どうも!
第八話です。
では早速どうぞ!
学と咲季と別れてから、神山唯仁こと俺は学園から離れ、とある建物の中に来ている。俺にとっては幼い頃から親しみのあって、久しぶりに訪れる場所だ。
最初に訪れた時は、これがお金持ちが住む家なのか……と、俺にとってはその空間全てが新鮮だった記憶があるのだが、今となってはもう懐かしいな。まあ、あれから有名になるまでは何度もお邪魔させてもらったし、慣れたというのもあるが。
そうやって考えているうちに、俺は用のある部屋に辿り着いた。部屋に繋がるドアをノックし、ドアノブを押す。
「入るぞー」
その部屋の中に入った瞬間……
「来たわね、唯仁!!」
「うおっ……よっと」
その部屋の主は俺が入ってきたのに気づいた瞬間、俺を目掛けて助走をつけて突進してきた。しかしこのパターンは大体予想ができていた俺は、颯爽とその突進をかわした。
かわされたこの部屋の主・星南はこっちに振り返り、不満そうな表情を浮かべた。
「今度は避けたわね……もう、なんで避けるのよ?」
「そりゃ……身の危険を感じたから?」
「身の危険を感じることはないでしょうよ!? この間はしてくれたのに!」
この間のこと……間違いなく、俺がこいつと久々に生徒会室で再会した時のことだな。
「あれは俺にも非があったからだし、今みたいに飛びつく勢いじゃなかっただろ? 前から言っているが、流石にそんな飛びついてこられたら普通避けるんだよ」
普段はクールで人に突進なんてしそうにもないのに、俺と会った時だけ時間と場所を問わず突撃してくるんだよなぁ……本人はハグしようとしてるみたいだけど、流石に勢いつけすぎなのよ。というか、普通のハグだとしても、今のお前は立派なアイドルなんだから、軽率にハグしようとするなと注意したいところだ。
「だ、だって……唯仁が久しぶりに私の部屋に来てくれたのが嬉しくてつい……」
すると、彼女はきまりが悪いように目を逸らし、頬を赤くした。
なんだよ……そんなしおらしくなられたら注意しようにも出来ないじゃないか。
「あー、分かった分かった。今日はゆっくりお前と時間を共にしてやるから、な?」
「分かれば良いのよ……」
俺が頭を撫でてあげると、少し機嫌を直したようだった。全く、相変わらずズルい奴だ。
そんな感じで、今日訪れたのは俺の幼馴染であり、今や学園トップのアイドルとして君臨している、十王星南の家だ。入学式の後うちに来て欲しいと事前に言われ、今日数年ぶりに十王家にお邪魔させていただいている訳だ。
もちろんここに来る前に学園長の爺さんにも一言伝えておいたが、『ウチに来る時は、くれぐれも道中に気をつけるように』と釘を刺されてしまった。まあ、なんだかんだで俺も有名人だし、今一躍有名になっている星南の家にお邪魔するのもしっかり変装はしないとだからな。
そうしていると星南も完全に機嫌を直したようだ。
「んん……ところで早速なのだけど、私が頼んだ例のモノはあるかしら?」
妙にソワソワしながら星南がそう訊いてきたが、星南が落ち着けないものと言ったら……
「あー、アレか。今出すから待ってろ」
「っ……! ふふっ、とっても楽しみね……!」
そう、今日は手ぶらでここに来た訳ではない。俺が星南から頼まれたもの──それは、俺がアイドル時代に共演した数々の人気アイドル達から貰った直筆サインが書かれた色紙やグッズだ。俺も数多くのライブや番組に出演してきたものだから、その分だけアイドルのコネも多く、そいつらからサインを貰えたりするのだ。それらの中から星南が好きそうなアイドルを厳選して持ってきたってところだ。
それから持ってきた色紙やグッズを順番に取り出すと、星南は目をキラキラに輝かせながらそれを眺めていた。やっぱり星南はアイドルのことになるととても無邪気になるんだよな。こういう様子を見ていると、幼い頃の星南を思い出して微笑ましくなっちまう。
ちなみに、その中でも一つ星南がとても驚いた代物があった。それは、俺たちが幼い頃から人気アイドルグループとして君臨していた人達から頂いたサイン色紙だった。今はレジェンドアイドルとして名を馳せている。
「貴方……そんなに大御所アイドルグループの方々と共演してたのね……」
「まあな。直近だともう慣れてしまっていたが、初めてお会いした時は流石に柄じゃなく緊張しちまったよ。俺達が小さい頃から活躍してた方達だったからな」
「ホントよ! ……ちなみに、その方々とはどんなお話をしたの?」
星南にそう訊かれて色々と思い出したのだが……
「いや、なんというか……みんな結構キャラが強くてな。話が二転三転して収拾がつかないことが多くてな……」
「そういえば、私も噂で聞いたことがあるわ。メンバー全員が集まると、半日くらい話題が尽きないって……あれって本当なのね?」
