最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】4日目

「という訳で7日目に、部隊長が来るから皆には備えて欲しいんだけど……」

 

 4日目の朝。皆が食堂に集まった頃合いを見て、拓海は切り出した。

 この最終防衛学園にある物を狙って、敵対勢力『侵攻生』を取りまとめる『部隊長』がやって来ると。彼らは非常に強力であり、一致団結しなければ勝てない相手だ。第2防衛学園の者達が来てくれたので戦力的には……と思ったが。

 

「(前の100日間では川奈、丸子、銀崎、九十九兄妹はこの時点では参加していなかったけれど)」

 

 拓海が経験して前の100日目。便宜上、1周目と称する世界では、この時点で戦う覚悟を決めていたメンバーの方が少なかったのだが。

 

「任せてよ、澄野! 私、アイツらぶっ殺すのは得意なんだ!!」

「俺もだぜ! ボコボコにしてやるよ!!」

「僕もです! アイツらがゲロ以下の存在であることを証明してやりますよ!!」

 

 川奈、丸子、銀崎から血気盛んな返事を聞くことが出来た。豹変と言うしかない態度を補足する様にして、雫原が付け加えた。

 

「そう言えば、澄野が来てから。私達の『我駆力』が上がった様な気がする」

「あ、皆もそうなんだ。怠美も力が溢れていたから夜通しエロゲ―していたんだよね」

「18歳未満だというのにエッチなゲームは駄目でござるよ」

 

 凶鳥から注意を受ける怠美を傍目に、今馬がプラプラと手を振っていた。

 

「すいません、自分達はちょっと戦いに参加するのは遠慮したいっすね」

「そうか。だけど、これだけ戦力がいるなら問題はねぇだろ」

 

 1周目は戦力の少なさから厄師寺も抗議していたが、十分な戦力を確保できた今では、無理に参加させようとする真似はしなかった。

 九十九兄妹は未だ中学生だ。戦場で命を賭けさせるのも酷だと思い、拓海が厄師寺の意見に賛同しようとした時のことである。

 

「でも、澄野先輩が励ましてくれたら。自分達も行けるかもしれないっす」

「無理すんな。ここは俺達に任せておけや!」

 

 九十九兄妹を労わる厄師寺にヤンキーらしさは皆目見当たらず、強面であるが気のいい兄ちゃんでしかなかった。このまま彼らが不参加になるかと思いきや、突如として過子が頭を抱えだした。

 

「ちょっと待って。今、未来予知が……」

「何か見えたのか?」

「流石、澄野先輩。よく分かっているじゃないっすか」

 

 今馬は後方兄貴面をして頷いていた。過子は断片的ではあるが未来を見ることが出来る。眉唾な話ではあるが、拓海は1周目で知っていたので直ぐに飲み込むことが出来た。

 

「人型の龍みたいなのが暴れている。苦戦している先輩達の姿が見える。きっと、敵側も私達と同じ様に強くなっている!」

 

 1日目に襲撃を掛けて来た部隊長のことを指しているのだろう。拓海は息を呑んだ。

 戦力的には第2防衛学園のメンバーも加えて、万全かと思っていたが、敵側にも変化が出ていないとは限らないのだ。

 

「じゃあ、なおさら。テメーらを戦わせる訳にはいかねぇよ。澄野、オメーが知っている内容を……」

「いや、ここは素直に自分達も参戦するべきだと思うんっすけど、やっぱり踏ん切りが付かないっつーか」

「うん。澄野先輩が励ましてくれたら、私達も頑張れる!」

 

 厄師寺の気遣いを統べて蹴り飛ばして、なおも拓海に要求する九十九兄妹は中々に図太いのかもしれない。

 

「コレ、アレだよね。『はい』以外の選択肢を選ぶと、延々とループし続ける奴だよね?」

 

 怠美が、現在の状況を端的に言い表してくれた。このままでは埒が明かないと踏んで、拓海の方から歩み寄った。

 

「えっと、俺は何をすれば?」

「やっぱり裸の付き合」

「澄野。私達だけで行くわよ。2人位、居なくても大丈夫よ」

 

 今馬がアウトな要求を仕様としたので、代りに雫原が突っぱねていた。加えて、傍で聞いていた大鈴木も切れていた。

 

