最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】13日目

 大鈴木主導により学園を要塞化してから、侵攻生が自動的に迎撃されるようになっていた。部隊長でも無ければ突破することが出来ない為、特防隊はたっぷりと自由時間を確保することが出来ていた。

 

「という訳で、今日は拓海クンも真の意味で自由時間だよ!」

「オレの自由は許可制なのか?」

 

 食堂で朝食を取っていると、蒼月にそんなことを言われた。

 いつもはご褒美云々でゴッソリと時間が奪われるが、今日は自由に羽を伸ばしてくれと言うことだろうか。することが無いと思いつつ、皆がソワソワしている。

 

「ちなみに。僕達も自由時間は空けているからね、誘ってくれても大丈夫だよ!」

 

 なるほど。自分が選ばれるのではないかと言う期待があるのか。こんな状況で、二度寝、三度寝をするとか言ったら部屋に突撃されそうだった。

 

「分かったよ。じゃあ、今日は好きな様に過ごすよ」

「あ、いつでも誘ってくれていいからね」

 

 強調が過ぎる。朝食の目玉焼きにソースを掛けつつ、本日は何をするかとぼんやり考えていた。

 

~~

 

「で。その貴重な時間を使って、負け犬共の様子を見に来たってのか?」

 

 部隊長達が捕縛されている檻に近付くや、アダムキューから皮肉を叩かれた。アレだけ野性味あふれる顔立ちをしていたのに、今はスッカリ坊主頭になってしまったので、高校球児みたいだった。

 

「お前らからも事情聴取はしておきたいからな」

 

 特防隊の面々ばかりと相手をしているが、この異常な状況においては部隊長側がどういった状況になっているかも知っておきたかった。

 ただ、会話をする際の懸念があるとすれば。……と、横で作業をしているNIGOUの方を見た。

 

「あ。本官のことは気にせずに話して良いよ」

 

 と言っても、あまり漏らしたくない情報だ。かと言って、追い出すのもやはり不自然だ。ならば、世間話から詰めて行くことにした。

 

「そう、カッカするなよ。坊主頭も似合っているぞ?」

「喧嘩売ってんのかテメェ!?」

 

 初手バッドコミュニケーションを決めてしまった同じ檻に閉じ込められているパクロンが、彼を抑えていた。

 

「落ち着いて。坊主頭のキューも素敵よ」

「……ッチ。で、何が聞きてぇんだ」

 

 遠回しに聞いても分かり辛いだろうが、NIGOUがいる以上は慎重にならなくてはいけない。これは試金石だ。

 

「お前達はオレのことをどう思っている?」

「そう言うことか。変な話だけど、気の毒だとは思っているよ。あんなイカれた連中に執着されてよ」

 

 実に当たり障りのない意見だった。ただ、何かしらを汲み取ってくれた所からするに、配慮してくれるだけの『何か』は存在しているらしい。パクロンも付け足した。

 

「それも仕方がないことかもしれませんね。なんたって、イヴァーやヴェシネスからも執着されていますから」

 

 1周目の世界では命乞いをして来た相手と言う印象しかないが、向こうが抱いている感情はそれだけではないらしい。川奈が言っていた様に、自分も知らない経験をして来たのかもしれない。

 

「何か話とかは聞いていないか?」

「スミノを夫にすると言っていましたが」

 

 実際に手を出されたので、夫になるかどうかはさておき父親になるかもしれない可能性は十分にあった。

 

「一体、オレは何をして来たんだ……」

「俺が聞きてぇよ」

 

 アダムキューが不満そうに垂れている中、檻から手を出して手招きしている者がいた。ムヴヴムだ。

 

「教えて上げようか?」

「そういや、お前。出撃の際に妙に張り切っていたよな」

 

 アダムキューがやや引きながら言っていた。多分、特防隊の様子のおかしいメンバーと似たようなテンションだったのだろう。

 だが、背に腹は代えられない。ムヴヴムが収監されている檻へと向かった時、彼に起きている異変に気付いた。

 

「……お前、太ってないか?」

「イヤァ。ここのご飯美味しくて」

 

 侵攻生側達と過ごした拓海だからこそ分かるが、この学園の糧食は無尽蔵な上に美味と来ている。

これは100日間を戦う為にと言う配慮もあるのだろうが、粗食に慣れていた部隊長達にとっては毒と言っても良いレベルだった。

 

「ほら、捕虜とは言え丁重に扱わないとね。だから、ご飯はちゃんと提供しているんだよ」

 

 NIGOUが補足を加えていた。条約とか人道的な面もあるが、何よりNIGOUの気質もあってのことだろう。地獄への道は善意で舗装されていた。

 

「僕が太っているとかそういうのは一旦置いといてだね。そう、スミノと僕は盟友だったんだ」

 

 盟友を自称する不審者。クェンゼーレが妬ましそうに見ていたので、多分アイツも似たような物だろうと判断していた。

 

