していた新世代型の面々は非常に胸が苦しくなった。
自分達の存在が小田原修司を追い詰め狂わせ、今まさに世界を破滅に誘おうとする巨大な暗黒獣という力にまで凝縮されている現状に、新世代型達は苦悩した。
小田原修司のクローンである自分達は、果たして生きていて良いのだろうかと。
と、その時。暗黒獣が再び殴り掛かろうとしてきたのを直視した聖龍隊の隊士達が一丸となって反撃に転じた。
「チッ、このままじゃコッチがやられるだけだ……行くぞ、みんな!」
そう声を上げた黒崎一護は、得物を身構えると同じ刃の得物を持つ同士と共に反撃の態勢に入る。
すると大聖獣は右手に刀を携え、身構えて暗黒獣を切り裂く態勢を取った。
「っ! あ、あんなに巨大な刀で斬られたら、俺たちもヤバイ事になるぞ!」
大聖獣が身構えた斬撃での構えを目の当たりにし、檻の中で真鍋義久たちが激しく動揺する。
しかし真鍋たちの困惑も尻目に、大聖獣はそのまま暗黒獣に向かって刀を真一文字に振り動かし、切り払った。
「うわっ!」
真鍋たち檻の中の新世代型達は、腹部に激しい痛みと、下手すれば下腹部が切り裂かれる事を覚悟した。
するとその時であった。檻の中に新世代型達と共に幽閉されてしまってるプロト世代の黒鳥千代子、通称チョコの体にある変化が。
大聖獣が暗黒獣の腹部を切り裂いて、少し後退した瞬間、檻の中も激しく揺れ動いた。
檻の中の新世代型達は誰もが腹部への激しい痛みと下手すれば深い刀傷も覚悟していた中、恐る恐る目を開いて自分の腹部を確認してみると。
なんと新世代型達には激痛が苛まれる事も無く、腹部の刀傷も何故か長い真一文字のミミズ腫れで収まっていた。
「こ、これって……!?」
新世代型の森園わかなが腹部のミミズ腫れを視認して困惑してると、同じく状況が呑み込めず困惑している琴浦春香がある現象に気付いた。
それは、まるで祈祷するかのように手を組んで座り込む、蒼い光を全身から発しているチョコの姿だった。
「ちょ、チョコちゃん……!?」
チョコがミラーガールと同じ聖なる蒼い光と同色の光を発している現象に驚く琴浦春香。
「お、おいチョコ! どうしたんだよ……!?」
「お、おねえちゃん……?」
師匠であるギュービッドや桃花・ブロッサムも、チョコのこの現象が理解できず困惑するばかり。
すると、チョコがフッと体の力が抜けた様に祈祷の姿勢を崩すと同時に、光も消えてしまった。
「ちょ、チョコちゃん!」「黒鳥!」
琴浦春香や真鍋義久らが力が抜けるチョコに駆け寄り、彼女を支えているとチョコは目を覚ました。
「み、みんな……」
「チョコちゃん……ほっ」
「お、おいチョコ! 今のは何だったんだ!?」
意識を取り戻すチョコを見て安堵する琴浦春香に反して、ギュービッドはチョコに今の現象について答えを求めた。
だが、チョコは「え……えぇっと……わ、私にもよくは分からないんです。ただ、これ以上、琴浦さん達を……友達が苦しまない様にと、私は自分が何もできないからこそ、心の奥底から、こんな悲しいだけの戦いが早く終わるよう祈ってただけです」と、普通に返答するばかり。
一方で、大聖獣からの斬撃で腹部に深い損傷を受けた暗黒獣はすぐさま瞬く間に傷口を再生させて塞ぐと、頭上の二次元人たちの様子を窺って語り始めた。
「……なるほどな。黒鳥千代子、通称チョコとやら……お前は前々から薄々と気付いていたが、やはりお前はアッコの系統の末裔だったんだな」
「え?」
修司からの言葉に唖然とするチョコだったが、そんな彼女を含む檻の中の面々に修司は語り続けた。
「アッコは元々は普通の人間の女子だった。だが、鏡の国との繋がりを得て異界の存在を知り得たと同時に魔法のコンパクトを所持する様に至った。……これが後々、異世界などの異質な存在から特別な道具を与えられた事で活躍する魔法少女の元祖ともいえる」
『………………』
「……そして黒鳥千代子、お前もギュービッドという異質な存在との出逢いを得て魔法などの特殊能力が使える魔法少女の類だ。つまりお前は…………変身魔法少女の始祖であるアッコの、正当かつ系統な伝承者と言えよう……!」
「!!」
修司の口から、チョコは変身魔法少女の始祖であるアッコの系統に繋がる、魔法少女の正当な伝承者だと告げられて驚愕するチョコ。
チョコに衝撃の事実を告げる修司は、衝撃を受けて唖然としているチョコへ唐突に疑問をぶつけた。
「……だが、それだからと言って……何ゆえ、お前如きがアッコの……魔鏡聖女の聖なる力を使える……! その力は本来、アッコですら使える筈のない……そう、俺と言う別次元の存在と出逢ってしまったが故に使えるようになった異質なる力……それ故に、本当なら二次元人が使える筈のない力だと言うのに……何故?」
本来ミラーガールこと【ひみつのアッコちゃん】のアッコが使える筈のない、異質な聖なる力。小田原修司という別次元の存在と出逢ってしまったからこそ使えてしまう異質な力を、何ゆえチョコが使えるのか理解に苦しむ修司。
そんな静かに困惑する修司に、皆の先頭に立って大聖獣を指揮するミラーガールが唱える。
「修司……! 私も、なぜチョコちゃんが突然、私の……ミラーガールの聖なる力を使えるようになったのかは分からないわ。でも……チョコちゃんの友達を守りたいと言う気持ちが奇跡を呼んだんだと、私は思う……」
「………………………………」
ミラーガールの言葉に、修司は黙然と耳を傾ける。
「人は古来より、他者を守りたい……そう思えば思うほど、より強く、自分よりも大きな脅威に立ち向かえる……修司、貴方が昔から言っていた事よ。私も、チョコちゃんも……新世代型の人たち、そして戦場で共に戦ってくれる大切な仲間達を守りたいと切に願っているわ。その思いが、チョコちゃんの中に眠ってた変身魔法少女の潜在能力を呼び起こして、チョコちゃんにも新世代型の友達を救える力が目覚めたんだと……私は思うわ!」
「………………」
「修司……貴方が昔、そう私たち二次元人に学ばせられたという「他者を守りたいという思いで得られる強さ」を今……私も、そしてチョコちゃんやこの場にいる仲間たち全員が胸に秘めている! 貴方が信じてくれた力と強さを、みんなは兼ね備えているのよ……!」
ミラーガールからの力強い言葉に、彼女と同じく大聖獣になっている皆々も、そしてチョコや彼女同様に檻の中に居る二次元人達も聞き入っていた。
しかしそんなミラーガールの力説を聴いても尚、自分のクローンが世界によって生み出された顛末に失望している修司の心は微動だにしなかった。
「……そうだな、人は古より他者を……大切なものを守りたいと言う想いから強くなれる事を、俺はお前たち二次元人から学んだ。だが……その強さと力もまた、今までの人の歴史の中で争いを生み、悲劇と言う現実を無情に創り続けていたのも事実。所詮、強さや力は争いと悲劇を生み出すだけの悲しい人の性……俺は、そんな力を生まれながらに持った異端児を……俺のクローンである新世代型の歴史を終わらせる事で、人間の争いと言う歴史に終止符を打ち、全ての生を安寧へと導くだけだ」
未来へ伝承される力を唱えても尚、修司の硬く閉ざされた心は開かず、修司は相も変わらず全ての命と歴史に終止符を打ち、全てを安寧と言う桃源郷に導くと言う意思が変わることは無かった。
