聖龍伝説 現政奉還記 破滅の章   作:セイントドラゴン・レジェンド

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現政奉還記 破滅の章8 聖女と破滅

[対決する聖女と破滅]

 

 遂に純粋な破滅へと進化を遂げた小田原修司。

 彼はその絶大な能力で、連合軍の巨大戦力であるSRMを全滅させただけでなく、戦場の多くの命を奪っていく。

 友となれたマン・サコンの決死の行動で、彼に命を救われたシバ・カァチェンはサコンの死に落胆する。

 そんなカァチェンに「俺とお前は同じ欠陥品」と説く修司は、カァチェンの戦意を削ごうとする。

 が、そんな落胆するカァチェンをミラーガールが激励する。彼女からの激励にカァチェンは死んだ仲間達の思いを無駄にしない為にも戦い続ける意志を示す。

 しかし新世代型二次元人たちの能力を会得した小田原修司に対する勝率は極めて低く、聖龍HEADですらも殆ど歯が立たない。

 そんな苦戦する戦況の中で、かつて聖龍隊と敵対していた元敵役の二人、浦和良と鮎貝高明の二人が愛するヒロインの為に命を賭けて修司と戦う覚悟を決めて戦前に名乗り出る。

 そして浦和良は怪人ブンボーに、鮎貝高明は狼男へと変身して修司と熱戦を繰り広げる。

 その途中、シバ・カァチェンも参戦して共に修司を倒そうと奮戦するが。

 修司が使える様になった新世代型の能力の前では、ブンボーも狼男も最後にはその命を散らしてしまう。

 多くの仲間の死を目の当たりにしてきたミラーガールを前に、修司は隠していた己の得物である聖龍剣を彼女に託した。

 聖龍剣、それは小田原修司が長年使い込んできた愛用の日本刀。

 修司はミラーガールに聖龍剣で闘うよう指示を出し、彼女共々聖龍剣での伝説を人類の歴史と共に終わらせようと企てていた。

 ミラーガールはその修司の提案に乗り、聖龍剣で闘う事で過去の修司を守り、今の修司を取り戻そうと聖龍剣を手にする。

 果たして終わるのは小田原修司か、ミラーガールか、それとも………………。

 

「俺は過去の俺と決別する……だからこそアッコ。お前に聖龍剣を託し、聖龍剣で闘うお前と共に聖龍隊での伝説を終わらせる」

 

 過去に積み重ねてきた全ての歴史を終焉に導く為にも、ミラーガールに聖龍剣を譲渡し、彼女共々全てを終わらせると説く修司。

 世界の平和の為に影ながらも戦い続けたにも拘らず、その世界に裏切られ、忌み嫌う自分自身のクローンである新世代型二次元人を量産されて、世界を穢されたと思い込んだ修司が、その世界と歴史いやアニメタウンや聖龍隊での思い出すらも消してしまおうとする修司にミラーガールは心底悲しんだ。

 そんなミラーガールの悲しみを酌んだのか、修司は彼女に説いた。

「俺とお前では目的が違う……人とは目的が、思想が違うだけで争い合う生き物なんだよ」

 事実、人間は宗教などの思想の違いだけでも血みどろの戦争を繰り返してしまう生き物。だが、そんな風に人間の未来までも否定する修司の思考にミラーガールは遂に耐え切れずに一粒の涙を零した。

「……お前の鏡の様な瞳から流れる涙も、また美しい……だが、その悲しみの涙をお前は過去にどれだけ流してきた? どれだけ世界の醜い現実に涙してきた……それこそが、俺が世界を無に誘う理由だ」

 修司は、ミラーガールが世界の醜い現実に悲観し、涙を流してきた原因こそが、自分が世界を無に誘う理由だと説いた。

 だが、ミラーガールが涙を流す真意をメタルバードが修司に説いた。

「修司! お前に、黒武士の姿に扮していたお前に殺されかけた事もあるアッコが……今でもお前の事を思い涙を流すのは……」

 メタルバードは修司に向かって叫んだ。

「お前を愛して、苦しんでいるからだ!」

 今なお修司を愛し、想っているからこそ悲しみの涙を、心を痛めて涙を流すのだと説くメタルバードの心からの訴え。

 しかしメタルバードの訴えを聞き取った修司は平然と真顔でメタルバードたちに返事した。

「それが、失敗した過去の……呪縛なのかもな……」

 愛情こそが世界が過去に犯した失敗の原因であり、そんな過去からの呪縛なのかもしれないと説く修司の言葉に聞いていた皆々が絶望する。

 

 二次元人の始祖であるミラーガールと、全てを終わらせる純粋な破滅へと進化した修司の決闘が今始まった。

 聖龍剣の切っ先を修司に向けて、絶え間ない戦意を指し示すミラーガールの構える姿勢を見て、メタルバードは驚いた。

(アレは……! 修司のと……)

 聖龍剣の背を左手の甲に乗せて、切っ先を相手に向ける独特の姿は、かつて修司が敵に対して差し向けていた戦闘スタイルと寸分違わず同じだった。

 そして次の瞬間、修司とミラーガールは一瞬の内に駆け込むと同時に互いに己が振り翳す得物をぶつけて激しく剣戟を始めた。

 ミラーガールが懸命に聖龍剣で応戦する一方、修司は闇の能力で作り出した変幻自在の武器でミラーガールと闘う。

 時には槍に、時には弓矢にと、遠近・状況に適した武器でミラーガールと応戦する修司。

 しかし修司が弓を射ればミラーガールは聖龍剣で飛来する矢を弾き返し、修司が巨剣で豪快な一振りをすればミラーガールは後方に吹き飛ばされながらも聖龍剣で剣戟を防いで直撃を免れる。

 ミラーガールも修司に負けず劣らず応戦してるが、軽々と大小様々な武器で攻撃してくる修司の得物にミラーガールは辛うじて聖龍剣で迎え撃つのが精一杯だった。

「聖龍剣……いや、日本刀は鋼の塊。それを自在に振り回すには女の細腕では難しい……故にアッコ、お前が聖龍剣を使いこなせるのは困難に等しいぞ」

「それでも私は聖龍剣で闘うわ……! 修司、貴方との思い出が詰まったこの日本刀で、貴方を止める……!」

 聖龍剣を託した修司は、鋼鉄の塊である日本刀を扱うのは難しいと説く。が、ミラーガールはそれでも修司との思い出が詰まった聖龍剣で今の修司を止める決意を揺るがせない。

 と、此処でミラーガールが修司に言う。

「修司も闇の能力で色んな武器を使っているんだから、私だって……!」

 するとミラーガールは聖龍剣を後ろ手に回して、背に刃を隠した直後に左腕を上へと差し向けて手の平に光が輝き出した。

「鏡手裏剣!」

 ミラーガールは左手に鏡の光から作り出した巨大な手裏剣を修司に向けて投げ飛ばした。

 修司はミラーガールから放たれた鏡手裏剣を、同じく闇の能力で作り上げた巨大手裏剣を投げ飛ばして、空中で相殺した。

 と、ミラーガールは次に鏡の盾から小さい鉄球がついた鎖を出現させて、修司に向けて鉄球付き鎖を飛ばした。

 修司はその鉄球を闇で作った刀で弾き返すが、すかさずミラーガールはその弾かれた鎖を刀を持つ修司の右腕に巻き付けて、修司の動きを封じてみせる。

 だが修司は右腕に巻き付かれた鎖を、自身の血で作り上げた鎧からチェーンソーの様な刃を突出させて自力で断ち切り、続け様に背中のジェットブースターを噴出させてからの高速移動でミラーガールとの間合いを一気に詰めて死神の鎌の様な武器で斬りかかる。

 ミラーガールは寸でのところで聖龍剣で修司が斬り付けてくる鎌を受け止め、火花を散らしながら鬩ぎ合う。

「俺たち聖龍隊は世界を救ったんじゃない……壊してしまったんだ。俺は、そんな世界を真っ白な桃源郷に塗り替える事で、世界を零から始める……それが俺に残された贖罪だ」

「償いなら他の方法だってある筈……! 世界と、世界が生み出してしまった新世代型を滅ぼす事だけが贖罪じゃないのよ!」

 武器と武器で鬩ぎ合いながら問答する修司とミラーガール。

 そして互いに一旦距離を置いて、今度は両者とも飛び道具による武器で遠距離戦を展開。修司が投げる闇の手裏剣と、ミラーガールが鏡の煌めきから生み出す手裏剣が宙でぶつかり合い、双方とも封殺されていく。

「修司、思い出して! 貴方にだって愛情を感じられる心が存在している事を……私と出会う前から、修司には優しい心があったのを、私は知ってるわ!」

 ミラーガールは小学生の頃、修司に身を挺して守られた思い出を思い返しながら修司に訴える。

 しかし修司は、それこそ空虚な無表情ではあったが、激しい口調でミラーガールに言い返す。

「親からも友からも愛されたお前に……産まれて此の方、愛情を感じられない俺の何が分かるというんだ!!」

 表情には出さないものの、激しい怒りを声に表す修司の台詞に、修司と闘うミラーガールも二人の決闘を見守る多くの猛者達も心身ともに震え上がった。

 修司は表情はそのままに、激しい怒声で闘うミラーガールに言い切る。

「お前達との繋がりは……もう断ち切った」

 修司の発言に戸惑いながらも懸命に闘い続けるミラーガールに、修司は更に言う。

「さっきから言っている筈だ、周りから愛され続けてたお前に何が分かる……!」

 