「つか、戦力の問題に託けてワガママ言っている場合か! それが通るなら、他の奴もやり出すでしょ!!」

 

 キレ過ぎて被り物の青いトマトが真っ赤に染まって完熟トマトになっていた。正論を浴びせられ、甚く不快に思ったのか今馬は盛大に舌打ちをしていた。

 

「ッチ。分かりましたよ。自分達も普通に参戦しますって」

「あ、でも。今の未来予知は本当だよ」

 

 数がいる。と言っても、やはり何が起きるかは分からない。防衛線に向けての準備は必要だろうと議論を重ねることになったのだが。

 

「川奈。こういうのって、トラップを大量に設置したりして優位に運んだりとかは」

「出来なくはないけれどさ。予め、来ることが分かっている。ことを相手に知らせるような真似をしたら、澄野が知っているシチュエーションと掛け離れて行くんじゃない?」

 

 近似的な未来を知っていると言っても、必ずしもその様に進むとは限らない。

 相手は決まった挙動を取る訳ではなく、こちらの対応次第ではやり方を変えて来るはずだ。ならば、出来るだけ対処がしやすい様に1周目に近い状況で進めていくのが吉だろう。

 

「現状は、増えた戦力による真っ向勝負。というのが、相手に悟られることのない対処になると思うね。精々、学園の設備や薬を増強しておく位かな?」

 

 面影の提案に落ち着きそうだった。相手の戦力も強化されているかもしれない不安もありつつ、一同に重い空気が圧し掛かる中。今まで、黙っていた蒼月が手を挙げた。

 

「だったら、モチベーションを上げるために『ご褒美』とかを設定したらどうかな? 次の防衛線で一番活躍した人には、拓海クンを好きにしていいって風に」

 

 何を暢気なことを言っているのかと思いきや、厄師寺、飴宮、霧藤を除く全員の目が光った。川奈は不敵に微笑んでいた。

 

「プレゼントマシーンで何作ろうかな」

 

 捕らぬ狸の皮算用と言わんばかりに、既にMVPを獲得するつもりでいた。こんな浮ついた気持ちで出て良い訳がない。と、拓海は蒼月に詰め寄った。

 

「蒼月。俺達はゲームをしている訳じゃないんだ。もしも、それで誰かが無茶をしたら、どうするんだ」

「だからこそだよ。ゲームじゃない、命を賭ける戦いだからこそ。皆の恐怖を和らげる支柱が必要なんだ。拓海クン。僕はリーダーである君に、その役目を全うして欲しいと思っている」

 

 決してふざけている訳ではなく、私欲も無さそうだった。皆も気丈に振舞っているが、戦場に出る恐怖とはきっと並大抵ではない。

 むしろ、そのメンタルケアを『ご褒美』という形で気負わない形にしてくれたことは、蒼月なりの気遣いではないかと気づいた。

 

「そう言うことだったのか。すまない、お前の気も知らずに……」

「良いんだよ。たっくん」

「ねぇ、拓海。ちょっと、ちょろすぎない?」

 

 飴宮から茶化すのを通り越して、心配されていた。かくして7日目に迎えるであろう防衛戦が阿鼻叫喚の地獄絵図になることが確定した。

 

~~

 

 予めトラップなどを設置するいう下準備も出来ない為、朝食を終えた後は解散して、各々が自由時間を過ごすことにしたのだが……。

 

「(もう、能力的には頭打ちだしVR訓練も全部やったし、すること無いんだよな)」

 

 1周目の時点で『読解力』や『分析力』を始めとした、学生的に言えば『国語』『数学』『理科』『社会』『体育』的な物は一通り身に着けたので、これ以上勉強に時間を割く意味は見いだせなかった。

 図書室の蔵書も概ね読み漁ったし、メンバーの大半の様子が変だったのでコミュニケーションをとるのも憚られた。

 

「(おまけに、面影や大鈴木が言うには薬も設備も全部やれる限りの開発は済んでいるらしいし、プレゼントマシーンに入れる素材も使いきれない位にあるらしいから……)」

 

 探索に行く意味がない。なので、本当にやることが無かった。そんな拓海の目に付いたのは、自室にあるふかふかのベッドだ。

 おいで、おいで。君には二度寝、三度寝、四度寝が待っているよ。と言われている様だった。

 