修司の変わってしまった心が、簡単に心変わりする事がないと思い知らされたミラーガールは、再び大聖獣として皆と共に修司が同化している暗黒獣へ攻めていった。
「ッ!!」
ミラーガール達は渾身の思いで暗黒獣を殴り飛ばした。
すると暗黒獣が受けた痛みが檻の中の新世代型達にも共有される筈なのだが、先ほど覚醒したチョコの祈りの力によって新世代型達に伝わる暗黒獣の痛みが和らいだ。
チョコの新世代型達を思う優しい心が、新世代型達に伝わる暗黒獣の痛みを軽減した事で、ミラーガールたち大聖獣に変化している猛者たちは一気に暗黒獣へと反撃を開始した。
大聖獣は、その巨大な体を構成している多種多様な能力者たちの卓越した様々な力を存分に発揮して、暗黒獣へと反撃に移る。
古より人が持つ潜在能力「他者を守りたい思い」その思いを胸に
他者を守りたい思いと言う強さもまた争いの根源とする、新世代型二次元人の始祖。
そして、魔鏡聖女の正当なる伝承者である少女の思いもまた戦況に変化をもたらした。
巨大な強さと強さの衝突は、今まさに熾烈を極める頂点へと上り詰めた。
[生まれた意味]
ミラーガールの聖なる力で組み合った大聖獣の多種多様な戦力に、小田原修司が同化している暗黒獣は押されていた。
暗黒獣が受けた痛みを共有して、共に苦痛を味わう筈の新世代型二次元人も、ミラーガールの他者を思う力に目覚めた黒鳥千代子ことチョコの祈りで軽減されていた。
しかし、そんな押されている戦況ですらも、暗黒獣と同化している修司は交戦の意思を曲げない。
「喰らえ!」
暗黒獣は口から強力な砲撃を放つが、大聖獣は一瞬でその姿を翼の生えた四足獣の姿へと変えて、翼を広げて空へと回避。
更に大聖獣は、その翼のある四足獣の姿に人型の姿までも出現させて、四足獣に跨がせる形で乗せては、人型が両手を組んでボウガン状の武器で暗黒獣を狙い澄ます。
矢の先端に聖なる光を纏わせた弓矢をボウガンから射出して、暗黒獣に射撃。しかし暗黒獣は、その射撃を身を反らしてかわす。
『きゃあっ』『わあっ!』
そんな激しく動く暗黒獣の頭上に在る檻の中に居る二次元人たちは、戦いを繰り返す暗黒獣の激しい動作に戸惑っていた。
「ち、チクショーー……いくら琴浦たちの痛みが、チョコの祈りで軽減されているとはいえ、此処まで激しく動いてちゃ、檻の中ですら危ういよ……」
男勝りの言動で暗黒獣が激しく動き回る故に檻の内部も激しく揺れ動く現状に目を回すプロト世代のギュービッド。
だが檻の中の現状を知ってか知らずか、暗黒獣は激しく動き、反撃とばかりに口から漆黒の球を射出。その球は素早く動く大聖獣を追尾するのだが、大聖獣はボウガン状の武器から射出する弓矢でその球を狙撃し、一撃で消滅させてしまう。
「ッ……!」
暗黒獣と同化している修司は、暗黒獣の口元を歪ませて苛立ちを露わにしていた。
すると地上に舞い降りた大聖獣は、完全な一人の人型としてその姿を成形し、暗黒獣に向かって弓矢を引いた。
「行くわよ、みんな……!」『はい!』
セーラーヴィーナスの掛け声の元、鹿目まどかを始めとした多くの聖龍隊士たちが弓矢を引く構えを取り、そして矢を放つ様に指を動かすとそれに連動して人型の大聖獣も蒼い矢を射出して暗黒獣へと射る。
放たれた巨大な矢は、暗黒獣に直撃する直前で無数の光る矢へと分裂して、暗黒獣に無数の矢が浴びせられる。
無数の蒼き光を放つ矢を浴びた暗黒獣は苦痛に喘ぐ。
「ッ……そう簡単に俺を止められると思うな……!」
そう吐き出した修司は、無数の棘を生成した暗黒獣の拳で大聖獣を殴り倒そうと振り上げる。
と、その時。檻の中のチョコが更に強い思いで祈った瞬間、彼女から激しい蒼い光が解き放たれた。
「!?」
修司がその光に困惑してると、チョコから放たれる蒼い光が暗黒獣の巨大な全身を覆い尽くし、次の瞬間には暗黒獣に強力な痺れが。
「ぐッ……!?」
暗黒獣に謎の痺れが伝わり、苦しまれる状況に修司は若干ながらも焦り始める。
チョコの意外なまでの力に戸惑った修司は、暗黒獣の体を苦し紛れとはいえ激しく揺さぶり、檻の中も激しく揺れ動かした。
「きゃっ!」
激しく揺れ動く檻だったが、そんな現状でもチョコは祈る事を辞めず、絶えず友である新世代型達に暗黒獣が受けた痛みが伝わるのを防ぐ為に祈祷し続けた。
そんな現状に苛立ったのか、修司は暗黒獣の背中から触腕を生やして更に激しく頭上の檻を揺さぶり、捕らえている二次元人達を恐れさせ、チョコの祈りを妨げる。
苦しみで暴れ出す暗黒獣が激しく動いてチョコの祈りを妨害してると、激しく揺れ動く檻の中で祈ってたチョコの体が宙に浮いた。
「ぐっ……!」
暗黒獣を苦しませてた蒼い光を放っていたチョコが、暗黒獣が苦しみで暴れ出した反動で檻の鉄格子に激突し、その際に頭を強く打ち付けてしまったのか気絶してしまう。
「チョコちゃん!」
ぐったりと気絶するチョコに寄り添い、声をかける琴浦春香。
そして緊急の事態と、すぐさま日暮真尋と松原穂乃果がチョコの容態を確認する。
「……大丈夫、軽い脳震盪よ」
日暮真尋からの診察を聞いて、少しばかりだが安堵する琴浦春香たち新世代型達とプロト世代の面々。
だが、暗黒獣の活動を阻害する祈りをしていたチョコの意識が失われている間に、暗黒獣を動かす修司は右手から刀の形状をしている武器を出現させて、大聖獣に向けて技の一つである「地走り」を放った。
暗黒獣が放った地走りを避けた大聖獣だが、暗黒獣が放った地走りはそのまま後方の岩山を大きく削り、地形そのものを変えてしまった。
「地形を変えるなど……造作もない事だ」
平然と地形を変えるほどの壮絶な攻撃を放った暗黒獣の口から、修司の言葉が零れる。
すると、先ほどの衝撃で頭を打って気絶してしまった小学生のチョコを自分の膝に寝かせる琴浦春香が、暗黒獣と一体化している修司に涙ながらに訴えた。
「……どうして? どうして! チョコちゃんは私たちとは……貴方のクローンである私たち新世代型とは関係ないプロト世代なのに……! なんでチョコちゃんまで!!」
何ゆえに自分たち小田原修司のクローンである新世代型二次元人とは無縁であるプロト世代のチョコまでも危害を加えるのか、修司に問い詰める琴浦春香。
「そうだ! おれ様だって無関係な旧世代だぞ! おれ様までこいつらバケモノ同然の新世代型と一緒にすんじゃねェ!! ……早く出してくれ」
どさくさに紛れて同じく捕らわれの身である道化のバギーが文句を垂れ流す。
だがそんな琴浦春香の問い掛けを聞いた修司は、冷たく彼女の言葉をあしらった。
「何を言う? そもそも、この戦いが起きた切っ掛けは……この大戦の発端は、お前らの存在なんだぞ。そんなお前らが他人の心配をするとは、滑稽だな」
「なッ……!?」
修司の発言に、琴浦春香と同じく怒り震えていた真鍋義久は愕然とする。
そんな愕然とする真鍋たち檻の中の人々を尻目に、修司は更に語り続ける。
「お前達が生まれなければ、存在しなければ……俺だって少しはこの世界の未来に希望が持てた。……だが、こんな心が欠けた俺の……破壊と破滅しか持ち合わさない俺の遺伝子から、お前らと言う悍ましい異端児共が生まれてしまった……! 俺は、お前たち全員に生まれてきた事を後悔させると共に、至上の苦しみを与えたまま葬らねば気が済まんのだよ……!!」
冷酷な修司の言葉に新世代型達は愕然とし、口を閉ざしてしまう。