 実際、修司とミラーガールことアッコの生い立ちは対照的だった。

 小田原修司は産まれながらに持っていた発達障害で、親はもちろん周りの人の愛情や優しさが感じられず、常に極度の人間不信であった。

 そんな修司に反して、アッコは自分の前に産まれていたであろう実姉が生後三日で死んでしまった未熟児であった経緯も含まれ、元気な女児として生を受けてからは両親から限りない愛情を惜し気もなく注がれ、大将やモコといった周囲を取り巻く友達にも事欠かなかった。

 男と女、光と闇、それだけに留まらず修司とアッコの出生にはそれぞれ大きな陰陽の埋まらない溝があった。

 生まれながらに愛を感じられない小田原修司、生まれながらに絶対の愛情を注がれたアッコ。

 この男女の闘いは、まだまだ続くのであった。

 

 

 

[それぞれの想い]

 

 陰と陽の出生、光と闇の間柄。

 そんな確実に対照的な人生を歩んできた修司とミラーガールの二人は、今なお壮絶な闘いを繰り広げていた。

 修司が棒の部分を長くした鎌でミラーガールの首を刎ねようとするが、ミラーガールはそれを盾で未然に防いだ。

 修司が振り回した鎌の刃に弾かれて押し返されたミラーガールは、切実な思いで修司に訴える。

「貴方は昔と変わってない……どんなに闇に居ようとも、この世界を想い、一身に憎しみを受けようと平和の為に行動してきた。その為なら、どんなに自分の手が汚れようとも構わなかった」

「………………」無言の行に至る修司に、ミラーガールは自分の真意を告白した。

「……でも、もうそれで生じた憎しみは、貴方だけには背負わせない。今度は、私も一緒にその憎しみを引き受ける!」

 修司が平和の為に行ってきた陰の行動で生まれた憎しみを、もう修司だけではなく自分自身も一緒に引き受け、背負うと宣言するミラーガール。

 だが、このミラーガールの宣言を聞いた修司は冷淡な口調で彼女に言い返した。

「俺が生み出してきた闇を、憎悪を共に背負う、だと? ……不可能だ。例え万が一、この先も未来が続くのだとすれば……俺だけでなく、俺のクローンである新世代型二次元人が生み出し続ける憎悪と怒りを背負い切る事になるのだぞ。果てしない憎しみの、負の連鎖……その連鎖から生まれる憎悪と怒りをお前だけで背負い切れる訳が無かろうに……!」

 すると、このミラーガールへの反論を聞いていたメタルバードが口を開いて修司に抗議した。

「アッコだけじゃねえ!! オレ達、HEADも……アッコと共に、お前が生み出してしまった憎悪を背負う覚悟がある!! アッコやお前だけに……平和の為の行動で生まれてしまった憎悪を背負わせない!!」

 メタルバードの大声での決意に、周りにいるHEADの皆々も賛同の意を表して力強く頷く。

 しかし修司はミラーガールや聖龍HEADだけでは、自分が生み出してきた憎悪や怒りを背負い切れないと決め込んでいた修司はミラーガールと闘いながら対話し出す。

「これまでの過去の……歴史が生んだ闇は俺が処理し、真っ白な桃源郷で全てを眠らせるだけだ」

「修司は……私たちHEADの思い出も全部切ってしまうというの!?」

「そうだ。俺は過去を切り捨てる。過去にお前たち二次元人から貰った偽りの心を捨てて、俺は世界と共に自分を含む全てを終わらせる」

「……っ!」

 自分が生み出した憎しみの連鎖が派生する過去も含んだ、人類の歴史を全て抹消し、聖龍隊での思い出も全て断ち切ると宣言する修司の言葉にミラーガールは衝撃を受ける。

 ………………だが、ミラーガールは躊躇う事なく修司に反抗した。

「切らせないわ!」

 そう言い切るミラーガールは、鎌から修司の背丈ほどの刀身の刀に変形した武器に聖龍剣を激突させては、修司に言い寄った。

「私は全部、過去の人たちからの意思から……思いから生まれ、そして学んできた! HEADや聖龍隊の仲間達がいるから前に進んで来られた! 歴史だけじゃない、今の私たち全てを作っているのよ!」

 古の人々から受け継いできた伝統や文化、そして意思から自分たち二次元人は生み出され、学ばされた。それと同様に聖龍隊の皆の存在で前に進められた。歴史だけでない多くの思いが現在の自分達を作っているのだとミラーガールは修司に説いた。

「絶対に切らせないわ!!」「だったら……どうすれば良いか、分かってんだろ」

 過去からの思いを断ち切らせないと意気込むミラーガールに、修司はその為に何をすれば良いかを問う。

 修司は過去からの思いを断ち切ろうとする自分を殺めて、同時に修司のクローンである新世代型二次元人を抹殺するしか未来を死守できないとミラーガールに遠回しに解らせようとしていた。

 

 修司は刀身が自分の背丈の二倍は有ろうかという日本刀で、ミラーガールは通常型の聖龍剣で両者は激突した。

「アッコォォォ!!」「修司!!」

 修司とミラーガール、二人は激しいエネルギーを鬩ぎ合いながら周辺に拡散させ、凄まじい激突が如何に両者から高エネルギーが拡散されているのかが誰の目にも止まった。

 激しい剣戟で互いに再び距離を置いたミラーガールと修司は、互いを牽制しながら闘い合い、その過程の中でも対話する。

「過去を切り捨てるですって……! 今の修司にとって、聖龍隊や他の色んな思い出はどうでもいいの!?」

「そうだ。今の俺にとっては、そんなものに意味などない」

 ミラーガールに問われ、修司は過去に積み重ねてきた聖龍隊などの様々な思い出が今では意味を持ってないと突っぱねる。

「思い出や愛情……そんなものはただの呪縛でしかない。俺の目指す桃源郷に、そんな呪縛は必要ない」

「必要ないって……! ふざけた事言わないで! 修司!!」

 思い出や愛情を呪縛と割り切り、その様な呪縛は全てが消え去った桃源郷には必要ないと説く修司の発言に、いつもは穏やかなミラーガールは珍しく怒り、そして吠えた。

 ミラーガールがミラー・シールドから放つ魔法の光を、修司は斉木楠雄から会得したサイコキネシスで弾き返しながらミラーガールに言葉を投げ掛ける。

「二次元人の始祖であるアッコ、お前は此処で果てるんだ……!」

 変身魔法少女やある日突然能力者に変化した二次元人の始祖であるミラーガールに力尽きるよう呼びかける修司は、更に彼女に告げる。

「始祖であるお前を断ち切れば、二次元人が消滅するという俺の望みは叶うだろう……!」

 過去の全ての繋がりを断ち切る望みを叶えようとしている修司の言葉にミラーガールは明確に言い返した。

「何度も言うわよ……切らせないって!」

 そんなミラーガールに修司は言った。

「お前が其処まで頑固だとは……初めて知ったよ」

「頑固じゃないわ……信念よ! 貴方なら分かる筈よ!」

「なら、その信念ごとお前を断ち切るまでだ!」

 己の意志の強さを頑固ではなく信念と答えるミラーガールは修司なら分かる筈だと説き返す。力強い信念は、元々は修司の方こそ持っていたものだったからだ。だが、修司はそのミラーガールの信念までも斬り捨てようと凶刃を振るう。

 しかし修司が振るう漆黒の両刀を、ミラーガールは聖龍剣とミラー・シールドの両方を駆使して防ぎ切る。

 と、修司は至近距離でミラーガールに向けて枇々木丈の火炎能力の一つである、両腕からの赤いエネルギー弾の連射を繰り出した。

 ミラーガールは全弾すべてミラー・シールドで防いで見せるが、彼女がミラー・シールドを構えている隙に修司はテレポーテーションで急接近してミラーガールに特大のバーニング・ハンマーを打ち込んで吹き飛ばす。

 辛うじて強力な打撃を盾で受け止めて直撃を免れたミラーガールだったが、あまりにも特大の打撃を受けて少しばかり朦朧としてしまう。

「アッコ!」「ミラーガール……!」

 修司とミラーガールの闘いを見守るメタルバードと檻の中の新世代型達が呼びかけると、それに応える様に彼女は朦朧としながらも立ち上がり、修司との闘いに挑む。

「無駄な抵抗を続けやがって……」

 そんなミラーガールの抗戦を前に、修司は未だに戦意や希望を失わないミラーガールを空虚な瞳で見詰めるのだった。

 希望を胸に秘め、戦意を失わずに修司と闘い続けるミラーガール。そんな彼女を前に修司は平然と言い渡す。

「アッコ、お前がいなくなれば……お前を祖とする二次元人の多くが消滅し、それによって二次元界のバランスも崩れる……! それで全ての二次元人が消滅に至るだろう……!!」

 ミラーガールが消滅すれば、彼女を祖とする多くの二次元人が消滅し、それによって二次元界の保たれてきたバランスは崩れ、結果全ての二次元人が消滅に至ると説く修司。

 しかし純粋な破滅へと進化した修司に何を言われても諦めないミラーガールは、左手にミラー・シールドのバンドをしっかりと締め付け、右手には聖龍剣を握り締めて修司と対峙する。

 諦めないミラーガールの戦意を視認して、修司も更に追撃しようと攻撃を再開した。

 

