聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 破滅の章7 純粋なる破滅

[破滅、生誕]

 

 小田原修司は己のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収し、暗黒獣を生成して連合軍を追い詰める。

 だが、ミラーガールは己の聖なる力を連合軍の猛者たちに分け与える事で、皆と同等に結束力を高めて暗黒獣に対抗できる大聖獣を生成した。

 小田原修司の意思で活動する暗黒獣とミラーガールたち連合軍の意思で活動する大聖獣。二つの巨大な勢力は熾烈を極めた。

 しかし暗黒獣は、新世代型二次元人が目覚めた共有感知と繋がっている為に、その巨体が受けた痛感が新世代型達にも伝わってしまう為に戦況は難航した。

 と、その時。そんな新世代型二次元人達と共に檻の中に閉じ込められているプロト世代の二次元人、黒鳥千代子ことチョコに変化が。

 なんとチョコの体からミラーガールと同じ聖なる蒼き光が発せられ、その光によって新世代型達に共有される痛感が殆ど感じる事無く緩和されたのだ。

 チョコは、ミラーガールこと加賀美あつこと同じく、異世界の存在と知り得た故に魔法などの特殊な能力を得られた、まさしく魔法少女の伝承者たる存在であり、友である新世代型達を想う余りに真摯に祈った事でミラーガールと同等の聖なる力に目覚めたのだ。

 そんなチョコの祈りの効力もあって、大聖獣は暗黒獣に躊躇う事なく果敢に攻め続ける。

 そして遂に大聖獣は、暗黒獣に大打撃を与える事ができ、暗黒獣を完膚なきまでに倒した。

 倒された暗黒獣は瓦礫の山の如く崩壊し、最終的には駆逐した暗黒獣の体内から小田原修司を引きずり出して囚われの二次元人達を捕らえている檻を解除させた上で降伏させれば勝負は終わる筈だった。

 だがその時、異変が起きた。

 暗黒獣の体内に潜んでいる修司は全身を引き千切られる様な激痛に襲われ、その激痛が共有感知を通して新世代型二次元人にも伝わった。

 更に修司の思想も、新世代型そしてメタルバードのテレパシーを介して戦場の誰しもに伝わった。

 修司は、この大戦を引き起こした真理の裏側では、今なお意中の人でもあるアッコを想い続けていた。

 愛する女性が笑顔で、健全でいてくれる世界を望み続けた結果、心が欠けている穢れた自分のクローンで埋め尽くされる世界に幻滅した修司は、そのクローンとクローンを生み出した世界に報復する為、この大戦を引き起こした。

 そんな修司の実情を全員が周知した直後、崩落した暗黒獣の体内から修司が出てきた。

 だが、その修司は今までの修司ではなかった。全身がひび割れた白い肌に白い頭髪に変化しており、額には小さな角が二本、そして背中には揺らめく焔が靡いていた。

 完全に異人であれば、まるで鬼の様な修司の一変した容姿を見て誰もが愕然とする。

 修司は自分のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収し、それを己の一部として取り込んだ為に激痛に襲われたのだが、その後エネルギーを体に取り込んだ事で完全完璧な新世代型二次元人の始祖として生まれ変わったのだった。

 完全な新世代型二次元人の始祖として生誕した小田原修司は、何処か異様な雰囲気を発しながら眼前の連合軍に申し開いた。

 

「もう俺は、人である小田原修司でもなければ、鬼神という人間兵器でもない……純粋なる、破滅そのもの」

 

 一人の愛する女性が幸せになれる世界を望んだ男は、己の遺伝子という血を受け継いだ忌まわしきクローンで埋め尽くされる世界に絶望し、いま全てを終わらせようとしていた。

 全身が白く、ひび割れた様な異質な皮膚に真っ白になった頭髪、そして二本の小さな角に背中には虚無の感情を表す様な二つの焔が揺らいでいる修司。

 そんな完全に新世代型二次元人の始祖として生まれ変わった小田原修司は、大地を軽く蹴るとそのまま浮き上がる様にふわりと跳躍し、風貌を一変させた修司に戸惑いを隠せないミラーガールたちの前に降り立った。

「……修司……なの?」

 ミラーガールは恐る恐る訊ねると、修司は平然と返答した。

「そうだ、アッコ。俺は既に、過去に世界を変えたいが為に強さを求めていた弱き小田原修司でもなければ、国連という後ろ盾を得たいが為に人間兵器として己を売り下げた……そう、かつて殺戮陽動プログラムという催眠暗示で残忍な殺戮を行った被験者でもない。正真正銘、完全な無という……全てを真っ白で静寂な桃源郷に導く、忌まわしき己のクローンである新世代型二次元人の始祖そのものだ」

 修司の返答を聞いて、ミラーガールたちは唖然とするしかなかった。

「新世代型の始祖、だと……? おい、修司……始祖になったって、どういう事だ?」

 変わり果てた修司を前にして、赤塚組の頭領である大将は激しく動揺しながら問い詰めると、修司は微塵も動じる事無く返した。

「見ての通りだ。俺は、俺自身がまき散らしてしまった負の連鎖の象徴でもある俺自身を……俺のクローンの忌まわしきエネルギーを吸収して、こいつ等の始祖として生まれ変わったんだ」

「な、何の為に……何のために、そんな風に……!」

 平然と答え返す修司に大将はすかさず訊き返すと、修司は大将たち動揺している者たち全員に語り明かした。

「大将、そして多くの無知なる者よ。俺は以前にも、こう説いた事がある……「終わりは始まりであり、始まりは終わりである」と……物事の終わりは、同時に何かの始まりである。俺は、二次元人の始祖であるアッコから始まった二次元人の系譜、そして破壊と破滅という俺の穢れた遺伝子を受け継いだクローンたる新世代型二次元人……魔法少女や能力者の始祖であるアッコが始まりなら、新世代型二次元人の始祖である俺がその全てを無にした上で全てを終わらせなければならない。全ての能力者の、力の起源であるアッコという危険も秘めた無限の可能性を終わらせられるのは、全てを終わりにできる俺という破滅しかないんだよ」

「全てを終わらせる為に、アッコを……俺たち二次元人の始祖の一人だっていうアッコを殺して、この世界そのものを終わらせようって魂胆なのか!?」

「そうだ大将。全てを終わらせ、世界を混沌にしてしまった俺の役目は……もう、それしかないんだ。全ての力という可能性の根源を、全てを終わらせられる俺が終わらせない限り……この世界は混沌の果ての末、最悪の結末を迎えてしまう」

 全ての能力の起源でもあるアッコを殺めて、混沌と化したこの世界を浄化し、世界を真っ白に塗り替えて全てを終わらせなければと唱える修司の発言に、大将はもちろん他の一同も愕然とした。

「混沌の世界を真っ白になるまでリセットする為に……アッコさんを、ミラーガールを殺す為に、俺達の力を利用したってのかよ!」

 修司の話を聞いて、新世代型の真鍋義久たちが異議を唱えるが、そんな新世代型達に修司は冷淡と吐き返した。

「利用したのではない、返してもらっただけだ。新世代型よ、お前達の能力はもちろん存在意義すらも、全ては俺の複製……コピーでしか過ぎないのだよ。所詮はまやかしの関係に能力、そんなモノなど利用するにも烏滸がましいが、利用してもらえただけでも有難く思え。世界に利用されるだけの存在を、能力を俺が世界を清める為に有効活用しているんだからな」

 修司の悪気のない発言に、新世代型達は全員怒りで修司を睨み付け、凝視した。

「ふ……ふざけんじゃねえ! アタイ達は確かに……確かにアンタのクローンなのかもしれねぇ! けどな、アタイ達の能力、そして関係までもマヤカシだっていうのは取り消しやがれ!!」

「流子の言う通りだ……! 小田原修司よ! 貴殿の言う通り、我々は其方のクローンであるのは事実だ。だが! 私たちの存在意義までも偽りだと言う貴殿の思考は真っ向から否定させてもらう!!」

 纏流子と鬼龍院皐月の姉妹の凄まじい反論に、側の新世代型同士も同意見であったが、そんな姉妹の訴えですら修司は冷たくあしらった。

「流子……お前や皐月だけじゃない。お前たち全員が俺の血で呪われているんだ」

「呪われているだと!?」修司の発言に流子は再度吠える。

 すると修司は昂った感情に囚われている新世代型達に告げた。

「お前達はいずれ、今の俺の様に道を踏み外す……全員が、俺の様に歪な心を持ち、この様な異形の姿へと進化を遂げて世界を終焉へと迎えるだろう……」

「俺達も……俺達も、アンタの様に変わっちまうって事か!?」

 修司の言葉に真鍋義久が問い詰めると、修司は淡々と返すばかりだった。

「そうだ、いづれお前らも俺の様な鬼に……今の様な世界を終焉させるだけの異形の姿へと進化を遂げるだろう。今の俺の姿は、未来のお前ら新世代型二次元人の進化した姿そのものだ」

 自身のクローンである新世代型二次元人もまた、そう遠くない未来で今の様な鬼の様な異形の姿へと進化を遂げ、世界を終焉させるだろうと説く修司。そんな修司の説明に新世代型達は言葉を失った。

「生命の進化の道行きは誰にも止められない……二次元人もそれは同じ。進化という争いの中で、己を変えて成長し続け、その果てには希望か絶望のどちらかの未来しか待ち受けていない。そんな無限の可能性を、いや負の連鎖を俺は断ち切るんだ」

 修司の説明を聞いて、愕然と言葉を失くす新世代型達。

 すると話を黙って聞き入れていたミラーガールが、強く修司に唱えた。

「例えこの子達の血が呪われていようとも……誰にも未来を奪う権利は無いわ!」

 新世代型二次元人の遺伝子が呪われた小田原修司のモノであったとしても、誰にも新世代型の未来を奪う権利はないと説くミラーガール。

 そんなミラーガールに修司は説き返した。

「……アッコ……お前は所詮、人々の理想の結晶。そんなお前に俺は心底惚れていた。が……もはや理想は人々を破滅にしか誘わない思想だ」

「………………」

「全てを終わらせる……その為に俺はアッコ、お前と同じ始祖という立場に立って、同じ立場のお前を倒すんだ……!」

 互いに対峙する修司とミラーガールの両名。

「人類の進歩もまた、進化と同じだ。多くの犠牲を払い、多くの命を奪いながら得た発展だ。その負の連鎖を未来にまで持ち込む必要性など皆無だ。だから俺が終わらせる……無限の可能性を持つ二次元人の系譜も、俺という破滅しか誘わない新世代型という忌まわしき負の連鎖も……全てな!」

 

 新世代型二次元人の始祖として、純粋な破滅として進化した小田原修司。

 そんな修司は相変わらず、虚無の表情で顔を固めて語り尽くすばかり。

 果たして修司は、純粋な破滅として進化して何を連合軍に、そして新世代型達に齎すのであろうか。

 

 

 

[絶望の始まり]

 

 人類の発展、そして生命の進化を続ける知的生命体である人間の行く末を思い、進化という争いを続ける人類の未来を潰す事こそ、本当の意味で未来を救済する唯一の方法だと説く小田原修司。

 愛する女性を、心が欠けたバケモノ同然の自分を愛してくれた二次元人の始祖の一人であるアッコの為にも、全てを終焉に向かわせ、全てを破滅に誘って世界も未来も真っ白な桃源郷にする修司。

 アッコは修司と出会い、異端の変身ヒロインであるミラーガールへと変身するまでに至り、それによって二次元界のパワーバランスが狂ってしまった経緯から、彼女の苦しみを拭う為にも誰よりも早く彼女を殺めようとする修司。

 人々の理想の結晶ともいえるアッコ。だが理想は既に人々を破滅に誘うしかない思想だと説く修司は、無限の可能性を秘めたミラーガールの可能性を終わらす為、全てを終わりにする破滅の力を持つ自分自身の手によって、全てを終わらすと決意していた。

 そんな修司は遂に、存在そのものが世界を混沌に誘い、世界を穢す存在と忌み嫌っている新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収した事で、全身白色が目立つ鬼人の様な容姿の、純粋な破滅として生まれ変わった。

 そして変わり果てた修司を前に、愕然と途方に暮れているミラーガールを始めとした連合軍に、自分達の生体エネルギーを利用された事で容姿が一変した修司に驚愕する新世代型二次元人たち。

 修司は、そんな愕然と、そして戸惑いを隠せない一同を前に、黒武士の仮面が剥がされた時から変わる事のない虚無の表情で皆に問い掛けた。

「これで終わり…………などと勘違いしてないだろうな?」

 修司の一言に一瞬で我に返るミラーガールたち。そんな一同を前に、修司は右手を前方斜め上へと差し向けると強く唱えた。

「お前達に改めて教え込まないとな…………絶望を!」

 すると次の瞬間、修司の天高い真上の上空に突如として無数の巨大で鋭利な武器の数々が出現したのだ。

「またアタイの片太刀バサミを……!」

「ボクらが使う武器までも……!」

「あ、あれは……俺達のLBXが使えるランサー(槍)……!?」

 自分たちが使っていた武器や能力、そして操作するLBXに装備できる武器と同形の黒い物体が上空に無数に現れた事で、纏流子や一ノ瀬はじめ、そして瀬名アラタ達が騒然とする。

 全員が上空の巨大な武器の数々に目を奪われていると、修司は手を揺れ動かし、上空の武器を操り始める。

 そして修司が操作する無数の武器は、速度を上げながら一方向へと直進。

 無数の武器が向かう先、そこは暗黒獣との戦いから大聖獣を陰ながら支援攻撃を受け持っていた聖龍ロボットメンバーズ、通称SRMのスパロボ達へと飛来していた。

「ま、まさか……! アレ全部、私たちの方に!?」

「修司の奴、ついに俺たちを潰す気か……!!」

 卯都木命と獅子王凱は、自分達の方に飛来する数多の巨大な武器を視認して愕然とする。

「く、来るぞ! 全員、退避するんだ……」「もう遅い」

 兜甲児が仲間全員に退避する様に呼びかけるが、その直前修司が一言発する。

 修司の発言通り、SRMの面々その巨大ロボットや艦隊の数々に鋭利な武器の数々が降り注ぎ、鋼のボディや甲板を持つ巨大ロボや戦艦に容赦なく突き刺さっていく。

 鋼鉄のボディに無慈悲に突き刺さる漆黒の武器の数々。その圧倒的な数の猛威に、SRMは瞬く間に身動きできなくなってしまう。

「ぐはっ」

 中には不運にも操縦席に武器が突き刺さり、身体を損傷してしまうパイロットも続出した。

「みんなっ!」

 悲痛な声でミラーガールが攻撃を受けるSRMの仲間達に呼びかける。

 しかし全てのロボットに戦艦が機能停止してしまう現状で、スパロボのパイロット達がミラーガールを含めた地上の同士たちに最後の通信連絡を入れた。

「うぅ……どうやら、俺達は此処までの様だ……!」

「せっかくミラーガールが……そして檻の中のチョコちゃんが頑張ってくれていたっていうのに……!」

「残念だぜ……! ちょっと、本気出した小田原修司とこれから一戦交えられると思ってたんだがな……!!」

 鋼鉄ジーグに旋風寺舞人、そして流竜馬が惜しくも此処までだと悔しそうに語る。

「ミラーガール、そして大勢の同志たちよ! どうか俺たちが死んだ後も、最後まで諦めないでくれ!」

「修司さんを……前総長の苦しみと悲しみを拭い、この戦いを終わらせてくれ!」

「私たちの戦いは此処までだけど……けど、最後まで希望を捨てないで!」

「修司くんを最後まで止められなかったのは心残りだが……最後は、君たち自身の手で未来を守り抜いてくれ!」

 ジロン・アモス、レントン・サーストン、タカヤ・ノリコ、ロジャー・スミスも遺言の様に地上の同士だけでなく檻の中に囚われたままの新世代型達にも言い残す。

「纏流子、同じガイナックスファミリーとして……お前達をもっと……知りたかったよ」

「し、シモン、さん……!」

 シモンの遺言を聞いて、纏流子たち【キルラキル】の面々は思わず泣きそうになってしまう。

「LBXプレイヤーの諸君、そして【彗星のガルガンティア】に【革命機ヴァルヴレイヴ】の者たちよ……君たちも、こんな戦いや混乱がなければ普通に我々SRMのメンバーに入れたと思うのだが……勿体ない、君達の様な若かりし勇士を仲間として受け入れては共に同じ時の中で過ごしたかったよ」

「アイザック・ゴドノフ……!!」

 アイザック・ゴドノフの最後の言葉を聞いて、自分たち世間から異端者として見られる新世代型をも仲間として引き入れたかったと告げられてレドの感情は激しく揺さ振られた。

「みんな無事に生きれてたら、君たちに本物のガンダムを見せてあげたかったけど、無理みたいだね……」

「残念だけど、俺たちは此処までだ。君達が無事に生き残る事を願っているよ」

「キラさん……アスランさん……!」

 キラ・カガリにアスラン・ザラの二人からの遺言に、イオリ・セイたち【ガンダムビルドファイターズ】の面々は瞳に涙を浮かべ、遂には大粒の涙を零し始める。

 SRMの面々が思い思いに遺言を言い残していく中、SRMを総括しているマリネが、かつて同じマフィアファミリーで同居していたガイア・スコーピオンを含む地上の面々に語り掛けた。