そんな自分のクローンである新世代型達に冷たい言葉を吐き捨てる修司の会話を目前で聞いていたミラーガールが、大聖獣の内部から修司に問い掛けた。
「修司……! 貴方は自分自身を受け入れられない様に、自分の子供同然の新世代型ですら受け入れられずに拒絶してる……! 何度も言ってる筈よ……貴方には心がある! 美しいものを美しいと感じ、正しいものを正しいと感じられる心が!」
しかしミラーガールの懸命な訴えも、やはり修司には届かなかった。
「言った筈だ、俺に心など最初から無かった。俺が今まで感じていたと思ってた感情は、全てお前たち二次元人から与えられた虚偽の感情……そう、二次元人と同じく偽りの心だった。美しいもの、そして正しいと感じていたものですら、俺にとっては全て等しく偽りだったんだ」
「……!」
修司の返事にミラーガールは愕然と言葉を失ってしまう。
「俺はただ……壊し……滅ぼすだけだ」
生まれながらに人の愛情を感じられず、己を心の欠けたバケモノとして見下していた修司は、ただただ力を欲するがあまり軍によって開発された筋肉増強剤のD-ワクチンを投与され、その後国連管轄下の人間兵器として破壊と戦争の道具として自らを売り出し、挙句の果てには二次元人を滅ぼす破滅の化身メシアに精神を改造されていた事実を背負い、今ここに修司は全ての歴史を破壊し、全ての命を滅ぼす純粋な生まれた時の、アッコたち二次元人に出会う前の心の欠けた存在として戦っているのだった。
そんな自分の半生を思い返していた修司は、暗黒獣の大きな口から自分の言葉で言った。
「新世代型は全て消し去る……それが俺の、生涯最後の贖罪だ」
破壊と破滅を齎す自分のクローンである新世代型二次元人を全て根絶やしにする事こそ、心の欠けたバケモノとして産まれてしまった自分の最後の贖罪だと語る修司。
さらに修司は暗黒獣の姿で猛威を振るい、ミラーガールたち大聖獣と激しく闘いながら語り続ける。
「そうだ……!! お前達が……俺の呪われた血から生み出されたお前達の存在が……この俺を新たに変えた」
暗黒獣の頭上の檻の中で、修司の言論に憤りや絶望など様々な感情を滾らせる新世代型達に語り掛けるかのように、修司は昔を思い出していた。
「かつて、アッコたち聖龍隊を創設した仲間によって、俺にも心があったと思い込まされていた自分……だが、俺の遺伝子を受け継いで生まれたお前達の醜悪な争いや諍いを目の当たりにして我に返った……所詮、俺はこの新世代型と……醜い醜いコイツらを生み出した元凶である、欠けた存在なのだと……!」
醜い争いや諍いを続けてきた新世代型二次元人を生み出した元凶は、全て心が欠けている自分自身だと唱える修司。
「俺を憎めば憎めばいい……悪と思えば悪と罵ればいい……所詮全ては、お前たち自身に向けられる感情だ」
例え如何なる理由からでも、修司に向けられる憎しみや、修司を悪と決め付ける敵意は、全て修司のクローンである新世代型二次元人達に向けられているのだと残酷な事実を突き付ける修司。
自分達の始祖、小田原修司に存在を完全否定された新世代型二次元人達は、深く深く絶望した。
だが、そんな絶望する新世代型達に修司は切に問い詰める。
「誰が生み出してくれと頼んだ……誰が生んでくれと願った……!」
破壊や破滅を誘う自身のクローンを、望まずに生み出された現実に修司自身も自分の心中が絶望に染まった事を明かした。
そして修司は恨み辛みを吐き出す様に、言い放った。
「俺は、俺自身のクローンを生み出した全てを恨む……!」
望んでいない自身のクローンを生み出した世界と、クローンである新世代型二次元人の全てを決して許さないと断言する修司。
そんな世界と新世代型二次元人への敵意と憎しみを明白にした修司の恨み言を聞いて、修司が操る暗黒獣と激闘を繰り広げている大聖獣に変化しているスコーピオン同盟の柊兄弟が思った。
「小田原修司と、新世代型二次元人……」
「小田原修司から、新世代型二次元人は生み出された……」
兄である恵一と弟の潤は、改めて新世代型二次元人は三次元人の技術で、小田原修司の遺伝子から生み出された種だと再認識した。
と、大聖獣に変化している一同が暗黒獣と同化している修司の言動に衝撃を感じていると。
「……醜いだけじゃ……ない……」『!?』
そのか細い声に、檻の中の二次元人たちは一斉に視線を声の方に向けた。
「チョコちゃん!」
その声の主は、先ほど鉄格子に頭をぶつけて気絶してしまってたチョコだった。
チョコが目覚めて彼女を介抱していた親友の琴浦春香が名を呼ぶと、チョコは意識が朦朧とする中、暗黒獣の修司に訴えた。
「修司さん……貴方の言う通り、新世代型二次元人の人たちは私が知っているだけでも数多くの罪を犯し、醜い衝突も繰り返していました……。琴浦さんを受け入れず、冷たく見下していた久美子さんに、真鍋さんを襲わせた腹黒い森谷ヒヨリさん……三枝さんや二木さんを仲違いさせていた三枝一族の人たち……疑似戦争に見せかけて、代理戦争をやらされていたアラタさんたちLBXプレイヤーの皆さん……いくら実母の暴走を止める為とはいえ、傍若無人の数々を繰り返してきた皐月さん達……ライバルとの熱戦の域を超えて、醜くぶつかり合っていた食戟の、未来の調理人たち……色んな事情から、諍いや衝突をしてしまったプリティーリズムのみんな……種族や能力などの偏見をしてしまってた【境界の彼方】の皆さん……不死性の能力を持つマギウスへの偏見や差別……その他にも、ドレフ将校が裏で糸を引いていた新世党の悪行……! 修司さん、貴方はそんなみんなの現状を知ってしまったからこそ、新世代型二次元人という自分の遺伝子を受け継いだ自分のクローンを受け入れられず、その存在が許せないんじゃないんですか?」
チョコの話を聞いて、修司は黙り込み、新世代型達は過去の自分達の所業を悔いて口を噤んでしまう。
だが次の瞬間、チョコは先ほど強打した頭を押さえながらも修司に強く訴えた。
「……だけど! 今はそれぞれ、互いの事情を……心を知って、そして自分の過ちを受け入れて前に向かって生きている! みんな相手の心を知って自分を、相手を受け入れて懸命に前に向かっているんです! そんなみんなを……新世代型二次元人の人生を否定する権限は誰にだってありません! そう、例え……新世代型二次元人の始祖である修司さん、貴方であっても!!」
チョコは目に涙をいっぱいに溜めて真剣な目付きで睨みを利かせる。
新世代型二次元人の人生を否定する権限は誰にもないと、新世代型達を懸命に涙ながらに庇護するチョコの姿を目の当たりにして、新世代型達は嬉し涙を目に浮かべた。
そしてチョコの涙ながらの訴えを聞いて、今まで成りを潜めていた勇気を振り絞り、新世代型達がこぞって修司へと反論する。
「確かに俺達は、あんたの遺伝子から生み出された!」
「だけど……だからといって私たちの人生を決める権利は誰にもない!」
「我々は過去に数多くの大罪を犯してきた……だからこそ今を、未来を此処にいる同士と共に生きるのだ! そう贖罪の為、そして大切な者の為に!!」
真鍋義久に猿田学そして鬼龍院皐月の力強い発言を聞いて、暗黒獣と同化している修司は高らかに咆哮を上げて言い返した。
「確かにお前らは俺の遺伝子から生み出された……だが強いのは、この俺だ!」