 次の瞬間、修司が闇の能力で巨大な弓を現出させると、それを身構えてミラーガールに向けると思いっきり弦を引いて巨大な矢を射出。

 修司が放った矢を、聖龍剣で防ぎ切れないと判断したミラーガールは横へと回避して直進する矢から身をかわした。

「うわッ!」

 ミラーガールがかわした巨大な矢は、そのまま一直線に大地を駆け抜け、大将たち後方で二人の決闘を見守る皆々に飛んできて、皆は軽く焦った。

 自分の背後に固まっていた仲間達に矢が直撃しそうになったのを視認して、ミラーガールは心中で動揺する。

 そしてミラーガールは修司と向き合ったまま、地面に手を当てて技を発動した。

「ミラー・バリアー!」

 するとミラーガールと修司を取り囲む様に、二人の周りを虹色の薄い壁が出現し、修司とミラーガールの二人を完全に孤立させた。

「自身や仲間を敵の攻撃から守れるミラー・バリアーを、俺達の戦闘の二次被害が出ない為に使うとは……だが周りに攻撃が及ばない様にすると、アッコお前自身を守れる術が盾での物理的な攻撃の守衛しかできなくなるぞ」

 自分達の戦闘の巻き添えを少なくするために、バリアーを自分達を取り囲む様に使用したミラーガールの思慮に、修司はミラーガール自身が自分を守る術が少なくなってると説いた。

 それに対してミラーガールはボロボロの状態ながらも、我が身を奮い立たせて修司に言い放った。

「心配ご無用……! 修司の攻撃ぐらい、ミラー・シールドと聖龍剣で受け止めつつ、防いでみせるわ」

 ミラーガールの力強い言動に、修司は自分と彼女を取り囲むバリアーを改めて視認するとミラーガールに言った。

「良いだろう……どうせ、お前を消せば全ての二次元人が消滅するんだ。お前の最後の願い通り、このバリアーの内側で闘ってやろうじゃないか。まあ、このバリアーが持つまでお前が凌げればの話だがな」

 修司はミラーガールが仲間を守る為に発動させたバリアーの内側で彼女と闘ってやると伝えた。例えバリアーが、ミラーガールの体力や気力が持つまで維持できるか周知できる考えでの発言であったが。

 

 世界に裏切られて自分のクローンである新世代型二次元人を生み出された事で、世界に失望して全てを滅ぼそうとする修司を思うあまり、彼を止めるべく聖龍剣を手にして決して諦めずに闘い続けるミラーガール。

 己が始祖であるが故に、多くの二次元人を争いの渦中に引きずり込んでしまった加賀美あつこの絶えない悲しみを終わらせる為に、己が生み出した負の連鎖を全て世界共々消し去ろうとする小田原修司。

 二人の男女の揺るがない思考は、まだまだ闘いを終わらせる気配を感じさせないのだった。

 

 

 

[聖女、初めての異常者討伐]

 

 喰い下がらない聖女と破滅の闘い。

 両者ともに持てる力を全て惜しまず出し切り、過去(かつて)の想い人と闘う。

 しかし、その両者の闘いを見守る聖龍隊も、この大戦の引き金になった新世代型二次元人も、闘いの情景に胸を打たれて悲しむばかり。

 過去(かつて)は愛し合った男女が、今では全てを護り切る女と全てを滅ぼす男として闘い続けてた。

 この悲しくも虚しいだけの闘いに終わりが来るのだろうか。

 そして、その終わりは果たして世界の終焉か、それとも大戦の終幕なのだろうか。

 その答えを知る者は、誰一人としていない。

 

 壮絶に繰り広げられる聖女ミラーガールと、純粋な破滅へと進化した小田原修司の闘い。

 修司は両手に小型の鎌に変形させた闇の能力で作り上げた武器でミラーガールに襲い掛かり、彼女の首を刎ねようと攻め込む。

 ミラーガールはその両手に鎌の攻撃を、後ろへ後ろへと素早く後退しながら修司の攻撃をかわしていく。

 そして一瞬の隙をついてミラーガールは鏡の盾ミラー・シールドで修司が振るう鎌の刃を防ぐと同時に弾き返す。

 ミラー・シールドに弾かれて一瞬ばかしポカンとした顔で戸惑う修司に、ミラーガールは聖龍剣で斬り込もうと間合いを詰める。

 そしてミラーガールは見事に修司の胴体に縦一直線の大きな切り傷を負わせる事に成功する。

「や、やった!」

 檻の中に未だ戦争の行く末を傍観させられている新世代型二次元人の真鍋義久たち、そして二人の闘いを見守る連合軍の皆々がミラーガールの攻撃が修司に当たった状況を大いに喜ぶ。

 だが、修司に負わせた深い切り傷は、神原秋人の再生能力そしてマギウスの不死性からなる驚異の身体能力で瞬く間に塞がっては再生して消えてしまう。

「ッ……僕たちの身体能力で、不死身だとでも言うのか……!」

 神原秋人そしてマギウスの面々は、自分達から会得した修司の身体能力に苦渋の思いに駆り立てられた。

 そんな深い傷を負ったにも関わらず傷口が再生する修司を目の当たりにしても、ミラーガールは険しい表情のまま修司と向き合い立ち尽くす。

「無駄な事はやめろ、アッコ。無益な争いは、それこそ罪。俺や聖龍隊が積み重ねてきた争いという罪科に終止符を打つ為にも……これ以上、罪を重ねず己の命を散らせ。それが、ゆくゆくは全ての命を安寧に導く事だろう」

「イヤよ。何度も言っているけど、私は大勢の仲間と……友達である、みんなと一緒に生きていけるこの世界が好きなの! 貴方がどんなに、この世界が混沌であって醜いものだと落胆していようが……私は、この世界のみんなの未来を守る!」

 ミラーガールにこれ以上の戦闘は無意味であり、自ら命を差し出せと述べる修司に対し、ミラーガールはどんなに修司が混沌の世界を嫌っていようと大切な人達が暮らす世界と彼らの未来を守り抜くと宣言する。

 このミラーガールの宣言を聞いた修司は、冷めきった瞳で彼女に問うた。

「守る、か……確かに、ミラーガールとしてのお前の基本的な戦術は、仲間の存在を守り、そして治癒させる事がメインだったな。か弱き者、大切な者たちを守り抜く為、お前は俺と同様に戦い続けた。それと同時にお前の心には深い深い傷が付いてしまった悲劇を……」

「………………」

「……アッコ、お前だって俺同様に戦いを経験してきたからこそ背負っている筈だ。かつて仲間だった者、そして友であった存在であり……何より、この点は違っているがお前と同種である自分と同じ二次元人を平和の為に自らの手で葬ってきただろうに」

「……!」

 修司に問い掛けられ、ミラーガールは内心動揺した。

 そしてこの修司の話を聞いた新世代型二次元人たちに聖龍隊の面々は思い返す。ミラーガールも修司同様に、かつて同じ異常者(ヒール)ハンターでもある聖龍隊の仲間だった敵を自らの手で倒し、葬った過去を。しかも修司と違って、ミラーガールは自分と同じ二次元人を葬っている。この事実を修司はミラーガールに衝き付けたのだろうと察していた。

 しかし次の瞬間、修司の言葉にミラーガールは凍り付いた様に固まった。

「アッコ、お前だって既に味わっているだろ。大切な人を、友を殺めてしまった悲しみを……」

「っ……!」

 修司の問い掛けにミラーガールは口を噤んで硬直してしまう。

「俺も何度も同じ思いをした……過去(かつて)の戦友たちであるカール達Jフォースの連中、そしてお前同様にこんな俺を愛してくれてたカールの婚約者エリーゼまでも……俺はこの手で葬った。アッコ、お前もそれより昔に痛感している筈だぞ。異常者(ヒール)と変貌してしまった友を殺めた血生臭い件は……!」

 修司の昔語りに固まるミラーガールを尻目に、その一件を初めて聞くであろう新世代型達と大将たち赤塚組の面々は唖然としていた。

「忘れもしない、あの碧井瑠璃(あおい るり)の事は……お前自身、忘れられない悲劇だろう?」

「え? 瑠璃って……俺らの同級生だった、あの碧井瑠璃(あおい るり)か?」

 修司の話を聞いて、大将が自分やアッコそして修司の小学生時代の同級生である碧井瑠璃(あおい るり)の事を思い出す。

碧井瑠璃(あおい るり)って……確か、聖龍伝説の自伝本にも記されていた……!?」

「あの怪盗ルパン三世と聖龍隊の戦いに登場してた、修司さんに恋心を抱いていた女の子の……!」

 新世代型の纏流子や栗山未来たちが騒然とする。

 

 碧井瑠璃(あおい るり)とは。

 アニメタウンの美術館の官庁が父親の瑠璃は、人知れず当時から無粋で人付き合いの少なかった修司に恋心を抱いていた。

 そんな瑠璃の父親の美術館が経営難に陥っている話を聞いて、当時市長であった修司は高価で大きなサファイヤ「希望の瞳」を購入し、その美術館に展示したのだ。

 アニメタウンの町興しと同時に、経営難の美術館の立て直しを計った修司の狙いは的中。

 しかし、そんな宝石をルパン三世の一味が狙い、それを修司たち当時の聖龍隊が対決。更に心配した瑠璃の依頼を引き受けたシティーハンターの冴羽潦たちを巻き込んだ大騒動。

 それが修司が自分と聖龍隊の過去を綴った自伝本「聖龍伝説」に記されていたのだ。

 

