最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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17日目の夜に何があったかはこっちで!

※R-18です。
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【好き好き編】18日目

 翌朝の食堂に戦慄が走った。拓海と今馬が2人で一緒に食堂にやって来たからだ。様子のおかしい組は事情が分かっているにしても、マトモ組ですら何かを察するレベルだった。

 唯一、本当に唯一。そう言うことに疎くデリカシーを欠いた厄師寺だけが、暢気に2人に挨拶をしていた。

 

「2人共、調子が良さそうだな。マッサージが効いたのか?」

「えぇ、もうバッチっすよ。最終的にはお互いにすったもんだになりまして」

「なんで、マッサージでそんなことになるんだよ」

 

 今馬と厄師寺が笑いながら話していたが、拓海は周囲の視線がじっとりした物になっていることに気付いた。近付く訳にはいかないと思っていると、飴宮から手招きされた。ポテポテ歩み寄って行くと。

 

「流れに身を任せすぎるのも問題だと思うよ?」

「はい……」

 

 釘を刺された。数日前までは、自分の境遇に理解を示そうとしてくれていた霧藤からもドン引きされていた。彼女を通して、幼馴染からもドン引きされている様で、凹んでいた。

 ただ、これは由々しき問題だったらしく様子がおかしいメンバーは色々と話を進めていた。

 

「よっしゃー! 次、俺だよな。俺!」

「いや、駄目だ。正直言うと僕も飛びつきたいけれど、このままじゃ拓海クンの性癖が偏ってしまう。それは、僕らとしても望ましくないハズだ」

 

 丸子と蒼月が不穏なことを言っていた。協定とか言うのに賛同している女子陣も頷いている所を見るに、抜け駆けは推奨される物ではないらしい。

 

「なら、今日は私がケアに行くよ」

 

 正に渦中の人物である今馬の妹。過子が挙手していた。普段は控えめな彼女が主張しているのだから、対抗心を燃やしているのかもしれない。

 

「本当に良いの? 今日はクールタイムを挟む回。つまり、手出しされる様な雰囲気に持って行ってもいけない日なんだ」

「大丈夫。私、皆と違って影薄いし!」

 

 蒼月の心配に自虐を伴って答えてくれたが、皆は苦笑いを浮かべるだけだった。今日の選出が決まった所で、川奈が手を挙げた。

 

「ちょっと、皆に話したいことがあるから集まって」

 

 拓海やマトモ組も収集を掛けられたので、彼女達の集まりに合流した。一体、何の話だろうか? と思っていると、蒼月に交代した。

 

「そろそろ21日目だけれど。拓海クンは何があったか憶えていない?」

 

 日記を付けていた訳では無いので詳細に憶えている訳ではないので頑張って思い出そうとしていると、背後から近付いて来た今馬が耳元でささやいた。

 

「霧が出た日。ですよ」

 

 霧。と言われたら、あの部隊長しかいない。該当する人物を思い出して拓海の表情は壮絶な物になっていた。

 

「イヴァー。だよな? でも、部隊長達が攻めてくる日は決まってないんだろ?」

「いや。彼女だけは力が強まる関係上、事前に対処していなければ必ず21日目に襲撃を掛けて来るんだ」

「ついでに言うと。イヴァーはヴェシネス並に強いんだよね……」

 

 川奈が付け加えた。他の部隊長達を一蹴する特防隊のメンバーを軽く払いのけていた、ヴェシネスと同じ位に強い。となったら、今度こそ勝てるかどうか不安になったが。

 

「あ、でも。そう言うことなら、最悪。オレの身柄を差し出せば……」

「澄野先輩。面白くないジョークっすね」

 

 笑顔の今馬から底冷えする様な声で牽制を掛けられた。

 他の特防隊の面々も微笑んでいるが、全身に突き刺さる氷点下の視線に拓海は押し黙る外無かった。

 

「拓海クン。僕らが奪還作戦をするにあたって、どれだけ頑張ったかを察してくれると嬉しいな?」

「はい、すいません……」

 

 蒼月からも念を押されたので拓海は押し黙る外無かった。だが、最悪の場合と言う前提は心に留めておくべきだと思った。

 

