最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】22日目

「たっくん。どうしたの?」

 

 自分は東京団地に居た。ここは見慣れた自室で、いつもの様に幼馴染の『柏宮(かしみや) カルア』が遊びに来ている。

 

「いや、なんか変な夢を見ていて」

「どんなの?」

「なんか。変な学園に閉じ込められて、訳も分からないまま戦わされるんだ。そんで、集まった奴ら全員から好かれるんだけれど」

「ライトノベルみたいだね。たっくん、そう言うのも読むんだ」

 

 と、カルアは驚いていた。ライトノベルの存在は知っていたが文字だけの媒体を読むのはしんどい。コミカライズされた物を読んだことはあるが、特別好みという訳では無かった。

 

「それがな。女子よりも男子に好かれてさぁ。後輩とかちょっとヤバめの同期に告白されたり、突き合ったりとか……」

「も、もしかいて。たっくんってそっちの気が?」

「あ、いや。そう言う訳じゃないんだけれど!」

 

 幼馴染の女子に何を話しているんだ。と、拓海は自らの言動を後悔したが、直ぐにカルアは表情を和らげた。

 

「良かった。そう言うことなら、私も話せることがあるの」

 

 この流れで話せることって何だろうか。と思って、拓海は直ぐに思いついた。年頃の少女と言えば、やはりアレか。

 

「(BLとかそういう話かな?)」

 

 昨今は男子でも、そう言うのがある。というのは知っている。

 仔細に関しては迂闊に触れたら大やけどするだろうが、少なくとも幼馴染の趣味位は受け止める度量はあるつもりだ。カルアが立ち上がった。そして、おもむろに自らのスカートに手を掛けた。

 

「ほぁ!?」

「たっくんには知って欲しいんだ。本当の私」

 

 まさか、あんな与太話を本気にして幼馴染の関係を飛び越えようとするのか。

 止めようか。いや、でもちょっと気になる。スル~っとスカートが降りて行く。パンツが見えた。だが、直ぐに違和感に気付いた。はみ出しているのは毛じゃない。なんか、自分にも付いているアレだ。

 

「うん?」

「本当は私……オトコ。なんだ」

 

 ガバっと覆い被さって来た。まさかの超展開に拓海の思考が停止した。ズボンに手を掛けられ、パンツごと下ろされ……。

 

――

 

「うぉおおおおおおお!」

 

 拓海は叫んだ。何かを蹴り飛ばした。どうやら、ガチでズボンを脱がされていたらしくパンツ一丁になっていた。目の前には、頭を摩っている面影。

 

「元気そうで何よりだよ」

 

 拓海はぼんやりと思い出していた。自分が面影と何をしていたか。ナニをしていたか。瞬間、拓海はシーツで全身を覆い隠していた。

 

「まままま、まさか! お前、またオレのことを!?」

「いや。君は1日中、ちょっと意識が飛んでいたんだ。ちょっと、薬の効きが強すぎたみたいで」

 

 1日。と言うと、自分は20日目の夜におセッセして、21日目の意識はまるで飛んでいるという訳で。だが、ここは見慣れた最終防衛学園の自室だ。

 

「イヴァー達を退けたのか?」

「とりあえず、何が起きたかを改めて話したい。薬の影響が抜けているのも確認できたから、一緒に食堂に行こう」

 

 夢見が悪くて蹴り飛ばしてしまったが、面影は自分のことを心配してくれていたらしい。謝罪しようと思ったが、そもそもの現況が彼だから別に良いかと思い直して、いつもの服に着替えた。

 

~~

 

 食堂に着いた時、いつもと変わらない面々が揃っていたことに胸を撫でおろしたが、直ぐに異変に気付いた。1人、足りない人間がいる。

 

「霧藤は?」

「攫われたんだ」

 

 皆が言い難そうにしている中、蒼月が告げた。拓海に動揺が走った。これだけのメンバーが居ても迎撃できない程なのかと。

 

「なんで、霧藤が?」

「分からない。でも、イヴァーは拓海クン以外にも希さんにも興味を示していた。そこら辺が関係しているのかもしれない」

「だったら、助けに行かないと!」

 

 今頃、向こうで何が起きているか。何をされているかも分からない。思い出すのは1周目の記憶。ヴェシネスの凶刃に貫かれた彼女の姿だった。

 

「拓海クン。悪いけれど、直ぐには無理だ」

「どうして!?」

「昨日の戦いは、それだけ激戦だった。というか、結果だけを見れば僕達の敗北と言っても良い」

 

 蒼月の口から被害報告がされた。捕縛していた部隊長全員に逃げられたこと。学園内に設置していた迎撃用兵器の大半が破壊されたこと。

 

「こうして、希ちゃん以外のメンバー全員が無事。だって言うのが、一種の奇跡みたいな物だね」

 

 面影の言う通り。霧藤以外の誰かが欠けていても全くおかしくない状況だった。そんな激戦があったというのに。昨日の自分は何をしていたのか。

 

