最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】20日目 その2

 部隊長達もバタバタしているんだから、特防隊のメンバーはもっとバタバタしていた。ただ、マトモ組と拓海はすることが無かった。蒼月曰く。

 

「猛丸クン達が鍛えたり、つばささんの発明品を渡しても効果が薄いから、拓海クンと一緒に過ごしといて貰える? 一緒に居ても不快にならない様に」

 

 皆が忙しく働いている中、何もしないというのは精神的衛生上、あまり良くはない。非常に強い疎外感がある。

 

「今、怠美達にしか出来ないことを思いついたんだ。皆、一緒に付いて来てくれない?」

 

 何時になく飴宮の真面目な物言いに、拓海達は彼女に付いて行くことにした。

 辿り着いた場所は図書室。なにか部隊長に対する特効でもあるのか? あるいは、他のTLの手掛かりでもあるのか。拓海や霧藤が本棚に目を走らせていると、飴宮が手招きをしていた。

 

「いや、こっちこっち」

 

 彼女が指差した先。そこには『R-18』という暖簾が掛ったコーナーがあった。拓海と霧藤が固まる中、厄師寺が抗議した。

 

「何、バカなことを言ってやがる!」

「ふざけてないよ。結構、大事なことだから聞いて欲しい」

 

 どうやら、いつもみたいに茶化すというパターンではないらしいので、拓海と霧藤も気を取り直した。

 

「それで、お前の意図は?」

「拓海ってさ。割とチンチ●で行動が左右されるじゃん?」

 

 初手言葉のビンタを食らった。とは言え、反論することは出来ない。何故なら、飴宮の言うことは事実だったからだ。

 

「明日に来る『イヴァー』って部隊長と澄野君は……」

「ヤったんでしょ」

 

 霧藤が言い淀んでいた所を飴宮が言い切った。送られて来たのは朝チュンビデオレターだったが、あの様子だと一夜を過ごしたのは間違いない。

 

「なにこれ? 公開処刑?」

「あんまり人の事情を茶化すもんじゃねぇぞ。さっさと、本題を言えや」

 

 厄師寺のあまりに見事なインターセプトに、拓海は胸キュンしていた。そして、飴宮もまた表情を崩すことなく続けた。

 

「こういう時に無理矢理拉致するんじゃなくて、今回持った関係性で誘惑して来る場合があると思うんだよね。今の拓海はブレーキ利き難いから」

 

 飴宮なりに言葉を選んでくれたのだろうが、拓海の内心にはぶっ刺さっていた。そりゃ後輩男子相手にも腰を振っているのだから。

 

「映像で見る限り、イヴァーさんは綺麗だったけれど」

「でしょ? 正直言うと、TL関係の記憶に関しては何がトリガーになるかサッパリだからね。今は何ともないけれどさ、もしも。イヴァーって人と会って、彼女とラブラブだった時の記憶を思い出したら、絶対に付いて行っちゃうじゃん?」

 

 彼女の懸念はきっと、今も作業をしている特防隊のメンバー全員が思うことだろう。だが、こればっかりはどうしようもない。

 

「でも、そんな物に対策出来るのか?」

「対策方法はいくつかあると思う。例えば、21日目に拓海を殺しておくとか」

 

 厄師寺と霧藤が驚愕していたが、拓海は納得していた。

 もしも、自分が死んだとき。最終防衛学園の蘇生マシーンが無ければ、そのまま死んでしまうからだ。最終手段としては有効ではあるだろう。

 

「つまり、襲撃が始まった瞬間。オレが死ねば堅実ではあるか」

「そ、そんな。殺してまで澄野君を……」

 

 自身が蘇生マシーンを使用できないこともあって、霧藤の拒否感は強かった。厄師寺も待ったヲ掛けていた。

 

「もっと他にはねぇのか?」

「何処かに閉じ込めて眠らせておくとか。だけど、多分。簡単に見つかっちゃう気はするんだよね」

 

 それはそうだ。向こうも何度か学園内部まで入り込んだことはあるだろうし、周回しているとすれば隠し部屋の場所程度は把握してそうだ。

 

「じゃあ、なんでこんな所に来たんだ?」

「拓海を殺さず、かと言って眠らせたりして何処かに閉じ込めるよりもさ。何かあった時にも的確な判断を下せる冷静さを身に着けるべきだと思ったんだよね」

 

 必要なことは分かる。だが、どうしてそんな物を得るために自分達は『R-18』と書かれた暖簾の前にいるのだろうか?