「え? なんで?」

「考えてみてくれよ。僕がどうして捕まっていると思う? そう、君がいたからだ」

 

 言われてみれば。彼は最初の襲撃者である為、覚悟も何も決まっておらず、状況に流され気味になるので殺されやすいのだろう。

 皆が言う所の別周回では自分が止めたかもしれない。今回においても、人質として尊厳は破壊されたが、命は助けられている。

 

「(うぬぼれじゃ無ければ、皆がオレを助ける為の取引材料として生かしたんだから、間接的には助けたことになるのか?)」

「これは父さんから聞いたけれど。覚悟って言うのは最初に決まるらしい。1回、踏ん切りが付けば後は簡単に踏み越えられるって」

 

 なんとなくわかる気がした。部隊長を1回でも殺してしまえば、後は殺すという選択肢が入り込んでしまうのだろう。凶鳥が喜びそうな言い回しだ。

 それは殺すとか戦闘に関してだけではない。自分に対する皆の異常なスキンシップも、その内の一つなのではないかと思った。

 

「それが重なったら、きっと躊躇いなんて無くなる。スミノが置かれている状況って言うのは、そう言うことじゃないか?」

「なるほどな……」

 

 拓海が視線を向けた先。この会話を不思議に思ったのか、NIGOUがコチラを見ていた。自分が周回の記憶を所持していることは説明したが、他の面々も同じ様に保持していることがバレたらどうなるか。

 これ以上、話を続けていると襤褸が出そうな気がしたので、一旦。拓海は中庭から離れることにした。

 

~~

 

「おーっす、厄師寺」

「お……澄野か」

 

 2周目に入ってから、碌にコミュニケーションが取れていない厄師寺の元へと訪れていた。自分の顔を見るや、若干引いていたが気合で抑え込んでいる様子は見えた。なにか、覚悟を決めた様に見えた。

 

「色々と聞きてぇことがあるんだ。部屋に……」

「いや、部屋は止めた方が良い。何が仕掛けられているか分からない」

 

 自分の部屋以外にも仕掛けられているとは思い難かったが、こんな状況に置いて自分が頼るであろう相手の部屋にも……という可能性は捨てきれない故の提案だった。なので、校舎の裏手と言う人目に付かない所へ移動した。

 

「ハッキリ言ってやる。飴宮と霧藤以外、全員イカれてやがる。澄野、何が起きてんだ? これもお前が言う2周目って奴の影響か?」

 

 普通の感性を持っている人間には、現在の最終防衛学園は地獄めいた物になっていた。何せ、周りは最強の変態だらけになってしまっているのだから。

 

「正確に言うと。オレ以外の人間も周回中らしい」

「何となくそんな気はしてたけどよ……」

 

 思ったよりも、厄師寺はすんなりと受け止めていた。

 何せ、皆の動きが良過ぎるし、行動に躊躇いが無さすぎるし、喧嘩が得意な自分よりも戦い慣れし過ぎている。

 

「逆に聞きたいけど、厄師寺達は何も思い出してないのか?」

「東京団地にいた頃の記憶しかねぇよ。ただ、話を聞いている限り。俺にも周回している記憶があってもおかしくはない気がするんだけどよ」

 

 他の皆と同じ様に100日間を生き延びた記憶があってもおかしくはないと思うのだが、どうして厄師寺と飴宮にも無いのだろうか? 霧藤に関しては何となくだが、思い当る節がある。

 

「(もしも、霧藤だけだったら我駆力由来だって推測は付けられるんだけれど)」

「俺が憶えていないのは、この際。良いんだよ。問題はテメーだよ。こんな生活を続けていたら、ぶっ壊れんぞ」

 

 厄師寺の心配が伝わって来た。今は笑いごとで済ませているが、彼らの要求がエスカレートする未来は想像に難くない。このままでは自身の尊厳や意思が削ぎ取られて行くことは想像できた。

 

「オレだって全てを受け入れる訳じゃないけれど、出来る限りは応えたい。たった、1周しただけのオレでも色々と後悔しているんだから」

「ご立派なことだけど、俺はその覚悟に同意できねぇよ。お前は、皆の為に存在している訳じゃねぇだろ」

 

 不器用ながらも厄師寺の優しさが伝わって来た。1周目の頃と変わらない真っすぐさを見ていると、なんだか嬉しくなった。

 

「でも、オレは皆と一緒に100日目を迎えたいと思っているよ」

「……そこまで腹キメてんなら何も言わねぇ。でも、抱え込むような真似は止めろ。なんかあったら、俺ん所に来い。愚痴位は聞いてやる」

「お前も大概、オレと似たようなもんだよな」

 

 何となく立ちはだかっていた壁が崩れる様な感じがしたのが嬉しかった。

 その後は厄師寺と別れて、結局部屋に戻って2度寝、3度寝に突入することになった。

 

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