元星は初星でどう生きるのか   作:Ym.S

8 / 11

 どうも!
 第七話です。
 今回は前回の場面の途中から始まります。

 では早速どうぞ。


第七話 元星と姉妹

 

 

「お断りします」

「……え?」

 

 

「「えぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 

 全く予想もしなかったプロデューサー候補生・菖堂(しょうどう)(まなぶ)の返答に、二人の男女の絶叫が校内に響き渡った。

 

 入学式に遅刻して開幕から大コケをかました新入生の花海佑芽の自己PRは胸を打つものがあり、一つ一つの言葉にとても強い意志を感じた。それは、俺の隣で共に聞いていた学も同じように感じたはずだ。なのに……

 

「お前、それで断るのか……」

「そうですよ!! いまOKしてくれそうな流れだったのに!?」

 

 この花海の発言には同意だ。横から彼の様子も見ていたのだが、彼の目線は彼女に釘付けになっているように見えた。彼女の信条に惹き込まれていたに違いない。

 

 実際、返事をする前に一度俺に確認を求めてきた。学が花海をプロデュースするかどうか本気で考えるために、アイドル経験があって才能を見抜く力のある俺に意見を聞きたかったからだろうと推測できる。つまり、彼の中で”花海佑芽をプロデュースをする”という選択をする一歩手前まで行ったということだ。

 

 それにも関わらず、彼は断った。一体何がそうさせたのか……? 是非理由を聞かせてもらいたいなぁ、学よ。

 

「それは……」

 

 そうして彼の口が開いた瞬間のことだった。

 

 

「その人は、私のプロデューサーだからよ!」

 

 隣の(まなぶ)がいる方から誰か声が聞こえたと思い、そちらへ目を向けると……

 

「お──お姉ちゃん!?」

「ええ、お姉ちゃんよ!」

 

 花海佑芽がお姉ちゃんと呼ぶその子は、入学式の新入生代表挨拶で見かけた入学試験首席・花海咲季だった。

 

 やっぱり姉妹だったか。そして、咲季の方が姉か。まあ確かに舞台裏から見ても雰囲気的にはそんな感じだったな。

 

 

 ……って待て。今、『私のプロデューサー』って言ったか? 誰がプロデューサーだ?

 

 いや、そんなの……一人しか居ないじゃんか。

 

「えっ、お前まさかすでに……?」

 

 俺は即座に学の顔を窺うと、それに気づいた学は肯定するかのように頷いた。

 

 ……マジで? お前、まだ入学式が終わったばっかりだぞ? それなのにもう首席のスカウトに成功してるのか? もしや、入学前からプロデュースアイドルを探すのが定石だったりする? いや、そもそも入学前からどうやって情報を収集してくるのかが謎なんだが……

 

 学、もしや俺が思ってる以上にプロデューサーとして頭抜けてるのか……?

 

 

「まったく、佑芽は初日から遅刻するなんて……どーせ迷ったんでしょう?」

 

 俺が困惑しているのを他所に、咲季は妹である佑芽に話し掛ける。

 

「う、うるさいなー! ……そ、それより! いま言ったことって!」

「その人は、わたしのプロデューサーよ。佑芽、あなたにはあげないわ!」

「ほんとですか! 菖堂さん!?」

 

 姉から衝撃的な事実を今一度明かされた佑芽は、学に向き直り問いかける。

 

 先客が居たからってことか……そりゃあ魅力的でも断るのも分からなくはない。でもプロデューサーとアイドルというのは、必ずしも一対一である必要はない。一人のプロデューサーが複数人のアイドルをプロデュースすることはザラにある。だから、学が姉妹二人プロデュースするのも理論上では可能だ。

 

 でも、佑芽のアイドルを目指す動機のことを思い出せば……

 

「はい。……ですが、もしよろしければ、ふたりをプロデュースすることも──」

「「それはぜったいにイヤ!!」」

 

 まあ、こうなりますよねぇ……でも、やっぱり佑芽の『勝ちたい相手』というのは姉のことだったか。しかも姉の方も完全に戦う気満々なんだもんな。だったら尚更、二人を同時にプロデュースすることは不可能だ。

 

「───というわけですので、花海さんのお誘いは受けられません」

「あちゃー……」

 