「私たちの戦いは、確かに此処で終わりです。ですが、私たち鋼の勇者たちが死んだ後も、その意志を継いで新たな勇者が立ち上がる事となるでしょう。修司さん! あなたがいくら未来を否定しようとも、未来を思い創造する人の知恵と勇気そして意志を消す事は不可能なんです! 残された同志たち、そしてガイア……どうかこの、悲しみしかない戦いを一刻も早く終わらせて、世界を……そして修司さんに安寧を与えてちょうだい……!」

「マリネのねえちゃん……!」

 姉貴分であったマリネの遺言を聞いて、ガイア・スコーピオンは心中重かった。

 そしてSRMの面々が思い思いに最後の報告連絡として遺言を言い残した直後、SRMの機体や艦隊に突き刺さっていた武器は突如として大爆発を起こす。

 その爆発の爆炎に巻き込まれて、SRMの機体や戦艦は炎に包まれ、爆発・炎上して跡形もなく吹き飛んでしまった。

 SRMが待機していた戦場には、彼らの愛機や戦艦の残骸だけが虚しそうにいくつか残っているだけだった。

 

「これで連合で最大の戦力は潰した。戦闘では基本中の基本だがな……」

 敵方の最大の戦力を潰して、相手の戦力を大幅に消滅させるのは戦闘での基本だと説く修司。

 かつては仲間だったSRMの面々を跡形もなく吹き飛ばし、全滅させた事に全く感情が揺らぐ様子も見られなかった。

 地上の面々が、修司が眉一つ動かさずにSRMを全滅させた顛末に激情していると、修司は更に冷淡にも戦力を潰す行為を緩めなかった。

「これで終わりではない……まだお前達には学び直してもらわなければならない。目の前で大事なものを失う、いや奪われると言う……本当の意味での絶望をな」

 すると修司は再び右手を真上に上げて、上空に無数の武器を通常サイズで出現させると、手を振り下げてミラーガールたち地上の連合軍相手に武器を降らせた。

「こ、こっちにも来たぞ!」

 国連の上官兵が動揺しながら叫ぶ中、聖龍隊は防御系の魔法や術で降り注いでくる武器を防ごうとするのだが。

「そんな!」「魔術が……発動しない?」

 ティオに大海恵たちは、自分達の防御系の能力や術が使えなくなっている現状に驚き戸惑ってしまう。

 そんな動揺している地上の面々に、修司は上から目線で告げる。

「今や、この戦場は俺の領域、テリトリーだ……俺の全てを無力化する闇の能力が作用して、お前達の特殊能力は制限されているぞ」

 修司の冷淡な発言に動揺する暇もなく、無数の武器は連合軍の猛者たちに降り注ぐ。

 無数の鋭利な武器、片太刀バサミや文房具そしてランサーなど様々な形状の武器が地上の猛者たちを襲う。

『うわあああぁぁ……!!』

 猛者達は、只々逃げ惑うしかできず、全員が一斉に後方へと退避した。

「ぎゃあああっ!」

 遂に漆黒の武器が聖龍隊士や国連軍兵士に突き刺さり、その命を奪う。

「っ! なんとか、あの武器を弾き返すなりなんなりしねェと、全滅するぞ!」

 退避する途中で、黒崎一護は振り返り、周りの仲間達に呼びかけながら態勢を立て直して己の得物で飛来してくる武器を可能な限り弾き返そうと身構える。

 ある程度の特殊能力や効力は、修司の闇の能力で制限されている現状でも、聖龍隊士を始めとするアジアの武将たちは諦めずに飛んで来る武器を弾き返そうと試みる。

 そんな中、必死に後方へと退避しようと走り続けるウェルズに文房具状の武器が突き刺さりそうになる瞬間「隊長!」と、白井渚がウェルズを押し退けて代わりに攻撃を受けてしまう。

 更に逃げ遅れた多くの聖龍隊士や国連軍兵士が犠牲になっていく。

 そんな修司の無慈悲な攻撃は、修司と最も近かった最前線のミラーガールたちHEADにも襲い掛かる。

 HEADは身軽な動きに跳躍と、素早く修司が降り注いだ武器の攻撃を回避していくが、ミラーガールの近くにいたシバ・カァチェンに武器が突き刺さりそうになるのを見て、ミラーガールが我を忘れてカァチェンの身を庇った。

 しかし長く鋭利な片太刀バサミの形状をしている武器は、このままではミラーガールの体を貫通してカァチェンにも突き刺さり、二人とも絶命する結末が見えていた。

 と、その時。「カァチェン!」と、一人の青年マン・サコンがカァチェンを庇うミラーガールの背後に飛び出て、二人に代わって突き刺さるであろう武器を我が身を盾にして受けた。

 

 全ての武器が地上に降り注ぎ、砂煙が舞い上がる中、次第にその砂煙が治まる。

 そして晴れていく砂煙が消えて、地上に広がるのは無数の体に武器が突き刺さり絶命した多くの隊士や兵士達の亡骸だった。

「み、みんな……大丈夫か!?」「おれ達は無事だ……でも……」

 村田順一が周囲の仲間達に安否を確認するが、返答したフロートが辺りを見渡して言葉を失う。

「そんな……!」

 HEADの木之元桜が周辺の現状を目の当たりにして絶句する。多くの仲間や友が、その命を失っていたのだ。

「ウソだろ……!」

 メタルバードや大将は、自分達の目前に広がる惨状に我が目を疑った。

 多くの同士が体に武器が突き刺さり、絶命または風前の灯火状態だった。

「そ、そんな……! お前たち……」「う……ウェルズ、さん……」「大、丈夫……ですか……」

 ウェルズは自分や他の仲間達を庇って、代わりに攻撃を受けて瀕死の重傷を負った白井渚や浜崎雅弘たちを目の当たりにし、愕然とする。

「ウソでしょ……! 浜崎さん!!」「渚! そんな、こんなのって……!」

 虫の息の二人を視認して、聖龍HEADの洞院リナと宝生波音が血相を変えて駆け寄る。

「急いで負傷者の治療を! 早く!!」

 聖龍隊看護総長である宇崎星夜が大声で負傷者の治療をする為、近辺の医療班に声をかける。

 が、既に腹部に鋭利な武器が突き刺さり、内臓を多大に損傷している患者の治療は困難を極めた。

「ナースエンジェル! お願いだ、仲間を助けてくれ……!」

「こっちもお願いだ!」

「ナースエンジェルでなくてもいい、治癒能力があるHEADは早く治してやってくれ!」

 重傷を負った同志達を想い、運よく攻撃を免れた隊士達がナースエンジェルを始めとする聖龍HEADに救いを求める。

 この緊急事態にナースエンジェルやセーラームーンそしてキューティーハニー達は急ぎ負傷者の手当てをしようと試みようとする。

 が、しかし。

「……そんな……ヒーリング能力が発動しない……!?」

「な、なんだって……!?」

 ナースエンジェルの発言に、星夜は愕然とした。

 そしてそれは他の聖龍HEADや治癒能力を持つ聖龍隊士も同じ状況だった。

「能力が使えない……なんで?」

 セーラームーンは涙目で目の前の仲間が助けられない状況に絶望する。

 一方で、飛来する武器に直撃しそうになったミラーガールとシバ・カァチェンの二人を庇ったマン・サコンも、まだ息はあったが瀕死寸前だった。

「さ、サコン……!」「サコン……何ゆえ?」

 自分達を庇い、我が身を犠牲にして盾になったサコンを目前にミラーガールとカァチェンは蒼然とする。

 苦しそうに悶えるサコンに貫く武器、その怪我を治そうとミラーガールも自身の治癒能力でサコンを治療しようとした。

 しかしミラーガールの治癒能力も、他の隊士同様に使用できない状態だった。

「なんで? なんで能力が使えないの……!」

 必死の形相でサコンを含む周囲の負傷者たちを治療しようと能力を発動させようとするミラーガールは、仲間達を治療できないもどかしさに軽く混乱していた。

「医療班!」

 カァチェンが負傷したサコンを救おうと、医療班に声をかけ治療をして貰おうとすると其処に「無駄だ」と、冷徹な言葉が飛んできた。

 その言葉をカァチェンたち現状に絶望する者たちに投げ掛けたのは、他でもない修司だった。

「無駄だ。さっきも言った筈だ。既に今……この戦場は俺の領域として、俺の能力を無力化する闇が覆い尽くしている。仲間を守れる防御系の能力や技も、瀕死の仲間を救える治癒能力も、全て意味を成さない」

 なんと修司の闇の能力が戦場を覆い尽くしている為に、治癒能力も使えない状況に陥っているのだという。

 そんな絶望的現状を聞いて、大将が修司に怒号を飛ばした。

「修司!! こんなのって……こんな、お前の仲間だった連中が大勢死んだんだぞ! お前は……お前は、なんとも思わないのかよ!!」

 大将の怒号が戦場に響き渡る中、修司は素っ気ない返答を返した。

「さっきから言っているだろう……俺には、もう完全に二次元人から与えられた仮初めの、心というモノは存在しない。そんな俺には、かつて仲間だった連中の死など……何も響かない」

「……!!」

 修司からの返答に、大将は表情を一変させた。

 

 

 

[絶望の中から]

 

 戦場に多くの命が散り、その死に多くの者が嘆いた。

 救える筈の命を救えない絶望に襲われ、多くの者が嘆きの涙を流した。

 洞院リナも宝生波音も、今や完全に冷たくなった浜崎雅弘と白井渚の亡骸を抱き寄せて黙然と静かに涙を流す。

 誰もが絶望に打ちひしがれる中、カァチェンは虫の息であるサコンに問い掛ける。

「サコン……何ゆえ、何ゆえ……私と加賀美殿を庇って……?」

「………………」

「加賀美殿はともかく……こんな私を……心が欠けている私なんかを守って、一体何の意味があると言うんですか!?」

 必死に問い詰めるカァチェンの問いに、サコンは薄れゆく意識の中、返事した。

「いや、いいんだカァチェン……俺は此処で死んでも……」

「だから、なんで……!」

「カァチェン、俺は……いや、俺たちは……仲間であるお前の為なら、こうして命を投げ出す。お前の命は……一つじゃ、ねェ……」

 カァチェンにそう説いたマン・サコンは、そうカァチェンに話すと静かに瞼を閉じて眠る様に息を引き取った。

 目の前でサコンを、大勢の同士や仲間を失った絶望に苛まれるカァチェン達を、同じ大地に立って同じ視点で見詰める修司が問い掛ける。

「仲間は殺させないんじゃなかったのか? アッコ、カァチェン……!」

 ミラーガールとカァチェンに唱えていた理念について問い掛ける修司の言葉に、二人は返す言葉が最初は見つからなかった。そんな二人に、そして絶望する猛者たちに修司は更に唱える。

「これからはコレが続く。お前達の軽い言葉も、理念も思いやりも、全て偽りになる」

 自分に抗う者の理念や思いやり、そして信念が決意が満ちた言葉も全てが罷り通らない現実が続くと唱える修司は、戦場の皆々に問う。

「なあ……この現実に何がある? 現実に留まる必要がどこにある?」

 共に戦う仲間を、大切な友を、そして同じ時を生きてきた者たちが虚しく死んでいくだけの現実を守る理由が何処にあるのかと問う修司。

 突き付けられる現実に絶望するミラーガールとカァチェン達。そんなカァチェンに修司が手を差し伸べる。

「カァチェン、お前はまだ間に合う……! お前は元々、俺の側の人間だ。いい加減、叶いもしない夢や理想を捨てて……こっちに来い」

「………………」

「帰ってこい、カァチェン……もう、醜い現実の中でもがき苦しむ必要はないんだ。全て俺が、真っ白な桃源郷に導き……全てに安寧を与えよう」

 修司からの誘いを受けて、カァチェンの心は揺れ動いた。

 元々、カァチェンも修司と同様に欠けた心を持つ発達障害者。そんな自分に真実の愛が知れる未来が来るのを夢見ていたが、自分と同じ障害を持つ小田原修司の現状に、友になれたマン・サコンや大勢の仲間との死別。そんな空虚な現実だけがカァチェンの空っぽの心に虚しくポツンと残った。

 そしてカァチェンは一瞬、修司が語る虚しい現実に直面した事で心が揺さぶられ、修司の誘いに、差し出した手に己の手を伸ばし始めた。

 カァチェンが自分が思い描いていた夢と理想を打ち破られ、絶望に浸り、修司に言われるがままに手を伸ばそうとした、その瞬間。

 そんな気弱になっているカァチェンの頬を、隣にいたミラーガールが軽く平手打ちした。

 ミラーガールに平手打ちされて、唖然とするカァチェンにミラーガールは力強い面魂で訴えた。

「逃げじゃダメ……!」

 ミラーガールの鏡の様に美しい瞳に映る、弱気になっている自分自身を直視して茫然としているカァチェン。そんな彼にミラーガールは優しく唱える。

「さっき、サコンが言った事、忘れたの? カァチェンの命は一つじゃないって……その意味、分かる?」

 命は一つではない。先ほど死ぬ前にサコンが言い残した言葉をカァチェンに思い返させるミラーガールは更に唱え続ける。

「仲間は絶対に死なせない……その言葉も信念も、偽りじゃない……! それを胸にちゃんとやってのけたのよ……サコンも、他のみんなも……!」

 そうミラーガールに唱えられ、カァチェンは戦死した仲間達の屍を見渡して我に返る。

 多くの戦死した仲間達は、他の仲間達を庇い、そして思いやったからこそ修司の攻撃を一身に受けて絶命したという事実を。

「みんながそうやって、その言葉……思いと同じものを胸に、お互いを繋ぎ合っている。だから……仲間と言えるの」

 誰かを想い、誰かの為に我が身を削り、そして命を散らせるからこそ仲間なのだと説くミラーガールの言葉に耳を傾けるカァチェン。

「その言葉と思いをみんなが諦め、捨ててしまったら……死んでいった、みんながした事も無駄になる。それこそ本当に仲間を殺す事になる」

 死んでいった仲間達の思いを受け取らず、諦めて全てを捨てれば、それこそ犠牲になった仲間達の必死の行動も無駄になる。仲間達の行為を無駄にする事は、それこそ必死の思いで死んでいった仲間達を本当の意味で殺す事だと説くミラーガール。

 そうカァチェンに説いたミラーガールは立ち上がり、カァチェンを見詰めながら彼に手を差し伸べて唱えた。

「カァチェン、一緒に立ちましょう。自分の信念を貫き通す……その気高い思いが、今を……現実を変えれる、強い心なの!」

 新年を貫き通す気高き意思こそ、現実を変えれる強い心だと訴えるミラーガールの力強い眼差しを受けて、カァチェンの暗く閉ざされた心に再び光が差し込み、そして奮い立たされた。

「私の……私たちの命は、思いは……一つじゃない!」

 そう力強く主張して奮い立つカァチェン、そしてその隣に立つミラーガール。

 ミラーガールの漲る助言にカァチェンの決起を目の当たりにし、同じく大切な人を失って絶望する多くの猛者たちも徐に立ち上がり、前を向いた。

 そしてミラーガール、そしてカァチェンに並び立ち、修司と対峙して向き合う多くの気高き者たち。

 そんな気落ちするカァチェンに助言するミラーガール、そしてミラーガールに後押しされたカァチェンを目前に修司は静かに主張し出した。

「カァチェン……お前は、仲間の死から何も学ばない……幼稚な存在に過ぎない!」

 修司は更に空虚な面差しで唱え続ける。

「お前達は、どれだけ多くの命が……それがどんなに大切な命だろうと、失っても奪われても……結局は何も学ばない。虚しい現実から目を逸らしているだけに過ぎない幼稚な奴らだ」

 修司の主張を黙って聴き入れて、カァチェンも静かに語り返した。

「確かに大勢の同胞が死んだ……けれど……みんなは死んでも尚、私たちの中で繋がり、生きているんです……!」

 死しても尚、仲間や恋人といった大切な人の命や想いは自分達の中で繋がりという形で生きていると説くカァチェンに、修司は冷徹に反論した。

「いい事を教えてやる……その繋がりが今の俺を作った! その思いは強い呪いであり……繋がりと言う絆は、冷たく重い鎖である事を覚えておけ!!」

 実際、修司は繋がりという絆を守る為に多くの業を背負ってきた。そんな修司にとって、絆は確かに時には温もりも感じられたが、同時に重く冷たい鎖の様な重荷であった。

 しかし、そんな繋がりを重く冷たい重責だと説く修司に、カァチェンは思いの丈をぶつける様に告白した。

「私は、貴方と違って……繋がっているものを切りたくありませんし……切られたくもないんです!」

 繋がりを切って捨てるのも、誰かに断ち切られるのも望まないと訴えるカァチェン。だが修司も負けじとカァチェンに問い掛ける。

「やはりカァチェン、お前は幼稚だ……仲間の死の痛みを繋がりと語るなら、仲間を守る必要が何処にある?」

 この修司の問い掛けに、カァチェンは力強く返答した。

「そうではないのです、修司殿! 仲間との繋がり、そして喪失……それら全てがどんなに痛くとも、我慢できると言う事です!! それを……その思いを捨てたくないと言っているんです!!」