その時、暗黒獣は背中にびっしりと生え揃っている背びれを怪しく紅く光らせて、背びれから無数の紅い閃光を放って怒りの感情を示す様に言い放つ。
「俺は、俺を生み出し育んだこの世界そのものを恨む……!」
小田原修司という心が欠けた自分を生み出し育んだ世界そのものへと憎悪を滾らせ、暗黒獣は口から強大な光線を発射して、目前の大聖獣へ攻撃した。
暗黒獣の咆哮と言う砲撃を至近距離で浴びせられた大聖獣は、激しく後方へと押し倒されてしまう。
生まれてきた命に罪はないのかもしれない。
けれど、その命が自然の生態系に影響を齎すとしたら。
果たしてクローンと言う命は、その存在が許されるのだろうか。
見えない答を探し求めるかのように、大聖獣も当事者である新世代型二次元人たちは苦悩し、葛藤しながら、暗黒獣へと挑むのであった。
[覚醒してた能力]
暗黒獣として新世代型二次元人と、その新世代型を生み出した世界を、全てを無に誘おうと躍起になる小田原修司。
修司に真っ向から存在を否定され、絶望する新世代型達に激励の言葉を修司に訴える黒鳥千代子ことチョコ。
罪を犯し、醜い争いや諍いを繰り返してきた新世代型達は、贖罪の為にも未来を生き抜く決意を固める。
だが、そんな自身の複製の自我を前にしても新世代型を否定し続ける修司は、新世代型達を救出するべく戦いに挑むミラーガールたち大聖獣と激しい攻防を続ける。
凄まじい風圧を帯びて振り上げられる暗黒獣の拳に対し、大聖獣の方も拳を振り上げて応戦する。
両者の拳と拳は互いにぶつかり、凄まじい衝撃を発生させて周辺に突風を起こした。
その凄まじい衝撃波に、暗黒獣の頭上の檻の中に閉じ込められている二次元人達も頭を押さえて息を呑んだ。
「醜い醜い俺から生まれた忌まわしき子、新世代型……こいつ等に自分が生まれた事が、どんな災いや悲劇を招くのかを叩き込んだ上で、こいつ等を生み出し続ける世界を無へと誘い滅ぼす……それが俺の贖罪なんだ」
大聖獣と闘いながら、自分のクローンである新世代型二次元人たちに、自分たち破壊と破滅の遺伝子を持つ者が如何に災いや悲劇を招く存在なのかを教え込んだ後に、新世代型を生み出し続ける世界を滅ぼす事が己の贖罪だと、悲しげに語り掛ける修司。
そんな修司の意思で動いている暗黒獣の攻撃を耐え凌ぎながら、大聖獣は皆で協力し合いながら懸命に暗黒獣へと反撃していく。
「自分のクローンを……自分自身を受け入れられず、自分自身を否定し続けて……挙句の果てには自分自身でもある新世代型を滅ぼす為だけに、ここまでの大戦を引き起こすとは……!」
「そこまで修司くんが、兵器でもあった自分のクローンが私利私欲の為に生み出され続ける現状に苦しんでいたと言う事じゃ……!」
ミラーガールの聖なる力を分かち合い、大聖獣に組み込まれているトラファルガー・ローと海峡のジンベエが語り合っていると、暗黒獣の大きな口が開き、口内から紅い光が垣間見れた。
「また来るぞ!」
メタルバードの一声で、大聖獣に組み込まれている一同は意識を一つにして暗黒獣が放つ強力な咆哮に対処する。
そして暗黒獣の強力で紅い閃光が、その大きな口から放射されて大聖獣に直撃。だがスグにミラーガールがバリアーを展開して暗黒獣の砲撃を防いだ。
だが、ここまでの闘いで大聖獣へと組み込まれた面々の気力や精神力が激しく消耗しており、既に皆が揃って息が上がっていた。
「もう終わりにしよう、かつて俺を友として認めてくれた者たちよ……お前らがいくら足掻いても、破滅への運命を変える事はできん……俺を昔の様に戻す事は出来ない。俺は俺、生まれながらに心が欠けた本来の小田原修司に戻っただけなんだ」
降伏を求めてくる修司の言動に、ミラーガール達は肩を上下に揺らし、息を上げながら耳を傾けた。
「何故こいつ等を救おうと必死になる? お前らの理想論である正義や愛といった感情で動いているのか? それとも、かつてお前達を信頼していた俺のクローンだからか? ……だが、こいつ等は最早、俺と同じ……存在そのものが大罪の穢れた命。存在しているだけで、この混沌とした世界を更に醜く変化させ……多くの災いや悲劇を呼び寄せる事となるだろう。この新世代型達の存命を許す事は……同時にこの世界のパワーバランスを乱し、狂わせる事となるのが理解できないほど、アッコお前達は幼稚ではないだろう?」
修司から問い詰められて、ミラーガールはしばし考え込んだ後に返答した。
「……確かに、クローンと言う命は、時に生態系のバランスを壊してしまうかもしれない。修司、貴方の破壊と破滅を誘うと言う遺伝子を引き継いだ新世代型二次元人が、私たち二次元人の存在で混沌としている世界を、更に乱して狂わせて、そう遠くない未来で本当に最大の悲劇を招いてしまう可能性があるという貴方の意見が解らないほど、私たちは幼稚では無いわ」
ミラーガールからの明確な真意を聞いて、檻の中の新世代型達は意気消沈してしまう。
だが、ミラーガールはその直後に修司へ明々と説いた。
「だけど……貴方には、そして私たちには無限の可能性がある! 未来を破滅に追いやってしまう可能性だけでなく、今まさしく現政奉還で真っ白になったこの世界を新たに創生できる無限の可能性も秘めているの! 修司や私たちにも在り得る、無限の可能性を新世代型も必ず持っている筈よ!」
修司や自分の様な、二次元人や三次元人たち人間に存在する無限の可能性で、まさしく現政奉還で真っ白になった世界に彩を与えていく可能性が、世界や未来を創生できる可能性が新世代型にも秘められている筈だと熱く説くミラーガール。
そんなミラーガールの力説を聞いて、聖龍隊の面々も暗黒獣である修司に訴え掛けた。
「そうよ! 人の無限の可能性……修司くん、あなただってその可能性を信じられていたからこそ、私たち二次元人を導きながらも守ってきてくれてたんじゃないの!?」
「無限の可能性を秘めた二次元人、そしてその二次元人を創作できる三次元人が築いていける世界とその未来を信じられたから、修司さんは今まで頑張って来れたんでしょ? それなのに……」
聖龍隊創設の頃からの仲であるセーラームーンと、今まで自分が信じてきたものを全て否定している現在の修司を悲観する七海るちあ。双方とも涙ながらに修司へ訴える。
「新世代型は確かに小田原修司から生み出された」
「でも……今はもう生き物」
大聖獣にパートナーのデジモンと共に合体している城戸丈や武之内空も、小田原修司から生み出されたクローンである新世代型二次元人は今では立派な生き物であると唱える。
仲間であり友である聖龍隊の同士の切実な言葉を聞いて、ミラーガールは再度修司に懇願した。
「そう、新世代型二次元人も貴方も……立派な、心を持った命、生き物なの! 貴方にとって新世代型を傷付けるのは、自分を傷付けるのと同じ……お願い修司、もう自分を傷付けるのをやめて!」
涙目のミラーガールからの懇願を聞き入れて、修司はしばし沈黙した。
だが
「…………生き物、か。確かに、俺もこいつ等も生きているからこそ、世界を醜く塗り潰し、罪を重ね続ける……俺も、俺のクローンである新世代型も命ある生き物だからこそ……お前たち旧世代の二次元人が存在していた美しい二次元界ですら、俺が生まれてしまった三次元界同様に醜く変わり果ててしまったんだ……!」
「! …………」
ミラーガール達の言葉を聞き入れても尚、修司の心は世界と同様に醜く変わる一方だった。
