そのためキャラ崩壊同然のネタなので地雷な方は逃げてください。
ベータがキレたら口が悪かったりするといいですよね。
はい。
バベルの拠点にある食堂は、昼食時ということもあって多くの人が食事をしていた。
そんな中、私は二人の先輩に相談していた。
「それで、相談って?」
デュカリオン先輩は、サンドイッチをつまみながら聞く体制に入ってくれた。
シャープ先輩は眠そうにコーヒーを飲んでいるけど、目を向けてくれているから、多分聞いてくれてるんだろう。
そんな二人に感謝しながら、私は話し始めた。
「実は、18号さんのことなんですけど……」
「まさか、また?」
「また、とは……?」
「え?また勝負を持ち掛けられたんじゃないの?前は徒競走で、その前はババ抜きだったよね?」
「そのまた前は模擬戦でしたね」
よ、よく覚えてますね……なんて零すと、滅茶苦茶目立つし、と返された。
二人だけでなく、いろんな人の話のネタになってるとも言われて、少し恥ずかしくなった。
「で、今回は何で勝負したの?」
「先輩、多分相談に関係してないことですよ……多分、さすがに嫌になったとかじゃないですか?ベータさん優しいですし『やめて』なんて言えなさそうですし。だから、私達の方で止めてもらえないかとか」
「えー、それはないでしょ~。だってベータちゃんもなんだかんだいつも楽しそうだし。ね?」
「えっと、はい……」
「じゃあ、相談の内容とは?」
「えっと……
18号さんが近づいてこなくなって……話しかけに行こうとすると、逃げちゃうし……
ひっ……!?」
私は本題を話すと、デュカリオン先輩はひっくり返り、シャープ先輩はコーヒーを吹き出し、周りにいる人が一斉に、驚いた表情で私を見た。
あれは数日前のことだった。
私はバベル所属の人造天使として、激務に追われていた。
追われていると、どうなるか。
「はああああああ……」
こんなにも大きなため息をついてしまうほど、私は疲れに疲れていた。
新武装の試作品での模擬戦、レポート作り、暴走した旧世代ロボットの鎮圧、etc……
忙しさに拍車をかけた数日だった。
そして、やっとの思いで手に入れた数時間の休憩。
とりあえず休憩室でひと眠りしようと廊下を歩いていると、人影が一つ私の前に立った。
「やっと見つけたぞ!私と勝負だ!!」
腕を組んで、自信満々な笑みで私を見る、18号さんだった。
こうやって勝負を挑んでくるのはいつものことで、不本意ながら慣れてはいた。
そのため、いつもなら頑張って断ろうとして、ずるずると引っ張られるんだけど……
「……」
「……」
「……」
「……お、おい!?」
無視してそのまま横を通り抜けて逃げようとした。
今思えば、自分らしくない強引な逃げ方だった。
それぐらい、とても疲れてて眠かった。ほんっ……とうに眠かった。
でも、18号さんはあきらめが悪い人。
逃げようとする私の手を掴んで、無理やり引き留めてきた。
「……なんですか」
「っ、なんですかじゃない!私と!勝負しろ!!」
「嫌です。今ものすごく疲れてるので」
「私は疲れてない!!」
そんな風に、小さな女児のように駄々をこねる18号さん。
振りほどこうにも疲れでやる気が湧かず。
「お願いです、私仕事続きで本当に疲れてて……休憩今しかないんですよ……」
「私だって今しかないんだぞ!貴重な休憩時間なんだ!!」
「じゃあ休みましょうよ……今から休憩室で寝るんです……」
「断る!!私と勝負して!!」
気づけば、少しずつ引っ張られる私。
彼女も人造天使、ごてごてした装備を付けた私を引っ張るなんてこともたやすい。
「今日は綱引きで勝負だ!私の方がパワーが高いことを証明してやる!」
「あ、じゃあそちらの方が強いということで。じゃあ失礼します」
「戦わないと証明できないだろー!?い、い、か、ら、こ、いー!!」
「18号さんの方が強いでいいじゃないですか……なんで私に……」
「お前より優れてるってことを証明しないといけないからだ!!私が最強だって!」
いつもならここら辺で折れて挑戦を受ける私も、今日に限っては私も頑固。
私も少しずつ力を込めて抵抗の意思を見せる。
どちらも自分の方へ引っ張るそれは、18号さんがしたがっていた綱引きみたいになっていた。
「こ、い、よ~!!」
「い、や、で、す~!!」
「このっ!」
「っ、いたっ」
白熱しすぎたせいか、18号さんの力が思いっきり私の手を握り締め、私はそれに声を上げた。
それにびっくりしたのか、18号さんは飛びあがる猫のように手を放してくれた。
でも、特に言動に変化はなくて。
「……ふっ、ふんっ!やっぱり私の方が強いようだな!私の方が優れてるんだ!」
その時には私はもう眠気がマックスで。
邪魔して、眠気を溜めてきた18号さんに……その、正直に言えば、キレてて。
「……」
私は無言で18号さんに詰め寄る。
「な、なんだ……?も、文句があるなら、勝負するか……!?」
そう言いながらも、後ずさっていく18号さん。
そして、18号さんは廊下の壁にぶつかって。
私はそんな18号さんの目の前に立って。
腕を思いっきり振りかぶって。
18号さんは目をつぶって。
私は18号さんの