 カァチェンは胸に手を押し当てて更に修司に言い放つ。

 

「ここに仲間がいないのが……一番痛くて、辛いんです! 私は!!」

 

 心の中に仲間と呼べる存在がいないのが、一番痛く辛いと唱えるカァチェン。

 そんなカァチェンの真情には、他の同志達も同じ心境だった。

 誰もがカァチェンの言葉に奮い立たせられ、修司と対峙する。

 だが、そんなカァチェンの意気込み、そして多くの再び戦意を湧き上がらせる猛者たちを前にして修司は冷たくあしらった。

「……それで? それが……何だと言う?」

 修司の冷徹な発言に若干の動揺を見せてしまうカァチェンに、修司は冷たくも虚しそうに唱えるのだった。

「失ったモノは返らない……失ったモノは戻らない……失ったという現実は変わらない。そう、どんなに変わり続ける世界であっても……守れなかった尊いもの、失ってしまった命、全てもう取り戻せないのが虚しい現実なんだよ……!」

 そんな自分の行いを改める気配のない修司を前にし、カァチェン達はやはり力尽くでも修司を止めねばと改めて思った。

 

 カァチェンは一歩前に進み、それに共鳴したかのように修司はカァチェンと同じ瞬間に己の信条を熱く唱えた。

「「この世界は…………」」

「終わらせる……!!」

「終わらせない!」

 

 世界を破滅へと誘おうとした一人の男。男はその前に自分自身を純粋な破滅として進化させた。

 そして破滅へと転生した男は、戦場の数多の命を、かつて仲間だった命を大勢奪い、戦場を絶望で覆い尽くした。

 誰もが意気消沈する中、気高い聖女の問い掛けにより、破滅という理想を捨てた男の側に導かれそうになる青年は奮い立たされた。

 聖女の信念、そして青年の言動に大切な命を失った多くの生き延びた同士も奮い立たされる。

 

 理想を追い求め、未来に夢見ていた男。

 そんな男は全てを悲観し絶望し、失望した世界を破滅させる前に自身を破滅へと変えた。

 そして過去の仲間達の命をも多く奪い、自分が味わった絶望を他者にも味わらせようと試みる。

 しかし破滅となった男に対峙しようと、男が愛していた聖女に励まされた孤独だった青年が立ちはだかる。

 破滅と信念、二つの決意が今まさに再び衝突するのであった。

 

 

 

[破滅の実力]

 

 全てを無にする為に過去と決別した男、小田原修司。

 未来を夢見て、死した友や仲間達の思いを背負い戦いに挑む青年、シバ・カァチェン。

 過去に絶望した二人は、今やそれぞれ全く違う信念のもと対峙する。

 

 大勢の連合軍の猛者たちを、かつての仲間であった聖龍隊士たちを多く殺めた小田原修司は、純粋な破滅として生き残った者たちと向き合う。

 そんな修司が一歩前へと歩み出したのを視認したカァチェンたち戦死したマン・サコン以外の次世代の武将達と聖龍隊の新人達が、修司との戦いに挑もうとすると。

「待て」と、聖龍隊総長メタルバードが一声かける。

「今の修司の戦闘力は未知数だ、どんな戦法や戦術で仕掛けてくるか全く見当が付かねェ……」

 メタルバードが目付きを鋭くさせてカァチェンたち現状をどう対処するか解らない武将や新人達に語り掛ける。

「今オレ達ができる事は……相手をよく分析して、知る事だ」

 すると、このメタルバードの判断にある三人の女性が名乗りを挙げる。

「それなら、私たちで変わり果てた修司を探ってみるわ」

 その女性達とは、この大戦の為に遥々駆け付けてくれたスターファイター/スターメイカー/スターヒーラーのスターライツの三人だった。

「お前ら……」

 変わってしまった修司を探る為に名乗りを挙げたスターライツを見て、メタルバードたち聖龍HEADは全員横目を向ける。

「あなた達はまだ……変わり果てた修司と死力を尽くして戦うのは早過ぎです。まずは修司を探る役目を私たちが担います」

 と、知能派のスターメイカーが先手として自分達が修司と戦う危険な役目を名乗り出る。

「き、危険よ……!」

 そんな覚悟を決めたスターライツに、セーラームーンが反対するが。

「セーラームーン……誰かが捨て石に、危険な役目を負わなければ、勝てる戦いも勝てなくなるわ。私達が修司の今の能力や現状を調べてみるから、あなた達聖龍隊はしっかり観察してちょうだい」

「で、でも……」

 スターファイターの決意溢れる眼差しを向けられ、セーラームーンは返す言葉がなかった。

 すると、このスターライツの覚悟を聞いたミラーガールが。

「……確かに危険な役目ね。そして戦いには必ず犠牲が出るのも悲しい現実……この役目、あなた達三人に任せても良いのね?」

「もちろん」

 ミラーガールの問い掛けにスターファイターは力強く頷く。

「ファイター!」この返答にセーラームーンは悲観する。

 と、そんな状況でミラーガールが盾から元に戻したコンパクトを構えて唱えた。

「……でも、だからと言って死にに行くのは許さないからね」

 ミラーガールからの台詞を聞いて唖然とするスターライツの三人。

 すると「ミラージュ・トリック……」とミラーガールが呪文を唱える。

 そして唱えた直後、ミラーガールのコンパクトから聖なる蒼い光が三つの筋として、それぞれファイターたちスターライツの三人を包み込む。

「……鏡分身!」と強く唱えたミラーガール。

 すると蒼き光に包まれたスターライツの三人の目の前に、鏡の光から生み出されたスターライツの三人その分身が現れたのだ。

「「「!!」」」

 一驚するスターライツの三人。そんな彼女達にミラーガールが説明する。

「私の鏡魔法で生み出した分身よ。一応は、あなた達の意思で自由に動いてくれる筈だから、この分身でまずは修司と戦ってみて」

「ありがとう……! ミラーガール」

 ミラーガールからの気遣いにスターファイターたちは心から感激した。

 

 そしてミラーガールの魔法で派生したスターライツの分身達は、修司に接近して彼と対戦を開始した。

「お前達が相手か……良いだろう、俺も今の俺自身の力を確認したい」

 修司自身も、今の純粋な破滅として進化した自分の実力を知りたい為にもスターライツ三人の分身体と戦う事を承諾した。

 スターライツは、手始めに駆け抜けながら修司に向かって投擲武器を投げ付けて仕掛ける。

 しかしなんと、三人が同時に投げた投擲武器は修司に直撃するものの、修司の体をすり抜けて向こう側へ貫通してしまったのだ。

「な、何ですって!?」

 驚愕するスターヒーラーに並走するスターメイカーが声をかける。

「慌てないで! 接近して、直接攻撃を仕掛けるんです!」

 スターメイカーは修司に接近して、直接拳や蹴りなどの打撃で修司に攻撃を仕掛けようと提案する。

 そして修司に急接近した三人の分身体は、それぞれ修司に痛烈なパンチや美脚からの蹴りを入れ込もうと攻撃する。

 が、三人の攻撃は全て修司の体をすり抜けてしまい、修司にダメージを与えられなかった。

「う、ウソでしょ!?」スターヒーラーがまたも驚愕し戸惑ってしまう。

 三人の分身体は、自分達の武器や身体での直接攻撃がすり抜けてしまう現状に戸惑ってた瞬間。

 修司は、周囲の三人に拳や周り蹴りを打ち込んで勢いよく散らす。

「うっ!」「がはっ」「っ!」

 ファイターにヒーラー、そしてメイカーは悶絶して倒れてしまう。

 その戦況を後々の戦いに生かす為に観察していた聖龍HEADは激しく動揺していた。

「攻撃が全て……すり抜ける、だと!?」

「それにしても……なんで修司の肉弾戦だけが当たる訳?」

 キング・エンディミオンに翠星石が非常に困惑していると、参謀総長であるジュピターキッドが解釈を述べた。

「多分……義兄さんは、新世代型の生体エネルギーを吸収した事で人体の細胞が突然変異を起こしたんだ。それ故に如何なる攻撃をも体がすり抜けて無力化してしまうんだろう……」

「そ、それじゃ! なんで修司の攻撃だけ当たってるんだ!?」

 ジュピターキッドの解釈にエンディミオンが訊き返す。するとジュピターキッドは非常に焦燥した表情で答えた。

「おそらく……パンチやキックが直撃する瞬間だけ、その体の面積だけが相手の肉体をすり抜けない様に変化するんだろう」

 このジュピターキッドの解釈を聞いて、メタルバードが呆気に取られた表情で言った。

「要するに……修司にオレ達の攻撃を当てるには、修司がオレ達に肉弾戦の中で攻撃してきた瞬間……それも相手に触れる面積の部分だけにしか攻撃の効果が無いって訳だな」

「ちょっと、そんなの……絶望的すぎるわよ」

 メタルバードの台詞に、キューティーハニーは蒼褪めた。

 如何なる攻撃をもすり抜け効果で無力化してしまう修司に打撃攻撃を当てるには、修司自身が此方側に肉弾戦で攻撃してきた瞬間その触れる部分にだけしか効き目がないというのだ。

 そして聖龍HEADや戦死したマン・サコン以外の次世代武将達など、多くの者たちがこの戦いを見守る中、破滅へと進化した修司は右手から野球ボールほどの黒い球体を作り出して、スターライツの分身体に向けて投げ付けた。

 するとスターライツの目前で、その球体は突如として膨張し、強力な引力で周辺のモノを引き寄せる。

 その強力な引力にスターライツも最初は抵抗したが、すぐに引力に引きずり込まれて球体に呑み込まれてしまう。

 そして三人を呑み込んだのを視認した修司は、差し向けていた右掌を閉めて、その瞬間に黒い球体を空間から消滅、その瞬間の衝撃で辺りは爆風が吹き荒ぶ。

「す、スターライツの皆様方……!!」

 スターライツを呑み込んだ球体の消滅そして爆発を目撃して、シバ・カァチェンらイン・ナオコに山中鹿之助そしてゴ・マータン達は愕然とする。

 

 と、四人がスターライツの消滅を目の当たりにして衝撃を受けていると、後ろから一人の女性が声をかけてきた。

「安心してちょうだい、カァチェン。今のは三人とも、ミラーガールの魔法で生み出された分身体……本物の私たちは無傷よ」

「あ、ああ……そうでした。遂、うっかりしてました……」

 後ろから険しい表情で声をかけてきたスターファイターらスターライツの三人を見て、安堵するカァチェンたち。

 そしてスターライツの分身体を難なく消滅させる事に至らしめた破滅へと進化した小田原修司のある程度の実力を見知って、メタルバードたちHEADは思い悩む。

「………………新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して同化した、今の修司には如何なる物理攻撃も肉体がすり抜けて無力化してしまうんだろう。そして自身が直接攻撃する時だけ、あの変異した肉体は実体化して拳や蹴りなどを入れ込む事が可能となる……すなわち修司に直接打撃を与えるには、修司の肉体が実体化しているその時、そう直接攻撃してくる瞬間しかも攻撃を仕掛けてくる身体のごく限られた面積部分しかオレ達でも触れる事は叶わない……」

「で、でも……魔法や科学技術とかの、特殊な攻撃方法でなら、まだ攻撃が効くんじゃないのかな……?」

 メタルバードの釈明にコレクターユイが特殊能力や技術での攻撃でなら効果があるのではないかと訊ねるが、これにジュピターキッドが説いた。

「君たちコレクターズの科学技術による攻撃なら、まだ望みはある……が、科学技術での攻撃も今の義兄さんに何処まで通用するか。それに魔法などの特殊能力による攻撃も、さっき戦闘では見せなかったけど、まだ隠し持っている闇の能力で無力化してしまう事で能力や技が封じられてしまうかもしれない。物理攻撃は当てるチャンスが少ない上に、迂闊に接近すれば近接戦闘の得意な義兄さんの餌食になるのが目に見えている……かと言って、魔法や超能力などの特殊な攻撃も、義兄さんが生まれ持っている闇の能力で無力化されてしまうし、コレクターズなどの科学技術での攻撃は何処まで通用するか疑問だし、今の僕らが義兄さんに……小田原修司に勝てる可能性は極めて低いだろう」

「そうね、考えたくはないけど……特殊能力を封じられる闇の能力に付け加えて、如何なる物理攻撃もすり抜けてしまう今の修司くんに勝てる見込みは極めて低いと考えられるわ」

 ジュピターキッドの懸念を聞いた上で、セーラーマーキュリーも今の修司に自分達が勝てるのか不安に至ってしまう。

 

 そう修司への勝ち目が薄いと不安に駆り立てられる聖龍HEADの面々に、総長メタルバードが口を開いた。

「お前ら! 確かに今の修司に勝てる見込みは少ないだろう……しかし! 此処で諦めたら、誰が修司を止める……誰がみんなの未来を守れるんだ! 忘れた訳じゃあるまい。オレ達は聖龍隊、未来に希望を運び、理想を実現させる軍隊だ!!」

 このメタルバードの力説に、聖龍HEADは全員活気を取り戻した。

 そして確かに勝ち目の薄い戦いとはいえ、聖龍HEADは全員が破滅へと進化した修司と戦う覚悟を決めた。

 このHEADの戦意を前にした修司は、静かに口を開く。

「いいぞ、来い……お前達を絶対なる終焉、破滅へと誘う。そしてアッコ、お前を…………永遠の安寧へと導き、安らかな眠りへと誘ってやる」

 修司はミラーガールを安らかに永眠させて、全ての時代を終焉させる他に全ての二次元人の進化の歴史を止める意思を此処に表した。

 

 しかし純粋な破滅として進化した小田原修司の実力は、まだこの程度ではなかった。

 

 

 

[手に入れた能力(ちから)]

 

 如何に特殊能力を封じる闇の能力に加え、如何なる物体をもすり抜けさせる優れた身体能力を有する破滅へと進化した小田原修司。

 そんな圧倒的に不利な戦況でも、聖龍HEADは決して諦めず最後まで修司と死合うつもりでいた。

 そして修司本人も、かつて仲間だった者も、そうでない者たちも、全てを破滅という終焉へ導き、そしてミラーガールという尊い存在を安らかに眠らせる為に連合軍と最後の戦いに乗り出すのであった。

 

 純粋な破滅として進化した修司と対峙する聖龍HEADに、修司は冷然とした面持ちで言った。

「……言っておくが、俺自身の能力は俺自身も未だ把握し切れていない。今の俺に、どんな能力が……可能性が秘められているか俺自身もよく分かっていない。故に、俺と相手になる輩で俺が得た力を試させてもらうぞ」

 なんと修司本人も、破滅へと進化した自分の得た能力を把握しておらず、自分と相手する者でその能力を試した上で把握させてもらうと宣言したのだ。

 修司本人も把握していない、修司自身の底の見えない戦闘力に若干怖気づいてしまう連合軍の面々。

 そんな周囲の仲間達の恐怖をひしひしと感じながら、聖龍HEADは修司との戦いに打って出た。

「怖気づくな……! 行くぞ、聖龍HEAD!」

 メタルバードの号令を合図に、聖龍HEADはそれぞれ修司の周りへと展開して、各自得意な戦術や能力で修司と応戦する作戦で行動に移した。

 まず先手としてメタルバードとジュピターキッドという風神・地神の聖龍隊最強トップ2が修司に急接近して直接攻撃に移る。

 すると如何なる物体をもすり抜けて、避ける必要もない筈の修司が自然な流れで二人に拳や鞭を回避して体勢を立て直す。

「やはりな、癖というモノは恐ろしい……既に打撃などの物体が通り抜ける肉体であっても、長年培ってきた戦闘での経験で体が勝手に回避運動しちまうって訳だ」

 メタルバードが冷静に分析をすると、修司も物静かに口を開く。

「そうだな……癖というモノはいつの時でも恐ろしいものだ。俺の体に……いや、DNAに刻まれた戦いの経験と呪われた記憶が俺に自然と攻撃を回避する動きを与えてしまう」

 すると修司は更に直接攻撃をしてきた二人に告げた。

「だが……その回避運動が、今の俺にとってお前らの反撃の機会に成り得る無駄な動作になるかどうかは分からぬぞ」

 実際、修司の回避運動が自分達の反撃の僅かな機会に成り得るのかどうか、メタルバードやジュピターキッドはまだ判別できず苦悩してしまう。

 物体が体を通り抜ける能力を持った修司が、長年培ってきた経験から自然と回避運動してしまう動作が攻撃の僅かな好機かどうか判別できてない戦況の中、修司は背後からの気配に気づく。