 そんな碧井瑠璃がどの様な経緯でミラーガールの傷心に繋がったのか疑問に思う新世代型達に大将。

「修司、瑠璃が……あの大人しかった、お前が出版した自伝本にも登場してた瑠璃が、アッコの傷心となんの関係が……?」

 恐る恐る問い掛ける大将に、修司はハッキリと明言した。

「……そう、アレは俺がアメリカでの修行を終えてアニメタウンに帰ってきた後の事……ある日、街中に突然怪人化して暴れ回っている異常者(ヒール)が出現したと通報が入った。俺が現場に到着した時には、既に何人か負傷者が出ていた。幸い、死者は出なかったが、その異常者(ヒール)をアッコ、いやミラーガールが追い詰めて辛うじて倒したんだ。だが、後に頭髪から爪先まで全身が青い女の怪人はブルー・レディーと俗称されたが…………その異常者(ヒール)の正体は他でもない、あの瑠璃だったんだ」

「え……!?」

 修司が明らかにした説明に大将はもちろん新世代型達も驚愕して言葉を失う。

「様々な理由や原因で異常者(ヒール)になる二次元人が多発している様に、瑠璃も例外ではなく異常者(ヒール)の発症が出て怪人へと変貌してしまったんだ。既に自我を失っていた瑠璃を止める為……アッコはやむを得ず、自らの手で友でもあった瑠璃を殺めて鎮静化した」

「そんな……! 瑠璃が、そんな……ウソだろ……っ!」

 当時は突然、姿を消した碧井瑠璃の異常者(ヒール)化の話を聞いて茫然自失になる大将。

 だが、修司の話は終わらなかった。

「俺が駆け付けた時には、既にアッコはミラーガールとして怪人化した瑠璃を殺めた後だった……そしてこれが、アッコが初めて異常者(ヒール)を倒した実績でもあった」

 産まれて初めて殺めた異常者(ヒール)は、同じ男を愛していた友達だったミラーガールの過去を聞かされ、アッコとも瑠璃とも知人だった大将は愕然とし、新世代型達は余りの事実に衝撃を受けていた。

 当時、修司が急いで現場に駆け付けた時には、雨の中で既に友人だった瑠璃を激しい戦闘の末に殺め終わり、数少ない武器である短刀ミラー・ソードを友の血で染め、自らも友の返り血を浴びていたミラーガールの姿が印象的だったという。

 これは小田原修司もミラーガール本人にとっても忘れ難い過去だった。

 

 修司の口から、過去(かつて)自分が犯した友殺しの実情を明かされて、ミラーガールは舌を俯いたまま黙然としてしまう。

 そしてミラーガール同様に黙り込んでは悲観してしまう大将たち赤塚組に新世代型達。

 そんな戦場の空気が悲しみで皆の肩に重く圧し掛かっていると、修司が戦場に居る皆々に語り始めた。

「俺たち三次元人と、アッコたち二次元人が共存する様になった事で……多くの二次元人が原因不明の状態で続々と異常者(ヒール)に変わってしまった。そして異常者(ヒール)に変わってしまった二次元人は、同族である二次元人ばかりでなく三次元人にも襲い掛かり、危害を加える様になった。この事態を打開する為に、そして何より陰湿で邪悪な二次元人をも処罰する為に、俺は三次元政府と結託して異常者(ヒール)排除法を国際法に制定して、世界中の凶悪な輩と共に異常者(ヒール)へと変貌した二次元人を大量に処分の名目で惨殺していくのだが……その前に、アッコ自身が異常者(ヒール)に変わってしまった瑠璃を……友であった筈の瑠璃を殺めてしまうとは、想定の範囲外だったよ」

『………………………………』修司の昔語りを聞いて、戦場に居る皆々は一同に黙然とする。

 が、修司は更に続けてこう述べた。

「何ゆえ二次元人がそれまでの姿と異なる異形の姿へと変化し、凶暴化するのか……俺は二つの説を唱える。一つは、俺たち三次元人の邪悪で醜態な思想概念に影響を受けやすい二次元人が、その思想概念に感化される事により、自らも邪悪で醜い怪人や怪物に変化して二次元人・三次元人どちらとも襲うのか。まあ、これは定説として既にジュニア、お前達は新世代型達に説明していたとは思うが」

「………………」

 修司はそう顔をミラーガールから逸らして問い掛ける、兄弟分のジュピターキッドに視線を送る。修司からの説明を受けて、ジュピターキッドは険しい顔で修司を見詰めるばかり。

 修司は説明の続きを語った。

「だが……俺が思っている二つ目の説は、根本的に違う。それは俺たち三次元人の邪悪で醜態な思想概念だけが原因ではなく、元々二次元人に秘められていた「自らを変える力」……すなわち、進化の力が影響して、二次元人は異常者(ヒール)にも変化してしまうのではないかというものだ」

「進化だと……?」大将が呟くと、修司はそれに答えるかのように再び語り出す。

「二次元人のその多くがアッコを始祖とする種だ。ある日突然、魔法や超能力など未知の、異質な世界や存在との出会いで、自分自身がその渦中に巻き込まれてしまう二次元人……生まれながらに能力を持っている者はもちろん、ある日魔法や特殊能力を得られる体験をした二次元人……そんな数多の二次元人の変わる切っ掛け、そして自分自身を変えられる変身などの能力を得られた二次元人達には、潜在能力として変身する力すなわち進化に繋がる潜在力が秘められていると思われる。簡単に言えば、二次元人の能力を得たり変身する過程は、生物が進化する過程と同じだと俺は思っている……進化、それすなわち二次元人が生まれながらに持っている潜在能力。その潜在能力が三次元人の思想概念に影響されて異常者(ヒール)へと変化してしまうのかもしれない」

「お、俺たち二次元人の進化する力が、二次元人が異常者(ヒール)に変わっちまう根本の原因だと言うのかよ……!?」

「そうだ大将、そして何を隠そう……その進化の力の根源である変身能力の始祖こそ、他ならぬアッコ本人なんだ。アッコを生かしておけば、これからも多くの二次元人が邪悪な異常者(ヒール)へと変貌し、多くの命を無意味に散らす事だろう。アッコは最早、俺と同じで生きていてはいけない命なんだ。アッコの存在こそ、多くの異常者(ヒール)が生まれる元凶になってしまっているんだよ」

「そんな……! アッコが、アッコが原因で多くの二次元人が異常者(ヒール)に変化しちまっているのかよ……!?」

 修司の説明を聞いて、大将はミラーガールが数多の二次元人が異常者(ヒール)化してしまう元凶である事に激しく動揺してしまう。

 

 修司たち三次元人と、アッコたち二次元人との共存。

 その共存が発端となり、多くの二次元人が異常者(ヒール)という危険極まりない存在へと変化してしまった。

 しかも、二次元人が異常者(ヒール)化してしまうのは、二次元人が秘めている「変わる力」すなわち進化の力であり、その力の根源である「ひみつのアッコちゃん」の主人公でもあるアッコことミラーガールの存在こそ異常者(ヒール)が発生する原因だと説く修司。

 

 そして、その現象で異常者(ヒール)化した二次元人であり、友であった碧井瑠璃(あおい るり)をミラーガール自ら殺めていた事実を知って愕然とする新世代型達と大将たち赤塚組。

 三次元人の醜い思想概念が二次元人を凶悪化させるのか、それとも二次元人に元からあった潜在能力で異常者(ヒール)へと誤った進化に至ってしまうのか。

 かつて初期の新世代型二次元人であり、軌道エレベーターヤコブの管理官であった中性の二次元人ルミネは、自分たち新世代型は自らの意思で進化できる種なのだと説いていた。

 そんなルミネの進化にメタルバードは否定していたが、修司はそんな進化こそ二次元人が異常者(ヒール)化する根本なのではと唱えるのだった。

 

 大切な友を殺めたミラーガールこそが、その友を異常者(ヒール)化させた原因だとでも言うのか。

 多くの二次元人が異常者(ヒール)化してしまうのは、変身能力の始祖であるミラーガールの存在がそもそもの原因なのか。

 そして修司は、そんなミラーガールを殺めて、彼女の苦痛を命と共に取り除く事こそ己の贖罪であり、愛する女性を殺める事が全ての二次元人を進化という争いから解放させる唯一の手段だとでも言うのだろうか。

 

 

 

[同じ罪を背負うからこそ]

 

 小田原修司と激しく闘い合うミラーガール。

 そして修司の口から明かされたミラーガールの過去の罪。

 それは、かつて同じ男を、修司を愛していたにも関わらず、異常者(ヒール)へと変化してしまった友である碧井瑠璃(あおい るり)を自らの手で処分し、殺めたという変えられない悲しい過去。

 そして修司は、そんな瑠璃や数多の二次元人が異常者(ヒール)に変化してしまうのは、二次元人が秘めている「変わる力」が原因であり、それによって瑠璃も多くの二次元人も敵として変わり果てて最後には修司たち聖龍隊の手で葬られたのではないかと説いた。