「俺と言う心のない醜い命を……大量殺戮兵器だった俺の代用品を欲するが為だけに……! 世界は、寄りにもよって俺のクローンを生み出すと言う大罪を犯した……! 俺はこの過ちを、負の連鎖を断ち切らねばならない……その為にも、新世代型に完全なる絶望を植え付け、過ちを繰り返すだけの世界を無に誘う必要がある……!!」
「修司……!」
修司の心が更に悪化していく現状に、ミラーガールは悲嘆した。
「俺は俺で……新世代型達に勝つ! そしてこいつ等を世界共々、真っ白な無の境地へと誘ってやるだけだ!!」
己のクローンたる新世代型二次元人の存在を許せない修司は最強の人間兵器としての己のクローンを生み出し続ける世界に絶望し、その空虚な心の中に新世代型二次元人を生み出した三次元人と、己が最も恨む己自身である新世代型二次元人に対する憎悪の念を抱いた。
自分のクローンを必要とする様になった世界に絶望し、己のクローンと世界に激しい憎悪と敵意を向けるまでに至ってしまった小田原修司。
そんな修司の心の暴走が、さらに暗黒獣を凶暴化そして強化していく。
修司の憎悪と敵意を前にしたミラーガールたち大聖獣は、そんな修司の悲しみと絶望そして憎しみを消し去る為にも暗黒獣へと挑み続けた。
しかし修司の新世代型二次元人と、そんな彼らを生み出した世界への敵意と憎悪は絶える事無く修司の中から湧き上がり、暗黒獣の力を更に増強させていく。
と、かつての仲間でもある聖龍隊が集結している大聖獣と激しい攻防を繰り広げている暗黒獣に同化している修司は、そのかつての仲間達を思いながら昔を振り返った。
「お前達は俺の夢を……理想に感化され、それを実現させようと俺の思想に協力的になってくれた。だが……それによってお前達の夢を……更に俺と同等に、お前達にも人々の憎悪が向けられるまでに至ってしまった」
自分を友と認めてくれた二次元人に、自分の夢や理想を認められて嬉しかった修司。だが同時に、理想を掲げるが為に多くから敵意が憎悪が修司だけでなく二次元人にも向けられてしまった経緯を語る修司本人。
「俺の夢を叶える為に……俺と同じく、人々の憎悪を一身に浴びる様に至らせてしまったのは、俺が犯した罪の一つだ」
理想の象徴でもある二次元人に、その様な憎悪と敵意が一身に浴びせられてしまったのは、全て自分が犯してしまった大罪の一つだと修司は語った。
だが、これを聞いてミラーガールは強く修司に唱えた。
「……確かに。私たち二次元人が大勢から憎まれ、邪険にされてきた根本は、全て修司あなたの気高い理想から始まった事……多くの能力者や術者、魔法使いや超能力者に妖怪と、様々な種族を交えた上でそんな彼らを迫害から守っていきたい。そんな修司の気高い理想から、多くの二次元人が今に至るまで邪険にされてしまう結果に至ってしまった……」
『………………』
ミラーガールの話に、多くの二次元人達は黙り込んでしまう。
が、ミラーガールはスグに力強い面魂で修司に唱える。
「だけど……! 私は、いいえ私たちは後悔していない! 修司が掲げた理想を……迫害や差別のない理想の世界を築く為なら、どんな敵意も憎悪にも立ち向かって見せる! そう私達はあの日、修司と一緒に二次元界と三次元界を守り抜けてから決意したの!」
かつて次元の崩壊を目論んだ絶夢鳥との壮絶な戦いを乗り越えて、再び修司と結束を固めた初期の聖龍隊隊士たちは、修司が願った迫害や差別のない理想郷を夢見る様になった。そして、その気高い理想を叶える為なら、如何なる敵意や憎悪とも立ち向かう覚悟を決め込んでいるとミラーガールは宣言したのだ。
このミラーガールの宣言に、彼女以外の聖龍HEADはもちろん大勢の聖龍隊士も同意してるのか気高くも力強い表情を浮かべていた。
そんなミラーガールの意志を汲み取り、そして共感した多くの猛者たちは、その集結した意志を解き放つ様に強力な蒼く太い光線を口から発射。暗黒獣を撃ち抜いた。
大聖獣が発射した光線が暗黒獣の胴体を貫き、暗黒獣は前のめりに倒れて絶命したかのように見えた。
だが、暗黒獣は再び頭上の檻に閉じ込めている新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して、肉体を再生、そして蘇生してしまう。
「黄泉帰り!? なんと……!」
「またしても、闇より不如帰が生れ出る……!」
不吉で重たく暗い空気がどんよりと漂う戦場で、幾度も甦る暗黒獣を前にして、大聖獣として戦う聖龍隊士は、深淵の闇から不如帰が生れ出る黄泉帰りを思い浮かべてしまう。
しかし幾ら蘇生できると言っても、何度も倒されてしまう現状に暗黒獣を操る気の短い修司は焦り出してしまう。
修司と同化している暗黒獣は、大聖獣に合体している猛者たちを一掃するべく全身から無数の突起物、そう片太刀バサミや文房具形状等々の武器を至近距離から射出して猛者たちに突き刺そうと仕掛ける。
だが、瞬時にミラーガールは手を前に突き出して術を発動。巨大な盾で大聖獣を防衛する。
「もう誰も死なせない……誰も、奪わせない!」
ミラーガールは修司や他の聖龍隊士が味わった、大切な人の死と、命を奪わせない決意の元で大聖獣を死守。
結果、暗黒獣が発射した武器は全てミラーガールが発動させたミラー・シールドで防がれ、大聖獣となっている猛者たちは無事だった。
「修司……! もう、誰も奪わせない……何も喪わせない……」
そんな己の決意を口にするミラーガールに、メタルバードが言付ける。
「アッコ! もうそろそろ他のみんなも限界だ……! 早く修司と決着を付けねえと、大聖獣の効果が切れちまう」
大聖獣は、ミラーガールの大聖光を他の猛者達にも分け与え、それによって一時的に聖なる光で巨大な獣へと変われる大規模な術。だが、同時に消費される精神エネルギーも桁違いだ。
「もうお終いか……!? なら、こっちから攻めてやろう……!!」
大聖獣の現状を察知した修司は、暗黒獣から漆黒の波動を放った。
「な、なに? この変な感じは……!?」
暗黒獣から放たれる漆黒の波動を目の当たりにし、檻の中の新世代型であるイオリ・セイ達が動揺してると、暗黒獣から波動を発させている修司が説いた。
「どうせお前らは、この大戦が終わった時に始末するから教えてやる必要もないが……まあ、冥途の土産に教えてやるか。いいか、能力者の能力には格と言うものがあってだな、その最上位の能力値には「覚醒」というものが存在している。本来、能力はその能力者しか発する事ができないが、能力が覚醒した能力者は、その能力の影響を周辺の物体にも与えて変化させられる。……まっ、言うよりも見せた方が早いな」
そう修司が説いた次の瞬間、暗黒獣から放流した漆黒の波動を浴びた岩場や岩山が突如として黒い靄へと変化して、その形が崩れていった。
『ッ!!?』
その状景を目撃して檻の中の二次元人たちが一同に驚愕していると、そんな皆々に修司が説き明かした。
「覚醒した能力者は、周辺の環境にも己の能力の影響を与え、変化を齎す……! 俺の覚醒している闇の能力も、周辺の環境そのものを闇へと変化し、全てを漆黒の闇へと引きずり込む……!!」
なんと覚醒した能力者は、自身の能力の影響を周りの環境にも与える事ができ、それによって周辺付近の物体は全て能力者の意のままに変化させられるという。