 それはウォーターフェアリーなどを始めとする聖龍HEADが射撃技で修司を狙い澄ましていた時の事。

「やめとけ。今の俺には、お前達の技ですらも体が勝手にすり抜けてしまうだろう」『!』

 背中を向けたまま、背後のウォーターフェアリー達に呼びかける修司の言動に動揺する面々。

 すると修司は背後の聖龍HEADの面子に、振り返った瞬間で闇の能力で作り出したくないを投げ付けて先制。ウォーターフェアリー達は上空へと跳躍してくないを回避する。

「なるほど……次はどんな手段で攻撃するのか、まだ悩んでいるんだな」

「こっちの考えは流石に筒抜けか……? いや、まさか……!?」

 此方の思考を先読みしているかのような修司の言動に、メタルバードがある憶測に気付いて衝撃を受けていると。

(そうだ……! 今の俺には、相手の言動で相手の思考や気持ちが読み解けるだけではない。純粋に相手の心理が理解できてしまうのだよ)

『!!』

 なんと修司の思考が戦場に居る全員の頭の中に送り込まれてきたのだ。

「ウソだろ、修司……! まさか、超能力の一つであるテレパシーを使えると言うのか?」

 激しく動揺しながらメタルバードが問い掛けると、修司は今度は自分の口から公言した。

「そうだよ、バーンズ……かつての俺は超能力など無縁ではあったが、今の俺には……そう、新世代型二次元人の呪われた能力を得た俺には既に相手の心理や思考が手に取る様に解るのだよ」

「そ、その能力って、まさか……!」「わ……私の……!」

 修司の公言を聞いて、未だ檻の中に幽閉されている新世代型二次元人の真鍋義久と琴浦春香は真っ青な顔で愕然とした。

 すると修司は平然とした様子で語り始めた。

「そうだ、今の俺にはお前達……呪われたクローンたるお前ら新世代型の能力が秘められている。そう琴浦春香、お前のテレパシーをもな」

「……!!」修司の発言に琴浦春香は蒼然とした。

 さらに修司は彼女を含めた新世代型達に聞こえるよう、はっきりとした口調で語り出す。

「テレパシーにも色んな種類がある……琴浦春香、お前の様に一方的に周囲の人間の思考を受信して制御できない類。そして斉木楠雄、お前の様に相手の思考も自分の思考も自由に送受信できる類。……そしてメタルバードの様に、送受信もできれば制御もできる類などがな」

「「………………!」」

 修司が公言した、自分達のテレパシー能力を手に入れたという事実に琴浦春香も斉木楠雄も言葉を失う。

 今の修司に全ての思考が知れ渡ってしまう現状に絶望視する新世代型達に、修司は語り掛ける。

「……確かに、周りの人間の考えが自然とそれも制御できずに頭の中に流れ込んでしまうのは苦痛だろう。だが、俺には少し羨ましい……過去(かつて)の俺は、周りの人間の気持ちが理解できない故に、相手に不快な発言をして気持ちを逆なでして不快な気持ちにさせてしまったりと……それに俺の周りは殆どが俺や二次元人を敵視している者ばかり。そんな生き様の中で相手の本心が知れるこのテレパシーは使い方にとっては便利なものだ」

 と、今まで己のテレパシー能力で常人以上に苦しんできた琴浦春香と斉木楠雄に教え説く様に語る修司。

 その時、過去の自分を思い返している隙だらけの修司にセーラーマーズと獅堂光が二人がかりで業火の火球を作り出し、それを修司に向けて放った。

 しかし修司は自分に向かってくる巨大な火球を前に回避しようともせず、自然と右手を前に突き出した。

 すると火球は修司の目の前で宙に止まってしまい、そのままピタリと動かなくなってしまった。

「ひっ、火の玉を止めた!?」

 念堂力が一驚してると、その隣で戦況を見守っている斉木楠雄が愕然とした様子で呟いた。

「て、テレキネシス……? 間違いない、アレは僕の……」

 それを聞いた新世代型達はハッと気づく。この修司の能力は、斉木楠雄の類まれなる高度の超能力の一種だと。

 そう、修司は斉木楠雄の多種多様な超能力までも手に入れてしまった。

 そしてテレキネシスで動きを止めた火球を、修司は再び超能力で押し返して火球を放ってきたセーラーマーズと獅堂光に投げ返した。

「うわ……!」

 セーラーマーズと獅堂光は火球に呑み込まれて、修司に返り討ちに遭ってしまう。

 斉木楠雄から受け継いだ超能力の数々を駆使して戦況を混乱させる修司に、東京ミュウミュウズが接近して強烈な蹴りや拳で直接攻撃に打って出た。

 すると修司は自身の脳を極限まで活性化させ、周囲の物体の動きを遅めた。

 これによって修司は自分に格闘技で攻撃してくる東京ミュウミュウズの動きがスローモーションの様に捉えて、彼女達の蹴りやパンチを素手で受け止めて徹底的に痛め付けてしまう。

「きゃっ」

 ミュウイチゴ達は格闘技が全て受け止められただけでなく、徹底的に修司に痛め付けられて悶絶してしまう。

「あ、あれは……!」

「脳を極限まで活性化させて、周囲の物体の動きがスローモーションの様に補足できる様にしたんだ」

 檻の中で戦況を見守る中、修司の動作が俊敏過ぎた為に動揺する福原あんに超能力で分析した斉木楠雄が説く。

「ちょっと待って! 脳を極限まで活性化させるって……」

「……! オーバーロード……俺も使える、オーバーロードの能力だ……!!」

 斉木楠雄の説明を聞いて、美都玲奈と瀬名アラタが激しく動揺する。オーバーロードとはLBXプレイヤーでも瀬名アラタなど一部しか使う事のできない能力だからだ。

「くっ……!」

 蒼星石が此処で修司に向かって飛来し、自身の得物である「庭師の鋏」で急変してしまった修司の心の変化を強引に止める為に突撃。

 しかし修司は何もない両手から二対の黒い得物を出現させ、再び新世代型達を驚かせる。

「あ、あの武器は……!」「アタイが失った……片太刀バサミ!?」

 鬼龍院皐月と纏流子は、それが流子が過去に失った片太刀バサミだと気づく。

 そして修司は片太刀バサミを構えると、「片太刀鋏送辞猛怒」と「片太刀鋏答辞猛怒」に超巨大化&大変形させて突撃してくる蒼星石を迎え撃つ。

 修司の攻撃は蒼星石だけでなく、辺り一帯の地形をも変えるほどの威力で、その壮絶な威力で蒼星石を吹き飛ばしてしまう。

 

「くっ、どうする!? 今の修司には近づくのも厄介だが、物理攻撃が直撃できなきゃダメージを与えられないぞ!」

 苦戦する戦況の中で、キング・エンディミオンがメタルバードに問う。

 すると此処でミラーガールが再び盾に変化させたコンパクトに手を構えて呪文を唱えようとする。

「ま、待てアッコ! さっきからお前ばかり無茶をしている……これ以上、能力を使って自分を酷使すると何が起こるか分かったもんじゃない」

 と、呪文を唱えようとするミラーガールをメタルバードが制止するが。

「でも今の修司に打撃とかの攻撃が当たらない以上……私には少しでもみんなをサポートするしかないのよ」

「だ、だが……」

「大丈夫、もしかしたら今の修司にも攻撃や技が当てられるかもしれない。まあ、見てて」

 制止するメタルバードを振り払い、ミラーガールは呪文を唱える。それは今まで聞いた事のない呪文だった。

 そしてミラーガールが心を込めて呪文を唱えると、戦場に居た聖龍HEADだけではなく、その他の大勢の仲間達の背中に蒼き羽衣が装着され、同時に羽衣を纏った全員が蒼き光で包み込まれた。

「あ、アッコ……これは?」

 自分以外にも大勢の仲間達に蒼き羽衣と蒼き光が発光する中、メタルバードが問い掛けるとミラーガールは少々疲れた様子で答えた。

「はぁ…………修司と私は対なる間柄。男と女、二次元人と三次元人、そして光と闇……そんな修司に攻撃を当てられるのは、私の聖なる力ぐらいしか無いかもしれない。だから私の力をみんなにも多少は使える様に、私の能力が込められた羽衣を纏ってもらった訳」

「そ、そうか……! お前の聖なる力なら、如何なる物体をもすり抜けちまう修司にダメージを与えられるかもしれないって事か!」

 ミラーガールの説明を聞いて、メタルバードも理解した。

 そしてミラーガールの聖なる力が込められた羽衣を纏った聖龍HEADは、再び修司との戦闘に突入する。

「アッコちゃんからの想い……受け取ってみなさい、修司くん!」

 そう叫びながらキューティーハニーがセーラーウラヌスや龍咲海と共に修司に斬りかかる。

 三人の斬撃は、見事に修司に直撃し、修司は全身に深い切り傷を負った。

「やったわ!」

 海が喜んでいると、修司の傷は瞬く間に再生してしまう。

「ッ……Dの身体能力に加えて、あの神原秋人の再生能力も相まってスグに再生してしまうみたいだ」

 修司は過去に受けたD-ワクチンで得た新陳代謝に加えて、新世代型達の神原秋人の再生能力も相まってスグに傷付いた肉体が再生してしまうのだとセーラーウラヌスは表情を曇らせる。

 すると此処で修司がミラーガールの力を一時的に得て直接攻撃が可能になった聖龍HEADの動きを封じようと、右手を差し向けて術を発動させる。

「「「!」」」

 キューティーハニー/龍咲海/セーラーウラヌスの三人は漆黒の檻に一瞬で閉じ込められてしまった。

「あ、あれって!」「チッ、僕達の檻の能力までも受け継いだ訳か……!」

 美月と博臣の名瀬兄妹は、自分達が使える檻の能力までも使える修司を目撃して焦燥した。

 その一方で檻の能力で三人を狭い檻の中に捕らえた修司は、三人に向けて闇の能力で作り出した日本刀を突き向けて構える。

「……突き」

 その一言と同時に、修司は凄まじく刀の切っ先を押し出す様に前方へ何度も突き動かすと、切っ先から無数の鋭利な斬撃が射出されて三人の戦乙女達を襲う。

「「「っ!」」」

 キューティーハニー/龍咲海/セーラーウラヌスの三名は鋭利な斬撃に身体を貫かれて苦痛に歪む。

 そして三人が鋭利な斬撃で身体を貫かれた直後、三人を捕らえていた檻は消滅し、三人は解放されたが重傷だった。

「クソッ!」

 そこにメタルバードとジュピターキッドが修司に襲い掛かり、メタルバードは両手を刃に変形させて、ジュピターキッドは茨の鞭で修司を攻撃。

 結果、修司は両腕の上腕にいくつもの深い傷が付き、更には傷が深いために夥しい量の血が流れていた。

「やっと血を流したか!」

 メタルバードがそう言うと、修司は静かに返した。

「そうだな……戦いとは所詮、血を流し、痛みに耐える事。血を流さず、痛みのない戦いなど戦いではない。そうだろ? お前達にも前々から言ってた筈だしな……血を流し、痛みを恐れては戦う事などできない、と」

 そう皆に説く修司が、上腕から流れている自分の血を見ていると。

 なんと修司は上腕から流血する血を操って、上腕部分を伝う血が肩から上腕にかけて硬化されて鎧の様に変化したのだ。

「なッ……! 血が鎧みたいな形に変形したぞ」

 新世代型の真鍋義久が愕然としていると、それを見た栗山未来が騒然とした。

「あれは私の、血を操る能力……!?」

 修司がまた新たに自分たち新世代型二次元人の能力を披露した情景を目撃して愕然とする栗山未来。

 だが、そんな未来たち驚愕する新世代型二次元人の驚く様に気付いた修司は、新世代型達の方に顔を向けて冷淡と告げた。

「栗山未来よ。確かに、この血を操る能力はお前も同じだろうが……この能力だけは、前々から俺が既に習得している術の一つだ」

「え……!?」

 修司の発言に困惑する未来。そんな彼女達に修司は更に語る。

「そう、この能力は今は亡き我が友……ある能力者の、血を結晶化させて凝固させたり形を変形させる術だ。俺は、その二次元人と出会い、傷を負って血を流した際にも戦闘に活用できるこの術を学んで会得したんだ。そう、つまり……栗山未来、お前が生まれて此の方使える血を操る能力は、俺から遺伝しただけの技なんだよ」

「!!」

 修司からの告白を聞いて、栗山未来は愕然と衝撃を受けた。自分の血を操る能力は、修司がかつてある二次元人から学び得た能力であり戦術だというのだから。

 この衝撃の事実を告げた修司は、自分を包囲する聖龍HEADの隊士同士の隙間へと視線を向けて、一人の聖龍隊士を直視して言った。

「そうだよな………………マカ=アルバーン」

 修司が直視していたのは、聖龍隊士の一人である少女マカ=アルバーンであった。

 修司に視線を向けられたまま問われたマカは、険しい面差しで修司を睨み付けていた。

 この時、マカに視線を向けていた修司の思想が、修司が新たに得たテレパシーと前々から繋がっている共有感知を通して新世代型達の脳内にも強制的に伝わった。

 

 修司が血を操る術を学び得た二次元人、それはマカ=アルバーンとは親友でもあった一人の根暗な少女クロナであった。彼女もまた自身の血を操る能力を持っていた。

「へぇ、お前さん自分の血を操って武器にできるのか」

「え! ……えぇ」

 クロナが封印される前、まだ彼女が聖龍隊に身を置いていた頃の事。この時、修司は彼女の血を操作する能力に非常に関心が湧いた。

「成程ねぇ……なあ、クロナ。その能力について、色々と教えてくれないか?」

「え! な、なんでですか……?」

 極度の対人恐怖症のクロナは普段から敵側からも味方側からも鬼神と畏れられている修司からお願いされて非常に戸惑ってしまう。

 そんなクロナに修司は平然と話し返した上で会話した。

「俺も血の気が多いからか、結構出血とかしちまうんだよ。もし、自分の出血した血で相手を攻撃したり自身を武装させたりできれば、これほど便利な事はないだろ?」

「は、はぁ……そうなのかな?」

「なあ、頼むよ。俺にもその能力の原理を教えてくれ。もしかしたら闇の能力を応用して、その戦術が使えるかもしれねえ」

「う、う~~ん……」

「俺はもっと強くなって、マカやお前だけでなく、大勢の仲間を守っていきたい。その為には絶えず強くなっていく必要がある。協力してくれよ、クロナ」

 友好的に話し掛けてくる修司の嘆願を前に、遂にクロナは折れてしまう。

「わ……分かりました。ボクで良ければ原理ぐらいは教えます」

「ありがとうよ! クロナ!」

 承諾してくれたクロナに、修司はご機嫌になっては力強くクロナの背中を何度も叩いて激励した。

 それに反してクロナは何度も背中を強打された事で咳き込んでしまう。それを目の当たりにして修司は酷く焦る始末。

 そんな過去の記憶、いや思い出が新世代型達の脳裏にも流れ込んできたのだ。

 

 新世代型二次元人から新たに得た数々の特殊能力。

 そして修司が前々から使える闇の能力に加えて判明した血を操る能力の起源。

 そんな強大な能力をいくつも我が物にした修司は、更なる脅威として聖龍HEADを襲撃する。

 力は争いを招き、争いは悲劇を生む。古より続く負の連鎖は、今なお形を変えて続く。

 純粋な破滅として進化した小田原修司の脅威は続くのであった。

 

 

 

[新世代型の戦術]

 

 新世代型二次元人の特殊能力を得ていた事が明らかになった小田原修司。

 琴浦春香のテレパシー、斉木楠雄の超能力、瀬名アラタのオーバーロード、纏流子の片太刀バサミでの戦法、神原秋人の再生能力、名瀬兄妹の檻の能力、そして以前に小田原修司本人が【ソウルイーター】のクロナから学び得ていたと判明した血を操る能力を持つ栗山未来の能力の実体。

 数多の能力を得ながらも、それを全てを無に誘い、滅ぼす為だけに扱う小田原修司。

 修司は過去に、自身のクローンの一人である栗山未来に遺伝された血を操る能力を教えてくれた二次元人クロナとの過去を思い返していた。

 上腕から流れ出た血を強固させて両肩に鎧の様な肩パッドを武装した修司を見て、今はいない親友クロナの血を操る能力を駆使する修司を睨み付けるマカ=アルバーン。

 だが、修司が新世代型二次元人から得たものは、これだけではなかった。

 

