最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】21日目 その4

「潮時か」

 

 ダルシャーは蒼月と雫原との交戦を止めて、倒れているパーミスとチュラームタミーを拾い上げて踵を返した。

 

「あら。死に場所を求めているんじゃないの?」

「お前達に付き合っている内に、生きる目的が出来たのよ。それに、ワシらが生きていた方が都合も良いだろう?」

「話が早いね」

 

 ダルシャー達が撤退していく様子を雫原と蒼月は見逃していた。

 霧が晴れると、校庭には大鈴木が設置した迎撃兵器の残骸と侵攻生物の死体が大量に転がっていた。ふわりと、彼らの前に今馬が降りてきた。

 

「お2人共ご苦労様です。ことは上手く運びました。川奈先輩が上手くやってくれましたよ」

「そう。じゃあ、澄野の回収に向かいましょう」

 

 雫原は交戦していたメンバーに招集を掛け、校舎へと向かった。

 そして、彼女達が居なくなったのを見計らって、数人の人影が最終防衛学園の外へと出て行った。

 

~~

 

 時は前後して、中庭。部隊長のバラガルーゾは銀崎に圧されていた。

 

「ホラホラホラホラ」

 

 彼が操るロボットは鈍重そうな見た目に反して非常に軽快な動きをしていた。銀崎の掛け声に合わせて、まるで人間の様な有機的な動きでラッシュを繰り出し、バラガルーゾを打ち据えていた。

 だが、彼もやられてばかりではない。一掃用の砲塔をファングモードに切り替えて、銀崎の機体に突き刺そうとしたのだが。

 

「なんだと!?」

「痛いんですよぉおおおおおおおお!」

 

 あまりに頑強すぎたのか、貫通することは無かった。

 むしろ、その一撃が呼び水となったのか。銀崎が猿叫を上げて猛反撃に出た。バラガルーゾの牙を叩き折り、彼の顔面を掴んだかと思えば、中庭にある噴水の中に突っ込んでいた。

 

「溺れる! 溺れる!」

「痛いってのは分かっているんですよ!」

 

 何故、英雄と呼ばれた自分がこんな目に遭っているのか。

 こんな、ひでー目に遭うことの程をしたのだろうか。意識が遠のきそうになった所で、ふと拘束が軽くなった。

 

「このクソガキ! バラガルーゾさんに何しやがる!!」

「テメェ、よくも俺の髪を剃りやがったな!!」

「あぁー! 痛い痛い痛っい!」

 

 見れば、いつの間に檻から解放されたムヴヴムを始めとした部隊長達が銀崎を囲んでリンチしていた。

 特に髪の毛を剃られ、散々にひどい目に合わされたアダムキューは念入りに殴っていたのだが、たんこぶ所かあざの一つも出来る気配がない。

 

「バラガルーゾ。大丈夫ですか?」

 

 パクロンが駆け寄って来た。見れば、イヴァーと交戦していた特防隊のメンバーは全員転がされていた。部屋の隅ではNIGOUが震えていた。

 

「あわ。わわわわ」

「今日の所はコレで勘弁して上げましょう。彼らをブッコロしたら澄野も悲しむしね。部隊長達を殺さなかった英断を噛み締めなさい」

 

 つまり、自分が1人に手こずっている間。イヴァーは∞態も使わず、3人を打ち倒していたと言うことか。あまりの実力差に戦慄していると、肥え太った部隊長がポテポテと近付いて来た。

 

「元気出して…」

「シャンシン」

 

 こんなに変わり果てて。と言おうとしたが、言葉を呑み込んだ。頬周りはふっくらとしていて、部隊長用の鎧はミチミチとしていた。帰ったら、どうやって彼女を救済しようかと考えていると、イヴァーが言った。

 

「私はまだ用事があるので、このまま捜索を続けます。皆は脱出を」

 

 そのままイヴァーは中庭から出て行った。解放され部隊長達も倒れている特防隊のメンバーに目もくれずに、急いで中庭から脱していた。

 

――

 

 イヴァーは、廊下で気絶していた凶鳥と喪白を拾って体育館へと向かった。すると、彼女が来ることが分かっていたかのように川奈が待機していた。

 搭乗しているジープは変形しており、銀崎が使っていた学生兵器(クラスウェポン)の様に人型になっていた。体育館の隅には拘束されたゼンタの姿がある。

 

「ツバサちゃん。貴方がここにいるのは、そう言うことね?」

「澄野は渡さないよ!!」

 

 フレンドリファイヤをしても問題ないと判断したのか。川奈の学生兵器はイヴァーが抱えている凶鳥と喪白を巻き込まんばかりの勢いで攻撃を放って来た。

 体育館内に爆音と銃撃音が響く。対するイヴァーも学生鎧をまとった状態で川奈と戦っていたが、途中でパージした。

 

「∞態!」

 

 首を掻っ切った。面影達を相手にしていた時でも使わなかった奥の手を使った。それだけ川奈の実力を認めていると言うことだろう。

 もしも、この場に正気の拓海がいたらイヴァーの∞態に起きている変化に気付くことだろう。姉であるヴェシネスの∞態と似通った、騎士の様な姿へと変貌していた。

 

「いい年こいて! 子供に色目使っているんじゃないよ!」

 

 川奈の学生兵器(クラスウェポン)が突き出した拳がイヴァーの振るう大鎌とぶつかり合い、火花を散らした。

 掌型マニュピレーターの中央部に穴が開き、毒ガスが噴射されたが、イヴァーは装着しているマントを振るってガスを払い飛ばしていた。

 

