最終防衛学園 ~貞操危機編~   作:ゼフィガルド

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【好き好き編】32日目

 部隊長達と特防隊メンバーによる乱痴気騒ぎが行われている中、最終防衛学園は多数の侵攻生に攻められていた! と言うことも無く、マジで何も無い。凪の様な穏やかな日々が過ぎていた。

 

「(そうだ! 希さんや皆が帰って来た時に備えて、部屋の掃除をしよう!)」

 

 留守を任されていたNIGOUはすることも無かったので、お節介心から皆の部屋を掃除することにしたのだが、これが悲劇の始まりであった。

 そもそもの話、個人の部屋というのはプライバシーの塊のようなモンである。拓海の部屋は勝手に出入りされているが、他の者達はそうではない。

 

「(まず、厄師寺クンの部屋からっと)」

 

 施錠はされていたが、管理者権限とでもいうのか簡単には入れた。

 見た目こそ粗野であるが、意外とキッチリとしているのか部屋は綺麗だった。それこそ、NIGOUが手入れする必要も無い位に。

 

「(うんうん。厄師寺クンはえらいねェ)」

 

 本当に見た目以外にチンピラ要素が少ない男の様子だった。

 次は飴宮の部屋に入った。案の定というべきか、部屋には同人誌を始めとしてサブカルチャー関係が散乱していたが、特定のスペースだけは綺麗にしてあった。転がっているのはR-18な物に紛れて全年齢向けの物も混じっている。

 

「(SIREIはモチベーションの為に置いてあるって言ったけれど、やっぱり良くないとは思うんだよね)」

 

 基本的に学生なのだから、こういったポルノの類を手に取れる範囲に置いておくのはどうかと思ったが、彼らは死線に身を投じている為、こういった慰みが必要だと言うことは分かるのだが。

 

「(怠美さんが帰って来た時用に、直ぐに見分けられるために整理しておかなきゃ)」

 

 と、NIGOUは要らん世話を焼いて、ベッドの上に丁寧にエッチな同人誌や本。ゲームを並べていた。男子高生には特攻とも言える並べ方だが、果たして女子に効くかどうかは、帰って来たら分かることだろう。

 

「(希さんの部屋は変わりようが無いから、次は第2防衛学園の皆の部屋だね)」

 

 厄師寺と飴宮の部屋の片づけ始めたことから分かる様に、NIGOUは部屋を掃除する相手を選んでいた。そう、マトモな奴から順にと。

 まずは、喪白の部屋から。トレーニング器具が置いてある以外は特に変わりない部屋だったが。

 

「(サーチ!)」

 

 ピピピと目からサーチライトを走らせると、ベッドの下に何かを見つけた。潜り込んで取ってみれば、それはノートだった。

 彼女がプロレスラーであることを考えれば生地をまとめた物かもしれないし、年頃の少女らしいポエム集かもしれない。あるいは何か小説的な物を書いているのかもと思って開いてみれば。

 

『今日も蒼月君が澄野君のピザを盗み食いしていた。気持ち悪い』

『丸子君が澄野君の呑む牛乳に何かを混ぜようとしていた。急いで止めた』

『今馬君がプレゼントマシーンで女性用の下着を作っていた。多分、採寸的に自分の物だ』

『面影君が澄野君の料理に何か盛ろうとしていた。相対的にマシに見える気がするが、コイツも変態だ』

『この学園には変態しかいない』

 

 閻魔帳みたいな内容だった。NIGOUも分かっているが、彼らが強すぎて止めようがないのだ。一度、スタンロッドを使って止めようとしたことがあったが、何故か殴っても効かなかった。

 

「(ご、ごめんね。もこさん)」

 

 NIGOUは己の不甲斐無さから目を背ける様にして、喪白の部屋から出て行った。そして、次に向かったのは凶鳥の部屋だった。

 

「(意外と、狂死香さんって散らかさないんだよね)」

 

 てっきり、飴宮の部屋と同じく漫画本が散らかっているかと思いきや、キチンと整頓されて棚に納められていた。恐らく、マンガ好きの彼女のとしては粗雑に扱うことは許されないと考えているからだろう。