 己の流血で両肩から上腕部分を武装した修司に、聖龍HEADは果敢に挑んでいった。

「えいっ!」

 ミラーガールも修司を少しでも止めようと、果敢にミラー・ソードで斬りかかる。

 だが修司は並外れた戦闘経験から如何なる攻撃をもかわしてみせ、例え直撃しても物体をすり抜ける肉体によって必要以上に負傷する事は無かった。

「アッコ! 無茶はするな……忘れるな、二次元人の始祖であるお前が修司に殺された場合……全ての二次元人の存在に影響が出る!」

 交戦するミラーガールにメタルバードが制止の声をかける。

「分かったわバーンズ……でも、このまま修司の暴走を見ているだけなんて、胸が痛いの……!」

 世界に自身のクローンである新世代型二次元人を生み出され、負の連鎖を絶えず生み出す世界に失望して今の様に純粋な破滅として進化した修司を前にして、ミラーガールはそんな修司を黙って見ているだけなのは胸を痛めると、自分の痛心を打ち明けた。

 そんな戦闘から一時的に離脱したミラーガールに変わって、他の聖龍HEADが総動員で修司を襲撃する。

 すると修司は、テレパシーで相手の考えが読み取れ、しかも肉体がほぼ全ての直接攻撃をすり抜けるというのに、敢えて回避せずに聖龍HEADの総攻撃を全身で受け止めた。

 聖龍HEADの攻撃を総じて受け止めた修司は、総動員で攻撃してきたHEADに向けて無表情な面差しで

「これがかつて、俺が信じた二次元人の……聖龍隊を束ねるHEADの実力か。これ程までに、お前らの拳が、攻撃が軽いものだったとはな」

 そう嘲笑する様な口振りで語る修司は、全身から更に出血するよう自身の肉体を操って、その流血した血を更に操って全身を完全武装した。

「チッ、敢えて俺達の攻撃を受けたのは、この為か!」

 キング・エンディミオンは修司が敢えて自分たちHEADの攻撃を受けたのは、自分の全身から血を流させて全身を完全武装させる魂胆だったと理解する。

 すると全身を自身の血で完全武装した修司は、その武装した血の鎧を変形させて車輛の形に変形すると一気に戦場を駆け抜けた。

「あ、あれって……!」

「間違いないっすよ……パイマン先輩の能力っす!」

 武装している鎧を車輛に変形させて大地を駆け抜ける修司を見て、真鍋義久に続いて一ノ瀬はじめも目の色を変える。

 車両の姿で聖龍HEADを轢こうとする修司だが、高速移動する車輛にHEADは軽々と跳躍したりして回避してみせる。

 これに対して修司は即座に車輛の形から元の人型に戻ると、ため息を衝いて語った。

「ふぅ、やはり自分の足で……俺自身の足で駆け抜けた方が戦闘には有効かな?」

 そう言って、修司はガッチャマンクラウズのパイマンが有する車輛に変形する能力を使うのを躊躇う言動を零した。

 と、その時。修司が急停止して一息入れている所に、間髪入れずに聖龍HEADの蒼の騎士と堂本海斗に左右の腕を掴まれて修司の身動きを封じた。

「雅也君!」「海斗!」

 修司の腕を掴んで離さない蒼の騎士ディープ・ブルーに堂本海斗を見て、ミュウイチゴと七海るちあが叫ぶ。

「みんな! 今の内に修司さんを……」「攻撃するなり何なり、止めてくれ!」

 蒼の騎士と海斗の台詞を聞いて、メタルバードたち周辺のHEADは一斉に修司を攻撃しようと駆け寄ろうとした。

 が、その時。修司が武装している血の鎧から隠し武器が飛び出して、修司の腕を掴んでいる蒼の騎士と海斗に武器が当たってしまった。

「うッ!」「ぐっ……」

 蒼の騎士と海斗は痛みで表情を強張らせるが、修司は更に武装している鎧の中から隠された武器を両手に携えると、その武器で蒼の騎士と海斗の顔を傷付けて二人を怯ませる。

「うわっ」「ぐっ!」

 顔を傷付けられた事で怯んだ二人は、修司から離れてしまう。

「雅也! 海斗!」

 怯んだ際に後ろへと転倒してしまった二人を見て、メタルバードが声を上げる。

 この時、聖龍HEADや檻の中の新世代型達が修司を観察してみると、修司が握っている武器も、鎧の中から突出している隠し武器も全て文具を模した隠し武器であった。

「文具を模した隠し武器……そんな! あれはボクの、ガッチャマンとしての装備っす」

 文具を模した数々の隠し武器、それは一ノ瀬はじめがガッチャマンとして変身した際の装備と同じものだった。

 修司が血の鎧に隠している隠し武器で蒼の騎士と海斗の両名を傷付けたその直後。獅堂光と鳳凰寺風の二人が修司に斬りかかっていった。

 すると修司は二人からの剣戟を、左側の腕だけで防いで見せた。

 よくよく見てみると、修司の左手と腕は完全な刀へと変化していた。

「!」「こ、これって……!」

 光と風は驚愕した。それは以前、聖龍HEADが見ている能力だったからだ。

 そして左腕を完全に刀に変化させた修司は、右手を消滅させて完全な隻腕となった瞬間、光と風に技を叩き込んだ。

「無限刀 嵐」

 光と風の二人に、強烈な斬撃が無数に襲い掛かり、二人は全身を切り傷だらけにして倒れてしまった。

「無限刀 嵐……! 僕の大技を意図も簡単に真似るなんて……」

 橘清音は自分のガッチャマンとしての必殺技を意図も簡単に発動できた修司に目を丸くして驚いてしまう。

 そんな清音に語り掛ける様に修司は呟いた。

「こんな大技の一つや二つ、聖龍隊創設の頃から剣を振るってきた俺には雑作もない事。橘、俺はお前以上に相手との間合いを詰めたり、間の物体の干渉を無視する高速移動で敵を確実に攻撃する剣技をも凌ぐ剣技が扱える……まあ、其処は流石に経験の差というものかな」

 修司は橘清音に自分と彼の経験という名の実力の差を思い知らせた。

 修司が新生ガッチャマンである橘清音との経験の差を思い知らせていると、遂に聖龍HEADの交戦に痺れを切らした赤塚組の幹部たちが攻撃に出た。

「アッコやバーンズ達だけに戦わせるな! 死んだ連中の為にも、今の修司を止めるんだ!」

 聖龍HEADの旧友でもある赤塚組頭領、赤塚大作こと大将の掛け声に、他の幹部衆である海野なるや秋夏子達は果敢に重火器で修司に向けて砲撃する。

「大将、お前ら! 迂闊に修司に攻撃するな! 下手に反撃受けたらどうするんだ!!」

 修司に向けて砲撃する大将たち赤塚組に、メタルバードが迂闊な真似はするなと言い付ける。

 すると修司は砲撃を仕掛けてきた赤塚組の攻撃で砂煙が舞い上がる中、武装している血の鎧その背中から翼を発現させて空へと飛行した。

「と、飛んだだと!?」

 背中から翼を発現させて空へと飛行した修司を目の当たりにして、大将たちは愕然とした。

 すると上空へと飛行した修司は、両腕部から赤いエネルギー弾を機銃の様に発射して、赤塚組幹部たちを上空から襲来する。

『うわあっ!』上空からのエネルギー弾の雨に、赤塚組幹部衆は混乱してしまう。

 そんな赤塚組を追撃しようと、修司は左右の腕から「バーニング・ハンマー」と「バーニング・ホールド」の大技を射出して幹部たちを苦しめる。

「俺の技までも使えるのか……!」

 修司が自身の必殺技をも自由に使いこなせる情景を目撃して、苛立ちを見せる枇々木丈。

「一斉に飛び掛かるんだ!」「ああ!」

 堂本海斗と蒼の騎士の声を合図に、マーメイドメロディーズと東京ミュウミュウズが一斉に修司に飛び掛かる。

 が、修司は手の平を唐突に地面に押し当てると、次の瞬間修司の周辺の地面が突然砂場へと一変した。

「わ!」「じ、地面が砂に……!?」

 宝生波音とミュウレタス達が驚愕する中、修司が地面に触れた途端に周辺の大地を砂場へ変化させた能力を見て一人の新世代型が愕然としていた。

「アタイの崩壊の能力までも……!」

 全ての物質・生物が抗う事ができない、万物を砂状に分解する能力までも使用されてO・Dが怒りと焦燥の表情で修司を睨み付ける。

 すると周辺の大地を砂場に変えて足取りを奪った修司は、この崩壊の能力に対して以下の様に述べた。

「ほう、これが如何なる生物も物質も全て砂状にまで分解できる崩壊の能力か……意図も簡単に生命を、敵である存在を砂に変えてしまうのは戦闘に面白みが無いが、足場や相手の武器とかを砂に分解できるのは何かと重宝できる……使い方ひとつで、戦闘が面白くなる便利な能力だ」

 と、修司は崩壊の能力を使い方次第で戦闘に面白みが増す能力と、戦闘狂の様にこの能力を称賛した。

 一方で先ほど修司が使った崩壊の能力で足場を砂場へと変えられて足取りを奪われていた東京ミュウミュウズとマーメイドメロディーズの面々は、此処でようやく砂場から足が抜け出せ、更にマーメイドメロディーズの能力でサラサラの砂場に大量の水分を含ませて固めた事で、足場をしっかりとさせると再び修司に向かって全速力で駆け出した。

「そうだな、マーメイドプリンセスたちよ……お前らの穢れない歌でも俺の欠けた心は浄化できない。まぁ、元より生まれた時から穢れている俺の心を綺麗にするというのが無理な話だが……どちらにしろ、現実的にお前らの歌で人の心は癒せても人を守る事は不可能だ。故に、結局は他のヒーローヒロインと同様に暴力という武力で俺に挑まなければならないのは理解してくれている様だな」

 東京ミュウミュウズやマーメイドメロディーズの攻撃を自然な動きでかわしながら修司は平然と攻撃を必死に当てようとする彼女達に語り掛ける。

 実際、東京ミュウミュウズは元より、マーメイドメロディーズはその清らかな歌声で相手の心を癒したり、時には仲間の力を増幅させる事ができる。が、それが効かない相手に対しては他のヒロインや修司から叩き込まれた格闘術で応戦するのだった。

 すると修司はマーメイドメロディーズや東京ミュウミュウズの攻撃を避けながら、右手でミュウプリンの額を鷲掴みして、そのまま彼女の頭を地面に押し付ける様に叩き込んだ。

「うぎゃっ」「プリン!」

 修司に頭を思いっきり地面に叩き込まれて苦痛で声を上げるミュウプリンに、ミュウザクロが呼びかける。

 と、修司がミュウプリンの頭を地面に叩き込んだ次の瞬間。修司が押さえ込むミュウプリンに触れている修司の右手が光り出し、ミュウプリンに何かをした。

 そんな修司がミュウプリンから離れたのを視認して、ミュウイチゴ達が慌ててミュウプリンに駆け寄り声をかける。

「プリン、大丈夫!」

「あ、イタタ……な、何だか力が抜かれたみたいなのだ」

 このミュウプリンの発言に、檻の中に囚われている新世代型の一人が血相を変えた。

「ま、まさかアレは……!」

 表情を一変させて愕然とする、うつつに修司が言った。

「そうだ、うつつよ……今のはお前の能力、相手の生命力を奪うという能力だ。だが、少しばかり安心しろ。この能力は元より、俺の闇の能力が持っていた力の一部だ。どうやら、お前には俺の闇の能力が持つ、相手の生命力や精神力そして特殊能力を吸い取る力が遺伝子したようだ」

 修司の説明を聞いて蒼然とする、うつつに修司は更に語った。

「お前の苦労もそういう意味では俺にも少し解る……俺の闇は、仲間の素晴らしい能力だけでなく、その生命力までも引きずり込んで吸収してしまう闇。しかもお前の様に相手にその吸収した生命力を分け与える事などできやしない……俺の闇の能力は、それこそ全てを不幸に誘うだけの呪われた力だ」

 そう少しばかり寂し気に語る修司の説明を聞いて、うつつは自分の能力以上に修司の能力が本人に嫌悪感を感じさせているのだと理解した。

 と、修司が語っているその最中、そんな修司の頭上から天使の輪っかの様なリングが三つほど投下されては、修司の体を拘束してしまう。

「!?」無表情ながらも自分の身を拘束する三つのリングに戸惑う修司。

 その三つの輪っかを投下したのは、修司の動きを何とか制止しようとしているコレクターズの電子武器から放たれた技だった。

「修司くん!」「お願い、もうやめて……!」「こんなの間違ってる!」

 コレクターユイ/ハルナ/アイの三人が必死に修司を呼び止めるが、修司は三人の制止の声も聞かずに目を光らせて何かを仕掛ける。

 すると修司の眼光が光った瞬間、コレクターズの三人が持っている電子武器が突然ショートして一時的とはいえ使えなくなってしまった。

「こ、これって……!?」突然ショートして動かなくなった電子武器に驚くコレクターユイ。

 そんな三人に、電子武器がショートした事で拘束具である電子の輪が消滅して自由になった修司が告げた。

「斉木楠雄たちテレパシーの能力に、爾乃美家累のネット介入の能力を融合して使用してみた……俺のテレパシーをコレクターズの電子武器にハッキングさせて、武器の内部をショートさせて使用不能に陥らせたのが事の真相だ」

「能力の融合だと……!? そんな事もできちまうってのかよ……!!」

 修司の説明を聞いて大将が愕然とする。

 能力と能力を癒合させて新たな効果のある能力に変化させる。修司の大技に戦場にいた一同が茫然としてしまう。

 と、修司がテレパシー能力と爾乃美家累のガッチャマン能力を融合してコレクターズの電子武器を一時的に使用不能に至らしめた次の瞬間。

「喰らえ、修司!!」

 強力な電撃を帯びた巨大手裏剣に変形したメタルバードが、仲間のセーラージュピターに投げ飛ばされて一直線に修司に向かって来襲してきた。

 電撃を帯びた巨大手裏剣は切味も通常以上に増しており、修司の胴体を皮一枚残して切断してしまう。

 が、胴体を切断された修司は慌てる様子もなく、そのまま切断された体の断面を合わせて意図も簡単に接合してみせたのだ。

「クッ……ほぼ不死身か」

 巨大手裏剣に変形して修司に来襲したメタルバードは地面に着地すると同時に元の姿に戻って表情を歪ませるが、そんなメタルバードに修司が虚ろな表情で告げた。

「今の俺にはマギウスの不死性も兼ね備えている……再生能力に不死身の肉体、例え万が一アッコの能力で物理攻撃が俺に当てられたとしても、俺を殺す事は不可能に近いだろう」

「くっ、ダメなのか……!」

 マギウスの特性である不死性も兼ね備えている修司の説明を聞いて、メタルバードは苦渋の表情を浮かべる。

 

 琴浦春香のテレパシーに斉木楠雄の超能力、周囲の物体の動きを全てスローモーションで捉えられる瀬名アラタのオーバーロード能力、纏流子が今や失った片太刀バサミでの戦法、神原秋人の再生能力、栗山未来の血を操る能力(既に以前からクロナの能力を真似て会得している)、名瀬博臣と美月の檻の能力、ガッチャマンクラウズの一ノ瀬はじめ/橘清音/枇々木丈/O・D/うつつ/パイマン/爾乃美家累の武装時の能力/そして時縞ハルトらが所有しているマギウスの不死性の肉体。

 数多くの新世代型二次元人の超越した能力を会得してしまった、純粋な破滅として進化した小田原修司。

 果たして、この小田原修司を止められる勝機は、見込みはあるのだろうか。

 

 

 

[諦めない心と、この世の真理]

 

 新世代型二次元人のありとあらゆる特殊能力を会得した小田原修司。

 彼はその絶大な多種多様な能力と、自身が扱える闇の能力を複合したりなど、独自に工夫して戦闘を続ける。

 相手の動きや心理を盗み説くのにテレパシーを。移動技には瞬間移動を主に血の鎧から噴き出す背中のジェットからのブースター。咄嗟の攻撃を回避するのに相手の動作が緩く見えるオーバーロード。武器は血の鎧で武装した上に、右手に片太刀バサミと「無限刀 嵐」を繰り出せる刃に変形した左手。相手の動きを一時的に拘束する名瀬兄妹の檻の能力。身体能力は神原秋人の再生能力にマギウスの不死性の肉体を得ていた。

 以上、その他にも多種多様で強力な能力を得て戦闘に順応していく修司。

 修司は凄まじい能力の数々を会得して、その能力を駆使しながら過去(かつて)の同期でもある聖龍HEADと戦い続ける。

 

「失敗のない世界、その幸せを……なぜお前達は否定する……?」

 HEADと戦う最中、修司は過去に多くの失敗や挫折を経験してきた自分や聖龍隊そして世界が辿ってきた負の連鎖という歴史を絶ち、その過ちがない幸せな世界を何ゆえ否定するのかHEADに問うた。

