元星は初星でどう生きるのか   作:Ym.S

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 新年あけましておめでとうございます(早漏)

 皆さんはCampus mode!!限定ガチャは引きましたか? 
 私は今、ジュエル数の横にあるプラスマークを押そうとしています(瀕死)
 SSR確率アップとは……?

 ……まあ、おふざけはこれくらいに。それでは本編へ。


第十話 元星とイカしたハート

 

 

「────ねぇ! キミが今日から一緒に共演する人かな?」

 

 少年はある日、とある劇団のステージにゲスト出演しようと楽屋で待機していた時、少年より一回り幼い男の子のような外見の子に声を掛けられた。

 

「あぁ、そうだが……君はもしかして、ここの劇団に所属してる子か?」

「そうだよ。ボクは有村あきら! 将来カッコいい王子様になる予定の、この劇団の男役のエースさ!」

「へぇ……そいつはなかなか面白い夢じゃないか」

「でしょ? やった! ボクの夢に共感してくれる人だ!」

 

 クールに決めた自己紹介に対して、年相応の喜びを見せるその姿を見て、少年は微笑ましい様子で見守る。

 

 すると、あきらと名乗る子の視線は少年の胸元辺りに向いた。

 

「あっ……衣装が少しネクタイが曲がってるよ」

「えっ、マジ? んーと、どうしたものか……」

「ちょっと待ってて」

 

 あきらの指摘を受けて、自分の体を見回している少年だったが、それを見たあきらは少年に近寄り……

 

「……よし、これで良いかな」

「わざわざありがとうな。あまりまだこういうのは慣れてないから、助かったよ」

「大丈夫。ボク、手先が器用だから。困ったらいつでも頼ってほしいな」

「ははっ、それは頼りになるな」

 

 ネクタイの位置を手早く直したあきらに対して、礼を述べる少年。初めての演劇出演だった彼にとって、あきらという存在はとても心強い存在だった。

 

 そして、そんなあきらの一挙手一投足を見た少年は……

 

 

「なあ、有村といったか……お前、なかなか()()()()()()()を持ってるな」

「えっ? ……ははっ、キミは面白いことを言うね」

 

 これが、二人の出会いであった。

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

「さーて、今日受け持つレッスンは終わりか」

 

 初日のレッスン指導を終え、ボーカルトレーナーの中野先生と今日の振り返りをしたのちに別れ、神山唯仁こと俺は生徒会室に向かって廊下を歩いていた。

 

 今日参加したレッスンは合計二つ。最初は一年二組で、千奈ちゃんや佑芽、それに篠澤との会話があそこまで伸びるとは思わなかったが、なんとか次のレッスンに間に合った。結局そのレッスンも何事もなく終わったから、総合的に見れば、俺の初星学園での新たな生活は、良い感じで幕を開けられたのではないかと自負している。

 

 ……まあ、もしかすると俺的にはこの後がどうなるかで、その結果が変わってくるかもしれないが。

 

 

 そう色々と言っているうちに、目的地である生徒会室の前に辿り着いた。

 

 

「失礼しまーす……」

 

 ノックした後、扉を開けると……

 

「あっ、神山先生! お疲れ様です!」

 

 そこに居たのは、生徒会の一員である姫崎と……

 

 

「や、やあ。お疲れ様、です……」

 

 

 本来生徒会室には居ないはずの人物……有村がそこにいた。

 

 まあ、何故彼女がここに居るかっていったら、俺が姫崎に連れてくるように頼んだからなんだけどな。

 

「じゃあ、私は少し用事があるので行きますね」

「あぁ、ホントに助かった。サンキューな。今度何かお礼するよ」

「そんな良いですよ! それより……麻央のこと、よろしくお願いします」

「あぁ、任せろ」

 

 姫崎に対して礼を述べると、俺にしか聞こえない声でそう伝えてきた。

 

 星南と燕は今日仕事の関係でここにはおらず、今この空間には、俺と有村の二人のみということになった。

 

 こういう状況になったのも、俺が姫崎に二人で話す環境を作りたいと頼んだからだ。姫崎も何かしら仕事があるはずなのに、俺の我儘に協力してくれたのだろう。本人はお礼なんて良いと言っていたが……その機会を見繕うしかないな。

 

 こうして俺は、有村の方を向き、話しかけた。

 

 

「どうやら、お前は良い同僚に恵まれたようだな?」

「そうですね……莉波は、本当に頼もしいボクの同級生です……」

 

 そうだ、同僚じゃなくて同級生か……アイドルだった時の語彙で話してしまうのをそろそろ直さなきゃな。

 

 一方で少し柔らかい表情でそう語る有村だが、そこにはまだぎこちなさがあった。何より……

 

「おいおい、今はレッスンじゃあるまいし、昔みたく軽ーく接してくれ。正直、お前が敬語なのは違和感しかない」

「む……これでも、ボクは礼儀とかを弁えるようになったんですけど?」

「そうか、有村も大人になったって訳な……けど、お前もタメの方が楽なんじゃないか? 俺は一向に構わん」

「そうかな? ……じゃあ、そうするよ」

「それで良い」

 