 

「そりゃアレだよ。もうどんな女体、美少女、美少年、美青年に誘惑されても大丈夫なように。今日1日でタマキンを空っぽにするんだよ!」

 

 なるほど。理屈としては理解できなくない。悶々として居たら判断力に影響が出かねない。だったら、スッキリしていこうじゃない! という発想は、間違っちゃいないかもしれない。

 

「あの。私、邪魔そうだから部屋に戻っておくね?」

 

 ススーッと極自然に距離を取る霧藤を呼び止めようとしたが、今の自分はアダルトコーナーに立ち入ろうとしている思春期ボーイでしかない。きっと吐く言葉はイカの様に生臭く感じられてしまうだろう。

 

「あー、その。なんだ。こういう不健全なことでやるよりよ! トレーニングで晴らした方が健全だろうが!」

 

 厄師寺があまりに前向きなリビドーの発散方法を示してくれたので、拓海は顔を覆っていた。そうだ、もっと前向きに発散するべきだ。という、甘えは飴宮に咎められていた。

 

「いーや。ここでヌいておかないと、絶対に女の尻を追いかけるね。……あ、いや。待てよ? それなら、今馬を呼んで1日耐久」

「話は聞かせて貰ったよ」

 

 何処から聞いていたのか、クッソ忙しいハズの面影が図書室に現れた。あまりにタイミングが良かったので、多分盗聴されていたのだろう。

 

「つまり。今日1日。澄野君がイヴァーに誘惑されない様に! 私が絞り出せばいいんだね? 任せてよ……!」

「面影君……?」

 

 霧藤も困惑していた。以前より両刀の気は強かったが、こんなにも赤面して上ずった声で言われたら。……気持ち悪かった。

 

「なぁ。こういうのって普通は男とヤるモンじゃねぇんじゃ……」

 

 厄師寺が出来る限りの配慮をした上で言った。せめて、異性とするもんじゃないかと婉曲的に言おうとした所で、面影が首を振った。

 

「駄目だよ。もしも、仮につばさちゃんとしたとする。そしたら、澄野君はきっと女体に夢中になる。それは良くない」

 

 普段は周りに気を配っている彼から配慮が無くなるのだから、相当なレベルで興奮しているのだろう。霧藤が本当に嫌そうな顔をしていた。

 

「まさか、男でしか興奮できなくする方向かぁ。まぁ、もう今馬とヤっているし」

「人をホモみたいに言うな!!」

 

 飴宮のあまりな物言いに拓海は訴えた。しかし、この場にいる彼以外の4人が視線で言っていた。今更、その言い逃れは苦しすぎるぞと。

 

「決まりだね。大丈夫、前みたいに前戯じゃなくて最後までキチンとやるから。あぁ、堪らない。必要な物を揃えて来るから、夜まで待って欲しい」

 

 恍惚とした表情を浮かべながら、面影が去って行った。拓海はシワシワ顔になっていた。ヤるなんて言っていないのに。

 だが、何よりも悲しいのは霧藤からドン引きされていることだ。違うんだ。オレはノーマルなんだ。という言い訳は、今更になっては滑稽過ぎるだろう。

 

「嫌って言わないお前も悪ィと思うぞ」

 

 あの寛容な厄師寺でさえ苦言を呈するレベルだった。と言っても、こんだけ主体性もなく周りに流されまくっていたら、言いたくもなるだろうが。

 

「でも、折角来たんだから『R-18』コーナーにも何があるか見て行かない?」

 

 当初の作戦は中止になったが、中に何があるかは飴宮も気になっていたらしい。厄師寺と霧藤は渋っていたが、自棄になった拓海は頷いていた。

 

「もう何があるか見て行こうぜ! 何も怖くねぇ!!」

「澄野君……」

 

 この時、始めて霧藤は気付いた。自分の立ち振る舞いが彼の心を傷付けていたのではないかと。そんなことを言われても生理的に湧き上がってくる気持ちはどうしようもない。

 

「でも。何があるかは気になるんだよ。成人誌と限った訳じゃねぇ」

「そうだね! 確認しようよ! 希も一緒にさ!!」

「私も!?」

 

 かくして。渋っていた厄師寺と霧藤も巻き込んで、R-18コーナーの探索が始まった。意外だったのは、ビデオ店などの様にこじんまりとした一角と言う訳ではなく、普通の図書室と同じ位の蔵書量があったことだ。

 

「おー! 同人誌もあんじゃん! こっちには同人ゲーとエロゲも! 変に遠慮してないで、もっと早くに入ればよかった!」

 

 飴宮がはしゃいでいた。意外なことに彼女はキッチリと規則を守っていたらしい。ピンクな雑誌に興味が無い訳ではないが、1周目に無かった真新しい発見があるかもしれないと、拓海は本棚を眺めていた。

 

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