「怠美達じゃ手も足も出ないだろうし、どうすんの? 敵さんの雰囲気的に、この学園の防衛機構全部突っぱねてきそうだけど?」

「大丈夫。その日に備えて、皆にバフを掛ける装置を作ったんだ。コレを使った後は2日間位、動けなくなるけれど!」

「ドーピングも沢山用意したよ」

 

 飴宮の懸念を川奈と面影が力業で解決しようとしていた。真っ先に挙手したのは、丸子だった。

 

「俺がやる! その代わり、2日間の看病は澄野に頼むからな!」

「いやいや、ここは私が殺ろう。薬を作っておいて、人に殺らせるなんて真似は良くない」

「ここは戦い慣れている人間が使って、より効果的に使うべきよ」

 

 面影と雫原も続いた。皆、改造&ドーピングされる気MAXなようだ。その後に約束された、拓海との時間を熱望していた。

 

「で、お前らが勝手に改造されるとして。俺達はどうしたら?」

「そうだね。猛丸クン達は学園内で拓海クンを護衛していて欲しい。敵の狙いは最終防衛学園より、そっちになるだろうしね」

「マジモンの自宅警備員じゃん」

 

 かねてより、他の特防隊メンバーが強すぎる為、厄師寺達は後ろで突っ立っているだけのことが多かったが、ついにスタメンから外された。コレには霧藤も異議を申し立てていた。

 

「そんな! 私だって、特防隊のメンバーだよ!?」

「と言っても。大体は川奈殿の機銃掃射する奴があれば、侵攻生は皆殺しに出来るし、拙者たちがすることは『ラストエール』で応援するクリリンムーヴ位しかないのでござるが……」

 

 凶鳥がクッソ情けない発言をしていた。自らの立場を卑下する為にキャラクターを例えに出すなんて、ファンとしてあるまじき行為だ。ここであまり会話に参加しない喪白が前に出て、霧藤の肩に手を置いた。

 

「希ちゃん。特防隊のメンバーだからこそ、澄野君を守って欲しいの。というか、何かあった時に皆を逃がせるのは、治療も出来る希ちゃんしかいないの」

 

 特防隊のメンバーは多いが、誰かを治療したり回復させたりすることが出来るのは、未だに霧藤だけだ。チラリと拓海に視線を送って来た所を見るに、彼のことも考えてのことだろう。流石に信頼する友人に言われたのなら、彼女も下がるしかなかった。

 

「怠美知っているよ。コレ、皆がイヴァーと戦っている時、怠美達は別の方から侵入して来たヴェシネスと戦わされるんだ」

「縁起でもねェこと言うなよ……」

 

 珍しく厄師寺も弱気になっていた。迫りくるXデーこと21日目に向けて、皆が行動を起こす為に食堂から去っていく中、過子だけが拓海のパーカーの裾を掴んでいた。

 

「澄野先輩! 行きたいところがあるの! 付いて来て!」

 

 今馬や他の皆と違って、彼女は本当に年相応と言った具合に目を輝かせていた。この分なら間違いを犯したりもしないだろうし、ついて言っても良いかと思っていると。飴宮がコッソリと言った。

 

「流石にJCに手を出した犯罪だからよろしく」

「JKでもアウトだよ!?」

 

~~

 

 やって来たのは図書室だった。この部屋はマンガ本も多いが、小説なども多数存在している。部屋に入るや、過子はインバネスコートを羽織り、鹿内帽を被り、丈夫な皮手袋を装着し、パイプを咥えた。ポフっと煙は出るが、中に草などは入っていない。そう言う玩具なようだ。

 

「『探偵セット』だっけ?」

「流石ね、苗木君。じゃなかった、ワトソン君」

「苗木って誰だよ……」

 

 過子は早くに亡くなった父親の影響で探偵に興味があると言うことは知っていたが、別に殺人事件などが起きている訳でもない。いや、自分達を取り巻く環境に謎は多いが。

 

「という訳で、何か。謎はありませんか?」

「用意していないのかよ!!」

 

 普通、こういう誘いをする以上は何かしらの事件や謎に迫る前提でやるモンじゃないのか。……いや、周回している以上。概ねのことは知ってそうだが。

 

「そうじゃないの。先輩、色々と知りたいことがあるんじゃないかと思って。TLの話とか気になりません?」

 