そして、顔を18号さんの目の前に持って行って。
「……おい、18号」
「ひゃっ!?」
「今日は、やめろ。いいな?」
今思えば凄く眉間を寄せて、凄く声が低くなっていた気がする。
そう言うと、18号さんは怖くなったのか、顔を真っ赤にして、へたりこみ、
「ひゃ……ひゃい……」
そう呟いた。
私はそれを一瞥した後、休憩室に向かってフラフラと歩いていった。
目的地には特に問題なくついて、そのまま気絶するように眠りについた。
「――そんな感じで、その次にあった時から18号さんが近づかなくなって。顔を合わせたとたん、顔を赤くして逃げて……多分、怖がらせちゃって……」
「「……」」
「……あ、あの?」
事の始まりと思われる話を話すと、デュカリオンさんとシャープさんは固まっていた。
動き出すのを待っていると、デュカリオン先輩から動き出した。
「ちょっと待っててね!……どう思う?」
「どう思うって……アレじゃないですか?」
「やっぱりそう思う?でも確かにおどおどしてる子にそんな側面があったらドキドキするかも」
「先輩の癖はどうでもいいです」
「酷いっ!?」
急に二人が後ろを振り向いて、何かを話している。
それは聞こえないけれど、多分問題の解決に関係があるんだろうと少し期待する。
少し待っていると、二人は振り返った。
「よし!私にその時の行動真似してみて!」
「え、えぇ~……?ここでですか……?」
「うん!一度同じ立場になれば解決の糸口が見つかるかなって!」
「それはそうかもしれませんけど……皆さんのご迷惑に……ひえっ……」
ご迷惑になる、そう言おうと周りを見ると、近くの壁までの道がすっきりと開いていた。
まるでここですぐにそれをやれと言わんばかりに。
「これじゃあ引けないね~?」
「うわっ、嫌な先輩」
「だまらっしゃい!」
「うぅ……分かりましたよぉ……」
私はしぶしぶ、デュカリオン先輩は楽しそうに壁に向かった。
デュカリオン先輩はにやにやしている。
「あ、私のこと呼び捨てにしていいからね」
「え、えぇ……どうしてそこまで……」
「だって私、探究者だから?」
「探究者の名前泣きますよ……」
「最近後輩に舐められてるよね私」
そんなことを話しながら、んんっ、なんて声を整えて、あの日の再現を始めた。
まずは拳を握って、思いっきり振りかぶって壁にぶつける。
そして、できるだけ低い声で。
「おい、デュカリオン……デュカリオン先輩?」
呼び捨てにした瞬間、デュカリオン先輩は顔を両手で覆った。
つい素に戻ってデュカリオン先輩に声をかけた次の瞬間、後ろからキャーッという悲鳴が聞こえた。
やっぱり先輩を呼び捨てにしたのはまずかった!?と冷や汗をかいていると、後ろからシャープ先輩が近づいてきて、一言。
「この人たらし」
「え、えぇ……?」
未だに顔を覆ってるデュカリオン先輩を連れて、元の席に戻る私達。
「あの、やっぱり呼び捨てってまずかったですよね……?」
「安心してください、照れてるだけなので」
「……」
「照れて……?何故……」
「まあ、その……はい。……はい」
「何か言ってください!!」
そんな私の言葉もどこ吹く風に、コーヒーを飲むシャープ先輩。
でもその次には、真面目な顔になって、シャープ先輩は言った。
「一応聞きますけど、どうしたいんですか?正直、今の状態が続けば迷惑はかけられませんよ?」
「それは……嫌です。確かにあの時は疲れてたから違うけど、別の日とか、ちゃんと事前の約束をしたりしてくれたらいいんです。それに、18号さんと勝負するのは、嫌いじゃなくて……」
へぇ、と相槌を打ったのはいつの間にか復活していたデュカリオン先輩。
肘をついて優しい笑みを浮かべて私を見ていた。
「そんなに気に入ってるんだ、あの子のこと」
「はい、なんていうか……妹がいたらあんな感じなのかなって思って。本人に聞かれたら怒るでしょうけど……可愛いんです」
「だって~、18号ちゃん」
「えっ」
デュカリオン先輩が顔を向けた方……食堂の入り口には、顔をほのかに赤に染めた18号さんが立っていた。
不味い。
勝ち気で負けず嫌いの18号さんに聞かれたら、なんて言われるか分からない。
あの、その、なんて言い訳を考えているうちに18号さんはずかずかと近づいてきて、私の目の前に立った。
「おっ、おい!」
「な、なんですか……!?」
「その……えっと……あの……」
「ゆっくりでいいよ~18号~」
「うるさいっ!」
外からのヤジに反応しながらも、18号さんは私の目を……合わせたり、外したりしながら言葉を探しているように見える。
「~~~っ!」
「むぎゅっ!?」
そして、覚悟を決めたように私の顔を両手で掴んで、目を見つめ、叫んだ。
「あれも!あの喋り方も!私だけにしろ!!!」
そう言うと18号さんは食堂を走って出て行ってしまった。
あれって何……?と困惑しながら、首をかしげていると、シャープ先輩が横に来て教えてくれた。
「さっきデュカリオン先輩にやったことですよ」
「あれ……あの、どんっ!ってやつですか?」
「壁ドンですね」
「壁どっ……!?」
私は頭に浮かんだ『もしかして』を大きく振り払いながら、18号さんが走り去っていった方向へと、目を向けるしかなかった。