「そっちこそ。子供の分際でセックスのことばっかり考えているんじゃありません!」

「イヴァーに言われたくないよ!!」

 

 ショルダーの装甲が展開され、内部に搭載されていた火炎放射機(フレイムスロワー)から、学園を取り囲んでいる物と同じ炎が吐き出された。

 だが、イヴァーは手にした大鎌を回転させて、炎を散らせていた。炎が吐き出された頃合いを見計らって、川奈の学生兵器(クラスウェポン)がビーグルモードへと移行して突っ込んで来たが、イヴァーは正面から受け止めて地面に叩き付けていた。衝撃で、川奈が外に叩き出された。

 

「くっ……」

「貴方のこと。使わせて貰うから」

 

 イヴァーは彼女から我駆力刀を取り上げ、体育館に存在する隠しスペースの入り口の蓋を取った。そして、呼びかけた。

 

「澄野。希。今、体育館には無力化した子達が寝転がされている。彼女達がどうなるかは、貴方達次第よ」

「!!」

 

 彼女の言葉に反応する様に隠しスペースから武装した霧藤と事情の分かって無さそうな拓海が出てきた。

 

「もこちゃん! 狂死香ちゃん! つばさちゃん!」

「ごめん。やっぱり勝てなかった……」

 

 状況は絶体絶命。現状、特防隊のメンバー内で最強と言っても過言ではない川奈が破れている以上、自分が勝てる訳がない。だが、呼びかけられた以上。交渉の余地はあると、霧藤も踏んだのだろう。

 

「何が望み?」

「澄野。と言いたいけれど、報復されたら堪ったモンじゃないからね」

 

 以前、拓海を誘拐した時は報復としてイヴァー達の拠点が壊滅させられたが、彼女としても避けたくはあるらしい。彼女が思案しているのを見て、霧藤が疑問を口にした。

 

「どうして、澄野君のことが好きなのに争わないといけないの? それなら、和解だって……」

「だって、私。澄野と希以外の連中は嫌いだから」

 

 ∞態の状態を解除して、再び学生鎧を纏ったイヴァーが霧藤に近付いた。

 霧藤には一目でわかった。自分と同じ外付けの装備を使っているとしても練度が違い過ぎると。

 

「ど、どうして?」

「周回の度、私達がどんな目に遭って来たか分かる? あの子も焼かれ、部隊長は食い荒らされ、殺され……。中には私達を殺して回る『侵攻生ハント』なんてしていた周回もあれば。【殲滅】【唄】TLなんかもあったのよね。あの時の貴方達は本当に悪魔みたいだった」

 

 心臓が握り潰されるんじゃないかと思えるほどの殺気だった。霧藤はその場から動けずにいた。

 

「可哀想。だなんて、段階は通り過ぎているの。まぁ、しょうがないとは思うけれどね。だって、貴方達には澄野以外。何も無いんだから」

「どう言うこと?」

 

 霧藤が憶えている限りでは、皆は何かしら帰るべき場所や目的があったはずなのだが。と、思い返しているのが伝わったのだろう。

 

「あ、そうか。希は知らされていないのね。いや、コイツらが教える訳無いか。だって、貴方だけが唯一の本物だから」

「本物? いや、そんな……」

 

 ハズが無い。恐らく周回の関係で皆に知られているだろうが、自分はむしろ。皆の様に我駆力がロクに使えない規格外であるはずなのに。偽物と言って然るべきスペックなのに。

 

「いいえ。貴方だけが本当の『地球人』なの。――-澄野達はね。私達と同じフトゥールム人。希だけが仲間外れ」

 

 言っている意味が分からなかった。自分だけが仲間外れ。というのは何となく感じ取っていた。だが、それはあくまで拓海への接し方や考え方によるものだけだと思っていた。

 

「どういうこと……?」

「じゃあ、試して上げる。ツバサ! 今回、私は澄野のことは誘拐しない。代りに、希だけを攫って行くわ!」

 

 イヴァーは霧藤を気絶させると倒れていたゼンタを抱えて体育館から去っていた。川奈は追いかけるような真似はしなかった。何も知らなさそうな犬状態の拓海に近付いて、ギュッと抱きしめた。

 

「良かった。澄野が無事で」

「ウゥ?」

 

 事態を把握していないのか拓海は首を捻るだけだった。それから、少しして。学園を覆っていた霧が晴れ、皆は現状を報告し合っていた。

 

~~

 

「よくやった。イヴァー」

 

 ヴェシネスは帰還した妹を褒め称えていた。多数の侵攻生物は失ったが、部隊長全員の奪還に成功した上、特防隊のメンバーの1人を拉致して来たからだ。

 

「では、捕虜の身柄は私の預かりと言うことで良いですか?」

「構わん。後はこちらに任せて、休むがいい」

 

 報告を済ませたイヴァーが自室に戻ると、そこには拉致して来た霧藤ともう1人。作戦前に通話していた少女『カミュン』が居た。

 

「母上。本当に話しても良いのじゃな?」

「えぇ。どうせ、あの学園に居ても誰も教えないでしょうからね。どうする? やっぱり、聞きたくない?」

 

 ここに来て選択権があるとは思わなかった。だが、ここまで聞いたら霧藤も先を知りたいと思っていた。

 

「お願いです。聞かせて貰えませんか?」

「分かった。そもそも、皆が誕生したのはフトゥールムに『神の再臨』と言われた子が産み落とされたことから始まるの」

 

 かくして、イヴァーの口から地球とフトゥールムの長きにわたる確執と特防隊の出生の秘密が話されようとしていた。

 

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