 最近、皆もようやく取り扱い始めてくれた話だ。自分は2周目だが、他の者達は多数の周回をしている。と、なれば自分よりも事情に詳しいだろうし、この戦いの真相について知っている者もいるだろう。むしろ。

 

「知っているからこそ話さないって雰囲気はあるが」

「うん。だから、今日のご褒美タイムはね。私が澄野先輩を探偵として導くの! 今までに得た情報を整理して合っているかどうかを採点するって言う。催しをしようと思って!」

 

 なるほど。遊び感覚であるが、今の自分がどれだけ事態を把握しているかということを知るには有意義なことかもしれないが。

 

「でも、何を答えとして導き出すかが決まっていなくて」

「ここは推理小説的に考えて5W1Hで埋めて行きましょう」

 

 『When(いつ)』『Where(どこで)』『who(誰が)』『why(なぜ)』『what(なにを)』に『How(どのように)』を加えた思考方法だ。コレを適用するべき問答と言えば。

 

「まず、基礎的なこととして『最終防衛学園』の疑問に思っていることを考えて行こう。俺達は『何処で』『何故』戦っているのか」

「多分、澄野先輩が2周目だとしたら。どちらの事情も聴いているよね?」

「ここは、世界死という現象で出現した『侵攻生』達によって滅ぼされた『地球』で。オレ達は地下シェルターである『東京団地』で暮らしていたけど、人類は惑星移住計画を考えている。その妨げになるから、最終学園にあるシオンのミサイルを使って侵攻生を滅ぼそうとしている」

 

 というのが、1周目で得た情報だ。今となっては穴だらけの説明だが。

 

「でも、澄野先輩は未だに信じている訳じゃないよね? 何処を疑問に思っているの?」

「まず一番の疑問は、なんでオレ達が侵攻生と戦っているかと言うことだ。少なくともアイツらは怪物でも何でもない」

 

 これは事情の殆どを知らない拓海でも言えることだった。少なくとも、ヴェシネスやイヴァーからは親愛の情を感じたから。

 

「じゃあ、彼女達は何者かな?」

「あの雑魚達は知らないけれど。少なくとも、部隊長達は人間だ。そんな彼女達を滅ぼそうとしているなら……もしかしてだけれど。彼女達を侵略しているのは、オレ達の方じゃないのか?」

 

 侵略者。と、部隊長達はよく言っている。アレは言い掛かりでも何でもなく、ただの事実だとしたら。

 

「その通り。実は、私達の方が侵略者なんだよ」

 

 と。過子は肯定してくれた。多少驚いたがショックでは無かった。そうでも無ければ、ヴェシネス達の敵意が説明できないからだ。だが、そうしたら色々と前提が狂って来る。

 

「でも、そうだとしたら。おかしくないか? それなら東京団地が襲撃された理由が分からない。もしかしたら、敵基地と疑わしい所を片っ端から攻め込んでいたかもしれないけれど……」

 

 彼らが侵略者であるという前提が覆れば、東京団地が襲撃された理由が報復や略奪位しか思い浮かばない。ここでまた一つ思い浮かんだことがあった。

 

「何か思いついた?」

「参考までに聞きたいんだけど。どうして、皆。記憶があるのに東京団地に帰ろうって考えの奴は居ないんだ?」

 

 川奈や銀崎の様に。帰るべき場所がある者達も少なからずいる。移動手段や食料に関してはスクールバスを始めとして、どうにかなりそうな要素はあるというのに。どうして、誰も言い出さないのか?

 

「その議論は【不和】TLでもあったね。学園から逃亡しようとして、内部分裂が起きたけれど、最終的にロクでもない結末になったからね」

「……どうなったんだ?」

「とりあえず帰りたい組が全滅したとだけ。あ、川奈先輩だけ生き延びていたけれど。あの人、どのTLでも基本終盤まで生き残るんだよね」

 

 その分、戦闘経験が積み重なるからあそこまで強くなるのかと納得は出来た。だが、全滅した。と言うことは。

 

「もしかして、東京団地は地球には無い?」

「うん。東京団地は、あの人工天体の中にしかないよ。シオン君からも聞いたんじゃない?」

 

