最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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20日目の夜に何があったのか。

※R-18です。
https://syosetu.org/novel/376662/2.html


【好き好き編】21日目

 21日目。皆が周回して来た記憶を辿るにXデーと言われる日であり、最終防衛学園はまさに難攻不落の要塞と化していた。

 大鈴木が手掛けた防衛設備もそうだが、川奈や面影が作ったドーピングの数々も含めて迎撃準備も万端。なおかつ、校舎内には喧しく音楽が鳴り響いていた。殆ど事情を知らされていないNIGOUが戸惑っていた。

 

「ねぇ、なにこれ?」

「野蛮下劣な侵攻生を迎撃する為の防衛強化よ!」

 

 大鈴木が言い張っていた。肯定だけでなく、校舎内にも大量のギミックを仕込んでいるのか、色々とレバーやら何やらが増設されていた。

 

「え? 今日、敵が来るの!?」

「来るよ。もう、激闘は確実だろうし。NIGOUは拓海クン達と一緒にいて欲しい」

 

 蒼月が神妙な顔でお願いをしていた。そう言えば、ここにいる特防隊のメンバーには拓海や厄師寺など。一部のメンバーがいない。

 

「拓海クン達は?」

「澄野殿は置いて来た。ハッキリ言って、この戦いには突いて来れそうに無いでござるからな」

 

 凶鳥が古式ゆかしい回答でぶった切っていた。

 NIGOUも口にはしなかったが、拓海や一部のメンバーは明らかに戦闘能力で劣っているのは把握しており、後ろに下げても問題はないと考えていたが。

 

「分かったよ。でも、皆は何処に?」

「中庭にいるわ。混乱に乗じて、捕虜にしてある部隊長達が逃げない様に見張りを頼んでね」

 

 大鈴木の指示に従ってNIGOUは中庭へと向かった。彼女の言う通り、澄野達はいたのだが。

 

「キャウン、キャウン」

「ハハハハ。くすぐったいよ、澄野君」

 

 バカ面を晒して面影の顔をペロペロ舐めている拓海が居た。

 あまりに悲惨な光景に厄師寺、飴宮が言葉を失い、収監されている部隊長達も言葉を失う中、銀崎だけが声を出していた。

 

「あぁー! 澄野さんこっちですよ! ホラ! こっちこっち!!」

 

 愛玩動物と化した澄野を誘導するように銀崎が手をパンパン叩いていたが、拓海はウゥ……と唸り声を上げて威嚇するだけだった。

 

「あの。歪クン? 何が起きたの?」

「一言で言えば、しつけ。かな?」

「何がしつけですか! アレは激イキして精神が崩壊しているだけですよ! 悶絶調教師は僕の役目ですよ!!」

 

 面影がしたり顔で喋っていたので、収監されている銀崎が激しく非難していた。

 この場にいるメンバーは全員ゲンナリしており、アダムキューが近くにいた厄師寺に話し掛けていた。

 

「お前ら、この学園出た方が良いって。アイツらやべーよ」

「否定はしねぇよ……」

 

 もしも、ちゃんと外で生きて行けるだけの条件が揃っているなら、このメンバーと拓海を連れて出て行きたい。と、厄師寺は薄っすらと考えていた。

 

「おぅい。スミノ こっちだよぅ」

 

 大分ふっくらとしたクェンゼーレが檻の中から手招きをしていた。

 室内犬もかくたるやと言わんばかりに無警戒に近付いて行こうとするので、霧藤が止めていた。

 

「駄目だよ、澄野君! 待て!!」

「クゥーン……」

 

 スンと彼女の言い付けを守る様にして棒立ちになった。ちゃんと言うことを守った彼を誉める様にして、彼女は拓海の頭を撫でていた。

 

「えらい、えらい」

「希ちゃん? 拓海クンは人間だよ?」

「良いんだよ。今の拓海にはアレが幸せなんだよ」

 

 NIGOUの訴えは霧藤に届いていなかった。飴宮が遠い目でフォローしていたが、人間の尊厳が取りあげられていることに関しては言及しないのだろうか。

 

「キサマら!! スミノを何だと思っているんだ! 彼は人間だ! ペットじゃないんだぞ!」

 

 NIGOU位しか言及していなかったことに業を煮やしたのか、ついにはムヴヴムが訴えていた。名前を呼ばれたことに反応して、再び拓海が無警戒に近付いて行こうとしたので、霧藤が止めていた。

 

「澄野君! ハウス! ハウス!」

「ハフッ」

「スミノは犬じゃない! 僕達の家族なんだ! 兄弟なんだ! 彼の尊厳を蹂躙し、思うままに操ろうとするお前らには天罰が下るだろう!!」

 

 ムヴヴムが声を荒げていた。だが、手には肉カスが付いた骨が握られており、それを左右にブンブン振って拓海ーヌの気を引こうとしていた。

 

「それは貴方も同様では……」

 

