最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】25日目

「流石に1日に2回もやらんよと思って居ったんじゃが」

 

 引き続き、カミュンによる学園内ウォッチが続いていた。監禁されている霧藤もやることが無いので一緒に見ていたのだが。

 

『おい、澄野! そこでホラーモニター反応していたぞ!』

『え? 何処だっけ?』

『いやいや。こういうのはね。ジャンプスケアも楽しんでこそのホラーだよ!』

 

 深夜に見たのとは打って変わって、年頃の少年少女らしくゲームを楽しんでいた。飴宮と厄師寺に加えて、大鈴木、凶鳥、喪白木の3人まで加わっていた。

 

『うぉおお。生『あぷぷー、ぷりぷりー』よ。凄い。美麗になったけれど、テクスチャーがローポリを意識して作ってあるから、メッチャ温故知新な作りになっているわ! 殺人木こりロボもちゃんといるわ!』

『こんなに純粋に喜んでいるくらら殿を見れて、拙者は嬉しいでござるよ』

『良いのかしら。良いのかな……?』

 

 元より、トマトの被り物という絶妙なセンスの逸品を身につけているだけにあって、大鈴木はイルブリードの世界に引き込まれていた。そんな彼女を見つめる凶鳥と喪白の視線は優しい物だった。

 

『なぁ! このインダ君っての怒られないのか!? よく、こんな版権ファッキューパロディをリマスター出来たな!!?』

『大丈夫、大丈夫! 怠美達だってパロディしまくっているし。今更だよ!』

『パロディでもやり方次第じゃ許されねぇだろ!?』

 

 澄野と厄師寺から怒涛のツッコミが入り、飴宮が囃し立てていた。全く持って健全な光景で憤ったりする要素はないハズだが。霧藤は頬を膨らませていた。

 

「わ、私だけ抜きで楽しんでいる!」

 

 マトモ組のメンバーに加えて、第2防衛学園の女子組まで参加して盛り上がっているのは、霧藤的には許せなかったことらしい。

 

「じゃあ、戻った時に話題に混じれるようにプレイしておくか?」

 

 スッと。極当たり前の所作で、カミュンはイルブリードとゲーム機を用意していた。もしかして、フトゥールムで流行っているんだろうか。

 ここにいたとしても監禁されているので自由は殆ど無いし、渡された書物は概ね読めない。故に、囚われの身の霧藤が出来ることは、カミュンから渡されたイルブリードぐらいなのだが。

 

「え、嫌だ。なんか暗いし、下品だし、気持ち悪いし、意味も分かんないし」

 

 彼女はあまりに真っ当だった。普通のJKは殺人木こりロボやセクシードールが出て来る物を好んで見たりなんてしない。

 

「困ったのう。イルブリード以外には、学園に閉じ込められた少年少女がデスゲームに巻き込まれるサイコポップなハイスピード推理アクションゲームの『ダンガンロンパ』位しか無いが」

「他にやること無いし、それにしておこうかな……」

 

 どうしてもイルブリードはやりたくないらしい。仕方なく、彼女はダンガンロンパをプレイすることにした。

 しかし、やはりこのゲームも名作であった。外連味溢れるシナリオ。それでいて、プレイヤーを引き込むシナリオと展開。霧藤は一心不乱にプレイしていた。

 

「ね、ねぇ。カミュン? このゲームって、一本道? この子が助かるルートは?」

「無いぞ。基本一本道じゃ。なんでも100通り位のエンディングが用意されていると思うでない」

 

 霧藤は嘆いていた。そして、一旦区切りがついた所で彼女はスヤスヤと寝息を立てていた。そんな彼女を見て、カミュンは溜息を吐いていた。

 

「希。やはり、おぬしにあの学園は合わんよ」

 

~~

 

 案の定というべきか、拓海は悪夢にうなされていた。あんなショッキングなホラーゲーム(笑)を高フレームレートでプレイさせられていたんだから無理もない。

 蒼月が何人にも分身して、自分に暴言を吐いたかと思えば、両腕を振り回して奇怪な鳴き声を上げて去っていく。かと思えば、今度は面影がチェーンソーを振り回して追いかけて来たので、慌てて窓から飛び出したら、校庭にはゾンビと化した特防隊の面々が徘徊していた。

 

「なんだこれは!?」

 

 偶然、偵察に来ていたヴェシネスが大声を上げたのでゾンビ特防隊が群がり、一瞬で食われていた。可哀想。

 そして、自分も絶体絶命かと思われた瞬間。目の前に巨大な肉塊が降り注いで、皆を呑み込んでいた。このまま自分も食われるかと思っていると、肉塊は集まり凝縮して人の形を取って行く。飴宮の姿を。

 

「拓海、大丈夫だった?」

「飴宮? これ、どういうことなんだよ!?」

「どう言うことって。怠美が沙耶ちゃんみたいになっちゃったってことで一つ」

「何も分からないよ! 説明してくれ!!」

 

 拓海の訴えは切実な物だったが、飴宮が答えてくれることは無かった。代りに、彼女はこつんとおでこを突き合わせた。

 