 これには佑芽も引き下がらざるを得ないよなぁ……

 

「ぐぬぬぅ〜〜〜!! 菖堂さんも、あたしの宿敵だったんですね!」

「そのようです」

 

 少し前までは愛想良く学に接していた佑芽も敵対心剥き出しで彼を睨むが、学は一切臆する様子もなく淡々とそう言い放った。

 

「なら、あなたにも勝ちます!! ……お姉ちゃん! あたし、今度こそは負けないから!」

「ええ、相手になるわ! かかってきなさい!」

 

 妹が全力で見栄を張る一方、姉の方は全く動じずむしろ迎撃態勢といったところで、自分が勝って当然といった自信満々っぷりだ。これは妹が姉を攻略するのは難しいでしょうねぇ……今の妹に果たして勝機があるのかどうか? 

 

 そんな風に俺も妙に余裕ぶって俯瞰していた最中……

 

 

「くっそー、余裕ぶりやがってぇ〜! ……じゃあ、神山先生! 先生があたしをプロデュースしてください!!」

「は!? いやプロデューサー資格持ってないから無理に決まってるだろ!」

「今からプロデューサーの資格取ってあたしをプロデュースしてくれませんかっ!?」

「無茶言うんじゃねぇって!!」

 

 唐突な無茶振りすぎて思わず慌ててしまったじゃないか……彼女も必死に上目遣いで訴えてきたのだが、流石に実現性が皆無すぎて引き受けられんよ。

 

 すると、横から姉の咲季が割って入ってきて……

 

「こら佑芽、流石にそこまでにしなさい! 先生も困っているじゃない」

「あっ……ごめんなさい、神山先生!」

「いや……気持ちは分かるから、気にすんな」

 

 困惑したのは事実だが、同時に、できることなら彼女がトップアイドルとして輝くための力になりたいとも思った。でも、俺にはアイドルをプロデュースするという責任重大な仕事は厳しいだろう。

 

 もちろん講師だって責任の大きい仕事だと思うし、その役目は精一杯こなしたいと思っている。でも、一アイドルの一生を決めるともいえるその役目を負うのが、プロデューサーだ。それにどれだけの熱量や知識が必要かと考えると……やっぱりそれに向き合おうとしてる学は凄いなぁと思う。

 

「そうですね……じゃあ、菖堂さん」

 

 姉に諌められ落ち着いたのか、佑芽は再び学の方へ目線を移した。

 

「お姉ちゃんをよろしく!」

「よ、余計なことを言うんじゃないわよ!?」

「ひひ〜! じゃあ、またね〜!」

 

 佑芽は最後に一言そう残すと、その場から走り出した。

 

 しかし少し離れたところで何かを思い出したのか立ち止まり、こちらの方を向き……

 

「あっ! ……神山先生も、今日はありがとうございましたっ! 授業の時はビシバシお願いします!」

「おう、またその時にな」

 

 色々と突拍子もないことを言うし、抜けてるところもあったりするが……素直で良い奴だったな。果たして、補欠合格の実力はどれくらいなのか、今度の初レッスンで見極めたいな。

 

 嵐が去った後のように静かになったその場には、俺と学、咲季が残った。

 

「まったくもー、あの子ったら……」

 

 妹の行動に対してそう言う咲季は、満更でもなさそうな様子だった。

 

 ……さて、

 

「……なあ学」

「何ですか? 先輩」

 

 俺は学に対して質問攻めをする必要がある。

 

「今俺はお前に聞きたいことがどんどん湧き出てるんだが……そもそも、既にアイドルのスカウトに成功してたなんて聞いてないぞ?」

 

 俺がそう問うと、学はあっと思い出したような反応をした。

 

「あー、そういえば先輩に言っていませんでしたね……改めて紹介します、こちらが花海咲季さん。先程まで居た花海佑芽さんの姉で、俺がプロデュースさせていただくアイドルです」

 

 彼が紹介を済ますと、咲季は俺に一礼して挨拶をしてくる。

 