 修司の説明を聞いて呆然と自失気味で黙り込んでしまうミラーガールや大将たち戦場の面々。

 そんな黙り込んでしまう戦場の皆々にも聞こえる様に、修司はミラーガールに言った。

「アッコ、もうやめよう。お前達が……お前が抗えば抗うほど、多くの二次元人いや命が争いに巻き込まれ、更には大勢の二次元人が異形の存在へと変わり果ててしまう。いくら俺の遺伝子と似た形のDNAを持っている新世代型二次元人が異常者(ヒール)化しないとはいえ、結局のところコイツらも俺と同じ危険性を持つ……それこそ今までの異常者(ヒール)よりも危険極まりない存在へと変貌してしまうかもしれないんだぞ」

 修司は黙然と俯くままのミラーガールに話し掛ける。

「アッコ、もう戦う必要は無いんだ。俺がこの手でお前を殺めるという罪を背負い、更には多くの二次元人を葬る事で悲劇の連鎖を止めてみせる。「変わる力」を持つ二次元人を根絶し、進化という争いを起こしたアッコや二次元人を葬る事で、争いは鎮まるだろう……」

「………………」

「アッコ、もう疲れただろう。もう戦うのは嫌なんだろう? お前の呪われた宿命は、今ここで俺が全て断ち切って、お前と繋がる大勢の二次元人も必ず葬って悲劇の連鎖を止めてみせる……! もう、思い悩む事はないんだよ」

 修司から優しさとも取れる問い掛けに、ミラーガールは静かに静かに顔を上げていく。

 そして顔を上げてみると、すぐ目の前には瞬間移動で彼女の間近にまで接近した修司が巨大な剣を片手で振り上げたままミラーガールを見据えていた。

「俺は、もう……お前が思い悩み、そして苦しんでいる姿は見たくない。だからこそお前を……二次元人の始祖であるお前をこの手で殺めて、お前と共に進化という争いの渦中にいる二次元人達を消し去って、全ての悲しみを止めてみせる……!」

 修司はミラーガールにこれ以上、思い悩んで悲しんでほしくないからこそ、彼女を殺めてその罪を背負うと共に多くの二次元人を消して進化という争いを終わらせると告げた。

 そして修司は振り上げていた巨大な剣を、力を抜く様に一気に振り下ろして、ミラーガールに向けて一直線に、そして躊躇う事無く彼女の頭部に巨大な剣を振るった。

 誰もがミラーガールに巨大な剣が直撃するかと思った。

 

 が、その時。

「ミラーガール!!」「!」シバ・カァチェンからの呼びかけに、ミラーガールが反応。

 そして修司が振り下ろす巨剣を、ミラーガールはミラー・シールドで辛うじて防ぎ、瞬時に回避すると同時に修司から離れて距離を置いた。

 ミラーガールを仕留め損なった修司が、空虚な表情を向け、冷たい視線を送ると、ミラーガールはまだ消えてはいない闘争心に溢れる目付きで修司を見返した。

「……アッコ、まだ抗うのか? 俺とお前自身が全ての争いの……戦いの元凶だと改めて言われても尚、この俺と闘いを続けようというのか」

「確かに……ほぼ全ての能力の起源である私の存在が、二次元人を進化と言う争いの渦中に巻き込ませてしまう事。そして多くの弱者を護る為に、多くの憎しみと罪を背負った修司もまた、私同様に多くの争いの原因になってしまってるわ。でも……」

 修司に問われ、ミラーガールは自分も修司も多くの大義の為に多くの争いを生んでしまった存在なのだと説き続ける。

「私たち二次元人には、確かに自分や周りを変えられる力を持っているかもしれない……だからこそ異常者(ヒール)として未だに多くの二次元人が怪人や怪物に変身してしまい、凶悪で残忍な存在に変化してしまう。でも、だからと言って私は……いいえ、修司だって自分の歩みを止める必要はない。生きる事を諦めなくていいのよ。確かに私たち二次元人の能力や存在が多くの争いや悲劇を招いてしまうのは変えようがない事実。だけど、そんな悲劇や争いをきっと止められるのも、かつて修司が信じてくれた私たち二次元人の使命なんだと思ってるわ。修司、私達は確かに多くの争いや悲劇を生んだという同じ大罪を背負っているわ。でも、それなら……これからは二人一緒に、二人三脚でその罪を背負って生きていけると私は信じてるわ! 同じ罪を背負い、共にその罪を償う生き方ができる筈よ!」

 同じ悲劇や争いを生み出した罪を背負う者同士、これからは一緒に生きていける未来が待っている筈だと修司に説くミラーガール。

「私は確かに修司と出逢った事でミラーガールに変身し、多くの戦いを経験してきた。それが元の始まりであり、過ちと言うなら……その過ちも罪も私は背負って生きていくわ!」

 修司に説き続けるミラーガールは、最後に修司に宣言した。

「自分がどんなに変わろうとも……大切な人を守りたい、誰かを救いたいという思いまでは変わらないわ!」

 如何に自分が変わり果てようとも、誰かを思い救いたいという気持ちまでは変わらないと明言するミラーガール。

 そんな明言するミラーガールを前に、修司は彼女に問い掛ける。

「お前の気持ちが変わらなくても、他の、周りの連中の気持ちには変化が表れている筈だぞ。お前が如何に素晴らしい信条を掲げようとも、周囲の人間はそれに賛同せず、それどころか否定する事だって十分にあり得る。この醜い世界では、お前の美しい信条も心もまるで意味を成さないだろう。故に俺は自らを変えて、自分のクローンである新世代型とそいつらを生み出した世界を無に誘うんだ……!」

 修司がミラーガールに説き返すと、ミラーガールは自分の心情を包み隠さず修司に打ち明けた。

「修司、貴方がこの先どんな存在に成り果てようとも……私は、あなたをずっと愛してる」

 どんなに罪を重ねて背負おうとも、どんなに道を踏み外して過ちを繰り返しても、変わらぬ愛を貫くと告白するミラーガール。

 

 しかし、そんなミラーガールの選択を修司は空虚で無表情な顔で述べた。

「……その選択、判断もまた……世界をまた醜く塗り替えてしまう決断の一つだ。人とは選択し、決断する生き物……しかし、その判断や選択を誤れば、人は自ずと自然に破滅の道へと自ら足を踏み込む」

「人の判断……いいえ、決断や選択が必ずも間違いとは限らない!」

「一人一人の……俺たちの選択が、この世界を醜く変えてしまった」

「それなら……その一人一人が、また正しい選択を選べるように私達で導いていけば良いのよ」

 修司とミラーガールの問答が繰り返されると、修司はミラーガールにまたしても己の考えを述べる。

「三次元人の心から生まれた美しい存在、二次元人。しかし同時に醜い人のエゴからも生み出されてしまうのも二次元人……人の美醜、それらが形となりて命を得た全く新しい種。それが二次元人」

 ミラーガールたち二次元人は、修司たち三次元人の美しい心や醜いエゴから生まれ出た、人間の美醜の結晶体だと説く修司は更に述べた。

「故に、二次元人は誰しも等しく……神にも成れれば悪魔にも成り得る、美しくも恐ろしい意志の結晶体なのかもしれない」

 修司の過去(かつて)の想いは今でも変わってなかった。

 二次元人を誰よりも美しいと感じる一方、自分たち三次元人の醜さにも比例してしまう二次元人を、神にも悪魔にも等しい美しいながらも恐ろしい可能性を持った全く新しい種、生命体だと述べたのだった。

 

 過去(かつて)、二次元人を友と思っていた小田原修司。

 だがしかし、彼は二次元人達と共生していく内に、自分たち三次元人の醜さをより深く痛感する様に至った。

 更に、二次元人の無限の可能性は、同時に三次元人の美醜なる心の結晶体ゆえに全く新しい命だと悟る様に至ってしまう。

 そんな二次元人の始祖であるミラーガールこと加賀美あつこを、純粋な破滅へと進化した修司が殺める事で、本当に全ての二次元人がそのバランスを崩して滅んでしまうのだろうか。

 

 全ての始祖たる無限の可能性を秘めた聖女と、純粋な破滅へと進化した男の問答そして闘いは続く。

 

 

 

[鏡の瞳]

 

 激しい闘いの中でも、互いの思想を語り合い、そして決して交わる事のない話を続ける小田原修司とミラーガール。

 互いに聖龍剣と闇の能力で作り上げた武器で火花を散らしながら激突する両者は、双方ともお互いが理想に思う未来の為に刃をぶつけ合わせる。

 そしてひと時、両者ともに激しい戦闘を繰り広げた後に一時の間を入れて距離を置いた。

 自分のクローンである新世代型二次元人の生体エネルギーを吸収して彼らの能力を会得した小田原修司は平然としている一方、ミラーガールは既に満身創痍で荒い呼吸をしていた。

「ゼェ、ゼェ……」「………………」

 荒い呼吸で修司を見据えるミラーガールと、そんな彼女を無表情な顔で見詰める修司。

 誰が見てもミラーガールが限界を迎えている様子は一目瞭然であり、同時に驚異の身体能力を持つ修司は無傷で体力が減ってない様子が一目で伺えた。

 この完全に勝負が決まっている現状を見た皆々の中で、大将が思わず声を張り上げる。

「もうやめてくれ修司!! これ異常闘って、何の意味があるんだ!?」

 思わず声を張り上げて修司に問い掛ける大将。すると修司は平然と大将に返事するのだった。

「消さなければならないんだよ……俺と言う破滅を、そして何よりも多くの争いを生み出してしまう無限の可能性を秘めた二次元人を……アッコを消さなければならないんだよ」

「修司……お前は俺と同じで、今でもアッコの事を愛しているんじゃねェのか?」

 大将が修司に問い詰めると、修司は無表情な顔で大将の問いに答えた。

「そうだ……だからこそ。俺自身で消さなければならない……! 俺もアッコも、同じ元凶……世界を著しく狂わせ、混沌に誘ってしまった存在として……お互い、消えねばならないんだ……!!」

