BLEACH 鬼の手との遭遇   作:桂ヒナギク

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1.鬼の手を持つ女

 透き通るような黒色長髪で、端正な顔立ちのその成人女性は、名を藤宮(ふじみや) 聡美(さとみ)という。

 聡美は警察官で、空座(からくら)警察署捜査一課で殺人事件を捜査をする刑事だった。

 周囲には隠しているが、聡美は霊感が強く、殺人事件で殺害された被害者を認識することが可能で、被害者自身に犯人を聞いて逮捕する検挙率ナンバーワンの女刑事だ。

 視える、触れる、喋れるの三拍子揃いにより、事件以外でも霊と関わることが多かった。

「うえーん、ママー! どこにいるのー!?」

 胸に鎖のついた小さな男の子が、公園の前で泣いている。

「僕、どうしたのかな?」

 男の子が聡美を見る。

「ママが、ママがいなくなっちゃったの」

「そっか。お姉ちゃんね、刑事なんだけど、一緒に探してあげるね」

「本当?」

 聡美は男の子を見て、霊であることはわかっていた。しかし、男の子が死んでいるんだと言うと、ひどくショックを受けるだろうと思い、黙っていた。

「君のお家はどこかな? もしかしたらお家に帰ってるかもしれないね」

「あっち」

 男の子は指を差す。

「行ってみようか」

 聡美と男の子は家まで歩く。

 表札には影山と書かれている。

「ここ?」

「うん」

 聡美はインターホンを押そうとして、血生臭さに気づく。

(まさか!?)

 聡美は扉を開け放った。

 中には誰もおらず、血溜まりだけができていた。

「ママー!」

 男の子が中に入っていく。

 聡美は110番通報で警察を呼んだ。

「お疲れ様です、藤宮さん」

 臨場した刑事が挨拶をする。

「血の匂いがしたんで、嫌な予感がして開けてみたら……」

「なるほど」

 男の子が刑事たちを見て、不思議に思っている。

「僕、僕」

 聡美が手招きをする。

 男の子が聡美の前に歩く。

「この人たち、一緒にママを探してくれるから、安心してね」

 コツコツ、と足音が二つ、近づいてくる。

「ここだ、一護」

 と、黒髪の女子高生と草履を履いたオレンジ頭の黒装束の少年がやってくる。

(……?)

「それじゃあ魂葬と行きますか」

 黒装束の少年が、背中の大刀を手に、男の子に近づく。

「ちょっと君!」

「あ?」

 少年が聡美に気づく。

「って、あんた俺が見えてんのか?」

「見えるも何も、そんな目立つ格好してて気づかない方がおかしいわよ。それから、それ銃刀法違反よ!」

「あー、これかー。俺、死神なんだ」

「死神、じゃねえよボケ!」

 聡美は少年を蹴り飛ばした。

「うお!」

 少年は後方に回転しながら地面を移動して壁にぶつかって止まる。

「いきなり何すんだよてめえ! 痛えじゃねえかコラ!」

 それよりも——と、男の子に向き直る少年。

「だからそんな危ないもの振り回すなって言ってんの!」

「だからって成仏させないわけにはいかねえだろ?」

「成仏? って、あんたもあの子が見えてんの?」

「俺は霊体だ」

「え?」

 少年が大刀の柄を男の子の額に当てがう。

「ちょっと待って。その子、お母さんを探してるのよ」

「お母さんを探してる?」

 手を止めた少年が振り返る。

「そっか。じゃあ、そのお母さんを探してからだな」

 少年は大刀を背中に戻すと、男の子の頭に手を置いた。

 男の子の体の周りに白い帯のようなものが現れる。

「こいつだ!」

 少年が白い帯を掴む。

「母ちゃん見つけたぞ」

「本当? お兄ちゃん」

「こっちだ」

 少年が男の子と歩き出す。

「待ちなさいよ」

 と、聡美が後を追う。

「拓海、どこなの?」

 女性の霊が誰かを探していた。

「ママー!」

 女性へ駆け出す男の子。

「拓海!」

 そこへ胸に穴の開いた仮面の怪物—虚—が現れる。

「魂葬の邪魔だ!」

 少年が大刀を振り回して虚を消滅させる。

「拓海を探してくれてありがとうございます」

 女性が少年に感謝している。

「ここにいたら危険だ。天国まで送ってやる」

「……やっぱり、私たち死んでるんですね」

 少年が大刀の柄を二人の額に当てがう。

 二人の霊は粒子となって天へ昇っていく。

「あなた何者なの?」

「だから、死神だって言ってるだろ?」

「あの子たちはどうしたの?」

「魂葬したんだ」

「魂葬?」

「こっちでは成仏って言うが、尸魂界……つまり、天国に送り届けてやったんだ」

「噂には聞いてたけど、実在するんだ?」

 聡美の左手が喋り出す。

「うわ! なんだその左手!?」

 驚き戸惑う少年。

「ああ、これ?」

 聡美が見せつけたその左手は、眠鬼(みんき)という地獄から来た鬼だった。

 聡美は先ほど、左手の眠鬼で虚を退治しようとしたのだが——。

「鬼の手だけど」

「鬼の手?」

「先刻感じたこやつの霊圧はこの手だったのか」

 と、女子高生が一人納得している。

 聡美は皮の手袋を鬼の手に被せる。

「あんたなんなんだ? 死神が見えるなんて、普通じゃねえよ」

「私は霊媒師よ。ただのね」

「鬼の手って?」

「説明がまだだったわね。この子は眠鬼。現世を悪霊から守るためにやってきた、地獄の使者よ」

「尸魂界で聞いたことがあるぞ。地獄には悪霊退治を生業とする鬼がいると」

「あなた詳しいじゃない。悪霊と言っても、まだ妖怪しか斬ったことないけどね」

「妖怪?」

「今、童守町(どうもりちょう)周辺は逢魔時の時期でね。妖怪が活発になってるのよ。で、さっきのは?」

「虚という元は人間だった魂が悪霊化したものだ」

「そう。私、藤宮 聡美。あなたたちは?」

黒崎(くろさき) 一護(いちご)だ」

朽木(くちき) ルキア。護廷十三隊十三番隊副隊長だ」

「あなたたちは、悪霊退治と成仏をして回ってるってことでいいのかな?」

「簡単に言やそうだな」

「なるほどね」

「童守町って近いのか?」

「隣町よ」

「そうか。機会があったらみんなを連れて行かねえか、ルキア?」

「そうだな」

 三人は別れ、それぞれの帰路に就いた。

 

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