 それに対して修司が振りかざす片太刀バサミを回避しながら、懸命に物体がすり抜ける修司に剣戟を当てようとするキューティーハニーが強く言い返した。

「それが幸せだとは限らない!」

 キューティーハニーに続いて、先ほど自慢の電子武器がショートされて使えなくなってしまった故に直接格闘技で応戦するコレクターユイが修司に説く。

「人は考え、悩み、失敗する事で成長する。幸せってのは、その先にあるものなの!」

 己が説く、失敗のない幸せな世界を否定され、そんな世界が本当に幸せなのか問い質された修司は静かに反論した。

「ではその失敗の中で、二度と取り戻せないモノがあるとしたら?」

 修司は虚ろな表情で真剣な口調で自分に歯向かう聖龍HEADに真理を説き返した。

「人は後悔し、もう一度やり直しを望むだろう。だが、それはできない。失敗は許されないんだ。この醜き世界では……!」

 後悔する故にやり直しを望むのが道理ではあるが、現実はそのやり直しができない、通じないのが真理。だからこそ失敗が許されないこの醜い世界を変える為にもと修司は戦い続ける。

 セーラー戦士たちの大技が修司に炸裂するが、修司は寸前の所で瞬間移動で別所に移動して回避し、両腕部から赤いエネルギー弾を機銃の様に発射してセーラー戦士たちに反撃する。

 そんな修司に再び東京ミュウミュウズとマーメイドメロディーズの面々が駆け寄っては、直接拳や蹴りなどの打撃で修司に挑もうとする。

 修司は敢えて、そんな彼女達の格闘技をすり抜けず、右腕と左腕だけで受け止めつつ打撃を防いで見せる。

 そして彼女達の拳や蹴りを受け止めると、そのまま剛腕で地面に叩き付けたり、投げ飛ばしたりなどして乙女達を苦境に追い詰めていく。

「アニメタウンを……この世界の未来を委ねた聖龍隊の頭目の拳が、これほど軽いものだったとは……納得した。その程度だから失敗したんだ……」

 未だに覚悟や決意が軽いのか、はたまた格闘技のレベルが低いからか、打撃全てを軽いものと評価した修司は、だからこそ今までの自分や聖龍隊は失敗してきたのだと冷たい目で非難した。

 と、そんな修司に向かって紅い閃光が一直線に飛来しては、修司に突撃してきた。

 修司は両手でその紅い閃光を、一直線に来襲してきたローゼンメイデンの真紅の拳を辛うじて掌で受け止めて、しばし両者は硬直した。

 そんなこう着状態が続く中、修司は次の瞬間、真紅に向かって右ひじを思いっきり振り下ろすエルボードロップを打ち込んだ。

 修司のエルボードロップを直撃した真紅は地面に叩き付けられ、そんな彼女目掛けて修司は追撃とばかりに踵落としを喰らわして真紅を悶絶させる。

 容赦のない修司の猛攻に、今度は彼の背後から大量の水で生成した槍をウォーターフェアリーが射出して修司目掛けて飛ばした。

 だが背後からの殺気を感じて、修司は自身の肉体をすり抜けさせて無数の水の槍を突き抜けて無傷で突破してしまう。

「このッ」「喰らいやがれッ!」

 次にジュピターキッドが茨の鞭で修司の足を捕らえると、そこにメタルバードが鎌鼬の旋風で修司に無数の傷を負わせようと連携攻撃を仕掛ける。

 だが、修司は右手の片太刀バサミから凄まじい突風を起こして、メタルバードが起こした鎌鼬の旋風をかき消してしまった。

 二人が愕然としていると、修司は自分の足に絡みつくジュピターキッドの鞭を手に取るとそれを引っ張りジュピターキッドを引き寄せてしまう。

「うわっ!」

 引き寄せられたジュピターキッドを修司は丸い顔を鷲掴みして、そのまま地面に何度も叩き付けてジュピターキッドを悶絶させる。

 メタルバードが急ぎ駆け付けるが、そんな彼に気付いてか修司はジュピターキッドを駆け付けてくるメタルバードへ投げ付けて両者共々痛い目に遭わせた。

 すると今度は上空から、飛行するちせとさくらが上空から修司に向かってレーザーとショット(撃)の両方で狙撃を開始。

 だが修司はその全ての閃光をすり抜けて、肉体に微々たる傷すら負わずに上空の二人に反撃。強力なエネルギー弾の射撃で迎撃させて二人とも地面に撃墜されてしまう。

「聖龍隊を背負う者共が、この程度だったと言うのか? 何処まで俺を失望させるんだ」

 現実(いま)の自分を止められない情けない戦況に失望の意思を示す修司。

 そんな修司に反発するかのように傷付き倒れていた聖龍HEADは続々と起き上がり、立ち上がった。

「そうでなくてはな……手に入れたばかりの力を、まだ試させてくれ」

 修司は新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して会得した彼らの特殊能力を存分に試したいと告白すると、自分の周りで立ち上がる聖龍HEADを見渡して言い渡した。

「お前達の今までの常識では計り知れないぞ……!」

 今まで聖龍隊が知り得ている常識では、修司自身が会得した力は計り知れないと豪語する修司。

 そんな修司の猛攻を耐え凌ぎながら果敢に反撃に移る聖龍HEADを遠視して、先ほど修司に爆撃を受けて吹き飛ばされた赤塚組の幹部衆が再度修司に遠距離攻撃を仕掛けてHEADを援護する。

「撃って撃って撃ちまくれ! 今の俺達にはそれしか……それしか修司を止められないんだ!!」

 赤塚組の頭領である大将が旧友である修司を止めたいが一心で、自分たち弱輩者の集まりである赤塚組でも出来得る最善の行動に打って出た。

 だが、そんな赤塚組の重火器での砲撃を掻い潜り、修司は瞬間移動で一瞬の内に大将たち赤塚組幹部衆の前に移動してきた。

 突然修司本人が目の前に移動してきた事で一驚し怯む大将たち赤塚組に、修司は呟いた。

「俺の友と自称しながらも、俺に気付きもしなかった。所詮そんなもんだ……」

 当初、黒武士として聖龍隊や赤塚組の前に現れていたにも拘らず、小田原修司という正体に、実体に気付く事がなかった赤塚組に、自分を含んだ聖龍HEADの旧友を名乗る資格を当に失っている様だと冷淡に告げる修司。

 瞬間移動で目の前に現れた修司は、赤塚組が使用していた重火器を瞬間移動させた上で自身の目前にテレキネシスで浮かせると、その重火器を全て万物を崩壊させる能力で砂状に分解してしまう。

『!!』

 目の前で鋼鉄の重火器を一瞬で砂に分解してしまった修司を見て愕然とする赤塚組幹部衆に、修司は冷徹に告げた。

「安心しろ、この能力で命までは崩壊させん……こんな簡単に命を奪っては、命そのものの重さを痛感する事は不可能だからな」

 修司は人命を奪うのに、その命そのものの重責を感じる必要性があると説いたのだ。

 そして赤塚組の重火器を崩壊させ、周辺の聖龍HEADを片っ端から手痛く痛め付けた修司は、全く勝ち目のない戦いに挑み続ける聖龍HEADに呟く様に告げた。

「結局のところ、俺達が歩んだ道は失敗そのものだった……」

 自分が、聖龍隊が歩んできた今までの道、歴史は失敗そのものであり、修司は自分だけでなく聖龍隊の歩みそのものを否定した。

 

 今までの自分の、そして聖龍隊と言う組織が築いてきた歴史と言う歩みを全否定する修司と戦う最前線の聖龍HEADと赤塚組。

 しかし新世代型二次元から会得した能力を巧みに使い分けて交戦する修司の戦法に苦戦を強いられる聖龍HEADと赤塚組。

「ハァ、ハァ……」

 必死に修司に抗うミラーガールたち戦前の聖龍HEADは息を切らし、ただ釈然と立ち尽くす修司を見詰めた。

「………………(もう、修司を止める事はできないの? 新世代型二次元人を救い出し、みんなの未来を守り抜く事は、私達には不可能だって言うの?)」

 ミラーガールは心の中で、全てに失望して人々と世界の未来を消滅させようとする修司に勝てるのだろうかと疑心暗鬼に駆り立てられていた。

(私たち聖龍隊が歩んできた道行は間違いだったというの……多くの人々に希望を齎すという夢や理想は、叶わない幻想だったというの……)

 自分たち聖龍隊が築いてきた歴史は間違いばかりで、自分達が思い描いていた夢は到底叶わない幻想だと思い始めるミラーガール。

 そんな不安な胸中のミラーガールに、後ろから歩み寄る大将が彼女ら聖龍HEADに強く唱える。

「大丈夫だ…………アッコ、お前なら……お前達なら、できる…………!」

 疲労困憊で苦悩するミラーガール達に、破槍を松葉杖代わりに歩み寄る大将の言葉に、ミラーガールも修司本人も注目する。

 大将自身も修司からの猛攻で息を切らしながらも、自分たち以上に戦いそして傷付いている聖龍HEADに己の言葉を伝える。

「誰かを想い、そして未来を……夢に思い焦がれ、理想を実現させようとするお前ら聖龍隊は、決して間違っちゃいない……!」

 力強い強面でミラーガールたちHEADに唱える大将は、過去(かつて)の想い人である修司と対峙し続けるミラーガールの横に立ち、彼女に言い切ってみせた。

「聖龍隊の誰よりも……この混沌し切った世界の誰よりも……アッコ、お前が何一つ失敗してねェこと……! 一番よく分かってる!!」

 大将からの力強い力説を耳に入れて、ミラーガール達は再び戦意を湧き上がらせて修司の方を見据えた。

 

 再び意気込む聖龍HEADを見据えて、修司が彼女達を含む戦場の猛者たち全員に語り始めた。

「…………今、この戦場に居る多くの戦士達が、大切な友や恋人を殺されて、俺に向けて憎悪の念を抱いている事だろう。しかも俺のクローンであり、その憎悪を生み出した根本の……それこそ、この争いの発端である筈の新世代型までも、始祖であるこの俺に反感を抱いてやがる。まったく、誰のせいでこんな凄惨な争いが起きたのか、まだ理解してないようだ」

 修司は大勢の者たちから、先ほどの無差別攻撃で大切な友人や恋人を殺されて憎悪を向けられている事、そしてその憎悪を同じく向けている新世代型二次元人の心境を察していたが、そもそもの争いの発端は新世代型にあると半ば呆れた口調で説く修司に新世代型一同は愕然としてしまう。

「俺に憎悪を向ける数多の猛者達よ……そして場違いな憎しみを俺に向ける我が忌まわしき子供である新世代型二次元人よ。俺が憎いか? 許せないか? ならば全身全霊を持って、その力を俺にぶつけてみろ。大切な友を……愛する者を……尊い命を奪った俺に憎悪という名の敵意を向けて、挑むがよい。俺は……全ての負の連鎖の起源である俺自身が、我が身を持ってその憎悪を一身に受けつつ、皆を真に安らかなる桃源郷へと導いてやろうではないか……!」

 修司の熱弁を聞いて、多くの者たちが、特に新世代型達が修司に憎悪や敵意を向けている中、ミラーガールを始めとする聖龍隊の隊士達は皆、修司に敵意や憎悪など向けず憐れみを向けていた。

「……どうした、アッコ? 大切な仲間を、友を殺めた俺が許せないのではないか? 死ぬべき命ではない人命を奪った俺に憎しみを向けているのではないのか?」

 修司がミラーガールに問い詰めると、彼女は涙を浮かべた力強い眼差しで修司を見詰めて彼に

「……私たちに、復讐心を滾らせたいの? 復讐という負の連鎖を始めさせて、その連鎖を強引に断ち切る形で全てを終わらせる気なの?」

「………………」ミラーガールの問い返しに修司は何も答えない。

 するとミラーガールは誰もが予想だにしなかった話を語り始める様に修司と対話し始めた。

「修司……昔の貴方は、大勢の罪なき命が……何よりも心が傷付くのを誰よりも嫌っていた。他人が苦しめば、その苦しみが自分のモノの様に感じてしまう強い感受性を修司は生まれ持ってきた。だからこそ……修司、貴方は聖龍隊を結成して、その組織力と軍事力で心ない悪しき存在を異常者(ヒール)と見定めて強引に処分の名目で極刑にしていった。その手法を、今度は自分の影響力と世界を影ながら支配してる人たちと結託して強化させた国連軍にもやらせる様にして、より多くの命を奪う法案を国際的に可決させた」

「………………………………」

「でも、修司の心の痛みはそれでは治まらなかった。心優しい貴方は、それでも法の網目を抜けて心無い悪事や平気で他人を陥れる人々を心底嫌い、それを許せず聖龍隊を統一させる裏方で、そんな人々を罰する為に闇の制裁に走った」

『!』

 新世代型達はミラーガールの話を聞いて、修司がその裏では闇の制裁を掲げるジャッジ・ザ・デーモンとして世界中の悪人に裁きを下している事実をミラーガールが語っているのだと逸早く察した。

「……何が言いたいのだ。アッコよ」

 修司が語り出すミラーガールに問い掛けると、ミラーガールは悲しい瞳ながらも力強い面魂で唱え続けた。

「修司、貴方が思う通り、私たち聖龍HEADが……いいえ、私たち二次元人が掲げる理想論では全ての人を救済する事は出来ない! 現実的に、犯罪だけでなく多くの過ちを犯した人々を抑制するには血生臭い暴力や武力でしか解決できないのが現実……! その中には復讐という、負の連鎖を生み出しかねない方法も含まれている。私みたいに、全ての人に必ず良心があるという幻想を抱く名ばかりのヒロインの思想では到底思い付かない現実を、修司は生まれながらに直面し、それを実行に移せる決断と信念があったわ!」

 聖女と慕われるミラーガールの口から飛び出してきた誰もが予想だにしなかった発言。多くの悪人を抑制し、罰するのには暴力や武力が必要不可欠であり、中には復讐と言った行動も含まれていると公言したミラーガールに誰もが衝撃を受けた。

 そんなミラーガールに、修司は言った。

「……やっと世の本質を、真理を受け入れたかアッコ。だが、もう遅い……お前達、現実を変えれると思ってた二次元人には到底変えられないほど、この世界は混沌に誘われ、その混沌の中で多くの悪が弱者を苦しめている」

「………………」

「もはや弱者を救うには、遅すぎるのだ。アッコ、そしてバーンズにジュニア、アプリコット達よ……俺達はかつて、この二次元界と三次元界の崩壊を食い止めて、世界を救った。だが、それは間違いなのだ……俺達は世界を救ったのではない、壊したんだ」

 過去(かつて)、絶夢鳥の来訪で次元が崩壊寸前まで至った件で、その崩壊を止めた聖龍隊。だが修司は、二つの次元世界を救ったのではなく、二つの次元が融合した事で壊してしまったのだと説いたのだ。

 

 ミラーガールが説いた「血生臭い暴力や武力、そして復讐も悪人を抑制する力」に驚愕する新世代型二次元人たち。

 その一方で、過去に聖龍隊と共に崩壊する二つの次元を救った事で、その次元を融合させて混沌の世界に変化させてしまった自分達は、世界を救ったのではなく壊してしまったと説く修司。

 

 ミラーガールと修司の力説に誰もが衝撃を受ける。

 

「復讐なんかしても何にもならない」

 だが、果たして本当にそうなのか?