「寝るとするか!」

 

 リーダーたる物。平常心が大事だ。なので、いつも通り惰眠を貪ることにしようとベッドに潜った時のことである。インターホンが鳴ったので、出てみれば雫原が居た。

 

「澄野、何か貴方に話し忘れていたことがあった様な気がするの。何か憶えていない?」

「急だな……」

 

 完全に寝る準備をしていたので、頭があまり働いていない。1周目の時に何か話を聞こうと思って、そのまま聞けず仕舞いで終わった様な。

 

「皆より、ある程度の事情は知っているって言っていたけれど、何か侵攻生のことを知っているのか? アイツらの正体とか」

「そんなこと言っていたかしら。ちょっと、先日の防衛線の疲れもあって、思い出せないわ」

 

 そうだった。自分が戻って来たのは2日目だったが、1日目から防衛線は発生していた。アレだけの激戦が3日で回復する訳がない。厄師寺と飴宮は普通に動いていたが。

 

「じゃあ、思い出したらでいいよ」

「本当に良いの? 今、思い出しておかないと後悔するかもしれないのに?」

 

 なんで、遠慮したのに食いついて来るんだろうか。先程の、今馬との会話を思い出した。アレ? これ、もしかしてそう言うパターン? と。

 

「俺は何をすれば?」

「疲れているんだから、マッサージに決まっているじゃない。見た所、暇そうにしている様だし」

 

 どうして、自分が暇そうにしているのを知っているんだろうか。引き受けると決めた訳でもないのに、雫原は拓海のベッドの上にうつ伏せで寝転がった。

 

「本当にやらせるのかよ……」

「思い出すかどうかは、施術次第だから」

 

 とりあえずあらぬ誤解を招かない様に、扉にはシッカリと鍵を掛けてマッサージをする羽目になった。

 心得などある訳もなく、適当に見様見真似で雫原の背中をぐりぐりしているだけなのだが、気に入って貰えているようだが。

 

「あっ、あっ、はっ、激し……」

「変な声出すなよ……」

 

 ただ、マッサージをしているだけなのに変な気分になりそうだった。すると、ガチャっという解錠音と共に川奈が入って来た。

 

「何やってんの!?」

「お前こそ、何やってんの!?」

 

 川奈の手には極当たり前の様にピッキングツールが握られていた。彼女の姿を見た雫原は盛大に舌打ちをしていた。

 

「あら、川奈。どうかしたの?」

「言い逃れは出来ないよ! 一部始終は見ていたんだからね!」

 

 どうやって? という質問は恐ろしくてできなかった。代りに部屋の隅を見渡してみたが、それらしいものは見当たらない。

 

「私はマッサージをして貰っていただけよ?」

「抜け駆けは禁止だって言ったでしょ! 7日目まで待てないの? あ、雫原さんの能力じゃ無理か」

 

 ピスーと鼻息を鳴らして、川奈は余裕そうな表情をしていた。これが甚く雫原を刺激したのか、たちまち剣呑な雰囲気が形成された。

 

「吐瀉物だけじゃなくて、吐く言葉までゲロ臭いの?」

「そのゲロ臭い女より貢献できそうにないのに偉そうに威張り散らして、恥ずかしくないの?」

「わ、ワァ……」

 

 どうしてこんなことになったのだろうと言わんばかりに、拓海は弱き者になっていた。しかし、直ぐに気を取り直した。この場を収めるのもリーダーの役目だと。

 

「2人共。喧嘩は止めよう。な?」

「そうだね。雫原さん腰が痛いんだっけ? サロンパスとコルセット持って行って上げようか?」

「そんなのより、今は消臭剤の方が欲しいわ」

 

 俺はどちらを取るべきかという分岐が現れた様な気がした『雫原を宥める』か『川奈を宥めるか』の二択だ。自分が選ぶべきは……・。

 

「マッサージは夜にでもするから、川奈から色々と話を聞きたいんだけど」

「良いよ! じゃあ、一緒にガレージに行こう!」

 

 喜び勇む彼女にガレージへと連れて行かれた。見送る雫原の視線は正に『射殺す』という表現がしっくりと来る位に鋭い物だった。

 

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