元星は初星でどう生きるのか   作:Ym.S

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プロローグ

 

 

 突然だが、スターとは何だろうか? 

 

 

 語源は英語の"Star"で、夜空に眩く光り輝く天体のことを指す。そして、我々が生きている地球からは遥か遠くに位置している。その遠さは、簡単に想像できるほどの物差しで測れることはなく、『光年』という独自の単位を使うくらいだ。いざそこに辿り着こうとするものなら、辿り着く前に寿命を迎えてしまう。それ故に、我々には到底辿り着くことのできない存在であり、その代わりに天体観測やプラネタリウムを通して天体を眺めて、神秘性に惹かれたり、憧れたりするなどして親しまれている。

 

 スターの由来はそんなところだが、それとは別に、我々にもっと身近な場面で、それに準ずるような意味で使われることがあるだろう……それは、各々が持っている憧れのことである。十人十色という言葉があるように、みんなの中にも何か憧れや好きなものがあるはずだ。

 

 

 ちなみに俺にとってのスターは、アイドルだ。

 

 アイドルは、その最大限の力をもって世に輝きを放つ。そして、その輝きに人は魅了される。そうして、アイドルはその輝きを増していき、更にはトップアイドルになっていく───

 

 そう、アイドルは天体が自身で輝きを放つように、自分で輝けるからこそアイドルなのだ。

 

 

 ただ、そのアイドルもこの世に生まれた時からスターではない。アイドルだって、元は一人の人間だ。天体の方みたいに自ずと輝き始める訳ではない。だから、如何(いか)なるアイドルも始まりがある。

 

 初星(はつぼし)学園は、そんなアイドルの始まりを見守り続けている、トップアイドル養成学校なのだろう。

 

 (スター)の初まり、で初星……まさしくアイドルの養成学校にふさわしい名前だと感じる。

 

 

 

 じゃあ、もしこの学園にいる生徒達が初星なのならば……俺は、元々星だった存在──────元星(もとほし)、といえるかもしれない。

 

 

 俺はもう……(アイドル)ではないから。

 

 

「神山唯仁です。よろしく」

 

 

 そんな俺が、桜が満開に咲き散る今日この日、その初星学園の始業式で体育館の舞台に立って挨拶をしていた。(アイドル)ではなくなった俺が、一体何故こんなところにいるのか……

 

 

 そのきっかけは、今から少し前の出来事まで遡る。

 

 

 ────────────────────

 

 

「ここが例の……」

 

 

 時は春の始まり。寒さが消え失せ、暖かくなってくる季節だ。俺は何も持たずに手ぶらで目的地である初星学園の門の前に立っていた。

 

 そんな俺の名前は神山(かみやま)唯仁(ゆいと)。ついこの間成人を迎えたごく普通の男だ。

 

 ……いや、普通ではないか。まあ、経歴がちょっと変わった人間だと言っておけば良いだろう。

 

 そんな俺は、この初星学園の学園長から呼び出されて今ここにやって来ている。ここには一度だけ前を通ったことがあったが、今日初めて中に入る。とても頑丈に見えるレンガ作りの門には、『私立 初星学園』と年季の入った銘板があり、この学園の歴史を感じられる。もしそんなところに入れるとなったなら、普通は誰でも少しはワクワクするだろう。

 

 

 しかし、今の俺は機嫌が悪い。何せ、昨日が金曜日で週末だから休もうかと思っていたら、夜に電話がかかってきて明日ここまで来いと言いやがったからな。こんな土日に突然呼び出しやがって……学園長が相手だとしても、しょうもない要件だったら即行帰宅してやる。

 

 ……まあ、逆に真面目な頼み事だったら多少の無茶振りでもあの人とは長い付き合いだし、頼み事だから断るつもりはないがな。それに、長らく顔も出してなかったし、もしかしたら幼馴染の()()()にも会えるかもしれないし、土日が潰れたことを除けば悪くない用事だな。

 

 そう考えながらも俺は初星学園の立派な門を潜っていき、先方に指定された初星学園の学園長室へと辿り着いた。校舎内は人気がなく、俺の足音だけが響き渡っていた。土日だからというのもあるだろうが、今は春休みにあたる時期だからだろう。

 

 というか、初星学園はアイドル養成校だが、アイドル養成校の春休みはどうなっているのか全く分からんな。俺は中高共に普通の学校だったし、初星学園も普通の学校みたいな日程になってるのだろうか……? 

 

 いかん、アイドルのことになるとつい思考にのめり込んでしまう。今となっては、そこまで必死になる必要はないのにな……

 

 

 思考を自分で遮り、奥ゆかしい字体で『学園長室』と書かれたドアを3回ノックした。

 

「入りなさい」

 

 中から(しわが)れた年配の男の人の声を聞いた後に、ドアノブに手をかけ、部屋の中に入った。

 

「失礼します」

 

 開いたドアを閉め、部屋から聞こえた声の主と相対した瞬間、弾んだ声が返ってきた。

 

「おぉ、神山の(せがれ)!! 待っておったぞ! 久方(ひさかた)ぶりじゃのう!」

「お久しぶりです。十王邦夫学園長」

 

 この人が初星学園の学園長で、名は十王(じゅうおう)邦夫(くにお)。俺のことを『神山の(せがれ)』と呼ぶのは、俺の両親が仲が良かった関係で繋がりを持ったからだ。

 

「そんな猫を被らんでもいいじゃろ! いつものように話せい」

「……はぁ、分かりましたよ、十王の爺さん」

「そう、それじゃ! いやぁ、懐かしいのう……いつぶりじゃ?」

「五年くらいじゃないですか? 高校時代は忙しくて、時間がなかったですし」

「そんなに経っておったのか! いやぁ歳を取ると時間が経つのはあっという間なもんでな! ついこの間おぬしと我が家で夕食を共にしたものだと思っておったわ!」

「はぁ……」

 

 十王の爺さんと会うと、大体最初は色々聞かされる羽目になるんだよなぁ……だから、こちらから話を振らないと本題に進まない。

 

「それより、俺に何か用があってここに呼んだんですよね?」

「まあまあ、そう結論を急ぐでない! それとも何じゃ? 星南(せな)の近況でも聞きたいのか?」

「いや土日に招集させておいてどの口が言うんですか。それになんで彼女の名が出てくるんですか。今彼女は関係ありません」

「あーすまんすまん、そう怒るでない……それで、わしがお主をここに来させた理由じゃったな」

 

 やっと本題に入れる……と安心したのも束の間、俺は次に発せられる言葉に衝撃を受けることになる。

 

 

「単刀直入に伝える……お主、この初星学園でトレーナーをやってはくれぬか?」

 

「……えっ?」

 

 

 これが、俺の第二の人生を歩むきっかけだった。

 

 





 学マス二次書き始めました。
 更新はなるべくハイペースでしたいところですが、遅くなることも多いかもしれませんのでご了承ください。

 それではまた次回!

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