この修司の覚醒していた闇の能力によって、強大な引力がある闇へと変化した戦場に、大聖獣に変化している面々は激しく戸惑った。
「ッ! どないする!? こンのままじゃ、修司の闇に呑み込まれて消されてまう……! いや、それ以前にわしらの方が早くスタミナ切れになるぞ……!!」
赤犬が動揺した顔で発言すると、メタルバードがテレパシーで赤犬を始めとする大聖獣に組している皆々に伝えた。
(一旦、暗黒獣から逃げるぞ! その道中で、オレが考えた作戦を実行に移す。……赤犬! お前がこの作戦の要だからな)
「!?」
テレパシーだった為に、修司や檻の中の二次元人たちには通じなかったが、赤犬は自分が作戦の要になると伝えられ、愕然とした。
そしてメタルバードが閃いた作戦を実行に移す為にも、まずは暗黒獣からの追撃から逃れなければならなかった。
「アッコ! まずはお前を中心とした、光の自然エネルギーを持つ能力者が一丸となって、足元の闇から大聖獣を逃がすんだ!!」
「了解!」
メタルバードから指示を受け、ミラーガールは即座に自身と同じく闇のエネルギーと反する以前に対なるエネルギーである光の能力者達と協力して、大聖獣の足下に広がる闇から逃れようと意気込む。
そしてミラーガール達の尽力で、大聖獣はどうにか強大な引力を持つ闇から逃れられる事ができ、その瞬間に大聖獣は大地を蹴って駆け出した。
「全員! 全速力で走れッ!!」
メタルバードの大声に、大聖獣に組している猛者たちは一致団結して全力で大聖獣を走らせた。そんな大聖獣を逃さんと、暗黒獣も追撃する。
轟く地響きで追撃する暗黒獣の前に、全速力で大聖獣を駆けさせて暗黒獣と距離を置く猛者たち。
「止まるな! みんなの意思が噛み合わなきゃ、大聖獣のスピードは落ちちまうぞ!!」
皆の意思が一つにならない限り、大聖獣の速度は落ちてしまうと皆に注意点を呼びかけるメタルバード。
大聖獣は狼の様な形態に変化して岩と岩の隙間を掻い潜って颯爽と駆け抜けるが、それよりも巨大化している暗黒獣は邪魔な岩すらも覚醒した闇の能力で闇に同化させながら全速前進で大聖獣を追い掛ける。
暗黒獣は、その大きな口を開いて、興奮しているのか口周りに無数のギザ歯を生やして目の前の大聖獣に迫る。
「忘れた訳ではあるまい……! 闇の引力からは逃れられないと……!! 人は本来、古来より己の心中に闇を秘め、人は自然とその己の中の闇に惹き付けられ、魅了されては闇に染まる……誰も、闇からは逃れられないのだ!!」
ギザ歯が生え揃った大きな口を開いて迫る暗黒獣のその大きな口から、同化している修司の声が響き渡る。
そんな追い詰められていく戦況で、メタルバードは冷静に次の一手を狙っていた。
「もうすぐだ……!」
次々と岩場と岩場の間を掻い潜り、その後ろを暗黒獣が岩場を闇に同化させながら迫る中、メタルバードやミラーガールたちは落ち着いて作戦を実行に移す時を見定めていた。
「待っていろ……今に目にもの見せてやる!!」
そんな粋がるデビルマンたち大聖獣へと合体している猛者たちを捕らえようと、修司は自身が同化している暗黒獣から闇の波動を繰り出して、周辺の環境を瞬く間に闇へと変化させて大聖獣を強大な引力で引きずり込もうとする。
激しい地響きに振動で、暗黒獣の頭上に位置する檻の中に囚われている二次元人たちは堪らず目を回してしまってた。
「ウっ……気持ち悪い」
「く、車酔いよりも性質が悪い……」
桃花・ブロッサムやギュービッドが蒼褪めている中、そんな激しい振動の中でチョコだけは必死に祈り続けてた。全ては暗黒獣を少しでも止める為に。
するとチョコの祈りが通じたのか、彼女から蒼い光が波動の様に暗黒獣の全身を包み込み、暗黒獣が発する闇の波動を打ち消してしまった。
「ッ! ……またか。魔法少女の伝承者たる、聖なる光を司る少女め……!」
暗黒獣を動かす修司は、発している闇の波動を打ち消すほどの聖なる光を放てるチョコの潜在能力に激しく動揺していた。
暗黒獣が闇の波動を放流しなくなった為に、周辺の環境に強大な引力を発する闇へと変える事ができなくなった為に、大聖獣は逃げやすくなった。
だが、それでも暗黒獣の執拗な追撃は止まる事がなかった。
「いいぞ! 追ってこい!」
しかしメタルバードたちは敢えて暗黒獣の追撃を回避しながら、ピッタリと暗黒獣の前方から必要以上に距離を取らなかった。
執拗なる暗黒獣の追撃から、ただひたすら退避し続ける大聖獣。
果たして小田原修司と対する一同の狙いは叶うのだろうか。
[目覚めた破滅]
遂に大聖獣を追い詰め、追撃に至る暗黒獣。
さらに覚醒していた修司の闇の能力によって、戦場そのものが闇へと変化してしまう。
だがその時、暗黒獣の檻の中に囚われている少女、黒鳥千代子ことチョコの目覚めた潜在能力である聖なる光が暗黒獣の闇の波動を打ち消し、周辺の環境にも影響を齎す覚醒した闇の能力を抑制したのだ。
それでも執拗に追撃する暗黒獣に追い詰められた大聖獣は、突然駆け足を止めたと思いきや、振り返り暗黒獣と向き合った。
「……何の真似だ? 逃げるのを諦めて降参でもするのか」
「冗談キツイわ」
突如として停止しては振り返った大聖獣を前に暗黒獣と同化する修司が問い詰めると、大聖獣の皆を指揮するミラーガールが毅然とした面持ちで突っ返した。
立ち止まって振り返り向き合う大聖獣と対峙する暗黒獣。それと同じくミラーガールと修司も対峙していた。
するとミラーガールたちと対峙する修司は、唐突に皆に語り始めた。
「所詮は烏合の衆……そう、聖龍隊はヒビだらけの……俺と同じ、欠けた存在……」
多種多様な能力者や種族が存在する聖龍隊の結束はヒビだらけと語る修司は、そんな聖龍隊は自身と同じく欠けている組織だと冷淡に告げる。
「人種、宗教、環境……全く違う存在が共存できる訳がなかった。思考の違う者同士が共存共栄できるなど、俺は浅はかな夢を見続けていた……結局、俺が、いや俺達が創った聖龍隊という組織はバラバラの思想が喰い違うだけの烏合の衆だったという訳だな……」
修司が発した「烏合の衆」という言葉に、今まで平然を保っていたミラーガールの堪忍袋の緒が切れた。
「これでも、ウゴウノシュウだって言うの?」
ミラーガールが強く念じると、大聖獣からは今まで以上に強い聖なる光が放たれる。それと同時に暗黒獣の檻の中に居るチョコから放射される聖なる光も強まった。
自らの思いとチョコの祈りを共鳴させたミラーガールは、力強く修司に訴えた。
「今、ここにいるのは……二次元・三次元連合軍よ! ……修司、貴方が夢見た……垣根のない結束!」
今この戦場に居る自分の味方たちは、二次元人・三次元人の猛者たちを含めた、種族の垣根を超えた、かつて修司が夢見ていた理想の結束だと唱えるミラーガール。
すると此処で、ミラーガールとの話に気を取られている修司の隙をついて、ジュピターキッドを始めとする大地の力を持つ能力者達が地に手を着けていた。
「みんな行くよ!!」
ジュピターキッドの掛け声を合図に、能力者達が手をついた大地にエネルギーを放出させると、それによって暗黒獣の周囲その四方が陥没したのだ。
「ッ!?」
突然、自分の周囲その足元の地面が陥没した現状に驚く修司。
すると、此処である人物が姿を現した。
それは大聖獣にも組み込まれていた国連軍元帥の赤犬だった。