「ちなみに澄野君。自分がいたら何とか出来ていたなんて思わないでね? 少なくとも、私達は今の君よりは強いから」

 

 そんな拓海の気を察したのか、面影がフォローを入れてくれた。出来ていたことがあるとすれば身売り位しかない。

 

「被害状況の把握や設備の修理もしなきゃいけないし。丸子や雫原はドーピングも入れていたから、クールタイムも必要よ」

 

 大鈴木に言われてハッとした。昨日、尽力していたのは自分じゃなくて特防隊の皆だ。今の自分に何かを言う資格はない。

 

「ごめん」

「良いんだよ。もしも、拓海クンに出来ることがあるとすれば。頑張ってくれた皆に報いること位だと思う。そうしたら、きっと回復も早くなるだろうし!」

 

 普段はなし崩し的に受けている『ご褒美』だが。今回に関しては本当に皆が頑張ってくれたのだから、自分が報いるのは当然のことだ。

 

「そうだな! とりあえず、丸子と雫原に奉仕すればいいのか?」

「おぅ! もう、全身バッキバッキなんだよ。朝食の後に頼むぜ!」

「待ちなさい。私はダルシャーを抑え込んでいたのよ? 貢献度は私の方が上じゃなくて?」

「ちょっと待って。それを言うなら、私なんて雑魚の掃討に、2人をブーストさせる発明品に、部隊長の相手までしたんだけれど?」

 

 突如として川奈まで参戦して来た。誰の要望に応えるべきだろうか。と、拓海の脳内で選択肢が現れた。

 丸子。は、今まで一度もご褒美タイムをしたことが無いし、活躍的にも順当に彼だろうか? ただ、今朝見た夢がどうにも引っ掛かっていた。

 雫原。は、既に一度奉仕はしているが、既に一線は破られている。何が起きても不思議ではない。

 川奈。も、同様だ。特防隊への貢献度と言う点では断トツ過ぎるが、断トツ過ぎて彼女だけを優遇しかねないという不安がある。誰を選ぶか。

 

「まずは、丸子の所に行くよ。今まで1回もやったことないし……」

「よっしゃあああああ!」

 

 ここは個人よりも規則性を優先させることにした。指名された丸子は跳び上がって喜び、雫原と川奈からじっとりとした視線を向けられた。

 

「まぁ、良いわ。後から染め直せば良いだけだし」

「それもそうだね」

 

 一瞬、雫原と川奈の間で火花が散った様な気がしたが、気のせいだと思うことにした。今すぐにでも動き出したい気持ちはあったが、まずは出来ることから。と言うことで、今日は丸子を甲斐甲斐しく世話することになった。

 

――

 

「皆さ。希ちゃん、助ける気。あんまりないよね?」

 

 遠巻きから一同を見ていた飴宮が言った。数少ないマトモ組が1人減ってしまった為、話す相手は厄師寺位しかいない。

 

「澄野が攫われた時はあんだけやる気だったってのによ」

 

 明らかに優先度が低い。なんなら、拓海を上手く動かす為の出汁に使っている様にも思えた。一体、この距離の原因は何にあるのか?

 話を聞こうにも、自分達と様子がおかしい組はどうにも距離が開いてしまっている。気軽に声を掛けられそうな相手もいないと考えていると、こちらの席に歩み寄って来る者が2人。

 

「怠美ちゃん、薬師寺君。ちょっといいかしら?」

「内密に話したいことがあるのでござる」

 

 喪白と凶鳥だった。様子のおかしい組では目立った戦果は挙げていないが、比較的温厚な者達である。

 

「んー? 怠美達に何の用?」

「希ちゃんについて。ほら、2人とは仲良くしていたから」

 

 意外なことに。彼らの中にも霧藤のことを気に掛けてくれていた者達は居たらしい。ただ、飴宮は不服そうな表情をしていたが。

 

「まぁ。立場もあるから、普段は干渉できなくてもしょうがないけれどさ」

「面目次第もござらん。ただ、今の空気は良くない。少しでも味方が欲しいのでござる」

 

 事情をよく知らない飴宮達でも何となく感じ取っている。霧藤の扱いが良くないことを。

 

「別に霧藤がお前らになんかした訳じゃないだろ。それとも、周回って奴の中でなんかあったのか?」

 

 厄師寺も疑問に思っていた。周回の中で何かがあったとしても、それは決して霧藤に限った話ではないハズだ。

こうして協定を結んでいる者達同士でも少なからず禍根が残る話はあったはずで、でも仲良くは出来ている。

 

「希ちゃんはちょっと事情が特別なのよ。そこら辺も含めて、少し話したいから。この後、時間良い?」

 

 厄師寺と飴宮は互いに頷いた。自分達を取り巻く状況があまりに特殊過ぎて、常に蚊帳の外では何もできない。折角舞い込んだチャンスをものにせんと、2人は喪白達と一緒に食堂を出て行った。

 

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