「初めまして! 貴方は……プロデューサー科の方ではないんですよね? 佑芽から先生と呼ばれてたようですが……」

「あぁ、俺の名前は神山唯仁。今年度から入る初星学園の教師で、菖堂学の友人だ。よろしくな」

「そうなんですね! プロデューサーに友達がいるとはびっくりしました! 今後授業やレッスンでお世話になります!」

「なんか失礼な発言が聞こえたが……まあ、その時は色々教えられたらと思うよ」

 

 学に友達がいるのが驚きか……まあ、確かに高校時代から寡黙でフレンドリーな訳ではなかったからな。間違っちゃいないかもしれないが……

 

 そんな学の様子を伺うと、何も動じていないように咲季の様子を見ていた。学は普段から表情の変化が少ない奴だが、恐らく心の中で『心外だ』と思っているに違いない。流石に心底ブチギレてる時は表情に出るはずだ。

 

 それにしても、初めて彼女と相対して会話したが……妹と似て裏表のない性格をしてそうだ。学に対しては随分フランクな感じだし、この時点で既に信頼関係も築けているってことか……

 

「しかし、そんなに俺が花海佑芽さんをプロデュースすると思いましたか?」

 

 俺と咲季の挨拶が終わったタイミングを見計らっていたのか、学がそう切り出してきた。

 

「いや……あいつの話を聞いてた時、結構喉から手が出そうな雰囲気出てたぞ?」

 

 現に二人ともプロデュースするとか提案してたしなぁ……なんて。

 

 

「へぇ……プロデューサー、随分佑芽に惹かれてたみたいじゃない」

 

 まあ、案の定咲季は不機嫌そうな様子で腕を組んで学をジト目で睨んできているのだが……まあ、俺は学が訊いてきたことに素直に答えただけだからな? 俺は悪くない。

 

 こうして修羅場に立たされた学だが……

 

「……確かに、花海佑芽さんは魅力的に見えました。プロデュースをしてみたいと思ったのも事実ですが……俺はそれよりも、咲季さんが良いと思ったまでです」

「も、も〜……プロデューサーはそんなにわたしのことが良いのね〜!」

 

 冷静に自分の考えを述べると、咲季は余程嬉しかったのか、身体をクネクネ動かして頬を赤く染めた。

 

 ……えっ、なにこれ見せつけられてる? これがいわゆるバカップルってやつか? いや、プロデューサーとプロデュースアイドルだよな、うん。

 

「まあ、佑芽が魅力的に見えるのも仕方ないわね! なにせ、わたしの自慢の妹なんだから!!」

 

 機嫌が直ったのか、咲季はライバルである妹を賞賛した。

 

 これは佑芽が立ち去る時、学に掛けた言葉にも共通するのだが、きっとこの姉妹はお互いが敵視するくらいのライバルでありながら、お互いのことをとても大事に想う関係性なんだろうと想像できる。如何なる時も常に睨み合っている関係性という線も有り得たが、そういうことでは無いのだろう。

 

 花海姉妹は仲良しでありライバル……面白い姉妹だな。

 

 

 そんなこんなでしばらく入学式が行われた講堂の前に居た訳だが……学には待ち人がいたということを思い出した。

 

「そうだ、お前ら待ち合わせしてたんだろ? 何か用事があるんじゃないか?」

「あ、そうでした……じゃあ先輩、また今度お会いしましょう」

「さよなら、神山先生! 今度はプロデューサーについて聞かせてください!」

「おう、その時は(まなぶ)プロデューサーの面白い裏話を聞かせてやるからな」

「先輩?」

「ハハッ、冗談だ。じゃあな」

 

 二人は用事があったようで、ここで別れることになった。

 

 去り際の咲季の要望に冗談を含めて返した訳だが、学が威圧してきたものでちょっとビビったな……まあ、学がブチギレない程度でプロデュースアイドルに話せるくらいの裏話を考えておこうかな。

 





 今回はここまで!

 入学式の時点で咲季のスカウトを既に済ませている初星コミュの学Pは何者……? なんなら、咲季だけじゃないですもんね……ちなみに、その残りの面子は今後登場してくるのでお楽しみに。

 この物語を連載してからもう七話ですが、初星コミュの続編にあたるものがまだ出ないですね……一体どんな展開になるのか注視していきたいです。

 それではまた次回!
 評価・感想・お気に入り登録・読了報告お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。