赤犬は憤怒の表情で修司が同化している暗黒獣を睨み付けると、地面に両手を突き刺して言い放つ
「溶岩地帯」
すると赤犬の両手から真っ赤な溶岩が放流され、暗黒獣が陥没した地面のへこみへと流れ込んでいく。
凄まじい熱気を放つ溶岩が瞬く間に流れ込み、暗黒獣の周りを埋め尽くしてしまう。
すっかり暗黒獣の足下と周囲が溶岩で埋め尽くされたのを確認して、大聖獣からメタルバードを筆頭とした聖龍隊士たちが飛び出してきた。
「いくぞォ!!」
メタルバードの号令で大聖獣から飛び出す聖龍隊士達。
「風・水・氷の能力で一気に溶岩を冷やし固めろ!!」
風の能力者であるメタルバードの指示の下、彼と同じ風の能力者と、水や氷の能力者達が暗黒獣の動きを制限する溶岩を一気に冷やして固めようと狙い、溶岩を急速に冷やした。
溶岩に水を浴びせ、そこに風の能力で氷の冷気を吹きかけて急速に溶岩を冷やし固める。
三つの能力で溶岩が冷やし固められた事で、暗黒獣の周囲を取り囲む溶岩は早々に冷やし固められ、暗黒獣は完全に身動きが取れなくなる。
暗黒獣の身動きを完全に封じたのを視認したメタルバードたち溶岩を冷やした聖龍隊は、即座に大聖獣へと戻る。
メタルバードの作戦は、まずは大聖獣から赤犬を離脱させて、それからジュピターキッドたち大地の能力者達に暗黒獣を取り囲む様に地面を陥没させた後に、その陥没した地中に大量の溶岩を流し込む。それからメタルバードたち風・水・氷の能力者達が連携して溶岩を急速に冷やして固まらせて、暗黒獣の足取りを完全に止めて動きを封じ込める作戦だった。
そして大聖獣へと戻ったメタルバードたちの帰還を見届けたミラーガールは、身動きが取れなくなった暗黒獣を睨み付け、一気に聖なるエネルギーを放射した。
「喰らいやがれッ!!」
メタルバードの荒っぽい怒声が響く中、大聖獣から直射された大聖光は暗黒獣を包み込む。
「私たちも行くわよ! 全機、総攻撃!!」
聖龍隊SRMの総司令官マリネが指令を告げた瞬間、SRMの全戦艦とロボット達が暗黒獣へと総攻撃を浴びせる。
「ぐおおおおおおおおおおおお……ッ!」
大聖光、そしてSRMとの総攻撃を浴びて、暗黒獣は断末魔を上げる。
強力なエネルギー波である大聖光はそのまま暗黒獣を包み込み、その蒼き光線は空の境界線を越えて宇宙へまで一直線に直射された。
暗黒獣に大聖光のエネルギーを浴びせた大聖獣。大聖光を浴びた暗黒獣は瓦礫の山の様に変化して、ピタリとも動かなくなっていた。
「くっ……時間か……!」「総長、こっちも限界です……!」
メタルバードと村田順一が苦しそうに話し直後、大聖獣は強い光を発しながら個々へと分裂して合体していた皆々は戦場へと散らばった。
遂に大聖獣に変化している限界を通り越した為に、連合軍の猛者たちは合体が解除されて分裂してしまう。
一方で、大聖獣の最大火力の大聖光を浴びた暗黒獣は、その禍々しい全貌を崩落させて瓦礫の様な容態へと変わり果てていた。
「……あ、あれ? 俺たち、大丈夫なのか?」
大聖獣の大聖光を浴びた暗黒獣の頭上にある檻の中に囚われている真鍋義久たち二次元人たちは、先ほどの強力な攻撃を浴びていながらも無事である我が身に驚かされていた。
すると、此処で祈り続けていたチョコがフッと意識を失くしかけ、慌てて桃花とギュービッドが駆け寄る。
「ちょ、チョコ!」
ギュービッドが声をかけると、チョコは弱弱しい声で返答した。
「ぎ、ギュービッド様……」「チョコ、お前……アタイ達を守る為に無茶しやがって……」
チョコが祈りの力で檻の中の皆を守っていた事を察するギュービッドは、消耗したチョコを抱き寄せて目に涙を浮かべる。
檻の中の誰もが、チョコの祈りを称賛する中、地上では解除された大聖獣から分裂した猛者たちが瓦礫同然になった暗黒獣に目を向けていた。
「ど、どうなったんだ? 暗黒獣は? 小田原修司は……?」
多くの猛者たちが、暗黒獣と同化していた修司の現状がどうなったのか困惑している様子だった。
「あ、兄者……兄者は、結局の所どうなったのだ?」「……修司、殿……」
小田原修司の義弟である韓国将軍のサイ・チョウセイに、ミラーガールに淡い思いを抱きながら修司に感化している台湾将軍のシバ・カァチェンも困惑するばかり。
「………………」
「……な、なあ、アッコ。結局のところ、修司はどうなったんだ?」
大将が不安げにミラーガールに問い掛けるが、彼女は何も答えず、ただジッと暗黒獣を見据えるばかり。
同様にメタルバードも、お得意のテレパシーで暗黒獣と同化している修司の意識を探っていたが、修司の意識はまるで眠っているかのように探知できなかった。
誰もが暗黒獣の現状、そしてその暗黒獣に同化している修司の安否を気にしていた、まさにその時だった。
『うああああああああああああああああああああ……っ!!』
突如として戦場に鳴り響く絶叫に、ミラーガールたち一同は驚愕した。
その絶叫の元は、未だに消えない檻の中に囚われている新世代型二次元人達からだった。
「こ、琴浦さん!? みんな?」
「ま、真鍋! 他の奴らもどうしたんだよ!?」
チョコとギュービッドが、親友である琴浦春香や真鍋義久たち新世代型の急変に戸惑いを隠せない。
苦しみ出す新世代型二次元人たちの急変に、誰もが戸惑っていると、彼らの苦しみの根源を探ろうとメタルバードがテレパシーで新世代型の意識を探り始めるのだが。
「うおッ!?」
なんと新世代型の意識を覗こうとしたメタルバードまでも、苦しみ出した。
「ば、バーンズ?」
突然、新世代型と同様に苦しみ出すメタルバードを目前に戸惑うミラーガールたち。
するとそんなメタルバードが感じている新世代型の激痛に感化されたのか、メタルバードのテレパシーが一時的に暴走し、ミラーガールたち周囲の者たち全員にも新世代型の激痛と彼らの脳裏に浮かんでいるイメージ映像が流れ込んできた。
謎の激痛に襲われて絶叫していた新世代型二次元人たちは、激痛と共に暗黒獣と同化している修司の現況を味わっていたのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお……ッ!!」
なんと修司本人も、暗黒獣の体内ですさまじい激痛に襲われ、苦しんでいた。その激痛が共有感知を通して新世代型二次元人たちにも伝わり、その新世代型の激痛がメタルバードのテレパシーを介してミラーガールたちに伝わってしまってた。
そんな崩壊した暗黒獣の体内で激痛に襲われる修司の思想までも、新世代型やメタルバードたちに伝わってきた。
激痛に苛まれる修司は、その苦痛の中でかつての思い出を思い返していた。
セーラームーンたち、美少女戦士との思い出。
キューティーハニーこと如月ハニーとの思い出。
ナースエンジェルこと森谷りりかとの思い出。
カードキャプターこと木之元桜との思い出。
コレクターズこと春日結/如月春菜/篠崎愛との思い出。
魔法騎士である獅堂光/龍咲海/鳳凰寺風との思い出。
最終兵器だったちせとの思い出。
そしてバーンズ、ジュニア、アプリコットに……想い人、アッコとの思い出。
それぞれの思い出が、写真を破る様にバラバラに散っていき、それと同時に修司は全身の腕や足が引き千切られる様な激痛に襲われていた。
だが修司は、ある一つの思いから辛うじて自我を保っていた。
(あ…………アッコ………………!)