「そんな……!」修司の返答を聞いて、大将は顔面蒼白で落胆する。

 そんな修司の心が死んだように空虚な状態である事実に、ミラーガールは何とか修司を救いたい一心で疲労と痛みに苦しみながらも聖龍剣を構えて修司と向き合う。

 そしてミラーガールは修司に向かって叫んだ。

「修司!」

 しかし当の修司はミラーガールの瞳を直視せず、少視線を逸らしたままミラーガールを見据えてた。

 そんな自分の瞳を直視できない修司を前に、ミラーガールは力強い目力と面魂で修司に言った。 

「貴方はいつもそう……! 私の瞳を真っ直ぐ、直視する事ができなかった……!」

「………………」ミラーガールの問い掛けに修司は無言を貫く。

「私の瞳は、全てを真に映し出してしまう鏡の瞳……全てを見透かす事ができる魔の瞳! だから……」

 ミラーガールの瞳は相手の美醜や真意を見透かし、更には相手に自分の醜い心情も映し出してしまう魔の瞳だと唱える彼女に、修司は明言で告げた。

「そうだ、アッコ。お前の瞳はいつもそうだった……鏡の様に一点の穢れもなく、絶えず全てを映し出し、見透かす……美しくも禍々しい、鏡の瞳。俺はそんな鏡の瞳に恋をしながらも、同時にその瞳を直視する事はできなかった。その瞳に映るのは、理想も何も叶えられない無力な自分だけだからだ」

 そして修司自身もミラーガールの瞳に恋しながらも、二次元人と出逢った事で思い描く様になった理想を簡単には叶えられない無力な自分を映し出すその鏡の様な瞳を直視できない事を打ち明ける。

 ミラーガールはそんな魔の瞳とも呼べる自分の瞳を直視できない修司を思い、優しい口調で修司を励ました。

「耐え抜いてきた貴方を想う……多くの理不尽な現実を、不条理な世界を少しでも変えようと。可能な限り、弱い人たちを救済しようと一人で孤独に戦い続け……そんな修司だからこそ、全ての能力や争いの発端である私だけでなく、今の時代を築いた尊い存在全てを消し去ろうと、全てを捨て去ってまで私たちと戦うのよね」

「分かっているなら……答えは既に出ている筈だ。今の様々な個性という色で溢れた、それこそ多くの色が乱れ混ざり、醜く変化してしまった世界を今一度、そう全て真っ白に塗り替えて……静寂な桃源郷へと導くんだ……! 例え、それが最愛のお前を殺す事であってもな……!」

「……確かに、多くの個性が……色が世界に溢れた為に、その個性という色が溢れた世界が塗り尽くされて、多くの多種多様な種族が共存するだけでなく、それによって齎される争いという悲劇を払拭する為にも私を殺す事は仕方ない事かもしれない。だけど……」

 次の瞬間、修司と対話するミラーガールは明言する。

「だからといって……自分のクローンである新世代型二次元人を全員、危険と見做して根絶やしにするのは間違っているわ! 例え、私たち二次元人を滅ぼす為の精神改造を受けて破滅の化身メシアである貴方の……そう、全てを滅ぼす可能性を持ってしまっている修司、貴方のクローンであってもよ!」

 ミラーガールは未来を担い、そして創造する新世代型二次元人までも苦しめ、滅ぼすのは間違いであると修司に訴える。

 ミラーガールの発言に衝撃を受ける新世代型二次元人達を尻目に、彼女は修司に問い掛け続けた。

「どんな人にだって、必ず生きる意味があるわ。それがどんな小さな事でも必ず……意味があるのよ」

 どんなに破滅の化身であるメシアと畏れられた小田原修司のクローンであっても、新世代型二次元人には一人一人に生きる意味がある筈だと訴え続けるミラーガールは、修司を直向きに思い続けながら彼に自分の中の答えを打ち明ける。

「貴方がどんなに世界を憎んでいようと……私は、みんなと出会えたこの世界を愛する。貴方がそんな世界を無くしてしまうと言うなら…………私は、全力で貴方を止める」

 大切な友と、仲間達と出逢えた愛しき世界を修司が滅ぼすのなら、自分はそれを全身全霊で止めると返答するミラーガール。

 そんなミラーガールの答を聞いた修司は、ミラーガール及び全二次元人や三次元人の武将たちと対峙していた黒武士としての自分の本音を吐き出すまでに己を打ち明けた。

「人と関わり、人と触れ合う……その結果、世界が醜いモノであると悟り、そして理不尽で不条理な世の中だと知った。そして今の、破滅たる俺の存在が生まれたのも結果的にはお前達と……人と触れ合ってしまったからこそ俺は虚無の希望に惑わされ、新世代と云う己の破滅の化身たちが生まれ続ける。全ては……他人と触れ合い知り合った俺の所業が招いた最大の災い。そして、俺の不幸そのものだ」

 他人との関わり。それが自分がいる世界の醜さを悟り、理不尽で不条理な世の中だと知り得た原因であり、自分が純粋な破滅へと進化した因果も人との触れ合いで虚無の希望に惑わされ、新世代型二次元人という自分の忌まわしきクローンが生まれ続ける顛末は全て、他人と触れ合い知り合った自分の所業が招いた史上最大の災いであり、自分の不幸であると告げる修司。

 そんな修司の真情を知って、檻の中の新世代型二次元人たちが修司に訴える。

「人と関わった結果、多くの災いを招いたなら……俺達の存在は、どうなるんだよ!」

 檻の中から真鍋義久が訴えると、修司は平然と無表情な顔で彼ら新世代型達に答えた。

「何を言う、お前たち自身も存分に味わっているだろう……人と触れ合い、出合う事で度重なる悲劇や災いが起これば、時としてその災いを起こしてしまう因果な存在だと……何故、自覚しない?」

「そ、そんな……!」

 新世代型達も、始祖である自分と同様に人との関わりを持てば持つほど多くの災いや悲劇を招いていると説く修司の言葉に、瀬名アラタたち新世代は愕然とする。

「小田原修司、確かに私たちが深く関わった事で多くの災いや悲劇が起こってしまったのは否定しません。タイのバイオハザードで私たち作品が違う新世代型同士が出会った事から全てが始まり、ジャッジ・ザ・シティでは私たちと敵対した多くの新世代型二次元人がテロを起こして多くの人命を奪った経緯……その顛末が、私たち新世代型二次元人があなたの、小田原修司という一人の孤高な人間のクローンである事を知ってしまった。私達は生まれてきてはいけなかった生き物かも知れない。けれど……!」

 修司が説く話を聞いて、新世代型の美都玲奈が説き返すが、美都玲奈の話を遮る様に修司は言った。

「勘違いするな。この世には偶然など無い、全てが必然なのだ……! お前たち忌まわしき新世代型共をタイの研究所に誘拐・拉致させ連れ込んだのは、あのアルドウ・ウラジェールやゴールドマンを裏で操っていたキャップ・ド・レッド扮するドレフ将校だったが……その成り行きを黙殺し、自然な流れで聖龍隊に関与させたのは俺の意思があってこそ。俺はドレフの企みを既に把握して、奴が刑務所に投獄された多くの新世代型二次元人を脱獄させて自分の手下として利用していたのを逆に利用していただけだ。上手くいけば、新世代型同士でいがみ合い、そして潰し合ってくれれば俺の手間が省かれるしな」

「!! 俺たちを潰し合わせる為にも……あんたはジャッジ・ザ・シティでのテロやタイのバイオハザードを見過ごしていたって訳なのか……!?」

 修司の話を聞いて真鍋義久が激しい怒りの感情で問い返すと、修司は冷然とした無表情で答えるだけだった。

「そうだ。アルドウも言ってたんじゃないか? 人は痛みを、苦痛を知る事で成長できる、と……俺は、俺自身から生み出された貴様ら新世代型にこの上ない現実と苦痛を与えられる切っ掛けを作ったに過ぎない。俺という心が欠けた、そう、正真正銘のバケモノのクローンである、この世で最も劣った生物のクローンと言う変え様がない現実を突き付け、教え込んだに過ぎん……!!」

 修司の話に、新世代型たちは血相を変えて激情した。

 だが、そんな新世代型二次元人たちに修司は冷然にも告げるのだった。

「お前たちは何れ、俺の様になる」

 修司の言葉はさらに続く。

「俺も、お前達も……結局は、無力なタダの人間だ」

 どう足掻いても新世代型二次元人は小田原修司という無力で心が欠けた欠陥品のコピーなのだと説く修司本人の説明に、新世代型達は絶望し、無気力に襲われる。

 すると、その新世代型への説明を修司の目前で聞いていたミラーガールは、対峙する修司に問い掛けた。

「人間は確かに苦痛や困難を感じ、それを乗り越える事で前へと一歩進めるわ。だけど必要以上の苦痛は単に相手を苦しめてしまうだけで、成長の糧にはならない。……修司、貴方だって最初はそんな困難や理不尽さを取り除く為に頑張っていたんじゃないの?」