「拓海になら分かるだろうけれどさ。どんな広い砂漠に降り立ったとしても、たった一人でも愛してくれる人が居るって知ったら頑張れるんだ」

「そのセリフ言いたいだけだろ!!」

「酷いね! 折角、怠美のカッスカッスなボキャブラリーで考えた告白なのに!」

「は!!?」

「世界を冒す【唄】。聞いて行く?」

 

 すると、彼女の口から美しい旋律が奏でられた。意外と歌が上手いんだなと言おうとした所で、意識が浮上していく。

 

――

 

「澄野殿。あんなゲームをしたばかりに、こんな惨い……」

 

 食堂でグッタリしながら食事を取っている拓海を見て、凶鳥は涙を流さずにいられなかった。やはり、イルブリードは人体に有害だった。

 

「拓海。大丈夫?」

「なんでキャラクターはローポリ風なのに演出とか敵蔵は最新モデルなんだよ」

 

 それはもう、飴宮が正気に戻るレベルだった。今日一日は動かすのも危なそうだった。そして、それは絶好の機会でもあった。

 

「拓海クン。辛そうだね。やっぱり、醜くて、汚くて、下品で、品性を疑う様な物を見せつけられるのは苦しいよね。僕にはよく分かるよ」

 

 蒼月が拓海を労わっていた。ゲームを勧めた面々も擁護しようかと考えたが、生憎否定出来るだけの材料を持っていなかった。

 

「もう、今日は1日中寝ている。霧藤のことはまた考える……」

「イルブリード>霧藤殿にされてしまった悲しき現在……」

 

 もしも、自分達の会話がモニタリングされていた場合、正に彼女を激怒させかねないセリフを吐く凶鳥に悪気は一切ない。

 

「可哀想な澄野。直ぐに、私が良い思いで塗り潰して上げるからね」

 

 極自然に川奈が拓海に寄り添って来たが、蒼月が自然な動作でブロックしていた。

 

「君達! 拓海クンをエロとグロで振り回して!! 少しは彼のことを考えたらどうなんだ!!」

「ククク。酷い言われようでござるな。事実でござるが」

 

 凶鳥だけは不敵に笑っていたが、他の面々はそれなりに責任を感じていたのか、何も言えずにいた。

 

「今日1日は僕が拓海クンの管理をする。手出し無用だよ」

 

 かなりアグレッシブであるが、様子のおかしい組を取りまとめている彼が、ここまで強権を発するのだから、今の拓海はそれだけフラフラなのだろう。ちょっと過保護な気がするが。

 拓海が食事を取り終えたことを確認すると、まるで躊躇いも無く彼をお姫様抱っこした。

 

「うわ」

「今日は存分に休んで欲しい! さぁ! あったかいベッドが君を待っている!」

 

 ベッドがオレを待っている。なんて、魅力的な響きだろう。趣味である二度寝を堪能するべく、彼は蒼月に全体重を預けていた。

 部屋へと辿り着き、外の明るい日差しは全てシャットアウト。パジャマに着替えて、空調も聞かせてあまりに快適。もう、目を開けていることなど不可能だった。

 

「お休み。良い夢を見てね」

 

 蒼月に優しく見送られ、拓海は夢の世界へと向かった。

 さて、夢うつつの状態で見る夢というのは概ね整合性がない。例えば、自分が女性になっていたりとか。

 

「澄野! 大丈夫!?」

「川奈。何が……」

 

 声を出してからビックリした。自分ではない誰かが喋ったと思ったからだ。

 だが、蘇生マシーンの表面にはほんのりと自分の面影を残している少女の姿が写し出されていた。骨格が変わり、髪の毛が腰元まで伸びている。

 

「むむむ? どうやら、誰かが蘇生マシーンに細工をしていたらしいね」

「SIREI?」

 

 現在の周回ではまるで姿を見ないが、今見ている夢の中では彼は確かに存在しているらしい。蘇生マシーンのチェックをしていた。

 

「決まっているだろ! 蒼月だ! 蒼月がやったに違いねぇ!!」

 

 厄師寺は怒り心頭と言った様子だ。サラッとメンバーを見る限り、未だ第2防衛学園の面々とは合流していない様だ。つまり、かなり初期の方だと言うことか。

 

「お、おい。澄野。大丈夫か? 何が起きたか憶えているか?」

 

 今度は丸子が心配そうに尋ねて来た。何故か反射的に身を引いてしまったが、気を取り直した。

 

「大丈夫だけど。何が?」

「ムヴヴムの野郎にやられたんだよ。幸い、あいつは撃破できたけれどよ」

 

  どうやら、ムヴヴムに殺されて、蘇生マシーンに入ったのは良いが、事故が起きてこんなことになってしまったらしい。

 

「駄目だ。DNAデータが上書きされてしまっている。澄野クンは、これから女性として生きて貰うしかない」

「はぁ!?」

 

 SIREIからの無慈悲な宣言、拓海は開いた口が塞がらなかった。一方、仲間達は妙にフレンドリーだった。

 

「澄野。困ったことがあったら言ってね! 女子として答えられることなら、教えて上げるから!」

「とりあえず、一旦。男子陣は距離を取って」

 

 川奈はニッコニッコだし、雫原は場を取り仕切っているし。果たして、自分はどうなってしまうのか。……魘されるには十分な内容だった。

 

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