「ああ、恐らく本当だと思ってる。星南もあの場にいたら、雰囲気が混沌としすぎて引いてたと思うぜ」
「そんなになのね……」
まあ、改めて思い出すととてもカオスな空間だったなあれは……最初の話題を忘れることは日常茶飯事だし、星南があの中に入ったら会話の速さについて行けないだろうな。
そんな感じで色紙やグッズを見ながらその時の出来事を振り返ったりした。しかし星南はそれ自体を眺めるのみで、手に取ったりはしなかった。取ってみたりしないのかと訊くと、『そんなの、畏れ多くて出来ないわ』だそうだ。そういうところは妙に弁えているというか……やっぱり、アイドルオタクって感じだよな。
それから話は変わって、今日行われた入学式のことで話題が盛り上がった。
「そういえば、貴方も初星の入学式を見ていたと思うけれど、どうだった? 誰か、将来有望なアイドル候補生は見つかったかしら?」
「んー、式の途中は人が多すぎてあまり明確に分からなかったんだが……まず気づいたのは、内部進学組と外部入学組の間に違いがあるってことだな」
もっと具体的な感想を言いたかったのだが、入学式だけだと人が多すぎて俺の特技もあまり使えなかったんだよなぁ……やはりそういうのはレッスンとかで視て理解することになりそうだ。
「なるほどね……慣れてるかどうかの違い、かしら?」
俺の漠然とした感想に対して、星南は真剣に考える仕草を見せる。
「まあ、大体そうだな。慣れてるヤツほど自信を持ってるように見えたが……中には覇気みたいなものも見えた気がしたな」
そんな漠然と視えたオーラの中に点々と派手な色が視えたように感じたから、そいつらが一体誰なのかを答え合わせするのが楽しみだ。
「へぇ……覇気を出せるほど、有能な子があの中にいるっていうことね?」
「恐らくな……あと、首席のヤツはなかなか見どころあるなって思ったよ」
壇上に居て目立っていたというのもあるし、間近で会ったというのもあるが、咲季には他にはない存在感の強さを感じた。
「花海咲季さんね。あの子は確かに……他の新入生に比べたら、
星南の含みのある言い方……何かを懸念しているような表情だった。
「……お前の言いたいことも分かる。アイツにはこの後途轍もなく大きい試練が待っているはすだ。それを乗り越えられるかが鍵だな」
「……ええ、そうね」
恐らく考えていることは同じだと思うが……まあ、そんな壁を乗り越えられるように、俺も出来る限りサポートしてやりたいな。まあ、あいつがプロデューサーだし、もしかしたらなんとかなっちゃうかもしれんが。
……なんて、流石にあいつを過信しすぎか。
「そうだ、そういう星南は誰か有望なアイドルを見つけたのか?」
今度は彼女の感想を聞こうと思い、話を振ると……
「ふふっ……その言葉を待っていたわ!!」
座っていたソファから勢いよく立ち上がり、一時の方向に向かって歩き出した。こういう風に自信満々な時は、かなり良いアイドルの逸材を見つけた時だ。
「なんだ、そこまで言うってことはなかなかな奴がいたって────あぁ、祭壇か」
星南に着いて行くと、辿り着いたのは彼女の部屋の奥に位置する祭壇だ。祭壇とはいっても本来の意味ではなく、いわゆる集めたアイドルグッズを飾っているスペースだな。以前訪れた時もここに連れて来られたのだが、モノが増えているにも拘らず整然としていた。
「今でもしっかり整理してるんだな?」
「当然よ。仕事で忙しくなっても、ここの手入れは欠かさないわ」
「流石、生粋のアイドルオタクだな。どれどれ、やっぱりお前が好きそうなアイドルが並んでるなぁ……ん?」
祭壇に並んでいるグッズ達を眺めていくと、人気アイドルから、マイナーながらも一定の支持を集めているアイドルまで、大体俺が知っている、もしくは共演したことがあるアイドルのものが並んでいたのだが、ある一画に俺は違和感を覚えた。
「なあ、この子は見たことがないんだが、俺が辞めた後にデビューした子か?」
そう、そこにあったのはアイドルであろう女の子の写真で、おさげにした金髪に金色の瞳が特徴的な子だったのだが、俺はその子に見覚えがなかったのだ。アイドル時代にはほとんどのアイドルの顔と名前を覚えているくらい詳しかったと自負しているから、おそらくその後に出てきたアイドルなんだろうなと予想していた。
俺の問いに対して、星南は不敵の笑みを見せて─────
「ふふっ……丁度良いところに目をつけたわね。この子は
「……マジ?」
まさかの生徒だった。
……これはしばらく星南の様子を見ておかないといけないな。
今回はここまで!
星南の幼馴染になりたい人生でした……
次回から本格的に唯仁の講師生活が始まっていきます!まだ出てきていない原作キャラも出てくるかも……? お楽しみに!
ではまた次回!
評価・感想・お気に入り登録・読了報告お待ちしています。