修司は今でも尚、ミラーガールこと加賀美あつこを強く想っていた。
自分の理想に共感し、共にその理想を追求し、共にその夢を叶える為に共闘してくれた、変身魔法少女の始祖たる乙女。
修司は、そんなアッコを思い続け、彼女に悲痛な想いをしてほしくないと、裏で様々な暗躍に手を染めていった。
聖龍隊の、二次元人全員の為に、血で血を争う暗躍を続けていた修司の実情は、全てたった一人の二次元人の少女だった乙女の為であった。
愛情や優しさを感じられない欠けた心を持つ自分を、愛してくれる女性の為に、修司は自らの手を汚してた。
この大戦を引き起こした背景にも、彼女や彼女と同じ二次元人によって、美しく生まれ変われると思ってた世界が、自身の穢れた遺伝子と心を受け継いだクローンの存在が世界を穢してしまうと知った上で、クローンとそのクローンを生み出した世界への報復処置として世界へ戦いを挑んだのだ。
女が笑顔になれる世界を、彼女の絶えない優しさと愛情が消えない世界を望んでた修司は、自身のクローンで自然の生態系が崩れると同時に世界そのものが穢れると思い立った。
全ては、一人の二次元人の始祖である加賀美あつこの為に行っていた自責と贖罪での行動だったのだ。
アッコを想い続け、故に世界を美しいものへと変えようとしていた修司は、最後にその世界に裏切られ、その世界が生み出した自身のクローンである新世代型の存在を激しく恨んだ。
そんな修司は暗黒獣の中で、吸収し続けた新世代型二次元人たちの生体エネルギーを吸収した後遺症として激しい苦痛に襲われていた。
手足が、そして身体が引き千切られる激痛に全身が襲われる中、修司の記憶の中でかつて少女だった頃のアッコの優しい言葉を思い出していた。
(修司、頑張って。私は、ずっと応援してるからね)
夢を、理想を追い求め続けるかつての自分に声援をかけてくれるアッコの言葉を思い返し、暗黒獣の体内で苦しむ修司は奮い立たされた。
(アッコ…………!!)
全ては自身が愛した女性の笑顔が、穢れなき心を持っていた少女の為に起こした数々の戦いという名の歴史。
その血で汚れ切った歴史を全て白紙に戻す為にも、奮い立った修司は暗黒獣の体内で激痛に耐え忍んだ。
そして十数分は経った頃、新世代型そしてメタルバードを経由して伝わってきた小田原修司の激痛は途端に消えた。
「ど、どうしたんだ? 修司の痛みも、イメージも……全て途絶えた」
メタルバードは新世代型達へ共感されてた激痛も、彼らを通じて伝わってきた修司の思想も途絶えた事態に戸惑った。
戦場に立っている多くの猛者たちも、崩壊した暗黒獣の頭上での檻に囚われている多くの二次元人達も、突然の事態に戸惑い続けてた。
すると、崩落した暗黒獣の肉体。その大きな亀裂の中から、一体の人影が現れた。
「……時は、満ちた……」その声は紛れもなく小田原修司のものだった。
修司の声を聞き慣れている聖龍隊も国連軍も、そして檻の中の新世代型達も、崩壊した暗黒獣の亀裂から出現した人影に注目した。
瓦礫と化して、崩落した暗黒獣の体内から現れた修司の姿を見て、誰もが絶句した。
何故なら、修司の上半身は衣服など無く、下半身は黒い短ズボンの様な衣服を巻いている様な身形であった。が、それ以上に修司の皮膚全体が白く変色し、しかも全身ひび割れた様な歪な皮膚質。そして頭髪も同じく白く変色し、頭の額からは二本の小さな角が生えており、両肩の後ろ側には揺らめく焔が靡いていた。
その異様な姿をした修司を見て、誰もが真っ先に鬼を連想した。
異様な姿に変化した修司を見て、愕然としながらもメタルバードが強く呟いた。
「アイツはもう、今までの修司じゃねェ……!」
「どういう事だ……!?」
メタルバードの発言に大将が訊ねると、メタルバードは血相を変えて返答した。
「アイツはずっと……暗黒獣の中で最初から、ずっとこれになるまで耐え忍んできただけだ!」
新世代型の生体エネルギーを吸収し続けていた修司は、この時まで耐え忍んでいただけに過ぎなかったと説くメタルバードは更に説き続けた。
「おそらく修司は、暗黒獣の体内で自分のクローンにもあたる新世代型の生体エネルギーを吸収して、己の一部にしたんだ!」
そう説くメタルバードに彼と同じく血相を変える聖龍HEADの様子を見た大将は、彼女達に問い詰める。
「……なんだって……!? お前らの言ってる事が正しければ……修司の奴は……!」
「今の修司は……」
大将からの問い掛けに、メタルバードは激しく動揺した顔で言い放った。
「完全な…………新世代型の始祖、そのものだ!!」
新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して、激痛に耐えながら完全に同化させた小田原修司。
人でも何者でもない、唯一無二の存在に成り得てしまった修司は、暗黒獣の体内から姿を現して皆の前にその全貌を晒すと呟いた。
「もう俺は、人である小田原修司でもなければ、鬼神という人間兵器でもない……純粋なる、破滅そのもの」
人でもなく、鬼神でもない、純粋な破滅という存在。
そんな存在に成り果てた小田原修司と、彼を取り巻く人々との戦いはまだ終わらない。