 ミラーガールからの問い掛けに、修司は平然と答えた。

「人の成長……それは同時に文明の発展にも繋がる。人は成長すると同時に科学などの文明も発展させる事ができる……が、その発展し過ぎた科学や文明が今までの美しかった古からの自然にどれほど悪影響を齎すか。科学技術で望まれない宿命を背負った、俺のクローン、新世代型二次元人がいい例だ」

 人間の成長と科学の発展は同等であり、その発展した科学が古からの尊く美しい自然が汚されてしまうと説く修司は、その例に望まれない宿命を背負っている自身のクローンである新世代型二次元人を挙げた。

 そんな非情な現実を述べた修司は、目の前のミラーガールを己が目的の為に亡き者にしようと前触れもなく攻めてきた。

 修司からの突然の攻撃に、ミラーガールは辛うじて身体を反らして回避すると、再び聖龍剣で修司と激しい剣戟を再開した。

「アッコ、お前を愛しているからこそ……お前に進化という争いの渦中に居てほしくない。故に、俺は全ての進化の源でもある始祖であるアッコ、お前を殺め……お前たち全ての二次元人が生み出し、そして巻き込まれてしまう争いと混沌に終止符を打つ……!!」

 激しく闘いながら修司はミラーガールに自分の想いを再度伝え、全ての二次元人が巻き込まれ、そして生み出してしまう争いと混沌に決着を付けると強い口調で告げる。

 空中に激しい火花が散らされる戦況の中、修司はミラーガールに自分が掲げる真情を告白する。

「全てを断ち切ることが、今の俺にとっての強さだ。過去に得た、アッコやバーンズ……多くの者との絆を断ち切る事で、俺は本来の俺に戻る。そう、心が欠けた……全てを呑み込み、無に誘う純粋な闇の如き心を持った俺に……!」

 そんな真情を明かす修司に、ミラーガールは鏡の光から作り出した無数の手裏剣を投げ飛ばしながら優しく話し掛ける。

「簡単に繋がりが断ち切れると、本気で思っているの? 修司はそう簡単に、昔の自分には戻れないわよ……心が欠けていた、あの頃の孤独な修司には戻れない……!」

「戻らなければならない。あの頃の、そう心が欠けていた完全な闇に染まっていた頃の、欠陥品であった頃の小田原修司に戻らなければ……この醜い世界を救えない」

「私は世界よりも、まずは目の前の大切な……修司を救う事の方が先決だわ!」

 するとミラーガールは修司に慈愛に満ちた瞳で問い掛ける。

「愛する人……ううん、大切な友達を救えない人は英雄じゃないわ。そうでしょ……修司」

 今でも修司を愛すべき人、そして救いたい友として見定めているミラーガール。

 

 全てを見定め、相手の本心や本質を見抜く魔の瞳とも俗称されるミラーガールの鏡の瞳。

 そんな瞳に恋しながらも、その瞳を今でも直視できない小田原修司。

 魔ともいえる鏡の瞳を生まれながらに持ちながらも、その慈愛に満ちた瞳で未だに愛する人として修司を捉えているミラーガールは、果たして全ての繋がりを断ち切ると宣言する修司を止められるのだろうか。

 そして全ての繋がりを断ち切る覚悟で、今生の全ての命を終焉に導き、過去の歴史そのものを消滅させようとする修司の目論見はどうなるのか。

 聖女と破滅の、未来を賭けた闘いは終わりが見えずにいたのだが。

 

 

 

[命果てる聖女]

 

 人との触れ合い・交流こそ、自分という破滅が生まれただけでなく、そんな自分のクローンである新世代型二次元人が生み出されてしまった要因であると説く小田原修司。

 それに対して、修司の過去やこれからの繋がりを大事に思い、修司との繋がりを大事にする意思を持つミラーガール。

 人との繋がりを得て、今に至るまでに己を変えてしまった二人の男女。

 それぞれの思惑が入り乱れる中、聖女と破滅は未来を賭けて闘い続ける。

 繋がりを得てしまったが故に自分と世界の醜さを痛感した男に反し、多くの繋がりを得たからこそ今の自分がいると実感する聖女。

 二人の思いは、より一層、激しさを増しながら入り乱れ、戦況をかき乱す。

 そしてその思いは無情にも悲しみしか生み出さないのだった。

 

 修司が両手に闇の能力で作り上げた特殊な形状の刃物でミラーガールを殴り斬りかかる一方、ミラーガールは聖龍剣と鏡の盾ミラー・シールドで防御しつつ反撃する。

 二人は時おり距離を置いて離れるが、その際は修司が手裏剣やくない等の投擲武器で遠距離から攻めると、ミラーガールも鏡の盾から光り輝く手裏剣を作り出して修司に投げ返す。

 両者の手裏剣やくないは空中で互いにぶつかり合い、同時に消滅していった。

 そんな激しい遠近の闘いを目の当たりにして、赤塚組の頭領である赤塚大作が聖龍隊の現総長メタルバードに面食らった顔で問い掛けた。

「な、なあ……アッコの奴、修司と同じ様な戦い方してるよな。手裏剣とかばっか使って、どっちも古風なのはなんで……?」

 大将が問い掛けると、メタルバードがそれに答えた。

「アッコの戦法は、まんま修司がよく使う戦法を真似ているからだ。アッコは昔から修司の戦いを側で観察してきた。古風な戦法や戦術を好む修司のやり口を、アッコも側で見てきたのか今でも同じ様に用いる事が多いんだよ。そう、愛し合っている修司の戦いをアッコは忠実に実戦で応用しているに過ぎない」

 メタルバードから、ミラーガールが修司の戦術を真似て闘いに用いていると聞かされて、大将や新世代型達そして皆々は改めて二人の絆の強さを実感した。

 と、ここでミラーガールが聖龍剣を握る右手とは違い、がら空きの左手から大型の手裏剣を現出させ、それを腕の力を存分に使って修司に投げ飛ばした。

「はあッ!」

 重量感がありそうな大型手裏剣を片手だけで、まるで円盤投げの要領で投げ飛ばすミラーガール。

 しかし投げ飛ばされた大型手裏剣を。修司は闇の能力で作り上げた手甲で一直線に殴り付けて、容易く大型手裏剣を弾いてしまう。

「!」

 自身が渾身の力で投げ飛ばした大型手裏剣を意図も容易く弾き返してしまう修司の荒業に、ミラーガールは愕然としてしまう。

 そして大型手裏剣を弾いた修司は、再びミラーガールと接近戦をしようと静かに歩み出すのを視認して、ミラーガールも修司の方へ駆け出そうとするが。

 駆け出そうとした矢先、ミラーガールは足下がよろめいて両膝両手を地面に着けてしまう。

「アッコ!」

 長い戦闘で疲労が蓄積されていたミラーガールの体力に限界が来ていた事実を目の当たりにして、大将が叫んだ。

 そして大将、メタルバードたち聖龍隊に新世代型達と同様に、ミラーガールが倒れたのを目撃した修司は歩みを止めて彼女に無表情で話し掛ける。

「もうお終いにしよう、アッコ。お前では俺には勝てん……大人しく、俺の命を奪われ、全ての命に安寧を与える切っ掛けとなるんだ。それが、この醜く変わり果ててしまった混沌の世界を救済する唯一無二の方法なんだ」

 虚無の表情でミラーガールに述べる修司に対して、ミラーガールは疲労困憊しながらも修司に涙目で訴えた。

「例え、今の修司がどんなに新世代型達の能力までも得たとしても……例え、今は心を完全に失くしてしまっていようと……! ハァ……私は! 私は諦めない! こんな世界だろうと、修司や修司のクローンである新世代型二次元人達と一緒に生きていける未来がこの先、待っている筈よ……!」

 ミラーガールの涙ながらの訴えを聞いた修司は、冷然と彼女に述べた。

「そんな未来などあり得ない……! 生きているだけで周りの人間を、環境を不幸にしてしまう俺や、俺のクローンである新世代型二次元人が生きられる未来など訪れない……! 俺に未来を創造する力が無い様に、新世代型二次元人共にも何の可能性も秘めていない。奴らもまた、俺と同様に世界に混沌を齎してしまう不吉なる存在だ……!!」

 修司が述べる話を聞いて、息を切らしながらも修司を睨み付けるミラーガール。

 だが修司の話はまだ続く。

「俺は、最初はお前たち二次元人こそ平和の架け橋となり、世界の争いを根絶してくれると信じてしまってた。だが、結局は新たな混乱と争いを招くだけで世界は更に平和とは程遠い混沌へと誘われてしまった。アッコ、お前は今でも信じているのか? 自分たち二次元人が平和を世界に齎せる種族である事を? 本当に世界から争いを払拭できると思い違いしているんじゃないか?」

「確かに……私たち聖龍隊、いえ、二次元人は世界から争いを無くせなかった。むしろ、より多くの争いや混乱を招いてしまった……私たちは世界に共存という平和の架け橋を築けなかった。……だから、だからこそ……私は次の世代に託したいの。私たち聖龍隊の……いいえ、過去(かつて)の修司の理想を!」

 次の瞬間、ミラーガールは自分の周りに無数の剣と銃を展開して修司に切っ先と銃口を向けた。

「あれは!」「アタイ達の技……!?」

 ミラーガールが展開した無数の銃と剣を見て、聖龍隊スター・ルーキーズの新人、巴マミと美樹さやかが驚いた。

 そして無数の剣の切っ先と、無数の銃の銃口を修司に向けたミラーガールは言い放った。

 