 パクロンがボソッと呟いていたが、当然の如くシカトされていた。

 この中で唯一無関心だったのは、ひたすらに糧食を貪っているシャンシン位だったが『救済の化神』と言われた彼女は、自分さえ救えない位に変わり果てていた。栄養状態が良過ぎたらしい。それは兎も角として。

 

「あの。こんなに護衛対象を集めて大丈夫? リスク分散とかは?」

 

 NIGOUが恐る恐る質問した。護衛対象や防衛対象を一ヵ所に集めれば、守り易いというメリットはあるが、同時に敵側からも襲撃する場所を分かり易くしてしまうので、良い手段とは言い難い。

 

「本当はあまりやりたくないんだけれど、校舎内に回せる人員を考えたら仕方が無くてね。欲を言えば、蒼月君か比留子ちゃんも回して欲しかったんだけれど、私位しか回せなくて」

 

 それだけ表の防衛がガッツリしていると言うことだろう。ここで飴宮が挙手をした。

 

「ねぇ、晶馬は使わないの?」

「駄目。部隊長よりもよっぽど危険だから」

「僕の何が危険だって言うんですか! ちょっと澄野さんを昏睡させようとしただけじゃないですか!!」

 

 なるほど、これは檻の外に出す訳にはいかない。では、ここに残ったメンバーで部隊長に対応できるかと言われたら。

 

「ほら、澄野君。取ってこーい」

「アォん」

 

 すっかり拓海―ヌにハマった霧藤は、何処からともなくゴムボールを取り出して投げていた。彼も喜んで取りに行っていた。微笑ましい光景だ。

 

「悍ましいだろ!?」

「ホモだのタマキンとか言っていた時はあんなにドン引きしていたのにな……」

 

 いつの間にかアダムキューと意気投合していた厄師寺が同意していた。これに関しては、飴宮も思う所はあったらしい。

 

「これはアレだね。女体好きの女嫌いと同ベクトルの奴」

「と言いますと?」

 

 彼女の言葉に興味を持ったのか、パクロンが聞き返していた。この空間に存在する、数少ない正気の持ち主同士。SAN値の相互補助が行われていた。

 

「女が持つパーソナリティは嫌いだけど女の体には興味があるって奴。希は拓海が持つネチョネチョした関係が嫌だったけれど、拓海自身は嫌いじゃないからね。だから、ホラ。今はあんなにも仲良し!」

「よしよし!!」

「ヘッヘッヘ」

 

 頭部と顎を同時に撫でられている拓海―ヌは幸せそうだった。

 きっと、拓海が持つ1周目の記憶でもここまで近付いたことは無かったハズだ。果たして、この関係が真っ当かどうかはさておき。

 

「サラッと言っていますけれど、かなりゾッとする話なんですが。それは」

「人間は周囲との接し方や関係まで含めてパーソナリティだからね。どちらにせよ、ここにいるメンバーで戦えそうなのは少数だから、部隊長が来たら逃げた方が良いかもしれないか。……仕方ない」

 

 呆然とするパクロンを傍目に、ここに集まった戦力を見て面影は思い直したのか、銀崎の檻を開けていた。解放された彼はさっそく拓海―ヌに抱き着こうとしていた。

 

「澄野さん! 良いですよ! 僕の胸に来いよ!!」

 

 両手を広げて待機していたが、拓海は歯茎を見せ、唸り声を上げて威嚇するだけで決して近付こうとはしなかった。そんな彼を庇う様にして霧藤が前に出ていた。

 

「あの、銀崎君? 澄野君、貴方のことを警戒しているから近付かないで欲しいんだけれど……」

「は? そんなことはありませんよ。澄野さんは僕のことが好きだってハッキリ分かりますね」

 

 悠々と語る銀崎にかつての卑屈さは皆目見当たらなかった。だからと言って、恥知らずになることは話が違うのだが。霧藤の制動を気にせずに近付いて来たので、彼女も声を張り上げた。

 

「止めてって言っているでしょ!」

「一般特防隊は黙って貰えますか!」

「えいっ」

 

 面倒臭くなって来たのか。NIGOUが銀崎の首筋に注射器の針を打ち込んでいた。すると、彼はファッ!? と驚愕して、コロリと気絶した。

 

「ねぇ。やっぱり、閉じ込めておいた方がよくない?」

「コレでも戦闘になったら本当に強いんだよ……」

 

 飴宮まで面倒臭そうに銀崎を見下ろしていたが、面影が申し訳程度のフォローをしていた。そんな光景の傍ら拓海ーヌが腹を見せて転がっていたので、霧藤は面白がって彼の腹を撫でていた。

 全ての状況からおいて行かれ、悲痛な面持ちの厄師寺を見かねたのか、アダムキューが頑張って言葉を絞り出していた。

 

「元気出せよ」

「……おぅ」

 

 果たして。今日という1日を乗り越えられるのか。それは特防隊のメンバーだけではなく、捕虜となっている部隊長達も同じことを考えていた。

 

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