 確かに、復讐しても死んだ人間が返ってくる訳でもなければ、全てが元通りになる訳でもない。

 しかし復讐を果たしたり、加害者の死が結果的に、被害者が加害者の呪縛から解放される事はあるのかもしれない。

「死んでいい人間なんかいない」と、発言する人間は多いが、生きていてはいけない人間が確実に存在するのも実例だ。

 もし、その言葉が真実なら、過去より死刑を実行した、その国の制度によって生かされている多くの人民も、生きながらに罪を犯しているという事になってしまう。

「復讐なんてやめて! 何も産まないわ!」

 と、綺麗事が言えるのは、余程の聖人君子か、復讐を考える程の酷い仕打ちを受けた事のない人間が無責任な発言をしているかの、どちらかでしかない。

 

 全てを忘れさせて、また己の人生を歩めるようにさせられる。

 現実として、悪人が死んだ方が被害者そして加害者親族にとっては大きな負担が取り除かれる結果となる。

 

 そんな現実的な説明を説くミラーガールを前に、小田原修司は彼女達に向けてハッキリと言い切った。

「この世に正義はない……あるのは、人のエゴだけだ」

 

 

 

[生き延びた者の心理と、かつての敵役たち]

 

 戦場の猛者たちに復讐心を煽り、闘争心をむき出しにさせて戦火を強めようとする小田原修司。

 修司が会得した新世代型二次元人の特殊能力の数々に翻弄されながらも、旧友である赤塚大作に激励されて戦意を再び湧き上がらせる聖龍HEAD。

 傷付き倒れる者が続出する戦場にて、決して自分と世界を許せない男と、そんな男を止めようと決して諦めない聖龍HEADという英雄達が対峙する。

 

 だが、決して諦めない魔鏡聖女ミラーガールも、その戦友である他の聖龍HEADも既に満身創痍の状態。

 その様な状態で、通常攻撃が効かない上に新世代型二次元人の特殊能力を得た修司と戦うのは困難を極めるのは目に見えている。

 そんな戦況の中、一人の青年が聖龍隊総長メタルバードに大声で呼びかける。

「総長! 此処は僕らに任せてもらえませんか」

 それは鬼神小田原修司の弟子達で構成されたスター・コマンドーを指揮する村田順一の声だった。

 メタルバードは順一の呼びかけに返す。

「オレ達HEADでも勝ち目が薄いっていうのに、お前らでも結局は同じ結果になるだけだ! 此処は少しでもオレ達で修司の体力を削らねえと……!」

 だが、そんな順一への返事を聞いて修司はメタルバードに投げ掛ける。

「無駄な事はするな、バーンズ。俺は無駄な事があまり好きじゃない。数多の能力を駆使できる俺に勝てる見込みが無い事実を悟れないほど、お前は愚かじゃない筈だ」

「ッ……!」修司から真理を衝かれ、メタルバードは口元を歪ませた。

 今の修司を更に見極める為に、そして何より活路を見出す為に体力を削れるだけ削る為、最前線に出て修司と激戦しなければならない猛者は、この状況では最早勝機を得る為の捨て駒にしなければならないほど戦局は圧迫されている事実をメタルバードは察していた。

 だが誰を捨て駒同然に修司の前に出すのか。いや、それ以前に修司と戦って死ぬ確率が高いであろう役回りを仲間に負わせたくないと思うメタルバードは苦悩していたのだ。

 そんなメタルバードの苦悩をテレパシーで読み取っていた修司は、平然とメタルバードに唱えるのだった。

「俺と戦い、俺に殺される捨て駒の役回りを誰にするか……いや、誰も死なせたくないという甘えから悩んでいるんだなバーンズ。その甘えが戦況を変えれない迷いと言う弱さだと、以前の俺は何度も説いた筈だぞ。戦争に……戦いには犠牲が付き物。犠牲なくして勝利を勝ち得る事は不可能なんだ。争いには少なからず犠牲が生じ、その犠牲の上に初めて勝利が輝くというモノ。まあ、だが……その仲間を犠牲にできないという甘えがお前達を勝利から遠退ける以前に、如何なる犠牲や捨て駒を用いても現実(いま)の俺には勝てないだろうがな」

 修司から現状の真理と、如何に思い悩んでも勝ち目がないという結果は変わらないと告げられて、メタルバードは愕然としてしまう。

 

 そんな修司の真理に動揺されてしまう聖龍HEAD。

 すると、そんなHEADに歩み寄り、声をかける二人の聖龍隊士の姿が。

「総長、いやHEAD……!」「その捨駒、僕達が請け負います」「! お前達……!」

 ヘルメットで素顔を隠す二人の男性隊士の志願にメタルバードは衝撃を受けた。

 そしてメタルバード以上に、その男性隊士達の言葉を聞いてHEADのセーラーマーキュリーとスター・コマンドーのローリング・バブルスが顔色を一変させる。

 その二人の隊士は修司の目の前近くまで歩み寄り対面するが、修司はメタルバードの承諾も得てないのに最前線に歩み出た二人の隊士を前に虚無の表情のまま首を傾げるという不気味な行動を示した。

 すると、その二人の隊士は顔を覆うヘルメットを外して、装着していたヘルメットを足下に投げ捨てて修司に素顔を晒す。

「……お前たちは……」二人の素顔を見た修司は目を丸くした。

 素顔を晒して修司の前に敢然と立つ二人の隊士。二人の名は浦和良と鮎貝高明。

 二人を前に、修司は平然と二人に話し掛ける。

「まさかな……かつて俺と……俺たち聖龍隊とも戦った事がある元敵役のお前らが俺の前に立ちはだかるとは」

 この修司の発言に、檻の中の二次元人たちは驚愕した。

「え!? 元敵役……? なに言ってやがるんだぁ?」

 道化のバギーは修司の発言に理解できず非常に困惑してしまう。

 すると修司の発言に困惑する旧世代のバギーにプロト世代のチョコやギュービッドたちを横目に、修司と共有感知で潜在意識が繋がっている新世代型二次元人たちは修司の記憶から浦和良と鮎貝高明の過去を知り得た。

 浦和良は、その昔セーラー戦士達と敵対していた存在によって怪人へと変貌させられ、セーラーマーキュリーを始めとするセーラー戦士達と戦った。そして鮎貝高明は、スター・コマンドーのパワパフガールズZが浴びた白い光とは対なる黒い光を浴びて、ライオンと狼を足した様な獣人へと変身してしまいガールズと戦った過去を持っていた。

 彼らと彼女達の戦いには、当時の聖龍隊やスター・コマンドーも深く関与しており、当時の修司も変身して敵になった浦和と高明に戦いを挑んだ。

 そして最終的に変身した二人はそれぞれのヒロインの活躍によって倒され、元の人間へと戻ったのだが、それを切っ掛けに二人とも各々の思想で聖龍隊に加わり隊士として働いていたのだ。

 この経緯を共有感知で知り得た新世代型二次元人たちが見守る中、修司は自分の前に立ちはだかる浦和良と鮎貝高明を見据えて語り始めた。

「いや、元敵役という言い方は少し失礼だったな。今ではお前らはどちらも聖龍隊の頼れる隊士、そして何より……亜美とみやこの大切な理解者だったな」

 修司が最後に言った言葉の意味を新世代型達は瞬時に共有感知で悟った。浦和良はセーラーマーキュリーこと水野亜美と、そして鮎貝高明はローリング・バブルスこと豪徳寺みやこの恋人なのだ。

 二人のスーパーヒロインの恋人でもある二人の隊士を前に、修司は二人に問うた。

「……それで、俺の前に立ちはだかって何の真似だ? まさか何の能力も持たない、それこそ常人であるお前らが俺と戦おうなんて思っちゃいないだろうな」

 修司の問いに二人はそれぞれ答えた。

「ええ、その通りです」

「僕たちは、少しでもヒーロー達が消耗しない為に貴方と戦うつもりです」

 この浦和良と鮎貝高明の返答を聞いて、恋人であるセーラーマーキュリーとローリング・バブルスは一驚した。

「う、浦和君!」「タカちゃん! 危ないですっ」

 しかしセーラーマーキュリーとローリング・バブルスの声に二人は動じることは無く、それどころか笑みを浮かべて二人の彼女に横顔を見せ付けた。

「大丈夫だよ、亜美」「無駄死にだけはしないよ、みやこちゃん」

 二人のヒロインにそう言った男二人は、再び修司に顔を向けると悲しいほどに虚無の表情になっている修司に己の信念を述べた。

「……僕たちは、過去(かつて)は敵として聖龍隊の人と……何よりも今では掛け替えのない大事な人を傷付けてしまった過去があります」

「でも、敵になってしまった僕らを聖龍隊は、大切な人たちは……命を賭けて救ってくれた!」

「だから、僕達もその時のヒーロー達の様に今度は……あなたを助けたい!」

「世界に、現実に絶望し……自分自身を見下して毛嫌いしてしまってる小田原修司、貴方を今度は僕らが命を賭けて救いたい!」

「僕達も聖龍隊によって救われた……だから今度は、僕らが……聖龍隊の一員になった自分の力で君を止める!」

「みやこちゃんや亜美さんだけでない……多くの聖龍隊から認められている修司さんを止める役目は、今や聖龍隊の一員になった僕らで請け負います!」

 交互に熱く訴えかける浦和良と鮎貝高明は、最後に二人同時に修司に向かって

「「あなたを命がけで止める! それが……過去に僕らを救ってくれたヒロイン達への恩返し!!」」

 浦和良と鮎貝高明の熱い言葉を聞いて、人知れず感激するセーラーマーキュリーとローリング・バブルス。

 だが、二人の熱弁を聞いても情が揺さ振れる事が無い修司は、二人の熱い戦意を目の当たりにして臨戦態勢を構えた。

「……解ったよ。そこまで言うのなら相手してやろう……だが、後悔はするなよ? 俺とお前達、絶対的な力の差を……到底、埋め尽くされない力の差という溝の深さをな……!」

 そう言うと修司は身構え、二人と本気で死力を尽くして戦おうと手を招いて二人を挑発する。

「こうなったら……高明くん、こっちもアレをするしかないね」

「ええ、浦和さん……今の修司さんと本気で戦うには、アレしかないですね」

 臨戦態勢の修司を前に、浦和良と鮎貝高明の二人は顔を合わせて意気投合する。

 すると次の瞬間、二人の体から光が発せられ、二人はその光に呑み込まれた。

「……?」「! あ、あいつら……!」「「!?」」

 全身から謎の光を発する浦和良と鮎貝高明の二人を視認して、修司は不思議がり、メタルバードは愕然とし、セーラーマーキュリーとローリング・バブルスは激しく戸惑った。

 そして全身から発光した二人は、光が納まった次の瞬間にはその姿を一変させていた。

「な、何なんだ! あれ!?」檻の中から真鍋義久達が容姿が変貌した二人を見て驚愕した。

 浦和良と鮎貝高明の二人は、その姿を変貌させてお互い共に変わり果ててしまった。

 浦和良は全身が文房具で構成された様な怪人に、鮎貝高明はまるでライオンと狼を足した様な鎧を装着した狼男の様な姿へと変身したのだった。

「あの二人……変身しちまったぞっ!?」

 怪人獣人へと変身を遂げた二人を目撃して、大将は目玉が飛び出るほど驚愕してしまう。

「あ、あの姿って、まさか……!」

 何かを周知しているかのように赤塚組幹部衆のミズキは動揺した。

 すると変身した二人を目撃して、メタルバードが説明し出した。

「あの姿は、中には知っている者も多くいると思うが……そう、浦和良と鮎貝高明が敵役としてオレたち聖龍隊と戦っていた時の異形の姿だ。浦和良は主にブンボーと呼ばれる怪人で、鮎貝高明はライオンを足した様な鎧を纏った狼男の姿……過去にブンボーはセーラー戦士たちが、狼男の様なモンスターに変化した高明はバブルスの手によって元の人間に戻った筈だが……なんで、また」

 メタルバードは何ゆえ浦和良と鮎貝高明の二人が、過去に敵役であった頃の異形の姿へと変身できたのかまでは解らなかった。

 すると戦場の皆が敵役だった頃の姿に変身した二人を見て動揺していると、ブンボーと狼男の蒼い光が身体に現れた。

 そしてブンボーにはマントの様に蒼い布が、狼男には蒼い甲冑が現れ、何処となく雰囲気にも変化が見られた。

「あ、あの光、そして蒼いマントに甲冑は……!」

 メタルバードは蒼いマントを身に付けたブンボーと蒼い甲冑を装着した狼男を目の当たりにして愕然とした。

 そしてその光景を目撃したメタルバードは、一つの憶測を推測した。

「もしや……! さっきミラーガールが戦場にいる、みんなに自分の聖なる光を分け与えた効果で……良と高明に変化の力を与えたのかもしれん……! 二次元人が古来より持っている変身能力……その潜在能力が目覚めて、二人が過去に経験した敵キャラへの変身が一時的とはいえ可能になったのかもしれねえ……!!」

 メタルバードの説明を聞いて、周辺の聖龍隊や赤塚組は目を丸くして驚いた。

「お、おい! アッコの力が分け与えられたってだけで、過去に自分が変身しちまった敵キャラに変身しちまったって事か? ズルいぞ! 俺も責めて波ーーッを出したいぞ、かめはめ波ーーを!!」

「大将、落ち着きなさい。常人のあなたが波ーーを出せる事も無ければ、スーパーサイヤ人みたいに変身する事もないから」

 非常に羨ましがる大将に、ミズキが呆れながらも落ち着かせる。

 

 そしてブンボーに変身した浦和良と狼男に変身した鮎貝高明の二人に対して、修司は真っ向から立ち向かった。

「なるほどな、アッコが皆に分け与えた聖なる力で過去に自分達が変化した敵役に変身して、俺に抗う気か……」

 ブンボーの両手のコンパスの針状の腕での攻撃を回避しながら、修司は狼男へと攻撃を仕掛ける。

「だが……いくら人間以上の力を持つ異人へと姿を変えても、進化してしまった俺に勝てる保証など無いぞ」

 修司は狼男に格闘術で攻めながら説き語るが、狼男に変身した鮎貝高明は強烈な回し蹴りを修司の腹部に蹴り込んで修司を吹き飛ばした。

「ッ……! アッコの聖なる力で、俺の物体をすり抜ける能力を封殺しているのか……! 今は少しばかり物体を通過する能力がまた使えるまで凌ぐしかないようだ」

 地面に吹き飛ばされた修司は冷静な判断力で状況を分析し、今しばらくは物体をすり抜けられる身体能力が使えるまで耐え凌ぐ決断をした。

 そして修司は新世代型達から会得した能力でブンボーと狼男に攻撃。修司からの猛攻にブンボーと狼男は一気に窮地に追い込まれてしまう。

「良くん!」「タカちゃん!」

 窮地に追い込まれたブンボーと狼男を見て、セーラーマーキュリーとローリング・バブルスは焦燥の表情で呼びかける。

 そして最後はサイコキネシスで動きを封じられたブンボーと狼男を宙に浮かせた所に、修司は両手から闇の能力で作り出した巨大な二対の鋭利な刃を握り締めて、その二刀の切っ先を二人に向けて発した。

「だから言っただろう、俺とお前達の間には絶対的な力の差がある、とな……!」

 次の瞬間、修司は二人に有無を言わさずブンボーと狼男に二対の巨大な刀を放ち、二人を串刺しにしようと目論む。

「ああ!」「うっ……」

 その光景に思わず顔を背けたり、顔を手で覆って二人が死ぬ瞬間を直視するのを拒むセーラーマーキュリーとローリング・バブルス。

 しかしサイコキネシスで宙に拘束された二人に鋭利な刀が突き刺さる寸前、二人と修司の間に間髪入れず駆け込んだ一人の青年が得物を振り回した。

 駆け込んできた青年シバ・カァチェンは、逆刃薙(さかばなぎ)を回転させて向かってくる二対の刀を弾いてブンボーと狼男を死守した。

「カァチェン……」

 トドメの攻撃を防いできたカァチェンを前に、修司はブンボーと狼男を拘束していたサイコキネシスを解除して二人を地面に下した。

「大丈夫ですか? 異人の方々……」

 カァチェンが解放されたブンボーと狼男に声をかけると、二人は人語ではない言葉でカァチェンに返事した。

 そしてカァチェンが修司に面と向かって対峙すると、修司はカァチェンに問い掛ける。

「何の真似だ、カァチェン? せっかくの余興だというのに、それを邪魔しては面白みが無いだろ?」

「我々は少なくとも余興で楽しんでいる訳ではありません……! もう仲間は、友は死なせない。その決意を胸に、前へと……そして貴方に勝つのです」

 力強い言葉で修司に返答するカァチェンの発言に、修司は挑発するかのような言動で話し掛ける。

「それなら……その異人二人と俺に抗って見せろ。所詮は過去(かつて)の俺と同じ……欠けた心しか持ち合わせていないお前が、仲間を失ったお前が何処まで抗えるのか、最後に見せてみろ」

「それが……貴方の御意思とあらば……!」

 

 修司は全てを終わらせるこの戦いで、かつての自分と同じであるシバ・カァチェンが何処まで抗戦できるか見届ける算段だった。

 そしてカァチェンも、そんな修司の期待とは関係なくブンボーと狼男と共に修司に抗おうと全力を揮うつもりだった。

 

 生き延びた者として、大切な人とその友の為に命を賭けて変身を遂げて戦いに挑んだブンボーと狼男。

 友の言葉と意志を背負い、黒武士の面を破壊した時の様に再び修司と対戦しようと意気込むシバ・カァチェン。

 三人一組での抗いという名の戦いに対して、敵対する修司は如何なる戦いを見せるのだろうか。

 

 

 

[三人一組での抗い]

 

 進化した小田原修司の猛攻撃で、多くの同胞を失った聖龍隊及び連合軍。

 そんな苦境の中、二人の生き延びた聖龍隊士が大切な恋人でもあるHEADや英雄達の消耗を抑えようと修司の前に立ちはだかる。

 その二人の隊士の名は、浦和良と鮎貝高明。二人は過去に敵へと変貌して聖龍隊と戦った経緯を持ち、その後は今に至るまで聖龍隊の隊士として陰ながら活躍していた。

 そんな浦和良と鮎貝高明の二人は、ミラーガールから分け与えられた聖なる力によって、自分達が過去に変身しては聖龍隊と戦ってしまった異人の姿へと自らの意思で変身した。

 浦和良はブンボーと言う怪人に、鮎貝高明はライオンを足した様な鎧を纏った狼男へと。

 そして更にブンボーと狼男は、ミラーガールの聖なる力の効力によってブンボーは蒼いマントを、狼男は蒼い甲冑を装着して、破滅へと進化した修司に戦いを挑んだ。

 しかし自身のクローンである新世代型二次元人の能力を会得した修司に歯が立たず、二人はスグにサイコキネシスで動きを封じられてしまう。

 そんな二人に修司はトドメを刺そうとするが、そこにシバ・カァチェンが颯爽と立ち塞がり、ブンボーと狼男に突き刺さるであろう二対の刀を逆刃薙(さかばなぎ)で弾き返す。

 二人の異人を助けたカァチェンは、修司にこれ以上仲間を死なせたくない、仲間の死を無駄にしたくないと訴え、その訴えを聞いた修司はカァチェンに三人一組で自分に抗って見せろと物申す。