 ラインナップを見るに『NARUTO』や『ワンピース』等、少年漫画が目立つが『TOUGH』や『DOKURO-毒狼-』『暴れブン屋』等、第2防衛学園に居た頃には見なかった物が増えていた。

 

「(狂死香さんは変わらなくて嬉しいなぁ)」

 

 君だけはそのままでいて欲しいと思う中、サーチライトを起動させた。洋服箪笥の中には、拓海が着ていたパーカーが仕舞われていた。

 

「(変わらなくて嬉しいなぁ)」

 

 NIGOUは現実から目を背けながら、大鈴木の部屋に入ろうとしたがぴたりと足を止めた。入り口でサーチを掛けてみれば、部屋は侵入者迎撃用のトラップに満ちていた。

 

「(逆に何があるか気になる……)」

 

 と言っても、死にたくはないので潔く諦めることにした。そして、第2防衛学園唯一の男子であり、最終防衛学園を含めたメンバーの中でも特にヤバい面影の部屋に入ってみた。

 

「(うわぁ、センサーが滅茶苦茶反応している)」

 

 特に嗅覚に関するセンサーが異常に反応しており、この部屋が異臭に満たされていることは分かった。床にゴミや埃は無いのに、臭気が凄い。

 

「(冷蔵庫にセンサーが滅茶苦茶反応している……)」

 

 嫌だったが、NIGOUは冷蔵庫を開けてみた。そこには色々な物が保管されていた。試験管やシャーレや真空パックや……。これらの正体が何かは直ぐに分かった。

 

「(澄野君の体液だ……)」

 

 汗やら精液やらとにかく何でも納められていた。全部廃棄してやろうかと思ったが、やはり暴力の影に怯えて、そんなことは出来なかった。

 薬品棚にも何やら色々と置かれていたが、いずれも催淫剤だったり精力剤だったり、媚薬だったりしたので、流石に回収することにした。

 

「(どうせ、また自分で作るだろうけれど)」

 

 それでも何もしないよりはマシだ。薬品を全部戻して、あるいは押収した後。次は最終防衛学園メンバーの部屋へと向かったが。まずは、比較的無害な過子の部屋からだったが。

 

「(普通だ)」

 

 壁に拓海のポスターが貼ってあること以外は特に変な所はない。敢えて言うなら、探偵グッズが何着もハンガーに掛けられていることだろうか。

 本棚には幾つもの推理小説が並んでおり、ダンガンロンパ霧切、ダンガンロンパゼロ、ダンガンダロンパ十神等。特定の作品に対する思い入れが強く見て取れた。そして、幾つも並ぶノート。

 

「(フフフ。どんなこと書いているんだろう)」

 

 なんだか微笑ましい気持ちになって来たので、NIGOUは気が大きくなっていた。故に平然とプライバシーの侵害をかましていたのだが、開かれたノートを見てみれば……。

 

――

 

「がんばれ! 澄野先輩!」

「ひっひっふー!」

 

 今馬と私は必死に声を掛けていた。ベッドの上ではお腹を大きくした先輩が息を荒くして、新たな命を生み出そうとしていた。

 

「う、産まれ……」

 

 既に何人も産んでいるので、澄野先輩の産道は緩くなっているのだろう。前よりもするりと赤ちゃんが生まれてきた。今回は生まれながらにしてアホ毛の生えた可愛らしい女の子だった。助産夫をしていた面影先輩が言う。

 

「この間は『ミライ』。その前は『ミクル』。更に前は……って、もう良いか。彼女の名前は?」

「じゃあ『フュー』で!」

「なるほど『フュー』ちゃん。と言うことか」

 

 面影先輩には意図が伝わったみたい。無事に出産を終えた澄野先輩は疲弊しきっていたが、新しく生まれた命を見てニッコリと笑っていた。

 

――

 

 NIGOUは何も言わずにノートを閉じた。大人しく見えた彼女も、この学園の生徒だった。ノートの背表紙を見れば【オメガバース】とだけ書かれていた。

 もしかして、これも彼女達が言う所のTLにあった話なんだろうか。いや、こんな物があって良い訳がない。CPUにこれ以上の負担を掛けない為にも、NIGOUはさっさと今馬の部屋に行った。