 その通りだ。そして、人工天体は侵攻生達が攻めて来られる場所にはない。なら、どうして自分達は一様にして襲撃されたという記憶があるのか。と考えた時、とある部隊長を思い出した。

 

「もしかして、何かオレ達は幻覚を見せられていたとか? 人工天体側で戦わせるために必要な動機作りとして」

「間違ってはいないけれど、100点の回答ではないね。でも、今はそれでいいよ」

 

 どういう意味で100点ではないのかが気になったが、この地球に東京団地が無いと言うことは侵攻生物が攻め込んで来た訳でもない。

 だというのに、自分達は最終防衛学園を使って彼らを殲滅しようとしている。紛うことなく侵略者である。では、何の為に? 

人類移住計画を進めているなら、こんな所に構っていないでと思ったが。今までの積み重ねから導かれる結論で、納得いく案が思い浮かんで来た。まるで、最初から知っていたかのように。

 

「もしかして。地球が世界死で滅びそうになったから、人工天体で移住した先に別の惑星があって。人工天体は入植する為に邪魔な侵攻生達を排除して、皆を移住させようとした。とか?」

「うーん。徐々に思い出して来た?」

 

 過子は特段驚くことも、公開することも無く言った。彼女にとってみれば周回をする上で知った『過去』のことなんだろう。今更、驚くにも値しないと言うことか。だとしたら、自分達が戦う理由なんていハズだが。

 

「戦いを止めることは?」

「【和解】TLもあったけど。その場合はどうしてもヴェシネスが邪魔なんだ。それでタネも分かったから言うけれど、この惑星は『フトゥールム』って言う、地球とは全く別の惑星なんだ。地球側は入植する為に散々攻撃を仕掛けたから、フトゥールム人の反発感情も強くて」

 

 既にスタート時点から戦わざるを得ない状況に追い込まれていたらしい。どうしようもないクソみたいな環境に置かれていた。

 

「そう言うことなら、オレが和解の橋渡しになったりとかは」

「直ぐに身売りするのは止めようね。仮にやっても、他の皆が殺されるだけだよ」

 

 周回を通じて事態は死ぬほど複雑になっているらしい。やはり、東京団地に行く為に100日目を目指すしかないのかと考えたが、ここで疑問が湧き出た。

 

「100日目にポッドが来るなら、皆は大事な場所に帰れたんだよな?」

「どうだろうね。そこから先の記憶は曖昧で何とも言えないんだ」

 

 何とも言えない表情をしていた。そもそも周回なんて現象自体がオカルトめいているのだから仕方がないと言えば、そうかもしれないが。

 

「でも、皆。あまり罪悪感とかは無いんだな」

「まぁね。降伏しても殺される位ならって考えがスタンダードになっているんだよ。やっぱり、目下の問題はヴェシネスなんだよね。【誘拐】【ヴェシネス】【花婿】【帰化】【姉妹丼】【最強】【男娼】TLと言い、周回中でも結構やられることが多くて」

「どのルートも聞きたくないけれど、最強はちょっと興味あるかな……」

 

 ちょっぴり心が躍るTLだった。他のTLは全部、自分がロクでもない目に遭うルートなのだろう。

 

「ヴェシネスが初手で他の部隊長全員を吸収して、侵攻生物と特防隊のメンバー数人を吸収するルートだよ。最終的に降伏して、フトゥールム最強の生物が誕生するってTLだったんだ」

「それをやって来ないのは、アイツも自重をしているってことか。ちなみに【帰化】ってのは?」

「全ての戦いを終えて、人工天体にもいかないで。この惑星に定住するってTLだね。結構、皆から人気だよ」

 

 行った所で碌でもないと判断したというパターンは無くもないか。……そして、一応聞いておくことにした。

 

「【男娼】は?」

「読んで字の如く。澄野先輩が皆の命を助けるために、ヴェシネスの男娼になるルートだよ。あの一件があったから、皆。ヴェシネスを殺す気でいるよ」

 

 どうやら周回しても一方的に有利になる訳ではないらしい。

 昨日の火照りを冷ます様に。この日は過子と色々なTLや事実関係の確認の為に頭を使っていた。久々にピンクな雰囲気が絡まない穏やかな1日となった。

 

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