 果たしてカァチェンはブンボーと狼男と共に、純粋な破滅へと進化を遂げた修司に何処まで抗えるのであろうか。

 

「うっ……!」

 ブンボーと狼男という大きな戦力と共に三人一組で修司に抗戦するカァチェンであったが、新世代型二次元人の能力を会得した修司の前に苦戦を強いられるカァチェンは軽く振り払われて吹き飛ばされてしまう。

 そんなカァチェンに加勢しようと、ブンボーと狼男は連続で修司に攻め続けるが、ミラーガールの聖なる力で物体をすり抜ける体が効かなくなっている現状で修司は二人の猛攻を回避し続け、一瞬の隙に片太刀バサミでブンボーを斬り付けて吹き飛ばし、強烈な蹴りで狼男を吹っ飛ばしてしまう。

 三人はそれぞれ修司に抗おうとするものの、元々闇の能力で強大な戦力を持っていた修司に付け加え、更に新世代型二次元人の能力をも会得した彼に対して勝ち目が薄くなっていた。

「何故だ……何故、お前達は現実を見ようとしない……俺自身のクローンである新世代型の能力を得た俺に、勝てる筈も無いだろう」

 修司が自分には勝てないという現実から目を逸らし、直視しないで抗う者たちに語る中、カァチェンは力強い面魂で修司に反発した。

「貴方がそれを決める権限など、微塵もない筈です……私たちは負けません……!」

 そう言うと、カァチェンはよろめきながらも立ち上がり、彼に続いてブンボーと狼男の二人も立ち上がっては再び修司に抗う意思を示した。

 一旦修司から距離を置こうと、カァチェンは駆け出して戦場を移動する。

 だが修司は距離を置いてから逆刃薙(さかばなぎ)で斬撃を飛ばそうとするカァチェンの行動を察して、彼に向けて地走りを繰り出して攻撃の隙を与えない。

 修司の斬撃を逆刃薙(さかばなぎ)での加速を加えた速足で辛うじて回避しながら移動するカァチェン。

 そんなカァチェンを援護しようと、ブンボーが両腕のコンパスの針で修司を刺し貫こうと距離を詰める。が、修司は剣戟でブンボーの攻撃を巧みに刃で受け止めては防いでいく。

 更にそこへ狼男が蒼い甲冑を着用している効果からか、手に中世の槍を現出させて修司に突撃する。しかし狼男の槍での突撃を察した修司は、ブンボーよりも高く高く跳躍して狼男の突撃を回避。狼男は危うくブンボーに槍が突き刺さりそうになり、一瞬だが慌てながら突撃を急停止した。

 宙へと跳び上がった修司は、そのまま巨大な刀を両手で振り上げて一気にブンボーと狼男へ振り下ろすと同時に地面へと降りていく。

 だが、その修司の振り下ろす動作の最中へカァチェンが逆刃薙(さかばなぎ)で斬撃を繰り出して、二人の頭上の修司に攻撃。修司はカァチェンからの斬撃を巨大な刀の刀身を盾の様に使用して防いで見せる。

 そしてカァチェンの斬撃で攻撃を妨害された修司は、そのままブンボーと狼男の間近に着地すると二人の反撃よりも早く、修司は素早く動いてブンボーと狼男に格闘術を叩き込む。

 修司の格闘術を受けて軽く吹き飛ばされるブンボーと狼男の二人に、修司が気を取られている間、カァチェンが瞬時に修司へと接近して逆刃薙(さかばなぎ)で切り刻む。

 が、カァチェンの疾風の如き連続の斬撃を受けて傷だらけになった修司の肉体は、例の如く神原秋人の再生能力で瞬時に傷が塞がり回復してしまう。

「いくら俺を攻撃しても無駄だという事に気づいてないのか? 神原秋人の再生能力にマギウスの不死性を得た俺を殺す事は不可能なんだぞ……」

「それでも、私達は諦めない……! 死んでいった仲間の為に、そして何よりも生き残った自分達だからこそ出来得る可能性を自ら否定したりはしない……!」

 修司からの問い掛けに力強く返答しながら応戦するシバ・カァチェン。だが、そんなカァチェンと共闘するブンボーに狼男の三人の姿勢を見て、修司は心の奥底で思った。

(もう、うんざりだ……綺麗事は。そろそろ黙らせるか)

 カァチェン達の諦めない姿勢を前にして、修司はカァチェンが悉く発する

 そして修司は時おり使い慣れてないテレパシーでカァチェンとブンボーと狼男の動きを先読みし、三人からの攻撃を回避。

 すると修司は先が巨大で鋭利な返しが付いている槍を振り上げて、カァチェンの逆刃薙(さかばなぎ)に突き刺して薙を地面に固定してしまう。

「っ……!」

 地面に返しのついた槍で逆刃薙(さかばなぎ)を固定されて、カァチェンは酷く戸惑ってしまう。

 そしてカァチェンが必死に槍から逆刃薙(さかばなぎ)を引き抜こうとしていると、修司がそんなカァチェンの首を狙って断頭刀で切断しようと振り下ろそうとする。

 そんなカァチェンを庇おうと、ブンボーと狼男が修司を制止しようとするが、これこそが修司の狙いだった。

 修司は標的をすぐさまカァチェンからブンボーと狼男に変えて、断頭刀を消滅させてカァチェンに向かって呟き掛ける。

「どう足掻いても現実を変えられない様に……仲間を守れない苦しみを、再び味わえ」

 そう言った次の瞬間、修司はブンボーと狼男に向かって両手から現出させた槍を振り上げて一気に刺し込んだ。

 修司の闇の能力で作られた闇の武器は、ブンボーの強靭な肉体と蒼い甲冑を纏う狼男の装甲を貫き、二人は絶句してしまう。

「う、浦和くん……!」「タカちゃん!」

 その光景を目撃して、セーラーマーキュリーとローリング・バブルスの二人は絶叫した。

 同じくその光景を目の当たりにしたカァチェンは、再び目の当たりにした仲間の死に言葉を失う。

 修司の闇から構成された武器は本来、相手の肉体に損傷を与える事無く、激痛のみを与える作用の筈であったが、新世代型二次元人の能力を会得して吸収した影響か肉体にも損傷を与えるまでに変化してしまっていたらしく、ブンボーと狼男の二人の命を確実に奪ってしまう。

「グ、グググ……!」「ガウゥ……」

 ブンボーと狼男は苦しそうに断末魔を唸ると、そのまま地面に倒れる。そして倒れた直後、力が失われた影響か二人は元の浦和良と鮎貝高明の姿へと戻った。

 だが姿が戻った浦和良と鮎貝高明の二人が起き上がる事はなかった。

「だから言っただろう、カァチェン……俺たちの様に心の欠けた奴が夢を叶えられない様に、もう仲間を死なせないという思いですら叶いやしないんだ。もう、無意味な戦いはやめる事だな」

 死に絶えた浦和良と鮎貝高明の二人の亡骸を見下ろし、カァチェンの心に虚しい風穴が空いた様な感覚が襲った。

 

 修司の猛攻で共闘してくれてたブンボーと狼男の二人までも続いて戦死した経緯に、シバ・カァチェンは再び戦意を削がれた上に掲げていた信念と意志を否定されてしまう。

 そんなカァチェンに駆け寄り、声をかけてきた者が。

「カァチェン、しっかりして。あなたは決して間違ってはいないわ」

 その声にカァチェンが振り向くと、そこにはカァチェンを気に掛けるミラーガールの姿があった。

「加賀美殿……」

「カァチェン、あの二人……浦和さんと高明くん、ブンボーたちだってサコンと同じ。未来に夢を馳せる、あなたの未来を守る為に共闘してくれたのよ。その結果が自分達の死に繋がってしまったけど、浦和さんも高明くんも後悔はなかったと思うわ。二人とも、大切な人を……マーキュリーやバブルスの為にも、あなたと共に戦っていたのよ。だから自分を責めないで」

「………………」

 ミラーガールからの優しい言葉に、カァチェンは返す言葉が見付からずにいた。

 そしてカァチェンに優しい気づかいをしたミラーガールが視線を変えると、その視点の先には絶命した浦和良と鮎貝高明の許に駆け寄り、彼らの亡骸を労わるセーラーマーキュリーとローリング・バブルスの姿が見受けられた。

 ミラーガールは戦友でもある二人のヒロインの悲痛な心情を察してか、非常に悔しそうな表情で奥歯を噛み締め、そして修司の方へと顔を上げて彼の顔を見詰める。

「修司……何処まで昔の、過去(かつて)の絆を断ち切るの? SRMや大勢の同士、そして元敵役だった浦和さんや高明くんまでも殺めてしまって……其処まで、自分と繋がっていた絆を重苦しく感じていたの?」

 ミラーガールから質問を投げ掛けられ、修司は静かに返答した。

「アッコ、俺は確かに最初は人との繋がりを……絆を温かく感じ取っていた。だが、所詮他人との繋がり……絆を得る事は、それだけ大きな重責を背負い、自らを圧迫させなければならないという事だ。……俺も前々から薄々と感じていたんだ……確かに絆は愛を感じない俺でも温もりを与えてくれた。だが、その絆は時として重く冷たく自分を押し潰すほどの重責に変わってしまってた。そう、アッコ……お前との繋がりも俺には重く険しいモノに感じてしまう……」

 修司からの告白にミラーガールは一瞬悲しく思うが、すぐに気を取り直して修司に面と向かって話し返した。

「そう、だから修司。貴方は過去の全ての絆を捨てて、自分と自分のクローンである新世代型二次元人の未来をも捨て去る為に現実(いま)と孤独に戦っているのね」

「そうだ、アッコ。それに絆とは、所詮は人との繋がりは新たな衝突を招く。すなわち絆は新しい争いの発端にも繋がる。人の破滅の運命は、人との繋がりを全て捨て切ってこそ初めて消せるんだ」

「そうね……確かに、人と人との繋がりは、時には憎しみや怒りに繋がり、そこから新しい争い事を起こしてしまう。ジュン君も過去に、あのヤン・ミィチェンと出会ったからこそ彼との悲しい衝突や別れを経験した……人との絆が必ずも、人を幸せにするとは限らないものね」

「だからこそ……! 俺は過去の繋がりを全て断ち切り、人間が積み重ねてきた憎しみの連鎖という歴史を今ここで終結させる……! 俺やお前達、そう聖龍隊が築いてきた負の連鎖を完全に断ち切るんだ……!!」

「……でも、人との絆が全て不幸の源とは思わないわ。実際、私は修司と……そして聖龍隊のみんなと絆を得られた事を後悔してないわ」

「………………」

「確かに私がミラーガールとして戦いに身を投じてしまった原因は、三次元人である修司との出逢いが切っ掛けよ。でも私は修司と出逢って喜びはしたけど後悔したことは無い……戦いとは確かに過酷で困難なもの、けれど私は修司や聖龍隊のみんなとの思い出を大切にしたい。修司は人との繋がりは不幸を招くと言うけど……人との繋がりは不幸だけでない、確かな幸せだって確実に存在しているわ。そんな絆と、その絆が築いてきた長い長い歴史までも私と共に消滅させるというのなら……私は修司と全力で戦うわ!」

「それがお前の決意か……それでいい。俺も正直、戦意のない奴と戦うのは気が引けてた」

 ミラーガールと一通り話した修司は、自分の真横の空間の裂け目に手を突っ込んだ。

 それを見ていた大勢が突然の事態に驚いていたが、そんな現状の中で修司は空間の裂け目からある代物を取り出した。

「あれは……!」その代物を見たメタルバードは驚愕した。

 修司が空間の裂け目から取り出したのは、今まで修司が持ち合わせていなかった彼の得物でもある聖龍剣だった。

(修司の奴……聖龍剣を空間の裂け目に隠していやがったか!)

 メタルバードが愕然としている中、裂け目から聖龍剣を取り出した修司は、目の前に立ちはだかるミラーガールに向けて聖龍剣を放り投げた。

「!」突然、足下に聖龍剣を放り投げられて戸惑うミラーガール。

 すると聖龍剣をミラーガールへと放り投げた修司が言う。

「聖龍剣、俺が最初に手にした武器だ。その聖龍剣から全てが始まり、今に至る……アッコ、お前のミラー・ソードは耐久性に欠ける。俺が使ってきた聖龍剣を使い、俺と闘え。俺は聖龍剣との経験も全て無にする。その為にもお前と共に聖龍剣も歴史から葬る必要がある。お前自身が、聖龍剣を使う気があるのならな」

 修司から聖龍剣で闘うよう指示されたミラーガールは、一時ばかし迷ったものの何かを決意したかのような表情に変わると、足元の聖龍剣を拾って修司に

「……解ったわ修司。貴方が望むなら、私は貴方の武器である聖龍剣で貴方と闘うわ。過去(かつて)の貴方を取り戻す為にも、過去(かつて)の貴方が使ってた聖龍剣で貴方と闘うわよ。修司、貴方を含めた全てを取り戻して、私はみんなを……新世代型を……この世界を守るわ!」

「その意気だアッコ。俺と闘え、死力を尽くして……そして俺は俺自身に、何よりも新世代型達に勝つ! その為にもお前と、俺が過去に戦闘で使った聖龍剣共々、全てを滅ぼす……!」

 ミラーガールに聖龍剣を託し、彼女と聖龍剣をこの世から葬る事で全てに終止符を打とうとする修司に対して、ミラーガールは気高い意志で修司と向き合う。

 

 そんな向かい合う修司とミラーガールを見届けて、メタルバードが修司に話を投げ掛ける。

「修司……今のお前には何もない。アッコ、そしてカァチェンやみんなの背には沢山の想いがある。だが修司、今のお前の背には何がある……?」

 全ての絆を、重責を捨て去った修司に問い掛けるメタルバード。だが修司は何も答えず、黙然とミラーガールと対峙するばかり。

 

 人との繋がり、それは確かに争いという悲劇を招いてしまうもの。

 だが、その絆が時には多くの命を、心を救ってきたのもまた事実。

 全ての絆という重責を捨てた小田原修司と、全ての絆を背負って修司に立ち向かったカァチェンやミラーガールたち。

 そして今、遂に純粋な破滅へと進化を遂げた小田原修司と、始祖と呼ばれるミラーガールの死闘が始まろうとしていた。

 

 終わるのは小田原修司かミラーガールか、それとも………………

 

 

 

 

[小田原修司(破滅)]

 

 黒武士の真の姿である小田原修司。

 その小田原修司が、自分のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収した事で誕生した異質なる存在。

 

容姿

 全身がひび割れた白い肌に白い頭髪に変化しており、額には小さな角が二本、そして背中には揺らめく焔が靡いている。

 修司曰く「この姿こそ、新世代型二次元人の未来の姿」であり、近未来で新世代型達が進化してしまう姿だと説いている。

 

能力

 如何なる物体をもすり抜ける肉体を持ち、直接攻撃や物理系攻撃が効かないのが普通。

 変化する前から生まれ持っている闇の能力は健在であり、その能力と組み合わせて後記の能力をパワーアップまたは変質させて使いこなせる。

 

会得した新世代型二次元人の特殊能力

 琴浦春香のテレパシーに斉木楠雄の超能力、周囲の物体の動きを全てスローモーションで捉えられる瀬名アラタのオーバーロード能力、纏流子が今や失った片太刀バサミでの戦法、神原秋人の再生能力、栗山未来の血を操る能力(既に以前からクロナの能力を真似て会得している)、名瀬博臣と美月の檻の能力、一ノ瀬はじめの文具の隠し武器、橘清音の剣技、枇々木丈の火炎能力、O・Dの万物を砂状に崩壊させる能力、うつつの生命力を吸い取る能力、パイマンの車輛変形能力、爾乃美家累のネット介入(ハッキング)能力、時縞ハルトらマギウスの不死性の肉体。

 

戦闘方法

 相手の動きや心理を盗み説くのにテレパシーを。移動技には瞬間移動を主に血の鎧から噴き出す背中のジェットからのブースター。咄嗟の攻撃を回避するのに相手の動作が緩く見えるオーバーロード。武器は血の鎧で武装した上に、右手に片太刀バサミと「無限刀 嵐」を繰り出せる刃に変形した左手。相手の動きを一時的に拘束する名瀬兄妹の檻の能力。身体能力は神原秋人の再生能力にマギウスの不死性の肉体を得た状態で戦う。

 

 

 

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