 一切の遠慮なく、あの頃絡んでいたように接すると、彼女のぎこちなさが少しほぐれた気がした。口調もあの時の有村に近くなったし、この会話の感じも懐かしさを覚えた。

 

「すまんな、わざわざここまで来てもらって……あまり表で長く話してるとほら、人の目もあるし」

「あぁ……確かに、ボクもその方が助かるかな」

「だよなぁ……」

 

 やはり、俺たちが二人で話していたのを見られて、周りの同級生に変な噂を立てられたくないのだろう。それに、俺は今日ここに着任したばかりの新人教師だ。俺としても、変な噂を立てられたくない。利害が一致して助かったな。

 

 

「しかし、俺たちが最後に会ってからもう……十年か? 立派に成長して……見違えた」

 

 俺は改めて有村を目の前で見て、最後に彼女と会ったその日を思い出して感じたことを述べた。

 

「そ、そうかな……」

 

 すると、有村の表情に陰りが見えた。それを見た俺は、こう続けた。

 

 

「あぁ、ますます()()()()()に磨きが掛かったな」

「えっ?」

 

 彼女が予想しなかった言葉だったのか、目を見開いて驚いている。

 

「本当? ボク、あれからちゃんとカッコよくなれてる……?」

「本当だ、お世辞でもない。俺には分かる、お前の内に秘めるカッコよさが、より輝きを増しているように感じるから」

「……そっか、神山君には、そう見えてるんだ……」

 

 俺の真摯な言葉に対して、有村は笑みを浮かべてそう呟いた。

 

 この言葉には、なんの偽りもない。決して嘘も方便といった体で彼女を安心させようとしている訳でもない。ただ俺が、今この場で彼女を視て感じたことだ。

 

 そして俺は、ついに本題に触れた。

 

「だからこそ、俺は知りたい────俺と会わなくなってから、一体何があったのかを」

「っ……! ……分かった、じゃあ話すよ。これまでの、ボクの軌跡を」

 

 

 こうして、有村の過去について話を聞いた。身長が思うように伸びず、望んでいた劇団に入ることも出来なかったこと、元々入っていた歌劇団も彼女の身体的な成長のせいでお払い箱になってしまったこと、アイドルになろうと初星学園に入っても、王子様のようなアイドルを望む声がなく思うようにアイドル活動が出来ていないこと……

 

 一人の少女に突きつけられた、残酷な出来事だった。

 

「そんなことがあったのか……」

「ははっ、つまり、ボクが憧れた王子様になるのは、夢のまた夢だったってことさ……」

 

 自虐的な口調で乾いた笑いを浮かべる有村。まるで、何もかもを悟ったかのように澄ました表情だった。

 

 

「……それで、今の話を聞いて、失望したかな?」

「……失望?」

 

 彼女の口から出たその二文字に、俺は疑問符を浮かべざるを得なかった。これまでの話の流れで、俺が彼女を失望する要素が見当たらない。

 

『一体何を言っているのか?』という言葉を心に留め、彼女の言葉を傾聴する。

 

「神山君が期待していたような、誰もが憧れる理想の王子様になれず、歌劇の道からすらも諦めた。そんなボクって、格好悪いよね……」

 

 今にも泣きそうな様子で有村はそう答えた。

 

 

 そういうことか……

 

 

 

「……全く、見当違いも甚だしいな」

 

「えっ?」

 

 

 あまり感情を悟られないように接していたが、俺はもう我慢の限界だった。そして、これまで溜め込んでいた思いを全て吐き出すかのように、俺は彼女に説いた。

 

 

「いいか、はっきり言わせてもらう! お前が演劇の道に諦めずに進もうが、路線を切り替えてこっちに来ようが、理想的な外見になろうがなることができなかろうが、そんなのは俺にとって、ほんの少しの誤差に過ぎない! それより俺にとって大事なのは────お前があの時持っていたその熱意が、まだ残っているかどうかだ!!」

「っ……!」

 

 俺は有村の目の前まで歩み寄っており、彼女は俺のことを見上げていた。

 

「どうなんだ? お前はもう、自分がカッコよくありたいと思わないのか? それすらも、もう諦めてしまったのか!?」

 

 真っ直ぐ彼女を見てそう問いかけると……

 

 

「……違う!! ボクはあれからずっとカッコいい王子様になれるかもしれない僅かな可能性を信じて、日々一生懸命にもがいてきた! このジャケットだって、これからボクの身長が伸びると思って着ているものだ! 似合わないって、求められてないって言われたけど、これはボクのせめてもの意地だ! 悪足掻きだとしても、そんな簡単に諦められる訳がない!!」

 

 

「そうか……それが聞けて俺は嬉しいぞ?」

「……! 神山君……」

 

 それは、彼女の心の叫びだった。その言葉を聞けた俺は、安堵した。

 

 

「まあ、そうだよな。その格好は、お前がカッコよくありたいという望みの象徴だって、この間会った時から大体分かってたよ」

「えっ!? き、気づいてたならなんで──────」

「そりゃあ、お前の口から聞きたかったからに決まってるだろ。まあ、もしお前がカッコよさを忘れていたとしても……まず俺がお前を失望するなんてあり得ない。お前との仲だろう?」