「私は新世代型の人たちを信じる! 今度は彼らが……平和の架け橋になってくれるって!」

 そしてミラーガールは次の瞬間には、無数の剣と無数の銃口から発射される銃弾を全て修司に向けて発射した。

 修司のクローンである新世代型達の可能性を信じるミラーガールの決死の攻撃が修司に襲い掛かる。

 だが、ミラーガールが弱まっているからか、純粋な破滅へと進化した修司の物質を通過する身体能力を無力化する筈の蒼い輝きが弱まったからか、無数の剣と銃撃は全て修司の体をすり抜けてしまった。

「ああ……!」「チッ、遂にミラーガール自身の聖なる力そのものが弱まってきやがったか……!」

 全ての攻撃が修司をすり抜ける様を見て、大将は愕然とし、メタルバードは口元を歪ませる。

 一方で、ミラーガールの攻撃全てをすり抜けて無傷の修司は、ミラーガールに歩み寄りながら彼女に問い掛ける。

「何ゆえ新世代型を、俺のクローンを信じる? つまらぬ争いや、いざこさばかり起こして……平和とは程遠い行いしかしてこなかった連中が、架け橋どころか何の可能性を秘めているという……!?」

 そんな修司の罵声にも近い質問に、ミラーガールはハッキリと返答した。

「修司、私は貴方と出逢って、より多くの可能性を与えられた……! 赤塚先生が生み出してくれた世界をも超えて、より遥かな可能性を……仲間達を得られた! 修司、貴方にだって可能性というものが存在しているのよ!」

 修司にも可能性が秘められている様に、新世代型達にも可能性が秘められていると説くミラーガールに対し、修司は平然と否定した。

「否……! 俺と言う欠けた存在は、何の可能性も持たない……人々を破滅、いや不幸に導く負の可能性しか持たないのが、俺と俺のクローンたる新世代型二次元人なのだ……!!」

 だが、この台詞に対してミラーガールは強く反論した。

「自分の限界を……そして人の可能性を、勝手に決めないで!」

 ミラーガールは全身全霊の力を右手の聖龍剣に注ぎ込み、聖龍剣を蒼い光に纏わせる。

 それを見た修司は、此処までのミラーガールとの闘いに終止符を打とうと、自身の右手に闇で作り上げた日本刀を現出させて身構える。

「これで終わらせる……!! 全てに決着をつけてやる……!!」

 虚無ながらも無表情な顔で力強く唱える修司を前に、ミラーガールは再び強く反論した。

「させないわ! 私の背には、みんなの思いがある……みんなの思いで、貴方を止める!!」

 そして修司とミラーガールの両者は同時に駆け出した。

「それで歴史や仲間、そしてみんなの繋がりを守るわ!! もちろん……修司、貴方との繋がりもね!!」

 修司とアッコ、聖女と破滅、二人の闘いが今まさに終わろうとしていた。

 俊足で大地を蹴って駆け抜ける修司とミラーガールは、大勢の同士や囚われている多くの二次元人たちが観ている中で距離を詰めていき、互いの刃を抜刀した。

 そして次の瞬間。

 

 ミラーガールが抜刀した聖龍剣を、修司の闇の刃が下から上へと振り払って弾いてしまう。

 愕然とするミラーガールを尻目に、修司は容赦なくミラーガールを漆黒の刃で斬り付けた。

 その光景に、二人の闘いを見守っていたメタルバードや大将そして多くの仲間達が自失となり、同じく闘いを見守っていた檻の中の二次元人たちも愕然とした。

 ミラーガールが斬り付けられた直後、修司が弾いた聖龍剣は地面へと突き刺さる。

 そして修司に斬り付けられたミラーガールは、目を大きく見開いて眼前の修司を見据えた。その時の修司の顔は、虚無な無表情ながらも何処か寂し気な顔だった事をミラーガールは忘れなかった。

「…………修、司………………」

 修司に斬り付けられたミラーガールは、その鏡の様な瞳から一滴の滴を零れさせると同時に、力が抜ける様に倒れ込む。

 だが、そんな倒れそうになるミラーガールを、彼女を斬り付けた修司が抱き寄せる様に左腕で受け止めて支えてやる。

 そして大勢の観衆の中、修司は右手の日本刀を消して、両手で息絶えたミラーガールを静かに地面に横に寝かせてやる。

 更に、ミラーガールの瞳から零れた滴を指で拭ってやった。

 息絶えたミラーガールを地面に寝かせ、瞳から零れてた滴を指で拭ってやった修司は、振り返りミラーガールの死に愕然としている皆々に姿勢を向けた。

 そして多くの者が、途方もない絶望と虚無感に襲われている中、修司は今まで無表情だった顔から一転、微かに微笑んで言った。

「さあ、作ろう……どんな個性(いろ)にも染まらない桃源郷を……」

 初めて優しさが満ちたにも捉えられる修司の微笑みを認識して頭の中が混乱する戦場の皆々。

 すると修司が得たテレパシー能力で、戦場の皆に修司の思考が強制的に流れ込んできた。

 修司の思考が自分達の中にも流れ込んだ事で、修司がこの時思い浮かべていた思考を知ったメタルバード、大将、そして新世代型二次元人達に戦場に居た多くの二次元人達が驚愕し愕然とした。

 皆の中に流れ込んできた修司の思考、いや回想は実に悲しいものだった。

 

 古より続く人間が起こす争いの歴史。

 略奪・暴力・破壊・殺戮……傷付け、傷つけ合い。数多の悲劇が繰り返される争いの歴史。

 そんな歴史を何とか防ぎ、食い止める為に過去(かつて)の小田原修司は聖龍隊を、そして聖龍隊を統括する聖龍HEADを設立させた。

 だが、それでも繰り返される争いの日々。そして悲劇の数々。

 聖龍隊の隊士、いや戦士とは血に塗れた存在へと変化していく。

 奪い、奪われ。殺し、殺され。互いに憎み合う果てしなき負の連鎖。

 多くの尊い命と失われた平和な時間を取り戻すべく、修司は全てを捨て切る覚悟で、この世の全てを無へと誘い、争いとは程遠い桃源郷へと導こうとしていた。

 

 かつて愛し合っていた男女の仲すらも、修司はその女との繋がりを断ち切る事から全てを終わらせるという役目を自ら担った。

 二次元人と出逢い、加賀美あつこと出逢い、多くの英雄達と出逢い、自分を変えていった小田原修司。

 修司はその自分と二次元人たちの伝説である聖龍隊を、そして二次元人たちを終わらせる為に行動に移った。

「聖女は……二次元人の始祖たるアッコは死んだ。これから……二次元人達は消滅の時を迎えるだろう」

 しかし、そんな修司の話すらも耳に入らない赤塚大作を始めとする戦場の猛者たち。

 二次元人達は、自分達の存在の消滅に絶望する者や、大切な友である加賀美あつこの突然の死に蒼然自失するばかり。

 そして三次元人の、主にアジアの武将達は、あの小田原修司が婚約まで果たしてた加賀美あつこを殺めた現状に衝撃を受け、茫然としているばかり。

 そんな三次元人のアジア武将の中でも、突然の加賀美あつこことミラーガールの死に誰よりも衝撃を受けて蒼然と完全に戦意すらも失い掛けていたのが、あの台湾将軍のシバ・カァチェンだった。

 カァチェンは心の中で、確かに加賀美あつこを陰ながら愛し敬っていた。そして欠かれカァチェンと周りから疎まれていたカァチェンが密かに憧れていた鬼神と畏れられる小田原修司。その修司がアッコを殺めた事実に頭が追い付いていなかった。

 修司がアッコを殺めたという事実に頭が追い付かず二次元人よりも蒼然自失になってしまうカァチェン。

 多くの者が、修司がミラーガールであるアッコを殺めたという事実に愕然とし、誰の心中も澱み、目から光が失われていた。

 

 しかし、そんな暗い気持ちが戦場を覆い尽くす中、そんな空気と状況を切り裂くような怒声にも近い大声が澱んでいる皆々の心に届いた。

「まだ、終わってねえ!! 立ち上がれ!! 聖龍隊!!!」

 アッコを殺め、今まさに全ての命を滅亡させるべく動き出そうとする修司を前に、心中が澱んで動く事すら侭ならない皆の心に呼び掛ける様に叫ぶのは、聖龍隊総長メタルバードであった。

 そのメタルバードの声に、ハッと我に返って目の輝きを取り戻していく戦場の皆々。

 そしてメタルバードの叫び声に、檻の中でこの大戦の切っ掛けである新世代型二次元人達も我に返った。

 メタルバードの呼びかけに気付かされた多くの猛者達は、自分達の未来を勝ち取る為に再び己が心中に闘志を湧き上がらせる。

 誰よりもミラーガールの死に落胆していたカァチェンも、メタルバードの大声に目を覚まし、武器である逆刃薙(さかばなぎ)を再び手に取り立ち上がる。

 メタルバードの呼びかけで再び闘志と戦意を湧き上がらせた多くの猛者達は、今全てを滅ぼそうと動き出す修司に抗う意思を表情と瞳に表していた。

 

 聖龍隊SRMが全滅し、数多の猛者やキャラクター達が絶命し、そして遂には魔鏡聖女ミラーガールも死んだ。

 今全てを破滅させようとする小田原修司に、数多の二次元人及び武将達が抗いを見せる。

 

 繰り返される悲劇。その悲劇を止められるのは、純粋な破滅か変わらない諦めない意志か。

 

 

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