 

「うわぁ……」

 

 思わず声が出た。妹がイカれているなら兄もイカれているのは至極当然の話だった。部屋の半分は過子のポスターで埋まっており、もう半分は拓海のポスターで埋まっていた。

 問題なのは部屋にある物だ。女性用の下着や衣装、そして。どう見ても男性器の形をした一人遊び用のアレが転がっていた。他にも夥しい位のアダルトグッズの数々に、面影とは別ベクトルの人体改造跡が見えた。

 

「(へ、部屋が雄臭い……)」

 

 そうとしか形容しようのない臭いが漂っていたので、NIGOUはそこら中に消臭スプレーを振りまいていた。少しでもマシになっただろうか。焼け石に水な気もするが。これ以上、いたら頭がおかしくなるのでさっさと出ることにした。

 

「(残りはもう、止めようかな……)」

 

 残る4人は特にヤベー奴らだ。とは言え、川奈、雫原、蒼月の部屋に入れるとは思わなかったし、サーチしてみた所。案の定、侵入者迎撃用のトラップが仕掛けられていた。……故に、残りは銀崎の部屋だけになるが。

 

「(銀崎君かぁ)」

 

 様子がおかしい組では目立った様子はないが、性癖という点でのヤバさは群を抜いている。そんな奴の部屋が普通な訳がない。ならば、さっさと諦めて帰ればいいのだが。

 

「(でも、ボクも皆の役に立ちたいんだ!)」

 

 いらん使命感を発揮して、NIGOUは銀崎の部屋に入った。

 実は部屋自体は普通だった。というオチは無く、トレーニング器具以外には木馬や鞭。設置された大型冷蔵庫の中には、よく冷えたアイスティー、缶ビール、いなりずし、不味そうなステーキ、何に使うか分からん白い粉末が納められたタッパ等。何となく汚い印象を受けた。

 

「え、なにこれは」

 

 思わず口にせざるを得ない部屋の中で一際異臭、じゃなかった。異彩を放つ物があった。まるで神棚の様に厳かに飾り付けられているのは、ビンテージレベルの映像媒体VHSだった。

 ラベルを見れば【真夏の夜の淫夢】と書かれており、傍に一緒に飾られているクソデカい箱はパッケージだろうか。口にするのも憚られる様な絵面だった。

 

「なんだこれは。たまげたなぁ……」

 

 と言っても、この学園において性別は何も壁にならないので、NIGOUはそれ以上に気にすることは無かった。

 

「(とりあえず、いなりずしとかは痛んじゃうだろうし。捨てておかないと)」

 

 次々とアイスティー、いなりずし、ステーキを捨てていく。多分、銀崎なら食中毒にはならないだろうが、それでも衛生的に良くない。

 そして、予想通りというべきか。デカい枕の下には拓海の下着があった。見れば、股間辺りがガピガピになっていた。NIGOUは無言で回収した。

 

「(もしかして。希さんはここじゃなくて、向こうに居た方が幸せなんじゃ)」

 

 ここは変態達の巣窟だ。トボトボと銀崎の部屋を綺麗にした後、1つだけ忘れている所があるのを思い出した。

 

「(そうだ。澄野君の部屋も掃除しないと)」

 

 他の部屋と違って、特に何の飾り気も無い。サーチを起動させると、部屋のいたるところに盗聴器や盗撮カメラが仕掛けられているのが気になるが、撤去したら撤去したで煩いことになるだろう。

 漫画本はテーブルの上に散乱しており、床も髪の毛やら菓子の食いカス等が落ちていたりと、ごく普通の散らかり方をしていた。

 

「これだよ! これ!!」

 

 堪らずNIGOUはお掃除道具を出した。床の汚れを拭いて、散らかった漫画本は巻数をきちっと並べて、ちょっと異臭がするシーツは綺麗に洗って、干して。拓海の部屋はピカピカになった!

 

「いいことしたなァ……」

 

 忘れていたというよりかは、機械の体にすら宿った防衛反応が作用しただけではないのか。こうして、拓海達が帰って来るまでの間。NIGOUはこまごまと時間を潰していた。

 

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