「神山君っ……!!」

 

 有村も緊張の糸が切れたのか、俺の胸元に(すが)ってきた。

 

 そんな彼女のサラサラな髪を撫でながら、言葉を続ける。

 

「お前は一度歌劇の道を諦めても、なお前に進もうとした。とても苦しくて辛かっただろうに、それでも再び立ち上がれた。そんなの、誰にでも出来ることではない。だから、そんなお前は俺にとって十分カッコいい奴だ」

 

「ぐすっ……ボク、ここまで頑張ってきたよっ……!」

 

 目に涙を溜め込み、俺を見上げる有村。己のカッコよさを守るために、涙を流したくないという気概が見てとれた。

 

 

「ああ、その通りだ……ほら、どんなにカッコいい奴だって、どこかでその溜まりに溜まった感情を発散しなきゃいけないぞ。今日くらいは、良いんじゃないか?」

 

 

「っ……! ─────っ!!」

 

 

「よく頑張ったな……有村」

 

 

 

 しばらくの間、有村は周りに響かないよう、俺の胸の中で我慢してきた辛さを吐露した。挫折というのは……とても辛いものだ。それでも、彼女は自身のカッコよさを守るべく、挫折の辛さを胸の奥にしまって、泣かずに前へ進んできた。俺は、そんな彼女の溜め込んでいた負の感情を吐露する相手になれたらと思った。

 

 

「発散できたか?」

「……うん、ありがとう。神山君のおかげで、少し楽になったよ」

「どういたしまして、それは何よりだ」

 

 本人が落ち着いたところで、有村は俺から離れ、再び面と向き合った。その有村の表情からは、どこか清々しさを感じた。

 

「でも、目が赤くなっちゃった。このまま帰ったら、莉波とかに心配されちゃうかな……」

「それは困るよな……なら、しばらく俺と話をしよう。楽しい話とかしてたら、少しマシになるんじゃないか?」

「そうだね……でも、莉波達が帰ってきたりしない? ボクたち、部屋を借りてる訳だし」

「あー……まあ、それは大丈夫じゃないか? それに、まだしばらく帰ってこないと思う……多分」

「ふふっ、自信なさそうだね。どうなっても知らないよ?」

 

 悪戯げに笑う彼女は、小さい頃よりも大人っぽくて、とても魅力的だった。

 

 こうやってゆっくりお話しすることになったのだから、俺はもう一つ気になっていたことを訊くことにした。

 

「ところで、一つ気になってたんだが……この間会った時、なんでよそよそしかった?」

「それは……」

「……もしかして、俺に失望されたくなかったとか?」

 

 そう訊くと、有村はこくっと頷いた。

 

「そういうことか……全く、俺がそうすぐにお前を見捨てる訳がないじゃないか」

「だ、だって怖かったんだもん! ……はっ!?」

 

 すると、有村は急に何か気づいたように口元を押さえた。少し顔を紅く染めて恥ずかしげな様子を見せている。

 

「ははっ、まだまだ子供っぽいところもあるんだな。改めて言うが、俺はそういうのも良いと思うぞ」

「も、もう! 揶揄わないで! ボクはもう立派な高校三年生だから!」

「揶揄ったつもりはないんだけど……そっかぁ、もう三年生なんだな」

 

 ついあの時のようなノリで会話していたが、有村が高校三年生か……確かに、星南や燕と同い年だなーって思ってたし、そういうことなんだよな。

 

「そうだよ、今年で初星学園最後の年。ボクにとって、勝負の年でもあるんだ」

 

 有村の真剣なその表情は、最終学年である高校三年生だからこその覚悟を表しているのだろう。姫崎も焦燥感に駆られているようだったし、今や学園内で一流の星南と燕だって、似たような覚悟を持っているだろう。

 

 じゃあ、そんな奴らに俺が出来ることはたった一つ──────

 

「……じゃあ、そんな勝負に勝てるように俺がサポートするよ。俺は今、この学園の教師なんだからな」

「……! ふふっ、そうだったね。始業式の時、なかなか派手な挨拶だったよ」

「派手って……まあ良いだろう。それで、これから俺はお前の先生として色々教えていく訳だが……その中で、一緒に探していこうぜ。お前がカッコいい王子様のようなアイドルになれる方法を」

「……本当にあるのかな」

 

 不安そうな表情を浮かべる有村。今まで本人が至らなかった境地を目指すのだから、そう簡単なことではない。でも……

 

「きっとあるさ。だって、お前は()()()()()()()を持ってるんだから」

「それって───あははっ、ボクには未だにその言葉の意味が理解し難いけど、悪くないね」

 

 そう言うと、有村は姿勢を正して一礼をした。

 

「またこれからよろしくお願いします────神山先生」

「おう、任せとけ」

 

 





 今回はここまで。

 有村麻央の理解者になりたい人生でした。
 
 2026年も引き続き、本作を連載投稿していくつもりですので、よろしくお願いいたします。

 それではまた次回。
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